人質「え、私の身代金10万円なんですか!?」誘拐犯「そうだ」 (35)

人質「え、本気で言ってるんですか?」

誘拐犯「ああ、本気だ。今のうちに身代金が払われなかった時の覚悟をしておくんだな」


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人質「いえ、10万円は貰えますよ」

誘拐犯「ほう、お前は親のことを随分と信用しているんだなあ」

人質「いやいや、そういうことじゃなくて。何もしなくても10万円は貰えるんですって」

誘拐犯「……お前はなにをいっているんだ?何もしなくて10万円が貰えたらこんなことするわけないだろうが」

人質「あの……もしかしてニュース見てないんですか?」

誘拐犯「家にテレビはない。受信料払ってないのにテレビ見たらNHKに訴えられるからな」

人質「人を誘拐したほうがもっと重い罪で訴えられるんですが。それに私の身代金少なすぎませんか?私の命の価値10万円ですか?」

誘拐犯「ちっ、これだからガキは。あのなあコロナでみんな懐具合が厳しいんだよ。たくさん要求したら可哀想だろうが」

人質「人質にされた私を可哀想と思えない不思議」

誘拐犯「とにかく、さっそく身代金を要求する。おい、お前の家族に電話をかけろ。かけたらすぐ俺に代われ。痛い目にあいたくなかったらな」

人質「……うぅ。はい、母に繋げました」


母『もしもし、今どこにいるの?早く帰って来なさい』

誘拐犯「もしもし、こちら誘拐犯だ。おたくの娘は預かった」


母『・・・・・・!ちょっと、あなた誰!娘のスマホでしょ。ふざけないで』

誘拐犯「ふざけてはいない。娘は誘拐されたんだよ。不要不急の外出をしたばっかりになぁ」


母『娘は無事なの?声を聞かせて!』

誘拐犯「いいだろう。おい、お前のママが声を聞きたいってよ。余計なことを言ったら…わかってるだろうなあ」

人質「はい・・・・・・もしもし、お母さん?」


母『大丈夫?安心して、お母さんが必ず助けてあげるからね』

人質「あのね、お母さん。色々言いたいことはあるんだけど、この人、ニュース見てないよ!!」

誘拐犯「はい、それまで!!」

母『え、なに!?なんなの?なんて言ったの?ニュース見てないって聞こえた気がするけど」

誘拐犯「おい、余計なことを言うなと言っただろ!」

人質「うぅ・・・・・・ごめんなさい」

母『あなた、娘にひどいことしてないでしょうね!』

誘拐犯「するはずもない。俺は知事の言いつけを守って人質から2m離れてるし、時々換気もしている。」

誘拐犯「ふざけてなんかいない。いたって真面目だ。コロナは怖いからなあ。だがな、おまえこそ真面目に教育してるのか?」

母『どういうこと?』

誘拐犯「この娘をさらった時、俺がどうしたと思う?」

母『やめて、聞きたくない。どうせ耳を覆いたくなることをしたんでしょ!』

誘拐犯「娘にマスク2枚売ってやるって言ったんだ。そしたらこの娘、のこのこついて来たぞ。もうすぐ無料でもらえるのになあ。ちゃんとニュース見てないんじゃないのか?」

母『よ、要求を早くいいなさい!』

誘拐犯「くく、いいだろう。俺の要求は金だ」

母『・・・金。いいわ、いくら払えばいいの?この娘の命にはかえられないもの。言い値で払うわ』


誘拐犯「聞いて驚くな。10万円だ」

母『…え?……え??ちょっと、聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?』

誘拐犯「10万円だ」

母『え、やっぱり10万円なの?』


誘拐犯「ああ、そうだ。優しい俺がまけにまけてやった結果だ。だが支払いを拒否すればどうなるかわかっているだろうなあ」

母『そこまでまけたなら、もう少し待てなかったの?』


誘拐犯「支払いの遅延は認めない。その時は、お前のかわいい娘がー」

母『いえ、そうじゃなくて誘拐をあと2ヶ月ほど待てば10万円がなにもしなくても貰えたのにって話よ』


誘拐犯「やれやれ、あの娘にしてこの母ありか。10万円が無償でもらえるわけないだろうが。」

母『貰えるのよ。あなたニュース見てないの?だからはやくこんな馬鹿なことやめなさい。この誘拐はこの世でもっともとる必要のないリスクよ』

誘拐「無償で10万円貰えるなら誘拐なんてするわけないだろうが、なにを言っているんだ?」

母『はあ、もういいわ。とにかく早く娘を解放すること。いいわね?』

誘拐犯「おい、ちょっと・・・・・・くそ、切れた。……おい、おまえの命の値段は0円だってよ。泣けちまうなあ」

人質「交渉が失敗したのを私のせいにしないでください」

人質「でもそろそろ気付いていいんじゃないですか?貰えるんですって。10万円」

誘拐犯「いま、貰えないって言われただろうが」

人質「そうじゃないですって、母も私と同じこと言ってたじゃないですか。口裏も合わせていないのに。これは10万円が無償で貰える証拠ですよ」

誘拐犯「確かに、そこが不思議だ。口裏を合わせる隙もなかったし、2人とも嘘をついているようには見えなかった」

人質「そうです。そしてそこから導き出される結論はひとつですよね?」

誘拐犯「ああ、わかったぞ。そうか、そう言うことだったんだ!俺はなんてミスを・・・・・・」

人質「わかったら、早く私を解放してください。今回のことは見逃してあげてもー」

誘拐犯「こいつら集団幻想を見ているのか!新型のコロナのせいで!!」

人質「え」

誘拐犯「俺はなんて奴と濃厚接触してしまったんだ!?早く検査を受けないと!」

人質「ちが、」

誘拐犯「でも検査機関はどこも予約でいっぱいか?いや、警察病院ならもしかしたら…!」

誘拐犯「よし、今から自首して検査だ。こんな時にわざわざ誘拐して正解だったぜ。それじゃあお前も早く検査受けろよ、それじゃあ!」

人質「ちょっと、だから、なんでそうなるんですかー!」

以上です。
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