女「私の王子様」 (14)

男君は私の王子様。

友達と楽しそうに話している横顔がカッコいい。

体育で活躍してる姿がカッコいい。

時折私を見る顔がカッコいい。

誰にでも分け隔てなく優しい。

嫌われものの私にも優しい。

彼だけは私から視線を反らさない。

いつも明るく元気に。

男「おはよう、女さん!」

女「…………ええ、おはよう」

私の一日は彼によって始まる。

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友「お前女さん狙いなの?」

男「なにが?」

友「いや、最近いっつも挨拶してるじゃん。たまに話しかけてるし」

男「挨拶なんて誰にでもするよ。女さんには前からしてたし。挨拶だけで好きだとか言ってたら、俺は明日からどう生きていけば良いんだ?」

友「状況が違うだろ……女さんに話しかけてるのお前くらいしかいないんだぜ?」

男「ふーん」

友「ふーんて。周り見ろよ……」

男「周りに合わせて俺も声かけるのは控えておこうって? そうはならないでしょ。彼女もクラスメートなんだし」

友「いやまぁ……そうだけど。けっこう噂になってるぞ」

男「知らないよそんなの。思いたい人には好きに思わせておけば良いよ」

友「まぁお前が良いならいいけどさ」

男「そもそも美人過ぎて近付き難いからって、声かけてるだけの人間をそういう目で見る方がどうかしてる」

友「お、怒るなよ……」

男「別に怒ってないよ。みんなちゃんと挨拶すりゃいいのに」

友「いやいやいやムリムリ。見ろよ……ほんと、見てるだけで息が止まりそうになるぜ……」

男「ぜんっぜん分からん」

友「お前はな……とにかく気を付けろよ、女さん過激なファンも多いらしいから」

男「過激なファンって、アイドルでもないのに? というかいつも一人な気がするけど」

友「忠告はしたからな。ほんと気を付けろよ」

男「はいはい分かったよ」

~翌日、朝~

男「おはよう、女さん!」

女「…………ええ、おはよう」

男「元気?」

女「……元気よ? 何故?」

男「ちょっと元気無さそうだったからさ」

女「………………猫」

男「猫?」

女「……逃げられたから」

男「なるほど。野良猫は警戒心強いからね」

女「うん…………でも、可愛かった」

男「猫可愛いよね。女さん猫派?」

女「………………。犬も同じくらい好き」

男「アハハ! どっちも可愛いよね!」

女「…………うん」

男「じゃあまたね」

スタスタ、カタン

友「………………」

男「なんだよ?」

友「ほんと良く話せるなと」

男「そんな神聖視するほど特別じゃないよ、彼女。普通の女子だから」

友「そこに座るだけでモナリザと呼ばれる彼女が? APP17は堅いと言われてる彼女が?」

男「大丈夫かそいつら?」

友「好きなの?」

男「だから……はぁ……男と女が話してるだけで恋愛だなんだって話になる歳でもないだろくだらないな本当」

友「分かった、俺が悪かったからキレないでくれ。もう本当に二度と言わないから」

男「………………はぁ……なに、お前こそ好きなの? 彼女」

友「好きだよ」

男「そうかい。じゃあ俺に嫉妬する前にやることやれ。俺に突っかかるな」

友「わ、分かってるけど」

男「なに? ファンクラブ? 親衛隊? なんだか分からないけどくだらない。仲良くしてる人間に嫉妬する前に自分が仲良くなる努力しろよ」

友「ごめん」

男「大体俺は女さんに恩があるだけだ」

友「恩? なに?」ズイッ

男「顔を近付けんな。……去年のサッカーの試合覚えてるか?」

友「去年……?」

男「はいはい……去年県予選突破して全国行っただろ?」

友「あー! なんか応援行ったやつか!
あったあった、一回戦でボロ負けしたんだよな」

男「……まぁ。んでみんな泣いてて……俺全然泣けなかったんだよ」

友「悔しくなかったってこと?」

男「悔しかったけど、俺滅茶苦茶マークされててそれどころじゃなかったんだ。三人に抑えられて必死にやってるうちに終わってた感じで」

男「二年と三年の先輩たちが「俺たちがもっと強ければ」「俺が悪い」って泣いてるなかでかける言葉もなかったから、飲み物買いに行ってさ」

男「……んでそこで一気に来て。馬鹿みたいに泣いて。「俺がもっともっと上手ければ」って泣いてたらさ、声かけられたんだよ」

友「女さんに?」

男「うん」

~回想~

「……大丈夫?」

男「っ……? あ……ご、ごめんなさい……」

「………………」

男「女さん……だよね? あはは、カッコ悪い所見られちゃった」

女「…………え? ……名前」

男「ん? 知ってるよ流石に。有名人だし」

女「………………」

男「あっと、無遠慮だったね。ごめん」

女「………………大丈夫」

男「うん。飲み物?」

女「……ええ」

ピッ……ガコン

女「…………カッコ悪くなんて、無かったよ」

男「え?」

女「凄い頑張ってた。凄かった」

男「……あはは……うん、ありがとう」

女「……男くん、かっこ良かったよ」

男「そっか。そう思ってくれる人が一人でもいるんなら、頑張って良かった。……うん、本当にありがとう女さん」

女「…………私の台詞。いつもありがとう、男くん。……っ!」タタッ

男「あ。行っちゃった……なんかスッキリしたなぁ……ほんとありがとね、女さん」

友「はー……天使か?」

男「だからそうやって無意味に持ち上げるなよ。無駄に孤立させてるからそれ」

友「いやマジ慰めてくれるとか愛に溢れてるじゃん……マリアか?」

男「ファンとか言ってる奴はみんなお前みたいなのか……?」

友「とにかくお前に恋愛感情がないのは分かったから、ちゃんと伝えておくわ」

男「……ついでに女さんと仲良くするように伝えとけ。孤立させて満足するな、友達になれって」

友「分かった分かった」



友「……ということなんですよ……」

友女「…………で?」

友「で? じゃなくて! 真面目に聞けよ!」

友女「他人の色恋沙汰に興味ない」

友「相談できる奴がお前しかいないんだって……」

友女「まず私は男くんの意見に賛成。遠くから見てるだけの人間が他人に嫉妬するなんて傲慢過ぎる」

友「分かってる! でもあいつが昔から男のこと好きだったのは知ってるから、なんと成就させてやりたいんだよ……」

友女「シスコン」

友「何とでも言え。友妹も来年入学してくるから、それまでの時間稼ぎくらいなら出来ると思ってたんだが……まさか女さんと仲良くなってるなんて……」

友女「割りと前から話したりしてたよ」

友「気付かなかったんだよ! あの二人が一緒にいるのが自然すぎて!」

友女「端から見たら理想のカップルだからね」

友「そうだな……じゃない! 何とか知恵かしてくれよぉ!」

友女「無理。というか男くんの方は別に恋愛対象に見てないんでしょ? ならほっとけばいいじゃん。干渉すればそれだけ意識しちゃうよ」

友「頭悪い! 男と話すときの女さんの表情見たことないのか!? かんっぜん恋するモナリザだぞ!?」

友女「…………。はー……まぁとにかく、妹さんが入学してくるまで男くんをフリーにできれば良いって事だよね?」

友「おお! そこから先は友妹のやることだ、付き合えなくても知らねぇけど、チャンスは平等に訪れるべきだろ?」

友「昔はよくウチに遊びに来てたのに、サッカー始めてから全然来なくなってさ……」

友女「ふむ……だけど女さんから男くんにアクション起こしてる訳では無いんだよね?」

友「俺の見た限りでは」

友女「それならなるべく男くんの近くにいたら? 女さんの近くにも行けるし一石二鳥でしょ」

友「いやそんな畏れ多い」

友女「男くんが言ってたんでしょ? 「彼女は神聖視するほど特別じゃない」って」

友「あいつは人気者の陽キャだから」

友女「好きにしなよもう……」

友女「大体妹さんのことも本当なんだろうけど、女さんと男くんが付き合うのが嫌ってのもあるんでしょ? だしに使うのは卑怯だと思わないの?」

友「う……そ、それはまぁ……うん」

友女「…………まぁ良いよ。ちょっとは協力するけど、やる気はそんな無いから」

友「お、おう……ありがとう。でもどうするんだ?」

友女「あんたができないなら私がやるしかないでしょ」

友女「こんにちは」

女「………………」スッ

友女「いやいや、私が声かけてるのは女さんだから」

女「…………私? こんにちは」

友女「女さんってさ、なんでいつも一人でいるの?」

女「………………さぁ」

友女「さぁ、か。まぁ良いんだけど、良かったら私と友達になってくれない?」

女「……え?」

友女「情けない話なんだけど、私も友達いなくてさ。で今からどこかのグループに所属するのも面倒だなーって思ってたら、女さんが目に入ったからさ」

女「………………」

友女「……いやではない。けど……」チラ

女「(男くんの事見てる。ふーん)」

友女「ね。ダメじゃないなら、良いでしょ?」

女「…………男くんに聞いてみないと」

友女「(おっと? 強引に行ってみたつもりだけど、気づいてないなこれ)」

友女「え? なんで男くん関係あんの?」

女「……友達、だから」///

友女「さては貴女可愛いな?」

女「え?」

友女「おっと。良いじゃんそんなの、友達なんて誰かに許可取ってなるもんじゃないよ。その時のパッションでしょ」

女「う…………ん」

友女「(もう一押しかな)」

男「そうだよ女さん。俺の許可なんていらないから、どんどん友達作った方がいい。ありがとう、友女さん」

友女「うお!? い、いつの間に!?」

男「女さんが困ってそうだったからいつでも助け船出せるようにしようかとね。ね、女さん。せっかくこうして友達になってくれる人がいるんだから、色々経験しよ?」ニコッ

友女「(うわ、なんだこの爽やかイケメン……)」

女「……………………うん」

男「じゃあさ、俺と親友になってよ女さん。で友女さんは友達から始めよ?」

女「…………親友……うん、親友」

友女「(……凄く嬉しそう)」

男「で俺と友女さんも友達! ね?」

友女「……うっす」

友女「ということになったから」

友「全然ダメじゃねぇか」

友女「逆に聞くけどあの鉄壁の守備をどう突き崩せと? やれるだけやったけど? 文句言われる筋合い無くない?」

友「う、怒るなよ……」

友女「怒ってない。ただでさえスクールカースト二人と「友達」になんてなることになって面倒なのに、ほんと面倒聞くんじゃなかった」

友「ごめんて……。ま、まぁでも二人きりになることは阻止できるし、結果オーライってやつだろ」

友女「あんたも来なよ」

友「いや無理。マジ無理話しかけられんから」

友女「私はなんのために頑張ってるんだか……」

友「…………ほんとごめん」

友女「本当にね。無駄な努力。他人のために行動するとろくなことにならない。特にヘタレで勇気のない頭悪い奴の為とかサイテー最悪」

友「お、起こるなって……」

スタスタ

男「ちょっといい、友女さん?」

友女「え? あ……うん、なに?」

男「二人だけで話したいことがあるんだけど」

友女「二人だけで?」チラ

友「…………んん」

友女「うん、分かった」

友女「……で、なに?」

男「まずは……女さんと友達になってくれてありがとう。いずれとは思ってたんだけど、誰も彼も「無理」ばっかりで困ってたんだよね」

友女「……ふぅん……そうなんだ」

男「ふんふん。なるほどね」ジッ

友女「な、なに?」

男「いや。俺って女さんに恩があってさ、どうにか彼女の友達を増やしてあげたいと勝手にお節介を焼いてるんだ」

友女「……本当にお節介だね。女さんがそんなこと頼んだの?」

男「なるほど」

友女「は?」

男「友にお願いされたんでしょ?」

友女「…………そうだけど」

男「いや、それならそれでいいよ。ただ女さんとは仲良くしてくれると嬉しいな」

友女「恩だか何だか知らないけど、そんな無駄なことして意味あるの?」

男「俺は今の状況こそ無駄だと思ってるから」ニコッ

友女「なんで? 別に女さんが孤立してようが嫌われてる訳じゃ無いんだからそれでいいじゃん」

男「女さんは俺を運命の人だと勘違いしてる」

友女「………………は?」

男「今までずっと孤独だったからかな、毎朝挨拶する程度の俺なんかに好意を抱いてくれてるんだよ」

友女「………………それで?」

男「俺は彼女の運命なんかじゃないし、誰かに好かれるような人間じゃないから。彼女の面倒なんて見られない。でも彼女から受けた恩は返したい。だったらやることはひとつでしょ?」

友女「訳わからない。なんでそんなことあんたが決めんの?」

男「家庭の都合、俺の心境。どっちか聞きたい?」ニコッ

友女「(……何故かは分からないけど、聞いたら引き返せないような……気がする)」

友女「……やめとく」

男「それがいい。わざわざ他人の闇を知って無駄に背負う必要はないよ。そういうわけでよろしくね」

友女「……男くんは女さんのこと好きじゃないの?」

男「友達ってだけだよ?」

友女「あんなに綺麗なのに? なんとも思わないの?」

男「あはは! うーんそうだね……」

男「……ま、女性なんて信じられないよね」

友女「分かった。それ以上は聞かないでおくから勝手に闇出さないで」

男「ごめん。じゃあね」

またそのうち来ます

友女「(てっきり強がってるだけか、もしくはまったく気付いてないのかと思ってたけど……)」

友女「(あれはヤバイね。私の勘が「踏み込むな」って言ってる)」

友「さっきから黙ってどうしたんだ? 男になにか言われたのか?」

友女「男君って、昔からあんな感じなの?」

友「ん? んー、そうだなぁ……あいつとは小学からの付き合いだけど、最初は滅茶苦茶暗かったよ」

友女「暗い?」

友「ムカつくことに昔からイケメンではあったけど、雰囲気が暗すぎて誰も近付かねぇの。それが気になってつい声かけて」

友「全然感情無いみたいで、俺が遊びに誘ってもうんともすんとも言わない。無理やり手引っ張ってっても、抵抗もしない」

友女「……へえ。今からじゃ考えられないわね」

友「最初の一年はもう一人言喋ってる気分だったぞ。でもちょっとずつ喋るようになって来てさ」

友女「というかなんでそんな奴相手に何年も付き合い続けたの?」

友「………………ちょっと見てられなくてな」

友女「はい嘘」

友「なんなんだよ! 見抜くな!」

友女「あんた顔に出まくってるから。で?」

友「友達いなかったんだよ!」

友女「あっ」

友「やめろ! そういう反応が一番傷つくんだからな!」

友女「ごめん」

友「滅茶イケメンな男連れ回してれば人気者になれると思ってました! 文句ある!?」

友女「いやー無いです」

友「くそぅ……」

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