久川凪「凪にラブコメのヒロインは無理だと思っていますね?」 (53)


~事務所~


P「……」

久川凪「……」

P「……」

凪「……」

P「……はい?」

凪「とぼけるのもいい加減にするべきです」

P「まだ何も言ってないんだけど……」

凪「言い訳は聞き飽きました。その程度で狙っているのですか? ベストジーニスト賞を」

P「特に狙ったことはないな……」



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凪「仕方がありませんね。この期に及んで自らの立場を理解していないPのために、凪が説明をしてあげましょう。問答無用、否応なし、泣いても許してはあげませんよ」

P「ごめん、この書類を片付けてからでいいか?」

凪「わかりました」スン

P「頼んでおいてアレだけど全然問答無用じゃない」

凪「凪の『な』は優しさの『な』です」

P「優しさに含まれてない要素が検出されちゃった」

凪「無駄口を無駄打ちしていないでそのウキウキの口を閉じて集中するべきです。そのうちダブチかエグチを奢らせますよ。愚痴っても無視っても不躾は許されません」

P「わかったわかった。すぐ片づけるから」

凪「~2年後~」

P「そんなにかかんないから」


凪「~シャボンディ諸島~」

P「各地で修行してきた麦わらの一味か」

凪「今のネタは伝わらない層がいますね。早々に反省です」

P「エグチとダブチで韻を踏むのも伝わりやすさから言うと微妙だと思うけどな」

凪「そんなことはどうでもいいでしょう。今は凪がPを糾弾する時間です。一度始まれば中断はききませんよ」

P「はいはい、もう大丈夫だから聞くけど……ラブコメの話? だっけ?」

凪「そもそもPはラブコメを知っていますか?」

P「知らないってことはないけど……漫画とかのジャンルだろ?」

凪「ラブコメという言葉の起源は紀元前中国まで遡ります……」

P「俺の知らないラブコメの可能性出てきた。続けて」

凪「古代中国の言葉で”修羅のような武勇”という意味の『羅武』[要出典]と”湖を守護する若き女”という意味の『湖女』[要出典]の2つの言葉が合わさったのが始まりとされていて[要出典]」

P「めちゃくちゃ根拠の薄いWikipediaの記事みたいになってる」

凪「そこからなんやかんやあって、現在のように面白さや可笑しさと恋愛要素を合体させたジャンルの総称として使用されています」
P「奇跡的に俺が知ってるラブコメに着地した……」


凪「つまり男と女があっちこっちにドキドキしてヤキモキしてオーキードーキーのマンマミーヤということですね」

P「今マリオいた?」

凪「さて、ラブコメに大切な要素はなんですか?」

P「お色気要素」

凪「遺言と受け取っても?」

P「ごめん……」

凪「まあPは凪の平原には目もくれず、ビッグはーちゃんマウンテンばかり見ていると有名ですからね。仕方があるまい」

P「み、見てねーし!!!」

凪「精神年齢は肉体の5割引きと見た。いつまでも学生気分だと社会に出て苦労しますよ。今はチンパンだと審判が下ってもインターンで民間が真贋を見定めてくれるでしょう。新歓までには大人になりましょうね」

P「後半めっちゃ詰め込んだな。誰がチンパンジーだよ」


凪「しかし、今のやり取りの中に、まさに今日、凪がこうして物申している原因が含まれていようとは、気が付いていないのですか? その程度ではダメダメの実のダメ人間ですよ」

P「今のやり取り……はっ!」

凪「勘のいいPは嫌いではない」

P「その……高校でスタイルが良くなった娘もいるし、あまり気にしない方が……な……?」

凪「前言撤回です。でっかい鉄塊をお見舞いしようか」ゴゴゴゴゴゴ

P「じ、冗談! な!!!」


凪「そろそろ本題に移りましょう。前置きに1800文字も使って何がしたいのですか? ここがテキサスなら蜂の巣ですよ」

P「あんまり銃で撃たれる理由に納得はできないけど、ここが東京でよかったよ」

凪「凪はこの前、眺めていたのです。シンデレラガールズ劇場わいど☆を」

P「シンデレラガールズ劇場わいどって何?」

凪「シンデレラガールズ劇場わいど☆です。2度目はない」

P「そんなに怒る?」

凪「画面右上のアイドル検索で『ひさかわ』と入力すれば、あら不思議、凪とはーちゃんが登場した回が網羅できるではありませんか」

P「全くわからないけど、そういうものなのか」

凪「まず凪は、はーちゃんのお仕事を振り返りました。はーちゃそすこすこ組合の一番槍として当然のことです。えへん」

P「知らない団体出てきたけどスルーさせてもらうな」


凪「241話で柚さん、悠貴ちゃんと制服放課後公園バドミントン。299話で美嘉さんの妹になり映え映えキラキラ写真を激写。431話で星空の元語り合う……」

P「懐かしいな。確かにそんなこともあった」

凪「まさに圧倒的ヒロイン。日常全ての思い出がメモリー……!」

P「頭痛が痛い」

凪「凪がクラスの男の子なら放っておくことはないでしょう。その前にそいつを凪が生かしておきませんが」

P「怖い怖い」


凪「さて、変わって今度は凪のお仕事をルックバックフラッシュバックエコバック」

P「エコバッ”グ”な」

凪「231話で杏さん、こずえさんとゲーセンでUFOキャッチャーにへばりつく。271話でフリマの練習がてらかな子さんとショートコント。333話で裕子さんのぴにゃこらサイキックに翻弄され、366話で謎のマジシャンに飛び込み営業で即興漫才……」

P「こっちも懐かしいな」

凪「どう思いますか?」

P「どうって……それぞれの個性が出てて良いと思うけど……」

凪「はーちゃんのお仕事リストを見た後の凪のお仕事の圧倒的コメディリリーフ感……双子の姉妹でこうも違うものでしょうか? これは間違いなく陰謀でしょう。凪のオカンの第六感もそう言っています。もうカンカンですよ」

P「でもかな子とコントしたりマジシャンと漫才したりしたのは凪本人の判断なんじゃ……」

凪「シャラップ!(よく回るお口どすなぁ。いつまでも元気で羨ましいわぁ)」

P「翻訳めっちゃ悪意あるな」


凪「あまりにもはーちゃんのお仕事はキラキラ感に溢れ、凪のお仕事に無いイチャイチャ感に溺れ……凪は1つの仮説に至ったのです」

P「仮説?」

凪「はい。それがまさにタイトル回収。Pは凪にラブコメのヒロインは無理だと思っていますね? それ以外に考えられない」

P「いや、別に思ってないって……」

凪「本当ですか? 凪の目を見て言えますか? この泥棒猫」

P「ラブコメとか通り越して昼ドラだよ」


P「まあ凪がどうというより、颯がそういうのに向き過ぎてるってのは感じるな。キャラクター、距離感、性格、いろんな面でヒロイン感が強いから、結果的にはそういうお仕事が多くなるというか……」

凪「またPはそうやって目前の凪ではなくはーちゃんを祭り上げるのですね。いつか刺されても知りませんよ」

P「あ……悪い、そうだよな、今は颯より凪だよな」

凪「『颯より』とは聞き捨てなりませんね。この世にはーちゃんより優先されるべき物事はない」

P「お前わりと面倒くさいな」


凪「とにかく、凪は今日、証明のためにやってきたのです。正面から正直に勝利を掴むために」

P「証明……?」

凪「凪にもラブコメのヒロインのようなムーブメントができるということの証明です。御託を並べるつもりはありません。始めましょう。もちろんPが主人公ですよ」

P「え? 始める? 何を……」

凪「それでは凪のラブコメ、略してナギコメ、どきどきわくわくはじまりはじまり」

P「それだとラブの部分消えてるけど大丈夫? 凪とコメディって割と通常運行じゃない?」


~出会い編~


P「何? 出会い? もう始まってる?」

凪「今から凪とPが出合います。ラブコメは初登場時のインパクトが大切……ここはオーソドックスに通学路でぶつかることにしましょう。新学期、転校生、交差点、パンを咥えた美少……少女」

P(美少女って自分で言うのを躊躇ったのカワイイな)

凪「これだけでもう役満でしょうね。しかし、凪のラブコメ適性ならたちまち倍満です」

P「下がってるぞ、得点」


凪「凪はこちらから歩いてきます。Pはあちらから。交差点で死角からぶつかってしまいます」

P「まあ、よく聞くやつだな」

凪「スタート!」

P「はいはい……」トコトコ

凪『歩こう 歩こう あいむふぁいんせんきゅー ハンコをついたら賃貸契約 いいハコ作ろう新生活♪』

凪『おっと、使用料などが気になったそこのあなたは賢いですね。しかし、これはなんと凪の曲なのです。きっとジャスラックもバスジャックも無縁の生活が待っていることでしょう。照れますね』

凪『しかし、当たり前のように入っている「あいむふぁいんせんきゅー」という言葉、はうあーゆー? に対する返答をこれしか知らないあまりに、死にそうな顔をして「元気です」と言い張る日本人が多いのは困りものですね。これが日本の英語教育の限界か』

凪『凪の世代は「1185(イイハコ)作ろう鎌倉幕府」と記述する教科書が多数ですが……まさか未だにイイクニ作ろうなんて引きずっている人はいませんね? このビッグウェーブに乗り遅れたら幕府どころか悪夢を見ることになりますよ』

凪『悪夢といえばこの前、PヘッドがIヘッドになる夢を』

P「早く歩いてきてくんねぇ!?」


P「いつまで喋ってるの!? こっちはジャスラックだかバスジャックだか言い出した時には既に交差点で待ちぼうけですけど!?」

凪「Pはせっかちですね。釣りの基本は待つことですよ」

P「あとPヘッドがIヘッドになる話ちょっと気になるな!! 今度教えろよな!!!」

凪「ではそこで立っていてください。もう少しで凪がタックルしますから」

P「意図的にぶつかりに来るのはただの当たり屋じゃないか?」

ドンッ

凪『どこを見て歩いているのですか?』

P「歩いてねえんだよ」

凪『目はついていますか? 学校ではなく眼科に登校するべきでは?』

P「例え歩いててぶつかったとしてもその煽りは酷い」


凪「そうして教室にたどり着くと、ホームルームで先生が言うのです」

P「『今日は転校生を紹介します』だろ?」

凪『隣のクラスに転校生が来たらしいですよ』

P「会えねえ!! 『アンタは今朝の!』とか言ってもらえねえ!!!」

凪「都合よくヒロインがノコノコと来てくれるとは限りませんよ。徳の積みなおしですね」

P「じゃあ通学路でぶつかる必要もなかったんじゃ……」

凪「しかし、まだチャンスはありますよ。学校で自分のクラス以外の交友関係を増やす方法といえば……?」

P「あ……部活か!」

凪「そうです。Pは何部に入りますか?」

P「なるほど、選んだ部活にマネージャーとして来てくれるのか? じゃあ……サッカー部で」

凪「まあ凪は帰宅部なので残念ながら出会うことはありませんね」

P「何がしたいんだよ」


凪「そうして、なんやかんやでPと凪は知り合います」

P「99%詰んでたのによく知り合えたな。そこ詳しく描写してくれよ」

凪「どうせ家が近かったとか、そういうあれですよ」

P「違う方向から交差点に突入してたのに……?」

凪「家から10分通学路。普段と違う道を歩いてみれば、そこは幻想的なクロスロード」

P「通学路はいつも変わらないから通学路なんだが」


凪「さてさて、次は凪のことを深掘るイベントです。知り合いの女の子からヒロイン候補にジャンプアップ。主人公の心に刻まれるような出来事が起こるわけです」

P「イベント……学校行事とか?」

凪「ご名答です。Pは何か、好きだった学校行事はありますか?」

P「そうだな……」

凪「ゆっくりで構いません。誰しも数十年前の記憶を掘り起こすことは簡単ではないからな。すぐに思い出せるのなら感嘆ものです」

P「そんなに前じゃねえからな!」

凪「おや失礼」

P「じゃあ……定番だけど、修学旅行かな」

凪「では今回は文化祭にしましょう」

P「なんで意見を募ったの?」

凪「惜しくも当選を逃しましたね。今回の軍配はこちらに上がりました。グッバイ」

P「軍配は行事じゃなくて行司だろ」

凪「この小ネタを一瞬で看破してツッコミを入れるとは……才能に乾杯、凪は完敗」

P「おちょくってる?」


凪「筋書きはこうです。Pは自分のクラスの出し物を手伝っていましたが、休憩時間になったので校内を散策することにします」

P「はいはい」

凪「そこで、隣のクラスの出し物が『コスプレ喫茶』だったことを思い出します。何人かいる友人をからかってやるか……と思い、そこに入店すると、凪を見つけるのです」

P「わかったわかった。さっきは一言も発さないままに交差点でタックルを受けただけだったから、今回こそ主人公にならせてくれ」

凪「当然です。凪がPの期待を裏切ったことがありますか? わりとあるでしょうね。アイドルとして力をつける必要性を痛感する日々です。目指せトップアイドルのはーちゃんの隣にいる人。凪の戦いはこれからだ」

P「え? 終わった?」


~イベント編:文化祭~


P(終わってなかった。むしろ始まった。えっと……)

P『ふぅ……ようやく休憩か……やっぱり食べもの系は売れるな。一生分のたこ焼きひっくり返した……』

P『とはいえ、別に行くところもないしな……あ、そうだ、確か……』

P『そうだ、隣のクラスがコスプレ喫茶やってんだったな。冷やかしがてら行ってみるか……』トコトコ

P『お、ここか、入ってみよ。すみません』

凪『いらっしゃいませ。その顔は1名様ですね?』

P『顔で判断するなよ。失礼だよ』

凪『あいにく今、席が埋まっていましてですね』

P『お、そうなんだ、人気だな。何分待ちくらい?』

凪『540分待ちですね』

P『ディズニーランドか』


P『ありえねえだろ今いる客何時間粘るんだよ』

凪『ファストパスもありますが』

P『ディズニーランドか。寄せてくるな』

凪『高くつきますが、どうしますか?』

P『ここで揉めててもしょうがないし……いくら?』

凪『今日から1か月、凪に購買のパンを買ってくる権利を差し上げます』

P『パシリだ……』

凪『こんなに可愛い女の子に貢げるのです。しかも、気が向いたら一緒に食べてあげてもかまいません。格安ですよ』

P『わかったよ。それでお願い』

凪『1名様ご案内です。空いてる好きな席へどうぞ』

P『空いてんのかよ』


P『いや空いてんのかよ。詐欺だよ詐欺』

凪『ようこそコスプレ喫茶へ。メニューはこちらです』

P『まあいいや……さんきゅ。ところで久川さん、それは何のコスプレ?』

凪『「ウサミン星でアイドル仲間と飲み明かした翌朝、燃えるゴミの日だったことを思い出すも飲んでる最中に熱くなって服を脱ぎ散らかしていたのでとりあえずジャージだけ装備して外へ出たウサミン」です』

P『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権か?』


P『ただのジャージ姿じゃん。どうやって通したんだよその衣装』

凪『ただのジャージではありません。よく見ると10年前に刷新されたより前のデザインのジャージなので現役JKが持っていることはあり得ないジャージです』

P『もうやめてあげて』

凪『ところで注文は決まったのですか? しまった! と後悔しても下っ端の凪にはフォローできませんよ』

P『じゃあこの……「アイスティーとバニラアイスのセット」を1つお願い』

凪『ニンニクは?』

P『絶対に入れないで』


~~~~~



凪『お待たせいたしました。牛フィレ肉のステーキです』

P『頼んでない頼んでない!!!』

凪『おや……? 間違えました。これは凪のお昼ご飯』

P『ハイカロリーなランチだな』

凪『今度こそ、「午後の紅茶と明治エッセルスーパーカップ」……ではないですね。失敬。てへぺろ。「アイスティーとバニラアイスのセット」です』

P『台無しだよ』

凪『実は凪もちょうど、休憩に入ったところなのです。……相席をお願いしても?』

P『別にいいけど……いやもしかして目の前でステーキ食べるの? ちょっとやめてほし』

凪『このステーキを用意したのは誰だぁ!』

P『お前だよ』


凪『お味はどうですか?』

P『まあ、普通に美味しいよ。えっと……ステーキはどう……?』

凪『美味しかったですが、駐車場で隣の車の幅寄せが下手過ぎて乗り降りが大変でした。☆4です(笑)』

P『店側に責任がないタイプのクソレビューやめろ』


凪『さて、せっかく同じ席にいるのです。あることないこと話しましょう。都会の喧騒を抜けた先に君臨。運賃は0円でも純金の輝き。心の安らぎコスプレカフェ。あなたの悩みも軍人のごとくパーフェクトなHeadShotで感心が止まらないことでしょう』

P『久川さんは、その……ユニークだよね』

凪『このような正統派美少女を捕まえてユニークとは……凪だってスイーツのクリームをほおばり、翌日の体重にフリーズしてスリープする日もあるのですよ』

P『正統派美少女はそんなに次々と韻を刻まないと思うんだよな』

凪『まずはその認識を改めてもらう必要がありそうですね。そもそも凪にはかわいいかわいい妹がいます。目に入れても口に入れても布団に入れても痛くない』

P『そっか、久川さん、双子なんだっけ?』

凪『”凪”でいいですよ。いちいち確認するカロリーはお互い節約しましょう。デブ活の結末は手つかずの血圧に出くわすことになりますからね』

P『……わかった。凪さん』

凪『……まぁ、急ぐものでもありませんね。攻略されるか篭絡するか、デュエルスタンバイといったところでしょう』

P『?』


凪『ではお会計に移りましょう。オープンザプライス!』

P『なんでも鑑定団システムなの!?』

凪『じゃかじゃん。700円です』

P『よかった……法外な値段吹っ掛けられたらどうしようかと』

凪『そこに消費税70円、システム利用料300円、発券料200円、手数料250円、指名料360円、お通し代500円を加えて2380円ですね』

P『チケット代の謎の上乗せ代金やめて。あと指名してない』

凪『またのご来店、お待ちしています。都会のオアシスで』

P『オアシスで牛ヒレ肉のステーキ食べてた人は説得力が違うな』

凪『”フィレ”です』キリッ

P『うるせえ』


~~~~~



凪「イベント編はここまでです。いかがでしたか?」

P「最初の入るところからずっっっと思ってたんだけどさ?」

凪「はい」

P「コントだよこれ」

凪「コント? なんと。ほんとぉ?」

P「最初の『お、ここか、入ってみよ。すみません』とか自分で言ってて笑いそうになったわ」

凪「その割にはノリノリでしたね」

P「もういっそ恥じらいは捨てた方が乗り切れるかなと……」

凪「賢明で聡明な人生ですね」


凪「しかし、苗字呼びから名前呼びへステップアップでレベルアップ。てってれー。意味のあるイベントでしたよ」

P「ウサミンに流れ弾行ったりステーキ食ったりしたのは本当に無意味だろ」

凪「惚れましたか」

P「むしろウサミンが愛しくなったわ」

凪「残念ながらウサミンさんは攻略不可能キャラです。DLCを待ちましょう」

P「最初から思ってて言わなかったけど、ラブコメ漫画というよりギャルゲに寄ってきてる」

凪「そこに違いなどありはしません。時間もありませんから進みましょう、いよいよ初デートです。凪ルートに入るチャンスですよ。ETCカードを挿入してください」

P「そんな高速道路みたいなシステムで入れるの?」

凪「インターチェンジのように滑らかに、勇ましくデートへ挑みましょう」

P「コントにならなきゃいいんだけど」

凪「その発言はフラグですよ」

P「凪が気を付けてくれるだけでちゃんと進むのに」

凪「このコンクリートジャングルで思いやりなんて鼻をかむ道具にもなりはしません」

P「さっき都会のオアシスって言ってなかった? マンションポエムに一貫性がない」


~デート編~


P『集合時間の5分前……お、もういる』

凪『おや』

P『ごめん、待たせちゃった?』

凪『いいえ、凪は1時間前に到着して道行く人にラップバトルを仕掛けていました』

P『本当に何してるの?』

凪『今日は27勝31敗でしたね』

P『めっちゃ戦ってるんだけど。この街怖いよ引っ越したくなってきた』


凪『さて、本日はどうぞよろしくお願いします』ペコリ

P『こ、こちらこそよろしく』ペコリ

凪『まさか、たまたま凪がくじ引きで映画のペアチケットを当て、たまたま使用期限が今日までテスト期間とダダ被りで使えず、たまたま廊下で凪が落としたチケットをたまたま拾ったPが「この映画、気になってるんだよね」と発言し、たまたまその映画の上映が今日までで、たまたま部活の休みが重なっていて、「たまたまこの日、この時間にこの駅前で会えたらいいですね」という発言をたまたまPが覚えていて律儀に現れるとは』

P『ミラクルが折り重なりすぎだろ』


P『奥ゆかしいとかそういうレベルじゃないんだよ。デートに誘われてるって気づくまで数時間かかるわ』

凪『そもそも男がデートに誘うべき……という偏見はいけませんね。今や男女共同参画社会。キャリアウーマンも専業主夫も受け入れていきましょう。いえ、デートではありません、偶然出会っただけですが』

P『それで、なんていう映画だっけ?』

凪『劇場版・劇的ビフォーアフター~匠の意地と大家族の陰謀~』

P『俺そんなの見たがってたの? あの番組に映画にするほどの深みある? サブタイトルつけるほどの紆余曲折ある?』

凪『四の五の言わずに鑑賞タイム。新たな感情が誕生して感動の晩鐘が鳴り響くかもしれません』

P『そうかぁ~?』


~映画終了後:喫茶店~


凪『さて、映画を見た男女がすることといえば? そうです、感想戦です……が』

P『めっちゃいい映画だった……』グスッ

凪『おおう……凪は若干引いています。Pのその豊かな感受性に。ただ嫌いではない。泣きたい時に泣き、笑いたい時に笑い、刻みたい時に刻む』

P『喜怒哀楽にラッパーの精神を混ぜるな』

凪『思いのほか、楽しめましたね』

P『そうだな。凪さんはどのシーンが印象に残った?』

凪『匠が溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙なしでは見れなかったですね』

P『リフォーム失敗してない?』


凪『さて、こうしてゆっくり話す機会を得たのです。互いについて知ってきましょう。好きなマンションの立地は?』

P『立地の話はニッチだな』

凪『キュン……』

P『今のレベルの韻で評価上がるの? 今までそういう表情無かったよね? 正直ちょっとときめいた』

凪『まぁ、計画通りですね』

P『その発言も照れ隠しだと思ったらかわいく思えてきたな……』

凪『今は凪の話ではありません。凪が質問しているのです。質問に質問で返すなと教わらなかったのですか?』

P『質問では返してないけど』

凪『もう1度だけ聞きます。好きなマンションポエムのフレーズは?』

P『さらにニッチになって返ってきた』


P『凪さんは休日は何してるの? 趣味とかある?』

凪『む……結局凪の質問には答えず仕舞いですか。まあいいでしょう。凪の趣味はインターネットでのレスバです』

P『ヒロインとして考えうる限り最低のムーブメントだ』

凪『Pの趣味はどこでのレスバですか?』

P『レスバ前提やめない? 現代人は君が思ってるほど戦いに飢えてないよ』


凪『ふむ、ここらでさらに仲を深めるためのアクシデントが欲しいところですね』

P『え?』

凪『アー、ヒールノ カカトガ オレテシマッター』

P『今日スニーカーじゃん』

凪『……』

P『……』

凪『アー、スニーカーノ ヒモガ ヌスマレテシマッター』

P『どういう状況!? というかもうちょっと感情込めてくれない!?』

凪『しかし偶然にもポケットにひもQを忍ばせていたので事なきを得ました。せんきゅーひもきゅー』

P『ミラクルに身を委ねすぎだろ』


P『どう考えても強度足りてないでしょ。事なきを得てはいないよ』

凪『アー、ウスギデ キタカラ サムクナッテキター』

P(演技レッスン増やそうかな……)

凪『しかし偶然にもポケットにハバネロパウダーを忍ばせていたので事なきを得ました。ハバグッナイ』

P『さっきから自己解決してんじゃねぇよ! 助けさせろよ!!』


凪『先回りしてフォローするのがデキる男ですよ。精進しましょえふッ……!!!』

P『ほらハバネロパウダー直接舐めるからむせてる……』サスサス

凪『アー、ムリ』

P『いろいろ限界になったアーニャみたいだ』

凪『いろいろ限界になったアーニャさんを見たことがあるのですか』

P『アーニャだって辛いときには悪態つきながらウォッカ煽ったりするだろ』

凪『なんという偏見。レイシストに久川の血を分けるわけにはいきませんね』

P『でも今の発言は「つらい」と「からい」のダブルミーニングで「辛い」を使ったぜ?』

凪『キュン……』

P『ちょっとずつ好感度の上げ方がわかってきた気がする……攻略してるような飼いならされているような……』


~~~~~



凪『そんなこんなあってお別れの時間です。今日は楽しませていただきました。レベルで言うとビニール袋をノラ猫だと思って追いかけ回している時間くらい楽しかったですよ。はしゃぐなはしゃぐな』

P『後ですごいガッカリするやつじゃん』

凪『しかし、凪は言うのです。「(今帰るとちょうど風呂掃除と皿洗いを任される頃合いなので)帰りたくない……」と』

P『打算~~~』

凪『年頃の男女がこの時間に2人……するべきことと言えば……』

P『ま、まさか……!』

凪『サイゼリヤで駄弁りましょうか』

P『健全~~~』


~~~~~



凪「というわけでデートはここまでです。凪のヒロイン適性がイヤというほどアピールできてしまっていますね。ほくほくです」

P「漫才の相方としての適性は嫌というほどアピールできてたけど……」

凪「さてさて、この調子でPは何度もデートを重ねていき、映画の半券を重ねていき、ラップバトルを重ねていきます」

P「ラップバトルは必須科目なの?」

凪「そしてとうとう、告白イベントです。来るところまで来ましたね。ひゅーひゅー」

P「主にステーキ食ってるとことハバネロ舐めてるとこしか見てないから実感薄いな……」

凪「元も子もないことですが、告白まで至っているのにヒロイン適性が無いとは言わせません。アピールはもう済んでいる。ちゃっちゃとコクってこの茶番を終わらせましょう」

P「凪が始めたんだからね??? 茶番とか言うのやめよう???」


~告白編:校舎裏~


凪『お待たせいたしました』

P『いきなり呼び出してごめん……!』

凪『問題ありません。ちょうどはーちゃんに色目を使う男どもにラップバトルを仕掛けていました』

P『レスバとラップバトル以外に自己表現の手段がないの?』

凪『果たし状を受け取った時は驚きましたが……これはつまりタイマンということでしょう。男女の力の差で諦めるのは怠慢と言わざるを得ないでしょうね。いざ尋常に』

P『真逆の方向に勘違いしてる』


凪『おや、違いましたか、それならいったい……「劇場版・劇的ビフォーアフター2~カムバック匠VSダークネス匠~」の上映は来月ですし……』

P『続編出るほど売れたの???』

凪『さあ、本題に入りましょう』

P『お、おう……ええと……凪さん……いや、凪!』

凪『……』

P『好きです! 付き合ってください!!!』


ドサッ


P『え?』

凪『え?』


ドアから顔を覗かせている久川颯「はわわわわわわわわわわわ//////////」ガタガタガタガタガタガタガタガタ


P「やっっっっっっっべぇ!!!!! ち、違うんだ颯! これは」

凪『ようやく、凪の気持ちに気が付いたのですね――』

P「いったん解除しろその二重カギ括弧!!!!!」


凪「まあ、流石にこれ以上続けるのは得策ではありませんね。街中にふと現れる幻想のビル。つぼみのアイドルが大きく巣立つ場所。そんなメゾン・ド・事務所がはーちゃんの墓標になることは望みません。姉妹仲の故障を見過ごす度胸もありません」

P「颯! 起きろ颯!」

颯「おし、お、おしあわせ、おしあ、お、おしあわせに……」ガクガクガクガク

P「颯ー!!!」


P「凪! お水持ってきて!!!」

凪「いらっしゃいませ、1名様ですか?」

P「接客マニュアル今いらないから!!! はやく!!!」

凪「どうぞ、シェフの気まぐれ水です」

P「気まぐれによって水の何が変わるのかわからんけどサンキュ!!! 大丈夫か颯」サスサス

颯「ううぅ……」

凪「大丈夫ですかはーちゃん。はうあーゆー?」

颯「うぅ……あいむふぁいんせんきゅー……」

凪「これが日本の英語教育の限界か……」

P「無駄にしゃべらせてやるなよ」


颯「ふぅ……」

P「落ち着いたか?」

颯「うん……Pちゃん、はー、応援するね……!!!」

P「全然落ち着いてなかった」

凪「切り替えの早さははーちゃんの長所ですが、早とちりしがちな部分はよくないですね」

P「いいか、颯。今の告白はウソなんだ」

颯「ウソ……!? なーを騙してたってこと!? Pちゃんサイテー!!!」

P「どうすりゃいいんだよ!!!」

凪「仕方がありません。ここは双子のテクノロジーを見せてあげましょう。おでことおでこをぶつければ、たちまち記憶が共有できます」

P「テクノロジーを明らかに凌駕してるような」

凪「えい」

コツン

颯「あうっ……なーんだ、そういうことだったんだ! なーったら……はーから見たらちゃんとかわいい女の子だよ♪」

P「双子テクノロジー半端ねえ」


P「ま、颯が来たからこの話は切り上げよう。今度、そういう仕事も探してみるよ。……まあ現場で凪がふざけたら結局はコントのワンシーンになっちゃうけど」

凪「心配ご無用、妄想、卒業」

P「心配しかない……」

颯「ってことは、Pちゃんははーのことはそういう目で見てるってことー? えへへ……照れちゃうなー♪」

P「はいはい、もう10個くらいの年を重ねてから言おうな」

颯「むー! そうやって子ども扱いする! ……はーは本気なのに」ボソッ

P「え? 何か言ったか?」

颯「うるさいうるさい!」

P「えー……?」

凪「ふむ。凪のヒロイン適性は置いておいて、Pのハーレム主人公属性は存分に示されていますね。その難聴を武器に何兆の女子を泣かせる勘定ですか? 流石の凪もがくがくぶるぶるマンマミーヤ」

P「ちょくちょくマリオ混ざるんだよな」


凪「時にPよ」

P「どうした?」

凪「我らが久川姉妹を子ども扱いしていますが、大人には子どものお腹を満たしてあげる義務があることを存じ上げていないのですか?」

颯「確かに! そうだそうだ!」

P「うわ、迂闊なこと言ったっぽいな……まあいいや、夕飯は奢ってやるよ」

颯「やったー! 流石Pちゃん! わかってるぅ! なーもナイスアシスト!」

凪「当たり前です。はーちゃんのお腹の具合に気を配るのは、はーちゃそすこすこ組合の一番槍として当然のことですからね。えへん」

颯「知らない団体出てきたけどスルーしておくね!」


P「ただ、すまん、もうちょっと仕事で手が離せないから、デリバリーでもいいか? 凪、ピザでも調べてくれ」

凪「全く……この時間まで仕事を溜め込むとは」

P「誰のせいだと思ってる?」

凪「おや、ピザ屋さんは大人気のようですね」

P「あ、待ち時間とか長い感じか?」

颯「どれくらい待ち?」

凪「540分待ちですね」

P「ディズニーランドか」

颯「……」

P「ん? どうした?」

颯「Pちゃんとなー、まるで……」

P「まるで……?」

凪「まるで……?」

颯「漫才コンビみたい!」

P「ズコー」

凪「ズコー」


颯「ほらほら! 息ピッタリだね! はーも負けてらんないな!」

P「そういうところは見習わなくていいから……」

颯「なんでやねん!」ビシー

P「タイミングよくわかんないけど可愛いからいいか!」

凪「これは強力なライバル出現ですね。だがしかし、M-1王座を手にするまで……凪とPの戦いは続く……!」

P「今更だけどアイドルとプロデューサーだからね!?」

凪「おや、凪にお笑い界のスターは無理だと思っていますね?」

P「そういう形でタイトルを回収しなくていいから!」

凪「とりあえず相方指名料として360円を振り込んでおいてください」

P「指名してない!!!」



おわり




ありがとうございました

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2 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 06:20:43   ID: S:GuxXOU

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