マリィ「また来たの」ユウリ「また来たよ」 (27)

~スパイクタウンのポケセン前~


カァー    カァー


モルペコ「うらら♪」

ユウリ「モルペコも久しぶりー」

モルペコ「うら~」

マリィ「あんた昨日もここに来たじゃない」

ユウリ「マリィだって昨日もここにいたじゃない。暇なの?」

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マリィ「暇なわけなかと。ジムリーダーとしての務めもあるし。エール団の皆と町おこしのためにイベント開催とか、企業誘致も働きかけてるけん」

ユウリ「へぇ、マリィもいろいろやってるんだ。忙しいのに、私の相手は毎日してくれるわけ?」

マリィ「当然たい。ジムリーダーとして、鍛錬は何より大事。チャンピオンと毎日バトルできるなら、たとえ負けたっておつりがくる!」

ユウリ「私もいろんなポケモンでマリィとバトルしたいしね。おつりもろとも『おまもりこばん』で根こそぎ掻っさらっちゃうよ!」キラリ


ユウリ・マリィ「「勝負!」」ポンポン!!

ユウリ「エルフーン!」

エルフーン「るっふーん」

マリィ「オーロンゲ!」

オーロンゲ「ロン毛ェェ!」

ユウリ「まずは植え付けて削りと回復をコンボしちゃおうか。“やどりぎのタネ”!」

エルフーン「ふんっ」ピュ!ピュ!ピュ!


ポトポトポト…


オーロンゲ「ロン?」


ユウリ「!……種が発芽しない?」

マリィ「わかっとーよ。そのエルフーン、特性は『いたずらごころ』やね。変化技で先手取ったつもりやろうけど、当てが外れたね」

ユウリ「そうか。あくタイプ相手だと失敗する、ってことね」

オーロンゲ「!!!」ムキムキムキ

マリィ「オーロンゲはその間に“ビルドアップ”してるけん! 食らうばい! “ソウルクラッシュ”」


ドゴォ!!


オーロンゲ「ニヤ」

エルフーン?「」ガクッ

ユウリ「……」

マリィ「これは効いたんと違う?」

ユウリ「そうだね、結構効いたかも。ただし、本物のエルフーンに当たっていればの話だけどね!」

エルフーン「ふーふー♪」

マリィ「!? いつの間に移動して」


モルペコ「うらら!」クイクイ


エルフーン?「~~~」ユラユラ

マリィ「違う! いま攻撃を加えたのはエルフーンの姿をしたエネルギーの塊。“みがわり”やね!」

ユウリ「あくタイプの『相手』に向ける変化技は無効でも、『自分』に向ける変化技なら問題ないようね」

マリィ「ち! オーロンゲ、本体に“ソウルクラッシュ”!」

オーロンゲ「ロン毛ェ!」ドシュ!!

エルフーン「えーふーん!」モコモコモコ

マリィ「あんま効いとらん……これは“コットンガード”?」

ユウリ「“みがわり”に頑張ってもらっている間に守りを固めておいたよ」

エルフーン「もぐもぐ」

ユウリ「削られた分は<たべのこし>で回復してっと」

マリィ「ッ」

ユウリ「今日は来るのが遅かったから、もう日も暮れちゃうね――今夜は満月見れるみたいだよ」

マリィ「満月……あっ」


ユウリ「エルフーン。月に代わっておしおきしちゃえっ」

エルフーン「ふぅぅぅ――!」コォォォォ


マリィ「オーロンゲ!」

オーロンゲ「オーゲッ!」ムキムキムキムキ


ユウリ「“ムーンフォース”!!」


    カッ


\ドォォォォォォォン!!/

ユウリ「やったかな?」

エルフーン「ふんふんっ」


マリィ「なめんといて」

オーロンゲ「……ロン毛ッ……ブツブツ」シュー


ユウリ「んー。特攻下げられたし、“ビルドアップ”で防御も上がってたもんね。じゃあもう一発」

エルフーン「える、える!」ブンブン

ユウリ「? どうしたの」

マリィ「“いちゃもん”つけたからね、続けては出させへんよ。それに」

オーロンゲ「もぐもぐ」

マリィ「特性『おみとおし』で、エルフーンが<たべのこし>を持っとることは分かってた」

ユウリ「耐久勝負と見てオーロンゲにも<たべのこし>を持たせてたってわけね」

マリィ「まだまだ勝負はこれからじゃけん!」

ユウリ「望むところよ!」


――――――
――――

~ワイルドエリア・ポケモンキャンプ~

インテレオン「……」パタパタ

マルヤクデ「じゅーじゅー」

コトコト

ユウリ「うんうん、いい感じに煮立ってきた。マルヤクデ、火加減に気をつけて。インテレオン、もうあおがないで大丈夫だよ」

モルペコ「うらら」ジュルリ

マリィ「ねぇ、ユウリ」

ユウリ「ん、何~」

マリィ「どうしてお金払う代わりに、あたしをキャンプに誘ったん?」

ユウリ「決まってるじゃない、マリィに私の特製カレー食べてもらいたかったからだよ」

マリィ「カレー、よく作るの?」

ユウリ「ここんとこ毎日かな」

マリィ「え、毎日……?」

ユウリ「さっきマリィに『暇なの?』って聞いたじゃん。私は正直、暇なんだよね」

マリィ「暇って……。ユウリはチャンピオンなんだから、やることなんてたくさん――」

ユウリ「そりゃ、チャンピオンになってからはメディア出演とか新しい服を買うためのお金稼ぎとかお金稼ぎとかお金稼ぎとかしてたけどね」

マリィ「ほとんどお金ばっかじゃないの」

ユウリ「だって~いろいろ欲しいんだもん。……でもさ」

マリィ「ん?」

ユウリ「ふと思ったの。このまま頑張って1億円くらい貯めて、ガラル中のすべての服を買って満足したとしても、その後に何が残るんだろって」

マリィ「ユウリ」

ユウリ「服の話だけじゃない。なかなか見えないんだよね、これから私はどうしたいのかってこと」

ユウリ「マリィはネズさんからジムを引き継いで、町のためにも頑張ろうってなってるでしょ」

ユウリ「ホップは研究者になるんだーって、ソニアさんのとこで勉強が忙しいみたいだし」

ユウリ「ビートも何だかんだで一皮剥けてピンクになったし、ジムリーダーになって鍛えてるみたい」

マリィ「……」

ユウリ「みんな、目標に向けて頑張ってるのにね。私もチャンピオンになるまでは、あれよあれよといろいろあって」

ユウリ「半分夢でも見てるような出来事もたくさんあったけど、全力で駆け抜けてきた」

ユウリ「ちょっと、あの頃が懐かしいくらい。夢に向かって頑張ってる時がいちばん楽しくて」


ユウリ「ムゲンダイな夢のあとの何もない日常は、何だかカラッポになっちゃったみたいで……むなしいんだなって」


マリィ「ユウリ、こっち向いて」

ユウリ「なに?」クルッ

レパルダス「にゃっ(“ねこだまし”)」パァン!!

ユウリ「わひゃっ!!?」

マリィ「まったく」

ユウリ「な、何するのよいきなり~! びっくりするじゃない」

マリィ「目を覚ませって意味」

ユウリ「むしろひるんでつむっちゃうよ」

マリィ「あんたね。チャンピオンになったからって天狗になってるんじゃないわよ」

マリィ「チャンピオンになったんなら次は防衛戦でその座を守ることを目標にすればいいし」

マリィ「他の地方のチャンピオンや四天王とか、実力者と戦って勝つことを目標にしてもいい」

マリィ「全然別の、新しい目標を持って頑張ってもいいと思う。それこそ、カレーが好きならレシピを増やしてカレーマスター目指せばいいし」

マリィ「さっきのバトルだって、あたしは全力で戦って、負けちゃったけど凄く楽しかったけん……なのに、そげな言い方」

ユウリ「マリィ……」

マリィ「マリィの一番の目標はユウリを倒して次のチャンピオンになることやのに! それなのに、肝心のユウリがそんな気持ちじゃ悔しか……納得いかん。……だから」

ユウリ「ありがとう、マリィ」

ユウリ「何かすっきりした。いろいろな気持ちが混ぜこぜになって、それでもなかなかね、皆忙しそうだから話できなかったんだ」

ユウリ「私、誰かに聞いてほしかったんだ。それで、『何言ってんだお前!』って笑い飛ばしてほしかった」

ユウリ「……でも、誰かってのは誰でもいいんじゃなくて」

ユウリ「初めて会った時から今になっても、ずっと変わらずに私と会ってバトルしてくれる貴女にね」

マリィ「ユウリ……」


モルペコ「うらら!(まごころ注入)」コトコト


ユウリ「あ、カレー! できたみたいだね。モルペコが最後の仕上げをしてくれたんだ。ありがとう」

インテレオン「……」クイクイ

マルヤクデ「やくでぇ~」ニコニコ

ユウリ「みんなもお手伝いごくろうさま。じゃあ、みんなでごはんにしよっか! ムゲンダイナたちも出ておいで」



ォォォォォォォォォォォ……



マリィ(ユウリ。あんたさっき、満足した後に何が残るのかって話をしたやろ)

マリィ(何も残らないわけがなか。あんたを慕って大きく育ったポケモンたちが、あんたのために全力でバトルする……それが何よりの証ったい)


ユウリ「ほら、マリィもみんな出して! 一緒に食べよ」

マリィ「よかよ」にこっ


                                              (了)

とりあえず二人でカレーを食べる話が書きたかったんだ

>>8
よく考えたらビルドアップで防御上げても、特殊技のムーンフォースのダメージを軽減できないか……
まあバトルはおまけなんで許して

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