【ワーフリ】 アルク 「はい、あーん」(70)

………………星見の街 食堂

ミノ 「アルク、あーん、ってしてほしい」

シウエ&シルティー&フィリア 「「「!?」」」

アルク 「はいはい。仕方ないなぁ。はい、あーん」

シウエ&シルティー&フィリア 「「「!?!?」」」

ミノ 「あーん……はむっ」

ミノ 「おいしい……」 トローン

シウエ 「……あ、アルク~?」

アルク 「ん? どうかした? 味付けおかしかった?」

シウエ 「い、いえ~。いつもどおり、とっても美味しいご飯ですよ~」

シウエ 「ご飯は美味しいのですが、あの~……」

アルク 「?」

シルティー 「あ、アルク兄さま! どういうことですか!?」

アルク 「シルティー? どうかした?」

シルティー 「は、破廉恥です! 公衆の面前で、そんな……///」

アルク 「?」

フィリア 「……あの、アルクさん」

アルク 「フィリア? どうしたの?」

フィリア 「たぶん、シウエさんもシルティーさんも、今の……」

フィリア 「………………」

フィリア 「……あ、“あーん” のことを、聞きたいのだと、思います……///」

アルク 「“あーん” ……?」

アルク 「……ああ、ミノに食べさせてあげたやつ?」

ミノ 「アルク、もう一回!」

アルク 「あー、はいはい。ちょっと待っててね、ミノ」

アルク 「……はい、あーん」

ミノ 「あーん……はむっ。……えへへ、とっても美味しい。アルク、ありがとう!」

アルク 「やぁ、そう言ってくれると嬉しいな」

フィリア 「それです、それ!!」

アルク 「へ? ああ。いや、それって言われても……」

アルク 「“あーん” してあげてるだけとしか……」

フィリア 「し、してあげてるだけ……」

フィリア 「………………」

フィリア 「……して、あげてる、だけ」

アルク 「……フィリア?」

フィリア (……と、いうことは)

フィリア 「えっ、えっと……」

フィリア 「……あ、アルクさん。私も……」

フィリア 「あーん、して、ほしいです……///」

シウエ&シルティー 「「!?」」

アルク 「ああ、なんだ、フィリアもしてほしかったんだね」

アルク 「いいよ。はい、あーん」

シウエ&シルティー 「「!?!?」」

フィリア 「あ……あーん……///」

フィリア 「………………」

フィリア 「……とっ、とっても,美味しいです……///」

シウエ 「……アルク、わ、私も~、あーん、してほしいです~、なんて……」

シルティー 「!?!?」

アルク 「シウエも? いいよ」

シルティー 「!?!?」

アルク 「はい、あーん」

シウエ 「あ、あーん……///」

ハムッ

シウエ 「……ああ、私のムクト、とっても美味しいですよ」

シウエ 「……そういえば、里以外ではこう言うのでしたね」

シウエ 「とっても美味しいです、あなた♪」

シルティー 「………………」

シルティー 「あ、アルク兄さま!! 私も……」

アルク 「? シルティーも?」

シルティー 「っ……」

シルティー (め、目を覚ましなさい、シルティー・サーディア!!)

シルティー (あなたはドラゴンからエンリルを取り戻した、まぎれもないサーディアの騎士!)

シルティー (誉れ高い最強の剣士! サーディアの剣鬼と呼ばれ恐れられる存在でしょう!?)

シルティー (そんなあなたが……年上の男性にあーんとごはんを食べさせてもらうことなど……――)

ミノ 「アルクー、もう一回ー!」

フィリア 「あ、あの、アルクさん。私も、もう一回……///」

シウエ 「ムクト、私も、もう一回お願いします~」

シルティー 「――……シルティーもお願いします!!! アルク兄さま!!!」

おわり

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
キャラクターの解釈不一致等で不快な気持ちにさせてしまっていたら申し訳ないです。
ミノと風三人娘が大好きなので書きました。
そもそもこんなマイナーなゲームのSSに需要があるのか、とか色々思うところはありますが、
スレ節約のためにこのスレに今後もいくつかSSを投下したいと思います。
また読んでくれたら嬉しいです。

>>1です。
投下します。

プリカ 「ねぇ、私ってばデートをしてみたいわ!」

………………星見の街 食堂

アルク 「は? デート?」

プリカ 「そう! デートよ、デート!」

ステラ 「デート。男女が一緒にお出かけをすること……でしょうか」

ライト 「また妙なことに興味を持ったものだな……」

プリカ 「妙って何よ! ステラから借りた本で読んだのよ!」

プリカ 「私ってばお姫様じゃない? お姫様と言えば、お忍びで男の子と逢瀬を重ねるものなのだわ!」

シロ 「どっから突っ込んだらいいのか分かんねぇな……」

ステラ 「つまり、プリカさんは誰か男性とお出かけをしたいということですか?」

プリカ 「その通り! だから、誰か一緒に出かけましょう?」

シロ 「………………」

アルク 「………………」

ライト 「………………」

シロ 「……また面倒なことになりそうだから、俺は失礼するぜ」

ガシッ

アルク 「いいじゃない。シロ、プリカとデートしてあげなよ」

シロ 「ああ!? やめろ! 腕をつかむな! 俺を巻き込むな!」

アルク 「え? だってほら、シロの女の子のタイプって……――」

シロ 「――だああ!! 何を言うつもりだやめろバカ!」

シロ 「っていうかアルクてめぇ! お前がめんどくさいだけじゃねぇか!!」

アルク 「やぁ。そんなことはないんだけどねぇ……」

シロ 「なら俺の目見ろやコラァ!」

ワーワーギャーギャー

ライト 「まったく。当人を置いて騒いで。失礼なことだ。こんな二人にプリカ嬢は任せられんな」

キリッ

ライト 「仕方ない。僭越ながら私が相手役を務めよう」

プリカ 「えぇ~? ライトぉ~?」

ライト 「なっ……!」 ガガーン

ライト 「なんだその不服そうな顔はー!」

プリカ 「だって、ライトってちっこい毛玉だし、なんかおじさんくさいし……」

ライト 「毛玉……!? お、おじっ……!?」

プリカ 「あと、なんかあんまりそういう経験なさそうだし!」

ライト 「………………」 ガガガーーーーン

アルク 「ライトが固まった……」

シロ 「ありゃしばらくは立ち直れねぇな……」

ズゴゴゴゴ……!!

シロ 「あん? なんだこの揺れ……?」

アルク 「……? この感じは……まさか!」

バーーーン!!!

ベルセティア 「アルクちゃーん!! じゃあお姉さんとデートしましょう!!」

アルク 「ベルセティアさん!? えっ、ちょっ、まっ……! 掴まないで……わっ……」

アルク 「見てないで助けてよシロ!!」

シロ 「……うん」 ニコッ 「いってこい、アルク」

アルク 「シロ!?」

ベルセティア 「ふふふ♪ 口うるさい勇者が無力化された今がチャンスなの。行きましょ、アルクちゃん♪」

ズズズズズズ……

シロ 「……消えた。相変わらず忙しねえおば――お姉さんだな」

プリカ 「アルク、デートに行ったのね!? 今のお姉様は、アルクの恋人さん!?」

シロ 「ああ、もうめんどくせぇしそれでいいんじゃねぇかな」

プリカ 「じゃあ、仕方ないわね。シロ、この際大きな毛玉なのは大目に見てあげるから、私とデートしなさい!」

シロ 「なんでそっちが不服そうなんだよ! 俺はデートなんかごめんだからな!!」

プリカ 「何よぉ! 私はお姫様よ!? 王子様でもないのにデートができるのを光栄に思いなさい!」

シロ 「だぁああ! この街には面倒くせぇ女しかいねぇのかちくしょう!」

ガチャッ……

ラーゼルト 「……ん? このオレが久々に戻ってきてやったというのに、なんだこの騒ぎは」

シロ 「ん?」

ステラ 「あ、王子様です」

プリカ 「王子……」

ラーゼルト 「な、なんだ? 人の顔をジロジロと……。オレの高貴な相貌に見とれたか?」

シロ 「適任じゃねぇか。あいつならお前も文句ねぇだろ?」

ステラ 「本物の王子様ですからね」

プリカ 「まぁ、そうね。ライトよりは経験豊富そうね!」

ライト 「ぐふっ……」

シロ 「オーバーキルだなもう……」

ラーゼルト 「ええい! さっきから人の顔を見てゴチャゴチャと! 悩み事か!? なら早く申せ!」

ラーゼルト 「相談くらいになら乗ってやる! その上でオレにできることがあれば協力してやるに吝かでもないぞ!」

シロ 「ほんと、偉そうに良い奴だよな、お前。まぁ、だからこういうことになるんだけどな」

ラーゼルト 「む? それは一体どういう意味だ……――」

――――ガシッ

ラーゼルト 「!? な、なんだ、プリカ。急に人の手を取って……」

プリカ 「ねぇ、ラーゼルト!」

ラーゼルト 「……? なんだ?」

プリカ 「私とデートしましょう!!」

………………パルペブラ

プリカ 「さ、ということで、デートよ、ラーゼルト!」

ラーゼルト 「う、うむ……」

ラーゼルト (ぐぬぬ、シロの奴め。オレに面倒事を押しつけおったな。覚えておれよ……!)

ラーゼルト (……とは思いはするものの)

プリカ 「ふふふ、私ってば、とってもわくわくしているわ!」

ラーゼルト (特殊な出自とはいえ、姫は姫! ファーランドの王子として、その願いを無下にすることなどあってはならない!)

ラーゼルト 「ハーッハッハッハ!! いいだろう! このラーゼルトが、お前をロイヤルにエスコートしてやろう!!」

ラーゼルト 「大船に乗ったつもりで……いや、サーフィンくらいに乗ったつもりでいるがよいぞ!!」

ラーゼルト (……とは、言ったものの、デートとは一体どこへ行けばよいのだ?)

ラーゼルト 「……あー、プリカ。どこか行きたいところはあるか?」

プリカ 「もちろん! ステラの本でデートしていた場所、全部よ!」

ラーゼルト 「ぜ、全部、だと……!」

ラーゼルト 「……ええい! それくらいこのファーランドの王子かかれば大したことではない! まずはどこへ行きたいのだ!」

プリカ 「うん! 最初はね……」

………………物陰

シロ 「……おー、なんというか、早速不安だな」

ステラ 「でも、プリカさんは楽しそうです」

ステラ 「? というか、このままあとをつけるのですか?」

シロ 「仕方ねぇだろ。さすがにあのまま放り出しちまったらあの王子サマにわりぃしな」

ステラ 「……ふふ」

シロ 「ん?」

ステラ 「シロさんは優しいです。プリカさんとラーゼルトさんのことが心配なんですね」

シロ 「……けっ、そんなんじゃねぇよ」

シロ 「おっ、どっかに行くみたいだな。追いかけるぞ、ステラ」

ステラ 「はい。行きましょう」

………………カフェ?

プリカ 「………………」

ラーゼルト 「……なんだ、その顔は」

プリカ 「ねぇ、ラーゼルト。私、まずはカフェに行きたい、って言ったわよね?」

ラーゼルト 「ああ。言ったな」

プリカ 「……じゃあなんで」

プリカ 「……なんで酒場に連れてくるのよー!!」

ラーゼルト 「し、仕方なかろう! このオレにエスコートをさせているのだぞ!?」

ラーゼルト 「行きつけの酒場でもなければ道に迷うに決まっておろうが!」

プリカ 「情けないことを大いばりで言わないでくれる!?」

ワーワーギャーギャー

………………別の席

シロ 「……おいおい」

ステラ 「………………」

シロ 「やっぱりあの王子サマに押しつけたのは失敗だったか。今からでも俺が代わった方がいいか。いや、でもな……」

ステラ 「……大丈夫ですよ、シロさん」

シロ 「あん? 大丈夫?」

ステラ 「ほら、見てください」

………………

プリカ 「まったくもう! あんた本当に王子なんでしょうね?」

ラーゼルト 「不敬がすぎるぞ、小娘! オレはかの大国ファーランドの王子、ラーゼルトだぞ!?」

プリカ 「ふんだ。女の子ひとり満足にエスコートできなくて王子様ね……」

スッ……

プリカ 「……!? あら、このお茶、美味しいわ!」

ラーゼルト 「ふん。当然であろう。このオレの行きつけだぞ! 酒からジュースまで何でも美味いに決まっておろう!」

ラーゼルト 「ついでに安くてツケもきく!」

プリカ 「……ふーん」

プリカ 「……へぇ」

ラーゼルト 「な、なんだ、その微妙な反応は。褒めるのが無理ならせめて突っ込むかバカにするかくらいはせんか!」

プリカ 「バカね。感心してたの。最後のがなければもっと感心してたけどね」

ラーゼルト 「む……?」

………………

ステラ 「……ちゃんと楽しそうです」

シロ 「ん、ああ、まぁ楽しそうではあるけどな……」

シロ 「……あれでいいのか?」

………………

ラーゼルト 「それで、次はなんだ?」

プリカ 「次……そうね! 私ってば、お芝居が観てみたいわ!」

………………お芝居小屋???

プリカ 「………………」

アナウンス 『幸運なる紳士淑女の皆様! いよいよ真打登場のお時間です!』

アナウンス 『煌めきのエクリール、登場です!!』

ラーゼルト 「……おっ、見ろ、プリカ。出てきたぞ。あれがこの劇場の花形役者だ!」

ワーワー キャーキャー エクリールサマー!!!

プリカ 「……ねぇ、ラーゼルト」

ラーゼルト 「ん、なんだ?」

プリカ 「私、お芝居が観たいって言ったわよね?」

ラーゼルト 「ああ、言ったな」

プリカ 「なら、どうして……」

プリカ 「……どうして闘技場なんかに来てるのよー!!」

エクリール 『やぁ、みんな! 今日も私の剣技、思う存分堪能していってほしい!』

ワーーーーーー!!!!

ラーゼルト 「仕方なかろう。オレはこの街で芝居を観たことはないから間違いなく迷う!」

ラーゼルト 「そして、剣闘も広義の意味では芝居だろう!」

ラーゼルト 「よって問題なし!!!」

プリカ 「問題しかないわよこのバカ王子ーーーー!!!」

ラーゼルト 「なっ!? バカ王子だと!? 貴様、さすがに不敬がすぎるぞ!?」

オオオオオオーーーーーー!!!!!

ラーゼルト 「……などと言っている間に魔物を倒してしまいおったな。剣闘士め。さすがの腕だな……」

プリカ 「秒殺だったわね。それにしてもあの剣、綺麗ね。もっと長く見られたらいいのに」

ラーゼルト 「む? 剣闘に興味が出てきたか? それはちょうどよいな」

スッ……

プリカ 「へ? ラーゼルト? まだ終わりじゃないでしょ? 何で立つの?」

ラーゼルト 「ちょっとここで待っていろ。すぐ戻る」

ラーゼルト 「……数分は耐えてやる。せいぜいあの剣闘士の剣技を堪能するといい」

プリカ 「? 行っちゃったわ……」

プリカ 「……ラーゼルトったら、レディのこと放り出して、どういうつもりかしら!」

プリカ (……? それにしても “数分は耐えてやる” って、どういうことかしら?)

アナウンス 『続きまして、本日のメインイベント、対ドラゴン……の前座!! 謎の覆面騎士、タテ・オジの登場です!!』

プリカ 「あら……?」

………………別の席

シロ 「はァ……?」

ステラ 「まぁ」

シロ 「なにやってんだよあいつ……」

アナウンス 『なんと、タテ・オジ氏は本日飛び入りで闘技場への参加を申し出た素人さんです!』

アナウンス 『出場理由は “単純にお金がない!” だそうです!』

ドッ!!!

シロ 「……本当になにをやってるんだよあいつは」

シロ (そういやあいつ王子のくせに金がないんだったな。ワリィことしちまったな……)

………………

エクリール 「……じゃあ、ちょっと本気で行くけど、大丈夫? ラーゼ……じゃなくて、タテ・オジさん?」

?? 「あ、ああ、大丈夫だ。貴様の剣技のすさまじさは知っているが、王殻は龍の全力すら凌ぎきる。問題ないはずだ」

?? 「……これはそのレプリカだが」

エクリール 「ふふ。そうか。そうだったね。そんな逸品のレプリカとあらば、“ちょっと” というのは失礼だったかな」

ザッ……!!!!

エクリール 「全力で本気で行こう!!」

?? 「なぜそうなる!?」

エクリール 「煌めけ! イーリス・ブレード!!」

?? 「……ええい!! 人の話を聞かん奴だな! シェル・エンブリオ、起動せよ!!!」

………………

ワーワーキャーキャー!!!!!

プリカ 「は~~~……」

プリカ 「すごいわね。あの速くて綺麗な剣を、全部防いでる……?」

プリカ 「………………」

グッ

プリカ 「が、がんばれーー!! タテ・オジー!!!」

………………

ステラ 「素晴らしい闘いでした」

シロ 「ん、ああ。なかなかだったな」

ヤキモキヤキモキ

シロ (最後、ヤロウが盾ごと吹っ飛ばされてたのは、演技か……? いや……)

シロ (……あんま考えねえでおこう)

ステラ 「それにしても……」

ムムムムムム……

シロ 「あん? どうした? 真面目な顔して唸っちまって……」

ステラ 「あのタテ・オジさんという方の正体、気になります……」

ステラ 「一体どこのどなたなのでしょうか」

シロ 「あー……」

シロ 「……どこの誰だろうな。ほんと」

………………楽屋裏

ラーゼルト 「ひ、酷い目にあった……」

エクリール 「いや、すまないね。君の盾があまりにも固いものだから、ついムキになってしまった」

エクリール 「途中から本気だったよ。素人相手に悪いことをしてしまったね」

ラーゼルト 「王殻ごとオレを吹き飛ばしおって……。貴様本当に人間か」

エクリール 「そう言ってくれるなよ。私程度の者なら、あの街にはザラにいるだろう?」

ラーゼルト 「……それはそうだがな――」

「――……あっ! いたー! ラーゼルト!!」

ラーゼルト 「む……? プリカか」

プリカ 「プリカか、じゃないわよ!! どこ行ってたのよもーっ!! ……って、あんたボロボロじゃない! 一体どうしたのよ!?」

ラーゼルト 「いや、まぁ、うむ……ちょっとすっころんでな……。問題ない。気にするな」

プリカ 「……? そう? まぁ大丈夫そうならいいわ!」

プリカ 「あのね、すごかったのよ!! メインイベントの対ドラゴンもすごかったけど、前座のタテ・オジがね!!」

プリカ 「エクリール様の攻撃を何度も何度も何度も……――」

プリカ 「――ってエクリール様!?」

ラーゼルト 「やかましい奴だな。オレの耳元でキンキン叫ぶんじゃない!!」

エクリール 「や、こんにちは、お嬢さん。こちらが君のお連れさんかい? ラーゼルト」

ラーゼルト 「ああ。お前はめったに街に来ないからまだ会っていなかったな。先日仲間になったプリカだ」

ラーゼルト 「……というかプリカ! 貴様、王子であるオレのことはラーゼルトなどと気軽に呼び捨てにしておいて、剣闘士には様付けだと!?」

プリカ 「何よ! だってエクリール様、あんたと違ってカッコいいじゃない!」

ラーゼルト 「うぐっ……な、なんと不遜な……!」

エクリール 「へぇ。この子が、君の、連れ……ねぇ?」 

エクリール (低い上背、幼い顔立ち、それに反するようにふくよかで女性らしいグラマラスな体……)

エクリール 「……こういう子がタイプなのかい? ちょっと犯罪臭いよ、ラーゼルト」

ラーゼルト 「貴様は貴様でなにをくだらぬ邪推をしておるのだエクリール!!」

プリカ 「エクリール様! 私ったら、今日初めてエクリール様の闘いを観て、ファンになっちゃいました!」

エクリール 「へぇ、それは嬉しいね。興業に興味を持ってくれたなら、今後も観に来てくれると嬉しいな」

プリカ 「はい、ぜひ!!」

プリカ 「あ、あと……」

エクリール 「? なにかな?」

プリカ 「さっきの、タテ・オジさんはどこ? あの人にも会ってみたいわ」

エクリール 「……ふぅん」 チラッ

ラーゼルト 「………………」 プイッ

エクリール 「……ふふ。あいにく、彼はシャイでね。人前にはマスクなしでは出られないんだよ」

エクリール 「感想があれば伝えておこうか?」

プリカ 「は、はい! あの……最後は吹っ飛ばされちゃったけど、すごくカッコ良かったって……伝えてくれると嬉しいです」

エクリール 「へぇ……」 チラッ

ラーゼルト 「………………」 プイッ

エクリール 「うん。間違いなく伝えておくよ。今後も彼はきっと、飛び入り参加してくれるだろうしね?」

ラーゼルト 「ええい! いちいちオレの方を向くな!」

ラーゼルト 「……まぁ、たぶん、おそらく……また、出てくれるのではないか? オレの知るところではないがな!」

エクリール 「そうか。それは楽しみだ。私も、ますますもって刃を研いでおかねばね」

ラーゼルト 「……ほ、ほどほどに頼むぞ」

………………

プリカ 「ねぇラーゼルト、私ってば、ゲームがやりたいわ!」

プリカ 「ステラの本で、ゲームがたくさん並んでる “ゲームセンター” っていう場所を見たの!」

ラーゼルト 「ゲーム……? がたくさん並んでいる……?」

ラーゼルト 「ああ、なるほど。そういうことか。あいわかった」


………………ゲームセンター?

プリカ 「……って、ここ、カジノじゃないのよー!」

ラーゼルト 「む? ゲームがやりたいといえば、賭場だろう? 違うのか……?」

………………

プリカ 「今度は何か乗り物に乗りたいわ! 馬車とか、ふたりで乗れるやつよ!」

ラーゼルト 「乗り物……馬車は金がかかるな。あとは……」


………………馬車?

プリカ 「……ねぇ、ラーゼルト、これ、乗り物なの?」

キノ 「ヌォプ、ヌォプ……」

ラーゼルト 「キノたちが快く傘に乗せてくれているのだ。文句を言うものではない」

ラーゼルト 「乗り心地は悪くないだろう? 極上のソファに乗りながら移動しているような……」

ブフォッ!!!!

ラーゼルト 「ごふっ……と、時折出てくる胞子を我慢すれば、だが……」

プリカ 「あー、もうっ!」

………………夕刻 星見の街

パァアアアアアア……!!!

ラーゼルト 「ハーッハッハッハ! どうだ、プリカ。このオレの完璧なエスコートは!」

ラーゼルト 「ロイヤルに最高だっただろう!? そうだろう!」

プリカ 「……オシャレなカフェでお茶の予定が、酒場」

ラーゼルト 「む……」

プリカ 「お芝居を観る予定が、闘技場で剣闘」

ラーゼルト 「むぅ……」

プリカ 「ゲームの予定が賭場」

プリカ 「馬車に乗る予定が、キノ……」

ラーゼルト 「………………」

プリカ 「……色々と変だったし、最高でもなかったわ」

ラーゼルト 「ぐっ……」

プリカ 「………………」

クスッ

プリカ 「……でも、私ってば、とっても楽しかったんだわ!」

プリカ 「だから、ありがとう、ラーゼルト! あなたとデートができてよかったわ!」

ラーゼルト 「む……そ、そうか」

ラーゼルト 「……まぁ、王族としては姫の願いは無下にはできんからな」

プリカ 「ふふ。でも、次はもっと素敵なエスコートをしてくれたら、もっともっと嬉しいかしら」

ラーゼルト 「つ、次!? 次があるのか……!?」

プリカ 「当然でしょ! ……って、あら?」

パァアアアアアア……!!!

シロ 「んあ? お前ら、もう帰ってたのか」

ステラ 「お帰りなさい、プリカさん。ラーゼルトさん」

ラーゼルト 「ああ、戻ったぞ。とはいえ、お前たちも出かけていたのか」

シロ 「ん? ああ。晩飯の買い出しだよ」

シロ (……お前らの後をつけてたけど途中で見失って買い物してた、なんて言えねぇよな)

プリカ 「ふふ。じゃあ、ふたりもデートをしていたのね。シロ、ステラ」

シロ 「はァ?」

ステラ 「デート……?」

ステラ 「そうですね。私とシロさんも、デートをしていたことになりますね」

シロ 「おいおい。お前まで何変なことを……」

ステラ 「楽しかったですね、シロさん」

シロ 「ん……」

シロ 「……ああ、まぁ、楽しかったんじゃねぇかな」

プリカ 「あら、私たちも楽しかったわよね、ラーゼルト?」

ラーゼルト 「む。ああ。まぁ、楽しかった……のだろうな」

シロ (なんだかんだ、プリカも満足したみたいだし、一件落着か)

シロ (……? なんか忘れてる気もするが、まぁいいか)

………………???

ベルセティア 「ふふ、アルクちゃん。ここはね、私のヒミツのスポットよ」

ベルセティア 「貴重なオクスリの元になる、魔物の巣なの」

ウゴウゴウゴウゴ……

ベルセティア 「収穫、手伝ってくれるわよね?」

ベルセティア 「ふふ。アルクちゃんとのデートなんて、お姉さん緊張しちゃうわぁ!」

アルク 「むーーーーっ! むーーーーーーーっ!!!」 (手伝うから! 手伝いますから!!! 離して~~!!)

アルク 「むごーーーーっ!!!」 (胸で窒息するからーーーーー!!!!)

おわり

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

ラーゼルトくんとプリカが好きなので書きました。
また投下します。

>>1でうs。
書き上がってしまったので投下します。

シウエ 「アルク、何かしてほしいことはありますか~?」

アルク 「へ? いきなりどうしたの?」

シウエ 「いえ~、特段どうしたということはありませんが~」

シウエ 「アルクがしてほしいことを、してあげたいと思いまして~」

シウエ 「アルクが望むこと、何でもして差し上げますよ~?」

アルク 「へぇ……? 何でも……?」

シウエ 「………………」 ニコニコニコ

シウエ (……まぁ、もちろん特段どうしたということはない、わけはありませんけれども~)

シウエ (アルクは、精霊よりも優先すべきことがあると言いました~……)

シウエ (なら……)

シウエ (ふふふ~、アルクに私を好きになってもらえば、アルクは何を差し置いてでも私を優先するようになるはずです~)

シウエ (そして、ステラさんの蔵書で学びましたよ~)

シウエ (殿方は、女性に “何でも” と言われることに弱い、と)

シウエ (さあ、覚悟してくださいね、アルク)

シウエ (私の魅力で、あなたをトリコにして見せますから~)

アルク 「何でも……何でも、かぁ……」

ニヤァ

アルク 「うん! じゃあ、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。こっちに来てよ」

シウエ 「!?」

シウエ (さ、早速部屋の奥に……!?)

ドキドキドキドキ

シウエ (さすがは私のムクトです~、大胆なところ、キライではないですよ~?)

……ドサッ

シウエ 「……へ?」

アルク 「洗濯物、溜まってたんだ。ちょっと手伝ってくれると助かるな」

シウエ 「洗濯……? あ……」

シウエ 「……わ、わかりました。お手伝いさせていただきます~」

アルク 「? なんか顔が赤いよ、シウエ。大丈夫?」

シウエ 「!? あ、赤くなってなんかいません!」

アルク 「?」

………………

ソヨソヨソヨソヨ……

アルク 「やぁ、洗濯を手伝ってもらって、その上そよ風まで吹かせてくれるなんて」

アルク 「助かるよ、シウエ! 本当にありがとう!」

シウエ 「いえ~、このくらい、お安いご用です~」

シウエ (……普通にお洗濯をお手伝いしてしまいました)

シウエ (ま、まぁ、これはこれで、きっとアルクの私に対する好感度も上がったことでしょうし、よしとしましょう)

シウエ (精霊も、はためく洗濯物を美しいと喜んでいるようですし……)

フィリア 「あ、アルクさん。シウエさん。こんにちは。お洗濯物ですか?」

アルク 「うん。溜めちゃってたんだけど、シウエのおかげでいつもより早く終わったんだ」

シウエ 「ふふふ~」

フィリア 「……へー。なるほど。なるほど」

フィリア 「アルクさんのお役に……シウエさんが……なるほどなるほど……」

ニコッ

フィリア 「シウエさん、お疲れでしょうから、風の係、代わりますよ」

シウエ 「へ? あ、いえ、これは私の仕事で……――」

フィリア 「――お疲れでしょう? 風の係、代わりますよ?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

アルク 「よかったじゃん、シウエ。フィリアに代わってもらいなよ」

シウエ 「あ~……」

シウエ 「わ、わかりました。では、あとはよろしくお願いします~」

フィリア 「はいっ」

ソヨソヨソヨソヨ

シウエ 「……つ、次です!」

アルク 「へ?」

シウエ 「次は何をしたらいいですか? アルク」

アルク 「やぁ。なんか今日はやる気満々だね、シウエ」

アルク 「じゃあ次は……」

………………パルペブラ

アルク 「いや、本当に助かるよ、シウエ」

アルク 「今日はシロもステラも忙しくて、買い出しひとりだと大変だろうなって思ってたから」

アルク 「ライトもベルセティアさんと追いかけっこしてるし……まぁ元々ライトは重い物持てないけど」

シウエ 「いえいえ~。アルクのお役に立てたのなら嬉しいです」

シウエ (一歩引いて、殿方を立てる。これが基本、でしたね~)

シウエ (ふふふ~、アルクも少しずつ、私の魅力に気づき始めているはず……――)

アルク 「――あっ、シウエ!」

シウエ 「へぇ……?」

グイッ……ギュッ!!!

シウエ 「……へ、へぇえ!?」

シウエ (あ、アルクに、急に、だっ、抱き……!?)

シウエ 「あ、アルク~? あの……――」

 『――暴走馬車だー!!』 『危ねーぞ! 道開けろー!!』

ドドドドドドドド……!!!!!

シウエ 「ひゃっ……!!」

アルク 「ふぅ。危なかったね、シウエ。パルペブラはこういうことがあるから気が抜けないね」

シウエ 「あっ……///」 カァァァアアアア…… 「そ、そうですね。ありがとう、ございます、アルク……」

シウエ 「それで、あの……そろそろ、離してもらえると~……」

アルク 「……あっ、ご、ごめん!」

バッ……!!!

アルク 「シウエが危なかったから、つい! ごめん!」

シウエ 「いえ~、謝る必要はないですよ~……」

ドキドキドキドキ

シウエ (……アルクの力、予想以上に強かったですね)

シウエ (抱き寄せられたときも、意外と筋肉質で……)

シウエ 「っ……///」

シウエ (って、私は何を考えているのですか~!)

アルク 「さ、また馬車にひかれそうになる前に、星見の街に戻ろうか」

シウエ 「は、はい~」

シウエ 「………………」

シウエ (なぜ)

ドキドキドキドキ

シウエ (なぜ、私がドキドキしているのですか~! も~!)

………………星見の街 食堂

アルク 「やぁ、まだお手伝いをしてくれるんだね」

シウエ 「はい~。次はお夕飯作りですね~?」

アルク 「うん。今日も晩ご飯食べる人、結構多そうだから大変なんだよね」

アルク 「手伝ってくれて本当に助かるよ、シウエ」

ニコッ

シウエ 「っ……」

ドキドキドキドキ……

シウエ (うぅ~。先ほどから、アルクの顔を見ていると、動悸が……)

シウエ (なんなんですか、もう~!)

アルク 「? シウエ、大丈夫?」 ズイッ

シウエ 「ひゃっ……!?」 (あ、アルクの顔が、間近に……)

シウエ 「だっ、大丈夫です~! お料理、とりかかりましょう!」

アルク 「? ならいいけど。じゃあ、やっていこうか」

………………

アルク 「………………」

トントントントントン……

シウエ 「はぁ~……」

シウエ (さすがの手際です~。アルクは本当にお料理が得意なのですね~)

アルク 「シウエ、はい。このお野菜もお鍋の中に入れてもらっていい?」

シウエ 「わかりました~」

シウエ (それにしても……)

アルク 「はい、シウエ。次はこの調味料を計ってもらってもいいかな。この小さいスプーン3杯分でよろしく」

シウエ 「は、はい~」

シウエ (どうにも、先ほどから簡単なことしか手伝わせてくれませんね……)

シウエ 「……あの~、アルク。私、族長の娘ではありますが、母のお手伝いなどもしておりましたので……」

シウエ 「お料理は、それなりにできるんですよ~?」

アルク 「へ……?」

アルク 「……! ご、ごめん! つい、ステラやユーウェルでもできるようなことばっかりやらせてたよ!」

アルク 「料理の手伝いをしてくれる人ってなかなかいないから……」

アルク 「じゃあ、このお野菜切ってもらってもいいかな?」

シウエ 「はい~、喜んで」

アルク 「……ってことは、野菜はもう切らなくていいから、肉が切れる……!?」

アルク 「か、感動だ……! こんなに効率的なことがあっていいのか……!?」

シウエ (アルクはお料理が絡むと時々人が変わりますね~……)

………………

アルク 「………………」

サクッ……サクッ……

シウエ 「………………」

トントントントントン……

シウエ (しかし、こうして肩を並べてお料理をしていると……)

シウエ 「……ふふ」

アルク 「? シウエ?」

シウエ 「ああ、すみません,アルク。昔のことを思い出してしまって」

アルク 「昔……っていうと、里でのこと?」

シウエ 「はい。母とお料理をしていたときのことを」

シウエ 「母は、アルクと同じくらいお料理が得意な人でしたから」

アルク 「そっか……」

シウエ 「里にはミシンゲもおりましたから、あまりお料理をする必要はなかったのですけどね~」

シウエ 「母の作るサグウィは、それはそれは美味しかったんですよ~」

アルク 「………………」

アルク 「……里、恋しい?」

シウエ 「へ……?」

シウエ 「ん……そうですねぇ~」

シウエ 「恋しくない、といったら嘘になりますが~」

シウエ 「……ふふふ~、誰かさんをムクトとして連れて帰らないことには、里に帰れませんからね~」

アルク 「うっ……そ、それを言われると、どうにも……」

シウエ 「すみません。冗談です~」

シウエ (……そう。そうです)

シウエ (里に戻るためにも、一刻も早く……)

シウエ (アルクに、私に首ったけになってもらわなければ~!)

アルク 「………………」

………………星見の街

シウエ 「はぁ~……」

シウエ (あれから、お掃除のお手伝いもして……)

シウエ (お洗濯をたたむのもお手伝いして……)

シウエ (お皿洗いもゴミの処理も他諸々も……)

シウエ (……疲れました~)

シウエ (アルクはいつもあんなにたくさんの家事をこなしているんですね~)

シウエ (里ではいつもミシンゲたちがやってくれていましたし……)

シウエ (……アルクはすごいです)

シウエ (あんなに色々なことができるアルクが、私のことを好きになってなど、くれるのでしょうか……)

シウエ (それに……)

ドキドキドキドキ

シウエ (……私の方が、ずっとドキドキさせられっぱなしです~)

シウエ 「はぁ……」

ズーーーーーーン

………………物陰

シロ 「おいおい、なんであんなに落ち込んでるんだ。大丈夫か、シウエの奴」 コソッ

ステラ 「あんなに沈んだ様子のシウエさんは見たことがありません。心配です」 コソッ

ライト 「うむ。彼女は時折突拍子もない行動に出るからな。思い詰めて妙なことをしないか心配だな……」 コソッ

シロ 「……で、どうせお前のせいだろ、色男?」

アルク 「へぇ!? 僕!?」

アルク 「たしかに今日は一日シウエと一緒だったけど……」

アルク 「色々お手伝いしてくれてすごく助かったんだけどな……」

アルク 「なんか嫌なことでもあったのかな……」

シロ (なんであいつが手伝いを申し出たのかを考えないあたり、アルクだよなぁ……)

アルク 「うーん、できれば元気づけてあげたいな……」

アルク 「………………」

アルク 「……そうだ!」

ライト 「? 何かシウエの悩みの心当たりがあったのか?」

アルク 「ううん。シウエが何に悩んでるのかは分からないけど、」

アルク 「元気づけてあげられる心当たりならあったな、って」

ライト 「ほぅ?」

アルク 「……ってことで、ちょっと出かけるね?」

ライト 「!? 出かける? もう夜だぞ?」

アルク 「うん。そうなんだけど、できるだけ早く出発したいんだ」

シロ 「おうおう、随分とあの女にご執心だな、アルク」

シロ 「とうとうあいつのムクトになる決心がついたのか?」

アルク 「そんなんじゃないよ、シロ」

アルク 「シウエは仲間だからね。できることはしてあげたい。それだけだよ」

シロ 「あー……おう」 (そういうとこなんだよなぁ……)

アルク 「ライト、たぶん、一週間くらいで帰ってこられると思うから、その間、よろしくね」

ライト 「一週間!? そんなにこの街を空けるのか!?」

ステラ 「大問題です。ご飯をどうしましょう……」

ステラ 「……私が、キッチンに立つしか……」

シロ&ライト 「「それはやめろ!!」」

アルク 「大丈夫。僕が留守の間はパルフェにみんなのご飯の用意、お願いしておくからさ」

ライト 「パルフェに!? それはそれで大問題だな!?」

アルク 「最近試してみたい料理がたくさんあるって言ってたから大丈夫!」

ライト 「それは絶対大丈夫じゃないやつだな!?」

アルク 「じゃあちょっと行ってくるよ!」

ライト 「あ、おい! アルク! ……行ってしまったな」

ステラ 「一体どこへ行ったのでしょう……?」

シロ 「いや、それよりも……明日から一週間……」

ライト 「魔物料理か……」

ステラ 「パルフェさんの新作魔物料理、楽しみですね」

………………一週間後

シウエ 「………………」

ズーーーン……

シウエ (あの日から、アルクは星見の街から姿を消してしまいました……)

シウエ (ライトさんたち曰く、一週間ほどで戻るとのことでしたが……)

シウエ 「はぁ……」

シウエ 「………………」

シウエ (……私は、なぜこんなに落ち込んでいるのでしょう)

シウエ (アルクにしばらく会えていないから……?)

シウエ (なぜ、アルクにしばらく会えていないからといって、落ち込むのでしょう……)

パァアアアアアア……!!!

シウエ 「……!?」 (ワールドフリッパーが、光って……――)

タッ……

アルク 「……はぁ。疲れた。やっと戻ってこれた……」

シウエ 「あっ……アルク!」 パァアアアアアア……!!!

シロ 「……!? も、戻ってきやがったなアルクてめぇ!!」

アルク 「わっ……! 急に何するの、シロ!」

シロ 「うるせぇ! てめぇがいなかったせいで、俺たちは毎日三食魔物料理だぞ!?」

パルフェ 「えー? でも美味しかったでしょ?」

シロ 「うまかったけどなぁ!」

ステラ 「でも、アルクの料理が恋しかったです」

アルク 「そんな、一週間街を空けただけで責められても……」

ライト 「………………」 ブツブツブツ……

アルク 「……で、ライトはどうしたの?」

シロ 「ああ、魔物料理を食べるか食べまいか悩みに悩み抜いた末……」

シロ 「……ストレスでハゲだして、壊れた」

アルク 「……悲惨だ」

シウエ 「………………」

ワイワイワイワイ……!!!!

シウエ (……アルク、色んな方に囲まれていますね)

シウエ (アルクは人気者ですね……)

ズキッ……

シウエ (……きっと、私があの囲みのなかに入っていっても、迷惑なだけ……)

ズキズキッ……

シウエ (そもそも、あんなに人気者のアルクが……)

シウエ (私なんか、好きになってくれるはずが……――)

アルク 「――……ん? あっ、いた! シウエ!」

シウエ 「へ……?」

タタタタタ!!!

シウエ 「……!?」 (アルクが、私のほうに……?)

アルク 「街にいてくれてよかった! ねぇ、シウエ!」

シウエ 「は、はい……」

アルク 「ちょっと付き合ってよ!!」

シウエ 「へ……?」

シウエ 「へぇええ……!?///」

………………食堂

シウエ (わ、私は、なんという恥ずかしい勘違いを……)

シウエ (街とステラさんの蔵書の影響を受けすぎですね……)

シウエ (“付き合って” という言葉を勘違いしてしまうなんて……)

シウエ (それにしても……)

シウエ 「あ、あの~、アルク? 一体何なのですか……?」

アルク 「ヒミツだって。もうすぐ終わるから、ちょっと待っててよ」

シウエ 「はぁ……?」

シウエ (アルクは街に戻ってきてすぐ、私を連れて食堂へ……)

シウエ (そのまま、ちょっと待ってて! とだけ言って、台所に引っ込んでしまいました)


―――― アルク 『絶対に覗いちゃダメだからね!!』


シウエ (そんな風に言われてしまえば、待っているしかないではありませんか……)

シウエ 「……ん~?」 スンスン

シウエ 「……?」 (なんでしょう。この香り、なつかしいような……)

シウエ 「……!?」 ハッ 「この香りは、まさか……」

アルク 「やぁ、やっぱり匂いでバレちゃったか」

シウエ 「アルク……?」

アルク 「でも、もう完成したから構わないかな」

コトッ

アルク 「はい、どうぞ。できるだけ教えてもらった通りに作ったけど、お口に合ったら嬉しいな」

シウエ 「これは、サグウィではないですか~!」

シウエ 「でも、これは、里以外で見たことなんて……」

アルク 「うん。パルペブラでも分からなそうだったから……」

シウエ 「……?」

アルク 「里にお邪魔してきちゃいました」

シウエ 「へぇ……!?」

アルク 「お話したら、シウエのお母さん直々に作り方を教えてくれました」

シウエ 「へぇえええ!?」

シウエ 「な、なんで、そんな……っていうか母に会ったのですか!?」

アルク 「うん。ついでに族長さんにも会ったよ?」

シウエ 「父にまで!?」

シウエ 「はぁ~……」

シウエ (混乱しすぎて目が回ってきました……)

シウエ 「……あ、あの、どうしてそんなことを~?」

アルク 「やぁ、シウエの元気がなかったからさ、」

シウエ 「へ……?」

アルク 「お母さんの味、食べたら元気になるかなー、って思ったんだけど」

アルク 「とりあえず、食べてみてよ」

シウエ 「は、はい……」

スッ……パクッ

シウエ 「……!?」

アルク 「………………」

ドキドキドキドキ……

アルク 「ど、どうかな……」

シウエ 「………………」

パクッ……パクッ……ムシャムシャ……

アルク 「……だ、ダメかな? できるだけ教えてもらったとおりに作ったんだけど……」

アルク 「なんか里でしか取れない香辛料まで頂いて使っているんだけど……」

シウエ 「………………」

シウエ 「……すごいです」

アルク 「へ……?」

シウエ 「……母の、味です」

シウエ 「とても、美味しいです……」

アルク 「! よ、よかったぁ……」

アルク 「これでダメだったら、一週間の苦労が水の泡になるところだったよ……」

アルク 「でも、シウエの里、すごいね!」

アルク 「独自の文化はもちろんだけど……一番はやっぱり食文化かな!」

アルク 「僕も色々食べさせてもらったんだけど、どれも美味しいものばっかりでさ」

アルク 「シウエは、“味を愉しむための手間は不要に思われる事が多い” って言ってたけどさ」

アルク 「裏を返せば、素材の味をうまく活かしているってことなんだよね!」

アルク 「いやぁ、感心しちゃってさぁ……。料理の知見が深まったよ……」

アルク 「香辛料、結構たくさん頂いて来たから、別の料理にも使ってみようと思うんだ」

アルク 「シウエが里や精霊のことが好きな気持ち、少し分かった気がするよ」

シウエ 「………………」

シウエ (……ああ、もう)

シウエ (アルクは、本当に、卑怯者です……)

シウエ (アルクに私を好きになってもらって、里に連れて帰らなければならないはずなのに……)

ドキドキドキドキ……

シウエ (……いつの間にか、その逆になってしまっているのですから)

アルク 「それからね……って、シウエ、どうかした?」

シウエ 「……いえ~」

シウエ (精霊の託宣は、一番大事なこと。アルクを連れて帰ることができれば、里は発展できる)

シウエ (けれど……)


―――― 『パルペブラの人々は愉しむことばかり考えていますね~』

―――― 『……実は最近、それも少し分かる気がしてきましたけれども~』


シウエ (……ええ、そうです)

シウエ (精霊の託宣に則り、里のさらなる発展のため……)

シウエ (そして、私の大好きな人を手に入れるため……)

シウエ (……きっとそれで、いい。精霊の選んだ人を、好きになってしまっただけのこと)

シウエ (だから……)

シウエ 「ふふ……」

アルク 「シウエ?」

シウエ 「……だから、覚悟しておいてくださいねっ、アルク♪」

おわり

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