【安価】月明かりの下で (38)

某日、夜八時


男「美しい夜空だ...」

男「排気ガスで淀んだ空気を通して尚澄んだ光を届けてくれる」

???「そうね」

男「...おやおや、君は誰かな」

吸血鬼「私は吸血鬼。あなたの血を吸いに来た」

男「ミイラにでもするつもりかい?」

吸血鬼「そうなるわね」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1559917658

男「それは困るな」

男「では、こういうのはどうだろう」

男「ボクが今からこの街を案内する」

男「もし楽しめたなら、或いは満足出来たなら見逃してくれ」

男「夜明けまで案内するから、その時点で満足出来なかったらボクをミイラにしていい」

吸血鬼「...面白い。私をどこに連れていこうというのだ?」

男「>>4

ポムの樹

~ポムの樹~


吸血鬼「なあ」

男「どうかしました?」

吸血鬼「お前、私を嘗めているだろう」

男「まさか。でもどちらにしろ、うまそうにオムライス食ってる奴に言われても怖くないですよ」

吸血鬼「...」

男「まぁそうぶすくれないで下さいよ。美味しい料理が台無しです」

男「この街の歴史について知っていますか?」

吸血鬼「さあな。つまらない武士に支配されていた頃には私は居たが」

男「いえ、それよりももっと前、まだ稲作を知った位の時の話です」

男「この街のあったところは、月がよく見える土地として知られていました」

男「ですから、月を見てボクはたそがれていたんです」

男「では、次の場所に案内します」

吸血鬼「どこだ?」

男「>>8

血液保管所

~血液保管所~


男「一応聞こう。ここの血液で見逃してもらうことはできますか」

吸血鬼「嫌」

男「ふーむ...」

吸血鬼「私はあくまでオマエに興味があるんだ」

吸血鬼「そもそも私は血なんてなくても生きていけるんだ」

男「え」

吸血鬼「吸血鬼の吸血行動には本能的なものと精神的なものがある」

吸血鬼「私は旨そうだと思った血を吸うことで満たされる」

吸血鬼「そうでなくとも生きてはいけるが、不安定になってしまう」

男「...ごめんなさい」ボソッ

吸血鬼「どうかしたか?」

男「いえ、なんでも?」

男「突拍子もなくて悪いんですけど」

吸血鬼「うむ」

男「遊園地行きません?」

吸血鬼「遊園地だと?」

男「ええ。まぁ...これまでは前座ですよ」

吸血鬼「そうでもなければ今ごろお前はミイラだ」

~遊園地~


男「遊園地ですよ。テンション上がりましたか?」

吸血鬼「嘗め嘗めかオマエ」

男「どのアトラクション行きます?」

吸血鬼「まずは>>14

絶叫コースター

吸血鬼「絶叫コースターにでも行こうではないか」

男「え"っ」

吸血鬼「苦手なのか?」

吸血鬼「だが恐がることはないぞ」

吸血鬼「なぜならそんなことよりもこの私の方が恐ろしいからだ」

男「ははは」

吸血鬼「笑っていられるのも今のうちだぞ」

吸血鬼「...けっこう並んでいるな」

男「なら別の」

吸血鬼「断る。私はお前の恐怖する顔が見たい」

男「既に恐怖してます」

吸血鬼「まだ足りぬから言っているのだ」

男「ああ、昇っていくよ」

吸血鬼「オマエの好きな月が近づいて来るぞ」

男「どうせ引き離される運命だろう」

吸血鬼「美しい悲愛じゃないか」

男「だったら君は邪魔だ」

吸血鬼「私が引き離すのだ」

コースターは首をもたげる
それと同時に恐怖が襲い掛かる


男「ぴぇっ」

吸血鬼「この浮遊感が良い」

男「ぴゃあああああああああっ!!!」

その後もひたすら叫び続け、終わる頃にはぐったりしていた


男「すみませーん...立てないんですけど...」

吸血鬼「じゃあもう一周行くか?」

男「這いずってでも動く」

吸血鬼「それではゾンビだぞ。私の眷属になりたいのか?」

男「生きるッ!!」

吸血鬼「ならばよし。そういえばもう良い時間だが、この遊園地は何時までやっているんだ」

男「ここは夜間遊園地でして、朝までの開園です」

男「さて、今度はどのアトラクションに乗りましょうか」

男「女の子らしいものはお好きですか」

吸血鬼「さあ、どうだろうな」

男「そうですか...じゃあ、>>25ですね」

メリーゴーランド

男「メリーゴーランドですね」

吸血鬼「...はて、メリーゴーランドとはなんだったか?」

男「絶叫コースターは知ってるんですよね?」

吸血鬼「恐怖を与える物体にしか興味はないのだ」

男「では、興味が持てるようにしてさしあげます」

男「これがメリーゴーランドです」

吸血鬼「...乗馬...?」

男「これに乗ってぐるぐる回るんです」

吸血鬼「ほう」

男「順番が来ました。じゃじゃ馬ですので、上下に揺れますよ」

吸血鬼「調教がなってないな」

>>30...吸血鬼はメリーゴーランドにどれほど満足するか

吸血鬼「...」

男「いかがでしょう」

吸血鬼「悪くないな」

吸血鬼「遥か昔憧れたおとぎ話に似た感覚だ」

男「それがメリーゴーランドです」

男「1回分終わりました」


馬は回転を止める


吸血鬼「...なぁ」

男「はい」

吸血鬼「もう一度、乗らないか?」

男「いいですけど」

吸血鬼「馬には乗れるが王子様はオプションでついてくるか?」

男「メリーゴーランドに限らず需要があるにもかかわらずそんなものはないんです」

吸血鬼「飽きた」

男「そうですか」

男「...そろそろ、終わりですね」

吸血鬼「陽が昇る時間か?」

男「そうですね」

男「最後に、観覧車に乗りましょう」

吸血鬼「観覧車?まぁいいが」

吸血鬼「なんとか、乗ることができたな」

男「ええ」

男「ところで、観覧車というのは逢引きの場としても有名なんです」

吸血鬼「そうなのか?バカと煙はなんとやらだな」

男「ふふふ」

吸血鬼「何が面白い」

男「お気になさらず。そろそろ頂点です」

吸血鬼「む...」

男「...夜景は良いものだよ」

吸血鬼「そうかもな...ん...??」

吸血鬼「オマエ...」

男「どうかなさいました?」

吸血鬼「なぜ、私はオマエの背後が見えているのだ?」

男「...」

吸血鬼「答えろ!まさかオマエも...」

男「そうだよ。騙しててごめんなさい」

男「君は数百年前からここにいるようだけど」

男「僕はまだここが草深き原始文明のものだったときからいるんだ」

男「太陽を崇める人たちと月を崇める人たち」

男「僕は月を崇める人たちの王様で、月に届きそうなくらい大きな櫓の上で生贄に捧げられた」

男「それから色んな物を見てきたさ。満月の夜には帰ってこれるしね」

吸血鬼「オマエ...私から逃げられると思うなよ」

男「逃げはしないさ。今度の満月にでも帰ってくるよ」

吸血鬼「ッ!」

男「じゃあ、また会おうね」

吸血鬼「待て」

男「無理な相談だね」


男は消え去った
観覧車はいつの間にか下まで来ている
自分も早く去らなければ灰になってしまうだろう


吸血鬼「..」

吸血鬼「>>39

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom