―騎士団駐屯地―
団長「素振り始め! ――えいっ!」
騎士A「えいっ!」
騎士B「えいっ!」
騎士C「えいっ!」
団長「気合を入れろ! 剣に魂を込めろ! 僅かな気の緩みが死を招くぞ!」
えいっ… えいっ… えいっ…
団長(こうして剣を振っていると昔を思い出す……)
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~
少年「素振りするぞー!」
少年「えいっ! えいっ! ええいっ!」
少女「お、やってるやってる」
少年「やあ、おはよう」
少女「あたしもやるー!」
少年「いいよ、一緒にやろう!」
少女「将来の夢はー?」
少年「もちろん騎士団に入団して……騎士団長になる!」
少女「じゃ、あたしもー!」
少年「ダメだよ、騎士団長は一人しかなれないよ」
少女「じゃ、あたしは副団長!」
少年「それならいいかな!」
アハハハ…
~
騎士「団長、北西の町が山賊に襲われているとの情報が」
団長「分かった、すぐに出撃する」
騎士「はっ!」
団長「全騎士に告ぐ、これより山賊討伐に向かう!」
団長「ただちに出撃準備を開始せよ!」
「「「はっ!」」」
団長(山……か)
~
少女「あの山、キレイだよね~」
少年「うん、それにあの山には神様が住んでるって伝説があるんだ」
少女「神様!? 行きたい行きたい!」
少年「だけど険しいから、父さんと母さんは絶対入っちゃダメだっていってる」
少女「つまんない……」
少年「でも、いつか入ってみたいね!」
少女「うん、絶対入ろう!」
~
団長「では出撃!」
ヒヒーン…
ドカラッ! ドカラッ!
ドドドドドド…
若騎士「あの……団長」
団長「なんだ?」
若騎士「団長ってご結婚はされないんですか?」
団長「なんだいきなり」
若騎士「あ、いや、いい相手はいないのかなーって」
団長「他人の心配をするより、自分が彼女の一人でも作ったらどうだ」
若騎士「へへ、すみません」
ドカラッ! ドカラッ!
若騎士「今日の相手は山賊ですけど……山賊って山に住んでますよね」
団長「ああ」
若騎士「昔、女神が住んでるって山の言い伝えを聞いたことがありましてね」
団長「女神?」
若騎士「どんな願いでも叶えてくれるってんですよ。団長ならどうします?」
団長「願いか。私ならおしゃべりな部下を黙らせてくれと頼むかな」
若騎士「す、すみません」
団長「冗談だ。で?」
若騎士「ただし、その女神が一筋縄じゃなくてですね」
団長「ほう」
若騎士「例えば、誰かを生き返らせて下さいと頼めば、自分か、あるいは他の大切な誰かが死ぬ」
若騎士「大金を願ったら、なにか高価な持ち物を失う、とかそういうことばかりするんですよ」
団長「代償が必要というわけか」
若騎士「そうです。女神様も意地悪っすよねー、んなもん無しで叶えてくれりゃいいのに!」
先輩騎士「コラッ、なにしてる!」
若騎士「す、すみません!」
先輩騎士「申し訳ありません、団長。私の教育が行き届いてないばかりに」
団長「いや、そんなことはない。戦いの前にリラックスすることも必要だ」
若騎士「でしょ?」
先輩騎士「図に乗るな!」
ドカラッ! ドカラッ!
~
少年「え、山に入る?」
少女「うん、一緒に入ろうよ!」
少年「まだ早い気がするけど……もう少し大きくなってからでも」
少女「大きくなったらっていつよ? そんなんじゃいつ登れるか分からないよ」
少年「でも……」
少女「騎士になりたいなら勇気を出さなきゃ!」
少年「……うん、そうだね。いいトレーニングになるだろうし、二人で行こう!」
少女「決まりね!」
ザッザッ…
少年「はぁ、はぁ、はぁ……なんて険しいんだ」
少女「待ってよー!」
少年「ボクの手につかまって!」サッ
少女「う、うん」
ガシッ
少年「引っぱるよ!」グイッ
少女「ありがとう……」
少年「もう少しで休めそうなところに着くよ」
少年「だいぶ登ったね」
少女「うん!」
少年「いい景色だなー」
少女「ホント……あんな遠くまで見えるよ」
少年「じゃ、ここでランチといこうか」
少女「二人で作ったおにぎりをね!」
モグモグ…
少年「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
少女「え? あっちの方がもっと見晴らしよさそうじゃない? 行ってみようよ!」
少年「いや、あっちは足場が悪い。やめておいた方が……」
少女「大丈夫だってー、行こうよ!」タッ
少年「あ、待って……」
少女「早くー、こっちこっち!」
パラ…
少年「あっ、危ないッ! 崩れる!」
少女「えっ!? きゃああああああっ!」
少年「――大丈夫かい!?」
少女「う、うぅ……」
少年「!」
少年「足が……!」
~
騎士「前方に山賊の集団を確認しました」
団長「よし、全員突撃! 一人も逃がすんじゃないぞ!」
先輩騎士「はっ!」
若騎士「待ってましたぁ!」
ドカラッ! ドカラッ!
ドドドドドド…
~
少女「アハハ……あたしの足……すごいこと、なってるね……」
少年「……!」
少女「もういい、あたしを置いて帰って……、これじゃ動けないし……」
少年「そういうわけにはいかないよ!」
パァァァ…
二人「!」
女神「こんなところに迷い込む人間がいるとは久しぶりのことだ」
女神「どれ、願いを一つだけ叶えてやろう。ただし、それ相応の代償は払ってもらうがな」
少年「あなたは……山にいるという神様……!」
女神「どうする? ないのならば消えてしまうが」
少年「だったら……この子の足を治して欲しい!」
少女「えっ!?」
女神「それは容易いが……その代わり、お前の足がその女の子のようになるが、それでもよいか?」
少女「ダ、ダメ……! そんなのダメ……!」
少年「お願いします!」
少女「な、なんで……ダメだよ……。騎士になるんじゃないの……」
少年「ボクが騎士になりたいのはね、君を守りたいからなんだ」
少女「!」
少年「だから、こういう場面は願ってもないことなのさ。女神様……どうか彼女の足を!」
女神「分かった。すぐに治してやろう」
~
団長「貴様が頭目だな。終わりだ」
頭目「ちくしょう、舐めんじゃねえや!」
団長「はあっ!」
ズバンッ!
頭目「ぐえぇ……」
団長「舐める? 悪党のツラなど舐めたくもない」
頭目「女のくせに……なんて……強さだ……」
ドチャッ…
若騎士「つ、強い……」
先輩騎士「団長の強さは歴代騎士団長の中でもトップクラスといわれてるからな」
若騎士「どうしてあんなに強いんです?」
先輩騎士「死に物狂いで鍛錬したらしい。過去に余程のことがあったのだろう。語ってはくれないがな」
団長「山賊の掃討は終了した。住民保護は付近の兵に任せ、撤収するぞ!」
「「「はっ!」」」
ドカラッ! ドカラッ!
―騎士団長の自宅―
団長「ただいま」
恋人「やぁ、お帰り。今日はどうだった?」
団長「山賊を討伐してきた」
恋人「そうか、よかった。怪我はない?」
団長「山賊如きに後れは取らんよ。ところで、足は……」
恋人「それがね……ほら、この通り!」ヨロ…
団長「立てるようになったのか!」
恋人「長い間のリハビリがやっと実を結んだんだ。だからもう、君が気に病む必要はないんだよ」
団長「うん……」
恋人「こうして立てるようになったら……言いたいことがあったんだ。聞いてくれるかい?」
団長「……なに?」
恋人「ボクたち、結婚しよう!」
団長「!」
恋人「君はボクが足を動かせなくなったことを気にして、一生懸命特訓して騎士になり」
恋人「騎士団長にまでなってくれた。ボクの夢を叶えてくれたんだ。本当にありがとう」
恋人「だけど、だからこそ言えなかった……」
恋人「ボクが歩けないことを気にしてる君には、“結婚しよう”と言うことができなかった」
恋人「だけど、もう気にする必要はないんだ。ボクはもう歩けるんだから」ヨロ…
団長「うん……!」
恋人「返事は……どうだろう?」
団長「私もぜひ……あなたの夫になりたい」
恋人「ありがとう、嬉しいよ」
団長「私は……立派な騎士団長になれただろうか?」
恋人「もちろんだよ。これからも国の平和を守って欲しい」
完
これで終わりです
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