虹ヶ咲×スタートレック:ローワーデッキ
スタトレ知らないとさっぱりな誰得ss
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~シャトルの操縦席~
マリナー「現在位置不明! 時代も不明! Mクラス惑星の大気圏に突入!!」
テンディ「地表に多数の生命反応! でもワープ発明前の文明みたいだよ! あと、なんか地形に見覚えあるような……」
マリナー「もう機体が限界! 爆発する!」
マリナー「あー! もう仕方ない! 緊急転送の準備! 地上に降りるよ!」
テンディ「ちょっとぉ!? 艦隊の誓いは!? ワープ以前の種族に接触していいの!?」
マリナー「そんなの[ピー]ソ喰らえ! 命には変えられないでしょ!! 現在高度1万2千メートル!! シャトル爆発まで10秒!!」
マリナー「座標は……知らんし! でっかい島の上! 転送開始!!」
パァァァァァァ(転送ビームに包まれる音)
ドォォォォォォン……
~地上~
侑「あれ? なんか変な音聞こえなかった?」
歩夢「そお? 私は聞こえなかったけど」
歩夢(侑ちゃん今日もジャージをワンピースの海軍みたいに肩掛けしてる…)
パァァァァァァ(マリナーとテンディが実体化する音)
ゆうぽむ「!?」
侑「え!? なに!?」
歩夢「人が突然現れた!?」
侑「外国のお姉さんに…緑のお姉さん!?」
侑「すごい! 今の手品どうやってやったんだろう!?」トキメキー
マリナー「ふぅ……なんとか無事に降りられたね。シャトルは爆散したから痕跡は残らないよ……って」
マリナー「ちょっとぉ!? あんた何その着こなしヤバっ!!」ガシッ
侑「え!?(っていうか近!)」カタツカマレ
歩夢「(この人いきなり侑ちゃんに馴れ馴れしく……!)」
マリナー「マジ、イケてる!! 袖通さないで肩にかけてるだけなのって大昔の[ピー]ソイカしたワルって感じでカッコいいよねーー! ファスナーつけてわざわざ改造したの!? わかるぅー! 2369年頃の制服のデザインマジイケてたもんねーー! ヴォイジャーだって地球と連絡つくようになってもこの制服使い続けたんだよ! 勿論、新しい制服をレプリケートするエネルギーが勿体無いなかったってのもあるだろうけど、絶対このデザインも気に入ってたハズ! っていうかあんたマジ[ピーーー]てるね! 私なんか腕まくりしてるだけで営倉入りになったんだよ! もしランサムがあんた見つけたら軍法会議にかけるよ、軍法会議! あ、ランサムってのはうちの副長。マジ[ピーーーー]、[ピーーー]! っていうか今、何年? ここどこ? こんなところに宇宙艦隊の基地あったんだ! それとも他の船がいるの?」
侑「宇宙艦隊……?」
マリナー「私はセリトスから来たの!」
侑「セリトス……?」
歩夢「ってカリフォルニアの……?」
マリナー「そ! カリフォルニア級!」
マリナー「で、時間の歪みに捕まって光子魚雷で歪みを閉じようとしたらターゲットスキャナーがロックできなくて! しょうがないからシャトルで近づいて魚雷を撃ち込もうとしたんだけど失敗しちゃって! 一緒に歪みに巻き込まれたから近くにいるかも! もしくは100年前か後、もしくは1000年前か後とか! あれ? あんた妙に若くない? メアリー・スーみたいにティーンエイジャーで艦隊に入ったの? っていうかこの街並みファーストコンタクト前の時代ぽくない? ベル暴動の時代みたい! ミレニアム・ゲートがありそう! こういう星珍しいねー!」
ゆうぽむ「???」
テンディ「……ねぇマリナー? ちょっとおかしくない?」
マリナー「何ビビってるのテンディ。不時着した先に艦隊士官がいたんだからこの幸運を喜べっての! 一体いつの時代に飛ばされたのかってヒヤヒヤしたけど思ったより近い時代でよかったじゃん!」
テンディ「だって、彼女の着てる服、微妙に違くない? 宇宙艦隊の制服じゃないよ」
マリナー「何言ってるの! どこからどうみても艦隊の制服だよ!」
ピポポ
ランサム『セリトスからマリナー少尉』
マリナー「お?」
ランサム『ここはどうやら21世紀初期の地球のようだ。我々は軌道上にいる』
マリナー「はぁ!?」
ランサム『とにかく、今から君とテンディ少尉のコミュニケーターにロックして収容する』
マリナー「ちょっ!? マジで!? っていうか人に見られてるんですけど!」
ランサム『いいから、これ以上見られて文化汚染を増やす前に戻ってこい!』
マリナー「ちょい待ち! 今離れるかr…」
ランサム『転送開始!』
パァァァァァァ
マリナー「え!? もう!? ちょっ待って待って待って近くに人近くに人…!」
侑「(え、なにこの光)」パァァァァァ
歩夢「侑ちゃん! 危ない!」ダキッ
侑「(歩夢まで光に包まれ…!)」
テンディ「あああ、ダメダメダメダメ」
マリナー「ヤバイヤバイヤバイヤバイ」
パァァァァァァ(転送ビームに包まれる4人)
かすみ「え……! 侑先輩に歩夢先輩!? 消えたっ!?」
~地球軌道上 U.S.S.セリトス 転送室~
パァァァァァァ(実体化する4人)
歩夢「え…!? えっ!?」
侑「突然場所が変わった……!?」
テンディ「……うわぁ、やっちゃった」
マリナー「ちょっ嘘でしょコレ……」
ゆうぽむ「……」アゼン
テンディ「ハァイ、私テンディ。突然こんなことになっちゃって驚いてるよねぇ……大丈夫よ、大丈夫。何も危険はないからね。あ、私? 私の色が気になる? 私オリオン人なの、って言ってもわからないよねぇ~……ねぇどうしようマリナー!!」
ピョコン
マリナー「転送室からブリッジ、問題発生!」
マリナー「女の子を2人誘拐しちゃったよ!!!!」
OP
♪♪Theme from STAR TREK:Lower Decks
Special Guest Star
“Yuu Takasaki”
as
Herself
Special Guest Star
“Ayumu Uehara”
as
Herself
and
Special Guest Star
“Kasumi Nakasu”
as
Herself
Based Upon ”STAR TREK“
Created by
Gene Roddenberry
OP
♪♪Theme from STAR TREK:Lower Decks
Special Guest Star
“Yuu Takasaki” as Herself
Special Guest Star
“Ayumu Uehara” as Herself
and
Special Guest Star
“Kasumi Nakasu” as Herself
Based Upon ”STAR TREK“
Created by Gene Roddenberry
“Stolen Idol”
フリーマン『艦長日誌。セリトスは時間の歪みに巻き込まれ、過去の地球にタイムスリップしてしまった。船は幾つかの主要システムにダメージを受け、ワープ可能になるまで数日かかる。時間の歪みは既に消滅している為、元の時代に戻るためには別の方法を採らなければならないが、恒星の重力場を利用したスリングショット効果を用いることになるだろう。以前、カーク船長が数度に渡り行ったことで有名な方法だ。船体には大きな負荷がかかることが予想される為、修理を念入りに終えるまで出発はできない。しかし、今はそれよりも深刻な問題が発生した。この時代から招かれざる来訪者を迎えてしまったのだ。転送装置が機能不全を免れていたのが仇となったようだ』
~会議室~
フリーマン「はぁ……つまりこういうこと?」
フリーマン「彼女が着ている服が艦隊の制服に似ていたから、艦隊士官と勘違いしてベラベラと喋りかけた挙句に、転送時に密着していたから2人も一緒に転送してしまったと」
マリナー「簡単に言えばそういうことかな。あ、こっちの子は自分から抱きついてきたの。勇気あるぅー」
フリーマン「もう……どうしてあんたはそう……」
マリナー「だって不可抗力だよ! このデザイン見て! どうみたって宇宙艦隊の制服だと思うじゃん! それに艦級と艦名が地名、っていうのも問題あると思う!」
フリーマン「黙りなさいマリナー! 元はと言えばあんたのせいでこうなったのよ! 不時着したそばから現地人にそこまで密着してるなんてことあり得る!? 転送の瞬間を人に見られてもこれ以上あんた達をそこに置くよりはマシと思ってすぐ転送したのに完全に裏目にでたじゃないの!」
フリーマン「ああ……もう少し早くあなた達のシャトルを捕捉できていれば……上原歩夢さんに高咲侑さん? この度はうちの少尉が大変な迷惑をかけてごめんなさい。深くお詫びします」
歩夢「あ、あのぉ……」
侑「私達、まだ状況がよく飲み込めてないんですけど……私達は誘拐されたんですか? っていうかここはどこなんですか!? 皆さんは宇宙人!?」
フリーマン「ここはセリトス号という宇宙船の中で、地球の軌道上。でも安心してちょうだい。あなた達からみて異星人のクルーもいるけど、私達はあなた達の敵ではないし、私はあなた達と同じ人間よ。ただ……我々のセンサー機能が低下していたで転送時にあなた達が近くにいることが分からなかった為、結果的に誘拐も同然のことをしてしまったのは弁解の余地もありません。しかし、これは事故だったの、これだけは信じて欲しい」
侑「はぁ……」
マリナー「私は待てって言ったのに聞かないからだよ! やっぱ調整不足じゃん! センス!オアーの!」
フリーマン「いい加減にしてマリナー! 口を挟まないで!」
フリーマン「……ええと、そして、非常に言いづらいけど……あなた達は今とても微妙な立場に置かれています。その……なんと言ったらいいのかしら」
マリナー「あーもう! 回りくどいこと言ってないでさっさと言っちゃいなって! 私達は24世紀から来た宇宙船で、あんた達は事故とはいえ未来の一部を見てしまったから二度と家に帰すわけにはいかないって!」
フリーマン「口を慎みなさい! 他に言い方があるでしょう!?」
侑「え……!」ガーン
歩夢「うそ……」ガクブル
フリーマン「待って、まだそうと決まったわけじゃないの」
フリーマン「これから我々のデータベースで、あなた達が歴史上重要な人物か調べます。もしあなた達がいなくなることで歴史に影響を与える様なら、あなた達を地球に送り返します」
マリナー「逆に言えばこの子らが歴史に影響を与えない非重要人物ならこのまま誘拐を続行するってことでしょ!」
フリーマン「ベケット!!」
歩夢「そんな……もう家族にも同好会の皆にも今日子ちゃん達にも会えないの……?」
侑「そんなの一方的過ぎます! 私達を家に帰してください!!」
フリーマン「勿論そうしたいわ。その為に最大限努力もします。でも、ごめんなさい。歴史を守ることは何にも勝る最優先事項なの」
侑「そんなの私達には……! 関係ありません!」
歩夢「ここでの事は絶対誰にも話しません……それでもダメですか……?」
フリーマン「……私達には謝ることしかできない。本当にごめんなさい。この船にいる限りあなた達は大切なゲストです」
侑「……」
歩夢「……」
フリーマン「ベケット・マリナー少尉。テンディ少尉と共に、彼女達がこの船にいる間、快適に過ごせるように尽力しなさい」
マリナー「丸投げってことね了解でぇーす。長寿と繁栄を~🖖🏽」
フリーマン「だからそういう皮肉っぽいバルカン式挨拶やめなさいって言ってるでしょ!」
ーーーーーーーーーーー
マリナー「さぁついて来て、部屋を用意するからね。あ、でも、にぎやかな方が好きなら私達の寝床に案内するよ、ローワー・デッキの二段ベッドにね。シャワー室が近いから裸のマッチョが拝めるかもよ。でもそういうのはあんた達の好みじゃ……なさそうだね。それに、いきなり未来の宇宙船に放り出されて落ち着かないだろうから、個室がいいか」
テンディ「ハァイ、私ドゥバナ・テンディ、って自己紹介二回目か。私達が案内するからね。ほら、リラックスして、リラックス~」
侑「……」
歩夢「……」
マリナー「その…本当にごめんね。私、なんて謝ったらいいか……きっと未来を気にいるよ、なんて言うつもりはない。誰だって故郷が一番に決まってるし……まぁ20世紀からクジラと一緒についてきた人もいるけど……」
侑「……あなた達が悪い人じゃないってのは何となくわかります」
歩夢「侑ちゃん……」
侑「だから、お世話になります。今はそうするしかないと思うし。ね、歩夢」
歩夢「そう……だね。納得はできないけど……でも侑ちゃんと一緒だったからそう思えるよ」
マリナー「まだ希望を捨てちゃダメだからね。帰れる可能性は十分にあるよ。艦長はいけ好かない奴だけど、さっき言ったことは本当だから」
マリナー「改めてよろしくね。私、少尉のベケット・マリナー。下っ端だけど甘く見ないでね。下っ端は下っ端でもスーパー下っ端だから!」
テンディ「同じくドゥバナ・テンディ少尉。って三回目~」
侑「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の高咲侑です」
歩夢「同じく上原歩夢です」
マリナー「スクールアイドル! あんた達そうなんだ!」
テンディ「スクールアイドル? って何? 知ってるのマリナー?」
マリナー「21世紀初頭に発生したアイドルの形なの! 伝説のμ’sくらい流石に私も知ってるよ!」
マリナー「あのカークだってμ’sのファンだったっていう噂だよ! ラブアローシュートはコンスティテューション級のシールドをも貫く……あくまで噂だけど」
侑「ええ!? スクールアイドルって未来でも有名なんだ! すごーい!」
歩夢「本当、信じられないね」
マリナー「あんた達もテンションアゲアゲの超クールなパフォーマンスができるってこと!? うわ~! 見てみた~い!」
テンディ「私もそのスクールアイドルっていうの見てみたーい!」
侑「私はみんなのサポートをしていて、スクールアイドルじゃないんですけど! でもうちの同好会のメンバーは皆んな可愛くて最高なんですよー! 特にこの歩夢が!」
歩夢「はは……」
マリナー「そんな最高のスクールアイドルを地球から盗んでしまったなんて大ごとだよ! あんた達がこの船にいる限り快適に過ごせるように尽くすし、帰れるように最大限の努力をするよ!」
侑「ありがとうございます……っていうのも変かな? それにしても」
マリナー「何? そこのドアが気になる? ただのパターンバッファの保守用通路だから大して面白くないよ」
侑「いえ、皆さん日本語上手だなぁって。言葉が通じるだけでも安心感が全然違いますよ」
マリナー「はは! 日本語なんてわかんないよ! ぶっちゃけクリンゴン語より難しいし!」
テンディ「だよねぇ~。私もアカデミー時代に地球の言語を色々調べてみたけどさっぱり」
ゆうぽむ「ええ?」
マリナー「ほらこれ。このバッジ。これが一つあれば一定範囲内の距離にいる人が喋る言葉を自動的にお互いが理解できる言語に翻訳してくれるの。ま、特殊な言語は翻訳できないこともあるんだけど。タマリアンとかタクサーとか。あ、あと、ソーリアンの舌のチッとかコンって音とか。私にはあんた達が連邦の言葉(英語)を喋ってるように聞こえてる」
侑「ええ! すごいすごい! 似たような技術は今もあるけど、こんなに滑らかに翻訳されてるなんて! 未来ってすごいんですね!」
マリナー「使われてるマトリクスを完成させたのは日本人だよ。今から150年くらい後にね」
侑「へぇ~そういう話、璃奈ちゃんが聞いたら喜ぶだろうなぁ」
歩夢「そうだね」
侑「っていうか! 最初は驚いたけどテンディさんは異星人なんですよね! 私、異星人に会うのは初めてなんです!」
テンディ「はは、そりゃそうでしょ。侑ちゃん面白い~」
侑「こう言っちゃ失礼かもしれないんですけど…あんまり地球人と変わらないんですね」
テンディ「そうだよ~、元は虫とか爬虫類とか哺乳類とか色んなエイリアンがいるけど、ヒューマノイドに進化した種族って実はあんまり変わらないのよね~」
マリナー「実はそれには重大な理由があるんだよ! 古代の最初のヒューマノイド種族が銀河中に自分のDNAをばら撒いて生命の進化を促そうとしたの!!」
侑「ええ!? すごーい! SFみたい!!」
歩夢「(侑ちゃんもう馴染んでる……っていうか外国人や異星人の、しかも未来から来たお姉さんとまであっという間に仲良くなっちゃうなんて……)」
マリナー「きっと、まだまだ驚くことがあるよ? とりあえず客室を用意するから。フードレプリケーターやソニックシャワーの使い方を教えないとね」
テンディ「その前にマリナー? 医療室に行ってDr.タアナに健康診断と予防接種をしてもらわなきゃ。この時代の人には免疫の無い細菌があるかも」
マリナー「あーー……確かに。ニャンコ先生のとこに行くのはダルいけど」
マリナー「でも……二人にはさらなる驚きを提供できるかもよ」ニヤリ
~医療室~
タアナ「ミャァァァォォォォ……」
タアナ「おっと失礼。お前さん達かい? 予定外のお客さんってのは」
ゆうぽむ「ね……! ね……! ね……!」
ゆうぽむ「猫!?」
テンディ「Dr.タアナはカイティアンなの」
侑「すごい…! 宇宙には本当に色んな人がいるんですね……!」トキメキー
歩夢「か……カワイイ!」
タアナ「ちょっとアンタ! いきなりそういうこと言うのは失礼だろう!」
歩夢「ご、ごめんなさい!」
タアナ「いいんだよ。お前さんも突然未来から来たエイリアンと出会うなんて[ピー]ソ面倒くさい経験して戸惑ってるだろうしね。これからは気をつけな」
歩夢「は、はい」
タアナ「ほらテンディ! ボサっとしてないでトリコーダー寄越しな!」
歩夢「(何というか……)」
侑「(優しいのか厳しいのかわからない人だなぁ)」
タアナ「ふむ……健康状態に異常無し。さぁ、ちょいと注射するよ」プシュ プシュ
ゆうぽむ「(……!)」
侑「全然痛くない……」
マリナー「ハイポスプレーは針を使わないからね。似た技術はこの時代に既にあるんじゃない?」
タアナ「さぁ、これで艦内を大手を振って歩けるよ。デノビュランバクテリアに感染して[ピー]ソ悲惨な死に方することもない」
マリナー「よーし! それじゃお待ちかね! あんた達のホテル・カリフォルニアに連れて行くよ!」
侑「おーっ!」
歩夢「……」
マリナー「(テンディ、テンディ)」ヒソヒソ
テンディ「(どうしたのマリナー、急に小声で)」ヒソヒソ
マリナー「(二人の前で、将来地球が第三次世界大戦に突入してくって話はしたらダメだからね)」ヒソヒソ
テンディ「(ああーー、了解)」ヒソヒソ
~客室~
マリナー「……そ、水は使わないの。超音波が汚れを落とすから。以上がソニックシャワーの使い方ね。で、次にレプリケーターだけど」
マリナー「例えばあんた達が、紅茶を飲みたいとする。アールグレイの!」
マリナー「そういう時はここに向かってこう言うの。『コンピューター、紅茶、アールグレイ、ホットで、ミルクなし、砂糖は一つ』」
ピーポポ
シュゥゥゥゥゥゥ……
歩夢「すごい!」
侑「紅茶が出てきた!? え!? どこから!?」
テンディ「分子を合成して、大抵のものは何でも作れるの」
マリナー「コーヒーが飲みたい時は『いいこと? あと一回し言わないわ。コーヒー! ブラック!』って言えばいい」
マリナー「とにかく何か食べたり飲んだりしたいときは望むものをコンピューターに頼めば合成してくれる。大抵のメニューは何でもあるからね」
テンディ「食べ残しや食器は、レプリケーターに戻せばまた分解されてエネルギーに戻るから」
侑「うーん……これは想像を超えてるなぁ」
歩夢「これじゃ料理しなくなっちゃうね」
マリナー「実際、ウチらの時代じゃ、料理は偏屈な人か変に達観した一部の人しかやらない趣味になっちゃってるしね」
マリナー「まっ、天然の食材に慣れてるあんた達の舌を満足させられるかは保証できないけど、そこは我慢して!」
マリナー「さぁて! 次はお待ちかね! この船で一番イケてる所に連れてってあげる!」
侑「え!? どんな所だろう!」
~ホロデッキ~
マリナー「ほら、ここ」
侑「何というか」
歩夢「何もありませんね」
マリナー「驚くのはまだ早い……コンピューター! ハワイのビーチを出して!」
ピーポポ
シュゥゥゥゥゥゥ
侑「うわっ!?」
歩夢「また場所が変わった!」
侑「また転送ですか!?」
マリナー「違う違う。これはただの立体映像。ただし触れるし、触感も本物と区別はつかないけどね」
侑「映像!? これが!?」
歩夢「すごい……砂のさらさらした感じもちゃんとするし水も冷たい……」
侑「すごいすごい! ハワイってこんな所なんだ! 初めて来たよ!」
マリナー「詳しい原理の説明は省くけど……とにかく光子とフォースフィールドとホロデッキマター……さっき見せたレプリケーター技術の応用ね、の組み合わせで、ほとんどどんなものでもシミュレートできるの」
マリナー「それこそ遊びから危険な訓練まで、あらゆる事に使えるんだよ! シャーロック・ホームズになってモリアーティと戦ったり、ホーキング博士とポーカーをやったり、軌道スカイダイビングをしたり!」
侑「あらゆる事……」
テンディ「あ、でも間違っても『ラザフォードトレーニング』は起動したらダメだからね~」
マリナー「テンディ、余計なこと言うんじゃないよ。ほら! どこかあんたの行きたい場所どこでも言ってごらん!」
侑「どこでも!? そんなー! 一ヶ所だけなんて選べないよー!」
マリナー「はは、別に一ヶ所だけじゃなくたっていいって! 順番に好きなところ行けばいいんだし」
侑「それじゃ……コンピューター! 地球のダイバーシティ東京プラザ周辺を出して! 2020年頃の!」
ピーポポ
シュゥゥゥゥゥゥ
歩夢「!!」
侑「すごい……本当に出た」
歩夢「何だか変な感じ……帰ってきたみたい」
マリナー「へえ? これがあんた達の地元?」
侑「本物と見分けがつかないよ……歩夢! あっち!」
歩夢「侑ちゃーん! 待ってよー!」
侑「初めてせつ菜ちゃんを見たときの階段! こんなところまでちゃんと再現されてる!」
歩夢「(せつ菜ちゃんの『CHASE!』を聞いた場所……私と侑ちゃんの始まりの場所……)」
歩夢「(もう二度と……ここに行くことはできないかもしれないんだ……)」
歩夢「(いや、ここだけじゃない。皆との思い出の場所にもどこにも……)」
歩夢「ううっ……」フラッ
侑「歩夢!? 大丈夫!?」
マリナー「どうした!? 気分悪い!?」
歩夢「いえ……ただちょっと疲れただけ……大丈夫です……」
マリナー「部屋に戻って休んだほうが良いよ。ごめんね、この状況でどこでも好きなところ、なんて言うべきじゃなかったね。私、デリカシーなかったよ」
侑「歩夢……ごめん。私、軽率だった」
歩夢「ううん……」
マリナー「歩夢を部屋に送ってくよ。侑、あんたはどうする?」
テンディ「あ、ホロデッキもっと見たいなら、私が付き添うよー!」
侑「あ、私も一緒に部屋に……」
ピポポ
『テンディ少尉。至急医療室まで出頭せよ』
テンディ「あ、ごめん……急な仕事が入っちゃった。私も行かないと」
侑「……私、もう少しここに残ってていいですか? もうちょっと探検したくて」
テンディ「うーん、でもマリナー。いきなりホロデッキに一人で残しちゃっていいの?」
侑「少し……一人になりたいんです。ダメですか……?」
歩夢「(侑ちゃん……)」
マリナー「まぁいいか、安全装置は承認コードがないと外せないようにしてあるし。何かあったら、『コンピューター! プログラム終了!』って叫びな」
侑「歩夢、ごめん。私はもう少しここにいるから」
歩夢「うん。私は大丈夫だから、侑ちゃんは楽しんで」
マリナー「OK! それじゃ2時間くらいしたら迎えにくるよ」
テンディ「じゃぁまた後でね、侑ちゃん」
侑「はい!」
侑「……」
侑「(行ったね)」
侑「さて……」
侑「コンピューター! 操船の訓練用プログラムはある?」
ピーポポ
LCARS「訓練プログラムへのアクセスはレベル1以上の承認コードが必要です」
侑「うわ……そんなに甘くはないか……」
侑「コンピューター! セリトス号の内部を出せる?」
ピーポポ
LCARS「訓練プログラムへのアクセスはレベル1以上の承認コードが必要です」
侑「うーんダメか……やっぱりゲストが何でもホイホイアクセスできたらダメだもんね」
侑「……ん? そういえばさっき……」
侑「コンピューター! ラザフォードトレーニングを起動して!」
ピーポポ
LCARS「『ラザフォードトレーニング・ベータ2.5』を起動します」
シュゥゥゥゥゥゥ
バッジー「ハハ! 僕はバッジー! 僕とレッスンする?」
侑「うわぁ何これかわいい!」
侑「ねぇ、あなたは何ができるの?」
バッジー「宇宙艦隊に必要なあらゆる訓練をさせてあげることができるよ? さぁ、僕とレッスンする?」
侑「よし、ねぇバッジー……?」
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
~夜 客室~
マリナー「それじゃ、明日の朝また来るよ。何かあったら通信で呼んでね。そんじゃ、おやすみ~」
ゆうぽむ「おやすみなさい」
侑「ふぅ」
歩夢「……」
侑「大変な一日だったね」
歩夢「そうだね……」
侑「惑星連邦に宇宙艦隊かぁ、すごい時代がくるんだなぁ。何百光年も遠くに行けて、色々な人達が種族の壁を越えて手を取り合ってる」
侑「私達の時代はジョイポリでVRゴーグル付けたりするのが、未来の人は『コンピューター、プログラム開始!』なんだもん。科学の進歩ってすごいなぁ」
歩夢「うん……」
侑「歩夢? 大丈夫?」
歩夢「うん平気……でも……これから私達どうなっちゃうんだろう……」
侑「そうだね……でも、歩夢の隣には私がいるよ」
歩夢「うん。ありがとう、侑ちゃん」
侑「ほら、見て歩夢。窓の外」
歩夢「うわぁぁ」
侑「月が見えて星々が見える……はは、かすみちゃんの髪飾りみたい」
歩夢「本当に宇宙にいるんだね……」
侑「そうだね……ああ、地球だ……うわぁ、綺麗だなぁ」
歩夢「本当。あんな綺麗なところに私達は住んでるんだ」
侑「あの星にこれまでに色んなスクールアイドルがいて、みんなが星になることを目指してたと思う。でも」
侑「ホントに星々の世界に来ちゃうなんて思ってもみなかった……」
歩夢「侑ちゃん……?」
侑「なに?」
歩夢「侑ちゃんは私達の世界よりこっちの世界の方が良いと思う? この星々の世界が」
侑「もちろん魅力的だよ。でも私たちの世界はあの下にある。そうでしょ? 歩夢」
歩夢「うん……」
侑「歩夢、大丈夫だからね」
侑「絶対に大丈夫」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
TWO DAYS LATER……
~朝 食堂~
テンディ「ラザフォード、昨日はありがとうね。侑ちゃんと歩夢ちゃんのスマ……えーーーーと……何だっけ。とにかく21世紀の通信情報端末のエネルギー供給用ケーブルを作ってくれて」
ラザフォード「いやいや、古代の技術を弄れて楽しかったよ!」
ラザフォード「でも、あれはネットワークに繋がってることが前提の機械だろう? この時代の情報通信インフラへの接続は出来ないはずだけど」
テンディ「ストレージに保存されてる写真や動画を見たかったみたい。いろいろ見せてくれたの。歩夢ちゃん、スクールアイドルっていうのやってるんだって! 歌って踊ってすごくかわいかったー! でも一番すごいと思ったのは侑ちゃんと歩夢ちゃんの友達の優木せつ菜ちゃん! 彼女、ハイEの音を出してるのよ!? 短剣を胸に突き刺して死んだカッシーリアン・オペラのプリマドンナみたい! あと、はんぺんっていう猫の写真も見せてくれたのー! あー! 今度は猫もいいかもーー!!」
ラザフォード「そして今度は猫に『猫』って名前つけるのかい? やめといた方がいいと思うよ……君は直属のボスも猫なんだし。それよりゲストの様子はどう? 情緒不安定になったりしてない?」
テンディ「歩夢ちゃんは塞ぎ込みがちで無理してると思う。なんとか地球に帰してあげたいけど……」
ラザフォード「やっぱり、歴史に影響を与える人物であることって、そうそうないからね」
テンディ「私達、バンクーバーに異動させられそうになっただけでもあんなに寂しかったのに、歩夢ちゃんの気持ちを考えたら居ても立ってもいられないよぉ~!」
ラザフォード「早ければ今日中に帰還の準備が整っちゃうし、覚悟はしておいた方がいいかもよ」
テンディ「その点、侑ちゃんの方は大丈夫そうなのよねぇ。なんて言うか侑ちゃんって神経図太いと言うか……ほら、あんな感じ」
侑「ホントなんですってーー!」
ジェニファー「うっそぉ! 本当に!?」
ワイワイ ガヤガヤ
テンディ「普通、たった二日間であんなに馴染める!? しかも未来からきた宇宙船に誘拐同然に連れてこられて! 私だってこの船に馴染むのにもっと時間かかったよ!?」
ラザフォード「まぁ、そういう人もいるよ」
テンディ「でも、なんか妙なのよね~」
ラザフォード「妙って何が?」
テンディ「侑ちゃんと歩夢ちゃんって、一緒にいる時はすんごく仲が良いの! もう夫婦かって思うくらい!」
テンディ「でも、歩夢ちゃんが精神的に参ってるっていうのに侑ちゃんはあまり構わずに艦内見学に精を出しすぎなの! もっと一緒にいてあげればいいのに!」
ラザフォード「うーん。侑は好奇心がすごく旺盛みたいだね。未来のテクノロジーに興味津々なんだよ。僕だってもし突然、例えば29世紀や32世紀に飛ばされたら絶対冷静じゃいられないよ!」
テンディ「そんなの絶対……私もそう! でも……侑ちゃんはそういうのじゃないよきっと」
侑「そうなんですよ! 私のお母さんが若い時にカーンを見たことあるって! でもおかしなこと言ってたなぁ。髪をもっと短くすればシャーロック・ホームズに似てるとか」
バーンズ「あ、それちょっとわかるかも。私、20世紀の地球のバンドとか好きなんだけど、そのくらいの時代のホームズのドラマ見たことあるの」
テンディ「カーンの話してる! 私も混ざりにいこうかな!」
テンディ「あ、でも私このあと医療室行かないといけないんだ……どうしてゲストの世話役を仰せつかってるのに、私だけ通常任務を振られてるの!?」
ラザフォード「あ、マリナーが来たよ」
テンディ「あ、そろそろ 行かないと! 私の朝食あげる!」
ラザフォード「はは、だから二人分もいらないって……おおー! ヨーグルトー!」
マリナー「はいはいガールズトークで盛り上がってるところごめんねー。おら! どきなジェン!」ゲシッ
マリナー「おはよ、侑。調子はどう?」
侑「マリナーさん、おはようございます! 気分は上々ですよ」
マリナー「歩夢からこっちにいるって聞いてね。歩夢は部屋で休んでるってさ」
侑「はい……やっぱり気分が悪いみたいで……」
マリナー「そう……追い討ちをかけるようで悪いけど、まだあんた達を帰す理由が見つかってないんだ。このままだと……一緒に未来に来てもらうことになる」
侑「そう……ですか……」
マリナー「最後の最後まで希望を捨てないでね……それで、今日はどうする? どこか行きたい所ある?」
侑「あ、じゃあホロデッキ行ってもいいですか?」
マリナー「よっぽど気に入ったみたいだね。OK! それじゃ行こうか! あ、でも……ホロ中毒には気をつけなよ」
テンディ「マリナー! 私は午前中任務が入っちゃったから、あとで侑ちゃんと歩夢ちゃんの部屋に行くねー」
~ホロデッキ~
侑「マリナーさん、歩夢のことなんですけど……」
マリナー「どうしたの?」
侑「すごく落ち込んでて……良かったらマリナーさん、話を聞いてあげてもらっていいですか?」
侑「マリナーさんすごく話上手だし、私じゃうまく慰められそうにないから」
マリナー「私から見たら、歩夢にはあんたの方こそ必要だと思うけどね」
侑「……」
マリナー「でも、まぁ、あんたがそう言うならちょっと話してみるよ。本当はヴェロシティ教えてあげようと思ってフェイザー銃持ってきてたんだけどね」
侑「ヴェロシティ?」
マリナー「ラケットの代わりにフェイザーを使うテニスみたいなスポーツ!」
マリナー「まっ、それは後にするとして……ちょっと席外すけど、一人で大丈夫?」
侑「はい! ありがとうございます!」
~客室~
ピーポポ
歩夢「(誰かきた……?)」
歩夢「……どうぞ」
プシュゥゥゥ
マリナー「よっ、元気? 侑があんたの事、随分心配してたよ!」
歩夢「マリナーさん……」
歩夢「いえ……別に……大丈夫です」
マリナー「全然大丈夫な顔してないって! そりゃ、まだあんた達を地球に帰す理由も見つかってないし無理もないけど……」
マリナー「何か思うことがあるなら言ってみな? どんな恨み言も受け止めるよ? それくらいしか私にはできないし……」
歩夢「いえ……」
歩夢「……」
歩夢「侑ちゃん……適応が早いなって思って……もう21世紀の事もスクールアイドルのことも忘れて、24世紀に夢中みたい」
歩夢「昨日だって食堂で、斑点模様のお姉さんや触角の青いお姉さんとすごく仲良さそうに話してて……初対面なのに」
マリナー「ついさっきもそうだったよ。そうだねぇ、侑はまるで天性の女タラシって感じがするし、順応が早すぎるよ」
マリナー「で、あんたはそんな侑を本気で愛してるってわけだ?」
歩夢「えっ///」
マリナー「見てればわかるよ」
歩夢「たぶんそう……なん、だと思います……というか」
歩夢「私そんなにわかりやすかったですか……?」
マリナー「そりゃぁもう。私が侑にウザ絡みしてるときのあんたの顔ときたら。鏡で見せたいくらいだよ」
歩夢「うう……醜い独占欲はもう捨てたつもりだったのに……」
マリナー「侑を独占したかったの?」
歩夢「あ、えーと……前に侑ちゃんとせつ菜ちゃんーー同じ同好会の子なんですけどーーが、人気のないところで抱き合ってるのを見ちゃって……それで気持ちが爆発しちゃって……私は侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたいから侑ちゃんも私だけの侑ちゃんでいてって押し倒しちゃったことがあって」
マリナー「ははっ、マジで!? あんた最高!」
歩夢「え?」
マリナー「おとなしい奴だと思ってたけどやるじゃん!」
歩夢「そんなことないです……侑ちゃんに迷惑かけちゃっただけ……」
マリナー「あのねぇ、相手の迷惑考えてちゃ、恋なんて成就しないよ! もっと利己的にならなきゃ!」
マリナー「そりゃ、私以外の女と喋らないで! なんて言うのは行き過ぎだし、束縛彼女は嫌われるよ? でも、あんた自身の恋心まで押し殺す必要はないよ! 歩夢はもっとワガママ言っていいって!」
歩夢「!」
歩夢「……そう、でしょうか?」
マリナー「絶対そうだって! 24世紀に行くにしろ、この時代に残るにしても、あんたと侑は一緒なわけだし。これからチャンスはいくらでもあるよ!」
歩夢「……なんか、意外です」
マリナー「何が? 私って思ったより聞き上手だった? マシンガントークが得意な人間は、聞き上手なの。これ、覚えておきな」
歩夢「てっきり、面倒くさい女だなって適当に流されるのかなって。相手の迷惑になってるんだから潔く身を引けって」
マリナー「はっ! そういうのは複雑で奥が深い性格って言うの! それも含めてあんたなんだから良いじゃんそれで!」
マリナー「っていうか! あんた達ってスーパー幼馴染なんでしょ!? それだけ一緒にいて感じる気持ちは絶対本物だからもっと自信持ちなって!」
マリナー「それに、私の見立てでは侑はあんたの告白を100%断らないよ! 今すぐ気持ちを伝えるべきだって!」
歩夢「はは。そう、だといいんですけど……」
マリナー「おっと? その口調は信じてないね? OK! じゃあ私の秘密を教えてあげる!」
歩夢「ええ?」
マリナー「あんた達がここに来た時、うちの艦長に会ったでしょ? あれ実は私のママなの」
歩夢「そうなんですか? え? でも何で秘密にしてるんですか?」
マリナー「だって艦長の娘だからって周りから特別扱いされるのはまっぴら御免! バレたら誰も私に[ピー]ソビッチって言わなくなるよ!」
マリナー「とにかく、上官のケツ舐めしてる連中におべっか使われるなんてお断り!」
マリナー「これ絶対秘密だからね! 誰にも喋っちゃダメ。ただし」
マリナー「もしあんたが侑にフラれたら、腹いせにこの秘密を艦内に言いふらしていいよ」
歩夢「マリナーさん」
マリナー「まっ、そうはならないけどね! 私の見立てを信じなって!」
歩夢「ふふっ、ありがとうございます」
マリナー「お、ようやく笑ってくれたね。侑以外の人と話してるときに」
歩夢「え、そんなに私笑ってなかったですか」
マリナー「あんたは巧妙に隠してるつもりだろうけどね。私にはお見通し。何てったってスーパー少尉だから」
歩夢「うう……恥ずかしい……」
プシュゥゥゥ
侑「あ、歩夢。マリナーさん」
テンディ「ハァイ、マリナーもここにいたのね」
歩夢「おかえり侑ちゃん」
マリナー「よっ! 一応、歩夢と話してみたよ。まぁ役に立てたかはわからないけど……」
歩夢「いえ……少し楽になりました……胸に溜めてたこと言えたから」
歩夢「不思議だけど、親しい仲間よりも会ったばかりの人の方が言えることもあるんだね」
侑「えー、どんな話してたの?」
マリナー「守秘義務ってやつだよ! でも、こんな状況でも歩夢の悩みは、あんたなんだねぇ、侑」
侑「え?」
歩夢「もー! 言わないでくださいよマリナーさん!」
マリナー「ごめんって! あー、でも私、本物のカウンセラーじゃないから守秘義務もなかった~ってことで」
侑「あ! じゃあ、歩夢も少し元気になったみたいなので、今日のランチ皆でどうですか? 食堂で!」
マリナー「いいね! よし行こう行こう!」
テンディ「あー! 私も女子会で盛り上がってガールズトークやりたーい!」
~艦内通路~
テンディ「そうホントなのー! その人、私の目の前でアセンションしちゃったのよー!? しかもキスしてる最中に! 宇宙は巨大なコアラの背中の上で均衡を保っているとか言ってたの!」
侑「いやいや意味わかんないですって! そんなことあるんですかぁ!?」
マリナー「宇宙は広いからねー! あんた達を一度、Qに会わせてみたいよ!」
テンディ「いやぁ……それはやめておいた方がいいんじゃない?」
侑「Qってなに?」
歩夢「アルファベットじゃない?」
侑「……」
マリナー「侑、ターボリフトはこっちだよ」
侑「あ! あそこって私たちが最初に転送された部屋ですよね!」
マリナー「そうだよ、でも別に面白いところは……」
侑「ちょっと見ていいですか!?」タタタ
歩夢「あ、待ってよ、侑ちゃん!」
マリナー「あ……! ま、いいか」
~転送室~
侑「わぁぁぁ、これが転送装置かぁ。最初に来たときは、とにかく面食らっててよく見てなかったなぁ」
マリナー「でも、見ても別に面白いものじゃないでしょ?」
テンディ「そうよねぇ。でも一番最初に訪れた部屋ってちょっと特別に思っちゃうじゃない?」
マリナー「さ、行こ? お腹空いちゃったよ」
侑「そうですね……」
侑「ごめんなさい!!」ガバッ
マリナー「ちょっ!? フェイザーを!」
侑「本当にごめんなさい。でもタイムリミットはもうすぐなんでしょう?」ピッピッピッピッ
侑「蒸発したくなければ動かないでください。殺傷にセットしました。手は見えるところに」
マリナー「おいコラ[ピー]ソ侑どういうつもりだビッチ」
歩夢「そうだよ侑ちゃん…何をしてるの…?」
テンディ「ふ、ふざけてるだけだよね? 侑ちゃん? はは、笑える~、最高。 ほら、危ないからフェイザー置いて……」
侑「いいから、歩夢。こっちに来て」
歩夢「う、うん……」
侑「そこの転送台に乗って」
マリナー「逃げるつもり? 転送装置の動かし方もわからないくせに」
侑「あなた達のホロデッキって本当に便利ですよね。知りたいことは何でも教えてくれました。もっと監視をしっかりしておくべきでしたね」
テンディ「うわぁ……彼女ヤバいよ。モリアーティみたい。あれ? でも19世紀人のモリアーティがエンタープライズを乗っ取るよりは、21世紀人の侑ちゃんがセリトスの転送室乗っ取る方が簡単?」
マリナー「……ホロデッキに一人にし過ぎたか」
侑「きっと、マリナーさん達は思いやりで言わなかったんだと思いますけど、地球のこれからの歴史も少し知っちゃいました」
歩夢「……?」
マリナー「……馬鹿なことはやめな。仮にあんた達が地球に降りたとしても、またすぐ見つけるよ。そしたらまた転送で逆戻りだよ」
歩夢「でしょうね。だからマリナーさんとテンディさんには24世紀に戻るまで人質になってもらいます」
マリナー「私達を人質にして、歩夢を欠いた状態でセリトスが24世紀に戻るように迫るつもり?」
マリナー「でも甘いよ。うちの上官達がいくら間抜け揃いでも、ただの学生にしてやられるほど艦隊士官はやわじゃない」
マリナー「あんたにスーパーヴィランが務まると思う? あんたが使えるのはこのちっぽけな転送室だけ。連邦宇宙船の全能力に対抗できると思う?」
侑「そんなのやってみなくちゃわかりません。それに船の指揮官相手に交渉を迫るなんて非効率的な真似はしません。ブリッジは無許可の転送が行われたことに気づくこともないでしょう。クルーから艦内警報の修理は後回しにされてるって聞いたし、バッジーから貰ったこのプログラムがあればオーバーライドが可能です」
テンディ「バッジー!? ラザフォードトレーニングは起動しちゃダメって言ったのに! っていうか安全装置はかかってたハズでしょ!? 安全装置を解除しなくてもバッジーってここまでできるの!? 直接、命に関わることじゃないから!? あー! 私が余計なこと言っちゃったからだどうしよー!!」
マリナー「なるほど? やたらホロデッキに行きたがったのも、クルーと仲良くなってたのも計算ずくだったってわけ」
侑「後は、あなた達に黙っててもらえればいいんです。本当は全部こっそりできればよかったんですけどね、あんまりチャンスがなくて。準備が整ったのもついさっきだし」
侑「こんなことしちゃうけど、24世紀でも仲良くしてくれたら嬉しいな、マリナーさん、テンディさん」
歩夢「そ、そんなの駄目だよ! 侑ちゃん!!」
侑「歩夢。方法はこれしかないんだ。歩夢のスクールアイドルの夢を見るにはこれしか」
歩夢「そんなのおかしいよ! だって、侑ちゃんの夢はどうなっちゃうの!?」
侑「私の夢より歩夢の方が大事だよ。24世紀で過去の記録をさがす。だからたくさん映像を残してよね、歩夢」
歩夢「そんなの嫌だよ! 行くなら侑ちゃんも一緒に……」
侑「それじゃ駄目だよ。私が残らないと確実性に欠ける」
侑「ほら歩夢、転送台に乗って。一応ニジガクに座標をセットするつもりだけど、つけ焼き刃でやり方覚えただけだから、ズレたらごめんね。最悪、人の居るところには降ろすから」
歩夢「……嫌。ずっと隣にいてくれるって言ったのに、これからもよろしくって言ったのに。あれは嘘だったの?」
侑「違うよ」
侑「私だって歩夢と離れるのは嫌。あの時から想いは何も変わってない。でも……」
侑「こうなった以上仕方ないんだよ! 歩夢! こっち来ちゃ駄目! 転送台に戻って!」
歩夢「私、自分の中で侑ちゃんが一番じゃなくなるのが怖かった」
歩夢「でも、私に他に大切なものができても、侑ちゃんに他に大切なものができても、それでもお互いを一番に想ってるのは変わらないんだって、それを教えてくれたのは侑ちゃんだった」
侑「だったら私の言う通りにしてよ! 私の為に他の大切なものを捨てないで!」
歩夢「ううん、しない。何も捨てない。わかってないのは侑ちゃんの方。これはあの時みたいな後ろ向きな気持ちじゃない」
歩夢「侑ちゃんのおかげで侑ちゃん以外の大事なものも大切に思えるようになった。でも侑ちゃんも大事なの」
歩夢「私だけの侑ちゃんでいて、なんて言わない。でも、私の一番大切な人でいて?」
侑「歩夢……」
歩夢「侑ちゃん。大好き。愛してる」ギュッ
マリナー「おお」
テンディ「ワァオ」
侑「あ、歩夢……私も……」
侑「私も同じだよ……」ギュッ
マリナー「おお……!」
テンディ「ワァァオ……」
テンディ「よかったぁ~あなた達、ちゃんと結ばれて。この二日間、正直見ててじれったかったのよね~。すれ違いばっかりのラブコメ見てるみたいな~。あーゆうのって逆にストレスたまるじゃない? これでひと安心ーー!」
マリナー「OK! これで二人は晴れて恋人同士! さ、侑。フェイザー返しな」
侑「は、はい……」
マリナー「……ふーん?」ピッピッピッ
マリナー「フェイザーの設定は麻痺だったよ。撃つつもりはなかったんでしょ? ヴィランを目指すにはあんたは優しすぎるね」
侑「……拘束室でも何でも入れてください」
マリナー「はっ! 拘束室! あんたをあんな楽しいところに入れると思う?」
マリナー「あんたにはそうだね…もっと退屈な所がお似合いだよ。そう例えば……地球とか。死ぬほど退屈だよきっと。ワイン作って散歩して……スクールアイドル見て盛り上がったりとか」
侑「!?」
歩夢「どういうことですか……? 帰してくれるの?」
マリナー「元々そうするつもりだったんだよ! 言ったでしょ、返す為に最大限努力するって。私のせいであんた達の人生、滅茶苦茶になんてできない!」
マリナー「裏で糸を引いて、未来に帰る直前にあんた達を地球に転送するつもりだったんだ」
侑「でも! そんなことしたらマリナーさんが困った立場に!」
マリナー「規則破るのは得意なの! あと、降格されるのもね。まっ、バレたら降格じゃ済まないけど」
マリナー「ってかあんた最高!! 私に銃を向けるなんてメッチャカッコいいし[ピー]ソイカれてる! 歩夢! あんたもメッチャカッコよかったよ!」
マリナー「決めた! 何がなんでもあんた達を地球に帰すよ! たとえどんなに私の手を汚そうと!」
マリナー「侑、あんたのプラン、悪くなかったよ。詰めは甘かったけど……でもここからは、私が責任を持ってあんた達を家に帰すからね」
ゆうぽむ「マリナーさん……」ジーン
テンディ「ああ~……これって私も協力する流れよねぇ? だよねぇ……ここで保身に走ったら空気読めない奴って思われるし……」
ピポポ
ボイムラー『ボイムラーからマリナー。喜べ! 侑と歩夢を地球に帰す理由が見つかったぞ!』
マリナー「ボイムラー……あんたってホント………空気読めない!!」
テンディ「Booooooo!!」
ゆうぽむ「Booooooo!!」
ボイムラー『え!? なに!? なんで!? 僕何かした!?」
ボイムラー『っていうか! その場にいないんだから空気読めなくて当たり前だろ!』
マリナー「で、何だって?」
ボイムラー『確かに、侑と歩夢は歴史に直接は影響を与えない。でも、二人の子供や子孫は? その可能性は否定できないだろ?』
歩夢「(子供……)」ズキッ
マリナー「そんなの皆とっくに気付いて調べてるよ! でも何もでてこなかった!」
ボイムラー『まぁ確かに、普通の調べ方ではでてこないかもね。情報は地中深くに埋もれていたから。でも僕は思い出したんだ。大昔の宇宙艦隊広報誌の技術開発の歴史特集で虹ヶ咲の名前がでてきたのを!』
マリナー「はぁ!? ちょっと待って……! 言いたいことが二つ!」
マリナー「その1! 何で宇宙艦隊広報誌に虹ヶ咲がでてくるの!? その2! 宇宙艦隊広報誌なんて読んでるのはダサい奴だけ! しかも100年以上も昔に遡ってバックナンバーを漁ってるなら尚更!」
ボイムラー『その2は聞かなかったことにする! っていうか君も艦隊士官だろ! それくらい読めよ!』
マリナー「いいから早く本題に入って! どうでもいい脱線してないでさ!」
ボイムラー『脱線させたのは君だろ! あー……知っての通りフェイザー技術を開発したのは22世紀の東京の宇宙艦隊科学研究所だ。当時の開発担当者が記事のインタビューで、不思議の海結晶による高速ナディオン効果を思いついたのは、虹ヶ咲のスクールアイドルの歌を聞いていてインスピレーションが浮かんだおかげだ、と言っている。そしてそのスクールアイドルっていうのが……』
ボイムラー『とりあえず、そっちにデータを送るから、艦長に報告してくれ!』
マリナー「はっ? え? なんで!? 自分で報告すれば!? 艦長のケツ舐め大好きでしょ! 仕事の熱意を見せるんだ~って!」
ボイムラー『君はゲストの世話役だからわからないだろうけど、こっちはもう忙しくてさぁ! どこの部署も未来に帰る為の準備で手一杯だよ!』
マリナー「忙しいの大好きなくせに!」
ボイムラー『まぁそうだけど。とにかく、もうすぐ準備が整うから急いだほうがいい! じゃあね!』
マリナー「ほい、受信。うわ、何これ、途中からただの推し紹介になってるじゃん……マジでこの女がフェイザー開発したの? なになに……」
マリナー「確かにそのエンジニアの好きなスクールアイドルは、当時から見ても100年以上前、21世紀半ばの虹ヶ咲の生徒で、ラストネームは……高咲!」
侑「私!? 私はスクールアイドルじゃないけど……」
マリナー「違う違う、もうちょい後の時代」
歩夢「それって……侑ちゃんの子供ってことですか……」
侑「ええ~~!? 私の子供!?」
マリナー「うーんそうなのかな……って」
歩夢「(そう……か。侑ちゃん将来、子供ができるんだ……と言うことは……私は……)」
マリナー「なになになに……ちょっと待って。彼女は著名な作曲家、高咲侑とその妻、歩夢の間に生まれ、両親から受け継いだ才能を……って、ちょっ! 新情報多すぎ!!」
歩夢「私と、侑ちゃんの子供……!?」
侑「私と歩夢の子供!?」
マリナー「やったね歩夢! あんたの勝ちだよ!」
侑「え!? どう言う事!?」
歩夢「私と……侑ちゃんの……こども……」ポー
侑「どうして私と歩夢の間に子供ができるの!?」
テンディ「同性同士で子供作る技術って優生学のうちに入るよねぇ!? 当時の地球って既に優生学って禁止されてるんじゃなかった!?」
マリナー「……まぁ……当時は規制がゆるかったんじゃない? たぶん」
侑「将来、同性同士でも子供が作れる技術ができるってこと!? やったね歩夢!」
歩夢「うん! でも……私達の子供が武器開発の助けになるっていうのは……複雑かも」
マリナー「武器って言っても人の命を救うモノだよ。誰がどんな目的で使うか、重要なのはそこでしょ。さっき侑があんたを地球に帰そうと使ったみたいにね」
マリナー「ま、結果的にはいらぬお節介だったわけだけど……一体誰が、未来から来た誘拐犯から歩夢を助け出そうとした侑を責められるっての?」
歩夢「マリナーさん……」
マリナー「道具はただの道具。確かに使う人によっては人を傷つける。でも、だからって無くせばいいってもんじゃないの。それを使う人達がより良くあろうとするから進歩がある。少なくてもあんた達の時代から数百年間、私達はそうしてきた」
マリナー「だから、私達を信じて欲しいの。それに、歩夢と侑とあんた達の娘やそのまた奥さんとその娘が歴史にどんな影響を与えて、後にどんなことが起きたとしても起きなかったとしても、それは人類全体の問題」
歩夢「……まだ全部は納得できないけど、伝えたいことは何となくわかります……」
侑「マリナーさんって弁が立ちますね!」
テンディ「本当! 良いこと言ってるー!」
歩夢「侑ちゃんもちょっとはそういう事、気にしてよー!」
侑「え!? してるよー!?」
マリナー「あ、いやー、今のは自分でも柄にもないこと言ったなっていうか、いかにもピカードが言いそうなことではあるよね~……勘違いされたら困るけど私ってもっとクールで喧嘩っ早い落ちこぼれだから」
マリナー「でもあんた達にしこりを残してもらいたくないんだよねぇ……私のせいで知っちゃった未来に悪いイメージ引きずって欲しくないっていうか……」
マリナー「とにかく、この話終わり! さっさと艦長に報告しに行くよ!」
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
~作戦室~
フリーマン「……どうしてそんな重要な情報が今まで検索に引っ掛からなかったの?」
マリナー「さあねぇ、検索の仕方が下手だったんじゃない? それか、ダサい奴しか見ない資料だからコンピューターが参照を拒否してたとか!」
フリーマン「はぁ……きっとアイソリニア・オプティカルリレーの調子が悪かったのね……本当に二人の間に生まれる娘がいないとフェイザーが発明されないという保証はあるの?」
マリナー「保証はないけど……でも危険は冒せないじゃん! 侑と歩夢を未来に連れて帰っても、フェイザー開発が数年遅れるだけかも! それか、歴史上の艦隊の船のフェイザー砲がフェイズ砲に変わっちゃってるかもね! それはちょっとマズイんじゃない!?」
フリーマン「確かに……あなたの言う通りだわ、マリナー」
フリーマン「わかりました。今日中に24世紀に帰る準備は整う予定だったけど、二人を地球に帰します」
侑「ちょ、ちょっと待ってください!」
マリナー「どうしたのさ侑。こんなこと言えた義理じゃないけど、もっと喜びなって。帰れるんだよ!」
侑「何日間も勝手に留守にしてて、友達や親に何て言い訳すればいいんですか!? きっと事件になってますって!」
マリナー「確かに」
フリーマン「難しい問題だわ」
マリナー「いや、一つ手がある」
フリーマン「嫌な予感がするのだけど」
マリナー「何も難しいことじゃないって! ちょっと、24世紀に帰る前にセリトスがこの時代に来る直前に寄って、侑と歩夢を降ろせばいいの!」
マリナー「カーク手順だよ!」
フリーマン「はっ? え? そういうやり方にカーク手順なんて名前はついてないわ」
マリナー「名前なんてなんでもいいって! カークも1960年代に飛ばされた時、似たようなことやってたんだからいいじゃんそれで!」
フリーマン「とにかく、既に帰るための軌道を算出していたのだけれど……」
フリーマン「そうするしかなさそうね。こうなったら計算をやり直させるわ。私たちがこの時代に来る直前のポイントに行くための軌道と、その時点から速やかに24世紀に帰る為の軌道を算出しなくては。その場にグズグズ留まっていたら過去のセリトスが現れて私達を探知されてしまう」
歩夢「どういうことですか……?」
マリナー「つまり、あんた達を、この船にくる直前の時間に戻すってこと。あんた達が誘拐された事実はなくなるよ! あんた達はこの船にいた数日分だけ、よけいに歳食っちゃうけど」
侑「じゃあ、地球上で私たちが行方不明になる、ってことはなくなるんですね!」
マリナー「そうだよ! 万事解決!」
ゆうぽむ「よっ……」
ゆうぽむ「よかった~~~」
フリーマン「二人とも、今までごめんなさいね。艦長として規則に従順であろうとし過ぎたかもしれない。でも、こうなったことを嬉しく思うわ」
マリナー「ようやく自分の非を認めたね!」
フリーマン「黙ってマリナー!」
侑「あの、素朴な疑問なんですけど」
マリナー「なに?」
侑「未来にどうやって帰るんですか? タイムワープってそんな簡単にできるんですか!?」
マリナー「まさか! 私たちがこの時代に来たのは100パー事故だし、私達の時代でもまだタイムトラベル技術は一般化されてないの! でも方法はいくつかあって、今回使うのはワープ速度で恒星の重力場に突っ込んで表面スレスレをスイングバイする方法!」
マリナー「細かいことは知らんけど、とにかく軌道を微調整する事で好きな時間に行けるの!」
マリナー「太陽をぐるっと回ってこっちに戻ってきた時には、あんた達は元の時間に帰れる!」
ーーーーーーーー
ーーーーーー
~医療室~
プシュ プシュ
タアナ「よし、これで処置は完了だよ。24世紀のウイルスを21世紀に持ち込むことはない」
ゆうぽむ「ありがとうございます!」
タアナ「達者でな、[ピー]ソイカれカップルども」
マリナー「さぁて、それじゃ転送室で待機するよ! もうすぐ帰れるからね!」
ゆうぽむ「はい!」
~ブリッジ~
ヴィラップス『こちら機関部! 準備完了です!』
シャックス「艦長、全艦配置につきました。いつでも発進できます!」
ランサム「艦長、ご命令を」
フリーマン「いい? これは時間との戦いよ。グズグズしてたら過去の自分達と鉢合わせになる」
フリーマン「太陽に向けて発進して!」
ランサム「現在速度、ワープ5……6……7……」
シャックス「軌道は順調に推移中!」
ガタガタガタ
フリーマン「そのまま! 速度上げて!」
ランサム「ワープ8……8.5……8.6……8.7……」
ガタガタガタ
シャックス「艦長! 船体ストレス、20テラダインです!」
フリーマン「まだよ! まだ行ける! セリトスは強い!」
ランサム「8.8……8.9……ワープ9! 太陽の表面スレスレに突っ込みます!!」
シャックス「船体ストレス! 35テラダイン!!」
フリーマン「総員衝撃に備えて!」
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…………………
ギュゥッゥゥゥゥゥゥンン………………………
シャックス「艦長! やりました! 天文測定数値から割り出すと、セリトスがこの時代に飛ばされる20分前です!」
フリーマン「亜空間フィールドの影響に気をつけながら地球に接近して!」
フリーマン「ブリッジから転送室! マリナー! ゲストを家に帰す時間よ!」
~転送室~
マリナー「了解!!」
マリナー「侑」
侑「はい?」
マリナー「さっき、これからの地球の歴史を知ったって言ってたよね。その……」
侑「はい。世界大戦のことも」
マリナー「だったら、歩夢一人だけを帰すのは酷じゃないかって思わなかった? このまま未来に行ったほうが幸せになれるかもって」
侑「いえ。マリナーさんが言った通り、どんな所でも故郷が一番ですから。歩夢だけを帰すのは本当に不本意でした」
侑「でも……二人で帰れて本当に良かった。例え辛い時代になっても絶対に歩夢と二人で幸せになってみせます」
マリナー「そっか……幸運を。いや、長寿と繁栄を、かな🖖🏽」
侑「マリナーさんも。長寿と繁栄を🖖🏻」
歩夢「侑ちゃーん、何の話してるの?」
侑「ううん、何でもない」
テンディ「マリナー! 転送の準備できたよ!」
マリナー「お別れだね。無理矢理連れてきといてアレだけど、何だか名残惜しいよ」
歩夢「マリナーさんが背中を押してくれて本当に感謝してます……私だけじゃきっと前に踏み出せなかった。そう思うと、ここに来たのも意味があったのかなって思います」
マリナー「だと良いんだけど」
侑「私は反省する事が多かったなぁ。歩夢の強さは知ってたハズなのに」
テンディ「でも二人のそういう関係性すごく羨ましいよー! 親友で恋人! 最強の二人ね」
マリナー「あ、わかってると思うけど、くれぐれもここで知った知識は生涯秘密だよ? 墓場まで持っていってね」
侑「わかってますって! でも、なんだかんだで貴重な体験ができました!」
歩夢「気が向いたら24世紀で私達の記録映像を探して見てくださいね」
テンディ「もちろん! 私すっかりファンになっちゃったよー!」
マリナー「OK! それじゃ転送するよ! 二人とも準備して!」
テンディ「二人ともバーイ!」
歩夢「……」ペコリ
侑「……マリナーさん」
マリナー「なに?」
侑「歩夢がかわいくて、その上カッコいいって気づいたのは私の方が先ですからね」
歩夢「ゆ、侑ちゃん!」
マリナー「はっ! ……やっぱお似合いだね、あんた達」ニヤ
パァァァァァァァァ(二人が転送される音)
~ブリッジ~
シャックス「艦長、無事転送されました!」
ランサム「太陽の重力がワープの痕跡を消してくれます。過去の我々や、この時代のバルカンやテラライト船に探知されることはないでしょう」
フリーマン「OK、それじゃ……24世紀に進路をとってちょうだい」
フリーマン「時間調査課が両手を広げて私達を待ってるわ……」ゲンナリ
~地上~
パァァァァァァァァ(侑と歩夢が実体化する音)
侑「帰ってきた!」
歩夢「もぅ~侑ちゃん! 最後のあれ何!? 恥ずかしいよぉ~」
侑「ごめんごめん。でも本当のことだから」
キラン⭐
侑「あ、昼間なのに流れ星!」
歩夢「きっとセリトスだね」
侑「無事に帰れるといいな……ところで、ここは……」
歩夢「私達が最初に転送されるときにいた場所の近くだね」
侑「えーと、時間は……もうすぐだ!」
\ユウチャンアブナイ!/
\アアアダメダメダメダメ/
\ヤバイヤバイヤバイヤバイ/
かすみ「え……! 侑先輩に歩夢先輩!? 消えたっ!?」
かすみ「た、大変です! 侑先輩と歩夢先輩が宇宙人に誘拐されました!」
かすみ「みんなに知らせないと!」タタタッ
ドン!
かすみ「あ痛っ! ちょっと! 前見て歩いてくださいよぉ!……って」
かすみ「侑先輩と歩夢先輩!?」
侑「いたたた……」
歩夢「かすみちゃん? そんなに慌ててどうしたの」
かすみ「そうでした! 聞いてくださいよ! 侑先輩と歩夢先輩が変な青白い光に包まれて消えちゃったんです! きっと宇宙人に誘拐されたんですよ……ってあれ?」
侑「(まさか)」
歩夢「(かすみちゃんに見られてたなんて……)」
歩夢「もーう、かすみちゃん夢でも見てたの?」
かすみ「あれーーーー!? そんな! 確かに見たんですよぉ!」
侑「寝ぼけてるかすみちゃんもカワイイよ!」
かすみ「はっ! そうか! あなた達は偽物ですね! 宇宙人が先輩達を誘拐したのを隠すために置いていったクローンなんです!」
歩夢「もーう、かすみちゃんSFの見過ぎー」
かすみ「そんなことないです! かすみんはSFなんてカワイくないものは見ないですもん!」
侑「ええー? SF面白いよー?」
歩夢「はいはい、部室行こう?」
かすみ「ちょっと!? 誤魔化さないでくださいよーーぅ!」
侑「(このまま、かすみちゃんの人生に疑問を残すのは良くないよね)」
侑「(ごめんねマリナーさん。黙ってるって約束したけど、本当に信頼できる人達には話ちゃうかも)」
侑「まっ、規則破るのも得意だって言ってたし、わかってくれるよね」
歩夢「侑ちゃん?」
かすみ「今なんて言いました!? 規則破るって!? 何をです!? 何がですか!? やっぱり侑先輩の偽物なんですね! 本物の侑先輩を返してくださいーー!!」ウワーン
侑「ほらほら、本物はちゃんとここにいるよ? だから泣き止んで、ね? 泣いてる顔もカワイイけど!」
かすみ「うう~~……こういうところは確かに本物っぽいですけどぉ~~」
歩夢「……侑ちゃん?」ジトー
侑「あっ! も、もちろん私には歩夢が一番だよ!」
歩夢「どうだか」プイ
侑「不貞腐れてる歩夢もカワイイYO!」
かすみ「ちょっ、何ですかお二人のその雰囲気……」
かすみ「はっ! まさか! 侑先輩と歩夢先輩ってそういう仲なんですかーー!?」
かすみ「いいもんいいもん! かすみんだって最近しず子といい雰囲気なんですからね! 羨ましくなんてないですもん!」
侑「ふふ」
歩夢「侑ちゃん?」
侑「やっぱり日常っていいね」
歩夢「だね、侑ちゃん」
かすみ「ちょっとぉ!? 何意味深なこと言ってるんですーー!?」
かすみ「何なんですかーー! もーー!」
The End
〈声の出演〉
ベケット・マリナー 小島幸子
ブラッド・ボイムラー 平野潤也
テンディ 種市桃子
ラザフォード 最上嗣生
高咲侑 矢野妃菜喜
上原歩夢 大西亜玖璃
磯辺万沙子
志村知幸
後藤光祐
橘U子
後藤ヒロキ
佐藤せつじ
櫻庭有紗
ニケライ・ファラナーゼ
相良茉優
虹ヶ咲のジャージはスタートレックのオマージュってことを言いたかっただけ
ss書くの6年ぶりなのでテンパってタイトルにいらんスペース入れちゃってるし…
読んでくれた人がいたらありがとう
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