【まちカドまぞく】桃「美味しくなったご飯」 (27)

短編です

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物心ついたとき、私はすでに姉の桜に引き取られていた





魔法少女の中でも相当の実力者であった姉は、まぞくとの共生を目指して忙しい日々を送っていた

そんな姉は、昼間は留守にすることが多かったが朝食と夕食はほぼ必ずといっていいほど私と取るようにしていた


「遅くなってごめんね。今急いで作っちゃうから!」


夜、帰りが遅くなったときは、魔法少女に変身したままで帰ってくることが多かった
エプロンもつけずそのままキッチンに立っていた光景が今でも目に浮かぶ

何で変身したままなの?と当時は思っていたが、今考えると姉の行動は合理的だと思う
戦闘服にダメージがあると修復しない限りそのままになってしまうが、変身状態なら汗をかこうとも水や油が跳ねようとも変身前の服が汚れる心配は一切ない。変身を解除してしまえば快適な私服姿に戻るのだから洗濯で余計な手間がかからなくて済むからだ


私は姉に対して一緒にご飯が食べたいだとか、早く帰ってきてだとか言った覚えはない
1人は寂しいと呟いたこともない

でも姉は2人でいることにこだわっていた

孤児だった私への気遣いなのか、優しさなのか、愛情なのか……
今となっては分からないが、姉と食べるご飯はとても美味しかった




姉が作ることもあれば買ってきたものを食べることもあったが、私は姉の手作りの方が好きだった
姉の料理の腕が特別いいというわけではなかったが、温かいできたての料理は体を中心からじんわりと暖めてくれたのを覚えている



姉は食事のマナーをきちんと教えてくれた

お箸の正しい持ち方、お茶碗の持ち方、食器の並べ方……
少しめんどくさかったけど、言われた通りにちゃんとしたらほめてくれたから嬉しかった

ほめてもらえるように一生懸命頑張ってできるようにした
私をほめているときの姉はなんだか嬉しそうで、そんな姉を見ていると私も嬉しくなった



ある日を境に姉は姿を消した




食べる専門だった私は食べる側のことはできても、作る側の料理をすることができなかった
姉がたまたま作っていた作り置きを少しずつ消費していく日々…


そんな作り置きもあっという間に底をついた


姉を探してあちこち走り回り、何か食べてる暇なんかないと思ってはいても体が栄養を求めてお腹を鳴らす

何か食べるものはないかと家の中を探し回ると、災害用保存食と書かれた大きな箱をみつけた
箱の中をみると何個か減っているうどんがあった




「災害用保存食って書いてあるのに、食べちゃってもいいの?」

「大丈夫、大丈夫!!買い物し忘れて家に食べる物がない今は災害時と同じだから!」




そんな会話を思い出す

姉はいない…家に食べる物は他にない…だから今は災害時と一緒……
姉の言葉を借りて、心の中で言い訳を誰かにしながらお湯を注ぐ

いつもなら向かいにいるはずの姉の姿はなく、ぽつんと1人で食べたうどんはまずかった




私は食糧の調達を始めた
最初の頃は栄養バランスに気をつけていた


魔法少女の身体は再構築され、高密度のエーテル体にほとんど置き換わるから栄養バランスが偏っていたところで大した問題にはならない
ただ、姉が帰ってきたときに偏った食事をしていたら怒られそうだったから、栄養バランスを考えて出来合いのお惣菜を選ぶようにしていた


姉が何度か買ってきたことのある、色々な野菜が入っているサラダや煮物などを買ったこともあった
でも、家で食べてみるとどれも味が薄くボヤッとしていて、あまり美味しくなかった

レシピが変わったのか、思い出補正が入っていたのか、それとも食卓が1人だからなのか………

そのうち味が濃いお惣菜に手が伸びるようになり、栄養バランスのことなどあまり考えないで買うようになっていた



そして数ヶ月が過ぎて何の手掛かりもなく…

焦燥感は諦念へ…
やがて何もかも無気力になっていった

いちいち、お惣菜を買いに行くことすら面倒になり、長く使われていない食器棚のお皿にはうっすらと埃が積もっている
ゴミ箱には長期保存が可能で、調理が簡単なレトルトやインスタント食品の容器で山ができていた


私が炊けたご飯を混ぜる係だった、あの炊飯器はもうどれほどの間使われていないことか


姉と2人で炊飯器を蓋を開けて甘いお米の香りを楽しでいた、あの光景はここにはもうない
炊き上がりを知らせるメロディーが聞こえることもない

ただ電子レンジのチンという機械音が短く響いた


その頃の私の食べ物の選び方は、第一に保存性、その次に味、腹持ち……と、栄養バランスのことなどどうでもよくなった
姉にお行儀が悪いと叱られていた、テレビを観ながら食べることが日常となった


この頃になって、自分の味覚がおかしくなっているのではないかと考えるようになっていた


いわゆるお袋の味付けのような健康的な薄い味付けをされた物は、食べてもよく味が分からない
一方でレトルト食品やインスタント食品、ファストフードやお菓子のような味付けが濃くてはっきりとした物なら美味しいと感じた

よりにもよって、レトルト食品などはラインナップが豊富で、あれこれ選び挑戦する楽しさがある

姉に食べる数を制限されていたお菓子も好きなだけ食べていた
特にポテトチップにはまってスーパーの棚の端から試していた結果、じゃがたらチップスのうにいくらとろ味が至高であるとの結論にたどり着いた

一般的なポテトチップの5倍の値段に興味が惹かれて買ってみたところ大当たり。口の中で暴れ回るうまみの奔流はレンチンご飯との相性がよかった
じゃがたらチップスとお米を交互に食べれば、まるでうに・いくら・とろを乗せた海鮮丼を食べてる気分になれる
加えて、このじゃがたらチップスは保存性・利便性が高いため、私は常に切らさぬよう買い溜めしていた



私が無気力な時期を過ごしていたのは、姉が失踪してショックを受けたことが大きかったが、眠りの浅い生活を送っていたことも関係していたと思う


夜になり照明を消してベッドに入り目を瞑る
外部から何の刺激もない、何も考えないという状態は酷く私を苦しめた



なぜ、姉は何も言わずに姿を消してしまったのか
もうこの世にはいないのではないか
あの時あの場所を探せば見つけられたのではないか

永遠と湧き出る後悔・不安がひたすら反芻されて眠りにつくことができなかった


ようやく眠れたと思っても

姉が遠ざかっていく夢
姉の手を掴んだはずなのに、するりと落ちていく夢
姉が敵にやられて消えていく夢

そんな悪夢に苛まれて飛び上がるように寝覚めるような生活を送る日々


私の精神は限界を迎えようとしていた


ある日、特に目的もなく付けていたテレビ番組でスポーツによるメンタル改善という特集を目にした

細かい内容まで覚えていないが、簡単に言えば肉体を限界まで酷使し、疲労を与えて夜はぐっすりと眠って、規則正しい生活リズムを送るだけでメンタルケアができるというものだった

自身の状態に危機感を持っていた私は、物は試しと多魔川の土手を歩くことができないまでに走り込んでみた


するとどうだろうか
ベッドに横になった瞬間と錯覚するくらいに即座に眠りに落ち、翌朝スッキリとした目覚めを感じたのであった

今となっては、気絶に近いのではないかと思わなくもないが、とにかく私は自分の体をいじめることの価値を知った



肉体酷使のトレーニングは、魔法少女としての物理力の底上げにも効果的であった

魔法少女になって肉体が再構築されたことで常人にはあり得ない力を行使できたため、魔法少女になってからさらにトレーニングをすることなど考えもしなかった
しかし、普通の人間と同じように魔法少女もトレーニングをすることでより強くなれた

そして、光の一族・まぞく関連の問題に積極的に関わって、どんな魔法的な障害も物理でねじ伏せて解決していけばいつか姉の手がかりをつかめるのでは?
と考えついたその日からただ肉体をいじめるだけではなく、より効果的にパワーアップができるように研究を重ねた


そうして色々あって、私は世界を救った
姉をはじめとする他の魔法少女と比べて魔力操作や魔力攻撃の素質が劣る私だったが、鍛え抜いた筋力を合わせた物理力でねじ伏せることで同僚たちと肩を並べることができた


世界を救った後もトレーニングは欠かさず続けた

鍛えた体を鈍らせるのがもったいなかったというのもあるが、運動もせずぼーっとしていると嫌なことばかりが頭に浮かんでくるのを避けたいというのが一番の理由だった
少なくとも体を動かしている間は頭の中はスッキリしていたから、メンタルケアとしては最適だったと思う……




そしてシャミ子と出会った

色々な経験をして…思い出ができて…

毎日が楽しいと感じるのはとても久しぶりのことのように思える
心なしか体調も少しずつよくなってきている気がする


シャミ子は私の中で大切な存在になった

だからシャミ子を強くしたい、守りたい
魔力が乏しいシャミ子には、自分が考えたトレーニングによる底上げが最適解であると確信していた

そのために、シャミ子に餌付けして鍛え上げて、餌付けして鍛え上げて、餌付けして、餌付けして、餌付けして……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


シャミ子「……お昼ご飯ですか?」

桃「前に私が体調崩したときに色々持ってきてくれたでしょ?お礼に天ぷらうどんでもどうかなって。明日良ちゃんと一緒にきてよ」

シャミ子「て……天ぷら付きですか!?」ブンブンブン

桃「そう、いまならえびに…かぼちゃとなすの天ぷらも付いてくる」

シャミ子「行きます行きます!絶対に行きます!……でも、どうしてうどんなんですか?」

桃「天ぷらは買ってくるだけだし、うどんはお湯を沸かして茹でて、めんつゆ?をかけるだけみたいだから私でもできるかなって」

シャミ子「確かに…それくらいのものだったら桃でもできると思います」

桃「……なかなか言ってくれるね。シャミ子は私のことを何だと考えているのかな?」

シャミ子「私の大切な妹も食べるものですからね。姉としては妹にはいいものを食べさせてあげたいんです」

桃「姉としてか………そういえば、シャミ子もお姉ちゃんなんだっけ」

シャミ子「そういえばとはなんですか!そういえばとは!?」ポコー

桃「良ちゃんは勉強熱心でしっかりしてるからつい……」

シャミ子「…妹を褒められる嬉しさと、私がバカにされていることの悔しさで複雑な気分です」

シャミ子「こうなったら、私たちまぞく姉妹が魔法少女たちの分まで天ぷらを食べ尽くしてくれます!!」

桃「ふふっ、楽しみに待ってるね」



・・・・・・・・・・・

翌日の昼


桃「…」モ゛−−ン

良子「おじゃましてます」

シャミ子「……どういう状況か説明してもらってもいいですか?」

桃「…」モ゛−−ン

ミカン「いらっしゃい2人とも……」

ミカン「その、うん。なんて説明したらいいのかしら……目の前で起きたことがあまりにも非日常すぎて、私自身も飲み込めてないのだけれど…」

ミカン「事は、今から20分前から始まったわ…」



ーーーーーー約20分前


ミカン「そろそろ2人が来る頃ね……その…本当に1人で大丈夫なの?」

桃「動画サイトで茹で方を念入りに予習したから大丈夫」

桃「それに、動画で紹介されていた物と同じ物を買ってきたから、全く同じようにすればちゃんと茹でられるはず!」

ミカン「でも、そのおうどんは見たところ生麺タイプのもので、茹で時間が長いものじゃないかしら?」

ミカン「動画がどういう内容か知らないけど、家庭用のコンロのタイプや使う鍋によって火の伝わり方に違いがあるから…全く同じようにすればいいというわけではない気が……」

桃「もう!ミカンは大人しく見てて!!」

ミカン(心配だわ…)


ミカン「大きなお鍋に水、おうどんを締める氷水を用意した段階では特に問題はなかったわ」

ミカン「コンロのつまみを捻って、火力も適切に調整されていたわね」

ミカン「ただ、桃がおかしな行動を取り始めたのは沸騰したお湯にうどんを入れるときのことよ」

ミカン「桃が「茹で時間は均一にしないと……」と呟いたと思ったら急に変身しだして、1人前ごとにパックされているおうどんの袋を一瞬で全て開けると、熱湯に目にも止まらぬ速さでブチ込んだの」

ミカン「4人分のおうどんは結構な量になるわ。でも、桃はあらかじめ袋を開けておうどんを一纏めにすることを失念していたみたい」

ミカン「冷静に考えれば別のお皿にまとめてから一気に入れればいいものの………ぐつぐつと沸いている熱湯、もうすぐ2人が来るという事実、慣れない料理……桃の冷静な判断能力を鈍らせたのね」

ミカン「桃は変身状態でおうどん同士がくっつかないように、それはもう、念入りに慎重にかき混ぜていたわ」

ミカン「そしたら………その……急にお鍋の中がピカッと光って……気がつくとおうどんは無くなってたの……」

ミカン「ここからは私の推測なのだけど……」

ミカン「おそらく桃の魔力が菜箸を通じておうどんに流れ込んだことで、桃の魔力が一種の着火剤みたいな働きをしたのね。その結果、おうどんはその存在を消費しながら発光したと考えられるわ」

ミカン「そして、お鍋の中には熱湯だけが残って、現在に至るってわけ」



桃「…」モ゛−−ン

桃「…ごめんねみんな……私、うどんすらうまく茹でられなかったよ」

良子「だ…大丈夫だよ桃さん!お姉と私が新しいの買ってくるから!」

シャミ子「そうですよ!新しいのを買ってくればいいんです。私がちゃちゃっと茹でちゃいますから!」

桃「でも、今から買いに行くとなると、食べ始めるのがそこそこ遅くなる……」

桃「みんな、お腹ペコペコでしょ?」

シャミ子「そんなことないです!!」グーー

桃「………」

シャミ子「こ…この!!腹ぺこ虫め!!!」ポスッポスッ

ミカン「もうこの際、おうどんは諦めて他のものにしたら?天ぷらはあることだし、例えばご飯を炊いて天丼とかいいんじゃないかしら?」

桃「ご飯はレンチンパックのしかないし、今家にあるのは3食分だけ…」

桃「…レンチン……レトルト……そうだ!!ちょっと賞味期限が過ぎちゃってるけど、災害用保存食のうどんがたくさんあったはず!」

桃「それでもいい?」

シャミ子「全然問題ありません!!賞味期限っていうのはおいしく食べられる目安なだけなので大丈夫です!」

良子「家でも賞味期限過ぎちゃったやつをたまに食べるけどお腹を壊したことはないよね」



『吉田姉妹は特殊な家庭環境で特殊な訓練じみたものを受けています。賞味期限切れの食品はよく見極めてからお召し上がり下さい』


桃「できた」

良子「うわぁーーーおいしそう!」

ミカン「見た目は保存食って言われてもわからないわね」

シャミ子「しかも、お湯を注ぐだけなので簡単です!!」


「「「「いただきます」」」」


良子「お姉!このえび、身がとっても大きくてすごいよ!!」

シャミ子「本当です!こんなに大きなえびは初めて食べました!」

シャミ子「家で食べたことのあるえび天は衣で大きくかさ増しされたものだったので、えび天ってもっと小さいものが使われるものだと思ってました!」

ミカン「かぼちゃも甘くてほくほくでとってもおいしいわ!」

シャミ子「保存食のうどんもコシがあっていい感じです。つゆの味もクオリティが高いです」




シャミ子「………桃?どうかしましたか?」

桃「うん、とっ……とっても……おいしい……ね」ポロポロ

ミカン「ちょ…ちょっと桃、なんで泣いてるのよ」アセアセ

桃「……えっ?泣いてなんかないよ………あれ、なんだろこれ」ポロポロ

シャミ子「ど……どうしたんですか桃?目にうどんのつゆでも飛んだんですか?」アセアセ

桃「泣いてなんか……泣いて……なんか」ゴシゴシ

良子「桃さん、私のハンカチ使って」

桃「ありがと、良ちゃん…」フキフキ

桃「みんなで一緒にご飯を食べて楽しいだけなのに…」

桃「なんでだろ……止まんないや」ポロポロ



シャミ子「も……桃……泣かないで」ポロポロ

桃「……なんでシャミ子も泣いてるのさ」

シャミ子「泣いてる桃を見てたら……私も悲しくなっちゃって…」ポロポロ

桃「ふふっ、何それ」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


「このうどんとってもおいしいね。お湯を注ぐだけなのにどうしておいしくできるんだろう?」

「うーん? 工場で働いてる人が頑張ってるからじゃないかな?」

「私もがんばってお料理したら、おいしいご飯を作れるかな?」

「………火と刃物を使うのは危ないからもう少し大きくなってからにしようね」

「うん!!」


ーーー
ーーーーー
ーーーーーーー


桃「急にびっくりさせちゃってごめんねみんな」

桃「昔のことを少し思い出しちゃって…つい……」

シャミ子「…その思い出は辛い思い出ですか?」

桃「ううん、そんなことない。いい思い出だよ」

シャミ子「ならよかったです。いい思い出はいい気持ちにさせてくれますから」

シャミ子「もし、辛かったことを思い出したら私に言ってください」

シャミ子「過去の出来事を変えることはできないけれど……その辛い気持ちを分かち合うことくらいはできますから」

桃「うん……ありがとう、シャミ子」



シャミ子「桃…」

桃「シャミ子…」



ミカン「………あのー…2人の世界に入っているところ申し訳ないのだけれど……」

ミカン「私たちのことも忘れないでよね!」

良子「やっぱり2人はそういう関係だったんだ!! 良知ってる! 本で見た!! そういうの本でいっぱい見た!!!」

シャミ子「そういうってどういうことですか!?」

桃「実はそうなんだ、私たちは…」

シャミ子「実はってなんですか!? 実はって!?」

良子「おかーさんにも教えてあげないと……お姉と桃さんが……」

ミカン「あーもー!! おうどんが伸びちゃうからちゃっちゃと食べちゃいなさい!!」

ミカン「はい! 良ちゃんには私のえびを分けてあげるからたくさん食べて大きくなるのよ! 」

ミカン「あと、みんなのおうどんにすだちをかけておいてあげたからさっぱりしていておいしいわよ!!」

良子「いいの?ミカンさん、ありがとう!」

ミカン「桃とシャミ子もさっさと食べて洗い物でもしてなさい! 桃マジックのおかげでおっきな洗い物があるんだからね!」



ーーーーーーー食後・台所


シャミ子「なんかこのお鍋うっすらと光ってませんか?」

桃「そうだね、切れかけの懐中電灯くらいの明るさかな」

良子「……ミカンさん、このお鍋で桃さんがうどんを茹でたんですよね?」

ミカン「そうよ。今はみごとにただの水になってるけど」

良子「桃さんの魔力が原因でうどんが消えた……魔法少女……魔力……」ブツブツ

良子「お姉!!お姉は魔力っていうのを出すことはできるの?」

シャミ子「ちっちゃい魔力なら出すことはできますけど………それがどうかしたんですか?」

良子「あのね、このお鍋の中にお姉の魔力を入れてみてほしいの!!!」

シャミ子「な、なんで魔力をお鍋に?」

良子「いいから!お願い!」

シャミ子「も、桃〜…あのステッキ借りてもいいですか」

桃「別にいいけど…また、ちっくんされるだけじゃない?」




シャミ子「みんなが仲良くなれますよーーに!!」ポコッ

シャミ子「やった!また出ました!!」



ピカーーーー



ミカン「えっ?また光って………」






ミカン「おうどんが戻ってるわ!!」


桃「うそ!?……ほんとうだ。一体どうして…」

良子「良は考えてみたの。光の一族の側である桃さんの魔力はいわばプラスの作用を持っていて、眩しい光を当てると物が見えなくなるのと同じように私たちが認識できなくなっただけなんじゃないかって」

良子「そして、お姉は闇の一族であるまぞくだから、光の一族とは逆の性質の魔力を持っていると予測したの。お鍋にお姉の魔力が入ったことで眩しい光が抑えられるように、私たちにも認識できるように戻ったんじゃないかな?」

シャミ子「良……よく分からないけど、さすが私の自慢の妹です!」

シャミ子「……ところで、このうどん食べてみてもいいですか?」

ミカン「ただの水とおうどんだけだから、桃ご飯になってはいないと思うから問題はないだろうけど……お腹を壊しちゃうかもしれないからやめておいた方がいいんじゃないかしら?」

桃「そうだよシャミ子。あぶない橋をわざわざ渡る必要はないよ」

シャミ子「でも……桃が一生懸命茹でたうどんなんです。せめて一口だけでも食べてあげたいんです!!」

桃「シャミ子……」

シャミ子「ではいただきます」パクッ

シャミ子(うっ……水をたくさん吸ってぶよぶよぬめぬめで中途半端に冷めているからおいしくないです……それによく見ると乾燥剤みたいな袋が沈んでいます……)

シャミ子「なかなかのお味でいいと思いますよ」ニコッ

桃「私も一口…」パクッ





桃「まっず!!シャミ子、ぺっした方がいいよ!!ぺっって!!」




ミカン「えぇ……」ヒキギミ

シャミ子「き……きさま!!そういうところだぞ!!」

桃「えっ?何が!??このうどんぶよぶよで生温くてヌメヌメしていて、おまけに変なにおいまでしてすっごくまずいよ!!」

ミカン(せっかくシャミ子が桃を気遣って嘘でもまずいとは言わなかったのに、その優しさに気付かずに味を全否定する所はさすが桃って感じね…)

シャミ子「も……桃のバカーーーー!!!」ダダダダダ

桃「あっ、シャミ子待って!!!」

良子「あの…ご馳走さまでした。あと……おじゃましました」

ミカン「ええ、また遊びにきてね」

良子「はい!」

桃「待ってシャミ子ーーー!!」ダダダダダ

終わり🍊


桃がうどんが好きなのは、うどんが好みだからじゃなくてシャミ子と縁がある食べ物だからだと思う

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