男「助けて、おまわりさん!」警官「民事不介入です」 (22)

男「なぁ、金返してくれよ。こないだ貸した3万円」

知人「今ないって」

男「ウソつけ! さっき財布チラッと見たら、いっぱい入ってたじゃん!」

知人「なに勝手に人の財布見てんだよ!」

男「ほら図星じゃないか! 借りたもんは返せ!」

知人「しつけえんだよ!」

バキッ!

男「いってえ! 殴りやがったな!」

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男(あ、あそこに交番が!)

知人「待てやコラァ!」

男「おまわりさん!」

警官「なんでしょう?」

男「今のやり取り見てたでしょう? こいつ暴力振るったんですよ、助けて下さい!」

警官「残念ながら助けられません」

男「な、なんで!?」

警官「なぜなら、今あなたたちが揉めている原因はお金の貸し借り……」

警官「これは私人同士の争い、つまり民事になります」

警官「警察は民事不介入なので、あなたを助けることはできません」

男「そ、そんな……!」

知人「おいお前、こっち来いやぁ!」ガシッ

男「助けて、おまわりさん!」

警官「民事不介入です」

男「しまった、自転車を!」

泥棒「ヒャッホー!」ビューンッ

男「待てーっ!」

泥棒「あばよーっ!」ビューンッ

男「くそぉっ!」

男「あ、おまわりさん! 一緒にあいつを追いかけて下さい!」

警官「残念ながら、それはできません」

男「なんでだよ!?」

警官「なぜなら、あなたは私人、あの自転車を盗んだ男も私人」

警官「つまりこの一連の出来事は私人同士の争い……民事だからです」

警官「なので、あなたを助けることはできません」

男「できませんって……あいつ泥棒なんだけど! しかも現行犯!」

警官「民事不介入です」

ドンッ

男「あ、すいません」

DQN「ってえな……」

DQN「どこ見て歩いてんだよてめえ! あぁん!?」ガシッ

男「わっ、ごめんなさいごめんなさい!」

DQN「この野郎が!」

ドカッ! バキッ! ガスッ!

DQN「オラッ、オラッ!」ゲシッゲシッ

男「お、おまわりさぁん……助けて……」

警官「あなたもDQNも私人ですから、私が介入することはできません」

男「頼むよぉ……!」

警官「民事不介入です」

男「げほっ……」ボロッ

男「おい、おまわりさん!」

警官「なにか?」

男「お前、民事不介入民事不介入って……全然役に立たねえじゃねえか!」

男「なんのための警官だよ!?」

警官「私を侮辱する気ですか? 公務執行妨害で逮捕しますよ」

男「ぐ……!」

男「市民の血税から給料もらってるくせに、その市民を助けないってどういうことだよ!?」

警官「私は自分の職務をこなしているだけです」

男「こなしてねえじゃねえか!」

警官「あなたが何をほざこうと、私はあなたがたの血税で生活していくんですよ」

警官「今日も、明日も、来月も、来年も、10年後も、これからずーっとね」

男「ぐうう……!」

男「よし、決めた!」

男「俺も警察官になってやる!」

男「俺が警察官になったら、お前みたいな職務怠慢は絶対しない!」

警官「ご自由にどうぞ」

男(よーし、そうと決まれば警察官になるための方法を調べなきゃ!)

男「ふむふむ……警察官になるには、筆記試験や面接、あと体力試験をクリアする必要があるのか」

男「書店で対策本をいっぱい買ってきたし、頑張って勉強するぞ!」

男「それと、体力をつけるために運動もしよう!」

男(えーと、この問題は……)カリカリ

男(志望動機はどうしよう……)

男「腕立て伏せ始め! いち、に、さん……」グッグッグッ…

男(よーし、なんとか試験をパスしたぞ!)

男(だけど、まだ終わりじゃない。今度は警察学校に入学しなきゃならないんだ)

男(立派な警察官になるため頑張るぞ!)

男(噂には聞いてたけど、警察学校は地獄だった……)

男(教官は厳しいし、訓練はキツイし、共同生活で気が休まらないし、自由も少ない)

男(だけど、それでも俺はなんとかこの試練をくぐり抜け――)



男「警察官になったぞーっ!!!」

男(やがて、俺は交番に配属されることになった)

男(ようやく、俺を全く助けなかったあの警官に並んだというわけだ)

市民「おまわりさぁん!」

男「なんでしょう?」

市民「包丁持ったイカれた男に追われてるんです! 助けて下さい!」

通り魔「うがあああああああああ!!!」

男「……」

男(しかし、ここでふと思う)

男(こんなに大変な思いをして警察官になったのに、なんであんなのと戦わなきゃならないんだ)

男(そう思うと、自然と口から――)

男「残念ながら、あなたを助けることはできません」

市民「なんで!?」

男「なぜなら、あなたは私人、あの男も私人、つまりこれは民事だからです。警察は民事不介入なのです」

通り魔「うがあああああああ!」ザクザクザクザクザク

市民「助けてぇぇぇぇぇ!」

男「民事不介入です」





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