トレーナー「ひたいに油性ペン(極太)で“オグリ”と書かれた」 (13)

「オグリ……怒らないから教えてくれないか。何故こんな事をしたのか」

 俺は怒っていなかった。
 本当に怒っていない。
 なぜなら驚きと戸惑いに支配されて、怒るどころではないからだ。

 目の前には耳を垂れさせたオグリが、申し訳なさそうに座っている。
 今でこそ落ち込んでいるが、つい先ほどまで意気揚々とした様子であった。

――おかしいと感じたのは一時間ほど前の事だったか。

 仮眠から目覚めると、いつから部屋で待っていたのかすぐ傍《そば》にオグリが立っていた。
 あくびを噛み殺しながらどうしたのかと尋ねてみると“キミの様子を見ていただけだ”といつになく落ち着かない様子で答える。

 寝ている俺の様子を見るなんて変わった事をするもんだとは思ったが、彼女の独特の好奇心には慣れている。そこまで不思議に思わない。
 違和感を覚えたのは、彼女がクリスマスプレゼントを前にした子どものように目を輝かせ、そわそわとしていたからだ。

 もう一度どうしたのかと尋ねたか、オグリは口を子どものようにつぐんで首を左右に振るだけ。
 気にはなったけど、今は教えてくれるつもりはないのだろう。気が変わるまで待とうといったん諦め、彼女と連れ立ってグラウンドへと向かった。

 グラウンドへと向かう最中に、様々な視線を受けた。
 ある者は二度見し、ある者は目を見開いて驚き、ある者はクスクスと笑い、そしてある者はオグリに親指をにこやかに立てる。

 何かが起きている事はわかった。だがそれが何であるか、俺にはわからない。
 隣を歩くオグリに尋ねても、彼女は“問題無い”と自信満々に言い張るのみ。

 もしここで彼女が笑いをこらえたり、申し訳なさそうな様子だったら俺の傷は浅くすんだだろう。
 しかし俺の質問に答えるオグリはどこか自慢げな――飼い主に褒められるのを待つ大型犬のようであったため“よくわかんないけどオグリが楽しそうだからいいや”と流してしまった。

 その結果、俺はひたいに油性ペン(極太)で“オグリ”と書かれたままグラウンドまで歩き、オグリと共にトレーニングに励むこととなる。

 ……いや、おかしいとは思ってたんだ。他の練習中のウマ娘が俺の横を走り過ぎたとたんにペースが乱れたり、戸惑いながら俺に話しかけようとする同僚を、その担当ウマ娘が慌てて止めに入ったり。

 結局俺がひたいの文字に気がつけたのは、トイレに行って何気なく鏡を確認したからだ。

 “オグリ”

 ひたい全てをキャンパスに、太さ1センチは超えよう力強い文字がデカデカと主張している。それは眉毛にかからない程度の俺の前髪ではとうてい隠し通せるモノではなく、一瞬にしてこれまでの奇妙な反応について合点がいった。

「お、おお……」

 合点はいくが――

「オグリイイイイイイイィィッ!!!」

――納得いくはずが無い。

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「……っ!?」

 当《とう》の本人はというと、驚きのまま詰め寄るという俺の当然の反応が予想外だったのか、呆然と立ち尽くす。

 こうして自分のしでかした事の大きさをようやく悟ってしょんぼりとするオグリを引き連れ、トレーナー室に戻ったのである。

「しかしこれどうするんだよ……洗っても落ちないし、油性で書いただろ」

 完全に落ちるのにいったい何日かかるだろうか。そして落ちるまでの間、中途半端に文字が残っているという下手をすれば今よりも恥ずかしい状態で過ごす事になってしまう。そんな風に悩んでいると――

「安心してくれ。毎朝しっかり私が上書きしよう」

 何一つ安心できない事を、胸を張って言い切るウマ娘がいた。

「ていっ」

「いたっ」

 力を抜いて落下させただけのチョップをオグリの頭に落とす。
 別に痛くはないはずだが、叩かれると思っていなかったのかオグリは悲しそうにこちらを見上げるのであった。

「その……怒っているのか?」

「まあ……正直なところ、少しは怒っている。そしてそれ以上に悲しいんだ。オグリが俺にこんな事をするってことに」

「……え?」

「考えてもみてくれ。オグリが寝ている間に、俺の名前を書かかれたらどう思う?」

「か、書いてくれるのか!?」

 ……どうやら例えが悪かったようだ。オグリは期待にあふれた目でこっちを見ている。

 考えてみればオグリは自分にとって嫌な事を他人にするような子ではない。つまりオグリにとってひたいにデカデカと油性ペン(極太)で名前を書かれるのは嫌な事ではなく、むしろ喜ばしい事のようだ。

「なあオグリ……悪気が無いのはわかったけど、どうして俺に自分の名前を書いたりしたんだ? 君は理由も無しにそんな事をする子じゃないだろ」

「……シゲさんに言われたんだ」

「シゲさんに?」

 シゲさんというのはたしか、笠松でオグリを応援してくれている気さくなオジサンだったはず。
 あの人がなぜ……?

「シゲさんが言うには、私がこれからも幸せであるためには、しっかりとトレーナーをモノにしないといけないらしい。だからトレーナーに私の名前を書かせてもらったんだ」

「し……シゲさん」

 多分シゲさんは、これからも走り続けるオグリには俺が必要だと思ってそういう言い方をしたのだろう。
 しかしシゲさん。オグリにはもっとストレートに言わないとわからない事は、貴方だって知っているでしょう。

「まさかキミがここまで私のモノになるのを嫌がるとは思わなくて……すまない」

「あー、うん。それなんだけどさ、オグリ」

「……なんだ?」

「別に名前を書いたりしなくていい」

「それは……どういう意味だ?」

「こんな事をしなくても、俺は君のモノだから」

「……!」

 本当は良くない事はわかっているけれど、あまりにもオグリがしょんぼりとしているため嘘をつく。
 いや、これからもオグリのトレーナーを続けていくつもりだからオグリにとっては嘘じゃないのだけど、一般的な男女が“モノにする”という意味では嘘をついている。

「しかし……キミに私の名前が無くて大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。ほら、スーパークリークのトレーナーさん。あの人はクリークのモノだけど、どこにも“クリーク”って書かれていないだろ」

「確かにそうだ……!」

 ごめんなさい、クリークT!
 心の中で謝っていると、青空に菩薩のような笑みを浮かべるクリークTが見えたような気がした。

「名前を書かなくっても誰のモノかわかる存在がある。俺がキミのモノである事は、他の人だってすぐに気づけるよ」

「ふむ。では私がキミのモノであるコトもそうだろうか?」

「…………………………うん、どうだろうね?」

 年頃の女の子が自分は誰々のモノだなんて気軽に言ったらダメだと叱りたかったけど、それでは話が有耶無耶になる。
 かといってここを流してしまえば“私はトレーナーのモノなんだ”と周囲に自慢しかねない。

「違うのか……? ならばやはり、キミの名前を私に書いてもらった方が……」

「オグリ! 君は自分が着ている服を自分のモノだってわざわざ言って回るかい?」

「い、いや。そんな事をしたコトはないが」

「俺たちは普段から一緒にいる。大丈夫、俺が君のモノである事も、君が俺のモノである事も、誰に言うまでもなく分かってもらえる事だから!」

 教え子に俺は何を言っているのだろう。これじゃまるでプロポーズじゃないか。
 しかしオグリを悲しませずに、かつ俺や自分に油性ペンで名前を書く行為を止めるにはこれしか思いつかなかった。

「そうか……! 私たちはクリークたちと同じだったのか!」

「そ、そうだ!」

 あの二人と一緒にされるのは抵抗感があったが、これもオグリのためだと肯定する。

「私が間違っていたトレーナー。キミが私のモノであると自覚していないせいで、しないでいい主張を周りにしてしまってすまない」

 オグリは良き勢いよく立ち上がった。悲しそうに垂れていた耳はピンと張り、気持ちが高翌揚して頬に紅《べに》がさしている。

「キミが私のモノであるコトは、これまでもそうだったように、この走りで証明しよう」

 そう言って彼女はターフへと向かった。
 その力強い後ろ姿は、俺の選択が間違っていないと教えてくれ――

「“ヒニン”はちゃんとしているのかとトメさんに聞かれたんだが」

「――――――――――」

 無事に問題が解決したと思った翌日の事。
 ひたいに書かれた“オグリ”の文字は薄まりはすれど未だに確認できる中で、オグリの口から爆弾が飛び出た。

「どうかしたのか?」

 他に人はいないか慌てて確認する俺に、自分が何を言ったのかまるで理解できていないオグリが不思議そうにする。
 大丈夫だ、ここはトレーナー室で他に人はいない。ドアも閉まっている。

「ええっと……どういう流れでトメさんに今の言葉を言われたんだ?」

「ああ、シゲさんにトレーナーは私のモノだから安心してくれと報告したんだ。学園の皆は私たちを見ればわかることだが、笠松の皆はそうはいかないからな」

「そうか。それでシゲさんから話を聞いたトメさんから電話があったわけか」

「うん。トメさんは“二人の仲が進んだのはおめでたいコトだけど、ヒニンだけはしっかりしなさい”と。
 トメさんが喜んでくれたのが嬉しくて聞くのを忘れたが、“ヒニン”とは何だ」

「ああ、うん……」

 さて、何と答えたものか。
 ここで“ヒニン”の意味を教えてあげてもいいが、すると芋づる式で昨日の会話の意味をオグリが理解して、恥ずかしい想いをさせかねない。
 ここは――

「トメさんは喜びつつも、俺とオグリについて心配もしてくれたんだよな」

「ああ、そうだ」

「なら今度こう連絡すれば大丈夫だ。“私とトレーナーはピュアな関係だからヒニンはそもそも必要ない”って」

「……そう言えばトメさんは安心してくれるのか?」

「ああ、それで大丈夫だ」

 ついでに教え子に手を出したトレーナーというレッテルもどうにかできる。
 オグリの性知識については……スーパークリークは少し不安だから、今度機会を見てタマモクロスにお願いする事にしよう――

※ ※ ※



「なあ、オグリ……どうしたんだ?」

「……」

 オグリからの反応は無い。耳がピクリともしない事から、無視したわけではなく集中するあまり聞こえていないのだろう。

 グラウンドへと向かう途中の事。
 ひたいに書かれた“オグリ”もだいぶ薄まってきた。
 いつもなら隣に並んで向かうのに、オグリは今日に限って斜め後ろをついて歩く。それも俯きながらだ。

「体調でも悪いのか?」

 振り返りながら立ち止まる。一緒に立ち止まったオグリは、ここでようやく顔を上げてくれた。

「ん……? いや、そういうわけではない。心配をかけてしまってすまない」

「体調に問題が無いのならいいんだけど……どうした、下を見ながら歩いたりして」

「影の確認をしていた」

「影?」

 そう聞いて先ほどまでのオグリのように俺も俯く。強い日差しによってハッキリとした影法師がそこにはあった。

「ヨネさんに言われたんだ」

「今度はヨネさんか。いったい何を?」

 シゲさん、トメさんと来て今度はヨネさんだ。今度は何だろうとつい身構えてしまう。

「“他の女の影が無いか気をつけなさい”と。だからキミの影をずっと見ていた」

「……あ、うん。今度はそう来たか」

「?」

 最初シゲさんがしっかりと俺をモノにするように言い、オグリはそれにトレーナーをモノにしたと連絡した。
 それを聞いたトメさんがまだ子どもなんだから“ヒニン”はするようにと言い、オグリはそれにピュアな関係だから大丈夫だと連絡した。
 ここでピュアな関係でちゃんとモノにできているのかと不安になったのがヨネさんなんだろう。

「影をじっと見ているうちに、小さい頃にしていた影踏み鬼を思い出した。色んな形に変わっていく影を踏みながら走り回るのは楽しくて、それを思い出しているうちにキミの影に夢中になってしまった」

「そうだったのか。でもこれで他の女の影が無いってわかってくれたか?」

「うん。君に他の女の影は無い。これからも他の女の影が、キミの影と重ならないように気をつけてくれ」 

 女の影ってそういう直接的な意味だったのか……。
 いやまあ、影が重なるほど近くにいるという意味ではあながち間違いじゃないんだろうけど、ここはトレセン学園というウマ娘ばかりが在籍する場所だ。普通に歩くだけで女の子に影を踏まれてしまうのだけど、それをどう気をつけろと?

 などと考えていると――

「……オグリ?」

 無言でオグリが歩き始める。並んで歩こうとする俺を手で制すると、オグリは少し進んだところで立ち止まって振り返った。

「どうだ」

 短いが自信の溢れた言葉、揺れる尻尾。
 彼女から伸びた影が、俺の影と重なっている。

「うん、やはりキミは私のモノだ」

「……ああ、俺は君のモノだ」

 ただ影を重ね合わせただけ。そんな子ども染みた遊びで頬をほころばせる彼女に、なぜか負けたような気がして両手を上げる。

 実際俺は負けているんだろう。彼女が幸せそうにしてくれるのなら、彼女が調子よくターフを駆け巡ってくれるのなら、今のようにくだらない事で振り回されても苦痛ではないんだから。
 そしてこんな日常が、いつまでも続いて欲しいと望む。
 ならば俺は彼女にいらないと言われるその日まで、俺は彼女の――

「あっ、オグリとトレーナー。そないなとこで突っ立ってどないしたんや?」

「あ」

「あ」

「ん?」

 強い日差しを背中にやって来たからか、はたまた俺とオグリが見つめ合ってたからか。別に足音を殺していたわけでもないタマモクロスの接近に、俺たちは二人そろって気がつけなかった。

 タマモクロスの影が、俺の影と重なっている。

「お、オグリ……?」

「……」

 声をかけても彼女は応じない。
 呆然と小さく口をあけ、わななきながら俺の影を見つめている。

「え、なんや? ウチがなんかやってもうたか?」

「……」

 タマモクロスが慌てても、彼女は応じ――いや。

「……取られた」

「なんやて?」

 オグリは小さな声で呟いてから、今度はハッキリとした声で――

「タマにトレーナーを取られてしまった」

「ぶふぅっ」

「はあっ!?」

 オグリが大声をあげるのはターフを駆ける時ぐらいだ。今回も別に声が大きかったわけではない。
 しかしオグリの声は大きくなくても明瞭であり、よく通る。そして学園内で特に注目されるウマ娘の一人だ。そんな彼女が同じく注目を浴びるタマモクロスと一緒にいれば、自然と周りのウマ娘の視線を集める。

 結論! 今の問題発言は皆に聞かれてしまった!

「トレーナーは私のモノなのに……」

 驚愕! 問題発言はさらに続く!

「ね、ねえ今の聞いた!」

「うん! あの人トレーナーなのに、担当ウマ娘以外に手を出すだなんてサイテー!」

「オグリさんかわいそう……」

 不服! 問題発言が事実だとあっさりと受け入れられている! 俺は教え子と関係を持ち、あまつさえそのルームメイトにまで手を出しかねない鬼畜だと思われていた!

「ちょっ、待てや! ウチはアンタのトレーナーに手なんか出してへん! っちゅうかそこの朴念仁! 朴念仁なのにオグリに手を出したんか!?」

「だ、出してない! 出してない!」

「はぁ。またオグリがいらん勘違いを――」

「しかし、君は私のモノだって言ってくれたじゃないか」

「言っとるやん! 手ぇ出しとるやん! なんやまたバカップルが生まれたんか! そないなモン、クリークんとこだけで十分や!」

「これにはワケが――」

 荒ぶるタマモクロスに事情を説明しようにも、近くにオグリがいるためそのまま話す事はできない。
 タマモクロスの察しが良いため最後はわかってもらえたが、説明には随分と時間がかかってしまった。

 その時、ふと閃いた!
 このアイディアは、オグリキャップとのトレーニングに活かせるかもしれない!

 オグリキャップの成長につながった!

※ ※ ※



「タマモクロスはどこだろうか……?」

 オグリの昨日の問題発言は、相手がタマモクロスだったおかげで何とか穏便に済ませる事ができた。しかし次もうまくいくとは限らない。
 同室で同性の、オグリからの信頼も厚いタマモクロスに説明してもら――

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉっっっ!!」

「っ!?」

 タマモクロスを探していると、角の向こう側から少女の絶叫が轟いた。
 それは悲しみと驚き、そして雄々しさに満ち溢れ、少女のモノだというのに“男泣き”と評せるものだった。

 まさか誰かがケガをして、こらえ切れないほどの痛みに口から熱を吐き出しているのだろうか?
 確認しようと慌てながら角を曲がるとそこには――

「ウチは、ウチは穢されてしもうたああああああぁぁっっっ!!」

「た、タマ……?」

「……何だこれは」

 首を両手で抑えながら膝から崩れ落ちているタマモクロスと、その隣でうろたえているオグリの姿がそこにはあった。

「オグリ、タマモクロスはケガをしたのか?」

「ケガ……? いや、タマはケガなんかしていない」

 痛がっているようには見えなかったが、あまりの痛みで混乱している可能性もあったため確認する。
 しかしタマモクロスが両手で抑えていてよく見えないが、その手からは血がこぼれ出ていない。
 オグリが言うようにケガはしていないようだった。

 では何故タマモクロスが、あの気丈なウマ娘が悲しみを顕《あら》わにしているのか?
 
「おどれがぁ、おどれが朴念仁のせいでウチがぁっ!!」

「……俺のせい?」

 意外な事に俺のせいらしい。しかしそう言われてみても、ここ数日の自分の行いを顧《かえり》みてみたが、少女が男泣きするような原因を作った覚えはまるでなかった。かといってタマモクロスの悲痛な嘆きが嘘とも思えない。

「なあオグリ。ここで何があったか知っているか?」

「……実は、タマには練習に付き合ってもらったんだ。初めてだからな」

「練習? 何のだ?」

 どうもこの事態を引き起こしたのはオグリのようだ。
 いや、泣き崩れるタマモクロスの隣にいるのだから普通に考えれば彼女が怪しいに決まっているのだけど、オグリがタマモクロスを泣かせるなんてあまりにも予想外であった。

「うん。やってみせるから、少し屈んでもらえるか」

「ん、こうか?」

 オグリがタマモクロスを泣かせてしまった事に驚いていた俺は、言われるがままに体を傾ける。
 タマモクロスが首を抑えながら泣いているのに、無防備に首をさらしてしまう。
 そんな俺にオグリは体を寄せると――

――チュ、チュウウウ、チュパッ――

 艶めかしい音を俺の首で奏でてしまった。

「オ……グリ?」

「……うん、ちゃんとできた。キミの味はしょっぱくて美味しいな」

「何を……した?」

「タケさんに聞いたんだ」

 突然の、そしてあまりの事態を受け入れられずにいる俺に対して、オグリは誇らしげに胸を張りながら言う。

「キミは私のモノだ。他の女の影を追いやるにはどうすればいいと尋ねたら、こうすればいいと」

「ウチの初めてがあああぁっっ!! このバカップルどものせいでえぇぇっっ!!」

 泣き崩れていたタマモクロスがついに地面をたたき始めた。彼女の手で覆われていた首が明らかになる。
 彼女の首に付けられた“跡”が、自分にもあるのだと理解してしまった。

「トレーナー、キミは私のモノだ。誰が相手であろうと、絶対に渡しはしない」

 そう静かに、しかし力強く彼女は言い切った。

「……っ」

 その笑顔の、なんと輝かしいことだろう。
 嬉しくって、誇らしくって仕方がない――そんな幸せそうな笑顔を、俺に見せないでほしい。

 ずっと、見ていたくなるから。

 君がターフを駆け巡る間だけではなく、やがて走るのを終えたあとでも、すぐ隣で見ていたいと願ってしまう。
 その願いはあまりに輝かしいけれど、許されるものではない。だから目を背《そむ》けなければならない。

 けど背けても無駄だ。
 この輝きは網膜に、そして脳裏に焼き付いてしまった。未来永劫忘れる事はできない。
 どんなに逃げようとしても彼女に差されてしまう。

 そのてらいのない笑顔《かがやき》を見せられて、俺は悟ってしまった。
 その場しのぎの嘘でもなんでもなく、俺は本当に――彼女のモノになってしまったのだと。

「このバカップルどもがあぁっ、さっさと結婚せい!」

 タマモクロスが祝福する中で、俺はただただオグリの笑顔に魅入られるのであった。





~おしまい~

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今回はアプリトレとオグリで書きましたが、SSを書き始めた段階ではシンデレラグレイをまだ読んでいませんでした。
書いている途中でグレイを読んだため修正できませんでしたが、次にオグリメインで書くことがあれば北オグになるかと思います。

またウマ娘はアプリから入ってアニメも見始めたのですが、すっかり沖スズにはまりました。
まだ二期2話までしか見ていませんが、次にウマ娘を書く場合は沖スズになるかと思います。

――ところで、デレステのガシャ運はまあまあな私ですが、ウマ娘の方は壊滅的です。
年末年始の無料100連ですが☆3もSSRも出てくれませんでした。
でも3凸だったSRスカーレット・SRアルダンが完凸できたので実質勝利です。
精神的勝利です。



これまでのおきてがみ(黒歴史)デース!

確信を得てしまったダイワスカーレット
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1638049796

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