二宮飛鳥「異能バトル」 (275)


総選挙前からダラダラ書いてた作品です。ご了承下さい。
キャラの口調等おかしいところがありますが、ご勘弁を

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594784018


〔プレイヤー待機室〕


飛鳥「暗い部屋…いや、壁が黒い部屋か…」

飛鳥「開始まであと5分、か…」

晶葉「能力の説明とかが欲しかったら私に聞けばいいぞ」

飛鳥「…………」

晶葉「どうかしたか?」

飛鳥「いや、見慣れない姿だと思ってね。なんでそんなに小さくなってるんだい?しかも浮いてるし」

晶葉「私はこのゲームの案内人みたいなものだ。一人につき一体の私がいる。自分の能力やゲームのシステムに関しては私に聞くといい」

飛鳥「なるほど、チュートリアルというかヘルプというか」

晶葉「まぁそんな感じだ」


飛鳥「じゃあこのゲームの基本システムから聞こうかな。何をすれば勝ちで、どうなると負けるのか」

晶葉「視界に3つのゲージが見えるだろう?スタミナ、攻コスト、守コストのゲージだ。守コストが0になったら負け。最後まで生き残っていた人が勝ちだ」

飛鳥「HPみたいなものか…何故分かりやすくHPと言わないのか」

晶葉「スタミナ、攻コストときたら守コストも使いたくなるだろう?」

飛鳥「製作者の拘りというヤツかい?」

晶葉「そしてその守コストを減らすために各々スキルを使って戦うのだ」


飛鳥「スキル…!」

晶葉「スキルには色々種類がある。スタミナを消費して発動するもの、特定の条件を満たすことで発動できるもの、常時発動できるもの、使用回数が定められたもの。だな」

飛鳥「…?まてよ、攻コストは何に使うんだい?」

晶葉「攻コストは威力増強と範囲拡張をプラスすることができる」

飛鳥「なるほど…ちなみにボクのスキルは…」

晶葉「回数制限が二種類とスタミナ消費系、常時発動型が1つずつ。結構偏ってるな」

飛鳥「偏ってるのか…器用貧乏よりはいいが」

晶葉「……そろそろ時間だな。準備はいいか?」

飛鳥「あぁ。大丈夫さ」

晶葉「さあ、楽しんでこい!」


《3》

《2》

《1》

《スタート》


〔大通り〕


飛鳥「壁が消えていく…なるほど、こういうことはVRゲームならではってところか」

飛鳥「…周りに人はいない。……しかし車道のど真ん中は流石に目立つな、せめて歩道に」


《きらりん☆シャワーー!!》


飛鳥「!?」

飛鳥「近くに人はいないのに声が!」

晶葉「これは範囲攻撃だ!範囲内にいる人間には発動した人の声が聞こえるんだ!」

飛鳥「範囲攻撃…!」

飛鳥「車道の至る所が黒く…!いや、これは影…?上か!」

直径5mの飴玉「やあ」

飛鳥「う、うわああぁぁ!!」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨!!!


飛鳥「はぁっ…!はぁっ…!」

飛鳥「奇跡的に当たらなかった…道の端の方にいて正解だった…」

晶葉「ちなみに範囲攻撃は、どこで使われたのかが分かるぞ」

飛鳥「……北西か…今はとりあえず逃げよう。もう一度あれを出されても対処出来る自信がない」

飛鳥「しかし大通りは危険だな。すぐに見つかってしまう。ここは一旦隠れて《壊れたラジオ》をセットするか…」タタタッ

ドンッ

飛鳥「うわ!」

?「きゃっ!」


飛鳥「すまない、急いでいたもので」

?「こちらこそすみません。急に飛び出したりして……って今はゲーム中でした!」

飛鳥「ハッ!…そうだつい癖で」

?「リアルに寄せすぎるとこんなことが起きるんですね。流石VR…」

飛鳥「って関心してる場合じゃないな…今は敵同士だっていうのに余裕じゃないか、ありす」

ありす「ムッ…飛鳥さんこそ。相手が私だからって油断してるんです…か……」

飛鳥「……?どうかしたのかい?ありす」

ありす「き、きらりん…ロボ……」

飛鳥「!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ドッゴオ☆

ズン!

飛鳥「うわぁ!」

ありす「きゃあ!」

ニョワー☆

飛鳥「……ね、狙いは違う場所だったみたいだね」

ありす「た、多分ですけど、さっきの飴で位置を知らせて、集まったところをきらりんロボで…」

飛鳥「一網打尽…か」

ありす「はい」


飛鳥「………………」

ありす「………………」

飛鳥「…なぁありす。1つ提案があるんだが」

ありす「…奇遇ですね。私もです」

飛鳥「ボクの力じゃアレをどうにかするのは不可能な気がしてならない」

ありす「…奇遇ですね。私も同じ気持ちです」

飛鳥「手を組まないか?ありす」

ありす「わかりました。裏切るとかはナシですよ?」

飛鳥「あぁ。もちろんさ、よろしくありす」

ありす「はい。よろしくおねがいします」


飛鳥「さて。手を組むとは言ったものの、これからどうするか…というか、ありすの所にも晶葉がいるんだな」

晶葉(飛)「あぁ。全プレイヤーに1人ずつついているぞ。ちなみに私は飛鳥についていた晶葉だ」

晶葉(あ)「私はありすについていた晶葉だ。まぁもうすぐ消えるがな」

ありす「どういうことですか?」

晶葉(あ)「ゲーム開始から10分経ったら消える仕組みになっているのだ」

晶葉(飛)「あとは自分達で見て、調べて、このゲームのことを知っていってほしい!」

晶葉「それでは!」

シュンッ


ありす「消えた…」

飛鳥「消えたね…」

ありす「…まずは情報の交換をしませんか?お互いの能力とか」

飛鳥「確かに必要なことだね。じゃあボクから先に説明させてもらうよ、構わないかい?」

ありす「はい。お願いします」

飛鳥「まずはこの腰に付いてる小さなラジオ。常時発動型の《壊れたラジオ》だ。こいつは」

ありす「チューナーで距離を合わせることにより半径1kmまでの会話を聞くことができるスキル。会話が行われている場所との距離を測ることができるが、方角は分からない…」

飛鳥「……何故説明する前に分かったか聞いてもいいかな…?」

ありす「はい。これが私の常時発動スキル《ありすのタブレット》です。スキル名で検索すればそれについて詳しく知ることができます」

飛鳥「なるほど…スキル名を知るという難関さえ突破出来ればとても有能な能力だね」

ありす「はい。でも今分かっているのは私のスキルと飛鳥さんのラジオだけです」


飛鳥「《きらりん☆シャワー》は?」

ありす「それってもしかしてさっき降ってた巨大な飴のことですか?私は範囲外にいたので」

飛鳥「スキル名を聞いていないのか」

ありす「はい。では、《きらりん☆シャワー》…検索」

ありす「直径5mの飴玉を半径2km圏内に降り注がせる能力。人の真上からは落ちてこないので動かなければ当たらない……らしいです」

飛鳥「気付いた時には動く暇すらなかっただけだが、結果的に正解を当てていたのか…」

ありす「しかしきらりんロボすら出してくるきらりさんにどうやれば勝てるんですか…」

飛鳥「……いや、いけるかもしれない」

ありす「…え?」

飛鳥「敵を知り己を知れば百戦危うからず。なんて言うだろう?敵の情報を知れば活路は開けるハズだ。現に、もうボクらは《きらりん☆シャワー》を確実に避けられる方法を知っている」

ありす「確かに…でも今回みたく都合よくスキル名を知ることなんてできるんですか?」

飛鳥「フ…そこでボクのラジオさ。これで会話を盗み聞きしてスキル名を特定。タブレットで検索すれば…」

ありす「弱点を知れる…!」


飛鳥「あぁ、そうだ。ボクは戦闘向きのスキルはあまりないから、こうでもしないと勝てそうにない」

ありす「私も、唯一の攻撃手段は回数制限がありますし」

飛鳥「ならボクらは、情報を集めてから不意をついて暗殺をしていこう。闇の住人(アサシン)になるのさ」

ありす「邪道じゃないですか…」

飛鳥「邪道か……あぁ、そうだ。邪道さ。でもそれが一番ボク達の勝利のパーセンテージが高い方法だ……さぁありす。ボク達の邪道で、数多の王道覇道を打ち砕いていこう」

ありす「えぇ…」

飛鳥「闇の住人(アサシン)は嫌かい?」

ありす「いや、そういう訳では…」


飛鳥「日本風に、忍者とでも言ったほうがいいかい?」

ありす「いや、だからそういうことではなくてですね…」

ラジオ『今誰か忍者って言いませんでしたか??』

飛鳥「!?」

ありす「!?」


ありす「この声はあやめさんです!一体どこに…!」

飛鳥「待つんだありす。今のはラジオが拾った声だ」

ありす「ラジオ…つまり離れた場所の…?」

飛鳥「あぁ。今のラジオのチューナーは……え?」

ありす「どうかしたんですか?」

飛鳥「1km……」

ありす「えっ」

飛鳥「1km離れた場所での声だ…」

ラジオ『おかしいですね…今確かに忍者って聞こえたのに…』


ありす「そ、そういうスキルなんでしょうか…?」

飛鳥「…………少し前にね。特急快速の電車に乗ったんだ。勿論変装をした状態でね」

ありす「いきなりなんですか」

飛鳥「とある駅を止まらずに通過したんだ……そして、その直後にメールが来たんだ。『黒いフレームの眼鏡も似合ってますね!可愛いです』と」

ありす「…………」

飛鳥「つまり忍者に関してもその類のものじゃないかなと」

ラジオ『誰かがまた忍者って言いました!』

飛鳥「………………」

ありす「………………」


ラジオ『さっき誰か眼鏡って言いませんでした??』

飛鳥「!?」

ありす「!?」


ラジオ『あれ、あやめちゃんじゃないですか!《まあまあ眼鏡どうぞ》』

ラジオ『え?あ、いつのまにか眼鏡が……ああああ!!目がぁ!目が痛い!頭も痛いぃ!』

飛鳥「!?」

ありす「!?」

ありす「え、えっ?あやめさんに何が起きたんですか??」

飛鳥「わ、分からない…もしかしていつものあの台詞がスキルとして確立しているのか…?」

ありす「一回検索してみましょう。《まあまあ眼鏡どうぞ》…検索」

ありす「眼鏡を掛けた状態になる。ゲームが終了するまでその眼鏡は外れない。そしてその眼鏡は老眼鏡以上の度数を持つ。目で見えてる相手にかけられる」

ラジオ『今また誰か眼鏡って言いました!しかも4回も!』

飛鳥「………………」

ありす「………………」

ラジオ『あっちのほうから聞こえm』

ラジオ『………』

ありす「ラジオが切れましたね…」

飛鳥「移動したから距離のチューニングが合わなくなったんだろう」カチャカチャ

ラジオ『おおおおぉぉぉ!!!待ってて下さいねー!!!今!メガネっ娘にしてあげますよー!!!』

飛鳥「800m??すごい速さで近づいてる!」

ありす「急いでここを離れましょう!」タタタッ

飛鳥「分かった!これからは何があっても眼鏡と口に出さないようにしよう、ありす!」タタタッ

ありす「はい!もう絶対に眼鏡なんて言いません!」

ラジオ『誰かがまた眼鏡って言いました!今度は二回!さっきの場所からは少し移動してますね!!』

飛鳥「………………」

ありす「………………」

飛鳥「逆方向に走るぞ!」

ありす「はいっ!」


ラジオ『あれー?このあたりで誰かが眼鏡って言ったと思うんだけどなぁ…』

飛鳥「はぁ…はぁ…とりあえず出会わなかったみたいだ」

ありす「はぁ…はぁ…運がいいですね、私たち」

飛鳥「はぁ…はぁ…っていうかなんでゲームなのに息切れしてるんだ」

ありす「はぁ…はぁ…分からないです…」

飛鳥「はぁ……ふーっ。……さて、これからどうしようか」

ありす「見つかったらアウトなんですよね」

飛鳥「リタイアか視界を奪われるか…どちらも嫌だな」

ありす「隠れて攻撃しようにも、私のスキルは使用回数がありますし」

飛鳥「ボクの攻撃も隠れながらは無理だね」

ありす「じゃあとりあえずここは」

飛鳥「逃げの一手で」


ラジオ『《ゆるふわ空間》~』

飛鳥「!」

ありす「藍子さんの声…!」

ラジオ『…ぁああ~ぃいい~くぉおお~ち~ぃや~』

飛鳥「……なんだ?」

ありす「春菜さんの声がスロー再生みたいにゆっくりになってます」

飛鳥「ありす、検索を」

ありす「はい。《ゆるふわ空間》…検索」

ありす「周囲5mの人の動きをゆっくりにする…」

ラジオ『未央ちゃーん!茜ちゃーん!オッケーだよー!』

ラジオ『んむぁああ~~んむぁああ~~んむぇぇがぁぁぬぇえ~』

ありす「執念がすごい…」

飛鳥「ゆっくりにさせられてもやることは変わらないということか…」


ありす「そして、未央さんと茜さんを呼んだということは…」

飛鳥「ポジティブパッションが揃ってるみたいだね」

ラジオ『流石です藍子ちゃん!やりましたね!』

ラジオ『茜ちん!それ以上近づくとゆっくりになっちゃうよ!』

ラジオ『おっとそうでした!危ない危ない』

ラジオ『あーちゃん、ありがとう!それじゃ二人ともいっくよー?』

ラジオ『ユニットスキル《スパイスパラダイス》』

飛鳥「ユニットスキル…?」


ラジオ『もが!むー!むーー!』

ありす「これは…」

飛鳥「口を塞がれたのか…?」

ラジオ『目、目がぁ!』

飛鳥「春菜さんのスキル、間に合っていたのか…」

ありす「藍子さん…」

ラジオ『むーむーむむむむーむ!』

ラジオ『あーちゃん大丈夫??』

ラジオ『目を開けると頭痛がする…』

ラジオ『さあ春菜ちゃん!暴れないで下さい!会場はあっちですよー!』

飛鳥「移動するのか…?会場って一体…」

ありす「ちょっと覗いてみます」

飛鳥「ありす、今大通りに出たらまずい!見つかるぞ!」

ありす「いえ、私のタブレットのカメラ機能を使うんです」

飛鳥「…カメラを?」


ありす「はい。壁からカメラの部分だけを出せばタブレットの画面を見るだけで大通りの様子が見れるハズです。そうすれば顔や体を出さずに済むので見つかりにくいかと」

飛鳥「なるほど、そんな使い方が…ありす、君は賢いな」

ありす「え、あ…こ、このくらい常識ですよ」

飛鳥「そうなのかい?」

ありす「そ、そうです。常識です。……は、早く行きますよ!」

飛鳥「あぁ。…一応ボク達からは離れていってるみたいだし、問題ないとは思うが慎重に。ね」

ありす「はい」


ラジオ『しかし流石先輩ですね!春菜ちゃんを瞬時に捕まえるなんて!』

ラジオ『むーむーむむむむーむ!むーむーむむむむーむ!』

飛鳥「…どうだい?ありす、状況は」

ありす「向かい側の路地裏に向かってるみたいです。隣の大きな通りに行くのでしょうか」

飛鳥「先に大きな通りがあるのか?」

ありす「はい。最初にアプリで周りの地図を見ました」

飛鳥「本当に便利だなそれ」


ラジオ『目を瞑ったまま動くのってなんだか少し怖いね』

ラジオ『んー?あーちゃんは未央ちゃんの案内が信用できないのかなー?じゃあこの手を離しちゃおっかなー?』

ラジオ『わぁ??信用してるから離さないで!えいっ!』

ラジオ『うおっとぉ!あーちゃん、急に腕に抱きついてきたら危ないよ』

ラジオ『だって目を開けられなくて怖いんだも~ん』


ありす「え、えっと…黄色くて丸いものから手足が生えたような……変な…生き物?に春菜さんが捕まっています」

飛鳥「黄色くて丸い?なんだそれは」

ありす「正面からじゃないのでよく分からないです」


ラジオ『も~歩きにくいって~あーちゃん』

ラジオ『むーむーむむむむーむ!』

ラジオ『二人とも腕を組んで仲良しさんですね!羨ましいです!私も混ぜて下さーい!」

ラジオ『わわ!茜ちん私の方に来るの??両方に抱きつかれたら歩きにくいよ~』

ラジオ『むーむーむむむむーむ!』

ラジオ『目を開けられないから仕方ないんだもん』

ラジオ『では私も目を瞑ります!なので仕方ないです!』

ラジオ『いやいや、茜ちんのその理論はおかしい』

ラジオ『むーむーむむむむーむ!むーむーむむむむーむ!』


ありす「というかさっきからずっと、口を塞がれてても眼鏡をかけようとしてますよね」

飛鳥「あぁ。イントネーションが完全に《まあまあ眼鏡どうぞ》と同じだな」


ありす「三人が路地裏に消えました…どうしますか?」

飛鳥「別の路地から隠れて追おう。ボク達はまだ戦っていないし、実力を知るという意味でも実戦は経験した方がいい。隙を見て辻斬りといこうじゃないか」

ありす「なんか私達悪役みたいですね…」

飛鳥「邪道を逝くとはそういうものさ」

ありす「なんか嫌なんですがそれ…」


ラジオ『ん~。もうちょっと前かなー』


飛鳥「!」

ありす「!」

飛鳥「今のはさっきの三人の声じゃない!」

ありす「別方向から誰か来てるってことですか??」

飛鳥「こっちからは誰も来ない!ありす!大通りは??」

ありす「誰もいません!右にも左にも!」

飛鳥「別の路地にいるのか…?」

ありす「地図を出します!距離は??」

飛鳥「さっきので50mだ!今は喋ってないみたいで拾えない!」

ありす「50m…!ここから50m…」スッスッ

ありす(……? 今地面を何かが動いたような?)


飛鳥「何かあるかい?ありす」

ありす「…………」

飛鳥「ありす?どこを見てるんだ」

ありす「影!」バッ!

飛鳥「え?」

ありす「飛鳥さん!」

グイッ!

飛鳥「うわぁ!」

グシャア!!

杏「う~ん、2人纏めては出来なかったかー…まぁいいや、まずは1人……」


飛鳥「あ、ありす!ありす!!」

杏「これやると車ボロボロになるんだよね~。まぁ発動し直せばいいだけなんだけど…《おーる・ふぉー・ふぁん》」

飛鳥(遊具の車…!?)

杏「さぁ、次は飛鳥の番だよ」ブロロロロロロ??

ドガッ!

飛鳥「ガッ! あ゛ぁ゛!」ゴロゴロ

飛鳥「ぐっ…ぅ……」

飛鳥(大通りまで飛ばされた…)

杏「さぁ、優勝賞金はあんずのものだぁー!」ブロロロロロロ??

飛鳥「くっ!」ダッ!

ガァン!

飛鳥「う゛あ゛あ゛!!」

杏「そりゃハンドルがあるんだから方向くらい修正できるよ、やるならギリギリで避けないと」ブロロロ…

飛鳥「ぐぅ……!」


ラジオ『飛鳥さん!飛鳥さん!聞こえますか!飛鳥さん!』

飛鳥「ありす??生きていたのか??」

ラジオ『飛鳥さん!聞こえますか!飛鳥さん!』

飛鳥「あぁ!聞こえている、聞こえているよ!」

ラジオ『飛鳥さん!飛鳥さん!聞こえていたらエクステを触って下さい!』

飛鳥「…!そうか、これはラジオだからボクの声は届かないのか…!」


杏「これもっと急に曲がれればなぁ…………よし!もう一度だー!」ブロロロロロロ??

飛鳥「来る!………ギリギリで…!」

杏「大人しく負けろ~!」ブロロロロロロ??

飛鳥「ギリギリで……避ける!」ダッ!

杏「あ!」ブロロロロ??

飛鳥「ふーーっ」

飛鳥(怖いけど案外なんとかなるものだな…)

ラジオ『飛鳥さん!飛鳥さん!』

飛鳥「所詮はゲーム。ここで傷ついても現実のボクは怪我を負うことなどない…なら多少は無茶もできるってことか」ファサッ

ラジオ『! 杏さんの車はドリフトが出来ません!つまり大回りでしか曲がれない車です』


杏「避けた…!やるならギリギリで、なんて言わなきゃよかった…それにしても一回で成功させるかね普通…」ブロロロ…

飛鳥「…なるほど、確かにそのようだ」

杏「くそぉぅ!もう一度だ!」ブロロロロ??

飛鳥「ギリギリで…ギリギリで…!」

飛鳥「…避ける!」ダッ!

杏「くっ!」ブロロロロ??

飛鳥(よし、よし!避けれるぞ!)


ラジオ『…かさん!飛鳥さん!』

飛鳥「…!」ファサッ

ラジオ『! 杏さんの車ですが、安心安全設計らしく、当たってもダメージが少ないそうです!』

飛鳥「…確かに、2回まともに轢かれてるのに3割減といったところか…」


杏「2回連続はマグレじゃないよね、これ完全に把握されてるなー。対策しないと…」ブロロロ…


飛鳥(避けつつ攻撃…できるか?いや、試してみるか!)

飛鳥「いくぞ!紫電の雷(いかづち)よ!この手に纏え!《碧落のリベレイター》!」バチバチバチバチッ!!

杏「紫電の雷て…頭痛が痛いみたいな文をカッコよく叫ばれても…」

飛鳥「………?………………!? う、うるさいうるさい!!」

杏「なんか知らないけど動揺を誘えた!今がチャンス!」ブロロロロ??


飛鳥「く、来る!……ギリギリで…ギリギリで…」

飛鳥「ギリギリで……避ける!」ダッ!

杏「そっちか!」ブロロロロ??

ドガァッ!

バチバチバチッ!

飛鳥「あ゛あ゛ぁ!!」ゴロゴロ

杏「あ゛あ゛…ぐっ……」

杏「いててて…雷っていうだけあってしびれるぞこれ…」ブロロロ…

飛鳥「くっ…そりゃ対策の対策だってたてられるか…」


ラジオ『…にして下さい!飛鳥さん!ラジオの設定を10mにして下さい!』

飛鳥「10mまで近づいても大丈夫なのか…?いや、ここはありすを信じよう」ファサッ


杏「これ一回一回考える時間ができるのはいいんだけど相手にも与えちゃうのがなぁ…ドリフトができれば…」ブロロロ…

飛鳥(しかしどうする…?避けても当てられるようになった…回避が意味をなさないなんて、それじゃあ反撃なんてできないじゃないか…) カチャカチャ

飛鳥「……ん?回避が意味をなさない…?そうか…なら!」

杏「でもあのくらいのダメージ量なら受け続けてもジリ貧でこっちの勝ち!これは勝ったな!」ブロロロロ??

飛鳥(来た!……怖いけど、やるしかない…ゲームの中でくらい勇気を出してみせろ!)

飛鳥「ギリギリで…ギリギリで…」


飛鳥「ギリギリで……飛び乗る!」バッ!

杏「なぁ!?」

ガァン!

バチバチバチッ!

飛鳥「ぐっ!…うぅぅぅぅ!!」

杏「?っあああ゛あ゛あ゛!!」

飛鳥(前の方にしがみつけた!あとは!)

飛鳥「直接当てる!」バッ!

杏「あ゛あ゛あ゛ッ!……くぅ!」キキー!

飛鳥「うわっ!」グラッ

飛鳥「ガッ!ぅあぁ!」ゴロゴロ

杏「ぃよぉ~いしょ!っと」ズン!

飛鳥「あ゛あ゛!!!」

杏「あんずだって体重かければ一瞬だけウイリーできるんだよ」

飛鳥(車体に…う、腕が…挟まれ)

杏「アクセル全開!」ブロロロロ??


ザリザリザリザリザリザリ!!

飛鳥「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


ザリザリザリザリザリザリ!!!

飛鳥「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

杏「このまま歩道の柵まで!」

飛鳥「あ゛あ゛ッ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!あ゛あ゛あ゛」


ピピーッ!


杏「!?」キキー!

飛鳥「あ゛あ゛あ゛っ……はぁ…!はぁ…!」

飛鳥(何が…起き……?)

杏「くっ……体が…動かない……!」

???「そこまでよ!」


杏「な、なにものだぁ!…………今度は口が勝手に??」


???「何者だ、なんて聞かれたら答えない訳には…いかないわよね?」

???「なんだか正義のヒーローみたいですね!…いや、正義のサイキッカーですね!」

???「も~。サイキッカーはユッコちゃんだけですよ~?」

???「さあ、敵さんが待ってるわ。アレ、やるわよ!」

♪<バキューン! キラーン!

「セクシーを以って悪を征する……私たち!」

「セクシーギルティー!」


ドッカーン!!


♪<テーテーテ テーテーテ セクシー過ぎてゴメンネ★ 世直しギルティ 行くぞ!

♪<テテッテ テレレ ギルティイ↑ アア(以下カラオケver)

飛鳥(白と濃いオレンジと黄色っぽいオレンジの爆炎が…)

杏「イメージカラーなんだろうけど配置のせいでバランスが」

ラジオ『飛鳥さん!大丈夫ですか??飛鳥さん!』

飛鳥(ありす…10mまで近づいて大丈夫だろうか……体が……動かない…)

早苗「杏ちゃん!いえ、双葉杏!あなたの悪行は全て見させてもらったわ!」

早苗「遊具とはいえ車で人を何度も轢いて、挙げ句の果てには車体で抑えつけて地面にこすりつけるなんて!」


雫「早苗さん、判決は~」

早苗「勿論ギルティよ!ユッコちゃん!やっちゃって!!」

裕子「はいっ!サイキック!お色気!ビーーム!!」

ビビビビビビビビ

杏「くぅっ!体が動かない…!」


ビビビビビビビビ くるっ ビビビビビビビビ

杏「えっ」

ビビビビビビビビ

雫「びびびびびび」

パツン!  ←ボタンが飛ぶの音

雫「もぉっ、ユッコちゃ~ん」

裕子「ごめんなさーい!」


早苗「許してあげて雫ちゃん!失敗は誰にでもあるわ。さあ気を取り直してもう一度よ!」

裕子「はいっ!サイキック!お色気!ビーーム!!」

ビビビビビビビビ

杏「びびびびびび」

ドカーン!


飛鳥「爆発した…??」

ラジオ『安心安全設計の車が??』

杏「うわぁ~~~!」

ドサッ!

杏「うぅ~~。ウォッシャー液でビショビショだぁー…」

飛鳥(ウォッシャー液って何だろう…)

裕子「ウォッシャー液ってなんですか?」

早苗「車のフロントガラスの汚れを落とすための、まぁ言わば車の窓用の石鹸みたいなものね!」

裕子「なるほど!勉強になりました!」

ラジオ『あの車どこにもガラスがなかったのになんでそんなものがあるんでしょうか…?』


杏「やーらーれーたー……」シュンッ!

飛鳥(消えた…戦闘不能ということか……)

早苗「飛鳥ちゃん!大丈夫?」

飛鳥「あ、あぁ。なんとか…助かったよ。ありがとう」スクッ

飛鳥(体が動く…)

雫「いいえ~」

飛鳥「あんなに苦戦していたのに一撃とはね…」

早苗「飛鳥ちゃんが守コストを削っていてくれたからよ。ありがとう」


飛鳥「……それで、ボクとは戦わないのかい…?」

早苗「正々堂々ならともかく、そんなボロボロの状態の飛鳥ちゃんと3対1で戦うなんて、それこそギルティよ」

裕子「ムムッ!これは!…あっちの方から眼鏡を無理やりかけさせている気配がします!」ダッ!

雫「あ、ユッコちゃ~ん!…早苗さ~ん!行きましょう~」

早苗「飛鳥ちゃん…悪の道には落ちないようにね。もし悪に染まってしまったら…私達が相手になるわ」

早苗「それか、私達が全ての悪を征した後に、正々堂々戦いましょう? じゃあね!」

裕子「早く!こっちですよ!」

雫「も~ユッコちゃ~ん、はやすぎですよ~」

早苗「ほら!走るわよー!」

雫「早苗さんまで~」

飛鳥「………………」

飛鳥「ありがとう…」


ナレーション『明日は明日の風が吹く!明日は明日の悪人がいる!』

飛鳥「ありがとぉーー!!」

ナレーション『しかし!忘れてはいけない!この気持ちを!この言葉を!!』

ナレーション『セクシーをもって悪を征する!セクシーギルティの戦いはまだまだ続く!』

ナレーション『頑張れ!セクシーギルティ!負けるな!!セクシー!ギルティ!!』

♪<Let's go! セクシー過ぎてゴメンネ★

♪<脳天直撃ドバババーン!  (以下、モーレツ★世直しギルティ カラオケver.)



       -出演-

      二宮 飛鳥

      橘  ありす

   諸星 きらり    宮本 フレデリカ

   的場 梨沙     結城 晴

   神崎 蘭子     鷺沢 文香


佐藤 心   佐久間 まゆ  森久保 乃々
星  輝子   早坂 美玲   双葉 杏
本田 未央   日野 茜    高森 藍子
片桐 早苗   堀  裕子   及川 雫
関  裕美   中野 有香   脇山 珠美
向井 拓海   木村 夏樹   松永 涼
多田 李衣菜  前川 みく   上条 春菜
浜口 あやめ  池袋 晶葉


       -声の出演-

      ナレーション:???


       -出典-

 川端康成
   『雪景色』

 芥川龍之介
   『藪の中』
   
 J?K?ローリング
   『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
   『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
   『ハリー・ポッターと死の秘宝』

 山田悠介
   『リアル鬼ごっこ』

 新美南吉
   『ごんぎつね』

 宮西達也
   『おまえうまそうだな』

 太宰治
   『駆け込み訴え』

 森見登美彦
   『有頂天家族』

 宮沢賢治
   『やまなし』

       ~fin~


ヒュウウゥゥゥ……




飛鳥「セクシー…ギルティー……」

飛鳥「…………」

ありす「飛鳥さん!飛鳥さん!まだ終わりじゃないです!終わってないですよ!」

飛鳥「………ハッ!……ボクは一体何を」


ありす「飛鳥さん、大丈夫ですか?……その、色々な意味で…」

飛鳥「あ、あぁ。大丈夫だ、多分…大丈夫だと信じたい」

ありす「飛鳥さん……」

飛鳥「あの三人が現れたあたりから体がいうことを聞かず、勝手に動いていた…」

ありす「色んな意味で恐ろしい人達でしたね。春菜さんが連れられた方向とは真逆の方に行きましたけど大丈夫なんでしょうか」

飛鳥「…さっきのアレを見てしまうと、心配なんてするだけ無駄なように感じてしまうね…」

ありす「そうですね…」


飛鳥「………………」

ありす「………………」

飛鳥「…………ん?ありす?」

ありす「はい」

飛鳥「ありす??君無事だったのかい??どうやって逃げれたんだ??杏にもあの三人にも気付かれてなかったみたいだし一体どんな手を使ったんだ??」

ありす「え、あ、い、いや、一度にいっぱい聞かれても困ります!一旦落ち着いてください!私は無事です!」

飛鳥「そ、そうか…ならよかった」

ありす「まずは路地裏かどこか行きませんか?ここじゃ目立ちます」

飛鳥「…あぁ、そうだな。 …とりあえずさっき向かおうとしていた道へ行こう」

ありす「分かりました」


ありす「…?このドアは、飲食店の裏口でしょうか」

飛鳥「建物内なら見つかる可能性も低いか…すまないが、スタミナと守コストが回復するまでそこで休もう」

ありす「わかりました。 ……あれ?」

飛鳥「ありす?」

ありす「……これ」


〔システムメッセージ:建物内には入れません〕


飛鳥「…なるほど」

ありす「どうしますか?」

飛鳥「仕方ない、ここで休もう。ボクのラジオとありすのタブレットがあれば、上から来ない限りは不覚を取らないハズさ」

ありす「上にも注意しないとなんですね…」


飛鳥「さて、ありす。無事でよかったが、一体何があったんだ?教えてくれるかい?」

ありす「はい。まずどうやって逃げたか。ですが、私は《小さな妖精》という小さくなれるスキルがあるんです。使える回数に限りがありますが」

飛鳥「小さくなる…それで避けたのか」

ありす「はい。イチかバチかでしたけど、なんとかなってよかったです。そのあとは杏さんに気付かれてなかったので飛鳥さんに情報を渡して弱点を突いてもらおうかと」

飛鳥「あの時はラジオの設定が50m近くだったけど、小さくなった状態であんなに早く移動できるのか…すごいな」

ありす「あ、それは《賢者の翼》という、空を飛べるようになるスキルのお陰で早く移動できたんです。あとはタブレットで飛鳥さんとの距離をはかって、ラジオのチューニングされている所に行けば」

飛鳥「ボクに弱点を教えられる…」

ありす「はい。私の唯一の攻撃スキルは4回しか使えないので、攻撃を飛鳥さんに全て任せてしまい…それで……」

飛鳥「いいよ。過ぎたことさ…………しかしありすの攻撃スキルは4回だけなのか…」

ありす「はい。水や炎を出したり操ったりできます。他にも風とか電気とか、色々できるようになります。…5分間だけですけど」

飛鳥「水を操る……ふむ……」


ブォンブォンブォンブォン!!ブオオオォォォン!!!


ありす「!」

飛鳥「バイクか??」


拓海「うおおおおお!!!夏樹と涼の仇ぃいいいい!!」

ブオオオォォォン!!




ありす「大通りをバイクがすごいスピードで走っていきました…」

飛鳥「目的は路地裏にいるボク達ではないみたいだな…」

ありす「飛鳥さん!ラジオで何か分かりませんか??」

飛鳥「探ってみる!」カチャカチャ

ラジオ『うっ………はぁ……はぁ……これで…………三杯目……終わりました……』

ありす「春菜さんの声です」

飛鳥「すごく苦しそうだ…三杯とは一体…?」


ラジオ『すごいです春菜さん!それでは、はい!四杯目です!』

ラジオ『うっぷ……もう…………許して……』

ラジオ『むむっ??あっちからたくみんがバイクでやってくるよ!』

ラジオ『ゆるふわさせとく?』

ラジオ『うーん…バイクはゆっくりにならないから危ないかも。あーちゃんは今目が見えないし』

ラジオ『でも先輩いるから大丈夫かなって』

ラジオ『私の全力トライでバイクなんて吹き飛ばします!』


飛鳥「…あの時も言っていたけど、先輩ってのは一体誰なんだ…?」

ありす「…!そういえば《スパイスパラダイス》を検索してませんでした!」


ラジオ『拓海……逃げろって言ったのに…』

ラジオ『アタシと涼の仇だとよ…愛されてるな』

ラジオ『仇って言っても、まだリタイアになっちゃいないけどな』

ラジオ『ハハッ!確かにその通りだ。まぁ時間の問題だけどな』


ありす「検索結果でました!……《スパイスパラダイス》ユニットスキル(ポジティブパッション)。カレーメシ先輩を呼び出し、捕獲した者をテントとパイプ椅子と長机で作った会場に連れて行く。そしてカレーメシを20杯食べさせる。20杯食べ切るまで会場から外に出れず、スキルも使えない。食べる手が止まったら無理矢理食べさせる。食べきれなくなった場合はリタイアとなる…………これは……」

飛鳥「これは……相当……」

今気付いたけど、「 !! 」と「 !? 」を認識されなくて「 ?? 」になってますね。

ごめんなさい


ラジオ『うっ……こんなやられかたは流石にロックじゃないって私でも分かるよ…』

ラジオ『夏樹チャンも同じ死因になりそうだからそれで我慢するにゃ……うぷっ…』

ラジオ『…みくちゃん』

ラジオ『何にゃ』

ラジオ『……毛玉?』

ラジオ『出るかぁ!みくは猫チャンアイドルであって猫そのものではないにゃ!………………?っぷ』

ラジオ『わぁああ!みくちゃん耐えて!せめてあっち向いて!』

ラジオ『フーッ!フーッ!』


飛鳥「沢山捕まってるな……」

ありす「まるで地獄ですね…」


ラジオ『たくみんが来たよ!お願いあーちゃん!』

ラジオ『はい!《ゆるふわ空間》~』

ラジオ『茜ちん!』

ラジオ『全力!トラアァイ!!』


飛鳥「ありす!全力トライ、検索!」

ありす「はい!検索結果……なし?」

飛鳥「……え?」


ラジオ『ガシャガシャア!!』

ラジオ『ズザザァ…』

ラジオ『うわぁ危ない!茜ちん!自信満々に吹き飛ばすって言ったんだから吹き飛ばしてよ!』


飛鳥「つまり…」

ありす「スキルじゃなく、ただの掛け声みたいですね」


ラジオ『ごめんなさい!思いのほかバイクが早くて当たりませんでした!』


ラジオ『な、なつきちーーー!!なつきちが!なつきちが!!』

ラジオ『夏樹……バイクが…』

ラジオ『……騒ぐなよだりー。傷口に響く……』

ラジオ『だって…なつきち…なつきち……!』

ラジオ『まぁ、あのまま食べ過ぎでリタイアよりはまだ…カッコ悪くない……かな…………ありがとな……拓海』

ラジオ『夏樹チャン…………』

ラジオ『なつきち!なつきち!』

ラジオ『…先に……行ってるぜ…………』

ラジオ『…………………………』

ラジオ『……なつきち?…………なつきち!』

ラジオ『なつきちーーーーーー!!!!!』

ラジオ『あれあれー?みんな、食べる手が止まってるよー?』


飛鳥「鬼畜か」

ありす「鬼畜ですか」


ラジオ『鬼!悪魔!ポジティブパッション!』

ラジオ『やだなぁ、間違えてるよ、私は鬼でも悪魔でもなくシンデレラガールだよ?』

ラジオ『みくたちはこれに負けたのかっ……!』

ラジオ『はい、みくにゃん。あーん』

ラジオ『や、やめるにゃ…!いやにゃあ!もう限界にゃ!』

ラジオ『口を開いたね!えいっ』

ラジオ『にゃむ?ん~!…ング……グ……はぁ…はぁ…』

ラジオ『はいみくにゃん、あーん』

ラジオ『ング!ん!ん~~~!……』

ラジオ『はいみくにゃん。あーん』

ラジオ『あーん。あーん。あーん。あーん。あーん。あーん。あーん』


ありす「ひ、ひどすぎます……」

飛鳥「これが…8代目シンデレラガールのやることか……!」


ラジオ『フーッ!…フーッ!……うっ……ッ……』

ラジオ『みくにゃん』

ラジオ『フーッ!……フーッ!……』

ラジオ『……毛玉?』

ラジオ『んなわけ……うッ!お…………』

ラジオ『よし!みくにゃん撃破完了!』

ラジオ『未央ちゃん!拓海さんを連れてきました!』

ラジオ『畜生離しやがれ!クソッ!…ん?…夏樹は…?』

ラジオ『夏樹は…逝ったよ……お前のバイクにやられてな』

ラジオ『な…?? ……う、嘘…だろ?』

ラジオ『いや、本当だ…』

ラジオ『そんな…助けに来たつもりが……畜生…畜生!』

ラジオ『泣くな拓海。夏樹はな、最後にお前にありがとうって言ったんだぜ』

ラジオ『え…?』

ラジオ『このままカレーメシにやられるよりもカッコ良い死に様にしてくれた…ってな』

ラジオ『夏樹……すまねぇ……!夏樹…』

ラジオ『だから泣くなって……鬼の特攻隊長じゃないのかもがが』

ラジオ『涼さん!手が止まってますよ!はい、あーん!!』

ラジオ『はいはーい、たくみんの分のカレーメシも沢山あるからね!』

飛鳥「鬼か」

ありす「せめて空気を読んであげて…」


飛鳥「…ありす、このままじゃいけない。あのスキルは危険すぎる」

ありす「はい。このままではカレーメシ被害者の会が結成される可能性もありますね」

飛鳥「あぁ。これ以上カレーメシのキャンペーンガールにネガキャンをさせるワケにはいかない」

ありす「私も同じ気持ちです」

飛鳥「だから、あの三人を倒そう!ありす」

ありす「はい!」

飛鳥「と言ってもボク達が正面から行っても勝てない。まずは情報の整理からだ」

ありす「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。ですね」

飛鳥「あぁ、そうだ。まず敵の状況として分かっているのは《スパイスパラダイス》と《ゆるふわ空間》」

ありす「あと藍子さんが視界不良ということです」

飛鳥「そうだ。……ありす、ユニットスキルと《碧落のリベレイター》について調べてほしい」

ありす「ユニットスキル…ですか?」

飛鳥「あぁ、発動する時にこう言っていたんだ。『ユニットスキル《スパイスパラダイス》』と」

ありす「なるほど…」

飛鳥「なんとなく予想は出来るが正確な情報が欲しい」


ありす「分かりました。ユニットスキル…検索」

ありす「ユニットスキル…ニュージェネレーション、アインフェリア、*(Asterisk)等の特定の人物が集まった時に使えるスキル。とても強い。発動にはユニット全員の同意が必要で、1人でもリタイアしたら強制的に解除される」

飛鳥「全員倒す必要がないのはありがたいな」

ありす「《碧落のリベレイター》…手に電気を纏う。右手左手の切り替えが可能だが、両手は不可能。金属や水などの電気を通しやすいものには通電する。射程がとても短い」

飛鳥「通電する……これはいいことを聞いた」

ありす「これって飛鳥さんのスキルですよね」

飛鳥「あぁ。ボクの唯一の攻撃スキルだ」

ありす「射程が、とても短い……」

飛鳥「あぁ。だからこれからは通電するものを介して攻撃していこうかと思ってる。…ありす、カメラで大通りの様子を伺えるかい?」

ありす「はい、分かりました」

飛鳥「金属の棒とかがあれば理想的なんだが…」

ありす「金属の棒は…なさそうです……えっ?」

飛鳥「どうした、ありす」

ありす「カレーメシを食べさせられるあの会場に……」

飛鳥「何か使えそうなものがあったのか??」

ありす「カレーメシ以外のものが見当たらない…です」

飛鳥「……えっ…と…?……つまり…どういう………?」

ありす「あそこの人達…カレーメシ以外のものを口にできない状況なんです。水分を含めて」

飛鳥「なっ…!そんな……むごい」


ありす「一刻も早く終わらせないといけません!あの地獄を!」

飛鳥「あぁ、同感だ…だがボク達はしっかり作戦を立てないと逆にやられるのは目に見えてる…」

ありす「はい。まずは作戦会議ですね」

飛鳥「あぁ。1つ作戦を考えたんだが聞いて欲しい」


???「その作戦、まゆも聞いてもいいですかぁ?」

ありす「!?」

飛鳥「!?」


ありす「ま、まゆさん…」

まゆ「はぁい、まゆですよぉ」

飛鳥「いつのまに……」

まゆ「いまですよぉ?」

飛鳥「一体どうやって…」

まゆ「それは、秘密です」

飛鳥(杏のこともあったし警戒はしていた!上にも異常はなかった…!しかも逃げ道を塞がれた…!これではポジティブパッションに見つかる方の道にしか移動できない!)


まゆ「《まゆの繭》」シュルルルルル!!

ありす「リボンが!」

飛鳥「くっ…!《碧落のリベレイター》」バチバチバチ

飛鳥「ありす!ボクの後ろに!」

ありす「は、はい!」

シュルルルル!!バチィッ バチッバチィッ!

飛鳥(攻撃にしては動きが変だ…拘束か…?それでも…凌ぐので精一杯だ…!後ろには下がれないし…!)

まゆ「防戦一方じゃまゆは倒せませんよぉ?」

飛鳥「くっ!…こうなったらイチかバチか…ありす!逃げるぞ!」

ありす「えっ!?でも…」

飛鳥「ボクに考えがある!だから!」ダッ

ありす「わ、分かりました!」ダッ

まゆ「うふふふふ」シュルルルルル!!

飛鳥「くっ!」バチバチ!

飛鳥(迷わず追ってきた…!ここの通りの状況を知らないのか…それとも知ってて追ってくるのか…)

ラジオ『おや?未央ちゃん!路地から人が出てきましたよ!三人です!』

まゆ「!」


ラジオ『お!また新たな試食者が!…って戦ってるみたいだね』

ラジオ『三人同時なんて大丈夫かなぁ…?』

ラジオ『ん~…飛鳥ちゃんがありすちゃんを守ってるみたいですね!絶好のチャンスです!』

ラジオ『よーし!2人とも配置について!それじゃあ先輩!行っちゃってください!』


まゆ「へぇ……」

ありす「見つかったみたいです!先輩がこっちに走ってきます!」

飛鳥「あぁ!承知の上だ!」

まゆ「……さて、飛鳥ちゃん、ありすちゃん。共闘のお誘いです」

飛鳥「何…?」

まゆ「まゆもあのスキルの厄介さは知ってます。だからまゆも一緒に戦いましょうか?」

ありす「え……急になにを…?」

飛鳥「……見返りは、なんだい」

まゆ「あら。流石飛鳥ちゃん、鋭いですねぇ…」

飛鳥(ポジティブパッションに見つけさせてからの共闘…絶対裏があるハズだ)

まゆ「見返りはあなた方の情報収集の方法、です」

ありす「…………方法、ですか…?」

まゆ「はい♪」

飛鳥(それは、言わばボク達の生命線。一番対策されたくないものだ…)

ありす「えっと…それはですね」

飛鳥「ありす!!」

ありす「は、はい!…えっ?」

飛鳥「……ボク達がどうやって情報を集めているか、だったね」

まゆ「はい。そうですよぉ?」

飛鳥「ボクのスキルは人の会話を聞ける。距離は分かるが方向が分からない。話さずに近づかれると気付けない」

まゆ「つまり盗聴ですかぁ…さっき未央ちゃん達の声が聞こえた気がしたのも」

飛鳥「ボクのスキルだ」

まゆ「なるほど……それで、ありすちゃんは?」

飛鳥「地図アプリとカメラだ」

まゆ「カメラ……だから路地の角からタブレットを少しだけ出していたんですね」

飛鳥「(そこも見られていたか…)実際に顔を出して覗くより、よほど気付かれにくいからね」

まゆ「……なるほどぉ…参考になります」

飛鳥「これで満足かい?」

まゆ「でも、ありすちゃんはそれだけじゃないですよねぇ…?」

ありす「!」


まゆ「それだけだったらありすちゃんのスキルの説明を、ありすちゃんを遮ってまで飛鳥ちゃんがしたことが不自然すぎますし」

飛鳥「………………」

飛鳥(歩けば頭の中に地図は出来ていく。角から顔を出しても見つからなければカメラを使わなくても一緒だ……つまりその『リスクを軽減できる』という情報なら渡してもまだ大丈夫だ。しかしこちらが能力を知れることだけはバレたらまずい……弱点を突いてくると分かってる敵は厄介だからな……!)

ありす「あ、飛鳥さん……」

飛鳥(どうする…?あれだけで満足してくれ……!)

まゆ「……言う気はなさそうですね。まぁいいです、そろそろ時間切れのようですし」

ありす「…!飛鳥さん!先輩が!」

飛鳥「そうだった!」


まゆ「盗聴とその距離。地図とカメラ…そして更に言いたくない情報収集スキルをありすちゃんが持っている……うふふ。結構いい情報を貰いました」

飛鳥「じゃあ共闘してくれるかい?」

まゆ「いいですよぉ♪…ただし、まゆはここから15m以上は動きませんよぉ、そして危なくなったら何も言わずに逃げちゃいます♪あとは飛鳥ちゃんの指示に従いますね」

飛鳥「……じゃあ、カレーメシ先輩を引きつけておいてくれるかい?出来れば10分以上」

ありす「えっ…!でも先輩ってあのCMと同じ身体能力ですよね……?一人で大丈夫なんでしょうか」

まゆ「余裕ですよぉ♪じゃあまゆはカレーメシ先輩を足止めしますねぇ」

飛鳥「来るぞ!」

ありす「カレーメシ先輩だけなのがまだ救いですね…!」

飛鳥「じゃあまゆさん。頼んだよ」

まゆ「はぁい♪ 《まゆの繭》」シュルルルルル!!


シュルルルルル!! グルグルグルグル……


ありす「カレーメシ先輩が…あっという間に」

飛鳥(やはり拘束スキルだったか…)

まゆ「さ、これでまゆの仕事は済みましたよぉ…10分。でしたよねぇ…飛鳥ちゃん、ありすちゃん、あとは頑張って下さいね」

飛鳥「……あぁ。分かっているさ…行くよ!ありす!」ダッ!

ありす「は、はい!」ダッ!


飛鳥「ありす。まゆさんとの距離を教えてくれ」

ありす「え?まゆさんとの?」

飛鳥「あぁ。まゆさんにラジオのチューニングを合わせる」

ありす「…?なんでですか?」

飛鳥「危なくなったらすぐに逃げるって言っていた…つまりすぐに逃げるための手段があるハズだ。まゆさんのスキルか、まゆさんのスキルじゃないかくらいはこちらも情報がほしい」

ありす「なるほど、分かりました……さっきの位置からは今30mくらいです」

飛鳥「30m…」カチャカチャ


ラジオ『………………』


ありす「内側のカメラを起動して…まゆさんはまだいますね。こっちをみています」


ラジオ『なるほどぉ…肩越しに……カメラはそんな使い方もできるんですね。知らなかったら今まゆの姿を確認したって気付きませんでしたよぉ』


ありす「…!」サッ!


ラジオ『うふふふ。慌ててタブレットを隠したということは…まゆの声も聞こえてるみたいですねぇ…』


飛鳥「予想はしていたが、まったく…手強いな…!」

ありす「バ、バレてる……!」


茜「ボンバーーー!!うおおおおおーー!!」ダダダダダダ!!!

ありす「茜さんも来てます!まゆさんは」

飛鳥「ありす!ポジティブパッションの方に集中だ!」

ありす「でも作戦だってないのにどうするんですか??」

飛鳥「フッ…ありす、君は水を操れるんだろう?」

ありす「は、はい!」

飛鳥「なら存分に操って暴れてみせろ!」

ありす「ええ!?」

飛鳥「その水は!ボクが創(つく)る!」

飛鳥(これから創り出すのは楽園なんてものじゃない。いうならば、地獄を壊すための別の地獄というところか…本当に皮肉な名前だよ……)

飛鳥「いくぞ!全てを呑み込め!《楽園-エデン-の入り口》」



ザアアアァァァァァァア


ありす「きゃっ?? ……ぷはっ…地面が水に…!?」

飛鳥「正確には、海水さ」

茜「うおおおおーーー!!」ダダダダザバババ!!

茜「あれ?走り過ぎていつのまにか海まで来ちゃいました!!ならば!うおおおおお!!!全力!トラーーイ!!」

茜「アスロン!!」ザバザバ!!

ありす「泳いで来ます!」

飛鳥「全力トライアスロンは初めて聞いたな…」


ラジオ『これは水…いや、海水ですかぁ…………ん?これは…まずいですね……《恋愛シンドローム》』


飛鳥「逃げるためのスキルはまゆさんの《恋愛シンドローム》か…」

飛鳥「っと、ありす!ボーっとしている暇はないぞ!」

ありす「え?」

飛鳥「水は創(つく)った!あとは」

ありす「…!私が水を操る!」

飛鳥「あぁ!ボクを中心に渦潮を作ってくれ!くれぐれもボクを攻撃しないでくれよ!」

ありす「分かりました!いきます!《ひかりの創り手》」

飛鳥「渦潮ができたらありすは感電しないように水に触らないでくれ!」

ありす「分かりました!……飛鳥さんを中心に渦潮を…!」


ゴオオオオ!!ザバァッ!ザアアァァァ!!


飛鳥「え?……わっぷ!あ、ありす!うわ!……わああぁぁぁ!」

ありす「飛鳥さんを道の中心に……そして水をグルグル回して……藍子さんは飛鳥さんに近づけないように……!」


ザバァッ!ザァァァザザザザァァァァ!!


未央「う、うわあぁぁぁ!」

藍子「な、何が起こってるのぉぉぉ」

茜「うおおおおぉぉぉぉぉ!!水になんて負けません!!《全力熱血》!!!うおおおおおおおお!!」ジュウウウウ!!

ありす「茜さんの周りの水が蒸発してる…!まずい!」

拓海「す、水分だ!カレーメシの塩分で喉カラカラだったんだ!!ああああ!!!塩水だこれぇぇ!!」ガバガバブクブクブクブク……

李衣菜「あぁ……もうカレーメシ以外のものならなんでもいいやー…」

未央「カレーメシ地獄はたくみんのキャラも壊すのか…恐るべしカレーメシ!」

飛鳥「……よし、いい感じに集まってきた……あとは全てを一掃する!」

飛鳥(攻コストを全て使う!威力増強!)

飛鳥「……知ってるかい?塩水はただの水より電気をよく通すのさ……さぁ!紫電よ!新たな地獄を作り出せ!!《碧落のリベレイター》」


ザバァ!バチバチバチ!!ゴオオオオ!!バリバリバリバリ!!


藍子「きゃぁあああああ!!!」

未央「あばばばばばばは!!!」

茜「うおおぉぉばばばばあああぉぉおお!!」

ありす「荒れる海に紫の電撃…これが私と飛鳥さんの力……すごい……かっこいい」

ありす「……この様子だと、もしものために確保しておいた水は必要なさそうですね。…しかし我ながらいいアイデアですね、水を浮かせてその水に浮くことで空に浮かぶことができるなんて。しかもこの水、学校のプールの水より浮きやすいような…?……でも、これなら飛鳥さんも一緒に宙に浮くことができます」

ありす「このスキルさえあれば最早私と飛鳥さんは無敵のコンビですね!…まぁ私は《ひかりの創り手》をあと2回しか使えないんですけどね」



ダァン!



ありす「………………………………………え?」


ありす「………………あ、あああ!!?っ……くっぅぅぅぅ!」

ありす「うし…ろぉ…!」


ザッパァァ!!


ありす「誰もいない…!あるのはまゆさんの《まゆの繭》だけ……一体どこから…?」


ありす「飛鳥さんは…!?まだ無事みたい……飛鳥さん!!他にも敵がいます!攻撃されました!!」


ダァン!


ありす「ぐっ…うううぅぅぅ……」

ありす「やあぁぁ!!」


ザッパァァ!!


ありす「さっきの津波で倒せてない…?だったら多分今の津波でも……とりあえず身を隠さないと…!」


ザァァァァァァ…………


ありす「はぁ…はぁ……海水が…引いていく…もう足がつくくらいに……」

飛鳥「ありす!大丈夫か!?」ジャブジャブ

ありす「は、はい…なんとか……飛鳥さんは大丈夫でしたか…?」

飛鳥「ボクは大丈夫だ、ありすのおかげでなんの問題もなかったよ」

ありす「それは…よかったです…」

飛鳥「どんな攻撃をされたかは分かるかい?」

ありす「いえ…後ろから衝撃が来たので後ろ…《まゆの繭》のある方向からの攻撃だってことくらいしか…あと私の起こした津波が効いていないみたいです」

飛鳥「そうか…他に何か特徴は…音とか」

ありす「音……波の音で聞きづらかったですけど…何か音がしたような気はします……」

飛鳥「どんな音かは思い出せるかい?」

ありす「あの………爆発…とは違うんですけど、なんていうか……大きな鉄板を落としたような……?」

飛鳥「鉄板を落としたような音…?」

ありす「あ、アレです!あの…前、地方の果樹園にロケに行った時に鳥を驚かせるために大きな音を出す煙突みたいなのがあったんです」

飛鳥「鳥避け……」

ありす「それの音に似てたような気が……」

飛鳥「………もしかして……銃声…か……?」

ありす「銃…!」

飛鳥「遠距離で音が鳴る。そしてこのゲーム内なら銃を持っていても不思議じゃない人もいる。具体的には……ガンマンや猟師あたりか」


ありす「ガンマン…猟師……」

飛鳥「まだ銃と決まったワケではないけどね」

ありす「軍人さんもいそうです」

飛鳥「確かに…しかしありすの起こした津波にやられていないとすると、空かビルの屋上からの攻撃ってことになるのかな…」

ありす「私の《ひかりの創り手》の効果も切れましたし飛鳥さんの海もなくなってしまいました……どうしましょう」

飛鳥「……あー…ありす。すまない、さっきなんの問題もなかったと言ったが嘘を吐いていたよ」

ありす「え?」


飛鳥「一人だけ、生き残った者がいる…今は気絶しているのか動かないが」

ありす「カメラで確認します…………えっと……あれは……一体…?」

飛鳥「白い塊があるだろう?」

ありす「はい」

飛鳥「その…海水をすごい勢いで蒸発させられたから他の人より感電しにくかったみたいで」

ありす「蒸発……ってことはアレ茜さんですか??」

飛鳥「確認はしていないが恐らくは、ね」



ダァン!


ありす「!」

飛鳥「!」

ありす「今の音です!この音で攻撃されたんです!」

飛鳥「銃声っぽい…?そんな気がするな……」

ありす「あ!」

飛鳥「どうした!?ありす!」

ありす「茜さんが攻撃されたみたいです!」

飛鳥「道の真ん中で寝ていればそりゃ狙われるか…」

ありす「今の衝撃で茜さんの周りの塩が崩れて茜さんの体が少し見えるようになりました!」

飛鳥「そんな鯛の塩釜焼きみたいな」



ありす「あ、茜さんがゆっくりと立ち上がりました!」


茜「………………おおお!?誰もいません!?未央ちゃーん!藍子ちゃーん!」


飛鳥「…ありす、タブレットを隠すんだ。見つかるとまずい」

ありす「は、はい!」

飛鳥「……連射はしてこないみたいだね」

ありす「そうですね…」

飛鳥「…となるとガンマンではなさそうだな」

ありす「なんでですか?」

飛鳥「猟銃は装填に時間がかかるって聞いたことがあってね。それに比べて拳銃は弾を入れる所が回るから6発くらいは連発できるハズだ」

ありす「……なるほど、確かに映画でも拳銃は連射してます」

飛鳥「軍人の方は…使う銃次第だからまだ分からないな……」


ダァン!


飛鳥「!」

ありす「茜さんが撃たれました!」


茜「うおおおおおお!!!」ダダダダダダ!!


ありす「走っていきました…」

飛鳥「ボク達に気付くこともなかったね」

ありす「カメラで様子をみます!」

飛鳥「頼む。……しかしさっきからラジオは誰の声も拾わないな…喋ってないのか?」

ありす「…………ん?」

飛鳥「どうした?ありす」


ダァン!


ありす「…!」カシャッ!

ありす「飛鳥さん…これ見て下さい」

飛鳥「なんだい?」

ありす「ここ…ビルの壁から緑色の何かが…小さすぎて、拡大しても分かりづらいですが。この緑色のが出てからすぐに音が鳴りました」

飛鳥「…!なるほど…銃声と緑色は無関係ではなさそうだな………ビルの窓から銃撃を…?しかし建物内には入れないハズ…でも、だとしたらありすの津波が効かなかった理由にも納得がいく…」

ありす「ラジオは?」

飛鳥「いや、何も拾わない…あ、そうだありす」

ありす「なんですか?」

飛鳥「調べてほしい。《まゆの繭》と《恋愛シンドローム》どちらとまゆさんのスキルだ」

ありす「分かりました。《まゆの繭》…検索」

ありす「《まゆの繭》…リボンで拘束し、繭の中に閉じ込める。拘束中は解除するまで次の繭を出すことができない。ちなみに繭の中はカラオケ空間になっていて結構快適。ドリンク飲み放題」

飛鳥「あれの中カラオケだったのか…」


ありす「《恋愛シンドローム》…目で見えている相手の後ろに一瞬で移動する。手で触れている人を一緒に移動させることも可能」

飛鳥「じゃあ急にボク達の後ろに現れたのはこれか…!」

ありす「これはどうやって知ったんですか?」

飛鳥「ボクが海を出した時にまゆさんが逃げる為に使ったんだ。それをラジオで聴いたってワケさ」

ありす「なるほど…あれ?人の後ろに移動するスキルで逃げるってことは……」

飛鳥「……!」

ありす「仲間がいる…?」

飛鳥「しかもすぐに逃げられるようなことを言っていた…そして15m以上動かないという発言も」

ありす「つまりまゆさんの仲間はあの時、あの位置から見える所にいた…!」

飛鳥「そう考えると、例の緑色がまゆさんの仲間だという可能性が高い」

飛鳥「戦うか、逃げるか……どうする」

ありす「私は逃げた方がいいと思います。万全ではないですし、情報も全然足りません」

飛鳥「…わかった。一度大通りの様子を見てから、逆側に行こう」

ありす「分かりました」


飛鳥「……あっちは細い路地が入り組んでるような感じか…?ありす、落ち着いたら地図を」

ありす「飛鳥さん!」

飛鳥「!?」

ありす「美玲さんが走って来ます!」

飛鳥「奥に逃げよう!こっちは万全じゃない!」

ありす「はい!」


飛鳥「とりあえずここでいいか…」

ありす「角を1つ曲がっただけですよ?」

飛鳥「すぐに逃げられる地形だ。カメラで様子を見ながら隙をついていこう」

ありす「わ、分かりました」

飛鳥「ラジオをさっきボクらのいたあたりに…」カチャカチャ


ラジオ『まゆッ!こっちだ!すぐそこの角に隠れてるぞッ!』


飛鳥「既に位置がバレてるのか…!?」

ありす「しかもまゆさんの名前を呼んだってことは…」

飛鳥「まゆさんもいるってことか…!」


ラジオ『もが!もががが!……ぷはっ…!何するんだッ!』

ラジオ『いちいち紙に書くなんて面倒だぞッ!喋った方が絶対早いし!《∀NSER》で位置も分かるんだからもが!もががが!』

ラジオ『しーっ!しーーっ!!』


飛鳥「…! ありす、移動するぞ!」

ありす「え?あ、はい!」


ラジオ『あ、動いた!2人が逃げてくぞッ!』


ありす「私達が動いたこともバレてます!なんで!?」

飛鳥「分からない!そういうスキルなんだろう!ありす!地図を!」

ありす「は、はい!」

飛鳥(位置を常に知られているこの状況。圧倒的に不利だ…しかもまゆさんは筆談をしている……さっきラジオで何も聞けなかったのは周りに人がいないんじゃなく、喋ってなかっただけなのか…!)

ありす「飛鳥さん!地図です!」

飛鳥「ありがとう」

飛鳥(狭い道。しかも相当入り組んでるな……どこかで道幅が広くなることもなさそうだ…)

飛鳥「……どうする…?どうしたら……」

ありす「飛鳥さん…」

飛鳥(状況を整理しろ…ボクらは情報戦で勝たないとまず勝ち目はない……《楽園-エデン-の入り口》はもう使えない…)

飛鳥「ありす!あの水を操るのはあと何回使える?」

ありす「3回です。でもあの量の水は出せませんよ」

飛鳥「あぁ、分かった。いざとなったらありすの水とボクの電撃でなんとかしよう。回数に限りがあるから、できれば温存しておきたいが……」

ありす「……あの、飛鳥さん」

飛鳥「…? なんだい?」

ありす「…1つ作戦を思いつきました」


飛鳥「…! 聞かせてくれるかい?」

ありす「……でも、これは飛鳥さんの負担が大きすぎる作戦で」

飛鳥「そんなことはいいさ。結局ここで負けたら元も子もないんだ。聞かせてくれ」

ありす「………分かりました。…作戦というのは、杏さんの時のアレをやるんです」

飛鳥「杏の時の…つまり……セクシーギルティに任せる…?」

ありす「違います!私が小さくなってスキルの情報を飛鳥さんに教えるやつです!」

飛鳥「…なるほど、そうか!それがあった!」

ありす「私が《小さな妖精》で小さくなって、飛鳥さんの服にたくさん付いてるポケットの1つに入るんです。そうすればスキルの名前もすぐに聞けるからすぐに検索できます!」

飛鳥「それをボクのラジオで聞く……か」

ありす「はい。…………どうでしょう…?」

飛鳥「……いや、いい作戦だ。ボクにはそれ以上のものは思い付かない。それでいこう」

ありす「はいっ!《小さな妖精》」シュシュシュシュ

ありす(ミニ)「ガンバリマショウ! アスカサン!!」

飛鳥「声も小さくなるのか、よく聞こえない……すまないありす。すごく狭いとは思うけど、我慢してくれ」

ありす(ミニ)「ソノクライ モンダイナイデス!」ヨジヨジ スルッ!

飛鳥(ありすはポケットの中に入った…ラジオを1m以内に設定して…っと) カチャカチャ

飛鳥(これで周囲の状況が知れなくなった……曲がり角の近くにいない方がいいな、少し動くか…) テクテク

ラジオ『飛鳥さん、聞こえますか?』

飛鳥「あぁ、聞こえるさ」

ラジオ『《∀NSER》はインディヴィジュアルのユニットスキルです。質問を設定してから∀NSERをフルで歌って踊ると、その答えが分かるそうです」

飛鳥「つまりこの場合はボクとありすの居場所。ってところか……」

ラジオ『多分…そしてインディヴィジュアルのユニットスキルが発動してるということは…』

飛鳥「輝子と乃々も協力している、と」

ラジオ『はい』

飛鳥(そしてその2人も位置を知っている可能性が高い……か)


シュルルルルル!!


飛鳥「リボン!? まゆか!《碧落のリベレイター》」


シュルルルル!!バチィッ バチッバチィッ!


飛鳥(位置を知られてるから後手後手になる!…ならばいっそ!こっちから攻める!) ダッ!

美玲「りゃあああ!!ひっかくぞッ!」

飛鳥「くっ!」バッ!

飛鳥(両手に爪…!恐らくはボクと似た近距離攻撃!ボクのは片手だけだが美玲は両手か…)

美玲「む!避けるなッ!」シャッ!

飛鳥「避けるさ!」バッ!

美玲「やぁッ!りゃッ!」シャッ! シャッ!

飛鳥(こちらのスキルは力はいらない…! 当てるだけでいいんだ……なら!) バッ! バッ!

美玲「やぁッ」シャッ!


ザクッ!


飛鳥「ぐっ…! つかまえ……」

美玲「なッ??」

飛鳥「たぁ!」バチバチバチバチ!!!!

美玲「あばばばばば!!」


まゆ「美玲ちゃん!先に行かないで…って美玲ちゃん!」

美玲「あばばばばば」ビリビリ

飛鳥(まゆさんが来た…!)

まゆ「ま、《まゆの繭》」シュルルルルル!!

飛鳥「くっ…!」グルン

まゆ「か、解除!……美玲ちゃんを盾にするなんて……!」

飛鳥「さあ、まゆさん。どうする?今の美玲に触れても痺れると思うよ?」

まゆ「ぐぬぬ……!」

美玲「あばばばばば」ビリビリ


ラジオ『見えてないけど多分悪役の顔してますよ、飛鳥さん』

飛鳥(うるさいな)


美玲「ううう゛う゛う゛う゛!!」ビリビリ

美玲「《ポッ…ピン……パンク》」ビリビリ

ジャキン!

飛鳥「ぐあぁっ!」

飛鳥(刺さっていた爪が更に奥に……!?)

美玲「《ポッ…ピン……」ビリビリ

飛鳥(まずい!すぐに抜かないと!)

飛鳥「うぅ…! ぐぅっ!」バッ!

美玲「パンク》」シャキン!

飛鳥(爪が伸びた…!)

美玲「離れた…!まゆッ!」

まゆ「は、はい!《まゆの繭》」シュルルルルル!!

飛鳥「くっ…!」バチッバチィッ!


まゆ「やっぱり飛鳥ちゃんには《まゆの繭》が防がれてしまいますね…」

美玲「うぅ…まだピリピリする……」

飛鳥(《まゆの繭》は防げるがそれに手一杯だ…美玲が動けない今はまだなんとかなってはいるが……)

まゆ「ならこれで!《恋愛シンドローム》」

飛鳥(後ろ!)バッ!

まゆ「へ?」

飛鳥「もらったあああぁぁ!!」


バチバチバチィ!!


美玲「まゆッ!」

まゆ「きゃああああああ!!」バチバチバチバチ!!!!

美玲「まゆを離せッ!《ポッピンパンク》」シャキン!

飛鳥(今度はまゆさんを盾に!) バッ!

飛鳥(そして突っ込む!) ダッ!


ザクゥッ!


飛鳥「づあ゛ぁ゛!!」

美玲「ウチの爪はカーブして伸びてるんだッ!まゆを盾にされててもカンケーない!」

飛鳥「ぐっ…ぅ…!」


飛鳥「なら!」ドン!

まゆ「きゃぁっ!」フラッ

美玲「え? うわぁッ!」ドシーン!

飛鳥(一度退く!) ダッ!

美玲「う、重い……」

まゆ「え??お、重くないですよぉ!まゆはプレゼントは手作りを渡したいだけの女の子なんです!重くなんてないですよぉ!」

美玲「いいから早くどいて…」

まゆ「あ、ごめんなさい美玲ちゃん」


飛鳥(このまま逃げ切れればいいのだけれど…) タッタッタッ


美玲「いててて……あーッ!飛鳥逃げるなッ!まゆッ!アレだッ!瞬間移動!」

まゆ「ごめんなさい…まだピリピリしててうまく動けないんです…」

美玲「ぐぬぬ…だったらッ!《振袖まつり》 飛鳥をやっつけろッ!」


飛鳥「な…!獅子舞が宙を舞って追いかけてくる!?」タッタッタッ!

飛鳥(角を曲がって美玲の視界から消えても追いかけてくる!美玲が操ってるわけではないのか!?)

ラジオ『飛鳥さん!スキル名は聞こえましたか??』

飛鳥「あぁ!《振袖まつり》だ!頼む!」タッタッタッ!

ラジオ『はい!……えーと、《振袖まつり》…小さな獅子舞を呼び出し』

飛鳥「獅子舞は見たから知ってる!対処法か注意点を教えてくれ!」タッタッタッ!

ラジオ『え、あっ はい!えっと…風呂敷をめくって中を覗けば消えるそうです!』

飛鳥「わかった!それ!」ピラッ!

獅子舞「イヤーン! エッチー!」スウゥー

飛鳥「…………」


ラジオ『飛鳥さん!大丈夫ですか!?無事でしたか!?』

飛鳥「……なんだろう、この…」

ラジオ『…飛鳥さん?』

飛鳥「罪悪感が……」

ラジオ『あ、ハイ』


ラジオ『……ってそんなことより!早く距離を取りましょう!』

飛鳥「あ、あぁ。理解(わか)ったよありす…」



飛鳥(小学生低学年の頃、とある男子グループの中でスカートめくりが流行っていた時があったなぁ…スカートめくりをしないと絶交すると言われて、泣きながらスカートめくりをしたあの男子は元気だろうか……)

ラジオ『飛鳥さん』

飛鳥(あの頃は、例え泣いていても等しく最低だと思っていたが……今のボクなら、キミと仲良くなれると思うんだ……) ホロリ…


ラジオ『……あの……飛鳥さん…?』

飛鳥「あ、あぁ。なんだい?」

ラジオ『……大丈夫ですか?』

飛鳥「いや、大丈夫だ……ボクたちはダメだと理解(わか)っていても、それをやらなければ前に進めない時があるんだってことを知ったよ。」

ラジオ『はぁ。』

飛鳥「今がその時だっていうなら、ボクはもう迷わない。躊躇わない。躊躇なくめくってみせるさ。何度も、何度でも」

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ラジオ『いったい何の話をしているんですか?』

飛鳥「いや、こっちの話さ……ありすもいつか理解(わか)る時が来るさ。めくるときが」

ラジオ『いや獅子舞の風呂敷をめくるなんてこのゲーム以外ではやりませんよ。私はそんなイタズラしません』

飛鳥「あぁ、そうだね。そう思ってる時期が、ボクにもあったよ…」フ…

ラジオ『なんなんですかさっきから……そんなとこより!さっきの獅子舞ですが、美玲さんから150kmまでの範囲を自由に動けるそうです』

飛鳥「東京都全域をカバーして有り余るな」

ラジオ『しかも風呂敷の中を覗く以外に消える手段がないらしいです』

飛鳥「どんなにダメージを与えても無駄ってことか……」


ラジオ『他にスキル名の分かったはスキルはありますか?』

飛鳥「あぁ。確か《ポッピンパンク》と言っていたよ。美玲の爪が伸びるスキルみたいだ」

ラジオ『《ポッピンパンク》…爪が伸びる。爪の強度は鉄並みで、重ねてスキルを使うと爪が伸びる。最大8mまで伸びる』

飛鳥「8m……」

ラジオ『そこまで伸ばすと扱いづらそうですね…他には何かありましたか?』

飛鳥「いや、スキル名が判明したのはその二つだけだ。ただ、まゆさんの《恋愛シンドローム》について分かったことがある」

ラジオ『なんですか?』

飛鳥「後ろに移動する。というのが《恋愛シンドローム》の説明だっただろう?」

ラジオ『はい』


飛鳥「定義が微妙に分かりづらくてね、まゆさんがスキルを使う時に振り向いて顔だけ後ろを見てみたんだ。そうしたら、まゆさんはボクの目の前に現れた……つまり、まゆさんの移動先は背後。文字通り『背中の後ろ』に移動するスキルだ。顔の向きは関係ない」

ラジオ『えぇ…っと?それが分かるとどうなるんですか?』

飛鳥「振り向ける」

ラジオ『……? つまり…?』

飛鳥「まゆさん達から逃げる時にまゆさんの方に体を向けていると、背後に回られて挟み撃ちになるだろう?」

ラジオ『はい。そうですね』

飛鳥「つまり、まゆさんから逃げる時は常に背中を見せ続ける必要があるということさ」

ラジオ『たしかに』

飛鳥「その時、後ろの確認が出来なければ飛び道具や、それこそ《まゆの繭》のリボンを避けきれずに捕らえられてしまう」

ラジオ『なるほど…たしかに』

飛鳥「だから今回、まゆさん相手に『振り向き』が通用することが理解(わか)ったのは大きな収穫だ」

ラジオ『具体的な対策が立てれるようになったのは大きいですよね……それにしても…』

飛鳥「ん?」

ラジオ『追いかけてきませんね…諦めたんでしょうか』



飛鳥「確かに……移動しているとはいえ小走り程度だし、追いつこうと思えばすぐに追いつけるハズだが……」

ラジオ『あちらも私たちと同じように情報交換しているとか…?』

飛鳥「そうかもしれない…他に考えられる可能性は……」

ラジオ『……先回り!』

飛鳥「または、他の仲間との交信……」

ラジオ『そっか、乃々さんと輝子さん…』

飛鳥「あぁ。ボクらは今4対2の戦いを強いられているんだ。しかも常に位置を一方的に知られているハンデ付きで、ね」

ラジオ『私がポケットの中にいて力になれないので、実質4対1みたいなものですけどね……よく撤退できましたね…』

飛鳥「いや、力になってるよ。情報戦をするにはありすの力が確実に必要だからね、これからも頼むよ」

ラジオ『あ、ありがとうございます…』

飛鳥「さて、次の角はどっちだい?」

ラジオ『左でお願いします』

飛鳥「左だね、理解(わか)った」


ザクゥッ!!


飛鳥「ぐッ!」

飛鳥(体に何か刺さっ!?)

ラジオ『飛鳥さん!?』

美玲「よし!当たったぞッ! 」

飛鳥(あんな遠くから!? )

美玲「もう一度!《ポッピンパンク》」


ズブブブブ!!!!


飛鳥「?あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


飛鳥「ぐううぅ!」

美玲「解除!」

飛鳥(くっ…!掴む前に…!)

美玲「もうウチの爪は掴ませないぞッ!痛い目見るって分かったからなッ!」

ラジオ『飛鳥さん!大丈夫ですか!?』

飛鳥「シッ!静かに…!」


まゆ「美玲ちゃん!ありすちゃんの場所はわかりますか?」

美玲「う~~…飛鳥と同じ所にいるんだけど……飛鳥しかいないし……後ろに隠れてるわけでもないし……」

飛鳥(まゆさん……!とりあえず背中を見せなければ…!) サッ…

まゆ「……わざと背中をこっちに見せてますね…まるで《恋愛シンドローム》の効果を知っているかのように…」


飛鳥(このまま背中を見せながら逃げる!) ダッ!

美玲「あ??また逃げるつもりだッ!今度は逃がさないぞッ!《小悪魔エース》まゆッ!乗れッ!」

飛鳥「ありす、《小悪魔エース》…ってまた車か!」

ラジオ『こ、《小悪魔エース》…検索!』

美玲「行くぞぉッ!」ブロロロロ!!

ラジオ『《小悪魔エース》…リリーフカーです!杏さんの車とほぼ一緒の能力です!』

飛鳥「つまり車体越しに乗員も感電させられるってことか!」

ラジオ『それはどうでしょう…?』


飛鳥(こっちの方が車体が大きいな…)

美玲「この狭い道じゃ逃げられないだろッ!ブッ飛ばせ!」ブロロロロ!!

飛鳥(ギリギリで飛び乗るのは、流石に走りながらじゃ無理か……)ピタッ


ダァン!!

ガン!!


飛鳥「!?」

飛鳥(目の前に小さな何かが高速で通って道に当たった!?)

飛鳥(今偶然にも止まっていなかったら危なかった!走り続けていたら確実に当たっていた!)

ラジオ『今の音は!』

飛鳥(そうか!建物からの銃撃!壁ではなく道路に当たったということは!上か!) バッ!

乃々「ひぃ?? 一発でバレたんですけどぉ…!?」



飛鳥(猟師!つまり連発はない!なら車に集中!)

飛鳥「本当に休む暇がないな!《碧落のリベレイター》」

まゆ「まるで事前に知ってるみたいに対処が早いですねぇ…」


ブロロロロ!!


飛鳥「ギリギリで……ギリギリで……」


飛鳥「ギリギリで……飛び乗る!」


ガァン!

バチバチバチッ!


美玲「あばばばばば」

まゆ「きゃああああ!」

飛鳥「ぐぅ…っうぅ……!」

飛鳥(飛び乗れた…!あとは《碧落のリベレイター》の発動している手を車から離さないようにしながら登る!)

美玲「ううう゛う゛う゛う゛!!」ビリビリ

飛鳥(すぐ壁にぶつかる!早く飛び降りなければ!) バッ!



ガシャァアン!!


飛鳥「くぅっ…!うぅ…!」ゴロゴロゴロ

ラジオ『飛鳥さん!無事ですか??』


飛鳥「!」

飛鳥(乃々が銃を!逃げ)

乃々「う、うらまないでくださいぃぃ……」チャキ

ラジオ『飛鳥さん!』

飛鳥「あ、ぁあありす!いまだ!その窓だぁ!!」

ラジオ『えっえぇ!?な、何がですか!?』

乃々「ひぃっ!?」ダァン!

ガン!

飛鳥(外れた!今のうちに逃げる!) タタタッ

飛鳥(咄嗟に出たにしては、我ながらいい感じのブラフだったな)フッ…


飛鳥「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」タッタッタッタッ

飛鳥(ゲームだからか、足に疲れがたまらずずっと走っていられる…何故か息切れはするけど)

ラジオ『飛鳥さん!《小悪魔エース》も杏さんの《おーる・ふぉー・ふぁん》と同じで安心安全設計らしいです!』

飛鳥「安全だから人を轢いても安心。か…? 安心安全設計なら自動ブレーキをつけてくれ…」


飛鳥「………………ん?」

ラジオ『どうかしました?』

飛鳥「……いや……道の端に棺桶が置いてある……」

ラジオ『かんおけ……ですか……』

飛鳥「あぁ……棺桶だ……」

ラジオ『…………』

飛鳥「…………」

ラジオ『…………』

棺桶「…………」

飛鳥「…………」ソロー…

棺桶「…………」

飛鳥「…………」ソロー……

棺桶「…………」

飛鳥「…………!」ダッ!

輝子「無視して走るんじゃネエエエェェェェェ!!!!」バァン??



飛鳥「………………ん?」

ラジオ『どうかしました?』

飛鳥「……いや……道の端に棺桶が置いてある……」

ラジオ『かんおけ……ですか……』

飛鳥「あぁ……棺桶だ……」

ラジオ『…………』

飛鳥「…………」

ラジオ『…………』

棺桶「…………」

飛鳥「…………」ソロー…

棺桶「…………」

飛鳥「…………」ソロー……

棺桶「…………」

飛鳥「…………!」ダッ!

輝子「無視して走るんじゃネエエエェェェェェ!!!!」バァン!!


飛鳥「……!」タタタタッ!

輝子「無視するなって発言を無視するんじゃネエェェ!!寂しいだろうがあああアアアア!!」ブォン!!


ゴシャア!!


飛鳥「!? 棺桶が…!」

ラジオ『どうしました!?飛鳥さん!』

飛鳥「棺桶が飛んできた……」

輝子「この棺桶は鎖付きなんだぜェ?だからこうやって振り回して武器にもできるのさァ!」

飛鳥「くっ……!」

輝子「フ…フヒヒヒヒ、フハハッアッハッハー!さぁここからが本番だぜえぇェェ!!」

飛鳥「……ん?鎖?鎖か…」ガシッ


飛鳥「《碧落のリベレイター》」


バチバチバチバチ!!

輝子「あばばばばばは」


シュウウゥゥゥ……


飛鳥(??…解除してないのに途中で切れた…!?……スタミナ切れか!スタミナなんてパラメータすっかり忘れてた!)

輝子「……い…いきなり電撃なんて…フヒ…ひどいじゃないか……」

飛鳥「そ、そっちこそいきなり棺桶を投げてきたじゃないか」

輝子「た…たしかに……その節はごめん…フヒ…」

飛鳥「え、あ、うん。こちらこそごめん……」

輝子「…………」

飛鳥「…………」

飛鳥(なんだろう……なんか気まずい……)

輝子「そ、それじゃあ改めて…フヒ…攻撃…するね」

飛鳥「あ、あぁ。分かった。ならこちらも反撃するか逃げるかするけど…いいかい?」

輝子「うん…大丈夫……それじゃあ行くぜ……《毒茸伝説》ヒャッハァァァアアアア!!」


ポコポコポコポコ


飛鳥「ありす!《毒茸伝説》だ…!」

ラジオ『流石にあの声量なら聞こえました!』

飛鳥(輝子の体から赤い茸が生えてくる……!知り合いの体から茸が生える姿は正直見たくないな…精神的になんかこう……クるものが……)


ラジオ『体から毒茸を生やします!取り外して投げることもできるそうです!』

輝子「マァッシュァァアアアアップ!!!カエンタケエエェェェェ!!」ダダダダ

飛鳥「走ってくる…!」

ラジオ『カエンタケ!?』

飛鳥「知っているのか!?」

ラジオ『えっと…要約すると触ると死ぬ毒キノコです!」

飛鳥「触るだけで!?」

ラジオ『はい!無人島に行く前に輝子さんのキノコ講座で教わりました!』

輝子「それは間違いだああぁぁ!!触るだけじゃ人は死なない!皮膚がただれたりかぶれたりするだけだあぁぁ!!何を聞いていたんだぁ!ありすぅぅ!!」

ラジオ『ご、ごめんなさい!』

輝子「ヒャッハァァアア!……ア?」ピタッ

輝子「…あれ?なんで飛鳥ちゃんからありすちゃんの声が聞こえるんだ…?」

飛鳥「!!」


輝子「も、もしかして……このカエンタケくんみたいにありすちゃんも飛鳥ちゃんの体にくっついている……とか?」

飛鳥(八割型正解…!まずい…)

飛鳥「…ボ、ボクがありすを背負っていたら、見るだけですぐに分かるだろう?」

輝子「あ…たしかに……でも、ありすちゃんも飛鳥ちゃんも同じ場所にいるってことになってるし……」

飛鳥(《∀NSER》でボクらの位置は知られ続けている…まずいぞ……!)

輝子「よくわかんないけど、一緒にいるなら……離れさせればぁ!いいだけだああぁぁ!!《PANDEMIC ALONE》」

飛鳥「うわっ!」グンッ!

飛鳥「わ、とっ、とっ……」

飛鳥(少しだけだけど後ろに飛ばされた…?)

ラジオ『きゃ、きゃあぁぁ!』
ありす「キャ、キャアァァ!」

飛鳥「!? ありす!?」

飛鳥(ありすがポケットから勢いよく飛び出てきた!?)

輝子「みんなボッチだあぁ!3m以上近づけない!ボッチのパーソナルスペースは!ひろいんだぜええぇぇ!!」

飛鳥「ぐっ…!ありすの方にも輝子のほうにも近づけない……!」

飛鳥(3m…!スタミナ切れ以前に完全に射程外だ…!どうする…!?)


ありす「カイジョ!」ポンッ!

ありす「飛鳥さん!役割交代です!」ブンッ!

飛鳥「うわっと、と……これは…タブレット?」

輝子「さあカエンタケェェ!お前の力を見せてみろおぉぉ!!」ポイポイポイポイ

飛鳥(投げてきた…!)

ありす「《ひかりの創り手》 風よ!」


ビュオオォォ!!
(風に舞い飛んでいく茸達)


輝子「アアァァ!?カエンタケェェェェ!!」

飛鳥「ありす!それは…!」

ありす「もうつかっちゃいました!だから時間いっぱい暴れるしかないです!電気!」


バリバリバリバリ!!


輝子「あばばばばばは!」


シュウウゥゥゥ……
ポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコ


ありす「ひぃ!?」

飛鳥「キノコがすごい勢いで生えてくる!?」

輝子「光れ稲妻!轟け雷鳴!私はお前を歓迎するぜサンダァァー!ヒャッハァァ!!」ポイポイポイポイ

ありす「なら!炎!」


ゴオォォァァ!!
プス…プス…シュゥ~(炭になった茸達)


輝子「アアァァ!?カエンタケェェェェ!!」




ギュン!!


ありす「!?」

飛鳥「浮いてる獅子舞…!」


ガブッ!


飛鳥「ぐっ!狙いはボクか…!ありす!風だ!風呂敷をめくれ!」

ありす「はい!風よ!」


ビュオオォォ!! ピラッ


獅子舞「イヤーン! 風サンノエッチー!」スウゥー

ありす「…………」

飛鳥「…………」

輝子「…………」

ありす「………なんでしょう…この、やるせない気持ちは……」

輝子「…………ありすちゃんの…エッチ」

ありす「え、や!違うんです!違うんです!不可抗力というか!仕方なかったんです!そうしないといけなかったというかなんというか」


まゆ「でも、めくったことには変わりないですよねぇ?」

飛鳥「まゆさん…!追いつかれたか!」

ありす「そ、それはそうですが、その…えっと……」

飛鳥「ありす!気持ちは分かるがそのことは後にしよう!」

ありす「は、はい!」


美玲「まゆッ!もっと奥に行ってくれないと乃々の射線が通らないぞッ!今は人と近づけないんだから」

乃々「輝子さんが《PANDEMIC ALONE》を解除すればいいだけなのでは……」

輝子「あ、ごめんよ…解除……」


まゆ「乃々ちゃん!あの作戦でいきますよぉ!《トリート オア トリート》」

飛鳥(箒が宙に浮いてる…?)

乃々「は、はぃ…!お、《おどおど狩人》」チャキ

ありす「つ、土!」ヒュンヒュン!

美玲「ウチに任せろッ!《スウィートデビル》」バシッ! バシッ!

飛鳥(ありすの飛ばした土塊がすべて扇子ではたき落とされた…!?)

まゆ「いきますよぉ♪」ギュン!

飛鳥(箒が飛んでき)


ヒュン!


飛鳥「え?」


ドスッ!


ありす「?っ!」

飛鳥「ありす!」

飛鳥(早すぎて見えなかった…!)


ダァン!


ありす「あ゛あ゛ぁ゛!!」

飛鳥「ありす!」

飛鳥(くっ…!この状況で温存とか言ってる場合じゃない!一回撒かないと!)



ピーンポーンパーンポーン♪


飛鳥「…??」

まゆ「…!」


晶葉『あー、テステス。諸君、聞こえるか?聞こえるな?このアナウンスはフィールド全域に聞こえるようにしてある』


飛鳥「なんだ…?」


晶葉『今しがたプレイヤーの半分が脱落した』


乃々「もう…半分に……」

輝子「…あれ……?元々何人だったんだ……?」

美玲「そういえば教えられてないな」


晶葉『これより、レイドバトルを開催する!』



まゆ「レイドバトル?」


晶葉『レイドバトルとは、一人だけでは到底敵わないレイドボスを何人かで協力して倒すというイベントだ!』

晶葉『今回はスキルとの相性が良すぎて強くなりすぎてしまった人をレイドボスとして、15分後にフィールド内のどこかに投入する』


飛鳥「このバトルロイヤルゲームで協力前提の敵……」


晶葉『と、いうことでレイドボスから皆に意気込みを発表してもらおうか』

???『え、そんな急に……』


ありす「ぐっ…!」

飛鳥「ありす、大丈夫か…?」

ありす「はい、なんとか……」

飛鳥(この間に逃げられるか……?それとも協力を申し出るか……どうする…?)


文香『みなさん、こんにちは…今回レイドボスに選ばれました、鷺沢文香です。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします…』


ありす「文香さん!?」

飛鳥「文香さんがレイドボス…か」

美玲「文香か…あんま強いイメージないな…」

まゆ「スキルとの相性。と言ってましたし、イメージは関係ないのでは…?」



晶葉『ではこれから、スキルの交換ガチャをするぞ』


輝子「ガチャ…?」

美玲「急にデレマスっぽくなってきたな……」

乃々「メタ発言なんですけどぉ……」



晶葉『今あるスキルを一種類捨てると、代わりに一つだけスキルを貰える。運次第では同じスキルを手にしてしまうかもしれないが、それはそれだ』

晶葉『今から10分間、シンキングタイムを与えよう!よく考えてスキルを選んでくれ!』


飛鳥「…………レイドバトル…だってさ、まゆさん」

まゆ「えぇ。そうですねぇ」

飛鳥「プレイヤー同士が協力することが前提のイベント…」

美玲「あッ!飛鳥がこれからなんて言うか分かったぞッ!」

輝子「最後まで言わせてあげて……」


飛鳥「ボク達と、共闘しないかい?」


美玲「予想通りだったなッ!」

乃々「シリアス気味なので空気読んであげてください美玲さん…」



まゆ「うふふ。」


まゆ「だめです♪」


飛鳥「な、何故だ!プレイヤー同士で協力しないと勝てない相手なんだ!」

まゆ「まゆはすでに3人と協力しています。戦力的には十分じゃないですかぁ?」

飛鳥「相手の戦力もわからないのに『十分』は流石に慢心しすぎじゃないのかい?」

まゆ「まゆたちには相手が一人なら確実に勝てる作戦がありますからねぇ…それを無闇に知らせるとレイドバトルの後に対策されるかもしれないので」

飛鳥「くっ……!」

まゆ「……さて、飛鳥ちゃん。時間もないのでそろそろ終わりにしますねぇ」

飛鳥「ありす!逃げるぞ!《桜風リフレイン》」


ブワアアァァ……


乃々「きれい…」

美玲「満開の…桜?」

輝子「もはや桜の木の森だな…こんなにあるなら少しくらい菌床用に持ち帰りたい……」


飛鳥「ありす!大丈夫か!?」

ありす「なんとか……っ」

飛鳥「逃げるぞ!このスキルなら確実に逃げれる!」ダッ!

ありす「はい!」ダッ!

まゆ「逃がしませんよぉ♪ 《恋愛シンドローム》」

飛鳥「フッ…残念だったね、まゆさん」

まゆ「何がですかぁ?《まゆの繭》」シュルルルルル!!


飛鳥「この桜の花びらは、全てボクの支配下にあるのさ」


ブァアア!!


まゆ「きゃあ!花びらが顔に!み、見えな…ぺっ!口に…!ぺっ!ぺっ!」


飛鳥「今のうちだ!逃げるぞありす!」

ありす「はい!《賢者の翼》」

飛鳥(ありすに翼が!)

ありす「飛鳥さん!手を!」

飛鳥「あぁ!」ガシッ!

バサァ!


バサッ!バサッ!バサッ!
タッタッタッタッ……

飛鳥「…って飛べないのか??」タッタッ

ありす「ひと1人持って飛ぶなんて出来ませんよ!ですが私の翼の進む力と飛鳥さんの走って進む力があわされば、2人がそれぞれ走るよりずっと速いはずです!」バサッ!バサッ!

飛鳥「な、なるほど……?」タッタッ

ありす「なんでちょっと腑に落ちてないんですか!」バサッ!バサッ!



まゆ「乃々ちゃん!2人の場所はわかりますか!?」

乃々「花びらが顔から離れなくて前が見えないんですけど…」

美玲「ウチも目が開けられないけど分かるぞッ!あっちだあっちッ!ウチが指差してる方!」

乃々「指差してる美玲さんも見えないんですけど…」

輝子「見えなくても感覚で分かるはずだぞ、ボノノさん…」

乃々「あ、そうでした…えっと、こっちの方で…」

乃々「《おどおど狩人》」チャキッ!

美玲「乃々ッ!」

まゆ「乃々ちゃん!仕留めて下さい!」


ダァン!!


まゆ「…かふっ」

まゆ「……………………え?」


まゆ「乃々…ちゃん?な、なんでまゆを撃ったんですか……?」


乃々「……え?」

美玲「まゆ?今なんて」

乃々「ひぃ!?もしかして森久保はとんでもないことをやってしまったのでは!?」

輝子「お、落ち着けボノノさん…飛鳥ちゃんとありすちゃんの位置は分かっても、それ以外は、目が見えないから分からなかったんだ……」

乃々「わざとじゃないんです!まゆさんごめんなさいぃ……」ガタガタ…



飛鳥「…………追ってこないな…」

ありす「一回止まりますか?」

飛鳥「いや、このまま出来る限り距離を稼ごう」

ありす「でもスキルの交換が…」

飛鳥「そうか。そうだったな……」

ありす「どうしますか?」

飛鳥「よし。すぐに決めて、また走ろう」

ありす「分かりました」


バサァ…


飛鳥「……よし、ボクは元々もう回数の残っていないスキルがあったからね。交換に出すのは《楽園-エデン-の入り口》にするよ」

ありす「私は……どのスキルもまだ使えるけど…」

飛鳥「交換しない、というのも一つの手さ。使い勝手の悪いスキルになる可能性だってあるんだからね」

ありす「はい…でも………いや、決めました」

飛鳥「どうする?」

ありす「《小さな妖精》を交換に出します」

飛鳥「何故だい?そのスキルは有用じゃないか。さっきもボクのスタミナがきれなければなんとかなったかもしれないし」

ありす「飛鳥さんに全部任せて自分は安全な所にいるだけなんて嫌です!これからは私も戦います!」

飛鳥「でも戦闘スキルはあと1回しか使えないんだろう?」

ありす「交換ガチャで手に入れます!」

飛鳥「手に入らない可能性だってあるんだ」

ありす「その時はその時です!」



飛鳥「…………」

ありす「…………」

飛鳥「わかった、ありすのことだ。ありすに任せるさ」

ありす「ありがとうございます」

飛鳥「……さて、交換にだすスキルの設定は終わったかい?」

ありす「はい、大丈夫です」

飛鳥「よし、じゃあ走ろうか」

ありす「はい!」

バサァ!


ありす「それにしても…追ってきませんね」バサッ!バサッ!

飛鳥「潜んでいるのか、それとも諦めたか……できれば後者であって欲しいけどね」タッタッ

ありす「でも私たちの位置は常に知られてるんですよね?」

飛鳥「あぁ。だが、ひとつ分かったことがある」

ありす「分かったこと?」

飛鳥「ボク達のいる方向と距離が分かるが、その間に障害物があるかないかは感知できないってことさ」

ありす「…? 障害物があるって目で見れば分かりますよね?」

飛鳥「そう。だからさっきみたいに視覚を奪うことが出来れば、乃々にまゆさんを撃たせたりできるってことさ」

ありす「おぉ…!ちなみにあの桜はあと何回使えるんですか?」

飛鳥「2回だ」

ありす「2回……」


ピーンポーンパーンポーン♪


ありす「!」

飛鳥「……!」


晶葉『さて、時間になったので締め切らせてもらうぞ』

晶葉『では、ドキドキワクワクのガチャの時間だ!』

晶葉『…うむ。今スキルの交換が問題なく終わったぞ。各々確認しておいてくれ。しかし!間髪入れずに次のイベントだ!モバゲーの方のデレマスっぽいだろう!』


ありす「モバゲーの方でも半日は休憩くれるのに…」


晶葉『さぁ!お待ちかねのレイドバトルの開催だ!ちなみにレイドボスも優勝する権利があるので、レイドボスを無視して他のプレイヤーを倒していくと最終的にはレイドボスとの一騎討ちになるぞ』

晶葉『レイドボスを撃破した者にはとあるアイテムを贈ろう!レイドボス撃破に一定以上貢献したと思われる者にもとあるアイテムを贈ろう!きっと役に立つぞ!』


ありす「アイテム……」

飛鳥「スキル以外で物を持つということがないこのゲームでのアイテムか…実質5つ目のスキルを手にするようなものか……?」

ありす「どうします?レイドバトル、参加しますか?」

飛鳥「…参加しよう。だが、出来るだけ他の人のサポートに徹するんだ」

ありす「サポートに?」

飛鳥「あぁ。ボク達の一番の強みは能力を知れることだ。つまり、レイドバトルで出来るだけ多くの人のスキルを知ることができれば?」

ありす「レイドバトルが終わった後、有利に戦える…」

飛鳥「そうだ」


ありす「でも、そんなにうまくいくんですか?」

飛鳥「まず前提として、レイドバトルを生き残らなくちゃいけない。だから出来るだけ前に出ないことが望ましい。しかし後方すぎると戦闘力のある人達のスキルを知れない……」

ありす「絶対うまくいかないと思います」

飛鳥「そんなことはないさ。ボクのラジオを使って軍師からの指示を戦線に伝える、伝令役になればいいのさ」

ありす「うまくいかないと思います」

飛鳥「『絶対』が消えたね、じゃあ可能性はあるってことだ」

ありす「むぅ…屁理屈を……」


晶葉『それではお待ちかね!レイドボスが出現するぞ!』



ありす「しまった!」

飛鳥「忘れてた!」


晶葉『レイドボスの出現地点の近くにいるプレイヤーは攻コスト、スタミナを回復しておいたぞ。参考にしてくれ!』


飛鳥「……………」

ありす「………………」

飛鳥「…………ありす」

ありす「…………はい」

飛鳥「…回復してるね……」

ありす「回復してますね……」

飛鳥「すぐにここを離れるぞ!」

ありす「はい!」バサァ!


晶葉『それでは諸君。レイドバトル、スタート!』



《『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』(川端康成「雪国」より)》


飛鳥「!?」ズボッ

ありす「地面に急に雪が!」

飛鳥(雪に足がとられる…!)

飛鳥(それ以前に…!)

飛鳥「ありす!頑張ってくれ!この足場じゃうまく走れない!」

ありす「分かってます!既に全力です!」バサッ!バサッ!

飛鳥(範囲スキルは使った位置が他のプレイヤーにバレる…!その位置は感覚で分かる!)


飛鳥(後方125m!状況から言って文香さん以外ない!文香さんの声だったし!)

飛鳥「なんでいつも準備する時間をくれないんだ!」



ありす「前から誰か来ます!」


「やあああぁぁぁぁぁ!!!!」ズバババババ!!


ありす「珠美さんです!雪を斬りながら進んでます!」

飛鳥「雪を!?」


珠美「やあああぁぁぁぁぁ!!!!」ズバババババ!!

ありす「珠美さん!」

飛鳥「珠美さん!ボク達と協力しないか??」

珠美「ごめんなさい!助太刀無用でお願いします!」ズバババババ!!


ありす「行ってしまいましたね……」

飛鳥「あ、ああ……」

ありす「……!飛鳥さん!珠美さんの作った道が」

飛鳥「そこだけ雪が少ない…!これで少しは走る速度が…!」

ありす「逃げましょう!」

飛鳥「だが、珠美さんが…!」

ありす「でも助太刀無用って!」

飛鳥「…そうか。よし、残ろう」

ありす「飛鳥さん!」

飛鳥「どちらにしても手の内が知りたい。言っただろう、ボク達の武器は情報だと」

ありす「でも…!」



珠美「やあやあ我こそは!アイドル界随一の剣豪、脇山珠美なり!貴殿を強者(つわもの)とお見受けした故、一騎討ちを申し込みたい!」

文香「…わかりました。お受けしましょう」

珠美「それでは尋常に!《流浪の剣客》脇山珠美!いざ参る!」

文香「《『わたしの太刀は二十三合目に、相手の胸を貫きました。』(芥川龍之介「藪の中」より)》」


ガキィン!!
キィン!キン!キィン!ガキン!
ガガガガガガガガ!!


飛鳥「文香さんが刀…?そんなものを持ったときなんてあったか……?」

ありす「イメージにもないです……ですが」

飛鳥「どうした?」

ありす「今、芥川龍之介って」


珠美「中々やりますね!これは本気でいかないといけませんね!」

文香「今までは本気ではなかったのですか…?」

珠美「今までも本気でしたし、これからはもっと本気でかかるということです!」

文香「…すみません、珠美さん。私は…」

珠美「覚悟!やああぁぁ!」

ガガガガギィ!キン!ギィン!



ありす「飛鳥さん!もう行きましょう!どっちが勝つにしても、このままじゃ次は私達です!」

飛鳥「…………分かった。行こう!」

バサァ!
タッタッタッタッ…


飛鳥(考えろ…雪はともかく刀は文香さんのイメージには沿っていない。しかしあの剣戟は一体…?)

ありす「飛鳥さん!ラジオは」

飛鳥「ダメだ!走りながらだとチューナーを常に弄る必要がある。ありすと両手を繋いでる今は使えない」

ありす「…飛鳥さん」

飛鳥「なんだい?」

ありす「文香さんの能力って」

飛鳥「まだ分からない。だがヒントはある。一度落ち着いて考えたいが…」

ありす「!? あれは!」

飛鳥「くっ……まゆさん」

まゆ「はぁい、まゆですよぉ♪」

ありす「飛鳥さん!どうしましょう!?」

飛鳥(どうする…?脇道はまゆさんの後ろか、ボク達の後ろにしかない……)

飛鳥「突破か…それとも反転か………前門の虎、後門の狼とはまさにこのことか…」




まゆ「うふふ♪ 安心してください。今、用があるのは文香さんの方なんです」

飛鳥「文香さんに…?」

まゆ「はい♪レイドバトルのイベント中ですから」

ありす「ど、どうしましょう…?」

まゆ「早く逃げた方がいいかもしれませんよ?文香さんがこっちに歩いてきます」

飛鳥「!?」バッ!

ありす「本当だ…じゃあ珠美さんは」

飛鳥(こんな短時間で!?)


《きらりん☆シャワーー!!》


飛鳥「!?」

ありす「!?」

まゆ「!?」

ありす「な、なんですか!?」

まゆ「地面が所々黒く…影!?」バッ!

ありす「お、大きい飴が降ってきます!飛鳥さん!早く逃げないと!」

飛鳥(これは…)

飛鳥「ありす!動くな!」

ありす「なんでですか!このままじゃ」

飛鳥「いいから!」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドド!!


ありす「きゃああぁぁ!」


ありす「あ、当たってない……?」

まゆ「……本当にスキルのことを『既に知ってる』みたいに対処しますね」

飛鳥「…っ!」


きらり「ありすちゃん!飛鳥ちゃん!まゆちゃん!そこはボスが近くにいるから危ないゅ!こっちだにぃ!」

ありす「きらりさん…?」

飛鳥(まゆさんの後ろの脇道からきらりさんが…)

飛鳥「……まゆさんは今ボク達を攻撃するつもりはないんだね?」

まゆ「はい♪今のまゆ達は文香さんと闘うために来ています。飛鳥ちゃん達はまた後で」

飛鳥「協力は…?」

まゆ「答えは変わりませんよぉ♪」

ありす「え、えと」

まゆ「さ、どうぞ」スッ…

飛鳥「……分かった、ありがとう。行こうありす」タッ

ありす「え…えと……は、はい!」タッ


まゆ「…………」


ありす「いいんですか?」

飛鳥「大丈夫だ。不意打ちはしても嘘を吐いてまで騙す人じゃないのはボク達が知ってるだろう?」

ありす「確かにまゆさんはそんなことしないと思いますけど…」



きらり「まゆちゃーん!そこは危ないにぃ!みんなで協力しよぉー!?」



飛鳥「きらりさん!」

きらり「飛鳥ちゃん!ありすちゃん!まゆちゃんは」

飛鳥「まゆさんは、文香さんに勝負をしかけるみたいだ」

きらり「そんな!? 1人じゃ無謀だにぃ!」

ありす「いえ、まゆさんとインディビジュアルの4人チームです」

飛鳥「ボク達はボク達で備えておかないとな…文香さんと、文香さんを倒すかもしれないまゆさん達に対して」

きらり「ん~~…………分かったにぃ。まゆちゃ~ん!頑張ってにぃ!きらりん☆びーむ!」

ありす「まゆさんが笑顔で手を振ってくれました」

きらり「それじゃあ飛鳥ちゃん!ありすちゃん!こっちだにぃ!」

ありす「はい!」


飛鳥「………………」

きらり「飛鳥ちゃん?どうしたの?」

飛鳥「……きらりさん」

きらり「?」

飛鳥「きらりさんは戦う為のスキルはありますか?」

ありす「飛鳥さん…?」

きらり「あるけど…どうかしたの?」

飛鳥「……きらりさん。少し様子を見たい、まゆさんと文香さんの」

きらり「あ、危ないにぃ!2人が戦ってる間にもっと仲間を増やした方がいいにぃ!」

飛鳥「ボクとありすは情報収集に特化したスキルを持ってる。他の人よりも安全に情報を集められるハズだ」

きらり「でもぉ…」

ありす「え、えっと…」


猫「う~ん…いいんじゃない?情報は大事だしね♪」


飛鳥「!?」

ありす「!?」


きらり「でもでもぉ…もし見つかっちゃったら…」

猫「きらりちゃんは飛鳥ちゃんとありすちゃんのこと信じられない?」

きらり「そんなことないにぃ!」

猫「じゃあ決まりだね♪」

飛鳥「…………えっと…」

ありす「…なんで猫がいるんですか?しかも普通に喋ってますし…」

きらり「きらりは猫ちゃんと2人組で仲間を集めてたんだにぃ」

猫「実はそうだったんだよ!オッドロキー!なんで猫がいるのか知りたい~?ありすちゃん知りたい~?」

ありす「は、はい…」

猫「じゃあ教えてあげな~い!」

ありす「『じゃあ』ってなんなんですか!」



猫「そんなことより、まゆちゃんの方の様子見なくていいのかな?」

ありす「そう言われればそうでした!」

飛鳥「喋る猫のせいで忘れてた!ありす!タブレットのカメラを脇道から出して様子を見てくれ」

ありす「は、はい!」

きらり「じゃぁ、きらりは見つかった時のために戦えるように準備してるにぃ!」

猫「きらりちゃん!手伝うよ!うおーやるぞやるぞー!シュッシュッ!」シュッシュッ

きらり「うっきゃー☆シャドーボクシングまでして猫ちゃんやる気マンマンだにぃ!」

飛鳥(後ろ足で立ってシャドーボクシングしてる…猫が……)

ありす「飛鳥さん!まゆさんがいます。遠くに文香さんも」

飛鳥「あ、あぁ。文香さんまでの距離は分かるかい?」

ありす「え、えっと、ちょっと待って下さい」

ありす「えっと、建物が1、2、3、4、5、6、7……地図アプリで、ここから建物が1、2、3、4、5、6、7……だから…だいたい200メートルです!」

飛鳥「オッケー。ありすはカメラで文香さんの様子を見ててくれ」カチャカチャ

ありす「まゆさんの方は見なくてもいいんですか?」

飛鳥「《恋愛シンドローム》で文香さんの背後に行くだろうから、文香さんの方を見ていればまゆさんもそこに来るハズさ」

ありす「なるほど」


猫「きらりちゃんきらりちゃん」

きらり「なぁにぃ?猫ちゃん」

猫「2人は何をしているの?」

きらり「情報を集めてるんだにぃ」

猫「仕方ないなぁ~じゃあそれでいいよ」

きらり「それは情報じゃなくて『譲歩』だにぃ」

猫「たいへんよくできました」

きらり「それは『上手』だにぃ」

猫「最後は酸素ボンベを口に咥えさせてそれを銃でバン!」

きらり「それは『ジョーズ』だにぃ」

猫「詳しい~なんで知ってるの?」

きらり「奏ちゃんがDVDを貸してくれたにぃ」

猫「だんだん関係なくなってきちゃったね」

きらり「猫ちゃんがはじめたことだゆ?」

猫「たしかに~」


ラジオ『!? まゆちゃんが消え……?』

ラジオ『こっちですよぉ♪《ハロウィンパーティー》』カプ

ラジオ『後ろ…!?ぐっ…!』

ラジオ『スタミナとコストを吸っちゃいますよぉ♪』チウチウ

ラジオ『吸血鬼…ですか……では』

ラジオ『させませんよぉ!《恋愛シンドローム》』


ありす「2人が消えました!」

飛鳥「待ち伏せ場所に文香さんを連れて行った。というところか」

ありす「どこに行ったんでしょう」

飛鳥「まゆさんが見える位置に仲間がいたハズ。つまりそんなに離れてはいないハズだ!」カチャカチャ


ラジオ『『アバダ ケダブラ』(J?K?ローリング「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」より)』


飛鳥「拾えた!」

きらり「アバダ……え?」


ありす「2人が消えました!」

飛鳥「待ち伏せ場所に文香さんを連れて行った。というところか」

ありす「どこに行ったんでしょう」

飛鳥「まゆさんが見える位置に仲間がいたハズ。つまりそんなに離れてはいないハズだ!」カチャカチャ


ラジオ『『アバダ ケダブラ』(J・K・ローリング「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」より)』


飛鳥「拾えた!」

きらり「アバダ……え?」


ありす「…! 建物から人が飛び出てきました!まゆさん達です!乃々さんだけいません!」

飛鳥「動いて距離がズレた!」カチャカチャ

ありす「文香さんから緑の光が出て美玲さんに当たりました!」


ラジオ『『アバダ ケダブラ』(J・K・ローリング「ハリー・ポッターと謎のプリンス」より)』


ありす「また緑の光が!今度は輝子さんに!」


ラジオ『くっ…!《トリート オア トリート》《まゆの繭》』

ラジオ『『アバダ ケダブラ』(J・K・ローリング「ハリー・ポッターと死の秘宝」より)』

ラジオ『きゃああああ!』



ありす「ま、まゆさんとインディビジュアル……ぜ、全滅です」

飛鳥「……っ」

きらり「にょわ…そんな…」

猫「逃げるよみんな!こっち!」

飛鳥「あ、あぁ!分かった!…ありす!」

ありす「は、はい!」


飛鳥「文香さんの能力が理解(わか)った気がする」

ありす「私もです」

猫「なになに~?文香ちゃんの攻略方、見つけちゃった?」

ありす「そこまではまだ…」

飛鳥「正直、対策のしようがないと思うが…」

きらり「文香ちゃんはどんなスキルなの?」

ありす「多分なんですが、本の中の文章を言うことで、その本と同じことを起こすのではないかと」

猫「…ん?つまりどういうこと?」

飛鳥「『アバダ ケダブラ』って呪文に聞き覚えはないかい?」

きらり「ハリー・ポッター?」

飛鳥「そう。どこの図書館でも置いてあるだろう有名な本さ。その作中に登場する呪文の一つ。効果は……死」

猫「じゃあ最初に言ってた『トンネルを抜けると~』ってのも本から引用したってこと?」

飛鳥「あぁ。現に僕らの足は依然雪に捉われている」

ありす「J・K・ローリング、川端康成、あと私と飛鳥さんしか聞いていませんが、芥川龍之介とも言っていました……どれも有名な作家ですし、この説で間違いないと思います」

きらり「もーー!死の呪文なんて強すぎるにぃ!」

猫「卑怯じゃんヒキョー!」


飛鳥「しかし、不思議なことがひとつある」

きらり「ふしぎなこと?」

飛鳥「あぁ、予想だが、アバダ ケダブラはきっと4回撃っている。ラジオで聞けたのはそのうちの3回だ。そしてその3回とも、同じ作品名のものはなかったんだ」

猫「……ん?ハリーポッターはハリーポッターでは?」

飛鳥「炎のゴブレット、謎のプリンス、死の秘宝…」

猫「……ほうほう!なるほどー!合点承知!つまりどういうこと?」

ありす「承知って言葉の意味知ってから使って下さい…」

猫「猫ちゃんだから人間の情報には疎いのだー!」

きらり「じゃあしょうがないにぃ☆」

ありす「しょうがないんですか……?」

猫「つまりシリーズは同じでも違う本ってこと?」

飛鳥「イグザクトリィ」

ありす「分かってるじゃないですか!」



猫「チッチッチ……このアタシを普通の猫ちゃんだと思ったら大間違いですよ、お嬢さん…?」

ありす「なんか疲れてきました……」

きらり「わざわざ作品を変えて呪文を使ってたってことなの?同じ呪文なのに…ふっしぎー☆」

飛鳥「そう、そこなんだ。一言一句違わずに同じ文を引用するのに、何故作品だけ変えているのか」

猫「気分なんじゃない?」

ありす「あなたじゃないんですから」

きらり「もしかして、1回しか使えないとか……かなぁ?」

飛鳥「ボクもその可能性が一番高いと思ってる」

ありす「つまり死の呪文も回数制限があるってことですか?」

飛鳥「恐らくは、だけどね」



猫「ねーねー。気になったことがあるんだけどさ」

飛鳥「なんだい?」

猫「文香ちゃんはなんで一人一人倒していったんだろうね、一回でみんなまとめてドバーッと倒しちゃえばいいのに」

飛鳥「確かに…」

ありす「非効率的ですね」

きらり「確実に倒しておきたかった…とか?」

猫「でも、文香ちゃんならまとめて倒せるような文も知ってそうじゃない?」

ありす「絶対知ってますね」

飛鳥「なんで君が自信満々なんだ…」

きらり「ありすちゃんは文香ちゃんのことが大好きなんだにぃ♪」

ありす「そ、そんなことは…!なくはないけど…普通です!普通」

猫「ひゅーひゅー♪」

飛鳥「それで、こちらの戦力はどんな感じ……ってそうだ!スキル!」

ありす「あっ!そうでした!」

猫「どうかしたの?」

飛鳥「いや、色々あって新しいスキルの確認が出来ていないんだ」

ありす「はい、そうなんです」

きらり「じゃ~ぁ、いま少しだけしちゃう?」

飛鳥「大丈夫だろうか」

猫「しっかり検証とかはできないかもだけど、少しくらいならなんとかなるなる~。…きっと」

ありす「最後に不安になりそうな言葉入れないでくださいよ」

猫「きっと、多分、恐らく、大丈夫!だと思わないこともない…かもしれない!」

ありす「どこにも信用できる要素がないじゃないですか!」



飛鳥「そんなに時間をかけられないな。ありす」

ありす「は、はい」

飛鳥「スキル名だけ言うから検索してくれ」

ありす「え、あの…」

きらり「どぉしたの?ありすちゃん」

ありす「飛鳥さん…いいんですか?」

飛鳥「あぁ。今はスキル確認に時間をかけられない。それにこの2人…1人と1匹?とはこれから協力する仲間だからね」

猫「おや、2人の中では秘密の秘め事があるようだねぇ、きらりさんや」

きらり「きっととってもつよぉいスゴイ技があるんだにぃ♪」

ありす「『秘密の秘め事』って意味かぶってません?」

猫「スゴいよ飛鳥ちゃんありすちゃん!」

ありす「まだ何も言ってないですよ!」


飛鳥「すまないきらりさん、少しの間でいいんだが、ありすをおぶって走ってくれないか?」

ありす「えっ、私ですか?」

きらり「もっちろんいいよぉ☆ でもなんでぇ?」

飛鳥「ありすのタブレットを使いたいんだ。でもタブレット使いながら走るというのも…ね」

きらり「わかったにぃ☆ じゃあありすちゃん!きらりの背中に乗って乗って!ほぉら早く!」シャガミ

ありす「あ、し、失礼します」

きらり「よーし!しゅっぱつしんこぉー!」

猫「おー!」

ありす「わ、わ、きらりさん早いです…!」

きらり「ちょおーとっきゅうきらり号!まだまだ速くなるよぉ♪」

飛鳥「き、きらりさん…本気で走るとボクも追いつけなくなるから遠慮してくれるとありがたいんだが」

猫「アタシは追いつけるよ♪」

飛鳥「そりゃ猫は人より足が速いからね」

きらり「猫ちゃんすっごぉい☆」

猫「えっへん!」




ありす「タブレット準備できました!」

飛鳥「すまない!《灼熱のリベリオン》だ!」

ありす「しゃく、ね…つの……揺れてると文字打ちにくいですね…」

きらり「ごめんね?ありすちゃん」

ありす「いえ!きらりさんは悪くないです!自分で走りながらするよりよっぽど使いやすいです!」

きらり「ありがとぉ♪ありすちゃん」

ありす「いえ…あ、検索結果でました!えと…スタミナを消費して剣が使えます!」

飛鳥「剣か……」グッ!

猫「きらりちゃんから見えてないから言うけど、飛鳥ちゃんいま隠れて小さくガッツポーズしてたよ!かわいい!」

飛鳥「な!? い、一体なんの話かな?」

きらり「飛鳥ちゃんはいつだってきゃわうぃいにぃ」

飛鳥「う゛… あ、ありす!その剣は何か能力とか弱点とかあるのかい!?」

猫「照れ隠しでありすちゃんに話を振る飛鳥ちゃんかわいい!」

きらり「きゃわうぃい☆」

飛鳥「う、うるさい!今はボクじゃなくボクのスキルのことだろう!」


ありす「えと、コストを消費して炎を出せるそうです」

飛鳥「紅蓮の炎を吐き出す剣(つるぎ)か……フッ…いいじゃないか」

猫「それで、ありすちゃんはスキル名だけでどんな能力か分かる能力を持ってるんだね?」

ありす「は、はい…その通りです」

きらり「すっごぉい☆じゃあじゃあ、《きらりん☆パンチ》も分かる?」

ありす「え?は、はい。ちょっと待って下さい」


ありす「《きらりん☆パンチ》きらりんロボが出てきてパンチする…………あ、あれですか…」

飛鳥「あれか…」

きらり「あれあれぇ?2人とも知ってゆの?」

飛鳥「ゲーム開始してすぐにきらりんロボが出てきてたから何事かと思っていたのだが…やはりきらりさんだったか」

きらり「そう!コストとスタミナをぜぇ~んぶ使っちゃうから連続で使えないけどぉ、時間さえあれば何回でも使えちゃうつっよぉいスキルだにぃ♪」

飛鳥「あんな強大なスキルが回数限定じゃないのか……」


猫「それで、ありすちゃんの新しいスキルは?」

ありす「あ、忘れてました。えと…」

ありす「……………………」

飛鳥「ありす?」

きらり「どうかしたの?」

ありす「《今日だけの告白》…飛鳥さん!これを!」ポイッ

飛鳥「ありす? これは…チョコ…?」

ありす「はい!回復アイテムです。攻と守のコストとスタミナを全回復します!」

猫「ワァオ☆ありすちゃんふとっぱら~」

ありす「もう一つはきらりさんに」

きらり「きらりはだいじょうぶだよぉ♪スタミナもコストも《きらりん☆パンチ》にしか使わないのだ☆」

ありす「じゃあその《きらりん☆パンチ》用に持っていて下さい」

きらり「ん~ん。それはありすちゃんが持ってて♪」

ありす「…わたしはスタミナもコストも使うスキルがないんです……だからこれはわたしには一番必要のない物なんです……だから」

きらり「……そっか☆ じゃあこれはありすちゃんのために使うね、ありがとぉ」

ありす「…はい!」


飛鳥「……ありす」

ありす「なんですか?」

飛鳥「……すまない」

ありす「何がですか?」

飛鳥「………いや、なんでもないさ」

猫「ねーねーありすちゃん!アタシは?アタシのは?」

ありす「犬や猫にとってチョコは毒らしいですし」

猫「ガーーン!?」

ありす「それに2つしか無かったので」

猫「ちぇー。あ、そろそろ集合場所じゃない?」

きらり「さぁーって!何人集まったかな?うっきゃー☆ワクワクするにぃ♪」

飛鳥「元々は何人だったんだい?」

猫「3人だよ!きらりちゃんと、アタシと、あともう1人いたの」

ありす「それ2人と1匹では…?」

猫「それでそのもう1人はね」

ありす「無視ですか」

猫「ソルトおねいさん!」

飛鳥「ソルト…?塩…塩見周子かい?」

猫「チッチッチ…違うんだな~これが」


???「ソルトじゃなくて、しゅがーだぞ☆」




猫「ソルトボディ先輩!」

心「しゅがーなはぁとを持ってても体は塩でできてるワケじゃぁないぞ☆いい加減にしろよ☆」

猫「はい。ごめんなさい」

心「い、いやいきなりマジトーンで謝るなよ…」

飛鳥「心さんがきらりさんとのパートナーってことでいいのかい?」

心「そだよー。ってか、はぁと って呼・べ・よ☆」

飛鳥「とても心強いよ、心さん」

心「はぁとって呼べよ☆んもう!思春期め~」

きらり「それで、はぁとちゃんは仲間集められたぁ?」

心「モチのロンよ!」

きらり「すっごぉーい☆」

心「もっと言って!」

きらり「すっっごぉーーい☆」

心「もっと!」


???「…………ねえ。アタシたちいつまで待ってればいいの?」

???「いい加減待ちくたびれたぞ」


心「んもぅ。辛抱が足りないゾ☆もっともったいぶってハードルあげたかったのに」

梨沙「何がハードルよ、さっきから聞いてれば話が進んでないじゃない」

猫「ごめんねー、うちのありすちゃんが」

ありす「私ですか!?」

晴「いやありすじゃないだろ」

梨沙「主にアンタと心の2人が原因じゃない」

晴「ってかなんでありすはきらりの背中に乗ってんだ?怪我でもしたか?」

梨沙「一応ゲームよ?ここ。すごくリアルだけど。怪我なんてするの?」

ありす「いえ、これは移動とタブレット操作を同時にこなすために…」

梨沙「?」



飛鳥「それで、心さんが集めた仲間っていうのはこの2人かい?」

心「そだよー☆」

梨沙「何よ。なんか文句でもあるの?」

飛鳥「いや、そんなことはないさ。とても心強いよ」

梨沙「む…やけに素直じゃない……調子狂うわね…」

飛鳥「ま、そんな日もあるさ」

晴「それで、きらりの集めた仲間ってのはありすと飛鳥と……この猫か?」

猫「残念でしたー!アタシはきらりちゃんチームの一員だったのです!」

晴「なんで猫が喋るんだよ…」

梨沙「どうせ誰かのスキルなんでしょ?」

猫「晴ちゃん梨沙ちゃん!なんでアタシが喋って歌って踊れる猫なのか知りたい?」

梨沙「いや別に」

晴「特には」

猫「教えない!ってアレー?そこは知りたいって言ってよー」

梨沙「いや雰囲気でなんとなく誰か分かるし」

晴「ってか教えるつもりねぇのかよ」



飛鳥「………よし、一度情報を整理しよう」

梨沙「ん。そうね、お互いのスキルとか知っておいた方がいいものね」

飛鳥「あぁ。それにボク達は文香さんのスキルについて少し知っていることがある。確証はないけど、ね」

梨沙「文香と戦ったの!?」

ありす「いえ、戦ったのはまゆさんのチームでした」

きらり「きらりたちわぁ、それを見てただけだにぃ♪」

晴「ふーん…それで、文香の能力はどんななんだ?」

飛鳥「『本の一文を引用して、その現象を起こさせる』かな」

晴「……ん?つまりどういうことだ?」

心「……トンネルを抜けると、雪景色であった」

梨沙「心?」

心「文香ちゃんが最初に言った言葉。それでこのフィールド全体がスキーシーズンになったってこと」

晴「たしかにそう言われればそんなこと言ってたような…?」

心「川端康成の『雪国』 その中で最も有名な一文ね」

晴「じゃあその『雪国』って本の文章を使ってフィールド全体を雪景色にしたってことか」

ありす「はい。そうなります」


飛鳥「ボクとありすは他にも芥川龍之介とJ・K・ローリングを聞いてる」

心「芥川龍之介は言わずもがな…J・K・ローリングって……ハリーポッターの人だっけ?」

ありす「はい。そうです」

梨沙「なるほど…まずいわね」

晴「どうまずいんだ?」

梨沙「正直想像ができないけど、文香に持たせた瞬間にとてつもなく強くなりそうな能力ってのだけは分かるわ」

心「まゆちゃんのチームが文香ちゃんと戦ってるのを見たって言ってたけど、他にはどんな文を使ってたの?」

ありす「ア…」

晴「あ?」

ありす「アバダ・ケタブラ…」

心「はぁ!?」

梨沙「何よそれ!?卑怯もいいとこじゃない!」

晴「オレにも文香の能力のヤバさが分かったぞ」

飛鳥「でも、その呪文は回数制限があるらしいんだ」

梨沙「なんでそんなことわかるのよ」

ありす「文香さんは能力を使う時、どの作品から引用したのかを毎回言ってたんです」

梨沙「そう言われれば最初のもなんか言ってたわね、なになにより、みたいな」

晴「なんかってなんだよ…」

梨沙「しょうがないでしょ!?覚えてないんだから!」



ありす「アバダ・ケタブラは4回使っていたのですが、その全てが違う作品名だったんです」

晴「え?ハリーポッター以外にその呪文出てくるのか?」

飛鳥「『死の秘宝』『謎のプリンス』『炎のゴブレット』厳密に言えば作品名は違うだろう?」

心「んもぅ。屁理屈みたいだぞ☆」

飛鳥「いや、ボクに言わないでくれよ」

晴「ん?今3つしか言ってなくね?ありすは4回使ったって言わなかったか?」

ありす「はい。文香さんの声が聞けたのは3回。その3回と同じ緑色の光が文香さんから出ていたので、多分それも同じかと」

晴「なるほどなー…」

心「あれ?でもなんで同じ文なのに文香ちゃんはわざわざ引用作品変えたの?」

猫「そこに気付くとは!流石!すごい!」

心「もっと言ってもいいんだゾ☆」

猫「すごい!可愛い!最年長!」

心「ぶっとばすぞ☆」


きらり「きらりたちもぉ、そこが気になったんだにぃ☆だからぁ、仮説をたててみました!」

猫「ワァ~オ☆すごい!」

梨沙「仮説?」

飛鳥「あぁ。同じ文をわざわざ別の作品から引用するってことは、一回引用したらその作品からはもう能力を使えないんじゃないか…ってね」

梨沙「一作品につき一回のみ。ねぇ…」

心「少し安心したけどあんまり強さには影響しなさそうで、ねぇ…?」

ありす「とりあえず文香さんについてはそんなところです」

きらり「じゃあじゃあっ!つぎわぁ、みんなのスキルをシェアしよぉー!」

猫「おーっ!」


飛鳥「じゃあボクから。ボクができるのは盗聴、近接戦闘、あとは目眩しだ」

梨沙「盗聴と目眩しって…」

飛鳥「いや、まぁ、ボクも自分で言っててやるせない気分になってるところさ」

ありす「私は空を飛べます。それとあと一回だけですが、風や水などを操ることができます。あとはカメラや地図とかタブレットを使ったことできます。スキルの検索もできます」

心「スキルの検索!?」

梨沙「何ソレ!卑怯じゃない!?」

ありす「卑怯じゃありません!スキル名を知らないと検索できないんです!」

猫「だとしても強いよね~、ありすちゃんの検索機能」

ありす「それだと私に検索機能がついてるみたいじゃないですか…」

猫「おや?」

晴「違うのか?」

ありす「タブレットです!私ではなく、私のタブレットに検索機能があるんです!」

猫「まあまあ、そう熱くならずに…ね?」

ありす「誰のせいですか…」


きらり「じゃあじゃあ♪ つぎわぁ、きらりの番だにぃ♪ きらりは、きらりんロボを呼び出してパンチをすることができるのだ!」

晴「ロボ出せるのか!?」

心「こっちもこっちで卑怯かって強さだよね~」

きらり「ほかにもぉー、ちっちゃくなったり、おっきぃ飴を降らせたりできゆの!」

心「飴の雨ってか☆」

梨沙「…………」

晴「…………」

猫「あ、ゴメンゴメン!よく聞いてなかったからもう二回言って?」

心「なんで二回なんだよ!……コホン。それじゃあ次はみんな大好きしゅがーはぁとの番だゾ☆」

猫「よっ!スウィーティー!」


心「はぁとのスキルはね」



《『「同じ姓を持つ人間がこれほどいることに、私はこれ以上堪えられん!嫌気がさす!吐き気がするぐらいだ!」』(山田悠介「リアル鬼ごっこ」より)》


心「え?…………」

心「……………………」

心「………………………………………………え?」



晴「文香がスキルを発動したな…あっちか」

飛鳥「偶然か必然か…意外と近い、といえば近い場所だね」

心「………………ねぇ」

晴「仕掛けるか?オレと梨沙は早く移動できるスキルがあるぜ」

梨沙「アタシは近距離で戦えるわ。晴は中距離?遠距離?かしら」

ありす「それで、文香さんは一体どんな本を使ったんでしょうか…?」

心「…………ねぇ、みんなはさ」

きらり「はあとちゃん?急にどぉしたの?」

心「みんなは、リアル鬼ごっこって本…知ってる?」

ありす「心さん知ってるんですか!?じゃあ今の文からどんなことが起きるか分かりますか!?」

心「うん……分かるんだ……分かっちゃうんだ……」

猫「アタシ映画ならみたことあるよー!奏ちゃんとかと一緒にレンタルした中に入ってたから!」

晴「どんな内容なんだ?」


猫「あのね、日本には佐藤さんが多いから、佐藤さんの数を減らそうってストーリーだったよ!佐藤さんだけを追いかける鬼がいて、鬼に捕まると死んじゃうの!」


ありす「えっ…」

梨沙「佐藤さんだけを…」

晴「追いかける鬼…」

飛鳥「鬼に捕まると…」

きらり「……もしかしてぇ、『佐藤さん』って…はぁとちゃんだけ?」

心「そうだよ!はぁとだけだよ!!つまり、はぁと以外には無害な鬼が放たれたってことだよ!!!」

晴「…あ、あー。なんだ……ドンマイ」


ザッ!


ありす「わ!なんか黒尽くめの人達がこっちに来ます!」

猫「映画でみた!あれが鬼だよ!」

心「ちくしょう!!絶対生き残ってやるからなー!うおおおおーー!!」ダッ!


ダダダダッ!


飛鳥「鬼が一斉にこっちに来るぞ!」

梨沙「文香のいる方と反対側に逃げたら私たちが動き辛いじゃない!」

晴「いやそれはしょうがないだろ…」

きらり「でも、あの量の鬼が来たらきらりたちは身動き取れないにぃ…?」

ありす「でも本当に私たちには無害なのでしょうか…?」

晴「すぐ分かるだろ。どっちにしろ文香がいるのはあっちだしな」

梨沙「グズグズしてたら逃げられるかもしれないし」

飛鳥「確かに。ボク達が理解(わか)っているのはあの鬼を出した瞬間の文香さんの位置だけだ。その後どう動いたかまでは分からない」

晴「なら早く仕掛けた方がいいよな」

梨沙「ええ。晴、アレやるわよ!」

晴「オッケー!」




梨沙&晴「ユニットスキル《輝け!ビートシューター》」




飛鳥「ユニットスキル…!」

ありす「………………輝きませんね」

梨沙「うるさいわね!これからなのよ!さぁ行きなさい晴!」

晴「行きなさいって…オレはポケモンかよ……ったく!《疾風のストライカー》」ダッ!

ありす「晴さんが鬼達に向かって走っていきます!大丈夫なんですか!?」

梨沙「大丈夫よ、アンタ達もあとから来なさいよね。《セクシーパンサー》」


ヒヒーン!ペロペロペロペロ!!

梨沙「あぁ!もう!舐めないでって何回言えば分かるのよこの馬ヤロウ!」

きらり「うっきゃー☆お馬さんだにぃ♪きゃっわうぃ~☆」


梨沙「よいしょ、よい…しょっと」ヨジヨジ

梨沙「ほら、晴の方を見てみなさい」

飛鳥「あの大量の鬼たちをすり抜けて走ってる…!?」

梨沙「どんなに障害物が多くても全力疾走できるのが今の晴のスキルよ。……アタシも負けてられないわね」

ありす「……梨沙さん?少し体が光ってませんか?」

梨沙「晴に負けられないって気持ちが溢れてるのよ…!さあ行くわよ!《乙女武将》」ジャキン!


パカラッパカラッパカラッ!


飛鳥「刀を手に持ち馬に跨り…まさしく武将、か」

梨沙「やああぁぁ!!」ズババババッ!!




きらり「梨沙ちゃんすっごぉーい!どんどん倒していっちゃうにぃ☆」

ありす「でも、梨沙さんが数を減らしたとはいえすごい量です…!」

飛鳥「これだけ多いと全然進めないな……ありす!空から行けるか!?」

ありす「そ、空からですか!?」

飛鳥「あぁ!ボクの炎をここで試す!きらりさん!」

きらり「にょわ?」

飛鳥「小さくなれるって言ったよね」

きらり「そぉだよお、こーんなちっちゃくなっちゃうの!」

飛鳥「ありす!きらりさんと猫を抱えて飛ぶんだ!万が一にも巻き添えにならないように!」

ありす「は、はい!」

きらり「じゃあありすちゃん!よろしくね♪《ぷちっと☆スウィート》」シュシュシュシュ…

猫「よっ!おりゃりゃりゃりゃ!」

ありす「痛い痛い痛い痛い!なんですか!背中を登らないでください!」

猫「あなたの肩から郵便でーす」

ありす「なんなんですか全く…ってきらりさん咥えられてる!?」

きらり「おっすおっすばっちし☆」


猫「さあありすちゃん!これで旅立ちの準備は整った!共に大空に飛ぼう!」

ありす「はい!《賢者の翼》」バサッ!

きらり「おぉー!本当に飛んでるにぃ!すっごぉーい!」

猫「これがグラブルとコラボした人達だけが見れる景色…」

きらり「きらりたちもいつか理由(ワケ)あって大空に行ってみたいにぃ☆」

猫「ありすちゃん、ビルだらけでなんか景色に開放感がないよ?」

ありす「文句があるなら降りてください…なんなんですかいったい…」



飛鳥「よし、ありすたちは行ったな。それじゃあ試してみるか…《灼熱のリベリオン》」



飛鳥「腰に…一振りの剣…これがボクの新しいチカラ……」


シャキン!


飛鳥「いくぞ!炎よ!全てを?みこめ!」


ゴオオォォ!!!!


ありす「すごい!鬼の数がすごい勢いで減っていきます!」バサッバサッ

飛鳥(これなら!接近戦以外でも戦える!)



猫「あ!ありすちゃん!あれ見て!」

きらり「文香ちゃんがいるにぃ☆」

ありす「飛鳥さん!あっちに文香さんが見えます!」

飛鳥「分かった!先に行っていてくれ!ボクもすぐ向かう!」

ありす「分かりました!」バサッバサッ


梨沙「やあぁ!」ズバッ!

晴「よ!っと」

晴「お?鬼はもういないのか」

梨沙「文香も見えるわね」

晴「…?文香はなにしてるんだ?しゃがんでるような……?」

梨沙「ん~…あれ手に持ってるのって……銃?」

晴「ヤバッ!?逃げねぇと!」

梨沙「待って晴!狙いはアタシ達じゃないわ!…もっと上?」

晴「なんかあるのか?………な!?」

梨沙「ありすが空飛んでる!?」

晴「ありすー!逃げろー!狙われてるぞー!!」



文香「『今、戸口を出ようとするごんを、ドンとうちました。』(新美南吉「ごんぎつね」より)」



ありす「え?」

猫「危ないありすちゃん!」ピョン!



ダァン!


猫「…」ヒュウウゥゥ…

ありす「猫さん!!」


ドサッ…


ありす「猫さん!」スタッ

猫「……」

ありす「猫さん!猫さん!返事をしてください!」

猫「フレデリカ……おまいだったのか……ガク…」

ありす「ね、猫さーーーーん!!」


梨沙「ついに自分から正体明かしたわね」

晴「雰囲気で分かってたから誰も聞かなかったしな」



梨沙「ま、それはそれとして」

晴「おう」

文香「…3人、ですか」

晴「いいや、まだまだいるぜ?」

文香「それにしてもお二人とも、なんと言いますか…光ってませんか?」

梨沙「そういうユニットスキルなのよ」

ありす「結局どういうスキルなのかよく分かってないんですけど」

晴「ん?猫はもういいのか?」

ありす「はい。決心がつきました。文香さんには悪いですが、ここで倒させていただきます。」

梨沙「もとよりそのつもりだしね」


晴「それで、オレ達のスキルだっけ?」

ありす「そうです」

梨沙「さっき聞いてたでしょ、《輝け!ビートシューター》よ」

ありす「なるほど……お互いのどちらかが活躍すると、もう片方の能力が上がっていく。上昇上限はない……ですか」

文香「……!」

梨沙「アンタ文香の前で普通にそれ使っていいの?」

ありす「え?……あっ!」

梨沙「はぁ…まったく」



晴「それで、オレ達のスキルだっけ?」

ありす「そうです」

梨沙「さっき聞いてたでしょ、《輝け!ビートシューター》よ」

ありす「なるほど……お互いのどちらかが活躍すると、もう片方の能力が上がっていく。上昇上限はない……ですか」

文香「……!」

梨沙「アンタ文香の前で普通にそれ使っていいの?」

ありす「え?……あっ!」

梨沙「はぁ…まったく」

文香「…ありすちゃんは凄いスキルを持っているんですね」

ありす「いえ、別にそんなことは」

晴「いつまで話し込んでんだ!そっちからこないならこっちから行くぜ!《晴天のファンタジア》」

ありす「サッカーボール?」

梨沙「いけー!晴ー!」

晴「らぁ!」ゴッ!


ドッゴォ!


文香「ぐっ……!」ゴロゴロ

ありす「は、晴さんのシュートで文香さんが吹き飛びました…」

梨沙「次はアタシの番ね!」パカラッパカラッ

ありす「梨沙さん、さっきより速い……!?」

晴「さっき自分で言っただろ、片方が活躍したらもう片方の能力が上がるって」

ありす「あ…」

晴「つまり、オレが活躍すれば梨沙の能力が上がって、梨沙が活躍すればオレの能力が上がる。アイツには負けられないからな。そうやってずっと切磋琢磨していくんだ…きっとこれからも、な」


梨沙「もらったぁー!」

晴「いっけぇー!梨沙ー!」


文香「くっ…!《『ウマソウ。 これが たいあたりだ』宮西達也『おまえうまそうだな』より》」


ズドンッ!

梨沙「きゃあ!」



ありす「あれは……?」

晴「恐…竜……?」


ドッ!


梨沙「あ゛ぁ゛!」ゴロゴロ


晴「梨沙が蹴飛ばされた!」

ありす「そ、そのままこっちに来ます!」

きらり「《きらりん☆パンチ》」


ニョワー☆

ズンッ!


きらり「ま、間に合ったぁ?」

ありす「きらりさん!」

晴「きらりんロボが恐竜を止めてる…」

きらり「晴ちゃん!今のうちだにぃ!」

晴「おう!《晴天のファンタジア》」ゴッ!


ドゴォ!


文香「ぐぅ!あ゛ぁ゛……!」ゴロゴロ



晴「梨沙!大丈夫か!?」

梨沙「へ、平気よ…こんなもの……それより、早く文香を……!」ググッ

晴「……あぁ。そうだな……いけるか?」

梨沙「誰に言ってんのよ…当たり前でしょ…!」

晴「あっちもボロボロだし、これで終わりしようぜ!」

梨沙「アタシはまだボロボロじゃないわよ!《乙女武将》 やああぁぁ!!」ダッ!

晴「トドメは譲ってやるよ!《晴天のファンタジア》」



文香「《『盥の水で弟子たちの足を順々に洗って下さったのであります。』(太宰治「駆け込み訴え」より)》」


晴「らぁ!」ゴッ!



晴「…え?」



ドッゴォ!


梨沙「が……ッ!!」ゴロゴロ


晴「なんだ今の…体が勝手に……梨沙!」ダッ!

梨沙「晴アンタ…ここでシュートミスとか…」


タタタッ!

晴「文香!逃げろ!例え千人の兵隊が来てもオレが指一本触れさせないぞ!」

晴「……え?」


梨沙「……え?晴?なにを言って……?」

文香「……」ダッ!

梨沙「逃がさないわよ!」ダッ!


ザッ

梨沙「…なんのつもり?晴…」

晴「なんか知らないけど…体が勝手に……!」

梨沙「どきなさい…晴」フラ…

晴「……………」ザッ

梨沙「そこをどけって言ってるのよ!!」

晴「ごめん梨沙!《晴天のファンタジア》」ゴッ!

梨沙「ぁガッ…!」ゴロゴロ…




ありす「梨沙さん!」タタタッ

晴「ありす…」

ありす「晴さん!一体何を!?」

晴「オレにもよく分からないんだ!体が勝手に動いて文香を逃そうとして…!」

晴「オレ……オレ……!」

梨沙「……はぁ、まったく世話がやけるわね……」フラ…

ありす「梨沙さん…大丈夫なんですか?」

梨沙「何が?」

ありす「いえ、その……」

梨沙「アタシは…見ての、通り…ピンピンしてる…わよ」

ありす「でも……」

梨沙「アタシは…あのバカの、目を覚まさせなきゃいけないの…他にもやることが…あるってのに、あのバカ……」

晴「梨沙……」

梨沙「ぶつかってでも止めるわよ!やああぁぁ!」ダッ!

晴「《晴天のファンタジア》」ゴッ!

梨沙「やあ゛!」ブンッ!


ドゴォ!


梨沙「ぐっ…あぁ!」ゴロゴロ


ヒュンヒュンヒュン……

ザクゥッ!


晴「あ゛ッ……ぐぅ……」


ありす「梨沙さん!晴さん!」



飛鳥「すまないありす!遅くなった!状況…は……」


ありす「梨沙さん!しっかりしてください!」

梨沙「…………ありす」

ありす「……はい」

梨沙「アイツの目は覚めたかしら」

ありす「………晴さんは…」

梨沙「うん」

ありす「梨沙さんが投げた刀が肩に刺さったまま…動きません……」

梨沙「………そう」

飛鳥「ありす」

ありす「…飛鳥さん」

飛鳥「これは…一体……?」

梨沙「…アタシもよくわかんないけど、文香に負けたのかしらね……アタシたちは」

ありす「梨沙さん…」


晴「…………」



ありす「晴さん…」


晴「…………《明日へのフラッグ》」

バサァ!


ありす「晴さん…?」

飛鳥「あれは…大きな、旗…?」


晴「ぐっ…!う゛う゛ぅ!」バサッバサッ


ありす「晴さん!肩に刀が刺さったままです!そのまま旗を振ったりしたら傷が…!」

梨沙「………そう…届いたのね…」


晴「ありす!!飛鳥!!きらり!!オレたちは負けた!だから!」バサッバサッ


梨沙「…………」


晴「オレたちの想いも背負って!必ず!文香を!」


ありす「……はい…!」

飛鳥「あぁ。必ず」

きらり「きらりたちが勝つにぃ♪」


梨沙「……何してるのよ…晴が旗を振ってる間に行きなさい……早く……あれはアンタ達の能力を底上げするスキルなのよ……」

飛鳥「……すまない。梨沙」

梨沙「………何が?心当たりないわね」

飛鳥「……そうか…」

きらり「あとは任せるにぃ♪」

梨沙「……ええ」

ありす「…では……行ってきます」

梨沙「……だから早く行きなさいっての……」シュンッ!


ありす「……行きましょう!」ダッ!

きらり「あ、ありすちゃん!待って!」

飛鳥「きらりさん!ボクのポケットの中に」ヒョイッ

きらり「うきゃぁ! ありがとぉ♪」


ありす「……? 体が軽い……?」

飛鳥「ボク達の足が早くなってるのか?」


晴「いけぇー!きらり!ありす!飛鳥ぁー!」バサッバサッ


きらり「きっと晴ちゃんのスキルだにぃ」

ありす「……梨沙さんと晴さんから想いを受けとりました」

飛鳥「あぁ。絶対に負けられないな!」


ありす「文香さんとの距離は…だいたい300メートルくらいです!」

飛鳥「このペースなら追いつける!」


文香「…………!」チラッ ダッ!


きらり「あ!角を曲がっちゃったにぃ!」

飛鳥「あぁまで逃げるってことは、あの二人に相当やられてるのかもしれないな」

ありす「…! お二人はこのまま文香さんを追ってください!私はこっちから行きます!」ダッ!

飛鳥「え?あ、おい!ありす!どこに行くんだ!」

きらり「ありすちゃん!?」


ありす「これだけ足が早くなっていれば、回り込んで文香さんの前に出られるハズ…!地図もカメラも検索も、やっぱりこのタブレットが私の一番の強みなんですね…!」


ありす「ここを曲がれば!」ザッ!

文香「!」

ありす「……見つけましたよ、文香さん」

文香「……一体、どうやって」

ありす「簡単なことです。このタブレットには地図アプリも入っているので」

文香「……そうでしたか」

ありす「はい」

文香「……先程も目にしましたが、そのタブレットはとても強力なスキルのようですね」スッ ググッ…

ありす「弓矢!? に、逃げ」

文香「《『甲冑こそ身につけておらねど、我こそは現代版那須与一なりと一人芝居。』(森見登美彦「有頂天家族」より)》」ピシュッ!


ガシャァ!


ありす「……あ…………え?」


ありす「あ……た、タブレットが……」

文香「……厄介そうなので先に壊させていただきました」


飛鳥「追いついた!文香さん、立ち止まってるなんて余裕だね……ってありす?」

ありす「あ、飛鳥さん…どうしましょう……タブレット……タブレットが……!」

飛鳥「な……」

ありす「あれがないと私…、もうみんなの役に立つことが……」

飛鳥「何を言ってるんだ!そんなものなくたって君にはまだ戦える術があるだろう!」

ありす「で、でもあれはあと一回しか…」

飛鳥「《灼熱のリベリオン》 炎よ!」ゴオォォ!!

文香「……挟み撃ち、炎…まずいですね」

飛鳥「このチャンスはありすが作ったものだろ!キミがものにしてみせろ!」

ありす「!」


ありす「は、はい!」


文香「《『なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。』宮沢賢治『やまなし』より》





トプン……


サアアァァァ…………








ありす「!?」

飛鳥「!?」

飛鳥(水の中!? いや、流れがあるから川か!?)

飛鳥(しかし水面まで何メートルあるんだ??さっきまで立っていた地面がそのまま川底になってる…!)ガボ…


飛鳥(くっ…!息が……電気を流して、水は危険だと思わせて解除させるしか!)

飛鳥「     」ガバガボガボ

飛鳥「!?」

飛鳥(水中でうまく発音できないからスキルが発動できない!)


きらり「……」クイクイ

飛鳥(きらりさん?)

きらり「……」チョイチョイ

飛鳥(指差して…あっちに何か?)


ありす「    」ガバガボガボ

飛鳥(ありす!? いや、そうか。ありすならスキル名さえ言えればこの状況がひっくり返る!)

きらり「……」コク

飛鳥「……」コク

きらり「……」スイスイ

飛鳥(きらりさんがありすの足の裏に……?)

飛鳥(そういうことか!)スイスイ

飛鳥(ならボクはきらりさんを支えていればいい!)

飛鳥(まずはボクがしゃがんで…)ググッ

ありす「!」

飛鳥「……」コク

ありす「……!」コク!

飛鳥(ありすの準備ができたら目一杯ありすを押し上げる!)

飛鳥(ここが川底でよかった、踏ん張れる場所があるから押し上げる力全てがありすに伝わる!)

飛鳥(そして小さくなっていたきらりさんが能力を解除すれば!)

きらり「    ☆」ポシュゥゥゥ!!

ありす「!」

飛鳥(きらりさんが大きくなる勢いでさらにありすを押し上げられる!)

ありす「……!」



ザパァ!


ありす「はぁっ…!えほっえほっ!ひ、《ひかりの創り手》」


ザアアアアァァ!!


文香「な…!」

ありす「水よ!文香さんを閉じ込めて!」


ザアアアアァァ!!

文香「!!」

文香「   」ガバガボガボ…

ありす「はぁっ…はぁ……」


飛鳥「ケホッ!えほっ!……ありす」

きらり「ありすちゃん!やったにぃ♪」

ありす「……飛鳥さん…きらりさん…」

飛鳥「なんだい」

ありす「チャンス、ものにできましたか?」

飛鳥「フッ…文句なし、だ」

きらり「ばっちし☆」


ありす「そうですか……では飛鳥さん、トドメを」

飛鳥「いいのかい?」

ありす「はい。水中では喋れず、スキルを使えませんでした。下手に水を動かして喋れるようにすることが一番危険です」

飛鳥「成程、分かった!」ダッ!

飛鳥「《碧落のリベレイター》」バチバチッ!

飛鳥「これで終わりだぁ!!」


《揺籠揺らす雷》


ゴロゴロゴロ……ピシャァァン!!!


飛鳥「!?」

きらり「!?」

ありす「!?」


きらり「い、今のは……?」

飛鳥「落…雷……?」



ありす「文香さんは!?」

飛鳥「…………いない…? これは一体…」




ピーンポーンパーンポーン♪



晶葉『あーテステス。全員聞こえているな?今しがたレイドボスが倒された。よって、これにてレイドバトルを終了とする!』


飛鳥「な!?」

きらり「もしかしてぇ、文香ちゃんはさっきの雷で…?」



晶葉『レイドバトルに参加した者には両コストとスタミナが半分回復するアイテムが、そしてレイドボスを倒した者には全回復するアイテムがそれぞれ贈られるぞ』

晶葉『それでは引き続きバトルロイヤルゲームを楽しんでくれ』プツッ…



きらり「回復アイテムってこれかな?スタドリと同じ形してゆ☆」

飛鳥「しかし……あの落雷は一体誰が……」

ありす「……! 2人とも!あれを見て下さい!」

飛鳥「あれは……!?」

きらり「うっきゃー☆おっきな鳥さんがお空を飛んでる~!?」

飛鳥「いや……あれは鳥じゃない……白い…竜……?」

ありす「その背中に誰かが乗っています!きっとあの人が!」

ありす「やああぁぁ!」


ザアアアアァァ!!ザパァ!ザパァッ!!
ヒョイッ!ヒョイッ!


飛鳥「ありす!さっきのでいくら水があるからってそんなに大雑把な攻撃では」

ありす「でも!時間がないんです!私のこのスキルはあと5分以内で使えなくなるんですよ!?」

きらり「ありすちゃん!そのままお願いすゆにぃ☆あとはきらりにお任せあれ!」

ありす「きらりさん……はい!」

きらり「《きらりん☆シャワー》」


ザパァ!ザパァッ!!
ヒュウウゥゥ……

ヒョイッ! ヒョイッ! ゴッ!


飛鳥「当たった!」

ありす「流石きらりさんです!」

きらり「ありすちゃんのおかげだにぃ♪」

飛鳥「竜が落ちてくるぞ…」



ヒュウウゥゥ…………ドシャッ!


???「あ゛ぁ゛!!」

???「大丈夫です!?裕美ちゃん!」

裕美「実はね…この子がダメージを受けると私にもダメージがくるの……今まで言ってなくてごめんね……でも、有香ちゃん達が無事で良かった……」

有香「いえ!こっちこそ聞かなかったので…本当に助かりました……君もありがとうね、クッションにしてごめんね…」ナデナデ…

???「白銀の竜よ…そしてヒロミ…しばしの眠りにつくがいい……あとは、我々に任せよ!」

裕美「うん……有香ちゃんも、蘭子ちゃんも、頑張ってね……」シュンッ!


きらり「蘭子ちゃんと有香ちゃんだにぃ」

飛鳥「蘭子……そうか、あの落雷はキミか……」

ありす「蘭子さん!有香さん!すみません!私には時間がないので!!」


ザアアアァァ!!



蘭子「水!?」

有香「じゃあありすちゃんがあの攻撃の犯人だったんですね!」

蘭子「《堕ちる星の調べ》」


ゴオオォォ……!

ズドォンッ!


飛鳥「うわぁ!?」

きらり「なにか降ってきたにぃ!」

ありす「一瞬で水が消え…!?」


シュウウゥゥ……


ありす「……石?」


蘭子「否!これは夜空を彩る星々の一欠片よ」

飛鳥「堕ちる星……つまり隕石ってことか……」

ありす「い、隕石!?」

きらり「そんなことできゆのぉ!?蘭子ちゃんすっごおーい!」

蘭子「いや…そんな…我は別に……えへへ///」テレテレ


有香「それでは次はこちらから行きますよ!《流麗武闘》」ダッ!

ありす「わっ…か、風!」


ビュオオォォ!!


有香「ぐっ……しかしこの程度の風…!かつて道場でやった台風の時の走り込みに比べれば!」ダダダダ

飛鳥「滅茶苦茶だなその道場」

有香「はああぁぁ! セイッ!」ドッ!

飛鳥「ありす!」

ありす「う゛ぐっ…! 炎!」ゴオオォォ!!

有香「この程度!茜ちゃんとの炎天下の走り込みに比べれば!」

有香「やあっ!」ゴッ!

ありす「あ゛ぁ゛!!」

きらり「ありすちゃん!」

飛鳥「くっ…!ボクも援護する!《灼熱のリベリオン》」ブンッ!

有香「甘い!」ガッ!


パキィン!


飛鳥「な!?」

ありす「飛鳥さんの刀が…!?」

きらり「折れちゃったにぃ!?」

飛鳥「……でも、これならどうだい? ありす!炎を操れ!」

ありす「え、え?でもさっき」

飛鳥「炎は、ボクがいくらでもつくる…!」ゴオオォォ!!

ありす「!」

ありす「分かりました!」ゴオオォォ!!

有香「なんのこの程度!……!? 炎が体に巻き付いて……!」

蘭子「ゆ、有香ちゃん!えっと…えっと…」アワアワ

有香「くっ……うぅぅ……このままじゃ……まずい…!《スチームユカ》」ガシュンッ!

飛鳥「な、なんだあれは!?」

ありす「ロボッ…ト……?」シュゥゥ…

ありす「!?……スキルの効果が…」

飛鳥「くっ……もう終わりか……!」

スチームユカ「殲滅、殲滅……」ガシュン…ガシュン…

飛鳥「まずいな……」



きらり「うっきゃー☆ロボットならこっちも負けないにぃ♪《きらりん☆パンチ》」


ニョワー☆


蘭子「な!?」

スチームユカ「殲滅、殲滅…」


ドッゴォ☆


スチームユカ「」ガッシャアアァァ!!

蘭子「ゆ、有香ちゃーーーん!!」

有香「蘭子ちゃん……私の分まで…勝っ…て……!」ガクッ…

蘭子「そんな…有香ちゃん……!」

蘭子「有香ちゃん…………」


飛鳥「…………さぁ蘭子。感傷に浸るのもいいが、次はキミの番だ。準備はいいかい?」

蘭子「………………ククク」

きらり「?」

蘭子「フハハハハハハ!!」

ありす「わ!びっくりしました……なんで急に笑い出したんですか…?」

飛鳥「……あれが彼女なりの吹っ切り方なんだろう」



蘭子「ククク…次は我を倒すと申すか……しかし、今の我は戦友(とも)から授かりし翼により覚醒せしめた。貴様ら如きが敵う相手ではないと知れ!」

ありす「……! …………え、えっと?」チラ

飛鳥「想いを受け継いだ。だから負けられない、と……しかしそれはこちらも同じことだよ、蘭子。ボクらも戦友(とも)からの想いを背負ってここに立っている」

ありす「……そ、そうです!私たちも背負っています!」

きらり「ありすちゃん、そんな無理についていこうとしなくても大丈夫だにぃ?」

ありす「大丈夫です!無理なんてありません!余裕です!」

蘭子「…貴様らは既に覚醒者だったと」

飛鳥「あぁ。残念ながらね」

蘭子「そうか…しかし、我にも負けられぬ理由がある」

飛鳥「それはこちらも同じさ」

蘭子「ならば!」

飛鳥「あぁ」

蘭子&飛鳥「何方(どちら)かが倒れるまで!!」

ありす「……えっと」チラ

きらり「蘭子ちゃんも飛鳥ちゃんも、負けられないって☆」

ありす「え!?そんな簡単な話だったんですか!?」

飛鳥「ありす!きらりさん!来るよ!」

ありす「!」

きらり「おっすおっす☆」



蘭子「魔王の力!今その眼(まなこ)に焼き付けん??《揺籠揺らす雷》」


ゴロゴロゴロ……

ありす「これは…さっきの雷です!」

きらり「ありすちゃんのチョコ、いっただっきまーす☆」パクッ

きらり「コストスタミナ全回復!いっくよぉー!《きらりん☆パンチ》」


ニョワー

ピシャァァン!!



ありす「きらりんロボを避雷針代わりに…!?」

蘭子「クッ! 鋼鉄の巨神か…ならば!《堕ちる星の調べ》」


ゴオオォォ……!
ズドォンッ!

ニ゛ョワー☆  グラッ…


ありす「きらりんロボがバランスを!」


ニョワー☆   ズンッ


きらり「立て直したにぃ!いっけぇー!きらりんロボぉ!」


蘭子「魔王の力を侮るな!《堕ちる星の調べ》《堕ちる星の調べ》《堕ちる星の調べ》」

ありす「な!?」

きらり「にょわ!?」


ゴオオォォ……!
ズ┣¨┣¨┣¨┣¨ドォンッ!

ニ゛ョ゛ニ゛ョ゛ニ゛ョ゛ニ゛ョ゛ワ゛ー☆


きらり「きらりんロボが!」

飛鳥「た、倒れるぞ!逃げろ!」

ありす「は、はい!《賢者の翼》」バサァ!

きらり「飛鳥ちゃん!」


ドンッ!


飛鳥「うわぁ!」ゴロゴロゴロ…


ドシャアアァァン!!!


飛鳥「う゛…くぅ……」ヨロ

ありす「きらりさん!」

飛鳥「ありす!きらりさんは!?」

ありす「きらりんロボの、下敷きに……」

飛鳥「そんな……」


スウゥ…


ありす「きらりんロボが消えていきます」

飛鳥「きらりさん!」

きらり「にょわ…2人は無事だったぁ?」

飛鳥「あぁ、きらりさんのおかげで」

きらり「それはよかったにぃ……」

ありす「でも!きらりさんが!」

きらり「飛鳥ちゃん、これを」

飛鳥「…スタドリ?」

きらり「レイドバトルの参加者に配られた…アイテムだにぃ……」

飛鳥「でも」

きらり「きらりの分まで…頑張ってね……♪」シュンッ


カツン…
コロコロコロ……



飛鳥「きらりさん……」スッ…

ありす「きらりさん……!」

飛鳥「勝つよ。必ず」

ありす「…………飛鳥さん」

飛鳥「…ありす?」

ありす「私のも受け取って下さい」ス…

飛鳥「いや、しかし」

ありす「さっきも言いましたけど、私にはスタミナやコストを使うスキルはないんです。だからこれは飛鳥さんが持っていて下さい」

飛鳥「………………分かった」

ありす「ありがとうございます」

飛鳥「こちらこそ……すまない」

ありす「いえ」



蘭子「それでは行くぞ!《聖剣の救世主》」シャキン!

飛鳥「!」

ありす「剣!?」

飛鳥「剣ならボクにだってあるさ!《灼熱のリベリオン》」シャキン!


ガキィン!! ギギギギギ……


蘭子「我が同胞……いや、我が宿敵飛鳥よ…」ギギギ…

飛鳥「…なんだい?」ギギギ…

蘭子「我は更なる扉を開かん!」

飛鳥「……ほう?もう一段上があるというのかい?」

蘭子「しかと見るがいい!《シンデレラガール》」ガィン!

飛鳥「くっ…!」キィン!

飛鳥「やあ!」ブンッ!

飛鳥(…いない!?)スカッ

蘭子「此方よ」

飛鳥(後ろ!?いつのまに!?)

蘭子「今こそ終焉の時!」ブンッ!

飛鳥「ぐっ……」


ズバァ!!


ありす「あ゛ぁ゛!!」

蘭子「!」

飛鳥「な…………」



飛鳥「ありす!!」

ドサッ…


飛鳥「ありす!ありす!!」

ありす「……もう私には攻撃できるスキルはないので、これくらいしか役に立てません…タブレットもないですし……」

飛鳥「そんなことどうでもいい!……どうして」

ありす「……なんででしょうね…………」



ありす「………………ただ」

飛鳥「………ただ?」

ありす「あなたに勝ってほしいと…そう思っただけです……!」ググッ…

飛鳥「ありす……」

ありす「飛鳥さん…私はこのゲーム中いつも飛鳥さんに助けられていました…飛鳥さんが一緒にいてくれなかったら、すぐにリタイアしていたと思います」ヨロ…

飛鳥「違う…助けられたのはこっちで…!だからもう」

ありす「いいえ……たくさん…たくさん助けられました……だから今度は!私が飛鳥さんを助けます!」

飛鳥「ありす……」



ありす「鳥のような自由さを。飛び立つ勇気を。《賢者の翼》」バサァ

ありす「私が時間を稼ぎます。なので、その間に蘭子さんのスキルを分析して下さい!」バサァ!

飛鳥「ありす!」


バサッバサッ


ありす「飛べるのは裕美さんだけじゃないんです…!」バサッ!

蘭子「ククク…まるで大空(そら)翔けるイカロスね」

ありす「やああぁぁ!!」バサァ! ビュン!!

飛鳥(体当たり!?)

蘭子「太陽に近づき過ぎたイカロスが、はたしてどうなったかを、貴女は」

ありす「知っています!でも!蘭子さんは太陽ではありません!」

蘭子「然り。しかし、行き着く運命は変わらないわ…」

ありす「やああぁぁ!!」

蘭子「さあ!断罪の時よ!」シュッ

ありす「!? 消え……!?」

蘭子「《堕ちる星の調べ》」


ズドォンッ!


ありす「お゛ぐッ!!」

飛鳥「ありす!!」


ズザアアァァ……


飛鳥「ありす!ありす!!」

ありす「飛鳥……さ……」

飛鳥「ありす!」

ありす「勝って…くだ……さ……」シュンッ!

飛鳥「ありす!?ありす!!」


飛鳥「………………」

飛鳥「…………ありす」

飛鳥「…………分かったよ。絶対、絶対に勝ってみせる…………蘭子」

蘭子「…………」

飛鳥「悪いが、ボクは君に勝つ」

蘭子「私も、負けないから」



飛鳥「………………」

蘭子「………………」



飛鳥「独り奏でし歌のもと」スタスタ…

蘭子「双つの運命は邂逅し」スタスタ…

飛鳥&蘭子「歯車は廻りだす」

蘭子「漆黒のこの片翼が」バサァ…

飛鳥「白銀のこの片翼が」バサァ…

蘭子&飛鳥「終焉を渡る"誓いの翼"となる」



《双翼の独奏歌》



シャキィィィ……ン



飛鳥(剣と翼…)

飛鳥(そしてそれは、蘭子も同じ)

蘭子「我が宿敵、飛鳥」

飛鳥「なんだい?」

蘭子「どちらが真の魔王に相応しいか…今ここで決めようぞ!」バサァ!!

飛鳥「いいだろう、ボクは魔王にはあまり惹かれないけれどね!」バサァ!!




ガキィン!!
ギギギギギ…… ガィン!!

バサァ!!


飛鳥(飛べる!空を、自由に!)

飛鳥「自由に空を飛び、上空からこの剣で襲う。……本当にユニットスキルというのは強い能力ばかりだね」

蘭子「ええ、そうね。然し、同じ能力(チカラ)を使えども、今は分かり合えぬ者同士…数奇な運命ね」

飛鳥「あぁ、全くだ!」バサァ!!

飛鳥「やああぁぁ!!」ブンッ!

蘭子「ククク……」ギィン!

飛鳥「……どうした?やけに余裕じゃないか」ギギギ…

蘭子「気付かないか?我が宿敵よ」ギギギ…

飛鳥「何が言いたい……?」ギギギ

蘭子「我のチカラはこの剣のみではないということだ!《揺籠揺らす雷》」ガィン!

飛鳥「な!?」


ピシャァァン!!


飛鳥「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」バリバリバリバリ!!

飛鳥「」ヒュウゥゥ…



飛鳥(圧倒的だ……圧倒的に戦闘向きなスキル……やはりボクは……蘭子には勝てな…)

飛鳥「!」


バサァ!!


飛鳥「いや!まだだ!まだ負けてない!!」


飛鳥「うわああぁぁぁ!!」バサァ! ビュン!!

蘭子「ククク…そう来なくてはな……《聖剣の救世主》」シャキン…!

飛鳥(二刀流…!)

飛鳥「なら!こっちにだって剣はある!《灼熱のリベリオン》」シャキン!

蘭子「やあぁぁ!!」

飛鳥「ああぁぁ!!」


ガキィン!!
ギィン!ギィン!! ガガガガガ!ガギィン!!


飛鳥(これでも互角……なら!)

飛鳥「炎よ!」ゴオォォッ

蘭子「む!?」

飛鳥「これで!どうだぁ!!」


ゴオオォォ!!!


蘭子「クッ…!」バサァ!

飛鳥「逃がさない!」ゴオォッ!

蘭子「グ…!きゃああぁぁ!!」ゴオォォ……!!


ゴオオォォ……


蘭子「」ヒュウゥゥ…

飛鳥「はぁっ…!はぁっ……!やったか!?」


フッ…

飛鳥(蘭子が、消えた…!?)


蘭子「その程度では魔王を堕とすことは叶わぬ!」

飛鳥「!?」

飛鳥「また後ろか!」ブンッ!

蘭子「当たらぬ!」ヒョイ

飛鳥(くっ…!一旦距離を!)バサァ!

蘭子「どこに往く?獄炎の使い手よ」

飛鳥「な!?」

飛鳥(回り込まれた!?いつのまに!)

蘭子「やああぁ!!」ブンッ!

飛鳥「くっ…!」ギィン!

飛鳥(さっきよりも力が強い!このままじゃマズい…!)

フッ…

飛鳥「また消え…!?」

飛鳥「後ろか!」ブンッ!


蘭子「いいえ、上よ」

飛鳥「え?」


ザンッ!


飛鳥「あ゛あ゛あ゛!!」ヒュウゥゥ…

飛鳥(マズい…手も足も出ない……一体どんなスキルなんだ……?)

飛鳥(蘭子がこっちに来る!)

飛鳥「炎!ボクの周りを!球状に包め!」ゴオォォ!!

蘭子「クッ…!」


飛鳥(これで少しは時間が稼げる……)

飛鳥「炎の持続時間は攻めコスト次第だけど、こっちには回復アイテムが沢山ある……」

飛鳥(ありすと、きらりさんの分の回復アイテムが)



飛鳥「さて」

飛鳥(考えろ…蘭子のあの消えるスキルはなんだ…?スキル名はきっと《シンデレラガール》だろう…他は攻撃スキルだったハズだ。隕石、落雷、そして剣。これで4枠埋まっている)

飛鳥(まゆさんみたいな瞬間移動?まゆさんのは相手の背後に移動だったが、蘭子の場合は任意の場所なのか?)

飛鳥(それに、消えるスキルを使った直後に剣の打ち合いをした時、一撃が重いというか、力の強さが違った……)

飛鳥「一つのスキルで力も速度も…そんなスキルが……?いや、あってもおかしくはないな…」

飛鳥(この手のスキルはだいたい一定時間で効果が切れる…と思う。現に前回使った時には解除をする素振りがなかった……つまり解除する必要がなく、勝手に解除されるタイプのスキルってことだ)

飛鳥「……そろそろ時間か…」

飛鳥(まずはボクの回復アイテムを使おう。2人のはまだ後だ)ゴクゴク…

飛鳥(攻守コストとスタミナが半分回復した…)


飛鳥「ふぅー……よし!」ゴオォォ!!



飛鳥「やああぁぁ!!」

蘭子「待ちくたびれたぞ!獄炎の使い手よ!」


ギィン!!
ギギギギギギ……!

飛鳥(さっきより軽い!強化スキルは切れている!)


飛鳥「あいにく、ボクが扱えるのは炎だけじゃないよ!《碧落のリベレイター》」バチバチバチ!

蘭子「グッ……!あ゛…ぎ……ッ!」ビリビリビリビリ

蘭子「くっ……あ゛ぁ゛!!」ギィン!

蘭子「……はぁっ…!はぁっ…!」

飛鳥「剣は金属……そして金属は電気を、よく通すのさ」

蘭子「その左手……!」


飛鳥「あぁ。左手からの紫電を剣に流し、右手の剣からは炎を出す。これが…今のボクさ」

飛鳥(スタミナもコストも消費し続けるから長くは続かないけどね)

蘭子「か……」

飛鳥「か…?」

蘭子「か、カッコイイ!!」

飛鳥「ありがとう蘭子」



蘭子「ならば我も!持てる力を全てぶつけよう!」

飛鳥「望むところだ!やああぁぁ!!」ブンッ


ギィン! バチバチ!!


蘭子「グッ……!」ビリビリ

飛鳥「ボクの剣は受け止めてもダメージが通るぞ!どうする蘭子!!」

蘭子「?ぁ゛ぁ゛…!グッ…《揺籠揺らす雷》」

飛鳥「な!?」バサァ!

蘭子「逃がさぬ!」ズバァ!!

飛鳥「ぐぁ゛…!」


ピシャァァン!!


飛鳥「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」ヒュウゥゥ…

蘭子「終わりよ!」ビュン!

飛鳥(蘭子がボク目掛けて飛んでくる…速度は強化されてない……なら)

飛鳥「ギリギリで…」ボソ

蘭子「やああぁぁ!!」

飛鳥「今だ!炎!!」ゴオォォ!!

蘭子「きゃあああ!」

飛鳥(今のうちに回復を!きらりさん!使わせて貰うよ!)ゴクゴク


ゴオオォォ……


飛鳥(この音…?)


ズドォ!!


飛鳥「あ゛…ガッ!」

飛鳥(蘭子の隕石…!)


ヒュウゥゥ! ドシャァァ!!


飛鳥「ぁ゛あ゛あ゛!!」ズザザザザ!



飛鳥「くっ…!地面に激突するまで吹き飛ばすとか……なんてデタラメな……!」

飛鳥(回復してなかったらやられていた……回復した分を削られたって感じだ)

飛鳥「ありす、君のも使わせてもらうよ」ゴクゴク

飛鳥(残りはスタミナと両コストが全回復する、ありすのチョコだけ……)


《揺籠揺らす雷》

ピシャァァン!


飛鳥「くっ…!」バサァ!

飛鳥(一体何回使えるんだあのスキルは!?回数上限のあるタイプじゃないってことか……?)

飛鳥「なによりもまず近づかないと…!この距離ではボクの攻撃は届かない……!」

飛鳥「!?」キョロキョロ

飛鳥「………そうか、そういうことか」

飛鳥「近付こうにも蘭子に身を隠されては近付けない。と、そういうことか……」

飛鳥(どうする……?蘭子には遠距離攻撃がある。このままじゃ格好の的だ……)

飛鳥(ビル建ち並ぶこのフィールドでは隠れられたらこちらが断然不利だ……ならば)

飛鳥「ならば隠れられないようにすればいい…………全てを燃やし尽くせ!獄炎よ!」


ゴオオォォ!!!!


飛鳥「障害物は!全て燃やす!」



>>244 文字化けしてたので再投稿




蘭子「ならば我も!持てる力を全てぶつけよう!」

飛鳥「望むところだ!やああぁぁ!!」ブンッ


ギィン! バチバチ!!


蘭子「グッ……!」ビリビリ

飛鳥「ボクの剣は受け止めてもダメージが通るぞ!どうする蘭子!!」

蘭子「う゛ぁ゛ぁ!! グッ…《揺籠揺らす雷》」

飛鳥「な!?」バサァ!

蘭子「逃がさぬ!」ズバァ!!

飛鳥「ぐぁ゛…!」


ピシャァァン!!


飛鳥「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」ヒュウゥゥ…

蘭子「終わりよ!」ビュン!

飛鳥(蘭子がボク目掛けて飛んでくる…速度は強化されてない……なら)

飛鳥「ギリギリで…」ボソ

蘭子「やああぁぁ!!」

飛鳥「今だ!炎!!」ゴオォォ!!

蘭子「きゃあああ!」

飛鳥(今のうちに回復を!きらりさん!使わせて貰うよ!)ゴクゴク


ゴオオォォ……


飛鳥(この音…?)


ズドォ!!


飛鳥「あ゛…ガッ!」

飛鳥(蘭子の隕石…!)


ヒュウゥゥ! ドシャァァ!!


飛鳥「ぁ゛あ゛あ゛!!」ズザザザザ!


飛鳥「くっ…!地面に激突するまで吹き飛ばすとか……なんてデタラメな……!」

飛鳥(回復してなかったらやられていた……回復した分を削られたって感じだ)

飛鳥「ありす、君のも使わせてもらうよ」ゴクゴク

飛鳥(残りはスタミナと両コストが全回復する、ありすのチョコだけ……)


《揺籠揺らす雷》

ピシャァァン!


飛鳥「くっ…!」バサァ!

飛鳥(一体何回使えるんだあのスキルは!?回数上限のあるタイプじゃないってことか……?)

飛鳥「なによりもまず近づかないと…!この距離ではボクの攻撃は届かない……!」

飛鳥「!?」キョロキョロ

飛鳥「………そうか、そういうことか」

飛鳥「近付こうにも蘭子に身を隠されては近付けない。と、そういうことか……」

飛鳥(どうする……?蘭子には遠距離攻撃がある。このままじゃ格好の的だ……)

飛鳥(ビル建ち並ぶこのフィールドでは隠れられたらこちらが断然不利だ……ならば)

飛鳥「ならば隠れられないようにすればいい…………全てを燃やし尽くせ!獄炎よ!」


ゴオオォォ!!!!


飛鳥「障害物は!全て燃やす!」


飛鳥(回復した攻コストは使い切って構わない!確実に蘭子の位置を捕捉し続けられる状況を作れ!)


ゴオオォォ!!!!
パキッ…パリン!
ガシャァン!!

ゴゴゴゴゴゴ……ゴシャァァ!!!!!!


飛鳥「………………」

飛鳥(燃えたビルのガラスが割れてガラスの雨が降り、木造だったのだろうか?背の低い建物が音を立てて崩れ落ちた……)

飛鳥「いや…うん……我ながらすごい地獄を作り出してしまったな」

飛鳥「大丈夫大丈夫…ゲ、ゲームだから、これは……うん」

飛鳥「…………し、しかし!まだだ!蘭子が隠れられなくなるまで!徹底的に燃やす!」


ゴオオォォ!!!!


蘭子「きゃああぁぁ!!」バサァ!!

飛鳥「そこか!」ゴオォォッ!

蘭子「クッ……獄炎の使い手よ……」

飛鳥「そうさ、ボクはこの炎で地獄を作り出す」

蘭子「しかし、我は地獄の炎ですら克服してみせようぞ!」パキッ

飛鳥(レイド報酬の回復アイテム!)


ゴクゴク…


蘭子「いざ往かん!理(ことわり)の頂点へ!《堕ちる星の調べ》」

飛鳥「くっ…!」バサァ!


ゴオオォォ……


飛鳥「しかし!キミの姿は見つけた!」バサァ!


ヒュンッ!


飛鳥(避けれた!このまま蘭子の元まで突き進む!)バサァ!!



蘭子「クッ…!《揺籠揺らす雷》《揺籠揺らす雷》《堕ちる星の調べ》」

飛鳥(回復した後にそれだけ撃つってことは、コストかスタミナを消費するタイプのスキルなんだろう)


ピシャァァン!

ピシャァァン!

ゴオオォォ……

飛鳥(雷を避けるのは慣れてきた…!次だ!)バサァ!


ヒュガッ!


飛鳥「ガぁ!? ぐぅ…!」

飛鳥「かすっただけだ!これでボクを止められると思うなよ!《桜風リフレイン》」


サアアァァ……


蘭子「獄炎の大地に……花が……」

飛鳥「余所見をしていていいのかい?蘭子!」ブンッ!

蘭子「《シンデレラガール》」フッ…

飛鳥(消えた!きっと背後だ!この勢いのまま前進する!)バサァ!


ブンッ!


蘭子「クッ…しかし!幾ら逃げてもこの魔王からは逃げられぬ!」

飛鳥「もう一度言うよ、蘭子。余所見をしていてもいいのかい?」

蘭子「何?」


飛鳥「ボクがただ余所見をさせる、そのためだけに桜を咲かせたと思ってないか?ま、目眩しという意味では同じだけれど…ね」

蘭子「……? 一体何を」

飛鳥「桜の花弁はボクの意のままに動く!」

飛鳥「そしてボクを見ているということは!キミの背後から迫りくる花びらたちを見ていないということだ!」

蘭子「え?」クルッ


ブワアアァァ!!


蘭子「きゃああぁぁ!!顔に花びらが…!ぺっ!く、口に……!ぺっ!ぺっ!」

飛鳥「顔中桜の花だらけ…それではボクのことを見ることもできまい……さぁ…終わりだ、蘭子!」チャキ!

蘭子「ゆ、《揺籠揺らす雷》」


ピシャァァン!


飛鳥「おっと!」バサァ!

飛鳥(見えてなくても声でだいたいの位置が分かるか…)



蘭子「《揺籠揺らす雷》《揺籠揺らす雷》《揺籠揺らす雷》《堕ちる星の調べ》」ブンッ!ブンッ!


ピシャァァン!ピシャァァン!ピシャァァン!
ゴオオォォ… ヒュン!


飛鳥(くっ…!デタラメに撃ってきている!軌道が読めない!それに剣もデタラメに振っている)

飛鳥(蘭子の近くは危ないが、近くに行かないとボクの攻撃が届かない……桜の花が言うことを聞くうちに懐に入っておきたいが……)


飛鳥(……ん?)

飛鳥(蘭子の近くで…安全な場所……?)

飛鳥「ははっ……あるじゃないか…!」バサァ!


蘭子「《揺籠揺らす雷》《揺籠揺らす雷》」ブンッ!

ピシャァァン!ピシャァァン!

蘭子「《堕ちる星の調べ》《堕ちる星の調べ》」

ゴオオォォ… ヒュン! ヒュン!

蘭子「クッ…宿敵飛鳥よ……何処にいる…!」ブンッ!

蘭子「クッ…!」ブンッ!ブンッ!

蘭子「《揺籠揺らす雷》」


蘭子「ゆ、《揺籠揺らす雷》《揺籠揺らす雷》」


シーン……


蘭子「はぁ…はぁ……」


ハラリ……


蘭子「意思を持ちし花弁が効力を失って落ちて征く……」

蘭子「我が…宿敵は……?」


飛鳥「フッ…もう終わりかい?蘭子……」

蘭子「し、下!?」

飛鳥「ボクはまだ、動けるよ!」カリッ

飛鳥(これが最後の回復アイテム…見てるかい、ありす…情報収集と言いながらもボクは逃げてばかりだった。だから、キミのあの時の勇敢さを今……その想いを託された者として!)モグモグ

飛鳥「キミに少しでも近付けるように!やああぁぁ!!」バサァ!!

蘭子「クッ…!」バサァ!

飛鳥「逃がさない!ここで全て出し切るんだ!炎よ!蘭子を包め!」ゴオオォォ!!

蘭子「きゃぁっ!」

飛鳥(上をとった!)バサァ!

飛鳥(このまま炎を噴射させ続けて地面に激突させる!)

飛鳥「あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」


ゴオオオオォォォォ!!!!!!


蘭子「う゛う゛うううぅぅぅ……!!」


ドゴォ!!
メラメラメラ……


飛鳥「今度こそ…やった……」


飛鳥「いや」



ガラ…


飛鳥(フラフラだが、まだ立っている……なら!このまま急降下してその勢いのまま斬る!それで終わりだ!)バサァ!


チャキ…


飛鳥(蘭子が勇者の剣を掲げた…?)



蘭子「《双翼の独奏歌》……解除」フッ…

飛鳥「な!?」フッ…


飛鳥(翼が消えた!)

飛鳥(マズいマズいマズい!!翼がなければ空中で姿勢の制御が出来ない!このままじゃただ落下するだけだ!)ヒュゥゥ…

蘭子「さあ!我が宿敵!飛鳥よ!そのままこの剣の元へ堕ちるがいい!」

飛鳥「くっ…!それが狙いか……!」

飛鳥(このまま落ちればこの勢いのまま蘭子の剣で串刺しだ!どうする!?)

飛鳥(コストはさっきの炎で全部使ってしまった!炎は出せない!スタミナはあるが手に電気を纏われせても意味がない!他のスキルは全て回数切れだ!)

飛鳥(何かないのか……?せめて一振りだけでいい、蘭子の剣をやり過ごせる手は…!)



飛鳥(………いや?本当に全て回数切れなのか?ひとつ、制限とは無縁のスキルが)


飛鳥「蘭子!」

蘭子「!」

飛鳥「ボクの今ある全てで!ボクは!キミに!勝つ!」ブンッ!

蘭子「何か投げ…!?」スパッ!!


ガシャァン!

蘭子「これは……小型の機械?」

飛鳥「《壊れかけのラジオ》さ。今はもう完全に壊れてしまったがね」

飛鳥「一度振り下ろした剣はまた振り上げなければいけない!だが!その隙は与えない!」

蘭子「な!?」

飛鳥「これで終わりだあああああぁぁぁぁぁ!!!」


ザクゥゥゥッ!!!!

ガシャァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!



飛鳥「うぐ……けほっ…ボクは……なんとか、無事…か」

飛鳥「剣を前に出して、落ちる勢いそのままの体当たりだったからな……そりゃボクも危ない目に逢うか」

飛鳥「蘭子は……」


ピーンポーンパーンポーン♪


飛鳥「!」


飛鳥「!」

晶葉『あーテステス。全員聞こえているな?ま、全員といっても1人しかいないんだが』

飛鳥「1人……?」

晶葉『ただ今、1人を除いて全てのプレイヤーがリタイヤした!つまり優勝者が決まった!』

飛鳥「え……」

晶葉『優勝者は!二宮飛鳥だ!!』

飛鳥「ボ、クが……優…勝…?」



---事務所---


飛鳥(なんといえばいいのだろう……実感がない)

飛鳥(ボクが蘭子と戦い始めた時には本当にプレイヤーの数が少なくなっていたらしい)

飛鳥(そしてその数少ないプレイヤーも、蘭子の雷や、ボクがビル群を燃やした時の炎で全滅していたらしい)


心「ま、そういうことだゾ☆ かつての仲間に向かって火を放つなんて!飛鳥ちゃんはそんな子だったのね……」ヨヨヨ…

飛鳥「いや、あの…その…すまない…」

梨沙「仲間って言うけど、アンタゲーム中に飛鳥の役にたったこと何もなかったじゃない」

心「え!?そんなことは…………あれ?いやいや、そんなことは………う~ん……おや?」

晴「ないな」

梨沙「ないわね」

心「いやいや!そんなことはないハズ!ほ、ほら!実際はアレだったかもだけど、飛鳥ちゃんの心の清涼剤として、ね☆」

飛鳥「皆無かな」

心「そ、そんなぁ~!?」

飛鳥「フフ…嘘だよ」

心「飛鳥ちゃ~ん!」ダキッ

飛鳥「いや、あの…心さん…そんなにくっつかないで頂けると」

フレデリカ「そんなことより!実はみんなに話があります!」

心「そんなことて」



フレデリカ「バーン!実はアタシも仲間だったんだよ!気付かなかったでしょー!」バーン!

飛鳥「いや、まぁ……うん」

晴「最後に自分で名乗ってたしな」

梨沙「ていうかなんでずっと猫のままだったのよ」

心「え、あの猫フレちゃんだったの?」

フレデリカ「いえーす!ぼんじゅーる!しるぶぷれ~ あっさらーむあらいくむ~」

飛鳥「もう何がなにやら…」

フレデリカ「で、なんだっけ?『何故フレちゃんが巌流島の戦いの勝者と同じ名字なのか』だっけ?」

梨沙「全然違うわよ!なんで猫の姿のままで人間にならなかったのかって話よ」

フレデリカ「そんな話もしたことあったね~」

梨沙「今!してるの!!」



フレデリカ「あれはね~《フレデリカ、猫やめるよ》っていうスキルのせいでああなってたんだよ」

心「どういう能力だったの?」

フレデリカ「猫をやめる能力」

飛鳥「……ん?」

フレデリカ「猫をやめる能力だよ」

梨沙「猫をやめるってどういうことよ、人間に戻るってこと?」

フレデリカ「そういうこと!」

心「猫に変身するとかじゃないの?」

フレデリカ「猫にはなれなくて、できるのは猫をやめるだけだよ」

晴「えーっと?つまりどういうことなんだ?」



フレデリカ「猫をやめるためには猫になってないといけないから、フレちゃんは猫の姿の状態でゲームスタートしたのだ!」バーン!

飛鳥「フム……『猫をやめるためには猫になる必要がある』…なかなか哲学的じゃないか」

晴「そうなのか?」

梨沙「さあ?」

飛鳥「それはそれとして、心さんはいつまでボクに抱きついているつもりなんだい」

心「そういえば、きらりちゃんとありすちゃんはどうしたの?」

飛鳥「あの」

フレデリカ「きらりちゃんは杏ちゃんを連れて行ったよー。この前レッスンサボったみたいで、埋め合わせだって」

梨沙「ふーん。で、ありすは?」

飛鳥「ありす、か……」

晴「飛鳥?」

飛鳥「ありすはね……」

フレデリカ「ありすちゃんは?」

飛鳥「ボクの顔を見た途端逃げていったよ……」

梨沙「なんで!?」



飛鳥「いや…分からない」

心「飛鳥ちゃん」ス…

飛鳥「心さん?」

心「ありすちゃんを探してこい☆」

飛鳥「いや、急に何を…」

心「いいからはやくはやく!」

飛鳥「え?あぁ…うん」



---廊下---

飛鳥「一体なんだったんだ?」

飛鳥「ん?あれは……ありす!」

ありす「!」ダッ!

飛鳥「あ、なんで逃げるんだありす!」ダッ!

ありす「に、逃げてません!」

飛鳥「逃げてるじゃないか!」

ありす「それは…そ、それは飛鳥さんが追いかけるからです!」

飛鳥「ありすが逃げるからじゃないか!」

ありす「逃げるから追いかけるって、犬ですか!」




飛鳥「待ってくれ!ありす」

ありす「う…」ピタ…

飛鳥「なんでキミが逃げるのかは分からない。でも、ボクはキミに言いたいことがあるんだ」

ありす「……な、なんですか?」

飛鳥「…ありがとう」

ありす「…………」

飛鳥「ありすのおかげで勝てた。きっと、ありすがいなかったらすぐにリタイアしてただろう……いや、『きっと』じゃなく『絶対』に」

ありす「……こっちこそ、ありがとうございました…飛鳥さんと一緒に戦えてよかったです…楽しかったです」

飛鳥「あぁ。ボクも楽しかったよ」

ありす「はい……」



飛鳥「ありす」

ありす「な、なんでしょう」

飛鳥「正直に言うよ、ボクはキミに避けられる心当たりがない。何故ボクを避けるのか、教えてもらえないだろうか?」

ありす「い、いいいいえ!飛鳥さんが悪いわけじゃ……あの……そ…その……えと…」

飛鳥「ボクが原因じゃないのか?」

ありす「はい!それはもう!絶対に!」

飛鳥「じゃあなんで…?」

ありす「あぅ…それは…」

飛鳥「それは?」

ありす「その…えと……は、恥ずかしい……から」

飛鳥「…………へ?」

ありす「恥ずかしかったんです!終わってみたら!なんなんですかあの時の私は!変な事ばかり口にして!…えと、それで…あの」

飛鳥「……フ」

ありす「うぅ……」

飛鳥「フフ……ハハハハハ!!」

ありす「あ、飛鳥さん?」



飛鳥「いや、すまない」

ありす「なんなんですか……」

飛鳥「そうだな、ありすもゲームの中では『痛い奴』になってたかもしれないな」

ありす「な!?」

飛鳥「ゲームの中では言えたんだ。あとは現実(こっち)でも似たようなことを言えるようにならなきゃね」

ありす「なりませんよ!飛鳥さんと一緒にしないで下さい!」

飛鳥「…ん?どういう意味かなそれは」

ありす「なんでもないです!」

飛鳥「なんか引っかかるな……」

ありす「早く行きますよ!きっとみんな待ってます!優勝者がこんなところにいていいんですか?」スタスタ

飛鳥「まったく…キミのせいじゃないか」

ありす「何か言いました?」

飛鳥「いや、何も」



飛鳥「……ありす」

ありす「はい…?」

飛鳥「これからも、よろしく頼むよ」

ありす「はい、勿論です」


ありす「そういえば飛鳥さん、さっき感謝してるって言ってましたよね」

飛鳥「あぁ。言ったよ」

ありす「じゃあ何かご褒美が欲しいです。私だってあんなに頑張ったんですから」

飛鳥「しょうがないな。そうだな…じゃあ、カレーメシでいいかい?」

ありす「え゛… それはちょっと……」

飛鳥「フフ……冗談だよ」




     ---おわり---



これにて幕


熊本弁だったりきらりん口調だったり、何故こうも喋り方の分からないなキャラばかり出してしまったのか……


iPhoneの『!?』『!!』『う゛』が文字化けするとは知らず、そのまま続けてしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。


ではHTML依頼出してきます

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