艦隊管理職トネガワ (131)

中間管理職トネガワ×艦これのSSです。
一話形式でネタが尽きるまでやっていくつもり。
よろしくお願いします。


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利根川「会長、お呼びでしょうか?」

兵藤「来たか利根川。知っておるか?何やら最近、物騒な輩が海で暴れておるらしい・・・・」

利根川「はっ!存じ上げております・・・・!世間では深海棲艦と言われており、艦娘という生物兵器でなければ対処ができないとか・・・・・・」

兵藤「うむ・・・・。我が帝愛傘下、黒金海運の船もいくつかやられておるらしい・・・・!全く、気に食わん輩だ・・・・・・!」ギリギリ

兵藤「利根川、ワシがこう言えば、後は解るな?」

利根川「はっ!直ちに極秘裏に海軍と連携を取り、安全な航海を」

兵藤「艦娘だ!直ちにワシらも艦娘、及び鎮守府の用意をするぞ・・・・・・!」

利根川(えっ・・・・!?鎮・・・・守・・・・府・・・・?)

兵藤「お前にはしばらく、帝愛直属の艦娘の指揮をとってもらう・・・・・・!世では提督と言われてるらしいが、まあそのポジションじゃな・・・・!」

利根川「て、提督!?わ、私がですか・・・・!?」

兵藤「んん・・・・?まさか・・・・嫌なのか・・・・?」

利根川「め、滅相もございません・・・・!ありがたきお言葉・・・・!」

兵藤「カカカッ!頼んだぞ、利根川提督・・・・!」バニッ・・ バニッ・・

利根川(ぐ・・・・!また妙な事に・・・・・・!)

―数週間後・とある県境の鎮守府―

利根川「ふう、やっと到着したか‥‥」

山崎「ここが帝愛の鎮守府ですか。前に潰された億兆荘にどこか似てますね」

利根川「うむ‥‥。思えばあれもなぜ取り壊したのか‥‥。会長の行動は解せぬことが多い‥‥‥」

山崎「しかし、凄いですね会長は。海軍保有の艦娘を帝愛の私兵として用意するなんて‥‥」

利根川「会長は、軍や政治家にも顔が利くからな‥‥。海軍からそのような施設や兵器を極秘裏で取引するのも容易なのだろう‥‥‥」

利根川(しかし、なぜワシが鎮守府にいる提督達の真似事など‥‥。まあ、会長の無茶な命令は今に始まったことではないが‥‥‥)

山崎「では行きましょうか。既に艦娘は用意されているんでしたよね?」スタスタ

利根川「ああ。と言っても、殆どが駆逐艦らしいがな‥‥」スタスタ

―執務室―


大淀「お待ちしておりました、利根川提督」

山崎「えっと、利根川先生、この方は?」

利根川「大淀型、1番艦の軽巡洋艦、大淀だ。しばらく秘書艦として動いてもらうことになった」

大淀「よろしくお願いします」

山崎「あ、どうも。利根川先生の部下の山崎と申します。しばらくは先生のサポートとして、ここで働きます‥‥!」ペコリ

山崎(艦娘は生物兵器って聞いてたけど、こうしてみると普通の女の子って感じだなぁ‥‥)

利根川「クク‥‥驚いたか‥‥?そう、艦娘と言っても見た目はそこらの少女と変わらん‥‥‥!」

大淀「ふふ、もっと禍々しい物を想像してましたか?」

山崎「い、いやいや!そんな事はありません‥‥!」

利根川「さて、早速だがこの鎮守府にいる艦娘を会議室に集めてくれ。お互い自己紹介が必要だからな‥‥」

大淀「了解しました。会議の開始時刻はどうしますか?今からですと、ヒトヒトマルマルがよさそうですが‥‥」

利根川「15分後が11時‥‥いや、ヒトヒトマルマルか。ああ、それでいい‥‥‥!」

大淀「了解しました。では私は皆さんに声をかけてきますね」バタン

山崎「あの、利根川先生‥‥。ヒトヒトマルマルといのは‥‥?」

利根川「海軍では時刻を伝えるときに0をマル。1をヒト。2をフタ‥‥というように言い換えて伝えるのだ‥‥」

山崎「はぁ~!だから11時がヒトヒトマルマルってことですか。しかしまた何故‥‥‥?」

利根川「周りが騒がしい時や無線が傍受し難い時があるだろう?その時に、聞き間違えないためだ。まあ、ワシも使うのはこれが初めてだがな‥‥」

山崎「ああ、そういえば飛行機とかも聞き間違えで事故が起きたとかで、言い方のマニュアルがあるんでしたっけ。なるほどなぁ‥‥!」

利根川「関心しとらんで、ワシらも会議室に行くぞ。荷物はここに置いといていい。それと山崎、お前も時刻の伝え方はちゃんと覚えておけ‥‥!」

山崎「あ、そうですね‥‥」


―第1会議室―

山崎「と、利根川先生‥‥!ひょっとして彼女達が駆逐艦ですか?」

利根川「ああ‥‥。話には聞いていたが、本当に小学生のようだな‥‥」

明石「あ、提督。お疲れ様です!」

利根川「ん?ああ、明石か」

山崎「この方は‥‥?」

利根川「明石型1番艦、工作艦の明石だ。こいつと大淀だけは、先に帝愛で顔を合わせている」

明石「さっそく作戦会議ですか?」

利根川「いや、まずは自己紹介だ。ワシは覚えなければならんからな‥‥!全ての艦娘、その型式や名前を‥‥!」

山崎「‥‥」

利根川「ん‥‥?どうした山崎」

山崎「い、いえ、その‥‥」

山崎(自己紹介、そして名前の記憶‥‥。利根川先生、大丈夫か‥‥?)

利根川「‥‥なるほど、お前の心配もわかる。自己紹介‥‥名前‥‥」

利根川「この二つの符号が意味するものは、とどのつまり‥‥『この先困難が待ち受けている‥‥!』そう言いたいんだろう‥‥?」

山崎「は、はい‥‥!」

利根川「しかし、今回は問題あるまい‥‥!画一的で無個性な黒服達と違い、艦娘は個性に溢れているそうだからな‥‥!」

山崎「は、はぁ‥‥」

利根川「現に、明石や大淀の名前はすぐに覚えられた。名前が覚えやすく、かつ個性に溢れてる‥‥!クク‥‥心配あるまい‥‥!」

山崎「しかし、その‥‥水を差すわけではありませんが、服装とか似てませんか‥‥?」

利根川「あっ‥‥‥?」


山崎の指摘通り、会議室に集められた艦娘達の服装は、酷似している‥‥!

しかし、それも当然‥‥!
利根川の鎮守府に集められた艦娘は姉妹艦が多かった‥‥。

艦娘は、姉妹艦同士では、服装や艤装が酷似している事もあり、
それはつまり、帝愛の規定である黒服のスーツに近いものがあった‥‥!
実際には黒服のスーツとは似ても似つかないが、利根川の目にはそう映る。
映ってしまう‥‥!悪魔の如く‥‥!


利根川(うっ‥‥‥!た、確かに似ている‥‥‥!)ゾッ


立ち込める暗雲‥‥!
あろう事か、利根川は気づいてしまった‥‥!
いや、山崎によって気づかされてしまった‥‥!


利根川(ぐっ‥‥!バカ‥‥!言わなければ、気づかなかったものを‥‥!山崎め、余計な事を‥‥!)

大淀「提督、そろそろヒトヒトマルマルです。鎮守府にいる艦娘は全員揃いました」

利根川「あ、ああ‥‥。ご苦労‥‥!」

利根川(と、とにかく記憶‥‥!記憶だ‥‥‥!艦娘をぞんざいに扱うことなどできんからな‥‥!)

―ヒトヒトマルマル 第1会議室―

利根川「えー‥‥。と‥‥言うわけでワシがお前達の提督となった利根川だ‥‥!」

利根川「お前らの役目は、民間船を襲っている深海棲艦を退治する事が主となるだろう‥‥‥」

利根川「本来、この会議室は作戦会議に使うものだが、今日はまず自己紹介からだ‥‥・!」

利根川「言うまでもなく、お前らは深海棲艦を倒すための重要な鍵だ‥‥。よってぞんざいな扱いはできん‥‥」

利根川「故に、ワシは覚えなければならん‥‥‥!お前らの艦名、及び型式等々を‥‥‥!」

利根川「そのための自己紹介‥‥‥!さあ、始めろ!まずは、お前からだ!型式や艦名、趣味などを順ぐりに‥‥‥!」

朝潮「は、はい!」ガタッ

朝潮「朝潮型、1番艦の朝潮です!趣味は釣りです!よろしくお願いします、司令官!」ビシッ

山崎(真面目そうな子だなぁ‥‥‥)

利根川「お前は朝潮型。それも1番艦の朝潮だな」

朝潮「い、以上でよろしいでしょうか‥‥?」

利根川「ああ、構わん。よし、次‥‥!」

大潮「朝潮型駆逐艦の2番艦、大潮です!」

山崎(ぐっ‥‥。やはり来た‥‥!今回は『潮』被りか‥‥!)

利根川「よし、お前は朝潮型2番艦の大潮だな‥‥!」

大潮「はい!趣味は朝潮姉さんと同じく釣りです!アゲアゲで参ります!」

山崎「し、しかも同じ趣味‥‥!」ガタッ

大潮「わぁっ!?」ビクッ

利根川「山崎‥‥!」

山崎「す、すみません‥‥!」

利根川「驚かせてすまんな。お前は大潮。趣味は釣りだな‥‥?」

大潮「は、はい」

山崎(す、凄い‥‥!利根川先生、全く動揺していない‥‥!これは今回、いけるかも‥‥!)

否‥‥!
一見、余裕綽々に見えるが‥‥利根川苦しんでいた‥‥‥!
今回も‥‥!

名前で苦しむのは、利根川の宿命なのか‥‥!
余裕の表情の裏で苦痛に満ちていた‥‥‥!


利根川(ぐっ‥‥!またこのパターンか!なぜワシはいつも名前で悩まされる事が多い‥‥!)

利根川(朝潮ときて大潮‥‥!紛らわしい‥‥!というか‥‥アゲアゲってなんだ、アゲアゲって‥‥!)

利根川(ただでさえ色々と覚えなければならんと言うのに、余計な情報を付け足すな‥‥‥!)

利根川(いや、落ち着け‥‥。こいつらは黒服と違って容姿が異なる‥‥。その点では同じような名前でも、黒服よりは覚えやすかろう‥‥‥)

利根川(服装は似たり寄ったりだが、ストレートの黒髪が朝潮‥‥!髪を縛ってる藤色っぽい方が大潮‥‥!いけるっ‥‥!)

利根川「よし、次っ‥‥!」

荒潮「朝潮型、4番艦の荒潮です~。趣味は釣りよぉ~。よろしくね?うふふっ」

山崎(ぐっ‥‥‥また『潮』被りか‥‥!しかもまた釣り‥‥‥!)

山崎(しかし、今回の利根川先生なら‥‥!)チラッ

利根川「あ、荒潮‥‥ぐぐっ‥‥荒潮‥‥‥!」ブツブツ

山崎(あ‥‥‥)

利根川「お、お前は、朝潮型4番艦の荒潮だな!しゅ、趣味は釣り‥‥!」


山崎「と、利根川先生‥‥だ、大丈夫ですか‥‥‥?」

利根川「クク‥‥どうやら自己紹介で楽はさせてもらえんらしい‥‥。が‥‥!大丈夫だ‥‥‥」ギリギリ

利根川(くそっ‥‥!どいつもこいつも潮、潮、潮っ‥‥!まるで潮干狩り‥‥!潮干狩りに来た小学生っ‥‥‥!)

利根川(まあいい‥‥少し茶色がかったロングヘアが荒潮‥‥!)

満潮「私は朝潮型、3番艦の満潮よ。趣味は釣り。以上」

利根川「がっ‥‥!」ビクッ

山崎(あちゃ‥‥‥)

利根川「えーと、み、満潮‥‥満潮だな‥‥?お前は‥‥‥!」

満潮「何度も言わせないで!朝潮型、3番艦の満潮よ!ふんっ!」

山崎(うわっ、凄いはねっかえり娘って感じだな‥‥‥。大丈夫か、利根川先生‥‥‥?)

利根川(ぐっ‥‥!何だこいつの態度は‥‥!仮にもワシは上司‥‥とどのつまり上官だというのに‥‥‥!)

利根川(いや、落ち着け‥‥‥!今は覚えることに集中するんだ‥‥‥!)

利根川「満潮‥‥。朝潮型の3番艦‥‥趣味は釣り‥‥よし‥‥‥!」

利根川「少し茶色がかったロングヘアが荒潮‥‥!フレンチクルーラーが満潮‥‥!」ブツ‥ブツ‥

山崎「フ、フレンチクルーラー‥‥!」ププ

満潮「ちょっと!フレンチクルーラーってどういう意味よ!」バンッ

利根川「がっ‥‥・!バ、バカ‥‥!急に大声を出すな‥‥‥!」

朝潮「満潮、だめよ」

満潮「ぐぬぬ‥‥‥!」

利根川(くそ、フレンチクルーラーめ‥‥!奴の態度はどうにかさせんとな‥‥‥!)

利根川「フレンチ‥‥フレンチクルーラー‥‥」ブツブツ

山崎「利根川先生、満潮です‥‥!み・ち・し・お‥‥‥!」ヒソヒソ

利根川「よし、次‥‥!」

浦風「うちの番じゃね。陽炎型、11番艦の浦風じゃ!趣味は‥‥‥す、すまんのう、うちも釣りじゃ」

利根川「!!」パァァ

利根川「浦風!お前は陽炎型11番艦の浦風だな!浦風‥‥よしっ!」ビシッ

浦風「や、やけに嬉しそうじゃねえ‥‥」

利根川(よしっ‥‥!よしっ‥‥!どうやら、ややこしいのは朝潮型だけのようだ‥‥!)

利根川(確か陽炎型の1番艦が陽炎、2番艦が不知火だったはず‥‥!これなら覚えやすい‥‥!)

利根川(全ての艦を調べたわけじゃないが、いくらなんでも朝潮型ほどややこしくはあるまい‥‥!)

利根川「よし、次だ‥‥!」ビクッ

利根川(あ‥‥?なんだ今の悪寒‥‥‥!?まさか‥‥!)

谷風「がってん!陽炎型、14番艦の谷風さんだよ~!趣味は釣り‥‥」

利根川「ああ~!?」ガタッ

谷風「ア゛ッ!?」ビクッ

山崎「と、利根川先生‥‥!落ち着いてください‥‥‥!」

利根川「ぐぐっ‥‥!い、いや‥‥た、谷‥‥風‥‥谷風だな!」ギリギリ

谷風「あ、あい‥‥」

谷風(なんか谷風さん、めっちゃ睨まれてるんですけど!?)

利根川「いるのか‥‥?」

谷風「ふぇ?」

利根川「他に『風』のつく艦娘がいるのかと聞いている!」バンッ

谷風「ひえっ!?」

利根川「他に『風』のつく艦娘はいるのか‥‥!今すぐ名乗り出ろ‥‥‥!」

浜風「す、すみません!私も『風』がつきます。陽炎型、13番艦の浜風です‥‥!しゅ、趣味はえっと‥‥つ、釣り‥‥です‥‥」

利根川「ぐっ‥‥!」

磯風「私も『風』がつく。陽炎型駆逐艦12番艦、磯風だ。趣味は釣りだ」

利根川「んがっ‥‥!?」

雪風「し、しれえ‥‥実は私も『風』が‥‥。陽炎型、8番艦の雪風です‥‥。趣味は‥‥釣りです」

利根川「そ、そうか‥‥ふ、ふふ‥‥ほ、ほ、他にはいるか‥‥?」ガタガタ

萩風「は、萩風です。陽炎型の17番艦です。趣味はつ、釣りです!ご、ごめんなさい!!」

利根川「ほ、ほう‥‥」ガタガタ

舞風「陽炎型、18番艦の舞風よ。趣味は‥‥お、怒らないでね?あたしも釣りだよ!」

利根川「は、はは‥‥」ガタガタ

山風「あ、あたしは山風‥‥。釣り‥‥大好き‥‥‥」

利根川「」クラッ

山崎「と、利根川先生‥‥!どうしましょう?今日はもう止めておきますか‥‥!?」ユサユサ

利根川「い、いや‥‥。だ、大丈夫‥‥大丈夫だ‥‥‥!」

山崎「し、しかし‥‥!こうも『風』が被っては‥‥!」

利根川「なめるなっ‥‥‥!山崎っ‥‥‥!」

山崎「ひえっ‥‥!」ビクッ

利根川「ここに居る艦娘は、明石と大淀を抜かせばたかが13人‥‥!」ギリギリ

利根川「艦の型、艦名、そして何番艦か‥‥!その程度だ‥‥!今日で全て覚えてみせる‥‥!」ギリギリギリ

利根川「それにワシは、あの時の山田ラッシュを乗り越えた‥‥!この程度、へでもない‥‥‥!」ギリギリギリギリギリギリ

山崎(でもその代わり、一時期、オレ達の名前を忘れてたよなぁ‥‥)

利根川「それに、幸い今のラッシュで残り一人だ‥‥!」

利根川(浦風が青いフレンチクルーラー‥‥。トイレの花子さんのようなおかっぱが谷風‥‥)ブツ‥ブツ‥

利根川(浜風は目が片方隠れている‥‥!磯風は黒髪ロングヘアー‥‥!)ブツ‥ブツ‥

利根川(荻風が紫色のサイドテール‥‥!舞風は派手な金髪‥‥!こいつはポニーテールか‥‥?)ブツ‥ブツ‥

利根川(ビーバーみたいなのが雪風‥‥こいつはわかりやすい‥‥!緑髪でリボンをしているのが山風‥‥!)ブツ‥ブツ‥

利根川「よし、無個性の黒服よりよっぽど個性があるぞ‥‥!クク‥‥!大丈夫だ、大丈夫‥‥‥!」ゼェゼェ

利根川「よ、よし、最後はお前だ!」ゼェゼェ

黒潮「は、はい。えっと‥‥。ウチは『風』はつかんのやけど‥‥」

利根川「!!」パァァ

山崎「おお‥‥!それならば覚えやすそうだ!」

黒潮「えっと、黒『潮』って名前で‥‥。ははは‥‥」

利根川「あ‥‥?」

ざわ‥ ざわ‥

黒潮「『陽炎型』3番艦の黒『潮』や」

利根川「」

黒潮「趣味は‥‥ご、ごめんなぁ~?ウチ、釣り好きやねん」

利根川「か‥‥」

黒潮「し、司令はん‥‥?」

利根川「か・げ・ろ・う・が・たぁ~~~!?」ガタッ

黒潮「ひえっ!」ビクッ

利根川「どういう事だ!?なんで陽炎型なのに黒潮って名前なんだ‥‥‥!」バンッ

黒潮「え、えっと‥‥」

利根川「黒『潮』なのになんで朝潮型じゃないんだ!おかしいだろ‥‥‥!!」バンッ

黒潮「えぇ‥‥。ウチに言われても困るぅ‥‥」

山風「あ、あの‥‥・」ビクビク

利根川「今度は何だ‥‥!?」

山風「あたし‥‥山『風』だけど‥‥陽炎型じゃなくて‥‥白露型で8番艦‥‥。ごめん‥‥言うの忘れてた‥‥」ビクビク

利根川「お前もかぁっ」バンッ

山風「ひっ!」ビクッ

利根川「何で陽炎型じゃないのに山崎って名前なんだ!」バンッ

山崎「利根川先生、落ち着いて下さい!山崎は私です‥‥!あの子は山風‥‥!」

山風「う、うん‥‥。あたしは山風‥‥‥」ビクビク

山崎「確かに山が被ってますけど、違います‥‥‥!私が『山』崎であの子が『山』風です!」

利根川「余計な事を言うな山風‥‥!間違えるだろ‥‥!」

山崎「ですから私が山崎で‥‥!あの子が山風‥‥!」

山風「あ、それと‥‥改白露型だと‥‥2番艦になるんだ‥‥‥あたし‥‥‥」

利根川「言わなくていい!そういう余計な情報は‥‥!」バンッ

山風「ひっ!」ビクッ

利根川「大体、どいつもこいつも趣味が釣り、釣り、釣りって‥‥!」ギリギリ

利根川「釣りバカ日誌かっ‥‥・!お前らはっ‥‥‥!」バンッ

大潮「釣りバカ日誌?」キョトン

利根川「バカっ‥‥!釣りが趣味なら知っとけ‥‥!釣りバカ日誌くらい‥‥!映画でやってるだろうっ‥‥!漫画版もある‥‥‥!」

谷風「そういえば、谷風さん見たことあるかも!合体!ってやつだよね!」

浜風「合体?ロボットが出てくるのでしょうか?」キョトン

利根川「違うっ‥‥!ロボの合体ではないっ‥‥‥!」

山崎「利根川先生落ち着いてください!釣りバカは今はどうでもいいです‥‥‥!」

利根川「ぐぐぐっ‥‥‥!朝潮型と陽炎型ばかりで、一人は陽炎型なのに満潮‥‥!」ブツブツ

満潮「違うわよ、陽炎型は黒潮!まったく、なんでこんな部隊に配属されたのかしら‥‥」

山風「私は‥‥白露型‥‥‥」プクー

利根川「があっ‥‥‥!なんでこうもややこしいんだ‥‥‥!」

利根川「言っておくが、釣りに例えればお前ら全員、ボウズだ‥‥!釣果0匹‥‥‥!」ギリギリ

山崎「よし、休憩しましょう‥‥!10分休憩‥‥!休憩ならいいですよね?利根川先生‥‥‥!」

利根川「あ‥‥‥ああ‥‥‥そうだな‥‥‥」ゼェゼェ

大淀「で、ではこれより休憩時間をとりますね!」


利根川、一時は取り乱すも何とか艦娘の名前を覚えた。
暁の水平線に勝利を刻むまで、頑張れ利根川‥‥!

―続く―

佐衛門「利根川先生!」

利根川「おお、来たか佐衛門‥‥‥!」

山崎「あれ?佐衛門も呼んだのですか?」

利根川「ああ。お前だけでは、ワシが会長に呼び出しを受けた時に困るだろう」

山崎「ああ、確かに‥‥‥私だけでは回らなくなりますね」

佐衛門「いやー、艦娘の方々を見ましたけど、普通の少女と変わらないんですね‥‥‥!」

山崎「ああ、オレも驚いた‥‥‥!」

佐衛門「ところで、これからどこに向かうんですか?」

利根川「工廠だ。艦娘を建造するために‥‥‥な!」

―ヒトサンマルマル 工廠―

佐衛門「ここが艦を製造してる工廠ですか。凄い大きいですね‥‥」

利根川「戦艦ともなると、全長263m程になる艦もあるみたいだからな‥‥。無論、それは本物の戦艦だった頃の話だが‥‥」

明石「あ、提督。お疲れ様です!」

山崎「あ、どうも明石さん」

明石「それで提督、早速建造に入るんですか?

利根川「ああ。ワシの部隊‥‥いや、兵藤会長の部隊となる艦隊が駆逐艦だけでは話にならんからな‥‥!」

山崎「戦艦などがいなければ、強力な艦隊は作れませんからね‥‥」

佐衛門「そういえば、ここって今どれくらいの戦力があるんですか‥‥?」

利根川「今いる艦は、朝潮型駆逐艦4人と陽炎型駆逐艦8人、そして白露型駆逐艦1人の計13名だ」

山崎「なんというか‥‥見事に朝潮型と陽炎型に偏りましたね‥‥」

利根川「まあ、それは海軍が姉妹艦ごと我々に寄越したと考えれば仕方のない事だがな‥‥」

山崎「あれ?でも大淀さんと明石さんも艦娘なんですよね‥‥?」

明石「うーん、大淀はともかく私は‥‥」

利根川「大淀は軽巡洋艦だが、秘書艦としての仕事がある」

佐衛門「それに明石さんは、工作艦だから戦闘には向いてないと思いますよ」

山崎「ああ、なるほど‥‥‥。佐衛門、お前詳しいなぁ‥‥‥!」

佐衛門「戦艦などの歴史について、色々と勉強してきましたからね」

明石「私も本当はカッコよく戦ってみたいんですけどね~。戦艦や空母みたいに」

利根川「気持ちはわからんでもないが、工作艦には工作艦の役目がある‥‥。お前はそのままでも充分役立つだろう‥‥」

明石「わっ!なんか、かっこいい台詞!ちょっとドキっとしましたよ!」

山崎「利根川先生っていう事がいちいちかっこいいんですよね」

利根川「ちっ‥‥!おい、下らん事を言っとらんでさっさと建造だ‥‥!」

山崎「建造するなら、やはり軽巡洋艦‥‥できれば重巡洋艦や戦艦ってところですかね‥‥?」

利根川「いや、ここは空母にしようと思う」

佐衛門「なるほど、空母ですか‥‥。確かにそれが一番効果的かもしれませんね」

山崎「何で空母が一番効果的なんです‥‥?」

利根川「ワシは艦娘と深海棲艦の戦闘を映像で見た。その時の映像を見て、ワシはすぐに気がついた‥‥」

利根川「深海棲艦との戦いは、まず制空権を奪う事が何よりも重要‥‥!肝心要‥‥!」

山崎「はぁ‥‥?制空権‥‥ですか?」

利根川「制空権を奪えば、相手の動きに合わせて砲撃の修正を行える。弾着観測射撃というやつだ‥‥」

利根川「もっともこれは、水上偵察機、あるいは水上爆撃機を積める艦でしか行えんようだがな‥‥」

山崎「はぁ、なるほど‥‥。しかしそれならば、水上機を積める艦を先に作った方がよいのでは‥‥?」

利根川「空母の仕事はそれだけではない。偵察、開幕航空攻撃、敵に空母がいれば、対空砲火による航空機の撃墜も行う‥‥!」

利根川「つまり、空母は艦隊のキーパーソンと言っても過言ではないのだ‥‥!」

山崎「なるほど‥‥!それなら空母を量産しましょうよ!」

佐衛門「いやいや、そういうわけにも行かないんですよ」

利根川「空母の存在は確かにメリットが大きい‥‥!だがデメリットがないわけでもない。そうだな、明石‥‥!」

明石「そうですねー。空母がいればボーキをそれなりに使いますし、特別な装備がないと、空母は夜戦に参加できませんから‥‥」

明石「それに、装甲空母以外は中破すると何も出来なくなってしまうんですよ」

利根川「数が多い事に越した事はないが、資源にも限りがある。メリットが大きいからといって、そう易々と量産はできん‥‥‥!」

山崎「なるほど‥‥バランスが重要ってことですね」

利根川「うむ。ともかく、重巡洋艦や戦艦は後回しでも問題ない。まずは空母だ‥‥!」

明石「空母のレシピはこちらになりますね」

利根川「ふむ‥‥弾薬以外は軒並み300超えか‥‥」

明石「そっちは軽空母寄りのレシピですね。ボーキと鋼材の数をその倍くらいにすれば、正規空母が出来る割合が高くなるみたいですよ」

佐衛門「今、我々の鎮守府にある資源は、各3000くらいですか。無駄使いはできませんね」

利根川「うむ‥‥。やはり燃費の軽い軽空母を狙ってみるのが妥当か‥‥!」

山崎「ではこのレシピを試してみましょうか‥‥?」

利根川「そうだな。それで明石、建造はどうやってやるんだ‥‥?」

明石「この装置に各資材の分量を入力するパネルがあります!」

利根川「おお、これか‥‥‥!」ポチポチ

明石「それで、このボタンを押せば妖精さんが出てきて、艦を作ってくれる仕組みなんです!」

利根川「ほう、妖精か‥‥‥」

佐衛門「え‥‥?」

山崎「は‥‥?」

利根川「ん‥‥?おい、何が出てくるって‥‥?」

明石「妖精です」

利根川「‥‥‥?」

山崎「‥‥‥?」

佐衛門「‥‥‥?」

明石「‥‥‥?」

利根川「あー‥‥‥その‥‥‥聞き間違えでなければ‥‥今‥‥‥妖精‥‥‥!」

利根川「妖精‥‥‥と言ったような気がしたのだが‥‥‥?」

明石「言いましたけど‥‥それがどうかしました?」

利根川「‥‥‥?‥‥‥?‥‥‥?」

佐衛門「いやいやいや‥‥‥!」

山崎「インポッシブル‥‥!どう考えてもインポッシブル‥‥‥!」

明石「いやいや、本当に出てくるんですよ、妖精が!」

佐衛門「いやいやいや‥‥‥!だから、いやいやいや‥‥‥!」

山崎「いくらなんでも妖精って‥‥ねえ、利根川先生‥‥?」ハハハッ

利根川「あー‥‥まあ‥‥その‥‥なんだ‥‥?ともかくスイッチを押してみよう。それでわかる‥‥‥!」カチッ

キュイーン ポコッ

妖精1「しごとだー!」トテトテ

妖精2「ちょっとごめんねー」トテトテ

利根川「‥‥‥!?」

山崎「うわっ‥‥!なんか小さい人間が出てきた‥‥‥!」

明石「ね?本当だったでしょう?」

佐衛門「と、利根川先生~~~~!これってもしかしてシンギュラリティですか‥‥‥!?」バンバン

明石「妖精さんです!ですから、シンギュラリティではありませんよ、もう!」

利根川「あ‥‥‥?あ‥‥‥?」ポカーン

妖精1「てーとくのためならエンヤコーラ‥‥!」カンカン

妖精2「あーいそがしい、いそがしい」トコトコ

山崎「ほ、本物だ‥‥!小さい人間が鋼材を叩いている‥‥‥!こっちはダンボール箱を持っている‥‥‥!」

明石「だから言ったじゃないですかー!」

佐衛門「シンギュラリティ~~~~!!利根川先生!シンギュラリティですよ‥‥‥!」グイグイグイグイ

明石「だから違いますって!」

山崎「いや‥‥‥しかし‥‥‥妖精って‥‥‥」

明石「あんまり細かい事を気にしてると、将来ハゲちゃいますよ」

利根川「‥‥‥」ポカーン

明石「それはともかく、建造時間が2時間40分って出てましたよ。やりましたね!」

利根川「あ、ああ‥‥‥」ポカーン

山崎「建造時間で何が出来るか分かるんですか‥‥?」

明石「はい。この時間だと祥鳳型の軽空母ができると思います!」

利根川「そ、そうか‥‥‥」ポカーン

明石「あれ、嬉しくないんですか?望みの空母ですよ、空母!」

利根川「も、勿論嬉しいに決まっている‥‥‥!はは‥‥‥」カタカタカタ

明石「ですよね!あ、良かったら高速建造材を使いますか?」

利根川「こ‥‥高速建造材‥‥‥?」

明石「はい。それを使えば一瞬で艦娘が出来上がりますよ!」

山崎「一瞬で出来上がるって‥‥‥どんな風になるんですか?」

明石「こう、火炎放射器みたいな奴で」

利根川「は‥‥‥?火炎放射器‥‥‥?」

明石「はい、それで炎をドバーっと!それで終わりです!」

佐衛門「は‥‥‥?」

利根川「‥‥‥?それで‥‥‥?」

明石「いえ、ですから‥‥それで終わりです」

利根川「え‥‥‥?」

山崎「いやいやいや‥‥‥!そんなことしたら艦娘になる前に灰になって終わり‥‥‥!バッドエンドでしょ‥‥‥!」

明石「大丈夫ですよ!ちゃんと完成します!」

佐衛門「いや、いくらなんでもそれはインポッシブル‥‥!科学的にありえない‥‥‥!」

明石「むー!提督はどう思います?」

利根川「い、いや‥‥‥頭の整理が‥‥‥」グググ

佐衛門「利根川先生、おかしいですよ‥‥!炎をドバーで完成だなんて‥‥‥!」ユッサユッサ

利根川「あ、ああ‥‥‥」

山崎「妖精は100歩譲るとして、炎をドバーは確かにおかしい‥‥‥」

佐衛門「いやいや、妖精も充分おかしいですよ山崎さん‥‥‥!」

明石「むーっ!こうなったら論より証拠です!実際に使ってみせます!」

利根川「う、うむ‥‥‥」

明石「よーし、いきますよー!」カチッ

妖精1「ひゃっはー!」シュボボボボボボボー

山崎「うわっ、本当に火炎放射器で燃やしてる‥‥‥!」

利根川「‥‥‥」ポカーン

妖精1「わーい、かんむすができたよー!」バンザーイ

妖精2「やったね!」バンザーイ

利根川「は‥‥‥?」

佐衛門「え‥‥‥?これで終わり‥‥‥?」

明石「はい」

利根川「か、完成したのか‥‥‥!?これで‥‥‥!?」ブルブル

明石「はい、完成です!」

佐衛門「いやいやいや、インポッシブル!インポッシブルゥ~~~~!!」ユッサユッサ

明石「さあ、迎えに行きましょう!」

山崎「いやいやいや、絶対におかしい‥‥‥!あれで人間と同じ艦娘が出来るなんて‥‥‥!」

明石「もー、二人とも疑り深いですねー!まあ、見ててください」バーン!

瑞鳳「瑞鳳です。軽空母ですが、練度があがれば、正規空母並の活躍をおみせできます!」キラキラ

明石「ほら、この通り完璧です!」フンスッ

山崎「えぇ‥‥‥」

佐衛門「シンギュラリティ~~~~!!」グイグイグイグイ

明石「シンギュラリティじゃありませんってば!」

利根川「‥‥‥」

瑞鳳「提督、これからよろしくね!」

利根川「は、はは‥‥‥。ああ‥‥‥よ、よろしく頼む‥‥‥」


ありえない光景が次々と目に飛び込み、心あらずの利根川‥‥‥。
何事もなかったかのように現れた瑞鳳を、引き攣った笑顔で迎えた利根川‥‥‥。

この環境に慣れるまで、頑張れ利根川‥‥‥!


―続く―

利根川達が鎮守府に訪れた翌日。
艦娘達は再び会議室に集められていた‥‥‥。

―マルキュウマルマル 第1会議室―

利根川「さて、いよいよ今回から深海棲艦が蔓延る海域への出撃を検討‥‥」

利根川「と‥‥‥いきたいところだが、それはまだ時期尚早‥‥!早すぎるようだ‥‥‥!」

利根川「昨日、午後から訓練所でお前ら全員の練度を調べた。が‥‥率直に言って低すぎる‥‥‥!」パシッ

利根川「まずは先に訓練、及び演習で練度を高めてから海域に出撃する‥‥!いいな‥‥‥?」

艦娘達「「「了解しました!」」」ビシッ

佐衛門「山崎さん、演習って言いましたけど、ここって帝愛が管理する鎮守府なんですよね‥‥?」ヒソヒソ

山崎「ああ。それがどうかしたのか?」ヒソヒソ

佐衛門「海軍の演習って、他の鎮守府の艦娘と模擬戦をするみたいなんですけど、ここは事情が事情じゃないですか‥‥‥」ヒソヒソ

山崎「うっ‥‥!確かに海軍が保有する他の鎮守府に、うちの鎮守府の事情が知られるのはまずいな‥‥‥!」ヒソヒソ

佐衛門「ですよね‥‥。艦娘が帝愛の私兵だとバレたら、面倒な事になりますよ‥‥」ヒソヒソ

山崎「まあ、その辺はうまく誤魔化すんじゃないか‥‥?」ヒソヒソ

利根川「さて‥‥。演習についてだが、今から2時間後‥‥ヒトヒトマルマルにて行う‥‥!」

利根川「今回のメンバーは‥‥朝潮、満潮、浦風、谷風、雪風、瑞鳳‥‥この6名だ‥‥‥!」

利根川「今呼ばれた者は、開始十五分前に演習所まで来るように‥‥‥!それまでは全員、訓練所にて訓練‥‥‥!以上‥‥‥!」

艦娘達「「「了解しました!」」」ビシッ

ざわ‥ ざわ‥

佐衛門「利根川先生!演習を行うと言いましたが、海軍相手で大丈夫なのですか‥‥?」

利根川「ん‥‥?ああ、お前達は知らないんだったな‥‥!」

利根川「実は‥‥ここ以外にも帝愛が管理している鎮守府があるのだ‥‥‥!」

山崎「え‥‥!?そうなんですか‥‥?」

利根川「演習は基本的にその鎮守府と行う事になっている‥‥つまり、帝愛内部の事情を知られることはない‥‥‥!」

佐衛門「なるほど、それなら安心ですね‥‥」

山崎「しかし相手が同じ帝愛の鎮守府となると‥‥演習と言えど負けられない戦いになりますね‥‥‥」

佐衛門「うっ‥‥確かに‥‥!会長の耳にも入るでしょうし‥‥負けるのはまずいかも‥‥‥!」

山崎「利根川先生、大丈夫なのですか‥‥?我々の鎮守府は昨日始動したばかりで、艦娘達の練度も低いですし‥‥」

佐衛門「それにもし相手の艦娘の練度が高ければ、勝率はかなり薄くなります‥‥‥‥!」

利根川「確かに演習と言えど、無様に負けるのは避けるべきだ‥‥‥‥!」

利根川「しかし、始動したばかりなのは相手も同じ‥‥‥‥!しかも我々と同じく、駆逐艦のみ用意されたと聞く‥‥‥‥!」

利根川「ならば条件は同じだ‥‥‥!同じ条件なら、ワシが指導する艦隊で負けるはずがない‥‥‥‥!」

佐衛門「しかし‥‥もし相手が戦艦や空母を建造で量産していたら‥‥‥‥!」

利根川「クク‥‥!確かに相手の運がよければ、戦艦や空母だらけの部隊かもしれん‥‥‥!」

利根川「が‥‥世の中そう上手くはいかん‥‥‥!聞けばレシピ通りに作っても、戦艦がでる確率はせいぜい35%前後らしい‥‥‥!」

利根川「空母にいたっては、20%もないようだ‥‥‥!つまり、相手の艦隊に戦艦や空母がいるとしても、精々1隻か2隻がいいところだ‥‥‥!」

山崎「確かに、資材のことも考えるとそう易々と量産できないでしょうからね‥‥‥」

利根川「ああ。建造を行ったとしても、我々と同じく1回か2回ぐらいだろうな‥‥‥!」

利根川「それならば、勝機はこちらにも充分にある‥‥‥!」

しかし、この後‥‥利根川は、切っても切り離せない強力な天敵が居る事を思い出す‥‥‥!
そう、あの時の麻雀のように‥‥!

理外‥‥‥!

己の理が通じない‥‥訳の分からぬ男がいることを‥‥‥!

―ヒトマルサンマルー 演習所―

ざわ‥ ざわ‥

利根川「さて、演習まであと30分と言ったところか‥‥」

大淀「提督、演習相手の艦隊と提督が到着したようです」

利根川「来たか‥‥思ったより早かったな‥‥‥!クク‥‥さて、どんなメンバーできたのか‥‥‥」スタスタ

黒崎「あれ‥‥?利根川さんじゃないですか‥‥‥!」

利根川「く、黒崎‥‥‥!」

黒崎「ああ、そういえば利根川さんも鎮守府の管理を会長に頼まれていたんでしたね」

利根川「な、なぜお前が‥‥‥?」

黒崎「実は、私も管理を頼まれたんですよ。まあ‥‥ずっと鎮守府にいるわけではありませんが‥‥‥」

利根川「ぐっ‥‥!で、では今回の演習の艦隊を指揮するのは‥‥‥!」

黒崎「私です‥‥。フフ‥‥まあお手柔らかにお願いします‥‥‥!」

佐衛門「と、と、と、利根川先生‥‥‥!み、見てください、アレ‥‥‥!」ガシッ

利根川「あっ‥‥?一体どうし‥‥‥」


利根川に電流走る‥‥!
佐衛門が指差した先には、黒崎が連れて来た艦隊がいたのだが‥‥‥。


利根川「がっ‥‥‥!!」


その艦隊の艦娘は‥‥‥
ボーキ喰らいの一航戦、赤城と加賀‥‥‥!
メシが不味い国で生まれた高速戦艦、金剛‥‥‥!
その姉妹艦、殺人カレーの比叡‥‥‥!
瑞雲には並々ならぬ拘りを持っている戦艦、日向‥‥‥!
そして、改二ドロップのバグも発生した不幸の筆頭、山城‥‥‥!

そう、黒崎の艦隊は‥‥‥
燃料と弾薬を削り‥‥‥ボーキを喰らう‥‥‥重量編成であった‥‥‥!


利根川「なっ‥‥‥!なっ‥‥‥!なっ‥‥‥!」ブルブル

山崎「お、おい、佐衛門‥‥!黒崎さんの部隊はそんなに凄いのか‥‥‥?」

佐衛門「凄いも何も‥‥ありえない‥‥!初期にこんな編成‥‥‥!」

利根川「お、お前‥‥‥これは一体‥‥‥?」ブルブル

黒崎「ああ、この艦娘達ですか。ある海域に駆逐艦の艦隊を向かわせたんですが‥‥‥」

黒崎「なぜか次から次へと戦艦や空母の艦娘が見つかりまして‥‥‥!」

黒崎「いや~~~!戦力の少ない我が鎮守府にとっては僥倖でしたよ‥‥‥!」

利根川「なぜかってお前‥‥‥」ブルブル

黒崎「まあ、それでせっかくなんで、今回の演習で使おうかなと‥‥‥!」

黒崎「では、私は艦娘達に指示があるので、これで‥‥‥!」スタスタ

利根川「ぐっ‥‥‥!まさかあんな艦隊でくるとは‥‥‥」頭カカエ

山崎「利根川先生!今からでも戦艦を建造しましょう‥‥‥!」

利根川「しかし‥‥レシピ通りに建造したとして、確実に戦艦が来るとは限らんぞ‥‥‥!」

山崎「ですが、何もしないで今の部隊で戦っても勝てませんよ‥‥‥!」

利根川「それはそうだが‥‥‥」

佐衛門「‥‥‥。仕方ありませんね。今回は負けましょう‥‥‥!」

山崎「ま‥‥負けるってお前‥‥‥!」

佐衛門「酷い負け方をするのも経験の一つです‥‥!大丈夫です、演習で轟沈するわけではありません‥‥‥!」

利根川「‥‥‥」

佐衛門「悔しさはバネになります‥‥‥!最初はショックでしょうが、その方が艦娘の成長にもつながります‥‥‥!」

利根川(ぐっ‥‥‥!確かに佐衛門の言うとおり、今回は負けてもいいかもしれん‥‥‥!)

利根川(そもそも相手は戦艦と正規空母‥‥‥!練度は低いようだが、それはこちらの艦隊とて同じ‥‥‥!)

利根川(そんな条件で、勝ちを拾うなど妄想もいいところ‥‥‥!)

利根川(しかし一方的に負けるのは‥‥‥!山崎の言うとおり、戦艦を急造して対応するか‥‥‥?)

利根川(上手くすれば、戦艦2隻程なら建造できるかもしれん‥‥‥!)

利根川(それに潜水艦を建造するという手もある‥‥‥!瑞雲などがない限り、攻撃はされんはず‥‥‥!)

朝潮「司令官、お待たせしました!」ビシッ

利根川「あ、ああ‥‥来たかお前達‥‥‥!」

浦風「うちらにとっては、初めての演習じゃね。提督さん、しっかりと指示を頼むよ?」

雪風「演習相手はもう来てるのですか?」

山崎「それが、もう来てるんだけど‥‥‥相手が強力な編成で‥‥‥」

谷風「えーと‥‥‥?山城さんに日向さん、金剛さんと比叡さん‥‥おぉっ、一航戦の方々もいるねぇ!」

瑞鳳「戦艦と空母の方達ばかりですね‥‥」

利根川「うむ‥‥‥」

満潮「何よ、やけに落ち込んでるじゃない」

山崎「無理もない‥‥‥相手があれじゃ‥‥‥」

佐衛門「皆も勝てる気がしないだろうけど、今回は負けても‥‥‥」

浦風「何を言っとるんじゃ!最初から負ける気で行く奴などおらん!」

利根川「‥‥‥!!」

利根川「おい、お前達‥‥‥勝つつもりなのか‥‥‥?」

朝潮「か、勝てる保証はできませんが‥‥それでも、司令官のために精一杯戦わせていただきます!」

雪風「不沈艦の名は、伊達じゃありません!負けるつもりはありませんよ!」

谷風「正直、難しいとは思うけどねぇ‥‥‥でも、提督のために頑張るぜぇ!」

満潮「戦う前に負ける事考えるバカいないわよ!」

瑞鳳「数が少なくても、私の航空隊は先鋭揃いよ!負けたくはないわね!」

利根川「ククク‥‥‥!」

山崎・佐衛門「利根川先生‥‥‥?」

利根川「ワシはどうかしてたのかもな‥‥‥!」ニヤリ

利根川「お前達、いい目をしてるじゃないか‥‥‥!これは面白くなってきた‥‥‥!」

利根川「山崎、佐衛門!こうなったら‥‥勝ちにいくぞ‥‥‥!このメンバーで‥‥‥!」

山崎・佐衛門「えぇっ‥‥‥!?」

山崎「いやいや、インポッシブル‥‥‥!」

佐衛門「いくらなんでも、戦艦と空母相手じゃあ‥‥‥!」

利根川「バカが‥‥‥!そんな考えで、この世を勝ち抜いていけるか‥‥‥!」

利根川「いいか‥‥!実戦では、こちらがどんなに不利な編成であろうと、相手は待ってくれんのだぞ‥‥‥!」

利根川「相手の方が強力な編成だったから、負けました‥‥?民間船を守れませんでした‥‥?」

利根川「そんな言い訳が通るかっ‥‥‥!」バンッ

山崎「うっ‥‥‥!」

佐衛門「そ、それは‥‥‥」

利根川「戦いにおいて、重要なのは確かに力だ。が‥‥しかし‥‥!」

利根川「闘争心‥‥‥!つまり、メンタルもまた、重要な要素なのだ‥‥‥!」

利根川「瑞鳳、旗艦はお前だ‥‥‥!」

瑞鳳「はい!」

利根川「いいか、ワシが指揮をするからには‥‥演習といえど、無様に負けることは許さん‥‥‥!」

瑞鳳「はい!私達の力、見せてやりましょ!」

利根川「こちらが水雷戦隊と見れば、黒崎はともかく、相手の艦娘は油断するかもしれん。そこを突く‥‥‥!」

山崎(利根川先生‥‥‥いつも以上に凄い気迫だ‥‥‥!)

佐衛門(勝率は限りなく薄い‥‥しかし‥‥行けると思わせるスゴ味がある‥‥‥!)

黒崎「利根川さん‥‥」

利根川「黒崎‥‥そうか、そろそろ演習の時間だったな‥‥‥!」

黒崎「それなんですが‥‥実は‥‥‥」

利根川「負けんぞ‥‥‥!」

利根川「ワシの艦隊は必ず勝つ‥‥‥!例えどんなに条件が厳しくとも‥‥‥!」

利根川(そうだ、勝たなければゴミ‥‥‥!勝つ‥‥‥!例え勝率が限りなく薄くとも‥‥負けられん‥‥‥!)ギリギリ

黒崎「いえ‥‥その‥‥演習ですが、中止です‥‥!」

利根川「は‥‥‥?」

ざわ‥ ざわ‥

黒崎「今、部下から電話があったのですが‥‥どうやら黒金海運の航路に深海棲艦現れたようで‥‥」

黒崎「我々の艦隊で潰せとの命令が下りました。急な話になりますが、会長の命令ですので‥‥‥!」

利根川「え‥‥‥?」

黒崎「そういうわけで、申し訳ありませんが、これで失礼します‥‥‥!」

利根川「お‥‥おいっ‥‥‥!」

金剛「あ、提督ぅ、待ってくだサーイ!」

利根川「‥‥‥」ポカーン

朝潮「‥‥‥」

満潮「‥‥‥」

浦風「‥‥‥」

谷風「‥‥‥」

雪風「‥‥‥」

瑞鳳「‥‥‥」

山崎「‥‥‥」

佐衛門「‥‥‥」

利根川「バカッ‥‥!なんだったんだあの盛り上がりは‥‥‥!!」


利根川、モヤモヤ‥‥!
圧倒的モヤモヤでこの日の演習、終了‥‥‥!

―続く―

―番外編その1・とあるランチの話―

時はヒトフタマルマル‥‥昼飯の時間‥‥‥!
提督として鎮守府にきた利根川も、ランチタイムは以前と同様‥‥‥!

普段なら鎮守府にある食堂の定食を食べるが、この日は外に出る用事があり、
利根川は、鎮守府近くの商店街へと赴いていた‥‥‥!


利根川(さて、せっかく商店街まで来たのだ‥‥このまま鎮守府に戻るのは、ちと寂しい‥‥‥!)

利根川(艦娘達に手土産を買っていくのもいいが‥‥まずはランチ‥‥‥!)

利根川(今日の腹の具合を考えると、重めでいくか‥‥‥!)

利根川が辺りを見回すと、ふと目に付く看板が一つ‥‥‥!

利根川「ほう‥‥まさかこんな所にも出店していたとはな‥‥‥!」

利根川「クク‥‥丁度いい‥‥‥!今日はここにするか‥‥‥!」

ガラッ

店員「しゃっせー‥‥‥!」

利根川がランチに選んだのは、かつ澤‥‥!
前回、前々回と大盛りを頼んで大失敗した店‥‥!
そんな店が、鎮守府近くにも出店していた‥‥‥!

利根川(ふふ‥‥前回はつい恰幅のよい男に合わせて地獄を見たが‥‥今回はもう失敗はせん‥‥‥!)

利根川(誰が何を頼もうと気に止めず、ワシはワシの道を行く‥‥‥!当然の事‥‥‥!)

店員「ご注文はおきまりですか?」

利根川「カツ丼、レディースサイズをひとつ‥‥!」

店員「かしこまり!」


そう、この店は並より下にサイズを刻んでいる‥‥!
それを知らずに大盛りを頼もうものなら地獄‥‥‥!
これはかつ澤を利用している者であれば、誰もが知っておくべき常識‥‥‥!

が‥‥しかし‥‥‥!

???「すみません、注文いいですか‥‥?」

その刹那、聞こえてきた女の声‥‥‥!

店員「はい!」

???「カツ丼の大盛りをお願いします‥‥!」

店員「えぇっ‥‥‥!?」

ざわ‥ ざわ‥

利根川「あ‥‥‥?」


その場にいた誰もが驚愕‥‥‥!
ただでさえ、その圧倒的な量で数々の挑戦者達を打ちのめしてきた大盛‥‥‥!
その大盛りを女性が頼もうなどと正気の沙汰ではない‥‥‥!


店員「お、大盛り‥‥ですか!?」

???「はい。大盛りです‥‥‥!」ニコッ

店員「し、しかしお客様、当店の大盛りは‥‥‥!」アセアセ

???「大丈夫です。よく分かっていますから‥‥‥!」

店員「ほ、本当に大丈夫ですか‥‥‥?」

???「はい、お願いします」ニッコリ

店員「は、はぁ‥‥かしこまりました‥‥‥!」スタスタ

利根川(あ‥‥あれは確か‥‥‥赤城‥‥‥!)


大盛りを頼んだのは、赤城‥‥!
利根川の艦隊にはまだ着任していないが、
黒崎の艦隊にいるボーキ喰らいの一航戦であった‥‥‥!


利根川(そういえば、今日は午後から演習があったな‥‥。あの黒崎艦隊の奴か‥‥‥!)

店員「すみません、お客様‥‥。他のお客様が大盛りを頼まれたので‥‥‥」

利根川「あ、ああ‥‥大盛り優先だな‥‥‥?かまわん‥‥‥!」

利根川(ふん‥‥いくら艦娘とはいえ、大盛りなど無謀‥‥‥!)

利根川(大方、大したことない‥‥などと‥‥高を括っているのだろう‥‥‥!)

利根川(が‥‥‥その見くびりが地獄への道‥‥‥!今はせいぜい笑っていろ‥‥‥!)

利根川(クク‥‥楽しみだ‥‥‥!数分後、奴がどんな表情をするのか‥‥‥!)

そして数分後‥‥。

店員「お待たせしました!カツ丼の大盛りでございます!」ゴッ‥

利根川(きたきた‥‥!さて、どんな反応をするか見てやるとするか‥‥‥!)チラッ

赤城「ふふ、おいしそう‥‥‥!」ニッコリ

利根川(あ‥‥‥?)


赤城‥‥微動だにせず‥‥!
それどころか、圧倒的大盛りのカツ丼を見てスマイル‥‥‥!
満面の笑みを浮かべている‥‥‥!


店員「すみません、それと大盛り挑戦者には撮影をお願いしているんですが‥‥」

赤城「食べ終わった後ですね。はい、構いませんよ」ニコッ

店員「ど、どうも‥‥‥!」

利根川(な‥‥なにぃ~~~!?)ガタッ


利根川、驚愕‥‥‥!
今、赤城がさり気なく言った一言に驚愕‥‥‥!
彼女は今、当たり前のように『食べ終わった後』と言ったのだ‥‥‥!
それは、とどのつまり完食宣言‥‥‥!


利根川(こ、こいつ‥‥‥!まさか完食する気なのか‥‥?この量を‥‥‥!)

赤城「ふふ‥‥いただきます‥‥‥!」

利根川(ぐっ‥‥‥!どうみても奴は、艦娘という事を除けば、ただの普通の女性‥‥‥!)

利根川(大淀や他の艦娘と昼食を共にした事もあるが、普通の量を食っていた‥‥‥!)

利根川(つまり、艦娘が特別大食らいってわけではないはず‥‥‥!)

利根川(それに体形も至って普通‥‥いや、むしろ痩せているぐらいだ‥‥‥!なのに‥‥完食する気なのか‥‥‥!?)

店員「しゃっせー‥‥‥!」


利根川が驚愕している最中、かつ澤にあらたな訪問者が到来‥‥‥!
その訪問者は、赤城が座っているテーブル席の前に立つと、向かい合うように座った‥‥‥!


加賀「すみません、赤城さん。少し遅れました」

赤城「あ、加賀さん。先にいただいております」


その訪問者は、加賀‥‥!
赤城に負けず劣らずのボーキ喰いで有名な、もう1人の一航戦‥‥‥!


店員「こちらお冷でございます」コッ‥

加賀「注文いいかしら?こちらの方と同じものをお願いします」


加賀、あろうことか‥‥当たり前のように赤城のカツ丼を指差し、同じメニューを注文‥‥‥!
それはつまり、大盛りに挑戦することを意味する‥‥‥!


店員「えぇっ‥‥‥!?」

利根川「な‥‥なんだとぉ~~~~!?」バンッ

店員「ひえっ!?」ビクッ

赤城「‥‥‥?」

加賀「‥‥‥?」

利根川「うっ‥‥!い、いや‥‥なんでもない‥‥‥!」サッ

店員「そうなると、大盛りとなりますが‥‥だ、大丈夫ですか‥‥‥?」

加賀「問題ないわ」

店員「か、かしこまりました‥‥‥!」

利根川(ば、馬鹿な‥‥‥!あの量を見て『同じものをお願いします』だとぉ‥‥‥!?)

利根川(なぜ平然とそんな事が言える‥‥!奴の目には、あの大盛りがどう映っているのだ‥‥‥!)

加賀「あら‥‥貴方は確か、ここにある鎮守府の‥‥‥」

利根川「うっ‥‥‥!」

利根川(ちっ‥‥気づかれたか‥‥‥!まあいい‥‥)

利根川「あ、ああ‥‥‥。ここにある鎮守府を管理している利根川だ‥‥‥!」

赤城「あら、やはりそうでしたか。黒崎提督にはいつもお世話になっております」ペコリ

利根川「う、うむ‥‥‥」

店員「大変お待たせしました!こちらレディースサイズでございます‥‥!」コトッ‥

利根川(うっ‥‥‥!)

赤城「あら、レディースサイズ‥‥」ボソッ

加賀「少ないですね。あれで足りるのかしら‥‥」ボソッ

利根川「がっ‥‥‥!」


彼女達の名誉のために言っておくと、この発言に悪意は決してない‥‥!
一航戦の目には、利根川が頼んだサイズは、SSサイズ‥‥‥!
つまり、お子様サイズに見えている‥‥‥!
そのために、思わず口に出てしまった‥‥ぽつりと‥‥‥!


店員「ご注文は以上で‥‥‥」

利根川「ぐっ‥‥ぐぐぐっ‥‥‥!」ブルブル

店員「お‥‥お客様‥‥‥?」

利根川「ち‥‥違う‥‥‥!」

店員「え‥‥‥?」

利根川「大盛りだ‥‥‥!」

利根川「わしは‥‥大盛りを頼んだのだ‥‥‥!早く持ってこい‥‥‥!」ドンッ

店員「‥‥‥!!は、はい‥‥!かしこまりました!」

利根川(一航戦だか何だか知らんが、馬鹿にしおって‥‥‥!)

利根川(負けられん‥‥!黒崎の艦隊であるこいつらにだけは‥‥‥!)


そして数分後、加賀と利根川の元に大盛りが届けられる‥‥‥!
利根川‥‥三度ダイブ‥‥‥!カツの海‥‥‥!


利根川(ワシは勝つ‥‥!必ず完食して男の意地を見せ付けてやる‥‥‥!)ガッ‥ ガッ‥

が‥‥しかし‥‥その直後‥‥‥!

赤城「ご馳走様でした!」

利根川「な、なにぃっ‥‥‥!?」バッ


赤城、完食‥‥‥!
完食時間は、10分35秒‥‥‥!
かつ澤鎮守府前店で最高記録達成‥‥‥!


ざわ‥ ざわ‥

店員1「ひえぇ‥‥‥!」

店員2「お、大盛りをあっさりと‥‥‥!」

客「す‥‥すげぇ~~~~!」

利根川(ば‥‥馬鹿な‥‥!たった10分前後で完食‥‥‥?完食したというのか‥‥‥!?)

利根川、混乱‥‥‥!

店員「す、凄いですよお客様‥‥!是非とも記念写真とコメントを‥‥‥!」

赤城「えっと、すみません‥‥‥その前に‥‥‥」モジモジ

次の瞬間、赤城は赤面しながら信じられない一言を呟いた‥‥‥!

赤城「大盛りの‥‥おかわりを‥‥お願いします」モジモジ

赤城は頬に手を当て、恥ずかしそうにおかわりを宣言‥‥‥!

店員「お‥‥‥」

利根川「おかわりだとぉ~~~~!?」ガタッ


当然、店内は騒然‥‥‥!
信じられないという眼差しが赤城に刺さる‥‥‥!


客1「あ、あの姉ちゃんすげえぞ‥‥‥!」

客2「一体どんな胃袋してるんだ‥‥‥?」

赤城「だ、だめでしょうか‥‥‥?」

店員「いえ、喜んで‥‥!大盛りおかわり入ります‥‥‥!」

利根川「‥‥‥」ガタガタ

赤城「やっぱり、はしたなかったかしら‥‥‥?」

加賀「大丈夫です。私もおかわりをするつもりですから」モグモグ

利根川「あ‥‥‥?あ‥‥‥?」ガタガタ

赤城「そうですね‥‥。やっぱりこれくらいじゃ足りませんね‥‥」

加賀「えぇ、半分も満たせません」

利根川「!?!?!?」クラッ


加賀、まさかのおかわり宣言‥‥‥!
これにより、利根川は完全に戦意喪失‥‥‥!


利根川「」ヘナッ‥

大惨敗‥‥‥!

ちなみにこの10分後には、加賀も完食‥‥‥!
宣言通りおかわりをした‥‥‥!

利根川VS一航戦‥‥一航戦の圧勝‥‥‥!
ちなみに一航戦はそもそも勝負をしているつもりなどなかった‥‥‥!

―ヒトサンマルマル 鎮守府―

利根川「今‥‥戻った‥‥‥!」フラッ‥

黒潮「あ、司令はん!おかえり~」

浦風「提督、カツサンドを作ったんじゃ」

浜風「おひとついかがでしょう?」

谷風「うまいよっ!」

利根川「んがっ‥‥‥!」ゾゾゾッ

利根川「よっ、よせっ‥‥‥!そんなものはいらんっ‥‥‥!」ジタ‥ ジタ‥

利根川「いいか、ワシにカツを近づけるな‥‥‥!どうなっても知らんぞ‥‥‥!!」ジタ‥ ジタ‥

谷風「えぇ‥‥‥」

浜風「お、怯えてる‥‥‥?」

浦風「な、何があったんじゃ‥‥‥?」

黒潮「カツのお化けでもでたんやろか‥‥‥?」

―続く―

利根川達が鎮守府に着任してから5日目‥‥。
コツコツと艦隊の練度上昇、及び開発・建造を続けた利根川の艦隊は、
頭数も増え、軽巡洋艦も新たに2名加わっていた‥‥‥。

―執務室―

利根川「ふむ、2日目の建造で来た川内の練度もそれなりに上がったようだな‥‥」

大淀「そうですね。そろそろ実戦で問題なく偵察機を扱えそうですよ」

利根川「ああ。それに駆逐艦達の練度も良い感じに上がってきておるようだな‥‥クク‥‥‥!」

山崎「それじゃあ、いよいよ海域へ出撃ですかね?」

利根川「うむ‥‥実戦で試すには頃合だろうな‥‥。大淀‥‥‥!」

大淀「はい。マルキュウマルマルから作戦会議でよろしいでしょうか?」

利根川「ああ、我が艦隊もいよいよ深海棲艦共の駆逐を始めるぞ‥‥‥!」

佐衛門「作戦などは、もう決まってるのですか‥‥?」

利根川「当然だ‥‥。メンバーも既に決まっている‥‥抜かりはない‥‥‥!」

―マルキュウマルマル 第1会議室―

利根川「さて、いよいよ深海棲艦が潜む海域への出撃の時が来た‥‥!」

利根川「今回は、黒金海運の航路上に度々出没する深海棲艦の艦隊を偵察部隊でキャッチ‥‥!」

利根川「その後、討伐部隊にて敵艦隊と会敵‥‥!これを撃破する‥‥‥!」

利根川「つまり‥‥偵察目的の遠征部隊と、討伐目的の本隊‥‥!この2つの部隊に分けて作戦を遂行すると言うわけだ‥‥いいな?」

艦娘達「「「了解しました!」」」ビシッ

利根川「さて、まずは偵察部隊のメンバーだが‥‥偵察機を装備できる川内が旗艦‥‥!」

利根川「そして、他の者と比較してやや索敵能力が高めの磯風、谷風、浦風‥‥以上の4名の少数部隊で行う‥‥!」

利根川「次に、討伐部隊のメンバーだが、空母の瑞鳳を旗艦とし、北上、朝潮、満潮、大潮、浜風‥‥この6名で艦隊を組む‥‥‥!」

利根川「他の者は鎮守府にて訓練を継続しながら待機‥‥非常事態に備えるように‥‥‥!」

艦娘達「「「了解しました!」」」ビシッ

利根川「よし、作戦は1時間後のヒトマルマルマルから開始‥‥!準備を怠るなよ‥‥‥!」

そして、時はヒトマルマルマル‥‥午前10時‥‥!
ついに開始される‥‥!深海棲艦を討伐するための作戦が‥‥!

―ヒトマルマルマル 執務室―

利根川「いよいよだな‥‥。さて、鬼が出るか‥‥蛇が出るか‥‥‥!」

大淀「提督、討伐部隊とは無線で通信が取れます。相手の部隊によっては‥‥‥」

利根川「クク‥‥分かっている!陣形だろ‥‥‥?」


陣形とは、4隻以上の艦隊で出撃している場合に組める隊列のことである。
古来より日本でも様々な戦いにおいて、陣形は重要な役割を担っている‥‥‥!
もっとも攻撃力を発揮できる単縦陣、対空戦において有効な輪形陣など、
陣形は、戦いを左右する要素の一つである‥‥‥!


利根川「まあ‥‥今は焦らず偵察部隊の報告を待つとしよう‥‥‥!」


そして、作戦開始から30分が経過‥‥。
利根川の狙い通り、偵察部隊が敵艦隊の情報をキャッチ‥‥‥!
情報はすぐに鎮守府にいる黒潮を筆頭に佐衛門と山崎によって纏められる‥‥‥!

黒潮「司令はん、偵察部隊からの情報を纏めた資料が完成したで!」

利根川「うむ‥‥ご苦労‥‥‥!」

佐衛門「幸い、今回の海域には大した部隊はないようでした」

山崎「これが敵艦隊の情報を纏めた資料です‥‥!」ペラッ‥

利根川「ふむ‥‥敵は水雷戦隊‥‥それも軽巡と駆逐艦のみか‥‥‥!」

佐衛門「敵艦隊は3箇所に点在。それぞれA・B・Cとしました‥‥!A地点にいるのは敵の偵察隊のようです‥‥!」

山崎「さらにそこから北東方面のB地点、南東方面のC地点に分かれます。敵の主力艦隊はC地点にいる模様です‥‥!」

利根川「よし‥‥黒金海運の航路を視野に入れても、目指すはC地点だ‥‥‥!」

利根川「Bは無視で構わん、Aの偵察隊を排除し、Cを目指す‥‥‥!」

大淀「了解しました!無線でその様にお伝えします!」

利根川(頼むぞ‥‥討伐部隊‥‥‥!初陣で無様に退却することのないようにな‥‥‥!)

それから10分後‥‥。
討伐部隊はA地点に到着‥‥‥!
敵の偵察隊と会敵し、いよいよ交戦が始まった‥‥‥!

大淀「提督、敵艦隊との交戦が始まったようです‥‥!無線で指示をお願いします!」

利根川「よし、各自単縦陣のまま砲撃戦に備えろ‥‥!瑞鳳は艦載機にて攻撃開始‥‥‥!」

瑞鳳『了解!攻撃隊、発艦!』


基本的に利根川は指揮するだけで、敵の艦隊を叩くのは艦娘の役目である。
よって、後は祈るしかない‥‥!自分の艦隊の勝利を‥‥‥!

そして、敵艦隊と会敵してからさらに5分後‥‥。
討伐部隊から利根川達に報告が入る‥‥‥!


大淀「‥‥!提督、どうやら瑞鳳がやってくれたようです!」

瑞鳳『やったぁ!提督、敵の艦隊をやっつけました!』

山崎「おおっ‥‥!」

佐衛門「やった‥‥‥!」

大淀「航空戦で敵を全滅させたようです。こちらに被害はありません!」

山崎「やりましたね、利根川先生‥‥!」

佐衛門「こちらに被害がないなんて、大勝利じゃないですか‥‥!」

利根川「バカ、浮かれるな‥‥!これはまだ前哨戦にすぎん‥‥‥!」

山崎・佐衛門「うっ‥‥!」

利根川「よくやった。各員そのまま警戒しつつC地点へ直行だ‥‥‥!」


一見、冷静を装っている利根川であるが‥‥。
実は内心‥‥舞い上がっていた‥‥‥!


利根川(よし‥‥!よし‥‥!順調‥‥‥!この上もなく順調‥‥‥!)


利根川にとって、勝利することは何よりも重要‥‥!
暁の水平線に勝利を刻む‥‥。
今まで勝ちを積み重ねてきた利根川にとって、それはもっとも重要な事であった‥‥‥!


利根川(やはり空母を建造しておいて正解‥‥!瑞鳳め、いい仕事をするじゃないか‥‥‥!)

大淀「それと、新たな艦娘も発見した模様です。報告によると綾波型8番艦の曙のようです」

利根川「! ほう、これでまた駆逐艦が増えたわけだな‥‥!」

新たな艦娘も加わり、後はC地点にいる主力艦隊を討伐するだけ‥‥!
そう思い、安堵の表情を浮かべる利根川であった‥‥。

が‥‥しかし‥‥‥‥!

この時、利根川は気づいていなかった‥‥。
この世には‥‥例えどんなに強力な艦隊であっても‥‥どうにもならない壁があることを‥‥‥‥!


北上『それじゃ提督、妖精に羅針盤を回すようにお願いするね~』

利根川「ああ‥‥!」

利根川(‥‥‥ん?)

利根川「おい、大淀‥‥!」

大淀「はい」

利根川「今‥‥北上の奴はなんと言った‥‥‥?」

大淀「妖精さんに羅針盤を回すよう指示すると言ってましたね」

利根川「‥‥‥?」

大淀「どうされました?」

利根川「いや‥‥今‥‥なんか‥‥『羅針盤を回す』と聞こえたような気がしたのだが‥‥‥?」

大淀「はい、そう言いました」

利根川「‥‥‥???」

利根川、混乱‥‥!
羅針盤は、いわば位置を示す方位磁石のようなものであり、回すものではない‥‥。
ジャイロコンパスなる回転で方位を知る道具もあるが、
艦娘達が使っている物は、それとは全く異なるものである‥‥‥!


山崎「羅針盤って回すようなものだったか‥‥?」

佐衛門「いやいやいや、ジャイロコンパスじゃあるまいし‥‥‥!」

利根川「この際、妖精云々はどうでもいい‥‥!だが‥‥なぜ羅針盤を回す必要がある‥‥‥?」

大淀「もう、提督!羅針盤を回さないと先に進めないじゃないですか‥‥!」

利根川「は‥‥‥?」

大淀「A地点より先の航路はB地点へ向かう北東、C地点へ向かう南東方面に分かれてます」

利根川「そんな事は分かっている‥‥!だからC地点の南東方面に向かうと‥‥‥」

大淀「ですから、ルートが分かれている以上は、羅針盤を回さないといけないんです!」

利根川「‥‥‥?‥‥‥?‥‥‥?」

北上『あちゃ~、ルートが逸れちゃった‥‥。提督、残念だけど羅針盤の機嫌が悪かったみたいだね~」

利根川「え‥‥‥?」

北上『だから~羅針盤のせいでBの方に向かうことになっちゃったんだって~』

利根川「‥‥‥!?」

そう‥‥どうにもならない壁とは‥‥羅針盤‥‥‥!
艦隊の編成次第では、進むルートを制御できる時もあるが、
どちらに進むか完全にランダムの時もあり‥‥。
幾人もの提督を苦しめてきた‥‥気まぐれな番人である‥‥‥!


利根川「ま‥‥待て!なぜBの方に向かうんだ‥‥‥!」

満潮『もう、うるさいわね!羅針盤せいって言ってるじゃない。しょうがないでしょ!』

利根川「な‥‥何を言っとるんだ‥‥‥?こいつらは‥‥‥」ガタガタ

大淀「うーん、残念ですね。まあ、ここは能動分岐じゃありませんから仕方ありません‥‥」

瑞鳳『ごめんなさい提督!そういうことだから、Bの方に向かいます!』

利根川「お‥‥おい‥‥‥!待て‥‥‥!!」

利根川「大淀‥‥!なぜ奴らはワシの命令を無視してB地点に向かっているんだ‥‥‥!」

大淀「も~!ですから、羅針盤のせいなんです!」

山崎「‥‥‥。つまり‥‥こういう事ですか‥‥‥?」

山崎「妖精が羅針盤を回し‥‥‥その結果によって、向かう地点が決まる‥‥と‥‥‥!」

大淀「はい、そういう事です!」

佐衛門「いやいやいやいや‥‥‥!駄目でしょそんなの‥‥‥!」

佐衛門「利根川先生‥‥!いいんですか、こんな事を認めて‥‥‥!」

山崎「落ち着け、佐衛門‥‥!」

山崎「こんな事もクソも‥‥それが海域でのルールだ‥‥‥!」

佐衛門「うっ‥‥‥!」

山崎「ルールであるのならば、我々は従わなければならない‥‥‥そうですね?大淀さん‥‥‥!」

大淀「はい。どの鎮守府でもこのルールに従って行動してますから‥‥‥」

大淀「それと、B地点での戦闘が終わったら、艦隊は一度帰投することになってます」

利根川「えっ‥‥?」

佐衛門「いやいやいやいや‥‥‥!それこそ、そのままCに向かえばいいじゃないですか‥‥‥!」

大淀「BからCへのルートは繋がってませんから、帰投するしかないんですよ」

利根川「は‥‥‥?」

山崎「つまりもう一度出撃し、A地点からC地点に向かうしかないって事ですか?」

大淀「そういうことになります。羅針盤次第では、またBに逸れてしましますけど‥‥」

佐衛門「そ‥‥それじゃあ、運が悪ければいつまで経っても主力艦隊の元へ辿り着けないじゃないですか‥‥‥!」

利根川(ぐっ‥‥!なんだその訳の分からんルールは‥‥‥!)

利根川(羅針盤次第では、本来向かうべきルートに向かえないだと‥‥‥?)

利根川(しかも、向かえなかった場合は最初からやり直し‥‥‥?)

利根川「ふざけるな‥‥‥!」バンッ

佐衛門「ひぇ‥‥‥!」ビクッ

利根川「ときめきメモリアルをやってるんじゃないんだぞ‥‥‥!」

山崎「利根川先生、落ち着いてください‥‥‥!こうなればルールに従って戦うしかありません‥‥‥!」

利根川「ぐっ‥‥!し、しかしいくらなんでも‥‥‥!」

山崎「艦娘と深海棲艦の戦いは、我々が踏む込めない領域にあるということでしょう‥‥‥」

山崎「悔しいですが、無理に捻じ曲げようとするのは危険です‥‥‥!」

大淀「山崎さんは、理解が早くて助かります!」

利根川「ぐぐっ‥‥‥!」

利根川(理解が早すぎるだろ‥‥‥!バカッ‥‥!)

これにより、戦いそのものには勝利したものの‥‥敵の主力艦隊を叩く事には失敗‥‥‥!
討伐部隊は、一旦休憩に入った後、再び出撃する‥‥‥!
しかし、2回目‥‥そして3回目の航海においても、Bに逸れてしまい失敗‥‥‥!
討伐部隊の航海は既に4回目に突入していた‥‥‥!


瑞鳳『それじゃあ、妖精さんに羅針盤を回してもらいます!』

利根川(頼む‥‥‥!もう夕方だ‥‥‥!今度こそ‥‥‥!)ギリ‥ギリ‥

利根川(既に3回逸れている‥‥‥!いくらなんでもそろそろCに向かうはずだ‥‥‥!)ギリ‥ギリ‥

羅針盤娘『えいえいえーいっ!』グルグルグルー

が‥‥‥

瑞鳳『あぁ‥‥Bに逸れちゃった‥‥‥』

駄目っ‥!

利根川(がっ‥‥また逸れた‥‥‥!)グニャー

利根川「ぐっ‥‥ぐぐっ‥‥‥」ブルブル

利根川「がぁっ‥‥‥!」ガッ‥

大淀「ちょ、提督、無線をそんなに強く握り締めないで下さい!」

利根川「いい加減にしろ‥‥!羅針盤を回してる奴‥‥‥!」

羅針盤娘『わっ!』ビクッ

利根川「貴様、わざとやっているのか‥‥‥!?」

羅針盤娘『そ、そんなことないよー!』

佐衛門「と、利根川先生‥‥落ち着いて下さい‥‥‥!」

利根川「さっきから同じ所をぐるぐるぐるぐると‥‥‥!」

利根川「モノポリーでもやってるのか‥‥‥!ワシの艦隊は‥‥‥!」バンッ

羅針盤娘『も、ものぽりー?』

利根川「いい加減にゴールに到着しろ‥‥‥!人生ゲームのように‥‥‥!」ググッ

利根川「回転させているんだろう‥‥!人生ゲームのように‥‥‥!」

羅針盤娘『じ、じんせいげーむ?』

利根川「同じ所をぐるぐる回るモノポリーの回転じゃなく‥‥」

利根川「人生ゲームのように先に進む回転にしろォ‥‥!!」

北上『わぁ、提督がバグった‥‥‥』

瑞鳳『て、提督!落ち着いて!』

山崎「利根川先生、落ち着いて下さい‥‥!これは人生ゲームではありません‥‥‥!」


こうして、羅針盤の壁にぶつかる利根川の艦隊‥‥。
結局、敵の主力艦隊の元に辿り着いたのは、この翌日の事であった‥‥。
航海は、人生のように上手くいかない時もある‥‥。
頑張れ‥‥利根川‥‥‥!

―続く―

利根川達が鎮守府に着任してから10日程の時が過ぎた。
途中、会長の呼び出しなどで本社に戻る事も多々あった利根川だが、
鎮守府の生活にも慣れ、艦娘の数も着々と増えつつあった‥‥。

比叡「金剛お姉さまの妹分、比叡です!」

利根川「クク‥‥歓迎するぞ。金剛型2番艦の戦艦、比叡よ‥‥‥!」

そして、この日は金剛型戦艦の比叡が着任‥‥‥!

佐衛門「やりましたね、利根川先生!これで金剛に次いで戦艦2隻目ですよ!」

利根川「うむ‥‥。これでまた一歩、黒崎の部隊に近づいたわけだ‥‥‥!」

そう、利根川の部隊もこれで戦艦が2隻‥‥!
着々と戦力を増していた‥‥‥!

山崎「戦艦は大幅な戦力アップを見込めますからね。早く練度を上げて、海域で活躍してもらいましょう‥‥!」

比叡「ひょっとして、金剛お姉さまも既に此方の艦隊にいらっしゃるのですか?」

利根川「ああ‥‥お前よりも一足先に着任した‥‥。なんだったら顔を合わせてきてもいいぞ‥‥!」

比叡「わぁ、いいんですか?ありがとうございます!さっそく気合ッ !入れてッ !行ってきますッ !!」バヒューン

佐衛門「なんというか‥‥元気の良い艦娘ですね‥‥‥」

そして―――。
艦娘の数が増えるにつれ、利根川の鎮守府での生活にも変化が起きる‥‥‥!

―執務室―

金剛「Hey、提督ぅー!」ガチャ

利根川「ん‥‥?金剛か、何か用か‥‥‥?」

金剛「紅茶が入ったから、Tea timeにしませんカー?」

利根川「ほう‥‥丁度何か飲みたいと思っていたところだ‥‥!」

金剛から紅茶の差し入れ‥‥!
提督好きの艦娘として有名な金剛であるが、それは利根川の艦隊においても同様であった‥‥!

利根川「どれ‥‥中々香りは良いみたいだが‥‥」ズズッ‥

利根川「‥‥‥!」

金剛「どうデスか?それなりに上手く出来たと思うのデスが‥‥」

利根川「ほう‥‥これは中々だ‥‥!良い茶葉を使っているようだな‥‥!」

金剛「本当デスか!?」

利根川「ああ‥‥大したものだ‥‥!やるな、金剛‥‥‥!」

金剛「Wow!私嬉しいデース!」ガシッ

利根川「おい、やめろ!抱きつくな‥‥!」

この出来事を切欠に、利根川に突如到来‥‥!
艦娘による差し入れ‥‥餌付けタイム‥‥‥!

―鎮守府通路―

瑞鳳「提督ー!」トコ‥トコ‥

利根川「ん?どうした瑞鳳‥‥」

瑞鳳「これからお昼?」

利根川「ああ。食堂でメシを食おうと思っていたが‥‥」

瑞鳳「実はお弁当作ってきたの!玉子焼きが自信作なのよ。食べりゅ?」

利根川「ほう‥‥!それはありがたい‥‥いただくとしよう‥‥‥!」

利根川(クク‥‥まるで娘‥‥母の料理を手伝い‥‥父に振舞う娘のよう‥‥‥!)

―鎮守府食堂―

瑞鳳「はい、提督‥‥あーん♪」

利根川「‥‥!バ、バカッ‥‥それはやめんか‥‥‥!」ジタ‥ジタ‥

瑞鳳「えー。だめなのぉ?」

利根川「いい歳した大人が『あーん』などできるか‥‥!」

ある時はお弁当の差し入れ‥‥!

―執務室―

浜風「て、提督‥‥!」

利根川「ん‥‥?どうした浜風。お前は今日、非番のはずだが‥‥」

浜風「実は十七駆の皆でクッキーを焼いたので‥‥よ、よろしければ提督に‥‥と‥‥」

利根川「ほう、クッキーか‥‥‥」

山崎「へぇー、手作りクッキーですか‥‥!」

浜風「あ‥‥よろしければ山崎さんも‥‥‥」

山崎「え、いいの‥‥?やった‥‥‥!」

利根川「バカ、浮かれるな‥‥‥!」

山崎「あ、すみません‥‥!」

利根川「まあ、受け取っておこう‥‥!甘いものは集中力を高めるからな‥‥‥!」

浜風「そうですか‥‥では、また何か作った時は提督にも持っていきます‥‥!」バタン

利根川「クク‥‥‥!」ウキ‥ウキ‥

山崎(利根川先生、嬉しそうだなぁ‥‥‥)

またある時は、お菓子の差し入れ‥‥!

―工廠―

雷「司令官!」

利根川「ん?雷か‥‥工廠に何か用でもあるのか?」

雷「司令官、聞いたわよ!今日で15連勤だって。ダメじゃない、あんまり無理をしちゃ」

利根川「ちっ‥‥山崎の奴め、余計な事を‥‥!」

利根川「確かにここの所、休みが取れてないが‥‥大して珍しくもないことだ‥‥!お前が気にする事ではない」

雷「もう、仕方ないわね。それじゃあ、せめてこれを飲んで!」

利根川「‥‥‥?おい、これは何だ‥‥‥?」

雷「雷特製の栄養ドリンクよ!これを飲んで元気になってね!」

利根川(ぐっ‥‥!いかにも色々とブチ込んだという見た目をしておる‥‥!)

雷「じゃあ私は行くわ!あんまり無理をしちゃだめよ!」スタタタ

利根川「お、おい‥‥待て‥‥‥!」


果ては着任したばかりの艦娘から栄養ドリンク‥‥!
利根川、この歳になってまさかのモテ期到来‥‥‥!

しかし、艦娘の差し入れは必ずしも良い結果になるとは限らない‥‥。
そう‥‥ついに事件は起きる‥‥‥!

―ヒトキュウマルマル・鎮守府食堂―

利根川「ん‥‥?何だこの匂いは‥‥‥」

山崎「あ、利根川先生!実は比叡さんがカレーを作ってるみたいなんです」

満潮「皆に振舞うって張り切ってるみたいね」

曙「磯風も一緒に手伝ってるって話よ」

利根川「比叡と磯風が‥‥?まったく‥‥あいつらめ‥‥。女学校じゃあるまいし‥‥‥!」

曙「口じゃそう言ってるけど、お弁当をもらってニヤニヤしてたのは、どこの誰よクソ提督!」

利根川「ぐっ‥‥‥!」

山崎「こ、こらっ‥‥!利根川先生をそんな風に呼んだら駄目っ‥‥!」

曙「ふん!」

利根川「ちっ‥‥!まあ‥‥別にカレーを作るくらいは構わんが‥‥。しかし‥‥」

山崎「どうかしましたか?」

利根川「なんか‥‥カレーにしては変な匂いじゃないか‥‥‥?」

ざわ‥ざわ‥

満潮「言われて見れば‥‥」

山崎「なんか変な匂いですね‥‥‥?」

比叡「よーし!皆、お待たせー!あ、司令!」

利根川「比叡‥‥お前、カレーを作ってるようだが‥‥‥」

比叡「はい!自慢の比叡カレーです!司令も是非食べて下さい!」

利根川「ああ‥‥せっかくだから頂こう‥‥‥!しかし‥‥一体どんなカレーを作ったんだ?」

比叡「レシピは企業秘密ですからお教えできませんが‥‥これが比叡カレーです!」


比叡の手が鍋のフタを掴んだ、その刹那‥‥‥!



利根川「」ゾワッ

利根川(あ‥‥?なんだ、今の悪寒は‥‥‥!)


謎の悪寒を利根川が襲う‥‥‥!

比叡が掴んでいるのは、間違いなく鍋のフタである‥‥!
が‥‥しかし‥‥利根川にはそれが‥‥地獄へ通じる門に見えた‥‥!

そして‥‥その地獄の門が開かれると同時‥‥!
得も言われぬ匂いが周囲に立ち込め‥‥‥!


利根川「がっ‥‥!?」


カレーとは決して言えぬ‥‥。
紫色の謎の物体が‥‥姿を現す‥‥‥!


比叡「ジャーンッ!これが比叡カレーですっ‥‥!」フンスッ

利根川「」

山崎「」

満潮「」

曙「」


全員、茫然自失‥‥‥!
鍋に入っている謎の物体に釘付け‥‥‥!
果たして食べ物と言えるのか‥‥それすらも怪しい物体に釘付け‥‥‥!

そう‥‥!
比叡は、料理を作る時‥‥‥ズレた情熱を注ぎ込んでしまうタイプ‥‥‥!
レシピ通りに作れば、それなりの料理を作れる彼女だが‥‥。

カスタマイズ‥‥!

余計なアレンジを加えてしまう‥‥!
故に訳の分からぬ素材‥‥!
本来、カレーに入れることのない‥‥意味不明な食材を入れてしまう‥‥‥!


利根川「お、お前‥‥これは‥‥‥!」ブルブル

比叡「驚きました?磯風さんが手伝ってくれたおかげで、凄いカレーが出来上がりました!」

満潮「別の意味で‥‥」ヒソッ‥

曙「すごいわね‥‥‥」ヒソッ‥


さらに‥‥!
作ったのが比叡だけなら‥‥不味いカレー程度に抑えられていたのだが‥‥。

投入‥‥‥!
磯風の‥‥‥悪魔の手‥‥‥!

磯風は本格的に料理が下手‥‥!
その腕は壊滅的‥‥‥!
そんな磯風と比叡がタッグを組み‥‥料理を作ろうものなら‥‥。
その結果は地獄‥‥‥!

この鎮守府で、磯風の料理の腕前を知る者は、十七駆逐隊のメンバーのみ‥‥!
しかし彼女達は、磯風以外は遠征に出ていた‥‥!
故に止められなかった‥‥!

悲劇を‥‥‥!


利根川(い、一体何をどうしたらこんなモノが出来上がる‥‥‥!)ブルブル

利根川「お、おい‥‥!磯風はどうした‥‥‥!?」ブルブル

比叡「なんか、用事を思い出したとかで‥‥どこかに行っちゃいました」

山崎「んなっ‥‥‥!」

満潮「あいつ‥‥」

曙「逃げたわね‥‥‥」


磯風‥‥逃走‥‥‥!
流石の磯風も出来上がった物体が危険であることを感知‥‥‥!
猛省しつつ逃走‥‥‥!

比叡「それはともかく、ご飯はもう盛り付けてあるので、カレーをかけていきますね!」

利根川「うっ‥‥!あ、ああ‥‥‥」

山崎「ちょ、ちょっと‥‥!止めなくていいんですか‥‥‥!」ヒソッ‥

満潮「あんなもの食べさせられたら、最低3日は寝込むわ!」ヒソッ‥

曙「クソ提督、早く止めなさいよ!」ヒソッ‥

利根川「い、いや‥‥待て‥‥‥。一口も食べない内から不味いと決め付けるのは‥‥‥」ヒソッ‥

山崎「いやいやいやいや‥‥インポッシブル‥‥‥!」ヒソッ‥

満潮「食べるまでもないじゃない!」ヒソッ‥

曙「あああ‥‥!どうするのよ、もう全部の皿に入っちゃった‥‥‥!」ガタガタ

比叡「よーし、人数分用意できました!さあ、どうぞ食べて下さい!」


利根川‥‥比叡を止められず‥‥!
悪魔が大地に舞い降りてしまった‥‥!

利根川「‥‥‥」

比叡「さあ、温かいうちにどうぞ!」ニコ‥ニコ‥

利根川(ぐっ‥‥!こ、この見た目と匂い‥‥想像以上の出来だ‥‥‥!)

山崎「あ、あれ‥‥?利根川先生‥‥食べないんですか?」

満潮「は、早く食べなさいよ‥‥‥!」

曙「そ、そうよ!クソ提督のために作ってくれたんだから、最初に食べなさいよ!」

利根川(こ、こいつら‥‥!上司であるワシに人柱になれというのか‥‥‥!)

利根川(お、落ち着け‥‥‥!見た目とは裏腹に美味いという可能性もある‥‥‥!)

利根川(それに、食わないのは‥‥逃げるのと同じ‥‥‥!ワシは逃げんぞ‥‥‥!)ガッ


利根川、皿を掴みライスと一緒にカレーをスプーンで掬い‥‥
そのまま口の中に放り込んだ‥‥!


山崎(うわっ‥‥行った‥‥‥!)

利根川「ぐっ‥‥‥!」

口の中に入った比叡カレーは、利根川の口を爆撃するかの如く暴れ‥‥攻撃‥‥‥!

利根川「がっ‥‥ぎっ‥‥ぐっ‥‥‥!!」ガタガタ

比叡「司令、どうですか?」ニコ‥ニコ‥

利根川(バカッ‥‥どうもこうもあるか‥‥‥!)

利根川(一体何をどうやったらこんなカレーが出来上がる‥‥‥!)

利根川(というか‥‥察しろ‥‥ワシの表情で‥‥‥!)

比叡「あ、皆さんも遠慮せず食べてくださいね!」ニコ‥ニコ‥

山崎「は、はい‥‥」

満潮「い、いただき‥‥」

曙「ます‥‥」


そして‥‥3人も覚悟を決めカレーを口の中に放り込む‥‥!
三者三様‥‥様々な反応を見せるが‥‥どれも悶絶‥‥!
体の震えと‥‥脂汗が‥‥止まらない‥‥‥!

比叡「どうですか?美味しいですか?」ニコ‥ニコ‥

利根川(バカッ‥‥!だから見れば分かるだろ‥‥‥!気づけ‥‥‥!気づいてくれ‥‥‥!)

山崎「け、け、け、結構‥‥い、いける‥‥なぁ‥‥!お、おいしい‥‥かな‥‥‥?」ガタガタ

比叡「本当ですか!やった!」グッ

利根川「!!」

満潮「!!」

曙「!!」


山崎、まさかのおべっか‥‥!
この山崎の言葉により、余計に不味いと言える雰囲気ではなくなる‥‥!


利根川(や、山崎ィ~~!余計な事を‥‥‥!)ギリギリ

比叡「他の皆さんはどうですか?」

満潮「あ、えっと‥‥その‥‥‥な、なかなか‥‥じゃない‥‥?ねぇ‥‥?」

曙「え‥‥?えっと‥‥うん‥‥まぁ‥‥そ、そうね‥‥!」

利根川「バ、バカ‥‥!お前達まで‥‥‥!」ヒソ‥

満潮「だ、だってしょうがないでしょ!」ヒソ‥

曙「この空気で不味いって言えないわよ!」ヒソ‥

利根川「山崎‥‥!お前、なんであんな心にもない事を‥‥!」ヒソ‥

山崎「す、すみません‥‥!でも、比叡さんの表情を見たら不味いなんて言えないですよ!」ヒソ‥

比叡「?皆さん、どうしました?」キョトン

利根川「あ‥‥い、いや‥‥その‥‥‥」

比叡「でも良かったー!これで少し自信が湧いてきましたよっ!」グッ

利根川(バカッ‥‥!自信を持つな‥‥!気づけ‥‥色々と‥‥!)

山崎「ど、どうしましょう‥‥このままではまた作りますよ‥‥この恐ろしいカレーを‥‥!」ヒソ‥

満潮「それ以前に、このままだとこのカレーを完食しなくちゃいけないわよ!」ヒソ‥

曙「冗談じゃないわ!こんなの完食したら一週間は寝込むわよ!」ヒソ‥

利根川「ちっ‥‥仕方あるまい。やはりワシが言うしかないようだな‥‥‥!」

利根川「比叡‥‥このカレーだが」

佐衛門「あれ?皆さん何を食べてるんですか?」


利根川が本当の事を伝えようとしたその刹那‥‥!
食堂に現れる新たな犠牲者‥‥佐衛門‥‥‥!


比叡「あ、良かったら佐衛門さんも私の作ったカレーを食べませんか?」

佐衛門「え?比叡さん、カレーを作ったんですか?もちろん、食べますよ!」

比叡「良かった!じゃあすぐにお皿に盛り付けますね!」

利根川「お、おい‥‥!佐衛門‥‥‥!」ヒソ‥

佐衛門「なんですか利根川先生」

利根川「止めておけ‥‥!そのカレーは止めておけ‥‥‥!」ヒソ‥

佐衛門「え?なんで‥‥」

比叡「お待たせしました!」コトッ

佐衛門「えっ‥‥‥?」

比叡「さあ、遠慮なく召し上がって下さい!」ニコ‥ニコ‥

佐衛門「‥‥‥」カチャ

利根川「お、おい‥‥?佐衛門‥‥‥!」

佐衛門‥‥無言でカレーを口に運ぶ‥‥‥!

山崎「うっ‥‥‥た、食べた‥‥‥!」

そして‥‥‥!

佐衛門「‥‥‥」スッ

比叡「どうですか?」

佐衛門「比叡さん‥‥‥このカレーですが‥‥‥」

比叡「はい!」

佐衛門「とてつもなく‥‥不味いです‥‥‥!」

山崎「!!」

利根川「!!」

満潮「!!」

曙「!!」

比叡「えっ‥‥‥?」

佐衛門「凄まじい不味さ‥‥‥!ある意味驚きです‥‥‥!」

比叡「えっ‥‥。えっ‥‥。そ‥‥そんなに不味いですか‥‥‥?」ガタガタ

佐衛門「『そんなに』という言葉では片付けられません‥‥‥!悪魔的です‥‥‥!」

比叡「あ、悪魔的‥‥‥」ガタガタ

佐衛門「いや、どちらかというと殺人的と言ったほうがいいかも‥‥‥!」

比叡「さ、さつじんてき‥‥‥」ガタガタ

佐衛門「というより‥‥これはもう毒物‥‥‥いや‥‥核兵器‥‥‥!」

比叡「ど、どく‥‥‥へ、へいき‥‥‥」ガタガタ

利根川「お、おい‥‥佐衛門‥‥‥!その辺にしてやれ‥‥‥!」

佐衛門「いえ、ハッキリと言ったほうが本人のためです‥‥‥!」

佐衛門「二度とこんな不味いという言葉で片付けるのもおこがましい、殺人カレーを作らせないためにも‥‥‥!」

佐衛門「死人が出てからでは遅すぎます‥‥‥!」

比叡「し、しに‥‥‥」ガタガタ

比叡「み、皆さん‥‥わ、私のカレーって‥‥死ぬレベルですか‥‥‥?」ガタガタ

利根川「いや‥‥」サッ‥

山崎「まあ‥‥」サッ‥

満潮「えっと‥‥」サッ‥

曙「うん‥‥」サッ‥

佐衛門「この皆さんの表情を見れば分かるでしょう!死ぬレベルです‥‥‥!」バンッ

比叡「ひぇっ‥‥‥」クラッ

満潮「わっ!比叡さん!」ガシッ

曙「言ってること、私よりきつくない‥‥‥?」

山崎「うん‥‥‥」

利根川「‥‥‥」


ドライな佐衛門、通称ドラえもん‥‥言葉だけで戦艦を撃沈‥‥‥!
恐るべし‥‥ドラえもん‥‥‥!

―続く―

皆さん、感想ありがとうございます。
次からは少し投稿ペースが遅くなります。

鎮守府での生活が始まって2週間‥‥。
利根川の艦隊は順調に深海棲艦を駆逐していき、練度を高めていった。
それと同時に艦娘の数も増えていき、鎮守府内は賑やかになっていく‥‥‥!

―執務室―

利根川「‥‥‥」カリカリ

プルルル‥ プルルル‥

利根川「ん?」ピッ‥‥

利根川「もしもし‥‥‥」

兵藤『利根川‥‥‥!』

利根川「!会長‥‥‥!」

兵藤『どうじゃ、その後‥‥ワシの鎮守府の様子は‥‥?』

利根川「はっ‥‥!現在、黒金海運の航路上に現れる深海棲艦を順調に駆逐おります‥‥!」

兵藤『クク‥‥そうかそうか‥‥!』

利根川「あの海域にいる深海棲艦共を絶滅させるのも、もはや時間の問題かと‥‥」

兵藤『よし‥‥!明日、そっちに向かうからのう‥‥‥!』

利根川(えっ‥‥?)

兵藤『施設の案内を頼むぞ、利根川‥‥‥!』ガチャリ‥

利根川(明日‥‥‥!?)ツー‥ツー‥

利根川の鎮守府に、突如訪れる緊急事態‥‥!
絶対的王者‥‥‥。
理不尽な暴君が君臨する‥‥‥!

―第1会議室―

利根川「と言うわけで‥‥明日、この鎮守府に会長が来る事になった‥‥‥!」

利根川「無論‥‥というか、言うまでもなく‥‥‥会長の機嫌を損ねるような事は避けねばならん‥‥‥!」

明石「会長って、帝愛の一番偉い人ですよね?」

大淀「帝愛のトップ‥‥兵藤和尊会長ですね」

利根川「うむ‥‥。しかし会長は『一番偉い人』などという言葉では括れぬお方だ‥‥!」

利根川「お前達には細心の注意を払ってもらわなければならん‥‥!」

山崎「下手な事を言えば、即『制裁っ‥!』ですからね‥‥」

明石「そ、そんなに凄い人なんですか‥‥?」

佐衛門「凄いなんてものじゃないですよ。あれぞまさしく理不尽の塊です‥‥!」

佐衛門「気まぐれで終始不機嫌、パワハラなんて日常‥‥というか生きる上での必需事項‥‥みたいな人です‥‥!」

明石「うわぁ‥‥」

利根川「本人の前では決して言えぬが‥‥まあ‥‥山崎と佐衛門の言う通りのお方だ」

利根川「艦娘のみならず、妖精を含めたスタッフ全員に周知徹底してもらわねばならぬ‥‥!」

大淀「了解しました。では後ほど会議を開き、艦娘の皆さんには私の方から伝えておきます」

明石「では、私は妖精さん達に伝えておきますね。効果あるかわかりませんけど‥‥‥」

利根川「ああ、頼む‥‥。くれぐれも念押しを忘れずにな‥‥‥!」

山崎「しかし‥‥心配なのは普段から利根川先生に突っ慳貪な艦娘ですね‥‥‥」

佐衛門「突っ慳貪と言うと‥‥満潮や曙、霞の事ですか‥‥?」

山崎「ああ‥‥。もしあの調子で会長に話しかけようものなら‥‥‥!」

佐衛門「『制裁っ‥!』どころか『解体っ‥!』ですね‥‥」

山崎「間違いなくそうなる‥‥!利根川先生、彼女達はどうするんですか?」

利根川「安心しろ。あいつらは、会長がいる間は遠征に出せばいい‥‥!」

山崎「あ、なるほど‥‥!遠征に行かせれば会長と会うこともないですからね」

利根川「ああ。心配な奴は会長と会わせないようにすればいいだけだ‥‥!」

こうして‥‥利根川が考える言動が不安なメンバーは、
予め遠征に向かわせる事で対処する‥‥!

そして迎えた翌日‥‥。
ついに帝愛の王、兵藤和尊こと会長が鎮守府にやってくる‥‥。
この日の利根川は、艦隊の指揮を大淀に任せ、会長の案内役として行動していた‥‥!

利根川「会長、本日はようこそ鎮守府へ‥‥‥!」

兵藤「うむ‥‥。しかし‥‥なんじゃ‥‥。随分とまあ‥‥みすぼらしい所じゃな‥‥‥!」

利根川「はっ‥‥!も、申し訳ございません‥‥‥!」

兵藤「まあよい‥‥。で、艦娘というのはどこにおるんじゃ‥‥?」キョロ‥キョロ‥

利根川「はっ‥‥!彼女達はこちらの部屋にいます‥‥!」


利根川が部屋に案内しようとしたその刹那‥‥!
突如現れる来訪者が一人‥‥‥!


金剛「Hey、提督ぅー!」ガシッ‥

利根川(うっ‥‥!こ、金剛‥‥!)

金剛「Tea timeにしませんカー?」

兵藤「おい、ツノ。なんじゃお前は‥‥?」

金剛「What's?提督、このおじいさんは誰デスカー?」ユビサシ

利根川「バ、バカ‥‥!昨日、大淀から説明があったろう‥‥!兵藤会長だ‥‥‥!」ヒソヒソ

金剛「Oh!貴方が兵藤会長デスネー?私は金剛と申しマース!よろしくお願いしマース!!」ビシッ

兵藤「ほう‥‥金剛‥‥‥。確か戦艦だったかの‥‥‥つまりお前が艦娘か‥‥!」

利根川「は‥‥はっ‥‥‥!こちらは金剛型1番艦の戦艦、金剛でございます‥‥‥!」

兵藤「ところでツノ。キサマ‥‥なぜそんな格好をしておる‥‥‥?」

金剛「この艤装の事デスカー?これは、提督に貰った大切な装備ネー!」フンスッ

兵藤「あ‥‥?利根川にもらった装備じゃと‥‥‥?」ピタッ‥

利根川(ぐっ‥‥‥!ま、まずい‥‥‥!この格好、気に入らなかったか‥‥‥?)

兵藤「カカカッ‥‥!なるほど、これが艦娘の艤装か‥‥!」

利根川(‥‥‥!)

兵藤「中々良い趣味をしとるの‥‥!利根川よ‥‥‥!クク‥‥!」バニッ‥バニッ‥

利根川「はっ‥‥は!ありがとうございます‥‥‥!」

利根川(セ‥‥セーフか‥‥‥全く、心臓に悪い‥‥‥!)

金剛「会長も良い装備をしてますネー!」

兵藤「ほう‥‥わかるかの‥‥?」

金剛「Hi!もちろんデース!Japanese"KIMONO"は美しいネー!」

兵藤「カカカッ‥‥!まあ‥‥王であるワシが着てるから当然じゃな‥‥‥!」バニッ‥バニッ‥

利根川(ふう‥‥。金剛が来てどうなるかと思ったが‥‥会長もご機嫌な様子‥‥‥!)

利根川(このままで終われば良いが‥‥)

―工廠―

利根川「こちらが工廠でございます‥‥!」

兵藤「ほーう‥‥。ここで艦娘が作られとるわけじゃな‥‥‥」

伊58「てーとく、工廠に何かご用?」

利根(うっ‥‥‥!)


現れたのはゴーヤこと伊58‥‥!
利根川艦隊で最初に着任した潜水艦である‥‥!


伊58「あ、この人写真でみたよ!おじさんが会長でち?」

兵藤「おじさん‥‥?」ピタッ‥

利根川(がっ‥‥!まずいっ‥‥‥!)

兵藤「カカカッ‥‥!言うのう、でち公‥‥‥!」バニッ‥バニッ‥

伊58「むー!でち公じゃないよー!ゴーヤだよぉー!」

利根川(セ‥‥セーフか‥‥‥!全く、余計な事を‥‥‥!)

兵藤「ところで、でち公‥‥!キサマ、なんでそんなものを着ておる‥‥‥?」ビシッ


会長が指差したのは、伊58が着ている水着‥‥!
潜水艦が着用するれっきとした艤装である‥‥‥!

が‥‥‥!

会長からみればただのスクール水着‥‥‥!
つまり‥‥あらぬ誤解を受けかねない状況‥‥‥!


伊58「これ?てーとく指定の水着だよ!」ニコッ‥

利根川(がっ‥‥‥!)

兵藤「てーとく指定の水着ィ~~~?利根川‥‥貴様っ‥‥‥!こんなちっこい娘に自分が指定した水着を着せておるのか‥‥‥?」ギロ‥

利根川「こ‥‥これは機能美溢れる水着でして‥‥‥!潜水艦は水着でないと敵を攻撃しにくいのです‥‥‥!」

伊58「うん、すごいスクール水着なんだよ!ほら、つるつるして機能的なんだって!」

利根(バカッ‥‥!それ以上何も言わないでいい‥‥‥!言うな‥‥‥!)

兵藤「つるつるして機能的だと‥‥‥?」ピタッ‥

利根川(ぐっ‥‥!ま、まずい‥‥‥!変な風に捉えられたか‥‥‥?)

ざわ‥ざわ‥

兵藤「ククク‥‥なるほどの‥‥水中で泳ぎやすくするためか‥‥‥!」

兵藤「おい、利根川‥‥‥!」

利根川「はっ!」

兵藤「これを債務者(クズ)共に着せ、迫るサメから逃げ惑うゲームなんてどうじゃ‥‥‥?」

利根川「そ‥‥それは実に素晴らしいアイデアかと‥‥‥!」

兵藤「カカカッ‥‥!スクール水着を着た変態がサメに食われまいと逃げ惑う‥‥‥!」

兵藤「さぞかし、良い見世物になるだろうな‥‥‥!」

利根川「はっ‥‥!圧倒的同感‥‥‥!」

兵藤「クゥ‥‥クゥ‥‥!想像しただけで笑えるのう‥‥‥!」バニッ‥バニッ‥

利根川(ふう‥‥。あ‥‥危なかった‥‥‥!もう少しで地雷を踏む所‥‥‥!)

伊58「てーとく、この人何でこんなに笑ってるんでち?」

利根川「しっ‥‥!いいからお前は訓練所に戻っていろ‥‥‥!」ヒソッ‥


こうして‥‥危ないシーンも多々あったが‥‥‥。
鎮守府内の案内が無事完了‥‥‥!
残るは入渠施設のみとなった‥‥‥!

利根川「最後に‥‥こちらが入渠施設となります‥‥‥!」

兵藤「ほう‥‥まるで風呂場のようじゃな‥‥‥」

利根川「はっ‥‥!艦娘はこちらで傷を癒す際、風呂場としても利用するとか‥‥‥」

兵藤「なるほど‥‥。利根川‥‥お前、覗いたりはしてないだろうな‥‥‥?」

利根川「ご、ご冗談を‥‥!それだけはアンタッチャブル‥‥‥!」

兵藤「クク‥‥ならよい‥‥‥!」

利根川(ふう‥‥。一時はどうなるかと思ったが‥‥‥これで全ての施設を案内完了‥‥‥!)

利根川(あとは会長を送り迎えするだけ‥‥!)

北上「あれ?提督。そこで何してんのー?」

利根川(うっ‥‥‥!)


利根川が安堵した瞬間‥‥!
現れたのは、海域に出撃していた艦隊の旗艦、北上‥‥‥!
重雷装巡洋艦となってからは、起用される事も多くなり‥‥。
場合によっては、旗艦を勤めることもある‥‥スーパー北上様である‥‥‥!


利根川「お、お前ら‥‥その格好は‥‥‥!」

北上「ああ、これー?いやー、敵の主力艦にやられちゃってさあ」

瑞鳳 「でも、ちゃんと勝利してきたのよ!」

如月「うふふっ。艤装はやられちゃったけど‥‥私達のか・ち・よ」ウィンク

戻ってきた艦隊は、旗艦の北上を含め半数の艦娘が中大破していた‥‥!
敵も主力艦隊となれば、艦娘を軽々中・大破してくる者がいる‥‥!

そして、問題は‥‥その格好‥‥‥!

中・大破した艦娘は艤装が壊れ、際どい格好になる者も少なくない‥‥!
つまり‥‥!


あらぬ誤解を受けかねない状況‥‥‥!


兵藤「利根川‥‥あいつらは何であんなに服が肌蹴ておるんじゃ‥‥?」

利根川「か、艦娘は中破及び大破するとこうなるようで‥‥‥!」

利根川「おい、お前達‥‥‥!早く入渠してこい‥‥‥!」ヒソッ‥

北上「じゃ、とりあえず直すね~」スタスタ

瑞鳳「やられちゃったなー。少し長湯するね!」スタスタ


北上、瑞鳳と入渠に入った‥‥その刹那‥‥‥!


如月「んふふっ♪よかったら、あなたも一緒にお休みする?」

利根川「がっ‥‥‥!」


如月、まさかの爆弾発言‥‥‥!



兵藤「!」ピクッ

無論、これは如月流のジョークである‥‥‥!
が‥‥しかし‥‥‥!
傍からみれば、小さな子供が大人を誘っているようにしか見えない状況‥‥‥!


如月「司令官になら、全部見られても、へ・い・き♪」

兵藤「見られても平気‥‥‥?利根川‥‥まさか‥‥‥」

利根川「おいっ‥‥!バカッ‥‥‥!やめろっ‥‥‥!おいっ‥‥!」ガシッ‥

利根川‥‥思わず如月の肩に手を置く‥‥!

如月「ふわぁぁぁぁ!そこはダメ~///」

利根川「がっ‥‥‥!」


如月‥‥さらに悪ノリ‥‥‥!
頬を染めて色っぽい声を出して利根川を挑発‥‥‥!
状況‥‥‥悪化‥‥‥!

最悪‥‥‥!

最悪の状況‥‥‥!!

利根川「おいっ‥‥!早く入渠にしてこい‥‥‥!頼む‥‥‥!!」

如月「もぅー、司令官も好きなんだから‥‥‥♪」

利根川「違うっ‥‥!そうじゃないっ‥‥‥!」

兵藤「利根川‥‥キサマぁ~~~!」ギリギリ

利根川「か、会長‥‥!こ、これは‥‥‥!」

兵藤「こんな年端もいかぬ娘を‥‥‥!手篭めにしたというのか~~~~!!」ギリギリ

利根川「ご、誤解です‥‥‥!こ、これはそういう意味ではなく‥‥‥!」

兵藤「黙れっ‥‥!このロリコンめっ‥‥‥!制裁っ‥!制裁っ‥!制裁っ‥!」ビシッ‥ビシッ‥

利根川「がっ‥!ぐっ‥‥!」


利根川‥‥ロリコン説浮上‥‥‥!
事情を知らぬ者からしばらく引かれる事になる‥‥‥!


利根川「如月‥‥‥!時と場所と場合を考えろ‥‥‥!」

―続く―

>>117-118
一部、川が抜けて利根姉さんになってました。
利根川「違うっ‥‥‥!利根ではどこぞの重巡洋艦だ‥‥‥!」

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