ヤンキー「異世界転生だァ?」 (57)


ヤンキー「っべーな、マジかよ」ゲラゲラ
取り巻き「マジマジwwwwww」
取り巻き「やっくんホントだってー!」

いつもと同じ仲間。
いつもと同じ会話。
いつもと同じ日常。
いつからか、俺はそんな毎日に飽きていた。

ヤンキー「...けっ」スパー

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ヤンキー(いっそ死んじまったら...どうなるかな)スタスタ

ヤンキー「はあ、一回死んでみるってのもアリだよなァ」ゲラゲラ

そんな冗談を一人口に出し、虚しく笑う。

ヤンキー「...」
ヤンキー「つまんね」スタスタ

帰り道の交差点。
交通量も多く、事故が多発している。
そういや先月もここでどっかの坊主が跳ねられたよな...と、考えていると。
ふと、道路の真ん中を歩く少女を見つける。

ヤンキー「...!?」

目測だが歳にして7、8歳ほどか。
青の信号が点滅し、赤に変わろうとしているのにまだモタモタと歩いている。

ヤンキー(なにやってんだあのガキ...)スッ

いつもなら放っておいて帰るのだが、この日はなんだか心が不安定でいたので、ふと「ちょっと手伝ってやるか」と足が少女へと向かった。

それがいけなかった。

ヤンキー「オラ、嬢ちゃん。アブねぇから早く...」

プゥオオオオオオオオオッッ!!!!!!

ヤンキー「っ!?」ビクゥッ
ヤンキー(トラック!?まだ信号青ンなってねぇだろ!?)

ヤンキー「っべ、逃げろ、ガキ...!」バシイッ

咄嗟に少女を突き飛ばす。
その数瞬後に強烈な衝撃が自分の身体を襲い、そして大きく空中へと飛ばされた。

回転する視界から見える風景。
歪に曲がった自分の右腕。
交差点の向こう側から何かを叫ぶ数人の人。
呆然とした少女の顔。
徐々に近付く硬いアスファルト。

ヤンキー(まさかホントに死ぬってこたァ無ぇ...訳、ねぇか)ゴシャアッ

アスファルトに頭から着地。
スピードを緩めないトラックが既に瀕死の自分に追い討ちをかけようと迫り来る。

ヤンキー(...あ、アイツにまだ金返してねーや)グシャッ

ふとどうでも良い事が頭に浮かんだと同時に、トラックのタイヤが俺の頭を踏み潰した。


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天使「ふーんふふーん!今日は楽しい時空旅行!」ピョンピョン

私は天使!
ふわふわドッキリな天界に勤める、ちょっと乙女な女の子!
165年9ヶ月18日連勤を終えて、待ちに待った51年3ヶ月6連休!
しっかりリフレッシュするために、時空旅行の途中なのです!

天使「楽しいのでーす!いえーい!」スッタカスッタカ

まずは手始めにすっごいワーカーホリックな日本って国がある時空に来て、働いてる人間どもを尻目に5年ほど遊びまくるのです!

天使(それにしてもこの姿で来たのは失敗だったかなぁ、ちょっと幼すぎたな)フム

天使達は皆、自分の見た目年齢?を、ある程度自由に操作できるのです!
じゃないと天界がしわがれたババアばっかりになっちゃって、途端に地獄に早変わりしちゃいますからね!

天使「でも、いくら若い方が楽しめる国って聞いてても...こんなに小さくなっちゃったら駄目ね」

天使「明日からは...うーん、そう!あそこの建物からワラワラ出てきてる子供くらいの見た目にしとこうかな」ワクワク

いつでも何処でも可愛くいられる!
あとは運命のヒトでも見つかればなーっ...!

そんなプリティでオチャメな楽しい考え事をしてると、ふと男の子に声をかけられちゃいました!
ヤダヤダ、ナンパ!?
でもでも、天使と人間の恋なんて...!
禁断なのに、ドキドキしちゃうっ!

ヤンキー「オラ、嬢ちゃん...アブねぇから早く...」グイッ
天使「きゃっ!!」

やだ、結構ゴーイン...!
せっかくの休暇だし、ちょっとくらい男の子楽しむのもアリだよね~?

なーんて思ってたら、横から下品で大きいな音が...


天使(あれは...トラック、て言うんだっけ?わざわざ突っ込んでくるなんて死にたいのかしら)ニコニコ

せっかくラブストーリーが始まるってのに邪魔するなんて!天使ちゃんに蹴られて死んじゃえ!って思って蹴り飛ばしてあげようとしたんだけど...

ヤンキー「っべ、逃げろ、ガキ...!」ゴギャッ

天使「ちょっ」ストンッ

天使「...」

ゴシャアッ
グシャッ

キャアアアアーーーッ!!

天使「やっべ...え、私のせい............?」

男の子が車に轢かれて死んじゃいました。

天使「と......とりあえずセンパイに言わなきゃ...」ハァ

_____

ヤンキー「...」

ヤンキー「.......こ...こ...は?」

目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
ふわふわと身体が浮くような感覚、ぼうっとしたままの頭...

ヤンキー(死んだ...ん、だよな?)

戸惑いながらも、仰向けになっていた自らの身体を起こしてみると、遠くから声が聞こえることに気づいた。

ヤンキー「...?」

大天使「ったく何やってんのよアンタは!馬鹿じゃないの!?」

天使「だからちゃんと謝ったじゃないですかセンパイぃ...!」

金髪の、同い年か少し上ほどの女性が小さな少女に激しく怒って...

ヤンキー(まて、あのちっこいの...!)

見覚えのある顔。
よく見れば、自分が死ぬ直前に見た顔だ。

ヤンキー(まさか死んじまったのか...?アイツも...)ハァ

大天使「だからはしゃぎすぎんなって言ったのに!!はぁホント...馬鹿!」

天使「だって久しぶりの休みですよ~!?羽目外さずして何が休みですか!?そんなんだから昇格できないんですよ!!!!」

大天使「ぶっ[ピーーー]どワレ」グイッ
天使「ぐえっ...」

大天使「はぁもう、これバレたら女神様になんて言われるか...!」ワナワナ

天使「どうせ私達死ぬこたぁねぇんですし、女神のババアがどうとか良いじゃんすか」ケラケラ
大天使「アンタ堕天してじゃないの?」

ヤンキー「おい、お前ら...」ヌッ

天使「あっ...」
大天使「目覚めましたか...ヤンキーさん」

ヤンキー「...!?」
ヤンキー(なんで俺の名前を...)

大天使「ああ、落ち着いて下さい。私は大天使...そしてここは天界、まあ死後の国ですね」

ヤンキー「死後...」

自分が死んだという事実を改めて確認する。
だが、不思議と暗い感情は沸かなかった。

大天使「主に天界の管理を任されています、以後よろしくお願いします」ペコッ

天使「部下の天使でーす」ヒラヒラ

ヤンキー「天使...」

大天使「さて...ヤンキーさん、この度は私の部下の不手際で本来まだ迎えるべきでなかった死を迎えさせてしまい...非常に.....申し訳ありませんでした....!!」ドゲザー

ヤンキー「いや...その、ンなことどうでも良いわ。別に生きててもつまんなかったしよ」

天使「えっ!!じゃあもう解決じゃん!ほら先輩、どうでもいいですって!!」ピョンピョン
大天使「馬鹿っ!」ボカッ

大天使「ヤンキーさんが良くとも、私の気が収まりません...どうか、お詫びとして............『異世界転生』など如何でしょうか?」

ヤンキー「...異世界転生だァ?」

大天使「ええ、はい...本当はすぐにでも元の世界で生き返らせてあげたいのですが、色々と不都合がございまして...ならばせめてと、出来るだけ良い環境の世界で第二の人生を歩んでいただきたく...!」

ヤンキー「ふぅん、どーでも良いけどよぉ......」

少し考える。
『てんせい』と言うのが何なのかはよく分からないが
どうせ生き返っても、同じような世界ならまた退屈をするだけだ。

ヤンキー「どうせなら、退屈しねぇ場所にしてくれよ」

大天使「退屈、しない場所...ですか」

ヤンキー「おう」

天使「あっ!それなら『アレ』あるじゃないですか!センパイ!」グイッ

大天使「はぁ?アレって...まさか」
天使「そう、センパイが処理に困ってたアレですよ!!」

ヤンキー「...?」
ヤンキー「なんでも良いからよぉ、さっさと決めてくれよ」

何やら決めあぐねているようだが、こっちにとってはどうでも良い。
ただ待たされるだけというのは退屈だ。

大天使「でも、アソコは...!」

天使「センパイか私の加護つけときゃ早々死ぬこたぁないでしょ!うまく行けば『処理』済みますし...ハイ!決まり!ヤンキーさぁーんっ!!」
大天使「ちょっ...」

ヤンキー「なんだ?」

天使「ヤンキーさん、退屈しない世界が良いって言ってましたよね!それならぴったりの場所があるんです!!全てが新鮮!スリルとアクションの世界です!!そこにしましょう、そうしましょう!ね!?」グイグイ

ヤンキー「何でも良いから揺らすなや...」カクンカクン

天使「ほらぁ!センパイ!『良い』って言いましたよ!あとは加護つけて転生点せるだけです!!」ピョンピョン

大天使「はぁ、もう...」

大天使(でもホントにうまく行ったら仕事も捗るし女神様にも叱られずに済むかも...)ゴクリ

大天使(ううっ、でも此方の不手際で迷惑を被った方に...でも......せ、背に腹はかえられませんよね、しょうがない...ですよね)

大天使「分かりました、準備にとりかかります...」ニコッ

天使「ところで君、なんか能力?とか欲しくないです?」

ヤンキー「はァ?」

天使「今から転生する世界は君が居たとこに比べて...魔法だったり武器だったりが必須なちょっと危険な所だから...ちょっとした能力持ってったほうが困らないと思うんですよ!」

天使「>>23>>24みたいな、役に立つ能力!持ってった方が良いですよ!ね!!」

やる気を力に変える文字通り「元気があれば何でもできる」能力

女の子にやけにモテる能力

ヤンキー「やる気...?モテ...?ンだソレ...?」

天使「たとえばぁ、すっごい元気で『よっしゃやるぞぉ!』って時あるでしょ?でも実力は追い付かない!!そんな時にやる気を糧にして自分の力に変えてくれるっていうトンでも能力なのです!!」ニッコリ

天使「あともう1つ!単純に女の子にモテモテになっちゃうだけなんですけどね...やっぱ好感度って大事でしょう!これさえあれば交友関係で困ることもありませんし、意中の相手との関係もグングン...勿論天使にも使えますよ...!」チラッチラッ

ヤンキー(やる気を...?なんだかムズかしそうだが、便利ってのはわかったな)フム

天使「とにかく!この二つの能力つけといてあげますから!!」チョイチョイッ

ヤンキー「うおっ...」フワァ

天使「これで安心ですね」ニッコリ

天使「あ、あと...私とセンパイ、どっちの方が好きですぅ?」

ヤンキー「>>27

先輩 お前は嫌いだ

天使「なっ...!!」ワナワナ

ヤンキー「大体俺はロリコンじゃアねんだよ」フンッ

天使「ふーんっ、もういいです!所詮見た目でしか選んでないんですよ貴方はっ!」プンスカ

ヤンキー(性格もなぁ...)

大天使「あら!そういえばまだ加護をかけていませんでしたね!」クルッ
天使「けっ...」

大天使「忘れる所でした、大天使の加護を貴方に授けましょう...せめてものお詫びです、さあ此方へ」クイッ

ヤンキー「...?」

ヤンキー「加護ォ?」

大天使「ええ。こちらの不手際で転生させるのです、加護くらいつけなければ申し訳が立ちません....目を瞑って下さい」スッ
ヤンキー「お、おう...」

チュッ

ヤンキー「!」

大天使「神性のある存在の接吻を受け入れる事で加護が成立します。これで貴方は『大天使の加護』の恩賜を受けることができますよ」ニコッ
天使「ぜぇーっんぜん役に立ちませんけどねェ」ヘッ

天使「それじゃ、さっさとあの魔法陣の中入っちゃってください...」グイグイ

ヤンキー「解ったから押すなや...」ストッ

大天使「それでは転生の儀を始めます...!!」ファゴオオオオ...

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ヤンキー レベル:1
筋力:15 体力:21
技量:9 敏捷:17
知識:5 魔力:3 
耐久:13 生命:22
精神:30 幸運:6
スキル
大天使の加護(全ステータス常時25%上昇・カリスマ性上昇率+100%)

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ヤンキー「......んが」ガサッ

目を開けると、青い空。
爽やかな風が吹き抜け、耳元で草がさわさわと揺らいでいる。

ヤンキー「...ここは......」ムクッ

どうやら広大な草原、のど真ん中のようだ。
辺りを見回しても草の緑と空の青しか見当たらない。

ヤンキー(いきなりこんなとこに行かせるか、普通...?)

ヤンキー(俺は...異世界転生ってやつ、したんだったよな。と言うことはここは元の世界とか違うって事になるが...)

どうしたものか。
>>33

先輩に呼び掛けてここどこか聞く

ヤンキー「っおおぉいっ!!」

ヤンキー(何処だよ、クソッ...おい!返事くらいしろってんだよ...!!)キィィンッ

先程まで居た大天使に呼び掛けたい。
頭に手を当て、遠い何処かに呼び掛けるように集中する。
が...

ヤンキー(...ダメか、どうにか届いてるような感じはするんだが...)

何かに阻害されているような嫌なノイズ音が頭に広がるだけで、天使達の声は聞こえてこない。

ヤンキー「無責任だっつぅンだよ」ハァ

再度呼び掛けを試してみるも、やはり応じない。
場所が悪いのだろうか?
草原に放り出された為に、何をどうすれば良いとの事も何もわからない。

ヤンキー(とりあえず周りを歩き回ってみたけど、なんかの骨が落ちてたりするだけで他はなんもねぇな)

ヤンキー「クソッ、どうしろってんだ...?」

延々と続く青と緑に嫌気が差してきた頃、はるか後方から耳をつんざく様な何かの雄叫びが聞こえた。

ヤンキー「....っ!?」ビクウゥ

ヤンキー(何だ、今のは...!?)チラッ

咄嗟に背後を確認する。
すると。

後方の空から黒い影。
なにか、翼を生やした大きな生物が此方へと飛んでくるのが見えた

ヤンキー「ンだぁ、アレ...!?」ギョッ

明らかに危険な生物。
逃げるか、挑むか...
どちらにしても、死の予感はひしひしと感じている。

ヤンキー(ここは...!)

>>37

逃げる

ヤンキー(逃げるに限る...っ!!)ダッ

頭は悪いが、こと戦闘に関しては場数を踏んでいるヤンキー。
『気合』も『根性』も大事だが、生前の彼をその地位まで導いたのは『逃げる』事に相違なかった。

ヤンキー(勝てねぇ相手とは勝負しねェ...勝てるようになるまではよォ...!)タッタッタッ

臆病でいたからこそ、恐れられる存在と成り得た。
慎重でいたからこそ、惨敗を喫する事がなかったのだ。

ヤンキー(まだこっちまで来るには時間があるはずだ...隠れる場所を探さねぇと!!)

走れど走れど草原。
後ろからは咆哮と空を裂く音。

ヤンキー(ちっくしょ...馬鹿天使共がよォ...!)ハッハッハッ

煙草に犯された肺には、数分の全力疾走でも相当堪える。
少しずつ速度が落ちて行き、ぜえぜえと過剰に酸素を求める。

ヤンキー「だめだっ、くそっ...追い付かれる...」ハァハァ

目視して約200メートル程。その距離にいながらその存在がしっかりと確認できるほどの大きさ。

ヤンキー(どっか...ねぇのかよ!?)キョロキョロ

辺りを見回す。
あるのはそよそよと靡く草に、人二人分ほどの大きな岩石。
そしてその周りに散らばる大きな動物の牙のような物...

ヤンキー(どうする...!?)ゼェハァ

窮地に追い込まれたヤンキーが出した結論は...

>>41

岩の下に骨で穴掘って潜る
で岩で蓋して隠れる

ヤンキー「まだ来るまでに時間はあるはず...!」ガッ

岩影に飛び込み、骨を拾う。
その骨で無我夢中に土を掘り返す。

ヤンキー(さっきヤツは着地した。『俺が居た痕跡』に気付いたんだ...!)ザクッザクッ

ヤンキー(こっちに向かってくるまで多目に見積もっても1分そこら...それまでに俺が隠れることができる大きさの穴を...掘れるのか?)ザクッザクッ

ヤンキー(いや...掘るンだよッ!)ズオッ

ヤンキー「絶対に...生き延びてあの二人ブッ飛ばしてやる...っ!!」ザクッザクッザクッ

『生き延びる』
その強い意思が、やる気となってヤンキーに力を与える。
普段とは比べ物にならない、倍以上の力を持ってがむしゃらに穴を掘る。

ヤンキー「はっ、はっはあっ...!」ズボッ

ものの数十秒で出来た大穴に身体を滑り込ませ、息を整える。

ヤンキー(異様に体力を消費したが...まるで、自分の身体じゃねえ見てぇに力が湧いてきやがった...!!)

これが天使の言っていた『能力』だろうか。
異常に疲労したが、ものの数秒で人一人がすっぽりと入れる大穴を掘ることに成功した。

ヤンキー(息を潜めて...なんとかやり過ごさねぇと...)

大きな咆哮。
芯まで響く地響き。
何かが燃える臭い。

それが遠く離れていく頃、疲れ果てたヤンキーは安堵の表情を浮かべながら穴の中で眠りに落ちた。
____
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ヤンキー「...ん、」パチ

目を開ける。
耳が痛くなる静けさと、穴の外から見える星空。
どうやら夜になっていたようだ。

ヤンキー(寝てたか...我ながら呑気なモンだぜ)ヘッ

狭苦しい穴から上半身をのりだし、辺りを見回す。
焼け焦げた草と抉れた地面。
もし逃げ遅れていたら、と思うと背筋がヒヤリとする。

ヤンキー(あのバケモンは...いねーようだが)フゥ

のそり、と穴から這い出て学ランについた土をパタパタとはらう。
そこで気付いたのだが、どうやら死んだときに持っていた物は全て一緒に持ってきているようだ。

ヤンキー(財布にティッシュ、ライターに、煙草二箱...1つは開いてるが)

ヤンキー(財布ン中は札が二枚と小銭に...レシート)

ヤンキー「もっとナイフとか普段から持っとくべきだったか?」ヘヘ

凡そ役に立ちそうな物が無いことを改めて確認すると、辺りを見回す。

ヤンキー(星と月が照らしてるから思ったほど暗くはねーが...まずどっちに行ったら正解かってのもわかんねぇなあ)

ヤンキー「おーよしよし、愛しのセッタちゃん...」シュボッ

とりあえず一服。
二度と買えないと解っていることではあるが、やはり煙草を吸ってしまうのはヤンキーの性である。

ヤンキー(...しかし、本当にどうしようか)

ヤンキー(さっきのバケモンが来た方向に向かうか、それとも反対...恐らく去っていった方に向かうか)スパー

ヤンキー(生き物の寝静まった夜に動くべきか、視界の開ける朝に動くべきか...うぅむ)フゥ

ヤンキー(とりあえず...>>48だな)

来た方向に向かって
今動く

ヤンキー(去ってった方向に行けば...鉢合わせも有り得る。ここはバケモンが来た方向に向かうのが吉だぜ)スパー

ヤンキー「うっし...気合い入れてくぞ」スタスタ

日の出を待たずに歩き出す。
生き物の気配の無い夜の内に距離を稼いでおくことが、吉と踏んだためだ。

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____

数時間は歩いただろうか。
単車が恋しくなってきた頃、ヤンキーの目の前に広がったのは鬱蒼と繁る森。

ヤンキー(どう見ても...この森を通るしか道はねえよなあ...)

数時間歩いたのに夜の闇は消えず、それどころか濃さを増してゆく。
まだ夜は長いことを示している。

ヤンキー(よく見たら入り口の辺りに草がはえてない...踏み慣らされて道になってンだ)

ヤンキー(しかし...森かぁ、絶対に何かあるよなあ)

ヤンキー(だが、この森を頻繁に人間が通っているってこたぁ地面の様子見りゃあ解る...どうするべきか)

ヤンキー(さすがに森ン中のやつも全員寝てるか...?いや、しかし今森に入れば、視界は殆ど奪われる)ゴクリ

ヤンキー(ライトでもあったら進むンだがよォ...チッ、めんどくせぇ)

森に入るか、引き返すか。
はたまた森の前で夜を明かすか...
ヤンキーの頭では、どれが最適解かは考えても解らない。

ヤンキー(勘に頼って...>>52でいくか)

森の前で夜を明かす

ヤンキー(今入ったら無事に出れる気がしねぇ...少し不安だが、この辺りで一旦夜を明かすか... )ガサガサ

大きな木に身体を預け、夜空を見上げる。
見たこともない景色に恐ろしい異形の獣。
緊張続きだった脳が、透き通るような夜空で解されてゆく。
落ち着いた瞬間に泥のように身体が重くなり、彼は眠りに落ちた...
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____

褒められたような生き方では無かったなあ。

喧嘩に明け暮れ、悪行に手を染めた。

死んで当然。同情もされないような屑だ。
それがなんの因果か、死んじまったくせにまた生きている。
生き返るのにもっとふさわしい人間がいたろうに。

なぜ、俺が...?

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ヤンキー「...っ」パチ

木々から零れた朝露が顔を叩き、眼が醒める。
それと同時に神経を張り巡らせる。

ヤンキー(臭うンだよな...!)

血の臭い。
幾度と無く嗅いできた、くそったれな臭いだ。

時刻は明け方か、まだ薄暗いが視界は良好。
起きていることを悟られないように慎重に辺りの状況を見極める。

ヤンキー(感じる視線は一つ...血の他にも...これは、動物園の...)

ヤンキー(『獣』の臭いだ)スン

木々の奥から感じる殺気立った視線、そしてそよ風に乗ってやってくる独特の臭い。
感じる情報をフルに使用し、活路を見出だす。
ヤンキー(どうする、俺...)ゴクリ

ヤンキー(クソが...逃げるにしても、ブッ潰すにしても...動いた瞬間、飛び掛かってくる雰囲気だ)

ヤンキー(ここは...>>57するしかねえな)

やるしかねぇ。気合いでぶん殴る。

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