神琳「お目覚めですか。雨嘉さん」
雨嘉「ん……ごめん神琳。わたし、いつのまにか寝ちゃってた」
神琳「いえ。こうして膝の上で寝息を立ててる雨嘉さんが子猫みたいで、わたくしもつい起こしそびれてしまいました」
雨嘉「わたしの頭、重かったよね……大丈夫?」
神琳「そうね、もう痺れて一歩も動けないわ。雨嘉さんのせいですよ?」
雨嘉「本当にごめんね、神琳。わたし、どうしたら……」
神琳「ふふ……それでは雨嘉さん、そのままお顔を横に向けてくれません?」
雨嘉「え、こう?」 ゴロン
神琳「はい。そのままじっとしていてくださいね」
神琳「……やっぱり。このままだといけないわ」 サワ
雨嘉「神琳……? なにする、つもり……?」
神琳「耳かきですよ、雨嘉さん♪」
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雨嘉「えっ……? い、いいよ。ちゃんと自分でしてるから……!」
神琳「嘘はいけません。雨嘉さん、最後にしたのはいつですか?」
雨嘉「アイスランドにいたころは、いつも莉芬……妹にやってもらってたから。日本に来てからは、正直あんまり……」
神琳「あら、とても姉妹仲がよろしいのね。ですが百合ヶ丘のリリィたるもの、身だしなみはきちんとしなければ他校のリリィに示しがつきません」
神琳「それに……ふふっ。雨嘉さんのお耳、とっても掃除のしがいがありそうです♪」
雨嘉「あ、あんまり見ないで……! 恥ずかしい、から……!」 サッ
神琳「隠してはダメですよ雨嘉さん。手元が狂って怪我をするといけませんから、しっかり確認させてください」
雨嘉「に……日本は暑くてジトジトしてるから、自分だと綺麗に取れなくて……!」 ググ
神琳「それをわたくしが綺麗にして差し上げる、と言っているのです。観念してくださいね?」
雨嘉「うぅ……分かった。そこまで神琳が言うなら……」
神琳「それでは参りましょう、雨嘉さん♪」 スッ
雨嘉「白いふわふわがついてて可愛い……神琳、それはなに?」
神琳「これは竹製の耳かき棒です。大きな汚れをかき取ったたあと、梵天……このふわふわで細かい汚れを取り除きます」
雨嘉「へえ……日本人は何にでもこだわっててすごいね」
神琳「では、このまま動かないでくださいね。目は閉じていても構いませんよ」
雨嘉(……さっきまで気にしてなかったけど、神琳の太ももがほっぺに当たって柔らかい感触が……)
雨嘉(それに神琳、上等なお茶みたいに甘くていい匂いもする……ちょっとドキドキしてきた、かも)
神琳「では失礼します。痛かったらすぐに言ってくださいね?」 ズ…ズズッ…
雨嘉(き、きたっ……! 神琳のが、わたしの中に入ってきてるっ……!) ゾク
神琳「……やはりアイルランド生まれと言っても、ルーツは東洋人ですね。乾いた垢が何層にも折り重なってるわ」 カリ…
雨嘉(意識してない所に当たるから、くすぐったい……! 自分で動かすのと全然ちがう……っ!)
神琳「最初は奥の大きな汚れから剥がしていきましょう。こそばゆくてもじっと耐えてくださいね?」 カリリッ…ペリ…
雨嘉(あっ、あっ……! そこ、壁をこすられるの気持ちいいっ……! 声、漏れちゃうっ……!) ビクッ
神琳「うふふ。手を口にあてて、一体何を我慢しているんですか?」 ペリッ…カリリッ…!
雨嘉「……~~っ! ふっ……うぅ……っ! しぇんりん、はや、くぅ……っ!」
神琳「じらしているわけではないのですけれどね。ほら、もうすぐですよ……!」 ペリ…ペリリッ…!
雨嘉(匂いも、声も、体温もっ……全部神琳に好き勝手にされて、おかしくなっちゃう……!) ゾクゾク
神琳「はい、綺麗に取れましたよ雨嘉さん♪ 残りの壁に残った小さめの汚れも、丁寧に取り除いていきましょうね?」
雨嘉(と、取れた……? なんだか空気が直に当たって、じんわり温かい感じがする。これ、癖になりそう……)
神琳「まあ……耳かきしただけなのにお顔が緩みきってますよ。見ているのがわたくしだけでよかったですね……ふふ」 カリ…ペリ…
雨嘉(うぅ、神琳に見られるのが一番恥ずかしいのに……! 神琳、ズルい……!)
神琳「入口のあたり……汚れやすい場所ですから、こうして円を描くように、時間をかけて念入りに……」 カリリッ…
雨嘉(っ……壁伝いにゆっくりなぞられるの、好き……)
神琳「耳の外側も、見えづらい位置に溜まっていますよ……うふふ。子猫の耳みたいに、じっとりと熱くて汗ばんできていますね」 カリ…ペリ
雨嘉「そ、れは……神琳に、ずっと撫でられてるから……んんっ!」
神琳「……ふう。これであらかた大きな汚れは掻き出せました。あとは産毛についた細かい欠片を取り除いて行きましょう」
雨嘉「あ。それ、さっき言ってた梵天……ふゃっ!? ふあぅっ!」 クシュ
雨嘉(ふわふわの柔らかい毛がっ、耳の中でぐるぐる暴れて、あ、あっ……! くすぐったくて、死んじゃうぅっ……!)
雨嘉「はーっ、はーっ……お、終わった……? しぇん、り」
神琳「いいえ。これから最後の仕上げです♪」 フゥーッ
雨嘉「っ!? ~~!!」 ゾクゾク
神琳「こうして吐息で軽い汚れを吹き飛ばすのです……聞こえてますか、雨嘉さん?」
雨嘉(も、もう……こんなの体験したら、戻れなくなっちゃうっ……!) ガクガク
神琳「掃除をしたのですから、以前よりもよく聞こえているはずです。気分はどうですか?」
雨嘉「は……あ、ぅ……」 トロン
神琳「…………」
神琳「この程度で飛んでしまうなんて許しません。早く起きないと……食べてしまうわよ」 カプ
雨嘉「はぅっ!? ~~っ!! だ、だめぇっ神琳……! わたしの耳、汚い、からぁっ!」
神琳「なんのために掃除をしたと思っているんです? それに雨嘉さん、あなたに汚いところなんてないわ」
雨嘉(耳かきしたあとの、敏感になってるとこっ……神琳に、這われてぇっ……!)
雨嘉「も、もう……っ、十分綺麗になったから! わたし大丈夫だからっ……!」
神琳「なら一言、『やめて』と言えば済む話ではありませんか。違います?」
雨嘉「そ、れはぁ……!」
神琳「うふふっ、心配なさらなくても大丈夫です。もう片方の耳が残ってますから♪」
雨嘉「────!!」
雨嘉(あ、あ……! そうだ、まだ反対側の耳も……!)
神琳「ほら、顔をこちらに向けてください?」 グイ
雨嘉(!! 目の前に、神琳のおへそ……! それに、甘い匂いもさっきより濃くなって……!)
神琳「……もう逃げられませんよ」 ボソ
雨嘉「──っ! ──、──っ!!」
雨嘉(あれから……もう、どれくらい経ったの、かな……) クタァ
雨嘉(もう、気持ちよすぎて、頭がふわふわして、きた……)
神琳「ようやくおとなしくなりましたね。そのままもう一度寝てしまっても構いませんよ?」
雨嘉(神琳の脚も、指も、おなかも……全部温かくて、沈みそうになる……)
雨嘉「ねえ、神琳……」
神琳「はい。なんでしょう」
雨嘉「最近ね……みんなすごいんだよ。アルトラ級のヒュージもどんどんいなくなって、ネストも減ってきて……」
神琳「ええ。皆さんも、それに雨嘉さんも頑張ってますよ」
雨嘉「きっと、ヒュージの殲滅は間もなくだと思う……だから、この世界からヒュージが消えて、平和を取り戻したら……」
雨嘉「わたし、神琳の故郷に行きたいな……一柳隊のみんなともいいけど、神琳さえよかったら……ふたりきりで……」 スゥ
神琳「……そうですね。いつかきっと、そんな日が来ればいいですね」
神琳「おやすみなさい、雨嘉さん。いまはまだ、夢の中の台北市を二人で巡りましょう……?」
梨璃「わぁぁ……! 見てくださいお姉様、雨嘉さんがとっても気持ちよさそうな寝顔になってます!」
夢結「梨璃。聞こえているから、あまり大きな声を出さないで頂戴。彼女に気づかれると厄介だわ」
梨璃「いいなぁ。わたしも神琳さんに耳かき頼んでみようかな? えへへ……」
夢結「……あの程度、わたしだって……」 ボソ
梨璃「あれ、どうしたんですかお姉様? あ! ひょっとしてお姉様も一緒に───」
夢結「梨璃、このあと時間あるかしら」
梨璃「へ?」
夢結「あとでわたしの部屋へ来なさい。わたしが本物の耳かきというものを教えてあげるわ」 キリッ
二水(このあと耳から血を流して気絶した梨璃さんが医務室へ担ぎ込まれましたが、それはまた別のお話です……!)
おわり
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神雨はいいぞ
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