【安価】元勇者「復讐するわ」 (51)

~監獄内


「……」


カチャッ


「……あ?」


「元勇者さん、ですね。助けに来ました」


「……誰だ…お前」


「話は後です。気付かれるのも時間の問題、早くここを出ましょう」


「……礼は言わねぇぞ」




~監獄 通路


「で、どこ行きゃ良いんだ?」


「私が通ってきた道へ。裏口に馬を用意してます」


「馬……ね。案内しろ」


「こちらへ」


ビーッ! ビーッ!


『緊急事態、緊急事態。施設内に侵入者が入り込んだ、各王国騎士は速やかに侵入者を確保せよ。繰り返す──』


「ちっ……バレてんじゃねぇか」


「…ですね、裏口にも先回りされてるでしょうし……」


「ここの造りはわかるか」


「え…?はい、今私たちの居る階層は地下二階、特別監獄。正面の道は別の囚人が大量に収容された檻があり、その正面が地下1階へ続く階段です。囚人部屋の左右には監視塔へと続く道があります」


「そして西監視塔の道中には倉庫があり、武器や衣類が収納されています。右監視塔の道中には看守室があり、鍵などがあります」


「……なるほどな」


安価下2

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1564588816

あ、名前入れ忘れた、次から入れます
安価下



元勇者「囚人を解放して騒ぎを起こす。それに乗じてここから逃げるぞ」


謎の女「関係の無い人を巻き込むのですか…?」


元勇者「使える物は使う、それだけだ」




~囚人の部屋


囚人「なんだお前ら!脱走したのか!?頼む!!ここから出してくれよ!!」


囚人「お、俺も!!」


元勇者「喚くな!安心しろ、今からお前達をここから出してやる!!ただし派手に暴れてくれよ!」


囚人「うおおおおおおお!!!」


囚人「任しとけ!!王国やつらぶっ殺してやる!!」


元勇者「こっちの通路に倉庫がある!武器はそこから持っていけ!!」


謎の女「……」


元勇者「よし…やれ」


謎の女「はい…」


カチャッ


囚人「っしゃああああああああああ!!!」


ダダダダダダ…


元勇者「血の気が多くて使えそうだな、こいつら」


謎の女「そう…ですね」


元勇者「それにしてもお前、A級魔導士の施錠術式をこうもあっさりと解除するとはな……何者だ?」


謎の女「……それも後で話します」


元勇者「…そうかい」



~地下1階


元勇者「ちっ、王国騎士が先の広間に居やがる……上がった囚人共もあっさりやられやがった」


謎の女「どうしますか?」


元勇者「この階の道を教えろ」


謎の女「そこの広間から正面が地上1階、左が裏口への道です。ですがそちらは待ち伏せされているでしょう」


元勇者「なるほどな」


元勇者(俺は今、得物がねぇ。奴らとやり合うのは得策じゃない。だが、この女は相当な手練みたいだし、倒せるかもしれないな)




安価下2



元勇者「……強行突破するぞ」


謎の女「え…?」


元勇者「どうせバレてんだ、堂々と行ってやろうじゃねぇか。戦闘はお前に任せたぞ」


謎の女「は、はい……」





王国騎士「!!」


王国騎士A「そこのお前!!……貴様、特別房の!!そっちの女は、侵入者だな!?」


元勇者「ああ、そうだぜ?わりぃけど、そこ通らせてくれ」


王国騎士B「ふざけているのか貴様!」


元勇者「大真面目だっつの。おい、蹴散らせ」


謎の女「……はっ…はっ…!」


元勇者「あ?お前なに……震えてんだ?」


謎の女「む、無理です…!やっぱり……私には…!」


元勇者「は?おま──ぐぁっ!!」


王国騎士A「捕まえたぞっ!大人しくしろ!」


元勇者「くそっ…!てめぇ…!」


王国騎士B「侵入者の女も確保しました!!……ってうわっ!?こいつ…失禁してます!」


王国騎士「なに?……くくく…侵入者のくせに失禁とは、おかしな奴だ」


元勇者「お前…マジかよ」



謎の女「ごめん…なさい…」


王国騎士A「立て!元勇者!特別房にまたぶち込んでやる!」


元勇者「ってぇな!もっと優しくしろよ!」


王国騎士A「黙れ!さっさと歩け!」


王国騎士B「こっちの女はどうしますか?」


王国騎士A「看守長の元へ連れて行け。道中は好きにしろ」


王国騎士B「えっ……それはどういう…」


王国騎士A「くく……そいつ、良い身体してるだろう?」


謎の女「……!!」


王国騎士B「……たしかに」


元勇者「っぱお前らクズだな」


王国騎士A「黙れ!!」


元勇者「がっ!!」


王国騎士A「口の減らないやつだ。おい、早く行け。他の奴に見つかったら面倒だ」


謎の女「い、いや…!」


王国騎士B「へへへ…わかりました。おい、こっちこい!」


謎の女「いや…いやぁぁ!」




~特別房


元勇者「……はぁ」


元勇者(あれから…何日経ったんだ?脱獄は失敗、女は消え、俺はまた檻の中…)


元勇者(…ここで死ぬのか……俺は)


元勇者(…いや…)


元勇者(…姉さんの仇を討たずに…死んでられるか)


元勇者(…最後まで足掻いてやる…)


元勇者(…………結局、あの女は何者だったんだ)


元勇者(……俺の関係者か…?…わかんねぇ…)


元勇者「はぁ……寝よ」





ナ、ナンダキサマ!! ウワァァァ!!


元勇者「んん……ん?」


ココヲドコダト…!! ギャアアアア!!


元勇者「な、なんだ…?」


男「っかしぃな~この辺だって聞いたんだけどな~」


元勇者「おい、こっちだ」


男「お?おおー!見つけたぜ元勇者!」


元勇者「…またか。あいつの…あの女の仲間か?」


男「女?……ああ、魔女の事か。そうだぜ、俺はあいつの仲間だ」




元勇者「…そうか」


男「あいつ……死んだんだろ?」


元勇者「いや、知らねぇ。まだこの施設に居るんじゃないか」


男「…そうかぁ…」


元勇者「…なんでもいいけど、逃がしてくれよ。それに、聞きたい事は山ほどある」


男「それは──」


元勇者「後で、だろ。知ってるよ」


男「お、おう……騎士共は粗方片付けたんだけどよ、応援がじきにやってくる。でも、時間はまだある。危なくなる前に魔女を探してみねぇか?」


元勇者「ああ…?」




安価下



元勇者「…なんで俺が探さなきゃならねぇんだよ。何だか知らねぇけどよ、お前達は俺を助けたいんだろ?なら優先事項を間違えるな、まず俺を助けろ」


男「なっ…」


元勇者「探すなとは言ってねぇ。まず俺をここから逃がせ、その後探すのは自由だ。わかるな?」


男「あ、ああ……」


元勇者「よし、わかったなら案内しろ」


男「…こっちだ」





元勇者「すげぇ騎士の数……これ、死んでんのか?」


男「まぁな、殺らなきゃ殺られてた」


元勇者「…1人でか?」


男「ああ。俺の仲間は、俺と魔女だけなんだ」


元勇者「へぇ……(こいつも相当な腕だな)」




~裏口


男「あそこに馬が居るだろ、あれを使ってくれ」


元勇者「…お前は?」


男「探すのは自由…なんだろ?」


元勇者「お前……」


男「この先に湖がある、そこを西に行けば花の都が見えてくるはずだ。そこの酒場で落ち合おう」


元勇者「…わかった」



~花の都


元勇者「いてて…久しぶりに馬乗ったからケツがいてぇ…」


元勇者(にしても……相変わらずだな、この街も)


元勇者(たしか、酒場だったよな)




~酒場


元勇者(鞍の巻に括りつけられてた小袋に、少ないが銅銀貨が入っていたおかげで久々に酒が飲める…美味い)


元勇者(……あいつ、帰ってくるよなぁ…ちゃんと)


元勇者(大人しく待つのも良いけど、酒場の奴らに聞き込みでもしてみるか?それとも他に……)



安価下



元勇者「いや……」


元勇者(今はただ……酒を飲みたい)


元勇者「…………美味い」





男「よう、待たせたな」


元勇者「おっせーよ」


男「悪ぃ悪ぃ。つーか…結構飲んだな?」


元勇者「そうか?大した事ねぇよ」


男「あーあーこんなに使っちまって…仕方ねぇなぁ」


元勇者「……で?」


男「ん?」


元勇者「探したんだろ……どうだったんだ」


男「それ……聞くか?」


元勇者「一応な……知っとかないと、何か気持ちわりぃ」


男「……」


元勇者「……」


男「……死んでたよ」


元勇者「……」


男「酷い目にあったんだろうな、きっと。身体もボロボロだった」


元勇者「……そうか」




元勇者「魔女が死んだのは俺の判断のせいだ、恨んでくれても良いぞ」


男「ああ、恨むよ……この国を」


元勇者「……!お前も……」


男「……酒、くれよ」


元勇者「あ、ああ…」





男「っか~!うめぇなぁ!」


元勇者「……お前さ」


男「ん?なんだ?」


元勇者「なんつーか……仲間が死んだのに、そんなに気落ちしてないよな?」


男「何言ってんだ、悲しいぜ?」


男「ただな、俺が悲しんでちゃあ…魔女が悲しむ。昔よく魔女に言われたんだ、貴方が悲しむ姿は似合わないねって……だからだな」


男「…悲しんで魔女帰ってくんならいくらでも悲しんでやる。ただ、俺達はいつ殺されてもおかしくない。動揺して隙を見せず、冷静でいなきゃな」


元勇者「へぇ~……今の姿じゃ説得力の欠けらも無いけどな」


男「はははっ!今はそんな事気にすんなって!無事に脱獄したんだ!祝勝会だー!」


元勇者「おい!あまり脱獄とか言うな……変な目で見られてるじゃねぇか!」


男「あ、そうだったな!……そういや聞きたい事が山ほどあるって言ってたが、俺もある。だが、先に元勇者の話を聞こうじゃないか」


元勇者「ああ……じゃあ」




質問1 安価下
質問2 安価下2



元勇者「あの魔女とかいう女は何者なんだ?」


男「よくぞ聞いた!!」


元勇者「うぉ…ビックリした。テーブル叩くなよ」


男「あいつはな、俺の妹だ」


元勇者「…マジ?」


男「母親は違うけどな!現国王の親族になるな」


元勇者「!!…てめぇ!あいつの差し金か!?」


男「落ち着け、元勇者。座れ、違うから安心しろよ」


元勇者「訳あって素直に信じられねぇんだよ、俺は」


男「面倒だなぁ~…とりあえず座れ、魔女の事話すからよ」


元勇者「今はお前の事の方が気になるんだが?」


男「俺の事はいい。俺もお前とは少し違うが、この国を憎む者だ」


元勇者「……」


男「やっと座ったな。どこまで話したっけか?」


元勇者「クズ野郎の血筋ってとこまでだ」


男「クズには同感だぜ。んでよ、魔女は国王直属隠密部隊、オーバルの隊長だ」


元勇者「…!あいつ、ダブルクラスだったのか?」


男「へへ、凄いだろ?」


元勇者「でも…じゃあなんで…」


男「ん?」




元勇者「いやさ……魔女、王国騎士を前にビビっちまったのか、何も出来なかったぞ、あいつ」


男「ああ……そうだったのか」


元勇者「何か…知ってるみたいだな?」


男「ああ。魔女は殺気を向けられると萎縮しちまうんだよ」


元勇者「は…?仮にもお前達は国に弓引いてんだろ?殺気なんかで……」


男「元勇者様は死線を幾数も乗り越えてきたんだ、そりゃあ殺気なんて屁でもないだろうよ。俺も慣れたもんだ」


男「でもな、俺も詳しくは知らないが魔女は殺気に対して……尋常じゃない反応をしちまうんだ」


元勇者「……それはあれか…過去に何か?」


男「恐らくな。生きてりゃぁ聞けたかもしんねぇけど……それも叶わぬ夢だな」


元勇者「そう…だな」


男「そんで?他には?」


元勇者「ああ……好きな女のタイプは?」


男「は……?」


元勇者「……」


男「あ、ああ……悪ぃ悪ぃ…まさかそんな質問が来るとはな、ははは!」


元勇者「で、どうなんだよ」


男「そうだなあ~…活発ツインテ姉御肌!すぐ手が出ちゃうけど貴女が好きだから仕方ないの!……的な」


元勇者「え…何その具体的な…」


男「ふっ…」


男「そういう事だ。もういいか?」


元勇者(まだ質問するか?いや、そろそろこいつの話を聞いてやるか?)



安価下



元勇者「もう1つ。随分魔女に入れ込んでいたようだが、兄妹二人で色々と苦労してきてたのか」


男「そりゃそうよ、血は繋がってなくても魔女は俺の妹だ。そして2人で外からこの世界を変えようと思い立ったのは最近だしな」


男「2人で苦労したといえばお前を助ける計画を立てる時だな」


元勇者「……そうか」


男「あ、苦労したといえばな」


元勇者「……?」


男「俺は貧民街の娼婦の息子でな、魔女はたしか名のある貴族育ちだったかな?厳しかったらしいぜ」


元勇者「ふーん…手当り次第だな、クズは」


男「ほんとにな。俺も血は王族とはいえ出自が出自だからな…良い顔はされなかった」


元勇者「そりゃそうだわな」


男「ははっ……んでよ、俺はそんな目に負けたくなかった。だから必死で鍛えて鍛えて……貧民街出身だとか関係ねぇ、生まれた場所なんかで人を判断するなって……でも」


元勇者「……ん」


男「俺が生まれた時…国王は俺とおふくろを宮廷に住まわせてくれた。だけどそこで、おふくろは……くそっ!」


元勇者「……殺されたのか」


男「殺された……うん、そうだな。おふくろは陰湿ないじめにあっていたみたいでな。理由は簡単、貧民街の娼婦だから。それに加えて俺は、おふくろがそんな事をされてるとは露知らず、笑顔ばっかりでなぁ……全然気付かなかったぜ」


元勇者「…お前は何もされなかったのか?」


男「俺は国王に可愛がられてたからか、色眼鏡で見られても危害は加えられなかったんだ」


男「そして、おふくろは壊れちまった」


元勇者「…壊れた?」


男「病んじまったって言うのかな……誰も部屋に入れてくれねぇんだ」


男「俺はそうなって初めておふくろに起きてた事に気付いた。国王に何度も何度もどうにかしてくれって懇願した!そしたらあいつの返事は決まってわかった、だけだ!クソが!」


男「周りの誰も助けてくれねぇ!娼婦だからか!貧民出身だからか!いい加減にしろ!もううんざりなんだよ!」


元勇者「おい…落ち着けよ」


男「あ……悪ぃ。つい熱くなっちまった…」




男「でも、俺にはおふくろしか居なかったんだ……馬鹿だと思うか?そんな事で国を相手にするなんてって思うか?」


元勇者「そんな事?馬鹿が、充分過ぎるだろうが」


男「……!」


元勇者「言わせたい奴には言わせりゃいい!てめぇの物差しで人を計るんじゃねぇ!俺にはそれだけしかなかったんだよ!」


男「元勇者……」


元勇者「……わり、俺も熱くなっちまった」


男「……ははは、お前…口悪いけど良い奴だな!」


元勇者「は?何だよ急に…気色悪い」


男「ひでぇな!……あ、そうだ」


元勇者「あん?」


男「まだ自己紹介してなかったな、俺は剣士ってんだ。宜しくな!」


名称 男→剣士


元勇者「あっそ。まだ協力するとは言ってねぇけど」


剣士「せっかく助けたのに!?まぁ俺の話を聞けって!」


元勇者「え~…」


元勇者(話を聞くか?微妙に眠気もある、話は明日にして寝るか?…剣士の話を鵜呑みして完全に信用するのも危ない、逃げるか?)



安価下



元勇者「で、話って?」


剣士「ああ……ゴホン……ちょっと辛いかもしれないが…」


元勇者「…なんだよ」


剣士「元勇者は、捕えられた時の事……覚えてるか?」


元勇者「……」


剣士「……」


元勇者「……忘れるわけねぇだろ」


剣士「ほんとに覚えてるか?」


元勇者「は…?何を──」


元勇者「!!」


剣士「……」


元勇者「たしかに…姉さんが殺された所を見て…意識を……血溜まり…?死体……なんだ…?これ……お前、どこまで俺の事知ってんだ?」


剣士「知ってるぜ、有名だからな。魔王を倒した英雄、歴代最強とまで言われた勇者……そして災厄の魔王」


元勇者「は……?なに?」


剣士「…マジで驚くなよ、無理かもしれないが」


元勇者「……なんだよ」


剣士「元勇者はさ、姉貴が殺された時に……負の感情が溢れ過ぎて、魔物になっちまったんだよ」


元勇者「は…」


剣士「それに…この話は300年も前の話なんだ」


元勇者「は!?300年!?」


元勇者「でも…それっておかしいだろ!だって俺は現に…!」



剣士「……それは、お前が特異だからなんだ」


元勇者「特異…?なんだよ……それは!」


剣士「人の形をした人ならざる者。魔物の稀少種よりも稀少種。世界に何人と居ない存在だ」


元勇者「待てよ……待て待て…じゃあ…あいつは…」


剣士「そう。元勇者の復讐したい相手はもう居ないんだ。どっちみち今もクズには変わりないが」


元勇者「……くそっ!クソクソッ!!何なんだよ!これは!」


剣士「落ち着け…ないよな」


元勇者「ったりめぇだろうが!なんだよ魔王とか!300年後とか!!」


剣士「だーっ!1回店を出よう!外の空気を吸おう!なっ!?」


元勇者「は、離せよっ!離せっ!!」




~観光名所 花畑 ベンチ


剣士「……ちったぁ落ち着いたか?」


元勇者「ああ…………」


元勇者「情報が処理しきれねぇ……訳が分からねぇ」


剣士「そうだよなぁ……よし、今日は1回寝よう!明日だ明日!」


元勇者「待てよ……」


剣士「質問か?混乱してるのはよーわかる、ほんとにな。だからこそ休もう。とりあえず一つだけ答えようじゃないか。答えたら寝るぞ」


元勇者「ああ……」



安価下



元勇者「俺が意識を取り戻して、ハッキリ覚えてるのは牢獄からだ。そこから何年経ったかは知らねぇ……その間、300年の間に何があったか、教えてくれ」


剣士「良いぜ。俺が生まれる以前のは文献で得た知識だけだからな、鵜呑みにするなよ」


元勇者「頼む」


剣士「元勇者が魔物と化してからすぐに、王都が襲われた。エスパーダ……ってわかるか?」


元勇者「ああ……王国に身を捧げ、武を極めた者のみに与えられる地位、称号。通称は…王の七剣」


剣士「そう、今でもあるぜ。んで、エスパーダでも歯が立たない程に元勇者は強かった。そこからは早いぜ…エスパーダが倒れると王都は壊滅、ここで王都の歴史は一旦膜を閉じる」


剣士「憎む相手もその時に殺してると思うが、覚えてないだろ?」


元勇者「……」


剣士「それでな、王都を滅ぼした元勇者の勢いは止まり、異海と言われる海域の先にある島に根城を構えたそうだ。暫くは平和になると思った民の期待も砕かれ、大陸全域に渡る強力な負の魔翌力を島から放ち、魔物を凶悪化させた」


剣士「これが、何年続いたと思う?」


元勇者「…勿体ぶるなよ」


剣士「200年らしい」


元勇者「なっ……」


剣士「魔の200年と今でも言われる暗黒時代だな。だが、そこに一筋の光明……新しい勇者だ。それもまた、歴代最強だと称えられたそうだ」




剣士「新しい勇者様は各街村を救い、光の加護?だかなんか、そういうので元勇者の魔翌力を相殺して、魔物の凶悪化を防いだ」


元勇者(光の加護……精霊ルクスだよな…)


剣士「そして…元勇者は勇者とご対面、勇者が勝利を収めた。そこからは各街の復興、特に王都を中心にな」


剣士「40年程で大陸はほぼ復興完了。復興を機に発展させた街もあれば、街並みを崩さないで昔のままにしている街もある。花の都とかなはそうだな。そして、王都に国王が座する様になった」


剣士「そこからだ、王都の悪逆の始まりは。貿易を独占、物の輸出入管理、税の徴収、他民の迫害、非王都崇拝者の大量虐殺…挙げるとまだあるが、まぁこんな感じか」


剣士「元勇者が居た囚人監獄が出来たのは30年前くらい?多分その時期に入れられたんじゃないかな」


元勇者「…なるほど。腐ってるな、王都は」


剣士「ああ。不満を持つ者も重役には居るんだけど、中から改革をさせようとしているんだ……それじゃあ遅い…」


元勇者「そうか……ん、勇者は?今はどうなってるんだ?」


剣士「国王の側近だな。最強の盾で、最強の剣だ」


元勇者「…………ちっ」


剣士「なぁ元勇者……俺は、あの国をぶっ壊したい。お前も助けたのも協力してほしいからなんだ」


元勇者「……俺には関係無い」


剣士「…!頼む…!」


元勇者「……って言いたい所だけどな。俺は脱獄囚だし、人じゃなくて魔物?だし、[ピーーー]べき相手も居なくなったし、王国から追われてたら身を隠すのにも人手が欲しいしな」


剣士「…!じゃあ!」


元勇者「仕方なく、だからな。勘違いすんじゃねぇぞ」


剣士「おう!ありがとな!元勇者!」


元勇者「いって!いって!叩くなよ!」



~宿屋 室内(昼)


剣士「よう!起きろ起きろ!」


元勇者「ん…ぁ……」


剣士「もう昼だぞ!メシにしようメシ!!」


元勇者「ああ……」




~花の都 フードコート


元勇者「へえ……こんな所出来てたんだな」


剣士「街並みや雰囲気は変わらなくても、施設は変わるさ」


元勇者「そうか…少し寂しいけど。で、これからの計画は?」


剣士「それなんだけど、2つ選択肢がある」


元勇者「ほう?」


剣士「ひとつ!船に乗って水の都へ行く!」


剣士「ふたぁつ!馬で長閑村に到着後、森を抜けてエルフの住む村へ行く!」


剣士「どうよ!」


元勇者「どうよって言われてもな……目的を教えてくれ」


剣士「ああそうだった!世話になってる情報屋から仕入れたんだけど、水の都には近々賢者様が訪れるらしい」


剣士「んで、エルフの森には元勇者と同じ、特異がいると噂がある」


元勇者「……ふーん。賢者と特異…ね」


剣士「何か他に提案があれば聞くが…どうする!」



安価下2



元勇者「いや、特にはねぇな…任せる」


剣士「そうか!」


元勇者(話が美味すぎる。世界に数人と居ない特異を見つけただと?)


元勇者(やっぱり…良い奴かとちょっと思ったけど……ちょっとな。信用出来ねぇ……なにより縁遠いとはいえ、復讐相手の奴だ)


元勇者(……殺るか?)


元勇者(……殺っちまうか)


元勇者(日中はマズイな。もう一夜泊まらせて……)


元勇者(良い場所もあるしな)


元勇者「あ、わりいんだけど明日からで良いか?今日は久しぶりの花の都を堪能してぇ」


剣士「お、良いじゃねぇの。ちょっと緊張感無い気はするけど、元勇者がそう言うなら了解だ」


元勇者「おう」




~宿屋 室内(深夜)


元勇者「……」


元勇者(よく眠ってやがる。剣士の得物は……あった)


元勇者(ロングソードか、良い剣だ)


元勇者「……よっと…」




~観光名所 花畑


元勇者「ここら辺で良いか……よっ、と」


元勇者「ふぅ……じゃあな、剣士」


元勇者「せめて苦しまないように…殺ってやるよ」


ザンッ


元勇者「うーん、良い斬れ味じゃねぇか。首が軽く斬れたわ。さては相当な業物だな」


元勇者「さて、暗いが花の都から離れるか?」



安価下



元勇者「……ッ!?」


元勇者(な、なんだ…!?頭がクソ痛ぇっ……!!)


『人としての感情が薄れてきたか』


元勇者「だ、誰だ!?」


『何を可笑しな…我はお前だ』


元勇者「何言ってやがる!出てこい!」


『ああ…良いとも。望み通りにな』


元勇者「がっ!!?」


元勇者(くそっ!!クソ痛てぇ!!)


元勇者(なんなんだよ!!この痛みは!!)


『安心しろ、今だけだ。我が表に出れば痛みも無くなる』


元勇者(俺の…中から…!?)


元勇者(なんなんだこいつは!!!)


『久しぶりの目覚めだな』


元勇者「まさかお前ッ!!」


『さあ、我を受け入れよ』


元勇者「へへっ…!良いぜ…!そっちがその気なら……こっちだってなぁ!!」


ザクッ ザクッ ザクッ


『貴様……何を……』


元勇者「へ、へへ……ざまぁ……みろ……」


『…馬鹿な男だ…』


元勇者「随分待たせちまったかな…姉ちゃん……今……行くから……」



元勇者は死んだ。

復讐を果たせぬまま、この世を去る。

王都の悪逆非道は止まる事は無い。


形として前作置いときます
【安価】勇者「魔王倒すわ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564307071/)

無念
ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom