「おーい、灰原。ちょっと来てくれ」
「どうかしたの?」
「いまテレビに阿笠博士が映ってんだよ」
あら。どうして博士が。しかも寝巻き姿で。
『えーあー……こほん。わしの発明は、新地平を照らす太陽の王子様なのですじゃ』
ざわめく会見会場。博士は首を傾げながら。
『うーむ……必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵さんも言わんかったのう』
寝ぼけているのかしら。それにしては妙だ。
『蘭くんのビキニは幸せの秩序じゃ』
「蘭のビキニが幸せの秩序……?」
「工藤くん、いま想像したでしょ」
「バーロー。言ってる場合かよ」
工藤くんが唖然としていて私も耳を疑った。
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『哀くんと歩美くんも合わせて、五人官女だってですじゃ!』
三人官女では飽き足らず、2人増えている。
『光彦や元太たちの笛や太鼓に合わせて回収中の不燃ゴミが噴き出してくる様は圧巻で、まるでコンピューター・グラフィックスなんじゃなそれが!』
「灰原。最近博士に変わった様子は?」
「と、特に何も……ああ、でも」
「どうした?」
「この頃、夢の研究をしているって」
「夢?」
「ええ。寝るときに見る夢。その研究よ」
「なるほど……そういうことか」
やはり異常だ。工藤くんが推理をし始めた。
『総天然色の青春グラフィティや1億総プチブルをわしが許さないことぐらい、オセアニアじゃあ常識なのじゃよ!』
オセアニアでの常識は日本では通用しない。
『今こそ、青空に向かって凱旋じゃ!』
博士が歩き始めた。誰も止めようとしない。
『絢爛たる紙吹雪は、鳥居をくぐり周波数を同じくするポストと冷蔵庫は先鋒を司る!』
意味不明な言動が熱を帯びる。演説は続く。
『賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進む道にさながら染みとなって憚ることはない!』
夢遊病患者にしては力強い身振り手振りだ。
『思い知るがいい三角定規たちの肝臓を!』
博士は会見会場に手を振りながら尻を晒し。
『さあ! この祭典こそ、内なる小学1年生が決めた遥かなるキック力増強シューズ。進め! 集まれ! わしこそが、お代官様!!』
「くるぞ……」
「え?」
ぶりゅっ!
『フハッ!』
響き渡る愉悦。そして、博士は駆け出した。
『フハハハハハハハハハハハハッ!!!!』
追跡するカメラ。汚れたお尻が画面を汚す。
『すぐじゃ! すぐにもじゃ!』
「ダメだ! 博士!」
危険を感じた工藤くんの制止が虚しく響く。
『わしを迎え入れるのじゃ!!』
突き当たりの窓を突き破り、博士は飛んだ。
『フハハハハハハハハハハハハッ!!!!』
落下した瞬間画面が暗転。テレビが消えた。
「博士……達者でな」
「きゅ、救急車を……」
「幸せの秩序、か」
119番をかけながら、博士の見た夢を想う。
【フハリカ】
FIN
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