夢見りあむ「なんでぼくに食レポのお仕事がくるのさ!味なんてよくわかんないよ!!」 (27)


~事務所~


夢見りあむ「……は?」

P「だから、仕事だよ」

りあむ「いや、そこは聞こえてるけど……食レポ? ぼくに? なんで???」

P「事務所に来たオファーで、先方から特にアイドルの指定は無かったからな。俺がお前に取ってきた。感謝しろよ?」

りあむ「だから、なんでぼくなの!? 食レポってあれでしょ? お店の人と談笑して、美味しそうに商品を食べて、気の利いた感想を言うんでしょ? むりムリむりムリ!!! いっっっっっこもできないよ!!!」

P「じゃあ説明するからな」

りあむ「Pサマ基本的にぼくの話を聞かないよね。耳取れてんの?」



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読まなくても大丈夫な前作
夢見りあむ「なんでぼくにお悩み相談のお仕事がくるのさ!悩んでるのはぼくだよ!!」
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P「まず、クライアントは下町の商店街だ。都内だが、お世辞にも栄えてるとは言えない地域だな。どうやら、近くに大型の商業施設が建設されたことで売り上げが落ち込み、一発逆転のためにアイドルを使って……ははは、お前みたいだな」

りあむ「笑えるか!」

P「商店街の会長がウチの幹部社員と顔馴染みらしい。ご本人もアイドルなどには理解があるようで、”この事務所のアイドルはみんな可愛くて愛嬌があるから、誰が来ても大丈夫ですよ!期待してますね!”とのことだ。そこでお前を捻じ込んだ」

りあむ「そうやって向こうの優しさに甘えて好き勝手するのやめようよう~~~!!! ”経歴不問!”って求人に前科持ち送り込むくらい非人道的じゃんか~~~!!!」

P「向こうが言ったんだからいいんだよ」

りあむ「Pサマ絶対地獄に落ちるからね」

P「それ、友達にもよく言われるよ」

りあむ「頻繁に友達と死後の行き先トークをするなし!」


P「ってかそうでもしないとお前を指名してくれる仕事なんてないんだよ! こういうのから知名度上げなきゃどうにもならんだろうが!」

りあむ「うぅ……それはそうだけど……」

P「それに、良くも悪くも悪くも悪くも、お前の見た目は今どきの若者だ。そういう層へのアピールには問題ないだろう」

りあむ「”良くも”と”悪くも”は戦力の均衡が取れてなきゃダメだと思う」

P「こういうのは見た人が『自分をターゲットにしてる!』って思わなきゃダメなんだよ。”若い人がもっと来てくれれば……”って先方も言ってたみたいだし、そこは理にかなってるはずだ」

りあむ「お仕事ならやるけど……」

P「まあ、どんなアイドルでもこういう、地味な仕事から始まるんだ。頼んだぞ」

りあむ「……」

P「?」

りあむ「……別に、仕事の大きさなんてどうでもいいけど……上手くできなかったら悪いって思うだけだよぅ」

P「りあむ……」

りあむ「……」

P「悪いモノでも食ったのか……?」

りあむ「茶化すなあ!!!」


P「いや、お前の辞書に”プロ意識”という言葉が載ってるとは思わなくて」

りあむ「言いたい放題だよ! ってかそんなんじゃないし! ぼくの熱量と商店街の期待が乖離してて怖いって話!」

P「じゃあ『こっちはアイドル初心者だから、テキトーにやるね』って伝えるか?」

りあむ「……」

P「『こっちはアイドル初心者のクソザコメンタルで碌にやる気もなくてカバンには承認欲求だけ詰め込まれたクズです』って伝えるか?」

りあむ「わかった! わかったからやめて!!!」


P「ま、もしかしたらお前の隠れた才能が開花するかもしれないじゃないか」

りあむ「そんな都合のいい世界ならアイドルなんてなってないし……」

P「ちなみに食レポの経験は……ないよな」

りあむ「専門学校のカリキュラムに入ってるなら嫌でもやってるんだけどね」

P「じゃあ、適当に……」ガサゴソ

りあむ「?」

P「お、そうだ、さっき取引先から差し入れにチョコ貰ったんだ。ほれ」ポーイ

りあむ「わわっ!?」

P「食べてみろ」

りあむ「?」モグモグ

P「感想は?」

りあむ「あまくておいしいよ?」キョトン

P「○すぞ」

りあむ「いつ逆鱗に触れた!?!?!?」


P「どう考えても食レポの適性を試すテストだろうが!!!」

りあむ「うぇ!? そんなん言ってくれなきゃわかんないよ!!!」

P「そうでもなきゃ俺がお前にチョコなんてやるわけないだろ!!!」

りあむ「ふぇぇ……!!! ”あっ、差し入れくれるなんてPサマ優しい……!”ってキュンとした一瞬を返してよ!!!」

P「そういうところだぞお前!!!」


りあむ「あ、あれだよ! ぼく、本番に強いタイプだから!」

P「本当か?」

りあむ「ごめんウソ」

P「無駄に素直なのわけわかんないな……まあ、確かに急すぎたかもしれないからそこは謝ろう……」ドサッ

りあむ「うわ!? なにこれ!?」

P「これは、俺がお忍びで買ってきた商店街の名物たちだ」

りあむ「いやPサマはアイドルじゃないんだし、お忍びとかなくない?」

P「これは、お前に適切な食レポができるわけないと危惧した俺が他の仕事とかでめちゃくちゃ忙しい中、なんとか予定の合間を縫って買い集めた商店街の名物たちだ」ゴゴゴゴゴ

りあむ「ごめんって!!!!!」


りあむ「これって、やっぱりアレ? ぶっつけ本番はヤバそうって感じ?」

P「当然だろ。兵器を実戦投入する前にテストは必要不可欠だ」

りあむ「兵器って」

P「じゃあまずは、このおせんべいだ。商店街の入り口の方で売っていて、相当な老舗らしい」ヒョイッ

りあむ「おせんべいかぁ……ちょっとジジくさいよね……」

P「それ現場で言ったら翌日からお前の籍はこの事務所にないからな」

りあむ「ひぃぃぃぃぃぃぃ」


P「いいから早く食って感想を言え」

りあむ「そんな脅迫されながらおせんべいを食べるの、生まれて初めてだよう……」ハムッ

P「俺もおせんべい食うのを他人に強いたのは生まれて初めてだ……どうだ? 俺も食べたが、なかなか」

りあむ「かっっっった!!! か、かたいんだけど!!!」

P「……」

りあむ「こんなの齧れないよう……! あ、手で割っちゃえ……! えいっ! ようやく割れた……硬すぎか……石か……」ブツブツ

P「……」

りあむ「んー……いや割っても硬いなこれ……」モグモグ

P「……」

りあむ「あー、でも味がわかってきた。おせんべい! って感じ! まあ美味しいんじゃない? ふつうに」

P「……」

りあむ「これ全部食べるの、あご疲れそうだなー。ま、美味しいけどさ」モグモグ

P「……」

りあむ「ごちそうさま。悪くなかったよ! Pサマ、ぼくの食レポ、どうだった?」

P「火葬と土葬、どっちがいい?」

りあむ「もはや弔い方について!?」


りあむ「え!? そ、そんなに!?」

P「自覚が無いのか……」

りあむ「ちゃんと美味しいとか言ったのに!?」

P「お前に食レポをやらせるくらいならその辺で不法滞在してるパキスタン人を連れてきた方が100倍マシだとわかったよ」

りあむ「比較対象、何?」


P「0点のテストを手直しする赤ペン先生の気分だ……」

りあむ「お、お手柔らかに……ね?」

P「まず初手! 『かっっっった!!!』って!!!」

りあむ「だって硬いんだもん!」

P「最初にネガティブワード入れるのは食レポとして0点なんだよ!!!」

りあむ「ごめん……」

P「ってかお前! その後どうやって割ってた!?」

りあむ「チョップ」

P「雑すぎんだろうが!!! 目の前で商品チョップされて嬉しいヤツいねえだろ!!!」

りあむ「でもどうせ割るなら一緒じゃん!」

P「うるせえ! お前のメンタルを割ってやろうか!!!」

りあむ「そっちはもともとバッキバキだようるさいなあ!!!」


P「しかし、素直な印象を口にすることは大切だ。お前は最初に『硬い』と思ったんだな?」

りあむ「うん……」

P「そこは『しっかりしてる』とか『噛み応えがある』とか、いろいろ言い換えればいい」

りあむ「なるほど!」

P「そもそも、いきなり齧るんじゃなくて、先に割って小さくしてから食べても誰も文句言わないだろ。アイドルなんだから」

りあむ「確かに……ちょっとずつ食べる方が可愛い! 尊い!」

P「そんで、肝心の味について! 何て言った!?」

りあむ「おせんべい! って感じ!」

P「おせんべいの感想におせんべいというワードを使うな!!!」


P「そりゃそうだろおせんべいなんだから!!! むしろおせんべい食べてビーフシチューの味がしたらこの街はおしまいだから早く病院に行くといい!!! 頭の病院にな!!!!!」

りあむ「お、落ち着いてよPサマ!」

P「お前の脳内のおせんべいイメージと近い味だったんだろ? そういう時は『懐かしい味ですね』とか『落ち着く味ですね』とか、あるだろう!」

りあむ「Pサマすごい……!」

P「これでわかっただろ? 食レポってのは、自分が感じたことをいかに耳障りの良い言葉に置き換えられるかが勝負なんだ。つまり、お前が一番苦手としていることだ。それができるやつはそもそも炎上なんてしない。なぜ俺はお前に食レポの仕事を取ってきたんだ? アホなのか?」

りあむ「情緒大丈夫!? すっごいリアクションしにくいよ!?」


P「ともあれ、後戻りはできない……徹底的に鍛えるぞ」

りあむ「ひぃい……」

P「次はこの、おまんじゅうだ」ヒョイッ

りあむ「おまんじゅう……って、ちっちゃ! こんなんじゃ足りな……はっ!」

P「……」ジーッ

りあむ(違う! 言い換え……言い換え……!)

りあむ「かわいいサイズ! 一口で食べれるからどんどん口に放り込んじゃいそう! やっぱ食べ歩きだとこれくらいの方が気兼ねなく買えるよね!」

りあむ「どう!?」バッ

P「うっ……りあむ……ようやく……その気持ちが”思いやり”だよ……」グスッ

りあむ「ガチ泣き!?」


りあむ「あとその”作ったロボットに感情が芽生えた時の博士”みたいなセリフはなんなの!?」

P「俺はまたてっきり『こんなサイズじゃハトのエサにもなりゃしないぜ! いったいいつからここは赤ちゃん向けのおやつ売り場になったんだい? HAHAHA!!!』とでも言うのかと……」

りあむ「そんなアメリカンな罵倒したことないんだけど!?」

P「冗談はともかく、見直したよ」

りあむ「えへへ……」

P「その調子で味についても頼む!」

りあむ「任せて!」モグモグ

りあむ「……!」

りあむ「さっきのおせんべいより美味しい!!!」ペカー

P「おまんじゅうの感想におせんべいというワードを使うな!!!」

りあむ「ひぃぃぃぃ!!!」


P「おまっ……ばっ、馬鹿野郎! この……ばか!!!」

りあむ「Pサマ! 語彙が!」

P「ちょっと褒めるとすぐこれか! 3歩も歩かずに言い換えるのを忘れやがって!! いったいいつから俺はニワトリのプロデュースをしてたんだろうなあ!! HAHAHA!!!」

りあむ「そんなアメリカンな罵倒されたことないんだけど!?」

P「同じ商店街の他の商品を引き合いに出すとか、一番やっちゃいけないことだからな! 生涯遺恨が残るやつだからな!!!」

りあむ「わかったよぅ……」

P「そもそも甘いものとしょっぱいものを比べてもしょうがないだろ! 3割バッターと10勝投手を比べてもどっちが新人王にふさわしいとかわかんないんだよ!!!」

りあむ「その例えはぼくにはよくわかんないけど……」


P「やはりダメだ……俺の力じゃお前をまともなレポーターにはできない……」

りあむ「ごめんって……」

P「せいぜい10%の確率でまともな食レポをするクズ型ロボットどまりだ……」

りあむ「Pサマの罵倒のボキャブラリーって人生のどの過程で鍛えたの?」


P「とにかく! 数をこなして慣れるしかないな……次は……」ガサゴソ

りあむ「あ……PサマPサマ」チョイチョイ

P「ん? どうした?」

りあむ「……おなかいっぱい」

P「ああん!? せんべいとまんじゅうで!? お前はあれか! 妖精さんか!!!」

りあむ「ち、違うよう! さっきタピオカミルクティーでひと映えしてきちゃって……」

P「タピオカミルクティーの単位は映えじゃない!!!」


りあむ「で、でも食レポの話は突然だったし、その前にぼくが何か食べててもしかたないでしょ!」

P「むぅ……それは正論だな……」

りあむ「あ! ちゃんと飲み干してゴミ箱に捨てたよ!」

P「当たり前だ。そもそもポイ捨てなんてしたらお前が事務所に着く前にアカウントの炎上が俺の耳に入るわ」

りあむ「くそう……包囲網だ……」


P「じゃ、今日はここまでにしよう。続きはまた今度な」

りあむ「わかった……」

P「ちなみに、タピオカミルクティーはどうだった?」

りあむ「え? 甘くてもちもちしてたけど?」

P「……チッ」

りあむ「舌打ち!? あ! 今のも食レポのフリか! えっと……えっと……! ”飲んだら太りそうだから運動に繋がっていいと思った”よ!!!」ドヤァ

P「……やっぱり他人から褒められないで育ったヤツは褒めるのが下手なんだな……俺が悪かったよ」

りあむ「もはや哀れまれてるんだけど!? めっちゃやむ!!!!」



おわり





ありがとうございました。


直近の過去作


橘ありす「久川フレデリカ?」

緒方智絵里「朋さんは撮影で、ほたるちゃんはワンステップスのイベント……」

黛冬優子「あさひと愛依がまともにインタビューに答えられるわけないじゃない!」


などもよろしくお願いします


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