【ポケモン剣盾】ホップ「博士号めざして論文投稿するぞ!」 (57)


ものごころがついてから,私は自分がチャンピオンになると言い張っていた。

理由は分からない。

しかし,それはすでに決定した未来のように私には感じられていたのである。
それどころか,まるで自分という存在が生まれるはるか前から自分の本質が定まっていたような気さえする。

自分の前に立ちはだかる存在は,だれであってもみな等しく,自分に倒されなければいけない宿命であり,それが世界の理であると信じてきたのだ。

そして,それは現実のものとなった。


私はチャンピオンになったのである。


だが,奇妙なことであるが,幼少の頃より信じてきた未来が現実となっても,何の感慨も抱くことはなかった。

かわりに,この世界は私が想像している通りのルールに従って動いているに過ぎないとの思いを抱くようになった。

最近では,この思いは徐々に大きくなり,この世界にも,私の人生にも大した意味を見出せないでいる。


もし,もし,この世界の理が崩れるようなことがあれば,それは楽しいことかもしれない。

しかし,そんな日が来ることはあるのだろうか?

例えば,今,こちらに走ってくる哀れな少年が私を越え,逆転を果たすような。そんな日が・・・


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ホップ「おーい,ユウリ!」

ユウリ「お,来た来た]

ホップ「待ったか?」

ユウリ「ううん,ワイルドエリアまで来てもらってごめんね」

ホップ「全然,平気だぞ!
    こっちこそ,ザマゼンタとムゲンダイナ,預けてくれてサンキュー!
    レポートも書き終わったからな,ほんと助かったぞ!」

ユウリ「これで,図鑑完成か おめでと♪」

ホップ「おう! 最強ポケモン博士,ホップ様の伝説のはじまりだぞ!」

ユウリ「ははは・・・」

ホップ「そういえば,この前のトーナメント,ちゃんと録画したんだぞ!
    ユウリとニャース,相変わらず相性ばっちりだな!」

ユウリ「ダンデさんには嫌味言われたけどね」

ホップ「うーん……兄貴のヤツ,最近は観客数ばっかり気にしてるからなぁ」

ユウリ「それはそうとさ,図鑑も完成して,このあとなにすんの? 博士って,なるの大変なんでしょ?」

ホップ「・・・・・何すればいいんだろ???」

なんか,読み辛いな
どうすればええんや・・・

一度に投稿する分量が多すぎるのか。
改行もしない方がよさそうだなぁ。

よし!書き直そう!って思っても,削除ボタンないじゃーん。
詰んだ

とりあえず,1と2はなかったことにしてください。
読まないでください。
でも,これ読んでるってことは,きっと読んじゃってますよね?
詰んでるな

-ポケモン研究所-

ホップ「ソニア!オレ,図鑑完成したぞ!」

ソニア「あら,おめでと」

ホップ「これでオレもポケモン博士だぞ!」

ソニア「それは無理よ」

ホップ「え,なんで!?」

ソニア「だって,博士論文書いてないじゃん」

ホップ「ハカセ,ロンブン・・・?」

ソニア「そうよ,博士論文」

ホップ「なんだそれ? 聞いたことないぞ!」

ソニア「まぁ,それを書いて認められれば,はれてポケモン博士なのよ」

ホップ「そうなのか!早速ぱぱっと書いちゃうぞ!」

ソニア「そんな簡単に書けるもんじゃないのよ,これが」

ホップ「え? でも,ソニアでも書けたんだろ?」

ソニア「な! 失礼ね! 私だって,あの旅で書いた本がようやく博士論文として認められたのよ?」

ホップ「え,あのサイン貰った本くらいのこと書かなきゃいけないのか?」

ソニア「そうよ! 私なんておばあちゃんの助手になってから10年近くかかってようやく書き上げたんだから」

ホップ「えー,やめようかな」

ソニア「なにそれ。やる気ないなら指導しないわよ,私意外と忙しいの」

ホップ「いや,やるぞ! 困っている人やポケモンを助けたいんだ!」

ソニア「いいじゃなーい,私についてきなさい!」

ホップ「おう!」

ソニア「それじゃあ,これからやることを説明するわね。あ,このレスは読み飛ばしても問題ないわ」

ホップ「?」

①最初の研究の研究テーマを決めよう
研究を始めるにあたって,まずやらなきゃいけないのがテーマ決めよ。
でもね,ここでやらなきゃいけないことは一つだけよ
それはね・・・

 「指導教官と相談して決めてもらう」

どう,簡単でしょ?

ホップ「え,えー・・・」

ソニア「そもそも,研究テーマを決めるためには,研究とは何ぞや?ということを知らなきゃいけないのよ」

ホップ「ふむふむ」

ソニア「でも,そんなこと,研究はじめての子に教えるのなんて無理だから,最初は言うこと聞きなさい」

ホップ「もっと,オレのポテンシャルを信じてほしいぞ!」

ソニア「はいはい」

ホップ「それで,オレの研究テーマは何にしてくれるんだ?」

ソニア「そーねぇ,私の専門に近いテーマにしたいわね」

ホップ「ソニアの専門ってなんなんだ?」

ソニア「え,本読んでくれたんでしょ? 歴史よ,歴史」

ホップ「ポケモンと歴史…? うーん,微妙」

ソニア「失礼ね」

ホップ「もっと,ダイマックスでちゅどーんってしたり,新たなキョダイマックスを創造したり,未踏の地に踏み込んで新ポケモンを見つけたり…」

ソニア「はいはい,それで? ホップはどんなポケモンについて調べてみたい?」

ホップ「それは決まってるぞ! オレの最強バディ,ウールーだ!!」

ウールー「め~ん♪」

ソニア「ウールーで歴史,ね…」

ホップ「わくわくするぁ! ウールー,ついに最強ポケモン博士,ホップ様の伝説が始まるんだぞ!」

ウールー「ヌモウ!」

ソニア「ねぇ,ホップ? 産業革命って知ってる?」

ホップ「…知らないぞ」

ソニア「知らないのはヤバいわね……,じゃあ,エンジンシティの昇降機は覚えてる?」

ホップ「あぁ,覚えてるぞ! バカでかい機械だよな」

ソニア「そう! そういう機械がつくられるようになったのが産業革命よ」

ホップ「ん? それって,すごいことなのか?」

ソニア「ええ,そりゃあね,機械が動いてくれることで工場ができたのよ」

ホップ「うーん,あんまりピンとこないな」

ソニア「とにかく! 機械が発明されたおかげで人間の暮らしは便利になったの!!」

ホップ「へぇ」

ソニア「しかも,その産業革命とウールーは深い結びつきがあるのよ!」

ホップ「え! な,なんだってーー!!」

ウールー「めーー!!」

ソニア「はい! ということで,テーマは決まりました」

ホップ「押しつけられた感じだけどな」

ソニア「ということで,次のステップよ! あ,ここは読み飛ばしても問題ないわ」

②テーマに関連した勉強を進めよう
ここで,わざわざ勉強ってワードが出てくるのがミソね。
まぁ,そのうち意味が分かるわ。
テーマに関連した本とか論文をとにかく読みまくるのが,この段階でやるべきこと。
本と論文は,微妙に役割に違いがあるのだけれど,最初の研究のときは気にしすぎないで。
それで,ここで気を付けてほしいことは二つ・・・

 「”まだ分かってないこと”は何かを意識する」
 「メジャーな雑誌に載ってる論文を優先的にチェックする」

ソニア「博士っていうのはね,新発見をした人に与えられる称号なのよ」

ホップ「ふむふむ」

ソニア「新発見っていうのは,まだ人類が知らなかったことを明らかにすることよ!」

ホップ「おお!わくわくするぞ!」

ソニア「例えば・・・,オーキド博士はなにした人?」

ホップ「ポケモンを151匹見つけた!」

ソニア「そう!それも世界で最初にね」

ホップ「なるほどな! だから,勉強するときには,そもそもみんなが知らないことってなんなのか?ってのを意識する必要があるんだな!」

ソニア「じゃあ,今日の講義はここまで! あなたに宿題を出しましょう」

ホップ「なんでもやってやるぜ!」

ソニア「この本と,これとこれとこれと,あと,この本も。はい,これを1週間で読んできなさい」

ホップ「……うう,多いぞ」

ソニア「研究テーマは「ウールーと産業革命」,これに関してまだ分かってないことはなんなのか? しっかり考えてきてちょーだい」

-ホップの部屋-

ホップ「さて! ソニアに渡された本で勉強するぞ!」

ウールー「めー!」

ホップ「なになに? 本のタイトルは『ガラル通史―近代①―』,『近代の成立とその構造』……」

ウールー「ぐめめ…」

ホップ「これは……,やばいぞ! Hey! ロトム!」

スマホロトム「ケテー」

ホップ「産業革命 分かりやすく」

スマホロトム「……」

ホップ「ん? 早く検索してくれよ,困ったときのwiki頼りだぞ!」

スマホロトム「着信アリ! 着信アリ!」

ホップ「わわっ,はい,もしもし?」

ソニア「あ,ホップ? Wikipediaとか見ようとはしてないよね?」

ホップ「え!? ダメなのか?」

ソニア「ダメよ,Wikipediaって誰でも編集できるでしょ? メディアにはね,情報を発信するまでに専門家同士で厳密に内容をチェックしあうものと,誰でもかれでも適当なことが言えるものがあるの」

ホップ「はあ」

ソニア「研究で使える情報源は前者だけよ」

ホップ「えぇ,それは大変だぞ! ソニアに渡された本,解読すらできないぞ…」

ソニア「ロトムに歴史学用語集を入れておいたから,それ使ってね」

ホップ「本を読むために辞書使うのかよ」

ソニア「ズルしたら破門ね」ピッ

ホップ「これは大変なことになったぞ…,ウールー」

ウールー「め~」

ホップ「おっと! こんな時間だ」

ウールー「めー」

ホップ「ウールー,今日はユウリのエキシビションマッチだぞ!」ピッ

実況「さぁ,選手の入場が終わりました…」

ホップ「もう始まるぞ!」

実況「さぁ,チャンピオンは何を出してくるのか!? おぉ,これは…,いつも通り,ニャースだーー!! すかさず,キョダイマックス!!!」

ホップ「……」

実況「そして,ねこだましを基にしたキョダイコバンが,軽くヒット! そして,落ちた小判をすかさず集めているチャンピオン!」

ホップ「………」

実況「ニャースのキョダイコバン!!! 小判を拾うチャンピオン! いつもの光景のまま,チャンピオンの勝利です! そして,いつも通り,ボールガイのもとにまっしぐら! いつも通り,観客席からは万雷のブーイングだ!!」

ホップ「……ユウリもブーイングに耐えて頑張っているんだ」

ウールー「めめめ…」

ホップ「ライバルのオレも頑張らないとな!」

-一週間後-

ホップ「ソニア! 頑張って本読んだぞ! 関連文献までばっちりだぞ!」

ソニア「優秀じゃない! 正直,挫折すると思ってたわ…」

ホップ「ユウリの試合を見て元気づけられたんだ」

ソニア「え,あのクソ試合を見て…?」

ホップ「世の中には,ブーイングを受けても平気な顔で頑張っている人もいるんだと思ったら,本を読むくらいへっちゃらだぞ」

ソニア「あー,ね。それで,まだ解明されてない謎,見つかった?」

ホップ「見つかったぞ! それは…」

ホップ「他の地方じゃなくて,ガラル地方で世界最初の産業革命が起きた理由がまだ謎なんだぞ!」

ソニア「へー,くわしく,きいてもいい?」

ホップ「おう! 長くなるからな,読み飛ばしても多分平気だぞ」

そもそも,産業革命とは中心産業が農業から工業へと移り変わったことを指すんだ。
これは,ただ,たくさんものをつくれるようになったってわけじゃないんだ。
社会の仕組みも大きく変わっていったんだぞ!とにかく,すごいことってわけ。

工業,ものづくりが中心産業になるためには勝手に動いてくれる機械が必要なんだ。
勝手に動いてくれる機械ってのは,人やポケモンを動力源とせず石炭みたいな鉱物を動力源として動く機械みたいなやつな。

でも,機械が発明されたら,産業革命が起こるかっていうとそうでもない。
ものは工場でつくるんだけど,工場は機械の他にも働いてくれる人が必要なんだ。
昔は,みんな自分の土地で農業をして自給自足の生活をしていたから,土地を持たずにお給料をもらって工場で働いてくれる人は全然いなかったんだ。

ホップ「世界初の産業革命は250年くらい前にガラルで起こったんだぞ! 機械をつかってウールーの毛からタペストリーをいっぱいつくったんだ」

ソニア「うんうん」

ホップ「でも,ガラルで産業革命が起こったってことは,工場で働いてくれる人がいたってことだけど,その人たちがどこから来たのかが謎なんだぞ!」

ソニア「なかなか,面白そうね」

ホップ「ウールーの毛を加工するためにたくさん工場がつくられたんだなぁ」

ウールー「め~」

ソニア「さぁ,ホップ! まだ,分かってない謎を見つけたら,次はその謎を解くのよ! そしたら,立派な博士よ!」

ホップ「おう! 250年前,ガラルの工場で働いてくれた人はどこから来たのか? 頑張って調べるぞ!」

ソニア「頑張って!」

ホップ「ところで,どうやって調べればいいんだ?」

ソニア「そりゃあ,とりあえず,工場がいっぱいあるとこにでも行けば?」

ホップ「工場がいっぱいあるところ…,エンジンシティか! 行くぞ,ウールー」

ウールー「め~」

―エンジンシティ―

ホップ「来たぜ! エンジンシティ!」

スマホロトム「エンジンシティ,蒸気機関を利用して近代化を遂げた工業都市ー」

ホップ「来たはいいけど…,何すればいいか全然わからないぞ!」

ウールー「ぐめめ」

ホップ「とりあえず,工場で働いてる人に出身地でも聞いて回ろうか」

ウールー「め?」

ホップ「あ,あそこの汚い人とか工場で働いてそうだぞ! すいませーん」

労働者「ああン,なんだ? 小僧」

ホップ「出身ってどちらっすか?」

労働者「な,いきなり…,オレぁ,生粋のエンジンシティ育ちよ」

ホップ「え,じゃあ,あなたのお父さんも工場で働いてたんですか?」

労働者「ああ?馬鹿にしてンのか,てめェ! ローブシン,やっちまえ」

ローブシン「…ブシン」

ホップ「ひっ」

???「君達! なにをやってるんだ!?」

労働者「ケッ…,小僧,命拾いしたな」

ホップ「あ,ありがとうございます…,あ,あなたはカブさんじゃないですか」

カブ「やぁ,ホップくん,久しぶりだね」

―――

カブ「今日はどうしたんだい?」

ホップ「実は…,今から250年くらい前にエンジンシティの工場で働いていた人たちがどこから来たのか,知りたいんです」

カブ「また,すごいことが知りたいもんなんだねぇ」

ホップ「なんか,手掛かりとかってありませんか?」

カブ「うーん,僕はホウエンから来たからね,あんまり知らないなぁ」

ホップ「そうですか…」

カブ「そうだ! ジムリーダ権限を使えば,この町の人口推移のデータなら渡せるよ」

ホップ「ほんとですか? ほしいです!」

カブ「OK! Hey! ロトム! ドキュメント,極秘資料②,市民生活,人口動態のデータを取り出してくれ」

スマホロトム「けてー」

カブ「…はい,どうぞ」

ホップ「ははは…,職権乱用ですね」

カブ「この世の中,大事なのは人脈だからね」

ホップ「早速,データをチェックしてみます!」

カブ「うん,そうするといい」

ホップ「うーん…,このデータを見るとエンジンシティは300年前あたりから急激に人口が増えてますね…」

カブ「それって,特別な事なのかい?」

ホップ「いや,そういうわけではないんですけど…,人口が急激に増加するってことは外から人がたくさん入ってきたってことですよね?」

カブ「そうだね,生まれる人が増えたんなら,ゆるやかに人口は増加するだろうね」

ホップ「つまり,300年前,エンジンシティに引っ越してこなきゃいけない事情を抱えた人がたくさんいたってことなんですよね」

カブ「ふむ,エンジンシティに引っ越してきた人か・・・,もともとはブラッシータウン,ハロンタウン,ターフタウン,バウタウンあたりに住んでいた人たちだろうね」

ホップ「ターフタウンか…,なんか次に行くべきところが分かりました!」

カブ「ほんとかい? お役に立てたのならよかった」

ホップ「ありがとうございました!」

カブ「謎解き,応援しているよ」

ホップ「いくぞ! ウールー!」

ウールー「めー!」

―ターフタウン―

ホップ「やってきたぜ,ターフタウン!」

ウールー「めー」

スマホロトム「ターフタウン,段々畑の合間に家が並ぶすりばち状の町ー」

ホップ「おう! ハロンタウンと同じく,農業の町だぞ!」

ウールー「めめめ」

ホップ「うーん,でも,なんでだろう? なんか,ハロンタウンと景色が違うんだよなー」

ウールー「めーん」

ホップ「なんか,農地の面積がターフタウンの方がちっちゃい?」

ウールー「めえ?」

ホップ「っだー,考えててもらちがあかないぞ! ここは農家に聞き込み調査だ! ジムにいくぞ!」

―ターフタウンジム―

ホップ「と,いうわけでインタビューさせてください!」

ヤロー「ははは,協力できることなら協力するんだな~」

ホップ「この町で300年前くらいに大量に人が引っ越したりとか,そういうことってありませんかね?」

ヤロー「いや,聞いたことないんだな~」

ホップ「うーん,そうだよなぁ」

ヤロー「この町は住みやすいから,みんな出ていかないんだわ」

ホップ「なるほど…」

ヤロー「みんな,ワタシラガに愛情たっぷり注いで育てているんじゃ」

ウールー「めーん」

ホップ「ワタシラガに,ですか?」

ヤロー「ワタシラガがくれる綿毛は,集めると服の原料になるんだな~」

ホップ「綿毛?」

ヤロー「この町では,綿毛をいっぱい収穫してエンジンタウンに売るんだな」

ホップ「へー,ハロンタウンではウールーの毛をエンジンタウンに持ってくんですよ!」

ヤロー「同じ農業の町でも違うんだな~」

ホップ「ハロンタウンとターフタウンでは,育てているポケモンが違うのか…」

ヤロー「それって,大事なことなのかな?」

ホップ「いや,うーん,分からないですけど,なんかつながりそう…」

ヤロー「ま,気楽にどっしり考えるんだな~,農業は粘り腰なんじゃ! いざとなれば,答えはいつもポケモンが教えてくれるんだわ」

ホップ「答えはいつもポケモンが教えてくれる…か」

ホップ「答えを教えくれよー,マイバディ」

ウールー「めー♪」コロコロ

ホップ「ウールー,お前,ころがるの好きだよなぁ」

ウールー「めーん」

ホップ「ウールーとワタシラガ,転がるウールー,なんかちっちゃい気がするターフタウンの農地…,よし,ウールー! 帰るぞ! ハロンタウンに!」

ウールー「めー!」

ヤロー「次に行くべきところが決まったんだな~,頑張るんだな~」

ホップ「ヤローさん! ありがとうございました!」

―ハロンタウン―

ホップ「帰ってきたぜ! ハロンタウン!」

スマホロトム「ハロンタウン,昔から牧場を営みポケモンたちとともに暮らす町ー」

ホップ「やっぱり,ターフタウンと景色が少し違うんだよな」

ウールー「めーん」

ホップ「きっと,育てているポケモンが違うからなんだけど…」

ウールー「うーん」

ホップ「………!」

ウールー「め?」

ホップ「わかったぞ! ターフタウンは畑だけど,ハロンタウンは牧草地なんだ!」

ウールー「めー…」

ホップ「家に帰るぞ! 調査だ!」

―ホップの家―

ホップ「ママ! 聞きたいことがあるんだ!」

ママ「あら,おかえり」

ホップ「ママ! この町って,今はみんなウールー牧場だけど,300年前はどうなの? 畑とかなかったの!?」

ママ「え,どうしたのよ?」

ホップ「いいから,いいから!」

ママ「いやー,分かんないわね…」

ホップ「もー! なんでだよ」

ママ「まぁまぁ,でもハロンタウンとブラッシータウンの昔のことなら,マグノリア博士が資料を保管してるそうよ」

ホップ「先にそれ言ってよ!!! 行ってきます!」

ママ「あらあら…」

―博士の家―

ホップ「ごめんくださーい!」

ソニア「え,ホップじゃん,家に押しかけてまで私の指導を受けたいの?」

ホップ「どいてどいて! マグノリア博士に会いに来たんだぞ! なんか,つながりそうなんだ!」

ソニア「あ,ちょっ,勝手に入らないでよ!」

ホップ「博士ーー!! マグノリア博士!」

マグノリア「なんですか?騒々しい。老い先短いもののまどろみを邪魔してはいけませんよ」

ホップ「あ,ごめん…,でも博士! ハロンタウンの昔の地図とか保管してないんですか? そうだな,400年前の地図とか!!」

マグノリア「ありますが,どうしたんですか?」

ホップ「見せて見せて!」

マグノリア「ちょっとお待ちなさい」ガサガサ

マグノリア「400年前,350年前,300年前,250年前のハロンタウンの地図ですよ」

ホップ「どれどれ…? やっぱり!」

ソニア「もー,急に押しかけてうるさーい! で,どうなのよ?」

ホップ「見てくれよ,これ! 350年前まではハロンタウンも小麦とかワタシラガを育てるための畑だらけだったんだ!」

ソニア「うん,そうね」

ホップ「それが,300年前になると全部牧場になってるんだ!」

ソニア「それが?」

ホップ「牧場は畑よりも人手がいらないんだ! オレ,牧場の手伝いをしてるから分かるんだぞ!」

ソニア「いまいち,話が見えないんだけど…」

ホップ「牧場は牧羊犬のパルスワンさえいれば勝手にウールーを誘導してくれるんだぞ! 畑はいちいち肥料をまいたり,綿毛を収穫したり,人の手がかかるんだぞ!」

ソニア「だから,それがなに!?」

ホップ「だから,だから,畑が牧場に変わると人が余るんだぞ! 余った人は引っ越しをするんだぞ!」

ソニア「どこに?」

ホップ「どこに?…そりゃあ,エンジンシティにだぞ!」

ソニア「あー,ね」

ホップ「でも,なんで一気に畑が牧場に変わったんだ? それが分からないぞ!」

ソニア「タペストリーをつくるのに,ウールーの毛が必要になったんじゃない?」

ホップ「でも,こんなに一気に畑が牧場に変わるなんておかしいぞ! なにか理由があるはずなんだぞ!」

ウールー「めー」コロコロ

ホップ「………」

スマホロトム「ウールー。ひつじポケモン,ノーマルタイプー。争いを好まず敵から逃げるときは転がって移動するー。牧羊犬のパルスワンが来たときは全力で転がるー」

ウールー「めーん♪」コロコロコロ

ホップ「………」

ソニア「ちょっと,ウールー! 狭いとこで転がると危ないわよ!」

ウールー「め?」ゴンっ!
ウールー「めー!めー!」

ソニア「ほら,もー」

ホップ「…!!!」

ホップ「答えはいつもポケモンが教えてくれる!」

ソニア「?」

ホップ「ソニア! オレ,分かったぞ! 最後の1ピースがはまったんだ」

ソニア「おー,聞かせてほしいな」

ホップ「おう! ガラルで最初に産業革命が起こった理由! それは,ウールーがころがるからだぞ!!!!!」

ホップ「長くなるけど聞いてくれよな? 読み飛ばしても平気だぞ!」

ガラル地方の特産品と言えばタペストリー!
羊毛から作られる毛織物だぞ!

きっと,ハロンタウンの誰かがそこに目を付けたんだ,ウールーを育てれば儲かるって。
最初にウールー牧場が開かれたときには,おそらく面積も小さかったんだぞ!

ウールーはころがるのが大好きなんだぞ!
でも,ころがって移動すると前が見えない…
だから狭い牧場だとウールーは柵や壁にぶつかって,ケガをしてしまうんだぞ!
それを防ぐためには牧場を広くするしかない!

きっと,ウールーの毛を売ってお金持ちになった牧場主は周りの畑作地を買い始めたんだ。
そうすると,ウールーがころがってもケガしないようになった。
ウールーがケガをしないと,牧場主はさらにお金持ちになって土地を買いまくったんだ!

その結果,ハロンタウンは50年で牧場の町になったんだぞ。
でも,畑が牧場に変わると問題もあったんだ。
牧場は畑ほど人手がいらないんだ。
だから,土地を売った人はハロンタウンにとどまって牧場で働き始めたわけではなかったんだ。
絶対に余っちゃう人がいたんだぞ!

きっと,その人たちがエンジンシティに引っ越したんだ。
そして,エンジンシティで蒸気機関が発明されて工場ができると,そこで働いたんだぞ。

ウールーはガラル原産のポケモンだぞ。
だから,ウールーを育てていたのはガラルだけ。
ウールーのおかげで工場で働いてくれる人が出てきたんだ。
機械制の工場とそこで働いてくれる人たち,その二つが世界で最初に揃ったのがエンジンシティだったんだぞ!
だから,世界で最初の産業革命がガラルで起こったんだ!!!

ホップ「どうだ? 最強ポケモン博士,ホップ様の完璧な論考は!」

ソニア「すばらしいわ」

ホップ「へへーん,これでオレもポケモン博士!」

ソニア「あ,それは無理よ」

ホップ「なんで?」

ソニア「新しく何かを見つけても,その新発見が正しくて,価値あるものだっていうのをみんなに認めてもらわなきゃいけないの」

ホップ「どうやって,認めてもらうんだ?」

ソニア「まずは学会発表,そしてその後に科学論文として学術雑誌に投稿するのよ」

ホップ「えー」

ソニア「博士号取得までの道のりの10分の1ってところかしらね,今は」

ホップ「そ,そんなぁ」

ウールー「ぐめめ…」

マグノリア「まぁまぁ,前途洋洋な若者が自分の道を一歩進んだのです,今日はお祝いにしましょう! ホップ,食べていきますよね」

ホップ「おう!」

ソニア「ふふふ」

ホップ「ソニア! オレ,研究をしてみて分かったんだぞ! 研究は楽しいって」

ソニア「お! 博士の素質アリ,って感じねー」

ホップ「おう! オレはこの道で最強になるんだぞ!!!」

おわりです。

>>6-51 が内容になっています。
>>1-2 は無視していただけると嬉しいです。 

はじめてSSを書かせていただいて,分かったことがあります。

それはSSと科学論文には共通点と相違点がひとつずつあるということです。

共通点は,どちらも読者が読みやすいように意識されているということ
相違点は,読者と筆者の目的を一致させることができないということ

科学論文よりもSSや小説を書く方がおそらく難しいでしょう。
いつも楽しませてもらっている皆さまには敬意を表するばかりであります!

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