めぐみん「胸なんて飾りですよ」佐藤和真「お? なんだめぐみん、嫉妬か?」 (14)

"もしもこの僕が神様ならば
全てを決めてもいいなら
7日間で世界を作るような
真似をきっと僕はしないだろう"

RADWIMPS - おしゃかしゃま

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「カズマカズマ」
「ん? どうした、めぐみん」

どうもご無沙汰しております。
我が名はめぐみん! 紅魔の里随一の爆裂魔法の使い手にして魔王討伐を果たした大英雄の正妻。ちなみに第二夫人はダクネスです。

「寝る前にまたあの話をしてください」
「この前も話したばかりだろうが」
「カズマ……その、私も聞きたいのだが」
「ダクネスまでそんなに俺が元居た世界の話が聞きたいのか?」

ベッドに川の字になって寝転びながら、真ん中のカズマの両脇で私たちは頷き合います。
カズマが暮らしていた世界に興味津々です。

「仕方ない。寝落ちするまで話してやるか」

やれやれとため息を吐きながらカズマは早くもうつらうつらとしながら語り始めました。

「基本的に俺が元居た世界はこの世界の500年くらい未来って感じだった。魔法の代わりに電気って不思議なエネルギーを扱って、この世界の暮らしよりも遥かに便利な暮らしを満喫してたもんだ」
「デンキ、とは魔法のようなものですか?」
「似て非なるものかな。魔法はなんでもありだけど、電気はどこまでいっても現実的だ。だからこそ、法則に従って操ることで必要な力を得られる。魔法はその点不条理だよな」

魔法とデンキ。その違いが気になりますね。

「具体的にそのデンキとやらをカズマの世界の人々はどう使っていたんだ?」
「色々だよ。暗くなったら電球で照らしたり、暑くなったら涼しい風を出したり、逆に寒くなったら温かい風を出したりな。一切火を使わずに料理まで出来た」

ダクネスの質問になんてことないように答えるカズマ。信憑性のある話ではありませんが、私たちは良き妻なので夫を疑いません。

「この世界でその力は使えないのですか?」
「どうだろうな。俺もそんなに詳しいわけじゃないから断言は出来ないけど、雨は降っても雷ひとつ落ちやしない世界だからな。一応ベルディアの登場回では落雷のシーンがあったけど、アレはただの演出だろうからノーカンだと思う」

ふむ。カミナリですか。唆られる響きです。

「そもそも初級魔法に電撃魔法がない時点でそういうエネルギー自体ないんだろうな」
「やはり魔法とは似て非なるものなのか」
「冬場でも静電気すら発生しないからな。磁石も見かけないし、やっぱりないんだろう」
「ジシャクとは、なんですか?」

ダクネスの相槌に確信を深めた様子のカズマが気になる単語を口にしたので訊ねると。

「なんですかって、磁石は磁石だよ。くっついたり反発したりする不思議な石だ」
「不思議な石! 私もひとつ欲しいです!」
「俺が元居た世界にはそんな不思議な石がえらく安く売ってたもんだ。別に金持ちじゃなかったけど、あんなもんで喜ぶならケチな俺でも買ってやれたんだけどなぁ」

カズマはたしかにケチですけど、それでも。

「私にとってはカズマこそ、この世界には存在しないジシャクみたいなものですよ」
「めぐみん……」

そっと手を取ってがっちり繋ぐともう離れません。時にはお互いに意地を張って反発し合うこともありますが私たちは夫婦ですから。

「カズマ……私も、そのジシャクみたいに」
「お前は胸だけは、磁石みたいな女だよな」
「ふぎゅっ!?」

はて。向こう側では何を掴んで居るのやら。

「胸なんて飾りですよ」
「お? なんだめぐみん、嫉妬か?」

何を馬鹿なことを。我が夫に知らしめよう。

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の爆裂魔法の使い手にして大英雄の正妻! たかが胸のサイズ如きでその盤石の地位は揺るぎは……」
「ダクネスお前また育ったんじゃないか?」
「お、お前が毎晩めぐみんが寝たあと揉んでくるから! あっ……こら、いい加減に……」

聞き捨てなりませんね。いいだろう上等だ。

「カズマカズマ」
「なんだよ、ガキはさっさと寝……」
「ちゅー」

ジシャクのように口と口がくっつきました。

「胸よりこっちのほうが好きですよね?」
「うん。好き」
「よしよし。じゃあ、もう1回……ちゅー」

言葉を交わすのが、もどかしくなりますね。

「うう……カズマ、私にも……」
「うるさいおっぱい。さっさと寝ろ」
「ひぐっ!? ど、どこまで貴様は私の性癖を刺激すれば気が済むんだ!?」

ダクネスの性癖のおかげで我々は円満です。

「カズマ」
「ん? まだなんかあるのか?」
「私は思うのです。魔王の脅威から解放された世界をこれからカズマがそのデンキとやらを用いて繁栄させてくれるのではないかと」

そうしたらもっとカズマは偉大な存在へと。

「別に俺は何もするつもりはないよ」
「どうしてですか?」
「電気がなくて不便なほうが楽しいからな」

暗がりでにやりと笑う夫が、愛おしいです。

「というかこの世界は長らく続いた魔王軍との戦争のせいで魔法が戦闘に特化しすぎてることのほうが勿体ない。進歩なき戦争なんて不毛すぎる。電気よりも魔法のほうが自由度が高いんだから、発展させるならそっちのほうが先決だろ」

再びうつらうつらとしながらカズマは呟き。

「もっとこう……夢のある魔法があればな」

そう言って寝息を立てる夫。夢の魔法とは。

「……どう思いますか、ダクネス」
「うーん……我々にとってはこれが日常だからな。しかし、今や存在しない魔王軍に対する魔法はたしかに無意味で不必要だろう」

無意味で不必要。つまり、我が爆裂魔法も。

「夢のある魔法、ですか」
「あまり真面目に取る必要はないと思うぞ。この男のことだから、どうせ世のため人のためになんて大層なことは考えてはいまい」

それがカズマで、だからこそ世界を救えた。

「爆裂魔法は爆発する魔法です」
「何を今更。そんなの当たり前だろう」
「ですが、その果てに何があるのでしょう」

爆裂魔法はスキルレベルを上げれば上げるほど、その爆発力は増大します。原初の崩壊。
その向こうに何があるのか。新たな世界か。

「私はこれからも探究し続けます」
「ふふっ……本来なら危ないからやめておけというべきところだが正妻には逆らうまい」

良い心がけです。これもまた、円満の秘訣。

「私が見せてあげるのです」

真っ暗な寝室で、爛々と紅い瞳を輝かせて。

「自分の男に夢を見せてあげるのです」
「ああ。私も微力ながら、力になろう」

すやすや眠る愛しい寝顔に口づけをしつつ。

「というわけで、早速かましてやります」
「ん? めぐみん、何をするつもりだ……?」
「シッ……ダクネスは見届けてください」

カズマを起こさぬように静かに跨りました。

「よっこいしょ」
「ふごっ」
「めぐみん! カズマが窒息してしまう!?」
「我が名はめぐみん! 夫に夢を見せる者!」

さて。そろそろ寝る前におしっこしますか。

「黒より黒く、闇より冥き我が漆黒の下着の前にひれ伏せ! エクスプロージョン!!」

喰らえ雷! 我こそが神なり!! ちょろんっ!

「フハッ!」
「ひぅ!? ……恥骨にクリーンヒットです」

流石は大英雄。寝ながら愉悦を漏らすとは。

「ふぁっ……あああ、ああああっ!!!!」

ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

ふぅ。夫に夢を見せて、私もすっきりです。

「げふっ……がはっ……!」
「カズマ!? しっかりしろ、溺れるな!」
「あれ? ベルディア、どうしてお前が……」
「そっちに行くな! 戻ってこいカズマ!?」
「それでは、私は寝ます。おやすみなさい」

介抱は第二夫人に任せて正妻は先に休ませて貰います。デンキならぬ便器と繋いだ手を、朝まで離さないように固く握りしめながら。


【この素晴らしい妻たちに祝福を!】


FIN

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