彡(゚)(゚)「認知の歪み?」 (39)
J( 'ー`)し「ねえ、やきう。親戚の女の子のツンデレちゃんって覚えてる?」
彡(゚)(゚)「ツンデレ?ああ、小さいころに何度か遊んであげたことあるな。確か今ごろ高校生やっけ。それがどうしたんや?」
J( 'ー`)し「あの子ね、拒食症になっちゃったんだって。去年少しだけ太っちゃったんだけど、そこから無理なダイエットをしてすっかり痩せたのに、」
ξ゚⊿゚)ξ『いやだ、まだ私太ってる!もっとダイエットしなきゃ!』
J( 'ー`)し「って言い張ってね、栄養失調になっちゃって、けっきょく入院しちゃったのよ」
彡(゚)(゚)「マジか!なんでそんなことになったんや……」
J( 'ー`)し「好きな男の子に太ったことをからかわれたことが原因らしいんだけど……」
彡(゚)(゚)「なんてことや……」
J( 'ー`)し「どうして自分がもう十分痩せてるって気が付かないのかしら?」
彡(゚)(゚)「……」
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彡(゚)(゚)「ツンデレが拒食症、か……」
彡(゚)(゚)「まさか知り合いがそんなことになるなんて思いもせんかったな」
彡(゚)(゚)「明らかに痩せてるのに自分を太ってると思い込む」
彡(゚)(゚)「いったいなんでそんなことになるんやろう?どうして目の前の現実を理解できないんや?なんでなんやろ」
(´・ω・`)「それは認知の歪みってやつだね」
彡(゚)(゚)「おう、原ちゃんやないか!」
(´・ω・`)「やあやきうのお兄ちゃん。久しぶりだね」
彡(゚)(゚)「おう。元気そうやな。で、その認知の歪みってのはなんなんや?」
(´・ω・`)「様々な要因で現実を正しく認識できず、歪に誇張された事実を真実だと思い込むことさ」
彡(゚)(゚)「なんや……、難しい言葉がいっぱいでよう分からんのやが」
(´・ω・`)「ようするに現実を正しく認識できない状態だよ」
彡(゚)(゚)「最初からそう言えや」
彡(゚)(゚)「でもなんでそういうことになるんや?」
彡(゚)(゚)「鏡でガリガリの自分を見たり体重計の数値を見れば自分が痩せてるなんて一目瞭然やん」
彡(゚)(゚)「なんで誰が見ても間違ってることを信じ込んでしまうんや」
(´・ω・`)「それには人間の脳の構造と性質が関わっているんだよ」
彡(゚)(゚)「脳の構造と性質?」
(´・ω・`)「人間の脳が物事を理解する際にはその構造に由来する独特の癖があってね、それがたまに上手く噛み合わなくなってバグってしまうんだ」
彡(゚)(゚)「具体的にはどういうことや?」
(´・ω・`)「じゃあ順番に説明していくよ」
彡(゚)(゚)「頼むで」
(´・ω・`)「まず、人間の脳っていうのは一つの存在ではなく、色々な部位に別れててその部位ごとにやってることが違うんだ」
彡(゚)(゚)「そうなんか?」
(´・ω・`)「思考の中心になる大脳、筋肉の制御をしてる小脳、内臓の制御をしてる脳幹といった具合にね」
彡(゚)(゚)「ほほう、大脳ってのは聞いたことがあるな。何か考え事をするのが大脳ってことか」
(´・ω・`)「そして今回の認知の歪みの説明の中心になるのはその大脳なんだ」
(´・ω・`)「大脳は言葉を話したり数の計算をしたり未来を予測したりと、一般的に脳と言われて思い浮かべる働きの多くを行ってるんだ」
彡(゚)(゚)「確かに内臓や筋肉の制御なんかより脳のイメージっぽいな」
(´・ω・`)「そして大脳も左右に分かれてて、左側は左脳(さのう)、右側は右脳(うのう)と呼ばれてる」
彡(゚)(゚)「左脳と右脳か。そういえば左脳型の人間とか右脳型の人間みたいな話を聞いたことがあるな」
(´・ω・`)「左脳は言葉とか計算などの論理的な思考を司ってる。だから論理的思考で動く人は左脳型なんて言われるね」
(´・ω・`)「いっぽう右脳は感性とか直観、感情の働きなどを司る。だから感覚や直観で動く人は右脳型なんて言われるね」
彡(゚)(゚)「左脳が論理的思考、右脳が感覚的で直観か」
(´・ω・`)「認知の歪みにはこの左脳と右脳の性質の違いが大きく関わっているんだ。なのでまずこれを今から説明するよ」
(´・ω・`)「まず左脳と右脳の考え方の違いを説明しよう」
(´・ω・`)「例えばお兄ちゃんが黒服の男と出会って『この男はヤクザだ、やばい!逃げよう!』と思ったとするよ」
(´・ω・`)「その思考は以下のような左脳と右脳の連携で起こるんだ」
彡(゚)(゚)「ふむ」
(´・ω・`)「左脳はまず『こいつは体付きや顔つきから男だ』『黒いスーツを着てる』『顔に傷跡がある』みたいな客観的な分析をする」
(´・ω・`)「いっぽう右脳はまず『なんか怖い』『暴力的な雰囲気を感じる』と言った感覚的な分析をする」
(´・ω・`)「そしてそれらの情報が共有されて『顔に傷跡のある怖い暴力的な雰囲気の黒いスーツの男が目の前にいる』となり」
(´・ω・`)「過去の経験や記憶と照合して左脳は『この男はヤクザ』と論理的な結論を出し、右脳は『今の状況はやばい!』と感覚的な結論を出す」
(´・ω・`)「そして右脳は左脳に『やばい!どうしたらいい?』と質問し、左脳は『逃げるべきか戦うべき』と答える」
(´・ω・`)「それを受けて右脳は『戦うのは怖いから逃げよう』と判断し、最終的に『こいつはヤクザだ、やばい!逃げよう!』という思考が完成する」
彡(゚)(゚)「ほう、こんな複雑なやり取りが起こってるんか」
(´・ω・`)「もしもこの時、お兄ちゃんの左脳が麻痺していたとするよ」
彡(゚)(゚)「左脳が麻痺ってことは論理的思考ができないんか」
(´・ω・`)「そう。するとお兄ちゃんはその男がヤクザかどうかとかの客観的な判断はできなくなる。でも右脳の感覚的思考は生きてるんで、」
(´・ω・`)「なんだかよく分からないけどやばい!なんとかしないと!とパニックになるだろう」
彡(゚)(゚)「感覚的に恐怖は感じてるけど論理的にどうしたらいいか考えられない状態ってことやな」
(´・ω・`)「逆に右脳が麻痺して左脳だけが働いてる状態だと、論理的にその男がヤクザだという分析はできる」
(´・ω・`)「でも恐怖を感じないので何もする気になれず、その場で突っ立ったままになるだろう」
彡(゚)(゚)「論理的思考ができるのに何もできないんか?変な話やな」
(´・ω・`)「『何もできない』のではなく『何かしたいと感じられない』というべきだね」
(´・ω・`)「左脳的にはヤクザに襲われたとしてもどうでもいいんだ。感情がないからそれを嫌だと思うことができない」
(´・ω・`)「なので左脳だけが働いているお兄ちゃんの気分はヤクザを目の前にしても非常に穏やかで危機感の欠片もない。だから逃げも戦いもしない」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ。論理的思考だけで感情がないとそうなってまうんか」
(´・ω・`)「ようは左脳は主観的で感情的な価値判断ができないんだよ」
彡(゚)(゚)「主観的で感情的な価値判断?」
(´・ω・`)「お兄ちゃんは何か大切にしてる宝物はある?」
彡(゚)(゚)「うーん、せやな、大好きだったお婆ちゃんの形見のマフラーかな」
(´・ω・`)「もし僕がそれを1万円で売ってくれって言ったら売る?」
彡(゚)(゚)「絶対に売らん」
(´・ω・`)「でもそのマフラーには金銭的な価値なんてゼロだよね。それでも1万円よりマフラーのほうが大事なの?」
彡(゚)(゚)「当たり前や。お婆ちゃんとの大事な想い出の品なんや。もし売ってしまったらきっとワイはすごく後悔すると思うわ」
(´・ω・`)「その『自分にとっては一万円よりもお婆ちゃんとの想い出のほうが大切。売ったら後悔する』という判断は右脳がしてるんだよ」
(´・ω・`)「左脳はそのマフラーと一万円の金銭的な価値の大小の判断はできる。でもそのどっちが自分にとって大事かっていう主観的な判断はできないんだ」
彡(゚)(゚)「でも世の中には『形見よりお金のほうが大事!』って思って形見を売ってしまう人もおるやろ。これは右脳より左脳が優先されてるってことちゃうんか?」
(´・ω・`)「いや、それも最終的には右脳が決めてるんだ」
(´・ω・`)「左脳は右脳に対して『形見の金銭的価値はゼロ』『一万円あればこういう買い物ができる』という事実を伝えるだけでどっちにしろとは判断しない」
(´・ω・`)「例えるなら左脳は軍師で右脳が指揮官みたいなものかな。左脳は右脳にアドバイスはするけど最後の決断は右脳が行うんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ。左脳より右脳のほうが立場が上なんか」
(´・ω・`)「上下というよりはあくまでも性質の違いで結果的にそうなるんだけどね」
彡(゚)(゚)「でも左脳だけが働くとか右脳だけが働く状況って言われても実際になったことないからピンと来うへんな」
(´・ω・`)「お兄ちゃんもそれに近い経験は日常的にしたことがあると思うよ」
彡(゚)(゚)「そうなんか?」
(´・ω・`)「学生のころ、定期試験の一週間前は真面目に勉強しないとやばいって頭では分かってるけどやる気が起きないのに」
(´・ω・`)「試験前日になって急にやばい!全然勉強してなかった!どうしよう!とパニックになったことない?」
彡(゚)(゚)「おお、毎回そうなってたな」
(´・ω・`)「それがちょうど左脳と右脳の片方しか働いてない状態なんだ」
彡(゚)(゚)「どういうことや?」
(´・ω・`)「試験一週間前の、頭では勉強すべきだと分かってるのにやる気がでないっていうのが左脳だけ働いてて右脳が働いてない状況だ」
(´・ω・`)「そして試験前日に急に事態のやばさを実感してパニックになってるのが右脳が激しく働いてる状況だよ」
彡(゚)(゚)「ほお、左脳が働いてても右脳が働かないと実感を感じられへんってことなんか」
(´・ω・`)「そうだね、まさに『実感を覚える』ってのが右脳の重要な機能の1つだよ」
彡(゚)(゚)「でもなんでそうなるんや?一週間前から右脳が働いて実感を感じられればちゃんと勉強できたのに」
(´・ω・`)「右脳って目の前の状況に対応することに特化してて未来とか離れた場所とかのことを思考することは苦手なんだ」
(´・ω・`)「だからこそ未来予測が得意な左脳がそれをサポートするんだけど、日頃から訓練をしてないとそれが上手く行かないわけだ」
彡(゚)(゚)「不便な話やなぁ、訓練なしでも未来予測に従って右脳が働けばええのに」
(´・ω・`)「いや、逆に右脳が未来のことを実感しすぎるとどうでもいいことに意識がもっていかれて目の前のことに集中できなくなる恐れがある」
(´・ω・`)「だから訓練によって左脳の未来予測の中の重要なものだけを選んでそれだけに右脳が働くようにする必要があるんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどな、未来のことを実感しすぎるのもデメリットがあるわけか」
(´・ω・`)「さて、一通り左脳と右脳の役割分担や性質について説明したので、これを元にいよいよ認知の歪みに直接関わる内容に入っていくよ」
彡(゚)(゚)「お、いよいよか」
(´・ω・`)「認知の歪みとは少し前にも言ったけど現実を正しく理解してない状態だ」
(´・ω・`)「なぜ拒食症のツンデレちゃんは明らかに自分は痩せてるのにそれを認められないのか?」
(´・ω・`)「その根本の理由は大脳の省エネ機能のせいなんだ」
彡(゚)(゚)「省エネ!?いったいどういうことや?いきなり省エネとか言われても意味わからんで!」
(´・ω・`)「そもそも大脳っていったい何のために存在してると思う?」
彡(゚)(゚)「そら……ものごとを考えるためやろ。さっきまで散々説明してたやないか」
(´・ω・`)「じゃあ何のために考えるの?」
彡(゚)(゚)「うーん、今日は何を食べるかとか何をしようかとか決めるためちゃうん?」
(´・ω・`)「じゃあなんでそんなことを考えるかっていうと生き延びるためだよ」
彡(゚)(゚)「生き延びるため?」
(´・ω・`)「生きて行くためにはご飯を食べないといけない。そのためにはどうすればご飯を食べられるか考えないといけないでしょ」
彡(゚)(゚)「確かに考える能力がなかったら飯を探せなくてすぐ死んでまうな」
(´・ω・`)「なので大脳は生きるために何をすべきかを過去の経験や感覚器官から得られた情報を元に思考するんだ」
彡(゚)(゚)「まあせやな。でもなんでそこで省エネなんて言葉が出てくるんや?」
(´・ω・`)「世の中には初めて出会うことがいっぱいあるし可能性も膨大だ。でもその全てを考えてると大脳のエネルギー消耗がとんでもないことになる」
(´・ω・`)「大脳って実はエネルギーの消耗が大きいんだ。だから常に大脳をフル稼働してるとあっと言う間に餓死しちゃうよ」
彡(゚)(゚)「ほう、そうなんか」
(´・ω・`)「それに例え栄養は十分あっても大脳の能力には限界があるからそういう意味でも全てのことを考えることは不可能」
(´・ω・`)「そこで大脳はなるべく少ないエネルギーで物事をたくさん処理できるように思考方法を効率化しているんだ」
彡(゚)(゚)「ほーん、なんか世知辛いな」
(´・ω・`)「そして、その効率化のために左脳は自分が体験した物事を分析して学習するんだよ」
彡(゚)(゚)「左脳が分析と学習をする、と」
(´・ω・`)「例えばある日リンゴが木の枝から地面に落ちたのを見たとする」
(´・ω・`)「すると左脳はこれをそのまま記憶するんじゃなくて『何かが下に落ちた(補足:リンゴ、地面)』と単純化して記録する」
彡(゚)(゚)「なるほど。単純化するんか」
(´・ω・`)「次の日、池に誰かが投げた小石が落ちたのを見たとする。これも単純化して『何かが下に落ちた(補足:小石、池)』と記録する」
(´・ω・`)「これらは本来は全く別の現象だ。でも単純化してしまうとどちらも同じ現象ということになり、『何かが下に落ちた×2(補足:リンゴ、小石、地面、池)』という記録になる」
(´・ω・`)「これをいっぱい繰り返すと『何かが下に落ちた』という記録がたくさん蓄積する」
彡(゚)(゚)「ふむふむ」
(´・ω・`)「そして左脳はたくさん起きたことは単なる偶然ではなく、世界にそれを引き起こす法則があると認識するんだ」
(´・ω・`)「この場合であれば『あらゆるものは下に落ちる』という法則だ」
(´・ω・`)「この法則を利用すれば次からは高い位置のあるものの動きを『上にあるから下に落ちる』と予測できるようになる」
(´・ω・`)「このように複数の経験を単純化してそこから共通する法則性を導き出し、新しい現象の予測をできるようにすることを学習と呼ぶ」
彡(゚)(゚)「なるほどな。学習しないと予測できへんわな」
(´・ω・`)「そして左脳は多数の学習を組み合わせて自分はこういう世界に住んでいるっていう世界観を作り出すんだよ」
彡(゚)(゚)「世界観ってのはいったいどういうものや?」
(´・ω・`)「例えば物は上から下に落ちるとか、動いてるものはすぐには止まれない、みたいな物理法則」
(´・ω・`)「この世界は地球という惑星で、そこにはいっぱい国があって自分は日本に住んでいる、といった社会的な知識」
(´・ω・`)「僕の体には手が2本、足が2本ある。僕には両親がいる。僕は会社員で毎朝電車で出社してる、と言った自己認識」
(´・ω・`)「などなど、自分はいったいどういう世界に住んでて自分はその中でどんな存在なのかっていう認識そのものさ」
彡(゚)(゚)「ふむ。確かにワイの頭の中にもそういう世界観が広がっとるな」
(´・ω・`)「こういう世界観を脳の中に構築していればパターンやルーチンに従って何も考えずに動けるでしょ」
(´・ω・`)「厳密には全く何も考えないってのは不可能だけどそれでも考える必要のあることをかなり減らせるはずだ」
(´・ω・`)「少なくとも『もしも明日太陽が西から北に登ってきたら洗濯物をどこに干せばいいだろう』って真剣に悩む必要はなくなる」
彡(゚)(゚)「脳内にきちんとした世界観があるからこそあり得ないことを悩むことはないってことか」
(´・ω・`)「でも左脳が作った脳内世界観はそれだけだと無味乾燥な情報にすぎない。そこで右脳が脳内世界観の各項目ごとに感情を紐付けるんだ」
彡(゚)(゚)「そういえば左脳は論理的思考だけで感情がない、感情を決めるのは右脳って言ってたな」
(´・ω・`)「例えば自分に優しくしてくれた人には好意を感じるでしょ。これは右脳がその人の記憶に好意的感情を紐付けたからだ」
彡(゚)(゚)「ワイが野球好きなのも右脳が野球の記憶に好きっていう感情を紐付けしたからってことか」
(´・ω・`)「そして世界観の各内容の信頼性も右脳が決める。例えばお兄ちゃんは日本という国が実在するってどれくらい確信してる?」
彡(゚)(゚)「えー。そりゃ絶対存在してるやろ。そうでないと辻褄が合わんわ」
(´・ω・`)「お兄ちゃんの『日本は絶対に存在してる』っていう高い確信の度合いも右脳が決めてるんだよ」
彡(゚)(゚)「そうなんか?そういうのって左脳と違うんか?左脳が論理的に『日本は絶対に存在してる』って決めるん違うの?」
(´・ω・`)「左脳はあくまでも軍師にすぎないって言ったでしょ。左脳は『日本が実在してる確率は高い』という答えは出す」
(´・ω・`)「でもその答えをどこまで信頼するかは右脳が決めるんだ」
(´・ω・`)「例えば引っかけクイズで『頭ではこの答えでいいと思う。でも何か違和感があって間違ってる気がする』って気になったことはない?」
彡(゚)(゚)「おお、あるなぁ」
(´・ω・`)「それがまさに右脳が左脳の判断に疑問を持ってる状態だよ」
彡(゚)(゚)「なるほど。でもなんで左脳の論理的な思考に右脳が疑問を持つんや?」
(´・ω・`)「実は左脳ってあまりたくさんの情報を一度に扱えないんだ。なので足りない情報だけで間違った結論を出すこともある」
(´・ω・`)「いっぽう右脳はたくさんの情報を一度に扱えるので左脳より大局的な思考ができる。でも思考の精度が低いんでふんわりとした結論しか出せない」
(´・ω・`)「なので左脳と右脳は連携してお互いに得意不得意を補い合うんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ。いわばダブルチェックシステムみたいなもんが脳の中にあるんやね」
(´・ω・`)「そしてその連携によって客観的な事実と感情や信頼性が絡まり合い、幅広い価値観や人生観や行動パターンが形成されるんだ」
(´・ω・`)「例えば『ラーメンに千円以上は出せない』だとか『仕事は給料の額よりもやりがいを大事にしたい』みたいなね」
彡(゚)(゚)「確かに価値観や人生観って客観的な知識と感情や直観が絡まり合って出来上がってるわな」
(´・ω・`)「でも人間の能力や体験できることには限界がある。だから脳内世界観が必ずしも現実の世界ときっちり一致してるとは限らない」
彡(゚)(゚)「そういえば昔の人は地球を平面だと思ってたらしいな」
(´・ω・`)「そんな大掛かりな話じゃなくても例えば最初は悪人だと思った人が実は善人だったなんてことはあるよね」
彡(゚)(゚)「逆もあるなぁ。最初はええやつやと思ってたら意外と嫌な奴だったとか」
(´・ω・`)「これも脳内世界観と現実世界の不一致だ。でも脳内世界観は新しい情報をもとにアップデートされるんで初対面と後々で印象が変わるわけだ」
彡(゚)(゚)「なるほどな」
(´・ω・`)「そして認知の歪みはこの脳内世界観のアップデート機能の不具合によって起こるんだ」
彡(゚)(゚)「アップデート機能の異常?」
(´・ω・`)「脳内世界観を作るのは左脳だけど、それが現実に即してるかどうかのチェックは右脳がしてるんだ」
彡(゚)(゚)「右脳はチェック役でもあるんか」
(´・ω・`)「左脳は新しい情報を脳内世界観にどんどん積み上げていくけどその整合性までは関与しない」
彡(゚)(゚)「どういうことや?」
(´・ω・`)「最初はAさんのことを悪人だと思ったが後から善人だと気が付いたっていう事例だと、左脳は最初に脳内世界観に『Aさんは悪人』と記述する」
(´・ω・`)「でもその後その人が善人だと気が付くと左脳は『Aさんは悪人』『Aさんは善人』という矛盾した2つの記述を行う」
彡(゚)(゚)「まあ善悪の定義次第じゃあり得なくもないけど……」
(´・ω・`)「すると右脳はその矛盾を認識し、Aさんが悪人か善人かを改めて検討し、その結論に合わせて世界観を修正するように左脳に要求する」
(´・ω・`)「そして左脳はそれを受けて『Aさんは最初は悪人だと思ったけど本当は善人』と修正するんだ」
彡(゚)(゚)「脳内世界観がアップデートされたってことやな」
(´・ω・`)「でもね、脳内世界観のアップデートって脳にとってけっこう大変なことなんだ。エネルギーも労力も使うからなるべくやりたくない」
彡(゚)(゚)「そんなに大変なんか?」
(´・ω・`)「例えば人間って新しい環境に移ると疲れやすくなるでしょ。進学したり就職したり引っ越ししたり。慣れるまで気疲れがする」
彡(゚)(゚)「確かにせやな」
(´・ω・`)「これは新環境に適応するために脳内世界観のチェックや書き換えで右脳も左脳も激しく活動してるからなんだ」
彡(゚)(゚)「なるほど。パソコンがバックグラウンドでOSを更新をしようとして処理が重たくなる感じかな」
(´・ω・`)「あと、自分の常識を覆されるような衝撃的な体験をすると驚きのあまり何も考えられなくなることもあるよね」
(´・ω・`)「これは脳内世界観を根本から見直すという大変な作業が発生して脳のリソースの大半を奪われてしまうからだね」
彡(゚)(゚)「ますますパソコンみたいやな」
(´・ω・`)「まあ演算装置って意味では脳もパソコンも同じようなものだからね」
(´・ω・`)「パソコンが激しく稼働するとオーバーヒートするように、脳も激しく活動すると神経に疲労物質が溜まってダメージを受けるんだ」
彡(゚)(゚)「なるほど、世界観の修正って大変で疲れるってことがよく分かったで」
(´・ω・`)「なので脳内世界観と矛盾する現実に直面した時、右脳も左脳もなるべく少ない修正で済まそうとするんだ」
彡(゚)(゚)「具体的にはどういうことや?」
(´・ω・`)「例えば幽霊を信じてない人が幽霊を目撃してしまったとしよう。その際に脳はどのように対応するか?」
(´・ω・`)「1つは合理化。既存の脳内世界観の中から合理的な答えを出すことで検討や修正が少なくなるようにする」
(´・ω・`)「まず左脳が『あれは目の錯覚だ』とか『ストレスで幻覚を見た』という風に世界観の変更が少なくなりそうな解釈を出す」
(´・ω・`)「そして右脳がそれらの答えの信頼性を勘案し、一番直観的にあり得そうな解釈を選ぶ」
彡(゚)(゚)「ワイも信じられんような出来事に出会うと割とそういう考えをしてる気がするな」
(´・ω・`)「他には保留。分からないものは分からないままにしておくんだ」
彡(゚)(゚)「それが一番多そうな気がするな」
(´・ω・`)「他には記憶の封印。幽霊を見たことを強引に忘れてしまうんだ。『見なかったことにしよう』ってね」
彡(゚)(゚)「でも実際見たわけやろ。そんな都合よく忘れることなんてできるんか?」
(´・ω・`)「確かに脳内に記憶は残ってる。でも左脳はその記憶に繋がる神経の反応性を低下させて右脳がその記憶にアクセスできなくするんだ」
彡(゚)(゚)「右脳が記憶にアクセスできなくさせるやて?そんなこともできるんか」
(´・ω・`)「でも時には合理化や保留や封印では済まされない重大な現実に直面することもある」
(´・ω・`)「例えば自分が会社にリストラされることなんてないと信じてたのにリストラされたらどうだろうか」
彡(゚)(゚)「リストラかー、給料もでなくなるし誤魔化しようがないな」
(´・ω・`)「そう。なので右脳も左脳も観念して脳内世界観の大規模な修正に奔走することになる」
彡(゚)(゚)「でも心理的にショックなのは分かるけど、情報量としてはほんの数文字で終わるだけのことやろ。なんでそんな大規模な修正がいるんや?」
(´・ω・`)「確かに『リストラされた』ってだけなら大した情報量じゃない。でも脳内世界観は他の様々な記憶や認識に複雑に結びついているんだ」
(´・ω・`)「例えば元の脳内世界観では『自分は有能』と記述してたとしよう。そしたらリストラされるのは不自然だから『自分は有能じゃない』と修正する必要がある」
(´・ω・`)「するとそこからさらに派生して『自分は有能だから家族に信頼されている』を『自分は有能じゃないから家族に信頼されない』と書き換える必要も出てくる」
(´・ω・`)「他にも行動パターンや人生観、価値観などの膨大な思考パターンに影響を及ぼすだろうね」
彡(゚)(゚)「なるほど、一か所の変更が他の色んなところに矛盾を生むから全部書き換えないといけないんか。まるでプログラムやな」
(´・ω・`)「加えて、リストラとは無関係の事柄の修正がいるかどうかのチェックも必要になってくるんだ」
彡(゚)(゚)「どういうことや?」
(´・ω・`)「自分はリストラされないと信じてたということは右脳は『自分はリストラされない』という認識に高い信頼性を置いていたということになる」
(´・ω・`)「その高い信頼性の認識が間違いだったということは、右脳の判断力そのものが信頼できないということになるんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどな。絶対正しいと思ってたことが間違ってたら他の正しいと思ってたことも間違ってるかもって疑心暗鬼になるわな」
(´・ω・`)「そうだね。まさに右脳は疑心暗鬼になって他の信頼性の高い認識も正しいかどうかのチェックをしようとする」
彡(゚)(゚)「うーん、気が遠くなるような作業量やで。脳のデスマーチやな」
(´・ω・`)「それらが済むまで左脳と右脳は余力を失って能力が大幅に低下するだろう。いわゆる『ショックを受けて落ち込んでいる状態』になる」
(´・ω・`)「でもしばらくすると左脳と右脳の世界観修正は完了し、ショックから立ち直る。正常ならね」
彡(゚)(゚)「含みがあるやん。正常じゃなかったらどうなるんや?」
(´・ω・`)「ストレスなどで脳が弱ったりして余力がない時、左脳は世界観の完璧な修正は労力に見合ってないと判断し、それを諦めることがあるんだ」
彡(゚)(゚)「諦めるやて?そしたら現実を正しく認識できなくなるやないか。無理にでも修正を進めるべき違うんか?」
(´・ω・`)「脳の最優先事項は肉体の生存だ。脳内世界観の修正のために命の危険を犯すくらいなら妥協した方がマシって判断するのさ」
彡(゚)(゚)「命の危険ってオーバーすぎひん?ちょっと頭が疲れるだけやろ」
(´・ω・`)「安全で食料も豊富な現代日本だとオーバーに思うかもしれないけど、もし人間が生きてる世界が厳しい野生世界だったら?」
(´・ω・`)「野生では食料が少ないからエネルギーの消耗は避けたいし、脳が疲れれば肉食動物の襲撃に気が付けなくなるかもしれない。それは命の危機を呼ぶよ」
彡(゚)(゚)「それはそうかもしれんけど現代は野生とは違うやん」
(´・ω・`)「人類の文明が発達し始めてからまだほんの数千年しか経ってないんだよ。脳の仕組みが進化するには短すぎる」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ。進化って万年単位で時間がかかるって聞いたことあるわ。まだ人類の脳は文明社会に適応しきってないってことか」
(´・ω・`)「それに脳の過剰な活動は脳神経自体に物理的なダメージを与えて鬱病などを引き起こす恐れもある。最悪自殺にもつながる」
彡(゚)(゚)「マジか。うーん、うつ病に比べれば現実認識が多少狂ってるほうがマシ……なのか?」
(´・ω・`)「まあ現実認識の狂いが結果的に命の危機や鬱病の原因になることもあるんでどっちがマシかは結果論でしか判断できないけどね」
彡(゚)(゚)「鬱病を避けるための仕組みが鬱病の原因になるって……、人間の脳も不完全というか不合理というか」
(´・ω・`)「限られたリソースで色んな状況に対応しようとしたらどうしても非合理的な部分は出てきちゃうさ」
(´・ω・`)「この脳の諦めや妥協こそが認知の歪みの根本的な原因なんだよ」
彡(゚)(゚)「お、ついに認知の歪みの原因についてか!」
(´・ω・`)「認知の歪みには左脳が主原因のものと右脳が主原因のものがあってそれぞれ性質が違う」
(´・ω・`)「まず左脳が主原因の認知の歪みから説明しよう」
(´・ω・`)「左脳が原因の認知の歪みは典型的な症例だと最初は極論という形で発生する」
彡(゚)(゚)「左脳が原因だと極論が起こる?」
(´・ω・`)「例えばさっきのリストラの例で、『自分は有能』という記述を修正せざるを得なくなったとしよう」
(´・ω・`)「でも人間の能力って一言で説明はできないでしょ。得意不得意は様々だし相対的な差だってある」
彡(゚)(゚)「まあせやな。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズからすればほとんどの人は無能や」
(´・ω・`)「そのゲイツやジョブズだってスポーツならその辺の体育会系の中高生以下だよ」
彡(゚)(゚)「確かに」
(´・ω・`)「だから理想を言えば自分のどこがどういう風に無能なのかと具体的に細かく検討する必要があるけどそれは大変だ」
(´・ω・`)「なので左脳は省エネのために『自分は無能』などのシンプルな極論で修正を終わらせてしまうんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどな。極論で済ませてしまえばそれ以上考える必要が無いから楽ってことか」
彡(゚)(゚)「でも保留で済ますことはできへんのか?そのほうがまだマシな気がするんやが」
(´・ω・`)「重要じゃないことなら保留でもいい。でも自分にとって重要なことは脳内の他の様々な部分に複雑に紐付けられてる」
(´・ω・`)「するとそれら全てが一緒に保留状態になってしまって逆に考えないといけないことが増えて脳の負担が増えるんだ」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ」
(´・ω・`)「そして客観的には就業不可能ってほどでもないのに『俺は無能すぎて働けない!』という認知の歪みとなる」
彡(゚)(゚)「おおう、なんかそういう発言してる人がネットにはけっこういるな……、それは修正はできへんのか?」
(´・ω・`)「極論は初期状態なら比較的簡単に修正できる」
(´・ω・`)「例えばたまたまリストラ直後に以前受けた資格試験の合格通知が来たとしよう」
(´・ω・`)「その際に左脳に十分なリソースがあればその事実を元に『資格試験に合格できるなら自分は無能ではない』と再修正する可能性はある」
彡(゚)(゚)「ふむ。初期治療が大事ってことか」
(´・ω・`)「ところが極論が長い間修正されないでいると脳内でそれが他の様々な部分と紐付けされていき、その再修正はどんどん大変になっていく」
(´・ω・`)「さらに厄介なことに極論は省エネのために無理やり作られたものだから内容に矛盾をはらんでいる」
(´・ω・`)「なので紐付けられた他の部分にも新しい矛盾を次々と生んでしまい、修正がますます困難になるんだ」
彡(゚)(゚)「歪みが歪みを呼んでにっちもさっちもいかなくなるってことか……」
(´・ω・`)「右脳はその矛盾を感じてるから左脳に『余裕がある時に修正して』と伝えはするんだけど左脳はそれは不可能だと諦めきってる。するとどうなるか?」
(´・ω・`)「左脳は右脳を誤魔化すために『自分は無能』という認識を脅かしそうな情報に対するフィルターを形成し、右脳がそれにアクセスできないようにしてしまう」
彡(゚)(゚)「記憶の封印の拡大バージョンか。内部の記憶を封印するんじゃなくて外部からの情報まで遮断してしまうんやな」
(´・ω・`)「その通り。しかもそのフィルターは非常に巧妙で、否定したい情報だけを綺麗に遮断するんだよ」
(´・ω・`)「なので他のことについては正常な思考力があるのに特定のことだけ全然理解しないという状態になるんだ」
彡(゚)(゚)「あー、それってまさに拒食症のツンデレの状態とそっくりやないか!」
(´・ω・`)「そうだね。この理論でツンデレちゃんの症状も説明が付くね」
(´・ω・`)「たしかツンデレちゃんは好きな男の子に太ったことをからかわれたショックでダイエットを始めた」
(´・ω・`)「そして十分に痩せたのに自分がまだ太っていると思い込んでさらにダイエットを続けて栄養失調で入院してしまった、だったかな」
彡(゚)(゚)「それで合ってるで」
(´・ω・`)「ツンデレちゃんはその男の子がとても好きでその子に自分がどう見られているかはとても重大なことだったんだろう」
(´・ω・`)「この時のツンデレちゃんの右脳はその男の子のことを自分にとって極めて重要な存在だと脳内で記述していた」
(´・ω・`)「そのためその男の子のことはツンデレちゃんの脳内世界観の多数の部位に強固に紐づけられていた」
(´・ω・`)「なのでその男の子に太っていることをからかわれたことを右脳は自分にとってとても重大な危機であると認識した」
彡(゚)(゚)「若いうちの恋ってものすごく大きなことに思えてくるからなぁ」
(´・ω・`)「恋愛は生殖という動物の根幹の本能に結びついてるからねぇ」
彡(゚)(゚)「味気ない言い方すんなや……」
(´・ω・`)「理想であれば彼のからかいの真意をはっきりさせるべきだけど、」
(´・ω・`)「それをやるにはストレスの影響もあってツンデレちゃんの左脳のリソースが足りなかった」
(´・ω・`)「そこで左脳は労力を減らすために『自分は太っているから彼に嫌われた』『何が何でも痩せないといけない』という極論を脳内世界観に作ってしまった」
彡(゚)(゚)「ありそうなことやな」
(´・ω・`)「そこで男の子がすぐに謝罪するとかすれば修正されたかもしれないけどそうはならなかったみたいだね」
彡(゚)(゚)「残念やな……」
(´・ω・`)「そして時間経過とともにその極論は脳内で他の部分と紐付けされていって修正が困難になり、ついには脳内フィルターを形成してしまった」
(´・ω・`)「そのためにツンデレちゃんはご両親やお医者さんから『もう十分痩せてるよ』と言われてもその言葉を認識できず」
(´・ω・`)「鏡で痩せこけた自分の姿を見たり体重計の数値を見てもそれを理解できなくなってしまったわけだ」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ……」
彡(゚)(゚)「これはもう治すことはできへんのか?」
(´・ω・`)「これを治すにはまず右脳に自分の異常を認識させる必要がある」
(´・ω・`)「左脳の脳内フィルターも完璧じゃない。脳内の経路はとても複雑だから中にはフィルターがかかってない経路も残ってるんだ」
(´・ω・`)「なのでその脳内経路を探しだして右脳に『自分は太っている』という認識に違和感を覚えさせる」
彡(゚)(゚)「なるほど」
(´・ω・`)「そして次に思考の誘導。根本の原因は左脳のリソース不足だからいきなり完璧な修正をさせようとしてもまた新しい認知の歪みが発生するだけだ」
(´・ω・`)「なので左脳に負担をかけないように段階的に少しずつ脳内世界観を修正するように誘導していくんだ」
(´・ω・`)「これが認知療法と呼ばれてる療法だよ」
彡(゚)(゚)「具体的にはどうすればええんや?」
(´・ω・`)「残念ながら患者さん1人1人脳内の状況は全然違うんで一般論では語れないんだ」
(´・ω・`)「なのでプロの精神科医やカウンセラーが注意深く患者さんを分析して患者さん1人1人に合わせた治療方法を作る必要があるんだ」
彡(゚)(゚)「お医者さんに任せるしかないってことか」
(´・ω・`)「さて、では次に右脳が主原因の認知の歪みについて説明するよ」
彡(゚)(゚)「おう。右脳は感情や価値観を司るところやったな」
(´・ω・`)「そうだね。右脳が原因の場合、典型例では強迫観念症やトラウマ、PTSDといった形で認知の歪みが発生するよ」
彡(゚)(゚)「トラウマか」
(´・ω・`)「右脳は脳内の様々な認識に重要度や感情を紐付けしてるっていう説明はしたよね」
彡(゚)(゚)「おう」
(´・ω・`)「でも右脳の紐付けが必ずしも適切とは限らない。偏った経験をしたり命の危機みたいな強烈な経験をすると過剰な感情を紐付けしてしまうことがある」
(´・ω・`)「例えばホラー映画を見て物凄い恐怖を感じたとする。すると右脳はホラー映画に関連する内容に非常に強い恐怖の感情を紐付けするんだ」
(´・ω・`)「するとホラー映画と関連する情報、お化けとか暗いところとか夜とかにもその恐怖の感情が強烈に紐付けされてしまう」
彡(゚)(゚)「なるほど」
(´・ω・`)「そうなると左脳が『ホラー映画はフィクションだから現実じゃない』という客観的な事実を提示しても、右脳は暗いところに過剰な恐怖を感じるようになる」
(´・ω・`)「そして頭ではお化けなんていないって分かってるのに怖くて夜1人でトイレにいけなくなってしまう」
彡(゚)(゚)「小さい子がよくなるな」
(´・ω・`)「でも脳のリソースが十分なら日常生活の中でお化けの実在を否定する学習を繰り返すことで右脳は恐怖の紐付けを弱め、修正される」
彡(゚)(゚)「お化けを過剰に怖がるのをやめるんやな」
(´・ω・`)「しかし暗がりで何回も脅かされるなど恐怖を感じる経験を繰り返すとその紐付けはさらに強化されてしまう」
(´・ω・`)「これがある一定レベルを超えると修正のための労力が右脳のリソースを超えてしまうために修正不可能になってしまうんだ」
(´・ω・`)「こうなると頭ではお化けなんていないって分かってても一生夜1人でトイレにいけなくなってしまう」
彡(゚)(゚)「なるほどなぁ。これは左脳の極論思考に比べれば分かりやすいな。自分でもそれに近い状態になる時があるって分かるわ」
(´・ω・`)「そうだね。右脳が原因の認知の歪みは本人が自覚しやすいという特徴がある」
(´・ω・`)「例えば幽霊を信じてないのにお墓は怖いとか、神様を信じてないのに悪いことをすると罰が当たりそうで怖いみたいな迷信もそうだし」
(´・ω・`)「茶柱が立てばいいことがありそうな気がする、なんていうジンクスの類も厳密には認知の歪みの一種だ」
彡(゚)(゚)「それらも認知の歪みなのか……」
(´・ω・`)「でも生きて行く上で悪影響がないなら別に気にしなくてもいいよ」
(´・ω・`)「認知の歪みが問題になってくるのは生活に悪影響が出るかどうかがポイントだからね」
彡(゚)(゚)「生きて行く上で不都合があるかどうかが重要なんやな」
(´・ω・`)「生きて行くのに大きな問題が発生する例だと戦争を経験した兵士のPTSD問題があるね」
(´・ω・`)「ベトナム戦争を体験したアメリカ軍の兵士は平和なアメリカに帰ってもベトナム兵に襲われるかもしれないというリアルな恐怖に苦しんだという」
(´・ω・`)「ここまで来れば本人も苦しいし生活にも重大な悪影響が出てしまうだろうね」
彡(゚)(゚)「ランボーで見たわ。ベトナム帰りはすごい苦労したそうやな」
(´・ω・`)「これも認知療法で時間をかけて治療するしかない」
(´・ω・`)「認知の歪みは右脳が原因であれ左脳が原因であれ自力で治すことはほぼ不可能だからね。プロに任せよう」
彡(゚)(゚)「自分の脳のリソースを超えてしまうわけやからな。自力じゃ修正はできへんわな」
(´・ω・`)「ここまでのことをまとめてみよう」
○脳には論理的思考をするが感情がない左脳と、感情があり直観的思考をするが論理的思考ができない右脳がある
○左脳は生きて行くための指標として脳内世界観を作り出し、右脳はその脳内世界観が正しいかチェックし、間違っていれば修正する
○脳のリソースが不足すると脳内世界観の修正が上手くいかなくなって脳内世界観と現実が矛盾し、認知の歪みが発生する
○認知の歪みは左脳が原因になる場合と右脳が原因になる場合がある
○左脳が原因の認知の歪みは右脳のチェックを停止させる脳内フィルターが形成されるため自分では自覚ができない
○右脳が原因の認知の歪みは自覚しやすいが自覚しても自力での修正は困難
○認知の歪みは生活に悪影響がないのであれば無理に修正する必要はない
○生活に悪影響が出る認知の歪みは精神科医などのプロに治療してもらおう
彡(゚)(゚)「まとめにしてはちと量が多いな」
(´・ω・`)「以下は余談だけど、認知の歪みは怪我とか脳梗塞とかで右脳に物理的ダメージを負ってしまった人に極端な形で現れることがあるんだ」
(´・ω・`)「右脳にダメージを受けて体が麻痺してしまった人は自分の体が麻痺したことを理解できないことが多いんだよ」
彡(゚)(゚)「どういうことなんや?」
(´・ω・`)「例えば明らかに左手が麻痺して動いてないのに『私の左手はちゃんと動いています!』と言い張って左手で料理をしようとして大失敗を繰り返す」
(´・ω・`)「でも『今料理に失敗したのはたまたま地震が起きたからですよ』なんて言い出す。地震なんて起きてないのに」
彡(゚)(゚)「ははぁ、右脳による世界観のチェックができなくなったから『自分の左腕は動く』っていう世界観を修正できないってことか」
(´・ω・`)「そういうことだね。いっぽう左脳が傷付いたけど右脳が無事な人はこういうことが起きない」
(´・ω・`)「論理的思考力が低下するので正確に自分の状態を把握できないこともある。でも自分の能力が低下したことはちゃんと理解できるんだ」
(´・ω・`)「でも右脳が傷ついた人は論理的な思考能力は無事で難しい学問について考えることができるのに自分の状況だけは理解できないんだ」
彡(゚)(゚)「不思議なもんやな。論理的思考能力が無事なほうが自分を客観的に理解しやすい気がするんやが」
(´・ω・`)「それもこれまで説明してきた左脳と右脳の役割と性質の違いに起因するんだ」
(´・ω・`)「もう一つの余談だけど、『外国の要人を洗脳するなら海外赴任した直後の外交官を狙え』というテクニックがCIAには存在する」
彡(゚)(゚)「ファッ!?どういうことや!?」
(´・ω・`)「上のほうで新しい環境に移った人は脳内世界観の修正で心が疲れやすくなってるっていう話をしたでしょ」
彡(゚)(゚)「おう、せやったな」
(´・ω・`)「外国に赴任したばかりの人は母国の常識の通じない新環境で脳内世界観の修正が活発に起こってる」
(´・ω・`)「するとこの状態では右脳が今までの自分の思想が正しいのか疑心暗鬼になってるんだ」
(´・ω・`)「だから新しい思想を植え付けられやすい状態なんだよ。だから洗脳するならこの時を狙えってことさ」
彡(゚)(゚)「ふぁー、なるほどなぁ。えげつないテクニックやで」
(´・ω・`)「同様に詐欺師は老人だけでなく一人暮らしを始めたばかりの新大学生とか新社会人もメインターゲットとして狙うのさ」
彡(゚)(゚)「おおう、単に世間知らずだから騙しやすいってだけじゃなくて脳科学的にも根拠があるんやな」
(´・ω・`)「タイトルがやたらとショッキングな本もこれと同じ効果を狙ってるんだよ。一時的にでも右脳の世界観修正を引き起こして判断力を低下させるんだ」
彡(゚)(゚)「なるほど。そういうのも根拠があるんか」
(´・ω・`)「さて、ひとまず終わりにするよ。実際にはもっと細かい理論がいっぱいあるんだけどキリがないからこれくらいにしておくね」
彡(゚)(゚)「おう、サンキューな、原ちゃん」
(´・ω・`)「そうだ。良ければ今回話した内容に関連する本を何冊か紹介するよ」
(´・ω・`)「『はじめての認知科学』『脳のなかの幽霊』『妻を帽子と間違えた男』『奇跡の脳』。これらは初心者にも読みやすくてお勧めだよ」
彡(゚)(゚)「おいおい、ワイは馬鹿やから文字だらけの本なんて読めへんて。勘弁してくれや」
(´・ω・`)「何言ってるんだよ。試しに挑戦してごらんよ。意外と読めるかもしれないよ」
彡(゚)(゚)「うる…い…」
(´・ω・`)「え?」
彡(゚)(。)「うるさーい!ワイは馬鹿なんや!そんな難しそうな本は読めへんのやー!うがあああああああああー!」
(´・ω・`)「うわわわ、落ち着いてお兄ちゃん!」
彡(゚)(゚)「はぁ、はぁ……ワイは馬鹿なんや……、ワイは馬鹿なんや……、ワイは馬鹿なんや……」
(´・ω・`)「お、お兄ちゃん……」
彡(^)(^)「あれ、どうしたんや原ちゃん。顔色悪いけど喋りすぎて疲れたんか?もう帰ってゆっくり寝たほうがええで」
J( 'ー`)し「認知の歪みは自覚できないことが多い……」
J( 'ー`)し「そう、このSSを読んでいるあなたにも……ツンデレちゃんややきうのように認知の歪みがあるかもしれません……」
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