長門有希「恥ずかしい」 (4)
「長門」
「何?」
いきなり何を言い出すのかと思われるかも知れないが、世の中には健康的な太ももという存在があり、それはたとえばハルヒの太ももであったり、朝比奈さんの太ももであったり、或いは鶴屋さんの太ももだったりするのだが、では不健康な太ももに魅力がないかと言えばそうでもなく、病的なまでに白い長門の太ももに俺は新たな価値を見出していた。
「いや、なんでもない」
「そう」
発作的にその儚い太ももに触れたくなった俺はなんとかその邪な煩悩を振り払い、喉元まで出かかった申し出を飲み込んだ。しかし。
「隣、いい?」
「え? あ、ああ。好きにしてくれ」
おもむろに立ち上がった長門がパイプ椅子を引きずって隣に腰掛けた。とても気まずい。
「足」
「お、俺は別に足なんか見てないぞ」
「乗せてもいい?」
「へ?」
呆気に取られた俺が返答する前に片足を上げて俺の膝に長門が足を乗せてきた。すごい。
「満足?」
「あ、ああ……ありがとよ、長門」
「いい」
文庫本を読みながら無表情で足を乗せている長門に興奮した俺は変態的な気分に陥った。
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「なあ、長門」
「重い?」
「いや、重くはないが……」
暫くその状態が継続して、何度生唾を飲み込んだか知れない俺に対して、長門はあくまでも無表情且つ無感動に接してくる。ずるい。
「男にこういうことするのは良くないぞ」
「何故?」
「何故って、そりゃあ……」
「こういうことをされるの、嫌?」
嫌なわけない。むしろいい。それが問題だ。
「長門こそ足を広げるの嫌じゃないのか?」
「別に」
そんなもんか。いや、そんなわけない筈で。
「少しだけ」
「え?」
「恥ずかしい」
「 」
絶句した。どうしよう。長門が、かわいい。
「もしも、あなたさえ良ければ……」
その言葉の続きを聞きたくて訊きたくて聴きたくて。けれど同時に聞きたくなくて訊きたくなくて聴くのが怖くて、耳を塞ぎたくて。
「触って、みる?」
「~~~~~~っ……長門、俺は……っ!」
「どーん! 遅くなって悪かったわね、野郎ども! さあ、今日も元気に部活をするわよ!」
どーん! と乱暴に扉を開け放ったハルヒが室内を見渡す前に長門は足を下ろし、股を閉じて、おまけに定位置へと瞬間移動していた。
「ハルヒ……お前な。本当に……お前はさ」
「なによキョン。お預けをくらった犬みたいな顔して。そんなに待ち遠しかったわけ?」
んなわけはない。ないのだが、俺は伝える。
「ありがとよ、ハルヒ」
「何が?」
「助かった」
危うく取り返しのつかない事態へと発展しそうだった状況をひっくり返してくれたことに素直に礼を述べると長門がこちらを一瞥し。
「次は、逃がさない」
「っ……!?」
背筋が凍って、完全にぶるっちまった俺は。
「ちょ、キョン!? なに失禁してんのよ!」
「フハッ!」
盛大に失禁して愉悦を漏らす。健全である。
「飼い主の顔を見ておしっこ漏らすなんて、いつからあんたはそんな忠犬になったのよ」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
忠犬でもなんでもいいから、頼むよハルヒ。
「あなたはもう絶対に私から逃げられない」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「今度あんたに似合う首輪を用意するわね」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
おっかない長門の誘惑から俺を守ってくれ。
【長門有希の誘惑】
FIN
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