久川凪「なぎさんぽ」 (16)

凪(どうもこんにちは。なぎさんぽの時間です)

凪(なんて気取ってみましたが、はーちゃんのオーディションのあいだ暇なのでぶらついているだけです。てへぺろ)

凪(にしても広いですね。都内にこんな大きな敷地を構えているなんてお金が有り余っているんでしょうか)

卯月「あれ、どうかしましたか?」

凪「第一村人発見」

卯月「?」

未央「もしかして道に迷っちゃったり?」

凪「凪は風の吹くまま気の向くまま、歩み続けるだけです」

未央「そ、そっか……」


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凛「もしかしてアンタも新しいアイドル?」

凪「貴方がそう思うならそうなのでしょう。違うと思うなら違います」

卯月「えっと……つまりどっちなんですか?」

未央「相変わらずうちのプロデューサーは変な子ばっか連れてくるんだから……」

凪「変ってなんですか。独特と言ってください。これで天下を取ります。きりっ」

卯月「わー!すごいです!」

凛「それ、一緒じゃないかな……」

未央「最近また新しいアイドルも増えてきたよね、なんだか懐かしい感じ!負けないぞー!」

卯月「えっと、よろしくお願いしますね」

凛「ん、よろしく」

凪「はい、では私はこれで失礼します。それでは。しゅばばばばば」

未央「そんな、口で効果音出さなくても」

凛「あっ、名前」

卯月「あっ……でもきっとまたすぐ会えますよ!」

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凪(3人のアイドルと別れ今日も凪は行く。同じ日ですが)

ありす「おや、新しいアイドルの方ですか?でないと事務所ぶらつかないでしょうし」

凪「あいどるが あらわれた!」

ありす「な、なんなんですかこの人は……見たところ私とあんまり年は変わらなさそうですが」

凪「凪はJCです。中2です。厨2ではありません」

ありす「私の2つ上ですか。私は橘ありすです。橘と呼んでください」

凪「凪は凪。凧じゃない。ネギでもない」

ありす「たこ?って、漢字の話ですか。確かにてますね」

凪「汝を我が盟友として認めよう!」

ありす「やっぱり厨2じゃないですか!そういうのはもう間に合ってるんですよ!」

凪「くっ……!このセカイの因果が乱れようとしている!」

ありす「蘭子さんか飛鳥さんかどっちタイプなんですか!」

凪「失礼。冗談」

ありす「冗談って、この事務所のアイドルと言うだけで何にも安心できませんが。となるともしかして私もおかしい?いやそんなはずは……」ウ-ン

凪「考え込んでしまった。さようなら、ありすさん。また会う日まで。多分もう会いませんが」スタスタ

ありす「いやでも文香さんや奏さんみたいにまともな人も多いし……って橘です!」

凪「1人で元気な人ですね。最近の若者は元気」

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凪(ん、あれは……)

文香「…………」ヨミヨミ

凪(座って本を読んでいます。まるで絵画みたいな美しさがありますね。写真を撮れば売れそう、いやしませんけど)

文香「…………」ヨミヨミ

凪「…………」スッシュババババスパコ-ン

凪(気づく気配全くないですねこの人。もしかして彫刻かなにか?)

凪(歩くのも疲れたし、座って本でも読みましょうか。凪は本を持ち歩いているのです、えらい)

凪「よいしょっと……」ヨミヨミ

文香「貴方も、読書ですか?」

凪「わーお。凪びっくり。てっきり本に集中してて私に気づかないものかと」

文香「これは……新書?お若いのに珍しいですね」

凪「常に最先端を行く、そういう家の教えなので」

文香「立派なお家ですね」

凪(純真!嘘だって言い出しづらいやつ。まあいいか)

文香「新書といえば〇〇さんはご存知ですか?」

凪「え?」

文香「〇〇さんの書く文は~」ペラペラ

凪(マシンガントーク。いや、機関銃トーク。わーお、同じですね)

文香「それでですね……」ベラペラ

凪(これが急に喋る彫刻ですか?たかそう。言い方があれか)

ありす「あ!文香さん!!」

文香「ありすちゃん?」

ありす「また本の話してましたね?止まらなくなってますよ」

文香「あっ……すみません」

ありす「それじゃ会話ではなく言葉を投げかけてるだけです。いきなりそうされても困っちゃいますよね」

文香「はい……」

凪(取り残されてしまった。またどこか行きますか)

凪(もう会わないと思うって言ったのに会ってしまった。凪はうそつき、狼少年です。少年ではないな)

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凪(そろそろ言うこともなくなってきました、凪です。そろそろはーちゃんのオーディションも終わっているでしょうか)パシャ

藍子「突然すみません、歩いている姿が絵になってたからつい。迷惑でしたか?」

凪「別に。カメラが好きなんですか?凪も写真には興味があります」

藍子「そうなの?私のカメラは一眼レフ見たいな本格的なカメラじゃないけど、これは持ち歩きやすいんです。お散歩しながら写真を撮ることが多いからこっちの方があってるかなって」

凪「いい判断だと思います。凪博士的に680点上げます」

藍子「それはいい点数ってことでいいのかな?」

凪「もちろん。凪ははーちゃんからお墨付きを貰ったカメラマンでもあるので」

藍子「えっと、凪ちゃんでいいのかな?凪ちゃんとそのはーちゃんって言う人は新しいアイドルさんかな?もし暇だったら一緒にこない?同じアイドルの人とカメラ持って出かけるところなんだけど……」

凪「なんと、魅力的なお誘いです。それは冬の朝のお布団のような誘惑」

凪「でも申し訳ありません。凪はちょっと事務所を離れる事が出来ないので。またの機会によろしくお願いします」

藍子「そっか、ならまた今度一緒に遊びましょうね!」

凪「くっ、流石にはーちゃんは見捨てられなかったか……所詮凪はこれまでのやつよ」

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ヘレン「ヘーイ!!!!!!!!」

凪「っ!」ビクゥ

ヘレン「貴方、世界を目指す気はない?」

凪「ほう、世界。悪くないな」

ヘレン「エクセレント!その志や良し!」

凪「凪は段階を踏みます。まずは地元レベルから。いきなり世界はまたの機会に」

ヘレン「そう……無理強いはしないわ。世界を目指したくなったらいつでも声をかけてちょうだい」

凪「ふっ……成長具合に腰を抜かさないようにな」

ヘレン「さようなら若人。成長した姿を楽しみにしているわ!」

凪「こ、個性の極み……カレーとハンバーグと焼肉が同時に来たようなインパクトが。へびぃ」

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凪(ほんとこの事務所は個性豊かなアイドルが多いですね。凪も歩けばアイドルに当たる。ほら)

法子「新しいアイドル?まあまあ、ドーナツどうぞ!」

かな子「よかったらケーキはいかがですか?」

愛梨「アップルパイ焼いてきたんです~!」

凪「全く、太ってしまいます。牛です。凪でした」モグモグテクテク

時子「チッ……」

凪「睨まれてしまいました。どうかしましたか?」

時子「これ、夜にでも食べなさい。あんまり菓子ばかり食べていると豚のように肥えるわよ」

凪「なんと、凪は豚でしたか。美味しそうな酢豚、ありがとうございます」

時子「チッ……」スタスタ

凪「この中ではーちゃんは生き残れるのか、答えはCMの後で」

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凪(CMの後でと言ったな?CMなんかこない)

凪(写真に読書、この事務所は凪の趣味でもコンプリートしようとしているのでしょうか。つまり凪はこの事務所だった?でかいですね)

凪「あの」

乃々「ひぃっ!」

凪「机の下でなにしてるんですか?」

乃々「内緒ですけど……」

凪「そうですか。ならさっき隠し撮りした写真を拡散させてもらいますね」

乃々「むりむりむーりぃーむりくぼですけどー!ぽえむ、ポエムを書いてました!」

凪「ぐへへ、ほんの少し遅かったようだな。お嬢ちゃんの痴態はもう拡散済みだぜ。……冗談です。撮ってなんかいませんよ」

凪「ん、ポエム?」

乃々「はいぃ……ぅぅぅ、はずかしい……」

凪「奇遇ですね。凪も好きですよ、ポエム」

乃々「ほんとですか?どなたか知りませんが思わぬ同志にうれしくぼですけど……どんなポエムがお好きなんですか?」

凪「マンションポエム」

乃々「え」

凪「今ポエム界で熱いのはマンションポエムです」

乃々「ひぇぇ……マンションポエムってあのマンションの宣伝のやつですか?」

凪「そうです。『東京の中心で、永遠を想う』とか『世界は自由に想像できる』とかです」

乃々「思ってたのとちがぅ……方向性が全く違うんですけど。でもせっかくのポエム仲間なんですけど……」

凪「ポエムりながら宣伝をこなす技術。根本となるポエムの発想力。常に新しいものを生み出し続ける斬新さ。全てを兼ね備えた最も熱いポエムがマンションポエム」

乃々「な、なるほど……!そう言われればそれもいい気が……」

凪「今日から貴方もマンションポエマーです。ようこそこちら側へ」

乃々「いつのまにかものすごいことになってるんですけど……!!」

凪「む、そろそろ本格的に戻らないといけないですね。また今度マンションポエムの話をしましょう。あでゅー」スタスタ

乃々「え、あ、はい。おつかれさまでした……」

凪「はいって言いましたね」ズイッ

乃々「ひえっ……むーりぃー……」

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凪(はて、オーディション会場に戻ってきたのにはーちゃんがいませんね。まったく、手の掛かる子だ)

P「どうかしたの?」

凪「凪は探し求めています。決して見つからない、見つけないといけないものを」

P「もしかして、オーディションの子だった?出口がわからなくなった感じか?」

凪「オーディションにはもう言ってますね。きっと合格してると思いますが個性あふれるメンバーに埋もれないか不安で夜しか眠れません」

P「オーディションでは見なかったような……」

凪「どうもはじめまして、凪です。いつも颯がお世話になっております」

P「あ、ご親切にどうも……って颯さんの姉か妹?」

凪「双子、ですね。はーちゃんとは双子です。血を分け合った仲というやつです」

P「……アイドルに興味はない?」

凪「アイドル?はーちゃんではなく私をスカウトですか。後で自慢しよう」

P「アイドルにならないか?」

凪「散々アイドルに間違われてきましたが間違いじゃなくなりそうです。帳尻合わせってやつか。なんか違うな」

P「だめか?」

凪「14歳のJCに頭を下げる大人の図。わー、事案だー」

P「……つまり?」

凪「それよりも早く行かないと。バスを逃してしまったら大変です」

P「えっと、多分だけど1階のエントランスにいるんじゃないかな。オーディション終わりの子はそこに誘導される筈だし」

凪「なんと、千里眼ですか。私もテレパシーなら使えますよ。今はーちゃんにテレパシーを送りました」

P「じゃあそれでどこにいるか聞けば良かったんじゃ……」

凪「それでは。連絡ははーちゃんのところに纏めてでいいので」スタスタ

P「お、おう……」

P「…………」

P「?????」

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颯「あっ、なーどこ行ってたの!?早くしないと叔母さんのとこまでのバス乗り遅れちゃうよー!」

凪「徳島と違ってバスは乗り過ごしてもすぐ来ます。これだから田舎者は……」

颯「もー!なーもはーと一緒でしょ!」

凪「オーディション、うまく出来ましたか?」

颯「やれることはやったよ!後は結果を待つだけ!」

凪「はーちゃんはきっと、多分、恐らく合格してるでしょう。凪はもう合格していますが」

颯「なんか不安になるじゃん!って合格?」

凪「なんと、スカウトされてしまいました。わーお」

颯「えー!すごーい!なんで?」

凪「わからない。何故かスカウトされた。自分の溢れんばかりのアイドルオーラがこわい……」

颯「じゃあなーも一緒にアイドルだね!一緒にトップ目指そ!」

凪「がんばるぞー。おー」

颯「もっと元気出してってば!せーの」

颯「がんばるぞー!おー!」
凪「がんばるぞー。おー」

颯「変わってないし!」

おわり

おわりです
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