ひかり「スクールアイドル…?」海未「舞台少女?」 (104)

※少女☆歌劇レヴュースタァライト×ラブライブ!のクロスオーバーSSです。

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まひる「ひかりちゃん、何読んでるの?」

ひかり「……雑誌。」

まひる「雑誌はわかるけど、何の雑誌?」

華恋「ひかりちゃんね、次の授業の演目でスクールアイドルの役をするんだって!」

まひる「そうなんだ。じゃあそれは、スクールアイドルの雑誌?」

華恋「そう!一緒に見てたんだけど、すっごい可愛いんだよ~!ほら、この子とか、この子とか!」

まひる「わぁ~…!目がおっきくてまん丸で、ふわふわの衣装を着こなして…とっても可愛い!」

華恋「でもでも、こんなにキリッとしたカッコいいアイドルもいるんだよ?」

まひる「本当だ!ひかりちゃん、次の授業は確か天堂さんとクロちゃんと3人でやるんだよね?カッコいいだろうなぁ……」

華恋「あ、それが……」

真矢「それが『カワイイ』アイドルの役なんです、露崎さん」

華恋「わっ、ご本人登場!」

まひる「カワイイ…?どんな役なの?」

真矢「私が主演の、熱血で、友達2人をアイドルに引き込む役。そして」

ひかり「…私は『スクールアイドルなんて恥ずかしくて出来ない』と拒む役。」

クロ「そして私はふわふわしてて天然っぽいけど、2人の仲を取り持つ役よ」

華恋「クロちゃんも来たんだ!」

真矢「最後にはアイドルを3人で結成し、ライブを行うシーンで終わるのですが……」

クロ「その最後のシーンに至るまでを作り上げる、って課題なのよね」

ひかり「役の設定が1行で……まだ役のことがわからないの。だから何か参考になるかと思って」

まひる「なるほど……難しそうだね」

なな「みんな何してるのー?」

真矢「授業で配られた、次の演目の話をしていたんです」

なな「それってもしかして、スクールアイドルの?それなら純那ちゃんが詳しいよ!」

純那「ちょっと、なな!どうして言うのよ…!」

なな「だって、スクールアイドルの話をしてる時の純那ちゃん、とってもキラめいてるんだもの♪」

真矢「それは丁度よかったです」

純那「な、何が?」

真矢「実は今、スクールアイドルのダンスのことで困っていまして」

まひる「あ…確かにアイドルのダンスって、ミュージカルのダンスとも違うし、複雑だよね」

真矢「ええ。一から振りを考えるのは大変なので、どこかのスクールアイドルの曲を演る、というのは先生にお伝えしているんですが……誰の歌が適切なのか、を測りかねていまして」

クロ「そうなの。友達3人組で、初ライブをする時にやる曲。何かないかしら?」

純那「そのキーワードだと……うぅ」

華恋「どうしたのじゅんじゅん?どっか痛い?」

純那「違うわよ!ただ、ちょっと邪道っていうか…」

なな「邪道?」

純那「今は9人で活動してるグループがあるんだけど、そのグループ、初期は友達同士3人組で、初ライブをその3人でやってたの」

まひる「今は9人だから、それを勧めるのが邪道ってこと?」

純那「ええ…。とりあえず同じ曲で9人で演ってるヤツがあるから、それから見てもらえるかしら?」

♪~♪~♪

華恋「わぁ……!すごい…すごい!」

なな「どの子も可愛いよねー!」

真矢「落ち着いた色の制服で踊っているのに、これほどのキラめき…」

クロ「ダンスのキレと表情と歌声、どれも隙が無いわね…」

ひかり「ダンスのシーン、いつもどれかに集中して、どれかが疎かになる……」

まひる「確かに…。楽しそうにしてるけど、すごい集中力とパワーを使ってるんだろうね」

双葉「皆ー、風呂今空いてるぞ~…って、何してるんだ?…動画?」

香子「あ、これ。μ'sやないの」

純那「!花柳さん、知ってるの?」

香子「ええ。ウチの…まぁええわ、とりあえず勧められたから見とったんよ」

双葉「そういえば最近、部屋で良く動画見てたよな。これだったのか?」

香子「そ。ま、ウチの方が可愛いですけど♪」

双葉「はいはい」

華恋「ねえじゅんじゅん、この子なんて名前?なんかひかりちゃんに似てるなって思ったの!」

ひかり「この子?わたしに?……髪型?」

華恋「そうかも!」

純那「ああ、その人…そう、私も言いたかったんだけど、その人ね、」

香子「似とるのは髪型だけじゃありまへん、華恋はん」

華恋「へっ?どういうこと?」

純那「なんていうか…歌声がそっくりなのよ。待ってね、今の曲を3人で踊ってるやつの方、流すから」

♪ ~ ♪ ~ ♪

華恋「おおー…ひかりちゃんだ……」

純那「華恋が言ってくれて、なんか安心したわ。私だけがそう聞こえるのかもって思ってたから」

真矢「しかし…神楽さんは納得されてないようですが」

ひかり「私…こんな声?」

華恋「えー?こんな声だと思うけど…」

クロ「今の部分、歌ってみたら?」

ひかり「………♪あきらめちゃだめなんだ その日が絶対来る~」

香子「いや本物やん」

双葉「本物だな」

ひかり「…そんなに?」

純那「そんなに、よ。正直、ここまで似てるとは思ってなかったわ」

真矢「素晴らしいです、神楽さん。何かしら運命的なものを感じました。演じるのはこの曲にしましょう」

クロ「…ってことは、私はこの歌い出しの緑の子を演るのね。歌声は似せれないけど…魅せれる何かを考えなくちゃ」

真矢「星見さん、ありがとうございました」

純那「あ、いえ、こちらこそ。楽しみにしてるわ」

華恋「うーっ、なんか見てたら踊りたくなっちゃった!」

ひかり「もう夜よ、華恋」

華恋「じゃあ、明日朝からレッスン室行こ!」

まひる「土曜だけど、早起きできる?」

華恋「できる!」

なな「じゃあ、お風呂に入って早めに寝なくちゃ!」

華恋「うん!れっつごー!」

ひかり「………」

双葉「…神楽?皆、風呂行ったぞ?」

ひかり「……私はもう入った。もう少し、ここで、考える」

双葉「そっか。寝るなら部屋で寝ろよ?おやすみ」

ひかり「うん……」

ひかり「(さっきの雑誌にプロフィール…あった。園田海未。好きな食べ物、おまんじゅう。嫌いな食べ物、炭酸)」

ひかり「(日本舞踊に剣道に弓道……大和撫子系スクールアイドル。書いてあるのはそれくらい。)」

ひかり「(この人がどういう人か、わからないけど……少なくともこの曲をやっている時間は、私は"園田海未"になる)」

ひかり「(とはいえまだライブシーンのお手本が固まっただけで、役のことは全く分からない…)」

ひかり「(そもそもスクールアイドルが普段どんなことをやってるのかわからない)」

ひかり「…………ううん」

ひかり「(せめて1日だけでも……)」

ひかり「(この人と入れ替われたら……)」zzz



穂乃果「海未ちゃん?険しい顔してるよ」

海未「え…本当ですか?」

ことり「うん。むむむ……って顔してた!」

海未「す、すみません…」

穂乃果「作詞?」

海未「ええ……少し、詰まってしまっています」

ことり「私達が手伝えることって、何かある?」

海未「ううん…大抵こういう時は、日々の生活に慣れ切ってしまっている時なので、何か新鮮なことを体験すれば良いとは思うのですが…」

ことり「新鮮なこと、かぁ……うーん……」

穂乃果「あ、生徒会宛のポストの中、何か入ってる」

ことり「せいしょう…舞台?」

希「お、それは舞台少女ってやつやね」

海未「希!舞台少女、ですか?」

絵里「そう。聖翔音楽学園は演劇の学校よ。私達と同じ高校生で演劇の勉強してる子達のことを、舞台少女って呼ぶの」

穂乃果「じゃあ、みんな俳優さんってこと!?」

希「そのとおり!卒業後は、皆舞台やテレビの俳優さんになっとるん」

海未「すごいですね…」

絵里「って言っても、俳優育成科と別に舞台創造科っていうのもあって、そっちは衣装とか脚本とか大道具とかを作ってるみたい」

ことり「衣装!」

穂乃果「それ、なんだかスクールアイドルみたいだね!ぜーんぶ自分達、みたいな!」

希「まぁ、ウチらは放課後で向こうは学校のカリキュラムやから、全然違うけどね」

ことり「確かに……こんな細かいドレスとか、放課後だけじゃ作れないもん」

穂乃果「え、じゃあ、このチラシに載ってる人、全部高校生ってことだよね?凄いなぁ…」

ことり「あ、海未ちゃん、この舞台見に行ってみる?ほら、新しい体験!」

海未「ああ…確かに、良いかもしれませんね」

穂乃果「あ、裏面に制服の写真もある」

絵里「あら?この子、海未に似てるわね」

ことり「本当だ~!可愛い~♪」

海未「ええ…?髪型だけではありませんか?」

希「表にある役の写真だと、この子やね。まるで別人やな…」

穂乃果「すごい!表情も全然違う…!」

海未「別人……ですか」

絵里「招待券も入ってるみたいだし、折角だからみんなで観に行きましょうか」

穂乃果・ことり「さんせーい!」

海未「………」

海未「(演劇を見る、確かに新しい体験ですが…)」

海未「(恐らく私に今必要なのは、全く別人の人生を歩むような体験)」

海未「(演劇を演じることは、ある種そういった側面があるかもしれません。舞台の上では別人として過ごす訳ですし)」

海未「(演劇を見る、というより、やる、の方が今の私には必要かもしれませんが)」

海未「(…無理ですね。穂乃果達に、言い出せるわけもないですし)」

海未「(1日、例えばこの人と入れ替われたら、多分とても刺激になるとは思うのですが…)」

海未「(って、いけませんね、また妄想になってしまいました)」

穂乃果「海未ちゃーん?練習行くよー?」

海未「はい、今行きます!」

海未「(集中しなければ…)」



☆?♪

翌朝 学生寮 星光館

海未「ん……ここは……?」

華恋「むにゃむにゃ……ひかりちゃーん……」zzz

海未「(!?だ、誰ですこの人は!?)」

まひる「華恋ちゃん……ダメだよ……」zzz

海未「(こちらにも人が…!?)」

海未「(両サイドのベッドで知らない人が寝ていて、自分はその間に布団を敷いて寝ている…な、なんですか、この状況は)」

海未「(どちらかを起こして、ここがどこなのか確認すべきなのでしょうか…しかし、全く知らない人ですし、少し怖いような…ん?)」

海未「(これは…ぬいぐるみ?白熊、でしょうか…)」

海未「(手触りが中々良いですね…少々汚れていますが、この手触りなら触り過ぎてしまうのかもしれません)」

華恋「ん……おはよ、ひかりちゃん」

海未「……」さわさわ

華恋「ひーかーりーちゃーん!」

海未「わぁっ!!わ、私ですか?」

華恋「?どうしたの、役?」

海未「や、役…?」

まひる「ん…おはよう、2人とも」

海未「お、おはよう、ございます…」

まひる「?ひかりちゃん、また役入りっぱなし?」

海未「え、ええと……」

華恋「多分そうだと思う!レッスンやる気満タンってことだよね!今日はレッスン室に1番乗りしよ!」

海未「あの、ち、ちょっと待ってください」

華恋「?どうしたの?着替えないの?」

海未「えっと…どこから話せばいいのか……」

まひる「…もしかして、制服とレッスン着、どこに片付けたか、またわからなくなったの?」

海未「ま、また…?」

まひる「はぁ…ちょっと待ってね。洗濯物は昨日の夕方渡したから……部屋に戻ってとりあえずミスターホワイトを抱きに行って……うん、あった。はい、これ。次はちゃんと片付けてね?」

海未「は、はい、わかりました。ありがとうございます」

まひる「普段はそんな素直にお話聞いてくれることなんか無いのに…今回の役は素直で嬉しいなぁ」

華恋「ひかりちゃん、役によってキチンとお片付けできたりできなかったりするもんね」

海未「(ひかりさんという方と間違われているのですね…。それにしても、あのぐちゃぐちゃのスーツケースといい、あまり綺麗好きではなさそうですね…後で片付けましょう)」

華恋「さ、着替えよ!こっちがひかりちゃんの制服だよ!」

海未「(制服は綺麗ですね…。いえ、きっとまひるさんが綺麗にしてくださっているのですね)」

華恋「あっ、ひかりちゃん。その靴下私のだよ!ひかりちゃんはいっつもタイツだよ?ひょっとして、寝ぼけてる?」

海未「あ、あの」

まひる「あっちで顔洗ってきたら?」

海未「…はい、わかりました」

海未「(あちらに行けば、鏡が…)」

海未「(…!)」

まひる「あれ、ひかりちゃん、鏡見てびっくりしてる…?」

華恋「ひかりちゃん、喋らなくてもわかりやすいよねぇ」

海未「(これは…昨日チラシで見た人ではありませんか…!)」

海未「(昨日入れ替わってみたいと願ったからでしょうか…。それにしてもどんな仕組みで…)」

海未「(似ている、とは言っていましたが、入れ替わっていると気付かれないほどだとは思いませんでした…)」

海未「(声に違和感がありませんが…お二人がそれについて違和感を覚えてないのを見るに、きっと声も似ていたのですね)」

まひる「ひーかーりーちゃーん…?」

海未「…!も、もう大丈夫です」

華恋「さ!着替えて学校に出発~!」

海未「(い、言い出せません……)」

まひる「うーん…前役に入っちゃった時は、こんな記憶喪失みたいにはならなかったと思うんだけどなぁ……」



海未「(門に『聖翔音楽学園』とありました。やはり、あの演劇の学校なのですね)」

華恋「出席番号1番!愛城華恋!入ります!」

海未「!?!?」

まひる「出席番号17番、露崎まひる、入ります」

海未「(そ、そういう作法なのですね…ええと、確かロッカーには『29 神楽』と書かれていましたから…)」

海未「出席番号29番、神楽ひかり、入ります」

海未「(…2人に突っ込まれないということは、これで良かったということなのですね)」

華恋「さ!柔軟柔軟!」

海未「(この辺りは、普段の練習と変わりませんね…)」

海未「(しかし、いつ2人に『私はひかりさんではない』と打ち明けましょうか…そもそも、そんな突拍子もない話が通じるのでしょうか)」

真矢「出席番号18番、天堂真矢、入ります」

海未「(新しい人が…!?)」

クロ「出席番号11番、西條クロディーヌ、入ります」

真矢「神楽さん、おはようございます。昨日の曲、早速踊ってみようと思うのですが…如何ですか?」

海未「あ、お、おはようございます…」

真矢「……?」

華恋「あ、ひかりちゃん、役ができてるから大丈夫だと思うよ!抜けてないけど…」

真矢「あら、そうでしたか」

海未「(先程から『役が抜けてない』で口調含め納得されてる感がありますが……どういったことなのでしょうか…そもそも、昨日の曲とは…?)」

クロ「私も完璧よ。『南ことり』さんの所、完璧に出来る様になったわ。歌い出しまでバッチリ」

海未「えっ……ことり、ですか?」

クロ「あら、本当に役に入り切ってるのね」

真矢「ええ。私も完璧な『高坂穂乃果』さんを演じて見せます」

華恋「3人とも、頑張って!」

海未「あの…私は…」

真矢「神楽さんの『園田海未』さん、期待しています」

海未「(…???私が私を…?)」

海未「(しかし、やる曲はわかりました。私と穂乃果とことりの3人で歌った曲で、ことりが歌い出しの曲。START:DASH!ですね)」

海未「(勿論やれます、が…)」

なな「出席番号15番、大場なな、入りまーす♪」
純那「出席番号25番、星見純那。入ります」
香子「出席番号22番、花柳香子、入りますぅ」
双葉「出席番号2番、石動双葉!入ります!」

海未「(…こんな近くで知らない方から見られるのは、初めてですね…)」

クロ「?ひかり、どうしたの?」

海未「い、いえ。少し恥ずかしい、と言いますか…」

なな「!すごい、もう役作りできたんだ」

双葉「昨日悩んでたもんな。頑張ったんだな」

海未「(次から次に『役』ということにされてしまいます…)」

真矢「歌無しの音源を使いますから、覚えているところだけで結構ですので歌ってください」

クロ「当然、私は全部覚えてきたわよ♪」

海未「は、はい」

真矢「では、再生お願いします」

♪~♪~♪

海未「(問題なく身体は動く……大丈夫そうですね)」

クロ「♪産毛のことり達も いつか空に羽ばたく♪」

海未「(!?声色は違うのに、ことり…!?)」

純那「さすが西條さんね…声質をものともせず、細かい仕草や雰囲気で演じてるわ」

香子「さ、次は神楽はんの……」

海未「♪諦めちゃダメなんだ♪」

真矢・クロ「!?」

純那「(昨日より似てる…というか、本物…!?)」

双葉「(……鳥肌立った…なんだ、これ…)」

海未「(よし、振り返って、穂乃果とハイタッチ…!?)」

真矢「♪君も感じてるよね♪」

海未「(別の方なのに、穂乃果とハイタッチをしたかのような…今の感じ、なんでしょうか…)」

真矢「(神楽さんの、振り返った表情…前からは見えないのに、とびきり明るい笑顔……)」

真矢「(完璧にアイドルをしている…!)」

海未「♪悲しみに閉ざされて 泣くだけの君じゃない♪」

なな「(さすがに、ダンスも歌も一晩で…は難しい、はずなのに)」

香子「(神楽はん、なんであんなに完璧ですの…!?)」

まひる「(…あっ、ひかりちゃんと目があった)」

海未「♪切り開くはずさ♪」ニコッ

まひる「(……!!)」

華恋「ま、まひるちゃん?」

まひる「あ、だ、大丈夫…ありがとう」

まひる「(今の、何…?ドキドキが、止まらない…)」

クロ「(今、ひかりがまひるに笑いかけた…?ファンサービスかしら?アイドルらしいし真似したいけれど、振りをなぞるので精一杯だわ)」

真矢「(なぜ神楽さんはあんなことができるのでしょうか…)」

双葉「(元々神楽ってそんなダンスが大得意ってわけじゃないのに、天堂やクロよりも明らかにキレのある綺麗なダンスをしてる)」

純那「(ダンスのキレ、昨日よりも伸びのある歌声、そして笑顔とキラめき……これは、神楽さんというより……)」



海未「ふぅ……」

華恋「ひかりちゃん!」

海未「わぁ!ど、どうしたのですか!?」

華恋「ひかりちゃん、すごいよ!!いつ練習したの!?」

海未「れ、練習…?」

真矢「本当に…驚きました。μ'sそのものとしか思えない身のこなし、歌声……見事です」

海未「あ、ありがとうございます…?」

クロ「特にサイドステップのキレが全然違ったわ。曲中で良く使う動きな分、そこが鋭く動くだけで全然印象が違うのね」

海未「そうですね。サイドステップは、基本となる動きなので、1番練習しています。足の動き以上に、腕の振り方が大事で……」

香子「…なぁ、星見はん」

純那「……そうね、聞いてみる必要があると思うわ」

海未「あと、踊る時は笑顔で!笑顔で腕立て伏せができるかやってみましょう!」

香子「レッスン中失礼しますえ。神楽はん、ちょっとええ?」

海未「!は、はい」

純那「あの……本物の、μ'sの園田海未さんですよね?」

海未「!!!」

華恋「じゅんじゅん、何言ってるの?だからひかりちゃんは役に入ってて」

純那「役に入ってるだけじゃ、ダンスも踊れないし歌も歌えない。実際二番以降は、天堂さんたちだって歌詞が曖昧になってたわ。でも、神楽さんはそれがなかった」

双葉「そういや昨夜も、割と早くにリビングで寝落ちてたよな。私が部屋まで運んだけど」

なな「クロちゃんはどれくらい聞いたの?曲」

クロ「あの後、寝るまで動画を見通しだったから…30回くらい、かしら」

純那「西條さんが30回見ても、曖昧なところがあるのよ?数回見ただけで完璧に歌って踊れるなんてあり得ないわ」

華恋「でも、ひかりちゃん、役に入ったら自分でも出来ないことが出来るようになったってこと、良くあるし…」


香子「それに、ダンスと歌が完璧なだけや飽き足らず、ファンサまでしはった。見てみ、そこの隅でまひるはんが真っ赤や」

まひる「い、言わないでよぅ……」

海未「(ああ…そういえばサビで目が合いましたね)」

香子「あんな自然なファンサービス、長いことアイドルしてはる人やないと出ん。ウチらは普通舞台の上で、お客さんと目が合ったってなんもせーへんやろ?」

なな「確かに…舞台の上のお話は続いてるから、仮に目が合っても目が合ってないフリをするよね」

香子「歌って踊っていっぱいいっぱいの時、反射的にやってしまうのが普段の仕草や。その仕草までアイドルっちゅうのは、おかしない?」

華恋「ううー…そうかもしれないけど…!」

純那「何より、1番は」

華恋「まだあるのー?」

純那「園田海未さんは、敬語で喋るの」

海未「!」

純那「でも神楽さんが昨日見たのは雑誌と、あのPVだけ。神楽さんが昨日見てた雑誌には、園田海未さんは簡単なプロフィールしか載ってない。口調も性格も一切わからなかったはずよ」

なな「(あの雑誌、ひかりちゃんのためにリビングに置いてあげてた雑誌だもんね)」

純那「だけど、さっきから…神楽さんの口調が、完璧に園田海未さんの喋り方なのよ」

華恋「そうなの!?」

純那「突飛な考え、って思うかもしれないけど……私には、何かしらの不思議な力が働いて、神楽さんの体の中に園田海未さんが入っているとしか思えないの」

華恋「ひ、ひかりちゃんの体に…?」

香子「なぁ、そうやろ?そうやなかったら、むしろ神楽はんが怖いわ」

海未「…仰られるとおりです。信じて頂けるか分からず、言えずにいたのですが……」

海未「確かに私は、音ノ木坂学院2年、園田海未です」

純那「っ……!!!!」

海未「ど、どうしましたか?」

純那「いえ!なんでもありません!大丈夫です!」

双葉「なんで敬語…?」

なな「(…純那ちゃん、μ'sの載ってる雑誌いっぱい買ってるし…きっと大好きなんだろうなぁ)」

真矢「なるほど…では私達は、本物のスクールアイドルと踊った、ということになるのですね」

クロ「納得がいったわ…Merci、海未。貴方のおかげで貴重な体験ができた」

海未「い、いえ…こちらこそ、穂乃果やことりと踊っているような気持ちになって、驚きました」

真矢「ありがとうございます。自分の演技プランが誤っていないことが分かって、安心しました」

クロ「…ねえ、課題の話、聞いて貰えるかしら?」

海未「か、課題?演技プラン?」

真矢「私と西條さんと神楽さんの3人で、次の授業で『スクールアイドル』を演じるのですが、設定が……」

双葉「…なんか、3人とも普通に話しはじめちゃったな」

なな「ああやって見ると普段の光景なのにね……本物のアイドル、かぁ」

華恋「ううーん、ひかりちゃんじゃなかったのかぁ」

まひる「確かに、物の場所がわからなくなったりしてたもんね」

香子「逆にその状態で気付かんやったのがすごいわ」

純那「ん……じゃあ、今神楽さんはどこに…?」

なな「…園田海未さんの、体の中?」

まひる「えぇ…そんなこと……」

>>18
文字化け、正しくは
☆←→♪
です、すみません

今日はここまで
土日に完結予定です



穂乃果「海未ちゃーん?」

ことり「海未ちゃん、起きてー」

穂乃果「うーみーちゃーん!!」

ひかり「……ん……?!」

ひかり「(見知らぬ人…いえ、知ってる人。昨日PVで見た、園田海未以外の2人。確か、高坂穂乃果、南ことり)」

ひかり「(昨日寝る前に願った、『入れ替わる』夢を見ているようね。)」

ことり「あ、起きた。海未ちゃんが寝坊って珍しいね!」

ひかり「(家に上がって起こしに来るほど、親しい間柄…)」

穂乃果「本当だよ!いっつも、『穂乃果!また寝坊ですか?』…って、言われてばっかりだもん」

ひかり「(この親しい間柄の穂乃果にも敬語。それならたぶん、誰に対しても敬語)」

ことり「海未ちゃん、寝ぼけてる…?」

ひかり「(穂乃果のことを穂乃果と呼び捨てにしてるなら、ことり、と呼んでる可能性が高い)」



穂乃果「海未ちゃん!今日は土曜日だけど、練習の後テスト勉強だよ」

ことり「本当に、大丈夫?体調悪い、とかじゃない?」

ひかり「(…よし、役としての園田海未、できそう)」

ひかり『いえ、大丈夫ですよ、ことり。すぐに着替えるので、少し待っていてください』

穂乃果「はーい!じゃあ下で待ってるね!」

ひかり「(…正解だったみたいね)」

ひかり「(さて、着替えなきゃ…あのスクールバッグを持っていくとして、制服は多分ここ…)」

ひかり「(…あった。さすが夢、都合が良い)」

ひかり「(スクールバッグの中も、レッスン着と教科書…荷物を前日に準備してる……すごい……)」

穂乃果「海未ちゃーん?」

ひかり『今行きます!』

ひかり『お待たせしてしまって、すみません』

ことり「全然大丈夫だよ。集合時間まではまだあるし…」

ひかり「(確かμ'sは9人…そのうち、園田海未と同い年なのがこの2人。あとの6人は学年が違う……誰が先輩で、誰が後輩かわからない……)」

凛「あ、穂乃果ちゃーん!」

花陽「わっ、凛ちゃん、いきなり走らないで…!」

凛「置いてっちゃうよ、かよちん!ほら真姫ちゃんも、はやくー!」

真姫「言われなくても行くわよ」

穂乃果「おお!3人揃って登校?」

ひかり「(!リボンの色が、私や2人と違う…でも3人の色は一緒だから、3人の学年は同じ…)」

凛「うん、早めに行って、練習前に真姫ちゃんに勉強教えてもらおうと思って!」

花陽「真姫ちゃん、とっても教えるの上手で、だから凛ちゃんとお願いしたの」

真姫「ま、まあ1年生の範囲なんて、そんなに難しくないもの」

ひかり「(!)」

ことり「?海未ちゃん、どうかした?」

ひかり『い、いえ。何も。それより、行きましょう』

穂乃果「そうだね!それじゃ学校へしゅっぱーつ!」

ひかり「………」


ひかり「(この3人は1年生。確かに昨日の動画に居た気がするから、μ'sのメンバー。名前は凛、真姫、かよちん)」

真姫「凛は数学って言ってたけど、花陽は?」

ひかり「(…訂正、花陽。凛から穂乃果への喋り方を見るに、上下関係は薄そう。ここに居る後輩たちは勿論、これから会う先輩にも、たぶん園田海未は呼び捨てをしている)」

ひかり「(全員に対しての口調が変わらないのは、演じる方としてはありがたいけど…全員と同じ口調な分、誰と特に親しくしてるのかがわからない……)」

ひかり「(誰とも同じように接し、公平で、真面目……)」

穂乃果「海未ちゃーん?目が遠いよ?」

ことり「作詞、やっぱり詰まってるの?」

ひかり「(作詞?園田海未は作詞も担当してるんだ)」

ひかり『ええ…どうも、上手くいかなくて』

ひかり「(…さっきから知らないことばかりが出てくる。)」

ひかり「(もしかして…夢じゃなくて現実?)」

穂乃果「学校到着~!さ、生徒会室に鍵取りに行こう!」

ひかり『穂乃果?廊下は走ってはいけません!』

ひかり「(ノッてきた。セリフが湧いてくる)」

穂乃果「う…いいじゃん誰も居ないんだし!」

ひかり『誰が居る、居ないは関係なく、廊下は走らないものです!』

ことり「まぁまぁ、走るのはこけると危ないし、やめた方がいいと思うけど…海未ちゃんも、朝から怒りすぎると顔が怖くなっちゃうよ?」

穂乃果「うっ…ごめんなさい……」

ひかり『……すみません』

ひかり「(天真爛漫な穂乃果と真面目な海未。その2人をゆるやかにつなぐことり)」

ひかり「(授業のスクールアイドルと同じ…)」

ことり「さ、生徒会室に行こう?」

穂乃果・ひかり「…はぁい」

ひかり「(……ちょっとまひるに似てる。)」


穂乃果「失礼しまーす!絵里ちゃーん!」

ひかり「(!また、PVで見た人)」

絵里「朝から元気ね、穂乃果。はい、部室の鍵」

希「もう練習?」

穂乃果「ううん、先に海未ちゃんにテスト勉強教えてもらおうと思って!」

ひかり「(!?!?)」

絵里「珍しいわね、穂乃果から勉強の話が出てくるなんて」

穂乃果「うん…次の英語が悪かったら、みっちり補習で、ライブに出られなくなっちゃうらしくて……」

ひかり「(え…英語……良かった……)」

希「それは由々しき事態やね。もし成績が悪かったらぁ……?」

穂乃果「ひぃ!が、がんばります!!」

ことり「あはは…」


絵里「ん…?海未、どうしたの?」

ひかり『ど、どうしたの、と言いますと?』

ひかり「(…まだ、3年生への態度が掴めてないのに)」

絵里「いえ。普段ならこのタイミングで穂乃果を叱ったりしそうなのに、って。『だいたい普段から勉強していないからこういうことになるのです!』…みたいな、いつものお小言」

ひかり「(なるほど…3年生の前でも、普段通りに振る舞っているのか)」

ひかり「(裏表がなくて、まっすぐで、頑固なくらいまじめ)」

ひかり「(…なんでこの人、アイドルしてるんだろう)」

ことり「今日、ちょっと海未ちゃんボーッとしてるみたいなの」

穂乃果「私達が家に着いたとき、寝てたもんね」

絵里「そうなの?体調が悪いなら、言ってね?」

ひかり『わかりました。お気遣い、ありがとうございます』

ひかり「(…よく考えたら、μ'sのダンス何も知らないし、練習には混ざらない方が良いかも。後で言おう)」


穂乃果「部室に到着~あれ?」

にこ「おはよう」

ひかり「(!最後のメンバー、三年生)」

穂乃果「もしかして、ずっとここで待ってたの?」

にこ「そうよ。なんか悪い?」

穂乃果「生徒会室に行けば鍵あったのに、ずっと待ってたの?」

にこ「だって…希がいるじゃない!」

ひかり「(…不仲?)」

にこ「見つかったら、テスト勉強みっちりさせられて…」

希「ふぅーん?逃げとったってこと?」

にこ「ひいっ!」

ひかり「(…訂正。とても仲良さそう)」

希「ウチから逃げるにこっちには…みっちりお仕置きせんとなぁ?」

にこ「お、お助け……」

希「さ、にこっちは生徒会室でウチらと勉強~♪穂乃果ちゃん達、また後でね~♪」

ひかり『……穂乃果も勉強しますよ?』

穂乃果「は…はぁーい」


ひかり『次、この文章は?』

穂乃果「えっと…犬と猫は同じくらい良い?」

ひかり『ええ。as well as で、前と後ろが同じくらい良いと言う意味です』

穂乃果「やったー、合ってた!」

ことり「…あの、海未ちゃん。気を悪くしたらごめんね」

ひかり『(?)な、なんですか?』

ことり「あの…発音が、すごく良いなって。さっきのhad better~ってやつとか、ネイティブすぎて私も聞き取れなかったもん」

ひかり「(!盲点。園田海未の英単語の発音はカタカナ発音なのか…)」

ひかり「(なんと言い訳しよう…)」

穂乃果「ひょっとして…私のために、勉強してくれてた?」

ひかり『(!)ええ…海外の方が話す動画を見て勉強していました。それで少し寝不足でして…』

ことり「ああ、だから調子も悪そうだったんだね。お疲れ様。クッキー食べる?」

ひかり「食べる。」

ことり「…へっ?」

ひかり『いえ!失礼しました。食べます』




凛「にゃー!もうくたくた…」

真姫「って…結局3問くらいしか解いてないじゃない」

凛「数学の3問は30問だにゃ!それより、はやく練習!お着替えお着替え!」

花陽「はぁ…はぁ…凛ちゃん達、速いよ…」

凛「だって、はやく練習したかったんだもん!頭を動かした後は体を動かすんだよ!」

絵里「もうみんな揃ってるわね。じゃあ着替えて、屋上に行きましょうか」

全員「はーい!」

ひかり「(いよいよ、スクールアイドルのレッスン…)」

絵里「海未?行くわよ?」

ひかり『はい!』

ひかり「(……楽しみ。)」


凛「屋上にゃ!!!!」

花陽「あ、ちょっと凛ちゃん!」

ひかり「(!見事なジャンプと宙返り…捻りも加えてる)」

凛「じゃーん!」

真姫「もう、危ないでしょ」

ことり「海未ちゃん?」

ひかり「(私も)」

絵里「ちょっと、海未!?」

ひかり「(踏み切って…重心移動…着地しながら体を捻って…)」

ひかり「できた。」

凛「え、う、海未ちゃん…?」

ひかり「(!しまった…刺激されて、つい)」


希「さすが海未ちゃん、リリホワ直伝の一回転宙返り、もう習得したんやね」

ひかり「(!?)」

絵里「希が教えたの?危ないこと教えるのはやめてよ…そして海未も。希が言ったことを素直にやらないの、ね?」

ひかり『…すみません』

穂乃果「き、きっと寝不足ハイみたいな感じじゃないかな?」

ことり「う、うん、海未ちゃん、あんま寝られてないって言ってたし」

ひかり「………」

にこ「じゃあ、海未ちゃんは今日は見学にこ!」

ひかり『で、ですが』

真姫「にこちゃんに賛成。海未は力強いから止められなくて危なっかしいし、回復するまでどこかで寝てた方が良いわ」

絵里「私もにこに賛成。海未、ちょっと日陰で休んでて?」

ひかり『…はい、わかりました』

ひかり「(自分から言わなくても見学になった。ラッキー。)」


練習中

希「なぁ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん…なんかおかしいとは、思うんだけど…」

にこ「ちょっと怖い感じがするわ」
?
絵里「多分だけど、いつもみたいな表情の豊かさがないからかも」

花陽「そうかも。海未ちゃんって、笑顔で話すから、笑ってないと怒ってるのかな?ってなる」

穂乃果「私を叱る時は普段通りだったけどなぁ」

ことり「でも、あそこだけ怖いくらい普段通りの海未ちゃんで、逆に違和感っていうか……」

真姫「いくら直伝したところで、海未があんなジャンプを屋上でするとは思えないわ」

凛「それは間違いないにゃ。あーやって屋上でジャンプしたら、間違いなく海未ちゃんの雷が落ちるもん」

真姫「…わかってるならやめなさいよ…」

にこ「海未の様子がおかしいけど、どこがどうおかしいか上手く言えないから指摘もできない…って感じね」

絵里「まぁ、寝不足だけが理由かもしれないし…しばらくはお休みさせておきましょう」


ひかり「(柔軟してる。遠くでやってるから声は聞こえないけど、普通の柔軟。)」

ひかり「(…うーん……確かに、星見さんの言うとおり、私達の役柄は穂乃果、ことり、海未の3人に近い)」

ひかり「(当初この3人で始めたということであれば、穂乃果がことりと海未を誘った構図…だと思う)」

ひかり「(でも、どうして海未が了承したのかがわからない。穂乃果に押し切られた…?)」

ひかり「(…ううん、何かもっとこう、この人の中で湧き上がるものがあったはず。)」

ひかり「(…この人の考えていることは、今は分からない……)」

ひかり「(…いえ、役や話の流れまでここで全て作り上げる必要はない。とにかく、スクールアイドルの日常を捉えなければ)」


絵里「あー…海未?体調はどう?」

ひかり『少しウトウトしていました…。身体は元気なのですが、少し頭がぼーっとしています。転けてご迷惑をかけるわけにもいきませんし、申し訳ないのですが今日は見学させてください』

絵里「(喋ると驚くほど普段の海未ね…まぁ、海未なんだけど……)わかったわ。じゃあ私と一緒にダンス見てくれる?」

ひかり『はい。すみません』



絵里「じゃあ、頭から、ワン、ツー、スリー、フォー」

ひかり「……!」

ひかり「(すごい……身体のキレが、全然違う…!)」

ひかり「(拍で分かりやすく動いて止まって、それでキレ良く見える)」


絵里「花陽、遅れてるわ」

花陽「はっ…はい!」

ひかり「(厳密に言えば遅れてはいない。手の移動速度が周りよりゆっくりなだけで、拍には合ってる)」

絵里「凛、ステップ!」

凛「にゃ!はい!」

ひかり「(よく見たらとても複雑な足の動き…右足を寄せると同時に、左足も動いている…?)」

ひかり「(そしてそのステップをしながら、ポジションを移動…)」

ひかり「すごい……」

絵里「海未、何か言った?」

ひかり『いえ、何も』

穂乃果「(…今、『すごい』って言ってた気がする)」


希「(海未ちゃん、キラキラした目でこっちを見てる。普段とは違う……なんやろ…)」

にこ「(初めてアイドルを見た人、みたいな顔してるわね、海未…)」

ひかり「(息も当然切れてないし、手先まで集中も切れていない。歌も伸びやか)」

絵里「真姫、笑って」

ひかり「(笑って…!?)」

ひかり「(そうか、スクールアイドルはアイドル。本分は笑顔を届けること。自身も笑顔でないといけない)」

ひかり「(絵里の一言でみんな一層笑顔になった。笑顔になると、キラめきが倍増したみたい)」

ひかり「(すごい……)」

ことり「(海未ちゃん、目がキラキラしてる。ちっちゃい頃、あんな顔良くしてたなぁ)」

真姫「(海未が近距離の観客みたいで、落ち着かないわ)」


絵里「はい。お疲れ様。久しぶりだけど、良かったわ」

ひかり「(一曲歌い踊り終わった後とは思えない平静…すごい)」

ひかり「(舞台少女は、長く舞台に立っているから、エネルギーを低出力で長く保とうとするけど)」

ひかり「(アイドルのダンスは真逆。高出力で、一つ一つを魅せ続ける)」

ひかり「(このダンスを…私が……)」

ひかり「(…………見てるだけじゃ、学んで帰れない……)」

ひかり「(……よし。)」

絵里「海未、どうだった?」

ひかり『…先に、お話したいことがあります』

ひかり「(……あれ、役が抜けない)」

絵里「えっ……な、なあに?」


ひかり『えっと…ですね…。私が、私でないと言ったら、信じて頂けますか?』

凛「????」

花陽「…えっと、どういうこと?」

ひかり『実は私は、園田海未さんではありません。聖翔音楽学園2年、出席番号29番、神楽ひかりと申します』

ひかり「(役が抜けないけど、まぁいいわ。初対面だから、敬語の方がいいだろうし)」

希「聖翔…あ、この前チラシが入ってた…」

穂乃果「海未ちゃんと似てるって話してた、あの子!」

ことり「たしかに、ひかりってお名前だったような…」

ひかり『どういった力なのかはわかりませんが、私と園田海未さんが入れ替わってしまったみたいなんです』

絵里「それは、いつから?」

ひかり『今日の朝からです』


穂乃果「えっ!?でも、穂乃果達の名前、知ってなかった?」

ひかり『授業でスクールアイドルの劇をすることになったので、皆さんの動画を見させていただきました。それで顔と名前を覚えていました』

ことり「じゃあ…朝から、海未ちゃんのフリをしてたってこと?」

ひかり『そうなります。起きた直後寝ぼけていて、これが夢だと思っていたので、練習になるかと思い、園田海未さん役としてエチュードをしていました』

にこ「エチュードって?」

希「即興劇のことよ」

真姫「……海未がこんな嘘つくわけないし、目が本当だって言ってるのはわかってるんだけど……」

絵里「そうね、どうしても非科学的で信じられないわ。まあ、証明なんて出来っこないから、信じるしかないんだけど…」

ひかり『あの、証明になるかはわからないのですが…私は今、「園田海未役」をやっています。別の役を仰っていただければ、その役をやりましょう』

希「じゃあ、シンデレラにかぼちゃの馬車をくれる、魔法使いのおばあちゃん!」

にこ「(希、こんな時でも冷静というか……マイペースね)」

ひかり『わかりました』?
真姫「(そしてこの人もすぐにやるのね……)」

穂乃果「(目を閉じた。開い…!?)」

ことり「(へっ…海未ちゃんがおばあちゃんに見える…)」

ひかり『シンデレラ、よーくお聴き。舞踏会に必要なものは……そう、かぼちゃ。私が杖を振れば、たちまち馬車になるわ、見てなさい。えーっと、呪文はなんだったかしら…あ、そうそう』


絵里「あっ、えっと、海未…じゃなかった、ひかりさん、ありがとう。もう大丈夫よ」

ひかり「…わかってくれた?」

穂乃果「急に話し方が変わった!?」

ひかり「これが私の素。さっき話した時は役が抜けなかったけど、別の役を経由したら戻れた。」

真姫「…これは、信じるしかないわね」

凛「(ボソボソした声で、タメ口で話す海未ちゃん、すごい違和感にゃ)」


ことり「でも…じゃあ、さっきまでは海未ちゃんの体で海未ちゃん役をやってたってことだよね?」

ひかり「そういうことになる。」

穂乃果「ちょっと変だなとは思ってたけど、別の人が中に入ってるなんて全然わからなかった…!」

ことり「…私達、言われないと分かんなかったと思うんだけど…なんで私達に教えてくれたの?」

ひかり「…すごいと思ったから。教わりたかった。」

穂乃果「それは…スクールアイドルを?」

ひかり「そう。歌や踊りはもちろん、表情も手先も何もかも計算されて洗練されてて、すごいと思った。だから習いたい」

絵里「とても光栄ね。でも、何の曲を?」

ひかり「今やってた曲。次の授業で、3人で踊るの」


穂乃果「じゃあ、私とことりちゃんと3人でやったやつかな?」

ひかり「うん」

ことり「じゃあ、一緒に練習する?」

ひかり「本当?嬉しい」

花陽「(ちっちゃい子みたい…)」

絵里「じゃあ私達は個別のダンスの練習をしておくから、穂乃果達は向こうでひかりさんに教えるのでいいかしら?」

穂乃果「うん!」


穂乃果「じゃあ行こ、ひかりちゃん!」

ひかり「うん」

ことり「私とは左手~♪」

ひかり「うん」

真姫「(海未の両手を取って行っちゃった…)」

希「(穂乃果ちゃんはともかく、ことりちゃんは完全に楽しんどるね…)」


にこ「……海未の中にその舞台少女?の人が入ってるってことは、その人の中に海未が入ってるってこと?」

絵里「そうなるんじゃないかしら。映画でよく見る展開ね!」

凛「海未ちゃんが劇の学校に…なんか、ハラハラしてきたにゃ」

花陽「正体バレたらどうなっちゃうのかな…?」

希「まぁ…こっちで神楽さん?が入ってるってわかってもなんともないんだし、大丈夫やないかな…?」




海未「…あの、これ、ほとんど私達の結成時の話そのままですけど……」

真矢「ここから話の肉付けや会話の流れをアレンジ…脚色していきます」

クロ「昨日まで1行の設定だったのに…すごいわね」

真矢「ええ。園田さん、貴女のお陰です。感謝しています」

海未「は、はぁ…どうも…」


真矢「ではこの流れで、軽く演ってみましょうか」

海未「へっ?でも、今これノートのプロットですよ?台本とか…」

クロ「これだけ流れがしっかりしてれば、台本は不要よ。それに大丈夫、貴女は私と天堂真矢がことりと穂乃果だと思って自然に話して貰えばいいから」

海未「そ、そんな…」

海未「(劇には台本が付いているものだとばかり思っていましたが…台本無し、というのもあるんですね)」

真矢「では、いきましょう」

クロ「ええ」

海未「は、はい…?」

海未「(お二人とも、目を閉じて…役に入られているのでしょうか……あ、目が開い……!)」

真矢『もう、うーみーちゃーん!やーろーうーよー!アーイードールー!』

海未「(すごい、穂乃果だ…!)」


海未『で、ですから恥ずかしいと何度も言っているではありませんか!』

真矢『確かに恥ずかしいかもしれないけどさ!海未ちゃんだって学校なくなるの嫌でしょ?』

海未『そ、それはそうですが…』

海未「(なんですか、これ…本当に穂乃果と喋っているようです…)」

クロ『まあまあ、穂乃果ちゃん…海未ちゃん、困ってるよ?』

海未「(!?)」


真矢『ことりちゃん!ことりちゃんは、やってくれる?!アイドル!』

クロ『うぅーん…カワイイ衣装もカワイイ踊りも好きだけど…』

真矢『うんうん!』

クロ『でも、やるなら3人が良いなぁ』

真矢『てことは…海未ちゃんがやるって言ってくれたら、3人でアイドルできるってことだよね?!』

クロ『えっと…』

真矢『だよねだよね!』

海未『穂乃果、ことりはまだ何も言ってませんよ』

海未「(ことりも、驚くほどことりですね…声が似ている訳ではないのに、何故か錯覚してしまいます)」


純那「…………」

なな「純那ちゃん、3人が気になるの?」

純那「わぁっ!?な、なな!…そりゃ、気になるわよ。だって天堂さんと西條さんは後2人の口調は知らないはずなのに、完全再現してるんだもの」

なな「ひかりちゃん…じゃなかった、海未ちゃん、」

純那「っ!」

なな「ふふっ♪…海未ちゃんが真矢ちゃん達に2人の話を沢山してたもの。役を入れるには充分だったわ」

純那「そ、そうなのね…」

なな「純那ちゃんも話聞きたかったの?」

純那「……ええ、だって、好きだし、その、興味があるから。……で、でも、皆には内緒よ?」

なな「はーい♪」


クロ『あのね。海未ちゃん』

海未『は、はい。なんでしょう、ことり』

クロ『覚えてるかな…昔、幼稚園の時、隣町の公園に穂乃果ちゃんが行こうって言った時のこと』

海未『(!そんな話、していませんが…)え、ええ』

クロ『あの時の私達には、隣町でも大冒険で…困ってるだけだった私と、行きたいって言ったけど行き方は知らない穂乃果ちゃんに、道を調べて教えてくれたよね』

海未『(…話をしていませんが、似たような話は確かに小さい頃よくありましたね…)ええ。行き先を決めるのは穂乃果。そこまでの道のりを探すのが私でした』

クロ『そして2人に、絶対についていくのが、私』

海未「…まさに、その通りです」

クロ『ねえ海未ちゃん?穂乃果ちゃん、今はスクールアイドルで日本一になりたいって、行き先を言ってるよね』

海未「………」

クロ『海未ちゃん、また私達と、道のりを探してくれないかな』

海未「…かないませんね…ことりには……」

クロ「(!)」


真矢『あー!ことりちゃんと海未ちゃん、こんなところに居た!ねえねえ、これ見てほしいんだけど…』

海未「穂乃果!!」

真矢「(!)」

海未「…やるからには、半端は許しませんからね」

真矢「(この感じ…園田さんの「園田海未役」が、完璧に演じられている…!)」

真矢『もっちろん!絶対になるよ!日本一!』

海未「でしたら今から特訓です!行きましょう」

真矢『へっ、今から!?』

クロ『も、もう夕方だけど…』

海未「時間は有限です!初ライブに向けて、少しでも高めてゆきましょう!」

真矢『ちょ、ちょっと待ってえ……』


真矢「……と。お疲れ様でした」

海未「…はっ、あ、ありがとうございました」

クロ「本人にこう言うのも変な話だけど、すごく上手に『園田海未役』ができていたと思うわ。舞台、向いてるんじゃない?」

海未「す、すみません、仰ってる意味が…」

真矢「初めは私達の言葉を聞いて、どう受け答えるか考えてから『セリフ』として役の言葉を言っていました、それが途中から、自然に「自分の言葉」として、役の言葉を話していました。例え自分自身の役をやっていたとしても、なかなかできないことです」

海未「ほ、褒められているのですか、今…?」

クロ「もちろん、凄く褒めてるの。はじめての即興劇でここまで出来るなんて、才能あると思うわ」

真矢「ともあれ、助かりました。後は神楽さんが帰ってきてから内容を詰めれば、完成すると思います」

海未「いえ。お役になれたのでしたら何よりです」


華恋「あ!天堂さん達も練習終わるところ?」

クロ「ええ。その様子だと、華恋達も終わるところなのね」

華恋「うん!ほらひかりちゃん、ご飯行こ?」

海未「わぁっ!え、あの」

華恋「あっ、そっか。今は海未ちゃん…なんだよね。…うう、わかっててもひかりちゃんに見えちゃうよ……ねえ、ひかりちゃんって呼んでもいい?」

海未「か、構いませんが…」

華恋「ありがとう!ひかりちゃん、ご飯行こ?ばなながサンドイッチ作ってくれてるよ!」

海未「は、はい」

海未「(すっかり忘れていましたが、鏡には相変わらず神楽ひかりさんの顔が写っています…)」

海未「(先程天堂さんは『戻ったら』と仰いましたが、ずっとこのままだったら……)」

まひる「華恋ちゃんとひかりちゃん?中庭でみんな待ってるよ」

華恋「はーい!」

海未「は、はいっ」

海未「(今は考えても仕方ありませんね。明日になったら戻っている、という前提で今は過ごしましょう)」


なな「…純那ちゃん、もう眼鏡拭くの5回目だよ」

純那「へっ…そ、そうだったかしら?」

双葉「お、来た来た」

香子「待ちくたびれましたわぁ」

華恋「お待たせ!」

海未「わぁ…!美味しそうなサンドイッチ……これはどなたが?」

双葉「(喋り方、前にモナリザやってた時の神楽っぽいな)」

なな「はーい♪私です♪」

海未「お一人で作られたんですか!?」

なな「うん♪さぁ、みんなお腹空いてるし、早く食べよ?」

華恋「いただきまーす!」


まひる「それで、この後はどうするの?」

海未「天堂さん達は、レッスンはもう大丈夫、と仰っていましたが…」

華恋「ふぁあ、ふぅふぁく、」

海未「口に物を入れたまま話すのはお行儀が悪いですよ?」

華恋「!ふぉめんなはい……」

海未「よく噛んで食べてください。待っていますから」

まひる「(ひかりちゃんからそんなセリフが……)」


華恋「ふー、美味しかったー!それでね、数学!出来るなら、教えて貰いたいなって!」

海未「ということは、こちらもテスト期間なのですか?」

純那「はい。でも、あの…得意な教科は国語って」

海未「ああ、確かにプロフィールにはそう書いていますが…『教える』の程度によりますが、簡単なものでしたら数学でも何でも大丈夫ですよ」

純那「や、やっぱり穂乃果さんとかに…?」

海未「お察しの通りです……。後は凛や花陽にも聞かれることがあります」

純那「~~~~!!そ、そうなんですねぇ……!!」

なな「純那ちゃん、とっても楽しそう♪」

香子「あれはもうただのファンやな」

海未「というわけで…数学でも何でも、ある程度でしたら大丈夫ですよ」

華恋「本当~~!?ありがとう、ひかりちゃん~!!」


純那「華恋!だからこの人は神楽さんじゃなくて……」

海未「いえ、大丈夫です。先程そのように約束しましたし…皆さんも見た目と呼び名に違和感があるようでしたら、ひかりさんのお名前で呼んでいただいて大丈夫です」

華恋「そーだよ!大丈夫なんです!」

海未「ちなみに、私は皆さんのことをなんとお呼びしたら良いですか?」

双葉「…そういえば、神楽から名前呼ばれたこと、無いかもしれない」

香子「ウチもやわ」

海未「よ、呼ばないのですか?名前を?」

純那「神楽さんが誰かに話しかけるよりは、神楽さんに誰かが話しかけることの方が多いからですかね……」

華恋「はい!私は「華恋」って呼ばれてたよ!」

まひる「私も、「まひる」って呼ばれてた」

海未「では、お二人のことは名前でお呼びします。同じお部屋ですし、よろしくお願いしますね、華恋、まひる」

華恋「うん!よろしく、ひかりちゃん!」

まひる「う、うん…よろしく……」

まひる「(なんだろう……ひかりちゃんと喋ってる感じがしなくて、ちょっと落ち着かない……」

まひる「(そもそも、ひかりちゃんじゃないし)」


華恋「じゃあじゃあ!テスト勉強に、教室へれっつごー!」

海未「わぁっ!いきなり手を引くのはやめてください!…あ、大場さん、ごちそうさまでした!」

なな「はーい♪」

華恋「ほら、まひるちゃんもれっつごー!」

まひる「うひゃあっ!?わ、わかったからちょっと待ってえっ…」

華恋「ふんふ~ん♪お勉強はヤだけど、ひかりちゃんに教えてもらえるのは嬉しいな~♪」

海未「(……なんとなく、少し穂乃果に似ていて安心しますね)」




華恋「…で、コレがわからないの」

海未「証明問題ですね。この式の時、この式であるを証明する…ということは、こっちがスタート、こっちがゴールで、ゴールの形になるまで変形をさせていけばいいんです」

まひる「(……教え方上手だなぁ)」

華恋「なるほど…わかった!ひかりちゃんすごい!すっごい分かりやすい!」

海未「そんな、普通に教えただけですよ。それより…テスト範囲はどこまでですか?」

まひる「あ、私プリント持ってるよ」

海未「ありがとうございます、まひる」

まひる「!う、うん」

まひる「(ひかりちゃんがちゃんとお礼言えてる……)」

海未「やはり、まだ範囲の1ページ目ではないですか!テストはいつです?」

華恋「今週の水曜日……です……」

海未「あと3日ではありませんか!こういったことはもっと計画的に…」

まひる「(私に叱られるどころか、華恋ちゃんを叱ってる…)」


海未「あの、まひる」

まひる「は、はいっ」

海未「この、演劇史というのは、ひょっとしてここが演劇学校だから…?」

まひる「ああ……うん、そうだよ。古典を演じる機会も多いから、演劇史の授業があるの。他にもソルフェージュとか、もちろん実技もあるし…だから5教科の授業は少ないんだ」

海未「では、演劇の鍛錬に加えて、勉強もしてらっしゃるということですね」

華恋「おぉ~、なんだかそう言われると、すごくすっごいみたいだね、私たち!」


まひる「でも、勉強に加えて、スクールアイドルもしてるのも、すごいと思うなぁ」

華恋「確かに!ひかりちゃんもすごいよ!」

海未「そうでしょうか…って華恋、それは何ですか?」

華恋「えっ、これ?ばななに貰ったばななマフィンだけど……」

海未「先程お昼ごはんを食べたばかりではありませんか。太りますよ?」

華恋「平気平気!今勉強して、脳をたっぷり使ってるし!」

海未「まったく……」

まひる「(完璧なひかりちゃん…欠点のないひかりちゃん……)」

華恋「あっ!まひるちゃんとひかりちゃんの分貰い忘れちゃった!貰ってくるねー!」

まひる「あ、ちょっと!」

華恋「すぐ戻るから!」


まひる「(…どうしよう、ひかりちゃんと普段、叱ったり面倒見たり以外で喋ったことない)」

まひる「(ひかりちゃんじゃないひかりちゃんと喋るの、どうしたら……?)」

海未「まひる?」

まひる「ひゃ、ひゃいっ!」

海未「普段、ひかりさんは、どんな人なんですか?」

まひる「え、普段?普段のひかりちゃんは…すぐものを散らかしちゃうし、お菓子の食べカスもすごいし、リビングで寝ちゃうし、お世話が大変だよ」

海未「…それは、子どものようですね……」

まひる「…でも、舞台に上がって、役に入ると凄いの!もうひかりちゃんじゃなくて、役の人そのものにしか見えなくなるの。だから皆、最初ひかりちゃんが役に入ってると思ってたんだよね」

海未「なるほど、朝言われた役というのはそういう意味だったのですね」

まひる「…どうかしたの?」

海未「いえ…私がひかりさんの体に入っているということは、ひかりさんが私の体に入っているのかもしれないな、と思いまして」


まひる「それは……そうだとしたら……あ、でも、ひかりちゃんなら役で乗り切っちゃうかも」

海未「役……?園田海未役をする、ということですか?」

まひる「うん。ひかりちゃんはエチュードが得意だから、1日くらいなら役のフリで乗り切れるかも」

海未「それは……穂乃果やことりは気付くでしょうか……」

まひる「どうだろう……そもそも中身がひかりちゃんで、園田さんじゃないなんて、なかなか気づかなさそうではあるけど……」

海未「もしそうだったら、まだ良いのですが……もし中身が私でないとわかった時に、穂乃果やことりが、面白がらないかと、少し心配で」

まひる「へっ?…お、面白がる?」

海未「ええ。特に、ことりは絶対面白がると思います」




園田家 海未の部屋

ことり「海未ちゃあん、ただいま♪」

ひかり『ことり、お帰りなさいませ。外は寒かったでしょう、どうぞ中へ』

穂乃果「おおー!海未ちゃん執事だ!」

ことり「着れなかったタキシード、取っておいて良かったぁ…!」

ひかり『ことりが御所望でしたら、どのような衣装でも着ますよ』

ことり「本当にー!?じゃあね、じゃあね…」


海未母「皆さん、お風呂が沸きましたよ」

穂乃果・ことり「はーい!」

穂乃果「ほら海未ちゃん、行こ!」

ひかり「お風呂……一人ずつじゃなくて?」

ことり「海未ちゃんちのお風呂おっきいから、3人でも入れるんだよ!」

穂乃果「海未ちゃんちのお泊まり会、すっごく久しぶりだね!」

ことり「まあ、ひかりちゃんも一人だと困っちゃうもんね」

ひかり「うん……ありがとう」

穂乃果「じゃあ、お風呂へれっつごー!」

ひかり「(この人、ちょっと華恋に似てる)」

ことり「お風呂上がったら、衣装の試着の続きしようね、海未ちゃん!」

ひかり『まったく……ほどほどにしてくださいね?』

ことり「はーい♪」




学生寮 星光館

なな「という訳で!今日は海未ちゃんのためにパーティでーす♪」

華恋「おお……美味しそう……!!」

海未「あ、ありがとうございます。これも全部、大場さんが?」

なな「ううん、まひるちゃんとか、双葉ちゃんとか、純那ちゃんに手伝ってもらったよ!」

双葉「メニューを考えてくれたのは、ばななだけどな」

海未「お手伝いできず、すみません……。とても、嬉しいです」

まひる「ううん、華恋ちゃんのお勉強見てくれたり、天堂さんたちとまた稽古したり……忙しかったと思うし」

なな「嬉しいって言ってもらえるだけで、私は嬉しいかな♪」

華恋「じゃあじゃあ、えっと…海未ちゃん?を歓迎して、いただきまー……」

海未「華恋、手は洗いましたか?」

華恋「……はっ!い、いってきまーす」

海未「あ、あとまひる」

まひる「ひゃ、ひゃいっ!」

海未「お部屋の片付けもしておきましたので、ひかりさんにお伝えいただければと……」

まひる「あ、ありがとう……」

まひる「(しっかりした人との接し方がわからない……)」

華恋「ただいま!じゃあ気を取り直して、いただきまーす!」

なな「はーい、召し上がれ♪」




華恋「美味しかったー!ごちそうさま!」

海未「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです……!」

なな「(美味しいご飯に目を輝かせてるのは、ひかりちゃんと変わらないなぁ……)はい、お粗末様でした!」

純那「……あ、あの!」

海未「……?な、なんでしょう?」

純那「え、えっと…………」

なな「純那ちゃん、サインして欲しいんだって!」

純那「!」

海未「か、構いませんが……その、私は今、ひかりさんですが」

純那「いえ!もう、ぜひ、お願いします……!」

海未「わ、わかりました」

香子「(星見はん、もう完全にファンが隠せてへんなぁ。ウチのおかあはんと園田はんのおかあはんが知り合いや言うたらどんな顔するんやろな)」

双葉「おい、また悪い顔してるぞ」

香子「えー?ウチはいつでも可愛い顔しかしてませんけど?」

双葉「……ったく……」


クロ「海未、ちょっと良いかしら?落ちサビのところのポーズなんだけど……」

海未「!は、はいっ」

海未「(この人は普段の話し方は絵里に似ているのですね……」

純那「…………」

なな「良かったね、純那ちゃん」

純那「そんな、神楽さんのサインだけど、ああ、いやでもこれは、」

なな「(ちょっとそっとしておいた方が良さそうかな)」

海未「ああ、ここのポーズはですね……」

まひる「(あんなにしっかりしたひかりちゃんなら、毎日助かるけど……でも、園田さんが困っちゃうよね……)」

まひる「(ひかりちゃん……大丈夫かなぁ。園田さんのお部屋、散らかしてないと良いけど)」




穂乃果「海未ちゃんの部屋がこんなに散らかってるの、生まれて初めて見るかも!」

ひかり「……そうかもしれない。」

ことり「衣装も出しちゃったし、着替えを探すのに、いろいろひっくり返しちゃったもんね」

穂乃果「卒園アルバムが出てきたりして懐かしかったけどね!」

ことり「海未ちゃん、私たちが写ってるところに付箋貼ってたんだねぇ」

ひかり「…………園田海未さんにとって、二人は大切?」

穂乃果「えっ?逆じゃなくて?」

ひかり「うん。二人にとって園田海未さんが大切なのは、よくわかったから。」

ことり「……じゃあ、そのよく分かったみたいに、海未ちゃんにとっても私たちって大切なんだと思うよ」

穂乃果「そうだねぇ。あんまり、考えたことなかったな。海未ちゃんとことりちゃんが大切、なんて、当たり前すぎちゃって」

ひかり「……そう」


穂乃果「ひかりちゃんにも居る?そういう人」

ひかり「……大切な人は、いる。……でも、そんなに自信を持って、大切に思われてるとか、大切に思っているとか、言えないと思う」

穂乃果「人それぞれだよ!そういうのは!」

ひかり「……すっごくざっくり。」

穂乃果「いいのいいの!ね、おせんべい食べよ?」

ひかり「食べる。」

ことり「あ!朝、クッキー……」

ひかり「何?」

ことり「ううん、そうだったのかー、って思っただけ!」

穂乃果「(この時間のおせんべいを一緒に食べる海未ちゃん、新鮮だなぁ)」


ひかり「……今日1日、とても参考になった。ありがとう」

ことり「なんだかいつも通りに過ごしちゃったけど、良かったの?」

ひかり「うん。スクールアイドル以前に結ばれた強い絆が、スクールアイドルを通して更に太く、強い絆になっている……。役作りの、参考になった」

穂乃果「じゃあ、今はもっと上手に海未ちゃんができる?」

ひかり『ええ。できますよ』

ことり「わ……ちょっと眠そうなところも、すっごい海未ちゃん!」

穂乃果「じゃあ、海未ちゃんは、穂乃果達のこと大切?」

ひかり『なるほど……確かにそう聞かれると、窮してしまいますね。もちろん答えは「はい」なのですが、「大切」という言葉すら陳腐な気がします。穂乃果とことりは、唯一無二の存在ですから』

ことり「うん、私もそう思う。……あ、そのセリフ、歌詞ノートに書いておいたら?」

ひかり『歌詞のノートに……ですか?』

穂乃果「うん。海未ちゃん、作詞に詰まってるみたいだったから」

ひかり『なるほど……わかりました』


穂乃果「ふぁ……」

ことり「穂乃果ちゃん、眠いの?」

穂乃果「うん……いつもより、ちょっと早く起きたから」

ひかり『では、もう寝ますか。布団は……』

ことり「3人で一緒に寝よ?」

ひかり『ことりはそう言うと思ってましたよ……わかりました』

穂乃果「おお、今の、海未ちゃんっぽい!」

ひかり「ありがとう。私も、ちょっと眠い」

ことり「はーい、じゃあ、おやすみ」

穂乃果「おやすみなさーい……」

ひかり「……ん」




海未「…………」

華恋「あれ……ひかりちゃん、寝ちゃった?」

真矢「朝から踊り通しで、慣れない1日だったと思いますから」

純那「もともと早寝早起きなのよ、園田海未さんは」

クロ「……海未のこと、フルネームで呼ぶのね」

純那「そ、そういうものなんです!」

まひる「しー。……じゃあ、お部屋に運ぼうか」

双葉「一人で大丈夫か?私も手伝うよ」

まひる「うん、ありがとう、双葉ちゃん」


華恋「ひかりちゃんは、ひかりちゃんじゃなかったんだねぇ。まだ信じられないや」

なな「役に入ったひかりちゃんも、よく見てきたもんね。確かに、あんまり違和感はなかったなぁ」

真矢「凄まじいまでのステージでのキラめき……とても刺激になりました」

華恋「……ひかりちゃんは、大丈夫なのかなぁ」

香子「入れ替わってるとしたら、園田はんのところやろ?大丈夫と違います?」

華恋「そっか……よし」


まひる「……あれ、華恋ちゃん?そこ、ひかりちゃんのお布団……」

華恋「今日はこっちで寝ようと思って。ほら、明日ひかりちゃんが帰ってきた時、私が居たら安心するでしょ?」

まひる「……そうかもね」

華恋「だからまひるちゃんも、こっち」

まひる「で、でも……」

華恋「いいから、ね?」

まひる「……うん」

海未「(……なんだか、とても温かいです。心地よい、人の温かさ……。穂乃果やことりと泊まっている時を思い出します)」




♪←→??


ひかり「……」

ひかり「……!もどった」

華恋「ん……ひかりちゃーん……?」

ひかり「……どうして私の布団で寝ているの、二人共」

まひる「あ、戻ったんだ……おはよう、ひかりちゃん」

ひかり「おはよう、まひる。華恋も、起きて」

華恋「ええ……?でも今日は、日曜日で」

ひかり『園田海未を演じたいのです!今すぐにでも!行きますよ、穂乃果!』

華恋『わ、わかったよ海未ちゃん、でも、ちょっと待って~……」

まひる「(今の喋り方、昨日の園田さんのそのままだけど……パジャマが脱ぎっぱなしだから、間違いなくひかりちゃんだな)」


まひる「ひかりちゃん、向こうで迷惑かけなかった?」

ひかり「大丈夫。すごく楽しかった。」

まひる「……全然安心できないけど……でも、役作りはできたんだね」

ひかり『ええ。まひる。勿論です、今度こそ完璧に!やり遂げてみせます』

まひる「そっか、わかった」

華恋「じゃ、レッスン室へれっつごー!」




海未「……ん?穂乃果……、ことり?」

海未「も、戻ったのですか?」

ことり「ん……海未ちゃん……それとも、海未ちゃん役のひかりちゃん……?」

海未「また『役』ですか……って、ここ、私の部屋……どうしてこんなに散らかっているのですか?」

穂乃果「それは、昨日3人でお泊まりパーティーで……」

海未「パーティでも寝る前には片付けるものでしょう!ほら、起きてください!」

ことり「ああ、本当に海未ちゃんなんだねぇ」


海未「あ、作詞ノート……み、見てませんよね?」

穂乃果「見てないよ。でも、昨日海未ちゃんが、何か書いてたよ」

海未「え、ええ……?」

 私にとって皆は
 大切と言うには陳腐だけど
 特別を伝える言葉が今はそれしか思いつかない

海未「(!これは、ひかりさんのノートに書いてあった筆跡と同じ……)」

海未「(本当に、入れ替わっていたのですね)」

穂乃果「……それで、海未ちゃん」

海未「何でしょう?」

ことり「できた?新しい体験!」

海未「!…………ええ、それはとても、素晴らしい体験ができました」

穂乃果「良かった、じゃあお話聞かせて……」

海未「それは部屋の片付けが済んでからです!」

おわり

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