提督「ていうか寒くない?」 (22)


大淀「まぁ10月も半ば過ぎましたし」

提督「にしても急に寒くなりすぎだろ。とうとう多摩が執務室に来なくなったぞ」

大淀「確かに最近多摩さんをここで見てませんね。いっつも提督の足元か膝に居たのに」

提督「ずっと布団に籠ってるよあいつ」

大淀「球磨さんとか大井さんとかが無理矢理連れ出しそうですけど?」

提督「いや、俺の部屋に居るからさあいつ」

大淀「……それは大丈夫なんですか?」

提督「大丈夫だろ。猫だし」

<猫じゃないにゃー!

提督「……聞いてたのか」

大淀「まぁ、提督のその辺の手癖の悪さは言っても仕方ないとして」

提督「なにもしてないからな!」

大淀「台風も最近立て続けに来て出撃もままならずみなさん若干だらけムード入ってますよね」

提督「なにもしてないからな!?」

大淀「わかりましたって……とにかく皆さん気が抜けてるじゃないですか」

提督「最低限の警戒網は敷いてるけど遠征もほぼほぼ行えてないからな」

大淀「というかこの間の台風なんて本来避難するべきですよね? なんで私達普通に鎮守府勤務してるんですか?」

提督「お前らはまだマシだろうが、海上浮けるし多少のダメージ沈むほど柔じゃねぇんだから。
    俺なんて強風で飛んだトタンに当たったら死ぬんだからな?」

大淀「誰かが守るでしょう」

提督「トタンに当たった途端に」

大淀「……多摩さん言ってください」

<くっだらねぇにゃ

提督「お前今晩おやつ抜きな!」

<にゃー!?

大淀「ホントに猫扱いですね……」

提督「どういう立ち位置で居たいのか未だに判然としない」


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大淀「で、です」

提督「おう」

大淀「寒いのもわかりました。台風の影響で出撃に影響が出て若干空気が緩んでるのもわかりました」

提督「うん」

大淀「で、提督はそれに託けてどんな悪さをするつもりなんです?」

提督「言い方に悪意がある」

大淀「それは失礼しました」

提督「結構お前だって楽しんでる癖に酷くない?」

大淀「まぁここまで含めてお約束じゃないですか」

提督「いつもの茶番ってか」

大淀「なんにせよ。あまり大事にはならないようにしてくださいよ?
    提督がこの手の思い付き行動するときって絶対問題おこるんですから」

提督「それは俺もそうだけど水面下で着々と闇を抱え込んでいた艦娘にも問題があると思う」

大淀「……雷さんと電さんに関しては早期発見できてよかったですね。としか」

提督「手遅れだった気がするんだけどな!」

大淀「とりあえずお気をつけて、とだけ」

提督「はいよー」


―――

足柄「ふんふんふ~ん♪」

ビスマルク「うぅー寒い寒い……ん?」

足柄「よいしょっと! ……うんうん綺麗な狐色。さっすが私ね!」

ビスマルク「……なにしてるの?」

足柄「もっちろんトンカツを揚げてるのよ! ビスマルクこそどうしたの? すっごい寒そうだけど」

ビスマルク「さっきまでドテラーを着てコタ・ツーに入ってたのに……ジャンケンで負けてお茶とお菓子の補給に来たのよ」

足柄「それはご愁傷さま」

ビスマルク「それでトンカ・ツーってなんなの?」

足柄「……その前に聞きたいんだけど。なんであなたって普段流暢なのにコタ・ツーとかオトシ・ダーマとか
   日本固有の言葉になるとめちゃくちゃになるの?」

ビスマルク「なんででしょうね……不思議ね」

足柄「っと次揚がったわね。……食べる?」

ビスマルク「それってそのまま単品で食べるものなの?」

足柄「そういう人もパンに挟んでもごはんでもオッケーよ。カツは最強の食べ物だもの」

ビスマルク「最強」

足柄「最強」


ビスマルク「いいわね! 最強って言葉は大好きよ!」

足柄「ちなみに、この鎮守府でその最強のカツを揚げさせたら私の右に出るものは居ないわ」

ビスマルク「なるほど……いいわ! 私とプリンツ……それとグラーフとレーベとマックスの5人分頂戴!」

足柄「まっかせなさい!」

提督「お前ら変な会話してんな……」

足柄「あら提督、どうしたの? カツの匂いに誘われちゃった?」

ビスマルク「さいきょーの食べ物らしいわよ」

提督「お、おぉ。そうかそうか。……しかし揚げ過ぎじゃないか?」

足柄「だってぇー。最近まともに出撃もさせてもらえないんだもの。そりゃカツ揚げるしかないじゃない?」

ビスマルク「確かにこの所出撃も訓練もないわよね。艤装にも触ってないもの」

提督「それはわかる。俺がここに来たのもその件だしな」

足柄「?」

提督「最近みんな気が緩んでるからな。カツならぬ喝を入れようかと思って」

ビスマルク「あんまり面白くないわ」

提督「辛辣」

足柄「なら出撃させて頂戴よ。出撃さえさせてくれれば貴方に勝利をプレゼントしてあげるわよ?」

ビスマルク「えー貴方凄いわね。私こんな風と雨の中出撃なんてしたくないわよ」


足柄「私と言えば戦って勝つこと! だもの、台風なんてへっちゃらなんだけどねぇ」

提督「随伴する他の艦のことも考えてくれ」

足柄「だいじょーぶよ! 勿論やる気のある子達をすでに選出してあるわ!」

提督「夕立・神通・赤城・武蔵・霧島……見事に三度の飯より殴り合いが好きな連中だな」

ビスマルク「日本の艦はおかしいわ」

提督「独軍も当時は結構頭おかしかったと思うけどお前は割と普通だよな」

ビスマルク「そりゃそうよ。70年経って目覚めてみればナチの名を出すなヒトラーの名を出すな軍歌を歌うな。
       当時の全てが悪で想起するのも忌まわしい過去みたいに扱われればなんかもうどうでもよくなるわ」

提督「触れづれぇ」

ビスマルク「あなたたちは違うの? 正しいと思い、国の為人の為と行ったこの戦いが
       いずれ悪と断じられ口にするのも憚られる存在として扱われるかもしれないって考えないの?」

提督「ノーコメント」

足柄「……ま、考えても仕方ないもの。そのときそのときで正しいと思ったことをするだけよ」

ビスマルク「ふぅん」

足柄「少なくとも! 勝った後に食べるカツは最高に美味しいもの! 私にはそれだけで十分!」

ビスマルク「……そうね。私も勝利の後のビールは最高だわ」

提督「俺は焼酎がいいね」

足柄「私も日本酒がいいわねぇ。……あと一個聞いていい?」

ビスマルク「?」

足柄「なんでそんなに流暢なのにコタ・ツーなの?」

ビスマルク「……あ、カツもらってくわねー」

提督「わざとやってる説」

足柄「絶対そうよね。キャラ付けよ」


―――

提督「足柄とビスマルクは問題なかったぞ。まぁビスマルクはあれだが……兎に角喝入れる必要はなかった」

大淀「……え、執務室出た時とテンション違いすぎません? なんでそんな低いんですか?」

提督「想定外にくっそ重たい話された」

大淀「あー……あーあー。なるほどなんとなく察しはつきました」

提督「マジで?」

大淀「ビスマルクさんはたまーにそんな話してきますよね。私も工廠組の四人と居る時に流れでそんな会話になったことがあります」

提督「抱えてるものがあるのは仕方ないんだけどどうすっかなぁ」

大淀「一度思いっきり甘やかしてみてはいかがです?」

提督「は?」

大淀「ほら、ビスマルクさんって帰還時の主張強い方じゃないですか。特にMVP取ったとき」

提督「確かになんというか……尻尾ぶんぶん勢ではある」

大淀「普段は提督も適当に流してますけど一度完全にだだあまにやってしまってはどうです?」

提督「なるほど。なんの解決にもなる気がしない」

大淀「解決しますよ。結局モチベーションうんぬんの話なんですから」

提督「考えとく……とりあえずこれあげる」

大淀「この大量のカツをどうしろと?」

提督「食え。俺はまたぷらぷらしてくるから」

大淀「この量は無茶ですって!」

提督「あばよー」


―――

 ガタガタガタ

提督「うおー。風また強くなってんなー……外真っ暗だし、
   ホント大淀も言ってたけどなんで海まで徒歩一分の場所で仕事してんだ?」

 (雷の音)

提督「うおっ、近かったなぁ今の――」

<ひぃぃぃっ!

<っもう! しっかりしなさい!

提督「お?」

鈴谷「ムリムリムリ! すっごい近かったし今の! ピカッドン! だったよ!?」

熊野「雷一つでみっともない! あとその表現はギリギリですからやめなさい」

提督「どしたー?」

熊野「あら提督ごきげんよう。見ての通り、鈴谷が雷でへたれてしまっているのですわ」

鈴谷「うぅー怖いよー」

 (雷の音)

鈴谷「ほわぁぁぁ!」

提督「おっ戦闘中の熊野の真似かな?」

熊野「とぉう!」

提督「ごほっ」


熊野「大袈裟ですわ」

提督「いや、大分優しいところに入ったから……げほっ」

鈴谷「ちょっとぉ、鈴谷を放置しないでよぉ」

熊野「はいはい。ちゃんと手を握ってあげてるでしょう?」

提督「どうせ屋内で当たることなんてないんだし停電しても非常用の予備電源に切り替わるんだからそんな怖がることないだろ」

鈴谷「理屈じゃないんだってぇ……」

提督「しかしお前らは平気そうだな」

熊野「……この状態ですけど?」

提督「いや雷にはダメそうだけど。寒さは大丈夫そうだなって」

鈴谷「寒さ? 確かに最近一気に肌寒くなったけど別に言うほどじゃないかなぁ。
    北方とかに比べたら鎮守府で寒いって感じることなんてほとんどないよね?」

提督「ふぅん、ビスマルクはめちゃ寒がってたけど」

熊野「……ドイツって日本より寒い国じゃありませんでした?」

提督「炬燵と褞袍と鍋焼きうどんが寒さ耐性を根こそぎ奪ってったらしい」

鈴谷「私達より日本の冬満喫してない?」

 (雷の音)

鈴谷「ひぃぃぃぃ!」

熊野「はいはい、とりあえず部屋に戻って布団に籠ってなさいな」


鈴谷「う、うん……そうしたいのは山々なんだけど……」

熊野「?」

鈴谷「いま思い出したんだけど食堂に忘れものしたかも……」

熊野「はぁ? もう一人で取って来たら?」

鈴谷「ちょっとそんな素っ気ないこと言わないでよぉ、一人じゃむーりー」

提督「じゃあ俺が付き合おうか? どっちみち鎮守府内をぐるっと見て回るつもりだったし」

鈴谷「マジで!? さっすが提督話わかるー」

熊野「現金ですわね……でもわたくしも助かりますわ。雷が鳴る度にいちいち立ち止まって騒がれるのはうんざりでしたもの」

鈴谷「誰にだって苦手はあるじゃーん、ましてやこんなどかどが雨降ってるし、風で窓はガタガタ言うし……」

 (雷の音)

鈴谷「ひぃ!?」

提督「まぁとりあえず行くぞー」

熊野「ではわたくしは失礼いたします」

提督「おー」


―――

荒潮「……」


提督「右・左・右・左」

鈴谷「みぎ・ひだり・みぎ・ひだり」

提督「右・左・右・右・左」

鈴谷「ちょっ! なんでフェイント入れんの!?」

提督「三歩進んで二歩さがる」

鈴谷「うわわ、転ぶ転ぶ!」

荒潮「うふふ、楽しそうですねぇ」

提督「ん? 荒潮か」

鈴谷「うぐっ、急にとまらないでよ」

荒潮「電車ごっこですかぁ?」

提督「いや、手を繋いで歩くのもなぁと思ってたら肩を掴まれてな」

荒潮「経緯がわかり――

(雷の音)

鈴谷「ぴっ!」

荒潮「あー……なるほどねぇ。ふぅん鈴谷さん雷が苦手なのねぇ」

提督「荒潮はどうしたんだ?」

荒潮「ちょっと困ったことになってねぇ……誰とは言わないけど同室の姉妹艦がこの台風の中外に飛び出そうとして」

提督「大潮ェ……」

荒潮「霰までなんか感化されちゃってみんなで抑えてるうちにロープを取りに向かってるところだったのよぉ」

鈴谷「こんな日に外にでるとか狂気の沙汰でしょ」

荒潮「なんか盛り上がっちゃってるみたいなのぉ」

なにか書かないと書けなくなるんじゃないかという恐怖で書き始めました
台風とか冬をテーマに前に聞いた出して欲しい艦を書いていこうと思ってはいるけど
まるで落ちが浮かばない

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