高木さん「私が負けたら、靴下をあげるね?」西片「えっ?」 (14)

「ねぇ、西片」
「ん? 高木さん、どうかした?」

私の隣の席に座る西片くんはからかわれ上手。
そんなことは、わざわざ言うまでもない。
こちらの予想を上回る反応を、返してくれる。

「最近、蒸し暑いよね」
「なにせ梅雨だからね」

梅雨時ということもあり教室内の湿度が高い。

「でも、雨降りそうで降らないよね」
「そうだね」

窓の外を見ると、分厚い雲が広がっていて。
西片くんと一緒に眺めていたら。
ふと、彼をからかう発想が、頭に浮かんだ。

「今日、雨が降るかどうか賭けようか?」

ああ、今日もまた。
私の悪い癖が、出てしまった。
本当は、こんな意地悪してはいけないのに。

「その賭け、乗った!」

自信満々な西片くんは、いつも私を誑かす。

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「随分、自信があるみたいだね?」
「ふっふっふっ……今日の僕は一味違うよ!」

賭けを始める前から、勝ったみたいな表示。
鼻の穴が広がっていて、まるで子供みたい。
きっと、朝の天気予報を見てきたのだろう。

「そう言えば、西片」
「なんだい、高木さん」
「今日、傘持って来てないね」
「そりゃあ、降水確率が0%だったから……」

なるほど、今日の降水確率は0%なのか。
まんまと誘導尋問に引っかかって。
西片くんは早々にアドバンテージを失った。

「あっ!」
「それは良いことを聞いちゃったなぁ」
「ず、ずるいよ、高木さん!」

クスクス微笑むと、彼は拗ねた顔をした。

「ごめんごめん、フェアじゃなかったよね」
「今更謝られても、もう知られちゃったし」
「納得出来ないなら、私は降る方に賭けるよ」

西片くんのご機嫌を取り戻す為に。
私はあえて、降水確率に逆らうことにする。
とはいえ、初めから、そうするつもりだった。

「ほんとにそれで良いのかい、高木さん?」
「うん、それで良いよ~」

念を押すように尋ねる、西片くんに対して。
まるで降参しましたとばかりに諦めた口調で。
不利な方に賭けた私を見て、彼は勝ち誇った。

「それじゃあ、結果は放課後に決めようか!」
「放課後までに雨が降ったら、私の勝ち」
「降らなかったら、僕の勝ちだ!」

放課後まで、あと半日ほど。
気の早い西片くんは、もう勝った気でいる。
そんな彼を見ていると胸が疼く。たまらない。
たまにわざとやっているのではないかと思う。

私を喜ばせる為に、そうしているのでは、と。

「あー! 早く放課後にならないかなぁ~!」

目を輝かせて、そう口にする彼を見ると。
そんな疑いは、無縁であるとわかる。
純粋な西片くんは、本当に可愛くて仕方ない。

そんな彼に、また意地悪なことを囁いた。

「私が負けたら、靴下をあげるね?」
「えっ?」
「西片が負けたら、靴下をちょうだい」

わけもわからず。
ポカンとした、表情。
その顔を見るたびに、私の全身が、熱くなる。

「西片、さっきからどうしたの?」
「べ、別に、どうもしてないよ!?」

あれからしばらく、時は流れて。
そろそろ、時刻は放課後に差し迫っていた。
彼は落ち着きなく、ソワソワしている。

「もうすぐ放課後だね」
「そ、そうだね!」
「西片、鼻息荒いよ?」
「そ、そんなことないよっ!?」

否定の言葉が強ければ、強いほどに。
彼の本音が、私に伝わってくる。
我ながら、おかしな賭けの賞品だとは思う。
勝ったら靴下を貰えるなんて、意味不明だ。

それに対して、こうも期待して貰えるとは。

「そんなに私の靴下が欲しかったの?」
「へっ?」
「言ってくれれば、いつでもあげたのに」

そう言って、くすりと微笑むと。
彼は狼狽して、何も言い返せない。
西片くんの顔は、とても赤くて。

それを見て、私まで、顔が火照ってしまった。

「放課後になっちゃったね」
「そ、そうだね……」
「結局、雨降らなかったね」

そして、放課後。
天気予報の降水確率の通り。
結局、雨は降らなかった。

「あーあ。負けちゃったなぁ」
「あのさ……高木さん」

敗北宣言をすると彼は気まずそうに提案した。

「もし良ければ、この勝負は無効に……」

ああ、どうやらまた、彼はヘタレたらしい。
そんなところも気に入っているのだけれど。
今日はちょっとだけ、対応を変えてみよう。

「西片」
「は、はいっ!?」

なるべく冷たい目をして。
冷めた口調で、彼に接する。
西片くんは、そんな私に怯えていた。

「今更、なにを言ってるの?」
「ご、ごめんなさい!?」
「あ、そっか。気づかなくてごめんね」
「た、高木さん……?」
「私の靴下なんか、いらないってことかぁ」

独りで納得して、寂しげに苦笑すると。

「そんなこと、あるわけないじゃないか!」

頭に血がのぼった西片くんに、怒鳴られた。

「あっ……怒鳴って、ごめん」

驚いて、目をパチクリすると。
西片くんは冷静さを取り戻して。
ペコリと、頭を下げて、謝ってくれた。

今のは私が悪い。
ちょっとからかい過ぎてしまった。
それでも彼は、私に優しくしてくれる。

そんな西片くんを、私は愛おしいと感じる。

「西片、顔を上げて?」
「高木さん……」
「私が悪かったんだから、お詫びをするね」

お詫びに、彼の目の前で、靴下を脱いだ。

「た、高木さん、流石に教室では不味いよ!」
「どうして?」
「だって、誰かに見られたら……!」
「もうみんな帰っちゃったよ」
「あれ? ほんとだ……」

教室内に残るのは、私たち2人だけ。
誰ひとりとして、邪魔者なんていない。
だから私は、こうして大胆になれる。

「私だって、誰かに見られたら恥ずかしいよ」
「だったら……」
「でも西片になら……見て欲しいって思える」

そう言って片足から靴下を抜き取り手渡した。

「こ、これが、高木さんの靴下……!」

私の靴下を見て、打ち震える西片くん。
今にも鼻先に持っていきそうな勢いだ。
そんな彼に対して、一応、忠告をする。

「たぶん、すごく蒸れてると思うから」
「た、高木さんの……蒸れ蒸れ、靴下……!」
「だから、嗅いだりされると、恥ずかしいな」

私だって、流石に照れてしまう。
だから、モジモジして上目遣いをすると。
西片くんは、トマトみたいに、赤くなった。

「顔、赤いよ?」
「……高木さんだって」

言われなくても、わかってる。
もう、どうにかなってしまいそうだ。
でも、もう少しだけ、頑張ろう。
今日はもう少しだけ、大胆になるのだ。

西片くんをからかう為に私はもうひと肌脱ぐ。

「西片、こっち来て」

おいでおいでと、手招きすると。

「どうしたの、高木さん」

彼はまるで忠犬のように、傍に寄ってくる。

「もう片方の靴下も欲しい?」

脱いだのは、片足だけ。もう一足残っている。

「もちろん!」
「それじゃあ、今度は……西片が脱がせて?」

そんなお願いを口にすると、彼は狼狽えた。

「ぼ、僕が、高木さんの靴下を……?」
「嫌?」
「い、いい、嫌じゃないよっ!?」
「それなら、お願いしてもいい?」
「もちろんだよ! 僕に任せて!」

西片くんは本当に、わかりやすくて可愛い。

「それじゃあ、よろしくね」
「でも、どうやって靴下を脱がそうか……」

なにやら悩み始めた彼に、私は助言を囁く。

「机の下に、入ったら?」
「……えっ?」

まるで、夢にも思わなかったような顔をして。
呆然と、愕然と、私を見つめる西片くん。
そんな彼に、優しく微笑んで、促す。

「ほら、遠慮しなくていいから」
「いや、それは、流石に……!」
「誰も居ないうちに早く済ませた方がいいよ」
「っ……わかった! 急いで済ませるよ!」

悪魔になった気分で急かすと、彼は従った。

「西片、大丈夫? 狭くない?」
「せ、狭いけど……大丈夫」
「当ててあげようか?」
「へっ?」
「今、目を閉じてるでしょ?」

机の下に潜った彼に、そう尋ねると、案の定。

「ど、どうしてわかったの!?」
「あはは。やっぱりね~」

西片くんは純粋だから。
きっと、スカートの中なんて覗かない。
そんな紳士な彼に対して、私は挑発してみた。

「蒸し暑いから、ちょっとパタパタするね?」
「パ、パタパタ……?」
「うん。いくよ~!」

困惑する彼の、目と鼻の先で。
私は、はしたなく、スカートをパタパタ。
すると、堪らず彼の絶叫が響き渡る。

「た、高木さん! 見えちゃうってば!?」
「見ちゃダメだよ」
「そ、そんなこと言われても……!」
「いいからほら、早く靴下を脱がせて?」
「わ、わかったよ……」

スカートをパタつかせながら。
西片くんに足を突き出した。
恐る恐る、彼の指先がふくらはぎに触れる。

「っ……!」
「あっ……引っ掻いてごめん! 痛かった!?」
「もう、ちゃんと手元を見てないからだよ」

軽く引っ掻かれて。
思わず、悶えてしまった。
ふぅ。危ない、危ない。

最後の瞬間まで、気を抜くことは、禁物だ。

「ねぇ、西片」
「なに、高木さん?」

私の靴下を脱がそうと。
悪戦苦闘する不器用な彼に。
前々から聞きたかったことを、尋ねた。

「私みたいな意地悪な子、嫌じゃないの?」

机の下に潜っている今だからこそ、聞けた。

たぶん、面と向かっては聞けない。
だって、すごく怖いから。
彼に嫌われるのが、怖くてたまらない。

そんな臆病な私を、彼に見せたくなかった。

「今日だって、何度も意地悪して」
「高木さん……」
「挙句の果てに、靴下を脱がせろだなんて」

そんな私のことを彼は嫌ではないのだろうか。

「ごめんね西片。嫌なら嫌って言っていいよ」

つい、弱気なことを口にすると。

「嫌なわけ、ないだろ!」

西片くんに、怒鳴られた。

「僕は今、悦んで靴下を脱がせているんだ!」
「西片……」
「その悦びを、邪魔しないでくれよ!」

激昂した西片くんの本心。
彼は悦んで、私の靴下を脱がせているらしい。
それが嬉しくて、愛おしくて、胸が苦しくて。

「……じゃあさ、西片」
「なんだよ! 今、僕は忙しいんだけど!?」
「私が、おしっこを漏らしても、嫌わない?」

今にも、膀胱が、はち切れそうだった。

「えっ……?」

顔なんて見れなくても、わかる。
間違いなく、今日1番のリアクションだ。
朝からおしっこを我慢した甲斐があった。

「た、高木さん、今なんて……?」
「おしっこがしたいって、そう言ったの」

聞き間違いなんかじゃないと。
私は、はっきりと、尿意を告げた。
その上で、再び、同じ問いかけを口にする。

「今、漏らしても、嫌わない?」

どの程度ならば、受け入れてくれるか。
西片くんの許容範囲が、知りたかった。
だから私は、彼におしっこをかけてみたい。

「……嫌わないよ」

しばらく逡巡した西片くんは、小さく頷いた。

「嫌なら嫌って言っていいんだよ?」
「……嫌じゃない」
「ほんとに?」
「本当だよ! むしろ、めちゃくちゃ嬉しい!」

ああ、ダメだ。にやける。顔が熱い。
これでは、どちらがからかわれているのやら。
本当に、机の下に潜ってくれて、良かった。

「……ありがとね、西片」

ちょろりと、溜め込んだ尿を、放出する。

「フハッ!」

嗤われた。恥ずかしい。でも、止まらない。

ちょろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

周囲に広がる水溜りに哄笑のさざ波が伝わる。

「西片、大丈夫?」
「いや~! すごい雨だったね!」

気遣う私に、彼は晴れ晴れとした表情で返す。

「まさに集中豪雨で、僕だけずぶ濡れだよ!」

彼はあくまで、雨に濡れたと言う。
本当は私におしっこをひっかけられたのに。
優しい西片くんは、雨に打たれたと言い張る。
まさに、尿も滴る、良い男だ。

彼のその優しさに、私は甘えることにした。

「それじゃあ、賭けは私の勝ち?」
「えっ!? そ、それは……」
「西片の靴下どんな匂いがするか愉しみだな」
「そ、そんなぁ~っ!?」

せっかくの勝利を、棒に振ってまで。
私に華を持たせて、鼻を悦ばせてくれる。
優しくて、たまに男らしくて、素敵な。

からかわれ上手の西片くんが、大好きだ。


【失禁上手の高木さん】


FIN

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