武内P「魔神が生まれた日」 (33)

注意事項

・武内Pもの

・武内Pもの





――この惨劇は、仲良し三人組の何気ない会話から始まった



卯月「プロデューサーさんって尊いですよね!」

未央「しまむー、突然何を言い出すんだい」

凛「……」

卯月「何ヵ月も胸の中が、こう……モヤモヤした感覚があったんです。でもその答えがようやく出たから、聞いてほしいんですよ!」

未央「ほお、聞かせてもらおうか。拗らせてしまったしまむーの矯正はそれからだ」

卯月「こ、拗らせ……?」

凛「未央、話の腰を折らないで。卯月、とりあえず何でそう考えるようになったか話してみてよ」

卯月「はい!」

卯月「毎日毎日お仕事に一生懸命で、周りは年頃の女の子ばかりだから予想外の事に振り回されることばかりなのに、その一つ一つに不器用にだけど、真面目に向かい合ってくれる。そんなプロデューサーさんを見ているうちに、色々と思うようになったんです」

未央「ああ、その気持ちなら未央ちゃんもわかるよ」ウンウン

卯月「それに加えて……私が焦りと不安から潰れそうになって、自分がどんな笑顔をしていたかすら忘れてしまった私を、見捨てないでくれた」

卯月「あの時のプロデューサーさんが私に見せてくれた、ぎこちないけど思いやりに満ち溢れた笑顔――私がその時に感じた気持ちがなんだったのか、初めての事でわからなかったんですけど、今になってようやくわかったんです」

卯月「プロデューサーさん……尊い」

未央「うん、そこはちょっと待とうかしまむー」

卯月「え?」

凛「……」

未央「いや、感謝しているとか尊敬しているとかならわかるよ。私もプロデューサーのおかげでアイドルになれて、アイドルを辞めるって言い出した私に今があるのは、プロデューサーのおかげっていうのが大きいんだから」

卯月「つまり未央ちゃんもプロデューサーさんに尊みを感じているんですね!」

未央「ヘイ、ストップしまむー。私もプロデューサーに感謝もしているし尊敬もしているけど、身長190の筋骨隆々としたコッワーイ顔した三十歳になるプロデューサーを、尊いって言い出すのはどうよ?」

卯月「その、以前は大きい人って怖かったんですけど……今はプロデューサーさんぐらいの体格の方が、守ってもらえている気持ちが湧いてきて……年上の男性は頼りになりますし、それにプロデューサーさんの顔はカワイイですよね!?」

未央「おおう……拗らせきっている」

卯月「ええ~、そんなことありませんよ!」

凛「……うん、卯月の言う通りだよ」

未央「……へ?」





島村卯月
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渋谷凛
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本田未央
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凛「プロデューサーは強面な外見とは裏腹に、年甲斐もない夢見がちな情熱さがあるよね。そのせいでいらない苦労をして、それでも私たちのために頑張ってくれている姿を見ると……ああ、尊いな……って感じるよ」

未央「正気かしぶりん!?」

卯月「そうですよね!」

凛「うん」

卯月「ほら未央ちゃん。凛ちゃんだってわかって――」

凛「その尊さを、穢したいよね」

うづみお『え?』

凛「え?」

未央「しぶりん……おまえは何を言っているんだ?」

凛「何って……二人とも尊いプロデューサーを穢したいって思うでしょ?」

卯月「思いませんよ……」

凛「そんなはずないよ! 私たちのために頑張ってくれている、あの見慣れないと怖いけど実は不器用な思いやりに満ちた笑顔を! 可愛いアイドルたちに囲まれて、未成年の担当アイドルをふしだらな目で見てはいけないと戒めているプロデューサーの決意を! 無理矢理押し倒して関係を持って、快楽と罪悪感で上塗りにしたいでしょ!!?」

うづみお『……うわぁ』

凛「え、どうしたの二人とも? 私はプロデューサーで大人ですから、という感じで私たちを恋愛対象として見ようとしないプロデューサーを、プロデューサーである前に一人の男だっていうことを未成年の担当アイドルのわからせ穴でわからせたくないの?」

未央「ドン引きだよ……渋谷さん」

卯月「その……言っていることはよくわかりませんけど、プロデューサーさんをそんな目で見ちゃいけません!」

凛「卯月……エッチな人をエッチな目で見るのは仕方ない……ううん、当然のことなんだよ。美波とか文香とか」

卯月「プロデューサーさんはエッチなんかじゃありません! 尊いんです!」

凛「あんだけ怖い顔しているのに弱気な顔を見せたり、凶悪な見てくれとは裏腹な丁寧なしゃべり方! 年下の女の子に弱いところ! あのバリトンボイス! ワイシャツ姿の時に盛り上がっているのがわかる背筋! ハンガーにかけられたジャケットから漂う香しい匂い! 全部エッチじゃない!」

卯月「今凛ちゃんが言ったのはぜ~~~んぶっ、尊いところです! プロデューサーさんはエッチなんかじゃありません!」

未央「……争いは同じレベルの者同士でしか発生しない、か」

凛「未央」

未央「うん?」





凛「――――ついて来れるか?」





未央(そう語るしぶりんの背中は、蔑むように、信じるように)

未央(私の到達を、待っていた)

未央「――――ついて来れるか、じゃねえ」

未央「二人の方こそ、戻ってきやがれ――――!」

凛「そっか。未央にはまだ早かったか」

未央「なんでそんな呆れた目で見られなきゃいけないんですかねぇ? 呆れているのは未央ちゃんの方なんですけど」

卯月「ん~、じゃあ未央ちゃんはプロデューサーさんの事をどう思っているんですか?」

未央「え、私? まあさっきも言った通り感謝しているし、尊敬もしているよ。でも尊いとか、あまつさえ尊いから穢したいとかそんな考えにはついていけませんなあ」

未央「あ、でも」

うづりん『あ、でも?』

未央「いや、たいしたことじゃないんだけどね。この前プロデューサーがみりあちゃんと仁奈ちゃんが一緒に遊んでいるのを、ほほえましそうに見ていたの。それを見て、ああ、この人子どもの相手の仕方はわからないんだろうけど、子ども自体は好きなんだなあって感じて」

凛「ああ、そういうことか。泣きそうな子どもに気がついて近づいたら、びっくりした子どもが泣き出しそうなイメージはあるね」

未央「うん、まあそれで思ったんだ」

未央「三人ぐらい産んであげようって」

うづりん『何で!!?』

未央「え? なんでって……まあ私が三人兄弟だから、自然と三人って数字が思い浮かんだのかな?」

卯月「その事じゃなくって、なんでちゃっかりプロデューサーさんの子どもを産む気になっているんですか!?」

未央「いや……だって……ほら。プロデューサー……優しいし、たくましいし、顔も見慣れたら良いし……声は言うまでも無く良いし。何より未央ちゃんの恥ずかしいところたくさん見られたから、責任取ってもらわないと」

凛「言い方ァ!」

未央「それに未央ちゃん前々からプロデューサーの女性関係が心配だったし! あの人変に愛が重すぎる人に捕まって束縛されそうなオーラが漂っているもん!」

卯月「あ、それはすごくわかります」

凛「うん、だから私が――」

未央「そしたらその心配が今まさに当たっちゃったんだけど未央ちゃんどうすればいいの!? よりによってこの二人のどちらかならプロデューサーを任せられるって思ってた二人ともが! これじゃもう私がプロデューサーと結婚して守護るしかないじゃん!?」

凛「いや、私に任せてくれていいから。重くなんてないから」

未央「クールの重くないは当てにならないって、今再認識したところなんで」

卯月「二人とも! プロデューサーさんはみんなのプロデューサーさんなんだから、そんな目で見ちゃいけません!」

未央「それは……尊いから?」

卯月「もちろんです」

未央「しまむーは時間をおけば治るかもしんないけど、こじらせたままだし。やっぱりここは未央ちゃんが――」

凛「でも未央。どうやって結婚までもっていくつもりなの?」

未央「え? ま、まあそこは、この未央ちゃんのあふれ出る色香で悩殺して……」

凛「言ってて自分でもわかったでしょ? あの朴念仁が自分から担当アイドル、それも未成年に手を出すわけがないって。こっちから押し倒さなきゃ無理だよ」

未央「押し倒す……押し倒すか」ガタッ

凛「ん」ガタッ

卯月「あの……二人とも間合いを取り始めて、どうしたんですか?」

未央「どうしたも何も」

凛「プロデューサーと私たちの体格差を考えたら、押し倒すには相当な技量が必要だからね。こうしてレスリングの練習をしなきゃ」

未央「しまむーもタックルの練習する?」

凛「卯月は尊いって言ってるから、プロデューサーを押し倒すなんてこと……」

卯月「おおお、押し倒す!? 私が!? プロデューサーさんを!? めめ、滅相もございません」


タタタタタタタタタッ


未央「あ、行っちゃった。しまむーには刺激が強すぎたか」

凛「……ねえ未央。服を着ているプロデューサーを押し倒して、そこからさらに寝技に持ち込んで服を脱がすなら、レスリングより柔道の方がいいのかな」

未央「どっちの方が向いているかはわかんないけど、レスリングと違って柔道なら教えてくれる人に心当たりがあるし、柔道にしよっか」

※ ※ ※



卯月「まったくもう! プロデューサーさんは尊いのに、その尊さを穢したいだの、子どもを産んであげるだなんて」

卯月「プロデューサーさんは誰の物でもない、みんなのプロデューサーさんなんですから」

卯月「……あれ?」





武内P「最近大学の方はどうですか? 急に仕事が増えたことで、学業との両立がたいへんだと伺いましたが」

文香「あの時は相談に乗っていただきありがとうございました。アドバイスを活かせるのは次の履修登録からになりますが、今のペースはそれまでだと思うとだいぶ気が楽になります」

武内P「それを聞いて安心しました。ですが次の履修登録までだからと無理をし過ぎないようにお願いします。鷺沢さんは他のメンバーやスタッフに迷惑をかけまいとするあまり、調子が悪くても言い出せないのではないかと不安になります」

文香「……私の悪いところだとは思っています」

武内P「あ、いえ! 決して責めているわけではありません。他人に迷惑をかけたくないという気持ちは大切な事です。それに今回は体調に影響が出る前に相談していただけて、良かったと思っているところです」

文香「確かに以前の私なら誰にも相談できずにいて、体調を崩し始めた段階で奏さんやありすちゃんに気づかれてようやく話す……そうなっていたかもしれません」

武内P「ええ。良い傾向だと思います」

文香「その……貴方が相手だと、不思議と相談しやすかったんです」





文香「兄さま」





卯月「!!?」

卯月(に、兄さま!? 二人が兄妹だったなんて、聞いてませんよプロデューサーさん!?)

文香「男性と話すのに慣れるため、プロデューサーさんを兄さまと呼ばせていただいている成果でしょうか?」

卯月(ん……? あ、違うんだ)





鷺沢文香
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武内P「私に話しかけやすくなったことは良い事だと思います。私は多分、話しかけづらい部類の人間ですから。他の男性には話しかけやすくなりましたか?」

文香「兄さまほどではありませんが、幾分かは。兄さまと呼ばせてくださいという突拍子もないお願いを聞いていただき、本当にありがとうございます」

武内P「確かに最初は驚きましたが……私も昔、妹が欲しいと思っていた時期があり、それなりに楽しんでいるのでお気になさらずに」

文香「しかし……私のような妹でなければ、もっと兄としての感慨を味わえたと思います。例えばありすちゃんのような、聡明さと愛らしさを併せ持つ子が妹であれば」

武内P「……呆れた顔で、小言を口にする橘さんの姿が想像されます」

文香「そ、そんなことは……フフ」

武内P「それにもし私に鷺沢さんのような妹が本当にいたら自慢してまわるか、もしくは可愛がり過ぎて過保護になっていたでしょう」

文香「過保護……兄さまに過保護にされる……良いですね」

卯月(過保護……プロデューサーさんに過保護にされる)ゴクリ

武内P「……え?」

文香「あ、いえ! なんでもありません。ところでお願いがあるのですが……それがまた恥ずかしい内容で、お願いしづらい事なんです」

武内P「なんでしょうか? まずは聞かせていただけますか」

文香「はい。前に話したかもしれませんが私は叔父と仲が良く、アイドルになってその回数は減りましたが、叔父の経営する書店の手伝いをしています」

文香「叔父もまた長野にいる父の代わりに私を見守らないといけないと、普段から私の事を気にかけてくれていたのですが……その叔父との会話で、つい兄さまの事を話してしまったのです。プロデューサーさんではなく、兄さまと」

武内P「……可愛い姪に、兄さまと呼ばせている怪しい男がいる状態ですね」

文香「もちろんすぐに誤解だと伝えたのですが……叔父が一度、三人で食事をしたいと希望しているのです」

武内P「そういう事ですか。叔父さんの気持ちは良く分かります。仮初の兄にすぎない私でさえ、もし鷺沢さんの周りに不審な男がいれば心配で仕方なくなるでしょうから」

文香「そうなったら……兄さまも心配してくれますか?」

武内P「ええ、もちろんです」

文香「だ、大丈夫ですよ兄さま。私が男性の前で油断するのは、家族と兄さまにだけですから」

武内P「あの……私にも少しは警戒してほしいのですが」

文香「……やです」

武内P「鷺沢さん?」

文香「やです。兄さまは、私の兄さまなんです。兄さまが私にしてくれることで、悪い事なんて一つもありません」

武内P「あの……私は仮初の兄なので、そこまで過剰に信頼するのは……いえ、実の兄でもそこまで信頼するのはどうかと思います」

文香「……兄さまのいじわる」プクー

武内P「可愛らしく頬を含まらせてもいけま……フフ」

文香「あ、面白かったですか?」

武内P「その……鷺沢さんがこんな冗談を見せてくれるのが嬉しくて、つい」

文香「こんな姿を見せるのは、兄さまが初めて……あ」

武内P「どうかしましたか?」

文香「いえ、ありすちゃんが以前教えてくれたのに、わからなかった事があったのを思い出したんです」

武内P「それはなんでしょうか」

文香「初めての時は『兄さまっ……兄さまっ……!』と口にすると喜んでくれるそうなんですが……わかりますか?」

武内P「…………………………私には、さっぱりわかりません。わかりませんが、橘さんとはあとでお話をさせてもらいます」

文香「?」

武内P「ところで叔父さんとの食事の件ですが、あとで日程を確認して大丈夫な日を連絡させていただきます」

文香「時間を割いていただきありがとうございます。叔父には念を押しておきますが、もし妙な事を言い出しても気にしないでください」

武内P「そんなに心配されなくても大丈夫です。私は年頃の娘さんを預かる仕事を何年もしていますので、保護者の方が我が子を心配する気持ちは多少なりともわかるつもりです」

文香「それが……誤解を解く時に私も慌ててしまったせいか言葉を間違えて、叔父に別の思い込みをさせてしまったんです」

文香「ですから『式場は東京と長野、どちらがいいだろうか』ということを言い出しても、気にせずに流してもらえれば助かります」

武内P「式場……? それはどういう意味でしょうか」

文香「お、お願いです。どうか流してください」

武内P「わ、わかりました」

文香「そ、それでは私は打ち合わせがありますので、そろそろ失礼します。会食の件、よろしくお願いします」

武内P「ええ。打ち合わせを頑張ってきてください」

武内P「さて、では私も――ッ!?」

卯月「……」

武内P「島村さん!? 今の話を聞いていたのですか?」

卯月「は、はい」

武内P「その……奇妙に見えたかもしれませんが、他の方には黙っていてもらえませんか。鷺沢さんが男性との会話に慣れるために二人の時は兄妹として接しているのですが、これを他の人たちに知られたら鷺沢さんがからかわれてしまいます」

卯月「わかりました――」





卯月「お兄ちゃん♪」





武内P「――――――――――え?」

卯月(プロデューサーさんは皆のプロデューサーさんです。その隣に女の人がいるなんて許されません)

卯月(けど家族なら……妹なら別)

卯月(プロデューサーさんは誰のモノでもないけど――お兄ちゃんは妹のモノ。確かそんな事を、奈緒ちゃんが前に言ってました)

卯月(プロデューサーさんの妹になれば……プロデューサーさんは尊さを守りながら、プロデューサーさんと――)

卯月「お兄ちゃ~ん♪」ギュッ

武内P「し、島村さん!? いけません、離れてください」

卯月「……お兄ちゃん、どうしてそんなこと言うの?」

武内P「どうしても何も、そんな無暗に男の人に抱きついてはいけません」

卯月「もうっ、お兄ちゃんのいじわる」

武内P「いじわる、ではなくてですね。それに私の事をお兄ちゃんと呼ぶのもやめましょう」

卯月「文香さんはいいのに?」

武内P「鷺沢さんは事情があっての事です。そしてこのように抱き着くようなマネも『……から、ですか?』――え?」

卯月「私が妹じゃ……文香さんみたいに過保護になれないから、ですか?」

武内P「そ、そんなことはありませんっ! もし島村さんが妹だったら、目に入れても痛くないほど可愛がる違いありません!」

卯月「じゃあ……そうしてください」

武内P「え?」

卯月「な、ナデナデしてくれたり……抱っこしてくれたり……」

武内P「だ、抱っこはできませんし……ナデナデ? 頭をですか? せっかくセットした髪が乱れますし、女性の髪を気安く触れては」

卯月「う~」ポロリ

武内P「な、撫でます! 撫でさせてください!」

卯月「はい! お兄ちゃん頑張ってください!」

武内P「……お、お兄ちゃん。頑張ります」


ナデナデ、ナデナデ


卯月「エへへへへへへへへへ♪」

武内P(なぜこんなことに……? 島村さんも一人っ子だから、兄が欲しいという願望があったのでしょうか?)

卯月「こんな風に撫でられるなんて、多分パパとママ以外だと初めて――あ」

武内P「どうしましたか?」

卯月「お……お兄ちゃんっ……お兄ちゃんっ……!」

武内P「!!?」

卯月「えっと……初めての時は、今みたいに言った方がいいんですよね? ど、どうでしたか?」

武内P「」

卯月「お兄ちゃん? どうしまし――あれ?」

武内P「ハッ!?」

卯月(お腹になんだか熱くて硬いモノが当たってる。さっきまでプロデューサーさんとの間にこんなの無かったのに、なんだろう?)

武内P「し、島村さん! 離れましょう! とにかく私から離れて――あ」

卯月「どうしましたお兄ちゃ――あ」


カツーン、カツーン


早苗「……ついさっき凛ちゃんと未央ちゃんにお説教したばかりなのに」

友紀「なんだこれは……たまげたなあ」

武内P「ちがっ……これは違うんです!」

早苗「未成年の担当アイドルにお兄ちゃんと呼ばせながら抱き着かせて、頭を撫でているわけではないと?」

武内P「そ、それは」

卯月「これは私が自分からした事で、お兄ちゃんは悪くないんです!」

早苗「じゃあなんで卯月ちゃん涙目なのかな?」ニッコリ

武内P「これは……その」

卯月「え、え~とですね」

友紀「CPのプロデューサーには幸子ちゃんがいるのに……おかしい、こんなことは許されない」

早苗「貴様には黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も無い。ちょっと事務所でお話しようか」

武内P「……はい」

卯月「お、お兄ちゃ~~~~~ん!」

友紀「幸子ちゃんに浮気したって教えてあげないと」タタタタタタッ

――翌日



卯月「はぁ……私ったら何て事しちゃったんだろう。プロデューサーさんを困らせてしまって」

卯月(けど……楽しかったなあ。プロデューサーさんったら抱き着いてきた私にどうしていいかわからなくて、あんなに焦っちゃって可愛かったなあ。それなのに体は逞しくって、熱かった)

卯月(そういえばお腹に当たっていたあの熱くて硬い感触は、なんだったんだろう? 思い出すと、お腹の下がなんだか熱く――)

卯月「だ、ダメダメ! 尊いプロデューサーさんでそんな事を考えたらいけません!」

卯月「プロデューサーさんに悪い事をしようとした凛ちゃんと未央ちゃんは、早苗さんにお説教されてひとまず安心できる状態になったのに、私がこんな事を考えたらいけないじゃない」

卯月「とにかく昨日の事をプロデューサーさんに謝らないと」


コンコン、ガチャ


卯月「プロデューサーさん、昨日は――――――――――え?」

武内P「し、島村さん!? こ、これはですね!」

幸子「プロデューサーさん? カワイイボクを撫でる手が止まってますよ」

武内P「いえ、その」

幸子「言い訳はいりません。ほらほら」グイグイ

武内P「は、はい」ナデナデ

幸子「ゴロゴロゴロ~♪ フフ―ン、ボクのカワイイ鳴き声で存分に癒されてください♪」

卯月「…………………………プロデューサーさん、何で膝の上で幸子ちゃんが丸くなっているんですか?」

武内P「……何故なのでしょう」

幸子(on the 武内P)「ああ、卯月さん。昨日は“ボクの”プロデューサーさんが失礼しました」

卯月「……ボクの?」

幸子「ご存じだとは思いますが、シンデレラプロジェクトが始まるまでプロデューサーさんはボクを担当していました」

卯月「は、はい」

幸子「つまりこのカワイイボクと触れ合えるのが日常だったのに、それが突然奪われてしまったんです! プロデューサーさんの嘆きと悲しみはどれだけ深かったことでしょう!」

幸子「最初のうちはボクほどではないにしても、カワイイ卯月さん達に囲まれていたので何とか我慢することができました。しかしボクとたまにしか会えない日々が続いていくうちに、段々と体内のカワイイ成分が枯渇していき、ついには卯月さんに“お兄ちゃん”と呼ばせるほど拗らせてしまったんです」

卯月「ええっ!?」

幸子「つまりボクのせいで! ボクを好きすぎるせいで! ボクを愛おしすぎるせいで! 昨日の事が起きてしまったんです。何もかもプロデューサーさんに構ってあげなかったボクが悪いので、カワイイボクに免じて昨日の事は許してもらえませんか?」

武内P「……何度も否定しているのですが、このような調子で聞き入れてくれないのです」ナデナデ

幸子「プロデューサーさんは照れ屋さんですからねぇ」

卯月「あの、幸子ちゃん? 昨日の件は、私からプロデューサーさんをお兄ちゃんって呼び始めたんです」

幸子「わかってます、わかってます。プロデューサーさんは不器用で誤解されがちな人ですから、周りのアイドルが支えてあげないといけませんから、時にはウソをついてでも守らないと」

卯月「うー、確かに話を聞き入れてもらえません。それにどうして今の話で、プロデューサーさんの膝の上で丸くなっているんですか?」

幸子「プロデューサーさんはカワイイ成分を大量に供給する必要があるのに、照れ屋さんですから強引な手を取る必要があります。そこでボクのおじいちゃんの家の猫を思い出したんです」

卯月「猫を?」

幸子「ええ、あれはお盆の頃でした――」





輿水幸子
http://i.imgur.com/Jxy7rsM.jpg

※ ※ ※



幸子「ふう、まだ午前中なのに移動するだけで汗をかいてしまいますねえ」


ガチャ


幸子「おじいちゃーん、おばあちゃーん! カワイイ孫の幸子が来ましたよー!」

幸子「……返事も物音もありません。買い物でしょうか? ふう、とりあえず休憩しますか。おや?」ヨッコイショ

<ニャー

幸子「にゃん吉じゃないですか。よしよし」

<ゴロゴロ♪

幸子「猫は一ヵ月会わないと忘れるっていいますが、貴方は年に二回しか会わないボクをちゃんと覚えていますよね。偉いです」

<ニャー ゴロンゴロン

幸子「はいはい、お腹も撫でで上げますから。ボクほどではありませんが、貴方もカワイイですからね。……みくさんの猫キャラで行くという路線は、王道なのか色物なのかわかりませんでしたが、やはり王道なのでしょうか?」

<ニャー?

幸子「ん、貴方はボクほどではないけどカワイイという話ですよ。さて休憩もしましたし、ちょっと外に様子でも――」

<!? バッ!!

幸子「――見に、え!?」

<ンニャー!

幸子「……ッ!!? そんな……バカな」

<ゴロゴロゴロ♪

幸子「ついさっきまでお腹を出して寝転んでいたのに……ボクが立ち上がろうとするや否や、ボクの膝に飛び乗って動けないようにする……こんなの、カワイくて構うしかないじゃないですか!」

<ニャー

幸子「カワイさについてボクが学ぶ日が来るとは……やるじゃないですかにゃん吉」

※ ※ ※



幸子「――という事があったのを思い出したんです。プロデューサーさんのような朴念仁な照れ屋さんにカワイイ成分を供給するには、にゃん吉のような強引な甘え方がいいと考え、さちにゃんになりました!」

武内P「……部屋に入るや否や膝の上で丸くなってしまわれて、どいてくださいとお願いしても――」

幸子「ンニャー」

武内P「このように不機嫌そうに鳴くだけて、どいてくれないのです。私がどかそうにも……」

幸子「別にどかしてもいいんですよー? 膝の上で丸まっているこのボクの、胸や太ももを触わりながらどかしたらいいじゃないですか♪」

武内P「この体勢の輿水さんに、私ができることがないのです。申し訳ありませんが島村さん、輿水さんをどかしてもらえませんか」

卯月「……」

武内P「島村さん?」





卯月「にゃ、にゃあ♪」





武さち『!!?』

卯月(プロデューサーさんは皆のプロデューサーさんです。その隣に女の人がいるなんて許されません)

卯月(けど家族なら……猫なら別)

卯月(プロデューサーさんは誰のモノでもないけど――飼い主は猫のモノ。確かそんな事を、みくちゃんが前に言ってました)

卯月(プロデューサーさんの猫になれば……プロデューサーさんの尊さを守りながら、プロデューサーさんと――)

卯月「にゃ~ん♪」スリスリ

武内P「し、島村さん!? いけません貴方まで!」

幸子「そ、そうですよ! プロデューサーさんはボクのモノなんですよ!」

卯月「プ、プロデューサーさんは私の飼い主だにゃん!」スリスリ、ムニュウ

武内P「」

幸子「ちーがーいーまーすー! プロデューサーさんはさちにゃんのモノなんです!」

卯月「う、うづにゃんのモノです!」

幸子「フシャーッ!」

卯月「にゃ、にゃー!」

武内P「あの……二人とも……体を押し付けるのを止め――――――――――ア」

幸子「フシャーッ! フシャーッ! ……あ」

卯月「にゃー! にゃー! にゃ?」

幸子「これは……まさか?」

武内P「あの……申し訳ありません」

幸子「フ、フフフフフフフフフフーン? しか、仕方ないですよね!? か、カワイイボクが上に乗ってあげてるんです! 反応するのは当たり前だにゃあ!」

卯月「あの……何があったんですか?」

武内P「いえ、その……」

幸子「ちょ、ちょっとカワイイ成分を供給しすぎたみたいで……」

卯月「?」

卯月(二人とも顔を真っ赤にして、表情もぎこちないけど……カワイイ成分を供給しすぎて、何があったんですか?)

武内P「あの……もう供給過多ですので、お願いですからどいてください」

幸子「で、でもボクがどいたら……卯月さんにこのエルブルス山(ロシア最高峰の山 標高5642m)が見られてしまいますよ?」

武内P「そ、それは……!」

卯月(何が起きているかわからないけど……私がすぐ隣にいるのに、二人だけで話が通じてるのは……何だか面白くありません!)シマムラムラムラ!!!

卯月「にゃあ!」ギュッ

武内P「し、島村さん!?」

幸子「い、いけません卯月さん!? 今のプロデューサーさんにそんなことをしたら、噴火してしまいます!」

卯月「し、知らないにゃあ! プロデューサーさんはうづにゃんのモノだから、さちにゃんはどいてください!」

幸子「な……っ!? プロデューサーさんはボクのモノですよ! 悪い事は言いませんからうづにゃんは早く部屋を出てください! さちにゃんが安全に噴火させますから!」

武内P「……ッ!?」

卯月「ふ、噴火? 噴火ならうづにゃんがさせますから!」

武内P「……ッ!!?」

幸子「ボクのせいで活火山になったんですから、この仕事はさちにゃんのモノです!」

卯月「顔が真っ赤なさちにゃんにできるとは思えません! ここは年上のうづにゃんに任せてください!」

幸子「フシャーッ! フシャーッ!」

卯月「にゃあ! にゃあ! にゃあ!」

武内P「あの……二人とも止め――」





ん゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ご ! ! !





キュート三人組『……ッ!!?』

幸子「い、今の声は……うづにゃんじゃ……ないですよね?」

卯月「さ、さちにゃんでも……ないですよね?」


カツーン、カツーン


みく「……」

李衣菜「み、みくちゃん……?」

武内P「ま、前川さん? それに多田さん」

李衣菜「み、みくちゃん……落ち着こ? ね?」

みく「フシャアアアアアアァッ!」

李衣菜「ヒィッ!?」

武内P「これは……いったい?」

李衣菜「さ、三人とも逃げて! これ猫がマジギレしている時の反応だよ! みくちゃんに無断で猫キャラして、その上さらに泥棒猫されて怒り狂ってる!」

キュート三人組『!!?』

みく(in the バーサーカー)「■■■■■ーーー!!■■■■■■■■■■ーーー!!」

キュート四人組『うわああああああああああああぁぁぁ!!?』


グワン、ドゴン、どんがらがっしゃ~ん!!!

――翌日



卯月「はぁ……私ったら二日連続で何て事しちゃったんだろう。プロデューサーさんをあんな目に遭わせちゃって」

卯月「それにプロデューサーさんの前で、プロデューサーさんは私のモノだなんて言っちゃって……うう、恥ずかしい」

卯月(そういえばカワイイ成分を供給しすぎた事で、プロデューサーさんに何が起きたんでしょう? エルブルス山? それに活火山、噴火とも言ってましたけど……この前私がプロデューサーさんに抱きついた時に、お腹に当たっていたあの熱くて硬い感触と関係があるのかな?)

卯月(幸子ちゃんはプロデューサーさんの膝の上で丸くなっていたから、あの熱くて硬い感触に触れてしまって、それで慌てたのかな? いいなあ……)

卯月(なんでしょう? あの時の感触と、私と幸子ちゃんに挟まれて顔が真っ赤になったぎこちない表情のプロデューサーさんを思い返すと、おへその周りが段々熱く――)

卯月「だ、ダメダメ! ただでさえ二日連続でプロデューサーさんに迷惑をかけているのに、こんな事まで考えるだなんて!」

卯月「私……悪い子になっちゃったのかなあ」

卯月「とにかく……この二日間の事をプロデューサーさんに謝らないと」



――

――――

――――――――



卯月(あれからプロデューサーさんを見つけることができたんですけど……)

武内P「あの……神崎さん?」

蘭子「むすー」

武内P「体調が悪いのですか?」

蘭子「ふーんだっ」

武内P「か、神崎さん……?」

卯月(声を掛けられる雰囲気じゃなかったので、離れたところから様子を見ています)

卯月(それにしてもどうしたんだろう蘭子ちゃん? プロデューサーさんにあんなに冷たい態度をとるだなんて。プロデューサーさんが動揺しているのが、離れていても見て取れて……ハァ、ハァ。CPの中で一番無邪気に懐いてくれていた蘭子ちゃんの冷たい態度に、不安と恐怖であんなに動揺しちゃって……わ、私が慰めてあげないと――じゃなくて!?)ヘゴ、ヘゴ

武内P(ん、どこからか物音が……?)

蘭子「……我が友よ」

武内P「は、はい!」

蘭子「――否」

武内P「え?」

蘭子「我が下僕よ!」



ガタンッ


蘭子「ふぇ?」

武内P「……ッ!?」グラ~リ


ドシーン!


蘭子「わわ、わわわわわわわわ!?」

卯月(ショックでよろめいて……尻餅をついちゃった!?)

武内P(下僕……友ではなく……私は神崎さんに失望されてしまった……ッ!!)





神崎蘭子
http://i.imgur.com/IQhSRFc.jpg

蘭子「あの! あのあの!」

武内P(あんなに我が友、我が友と懐いてくれていたのに……天真爛漫な笑顔を私に向けてくれていたのに……)

武内P(思えばシンデレラプロジェクトは個性的で年頃の女の子たちが集まる場所であり、三十になる男の私は皆さんとどのように接すればいいのか常に考えさせられていました)

武内P(そんな中で、ほぼ無条件に私を慕って懐いてくれる神崎さんはどれだけの癒しだったでしょう)

武内P(私にとって神崎さんは魔王などではなく、どれだけ海が荒れていても大地へと誘ってくれる守護天使のような存在でした。そんな彼女に……私は失望され、見放され……彼女は再び魔王へと堕天した)

武内P(胸が痛くて、吐き気がする。視界も歪んで耳鳴りがする)

が……とも わ……とも!

武内P(え? この声は……?)





蘭子「我が友ー!」





武内P「神崎……さん?」

蘭子「我が友!? 大丈夫ですか? 気分が悪いんですか?」

武内P「我が友と……私を呼んでくれるのですか?」

蘭子「あっ……あれはその……フンッ! 汝が書の女神と寵愛の御子を相手に、戯れが過ぎたと耳にしてな。少し灸をすえてやろうとしただけの事(違うんです。ただプロデューサーが文香さんと幸子ちゃんと、私としたことがないような事をしたって知って……何で私とはしてくれないんだろうって怒っちゃって)」

蘭子「よもや汝がそこまで我が言の葉に怯えるとはな。許せ(けどプロデューサーがこんなにショックを受けるとは思わなくって……ごめんなさい)」

武内P「そういう事だったのですね。良かった……神崎さんに嫌われてしまったのかと。この気持ちはまるで――」

蘭子「ほ、ほお? 我の加護を失うのをそこまで恐れるか。安心するがいい。我と汝は比翼連理の――」

武内P「まるで年頃の娘さんに同じ洗濯機で洗わないでと言われた、お父さんの気持ちのようです」

蘭子「…………………………我が友よ」

武内P「はい」

蘭子「否、我が下僕よ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

武内P「……え?」

蘭子「汝には魔王の下僕であるという自覚が――この魔王のモノであるという自覚がまるで足りぬようだ! 今ここに! 我と汝の永劫の未来のため! 汝の心を我が瞳に捉えん!」

武内P「」

卯月(あわわわわわわ! あの蘭子ちゃんがあんなに怒っているの初めて見ちゃった。プロデューサーさんもショックで放心しちゃって……おいしそ――じゃなくて!)

蘭子「そもそも我と汝は――」

――10分後



チーン♪


武内P「」

蘭子「よいか我が友よ。俗物共の戯言で祭事を執り行える日取りは二年伸びたが、そのようなくだらぬ策略で我らの盟約は引き裂くことはできぬ」

武内P「ハイ……盟約、引キ裂ケマセン」

蘭子「なぜなら! その二年の月日も我と汝が共に歩む事に変わりないのだから!」

武内P「ハイ……変ワリアリマセン」

蘭子「ゆ、故に……わ、私が十八歳になるまで」

蘭子「……あと四年、待てますか?」

武内P「ハイ……待テマス」

蘭子「プロデューサー!」ギュッ

武内P「」ユラリユラリ

蘭子「ハッ……ンンッ! よかろう。汝も反省しているようだし、書の女神と寵愛の御子の件は不問に処そう」

蘭子「我は供物を受け取りに行く。闇に飲まれよ!(衣装合わせがあるのでそろそろ行きます。お疲れさまでした!)」

武内P「オ疲レ……様デシタ」


テクテクテク


蘭子「♪~♪~」

卯月「あの……蘭子ちゃん」

蘭子「微笑みの天使? 何事か(卯月さん? どうしたんですか)」

卯月「あの……聞きたいことがあるんです」

蘭子「ほう、この我にか。今我は機嫌が良い。何でも申すがいい(私にですか? 何でも聞いてください♪)」

卯月「……魔王になるには、どうすればいいんですか?」

蘭子「なんと。そなたが魔に魅入られるとは……人の世はこれだから面白い(え、卯月さんがですか? びっくりしたけど嬉しいです!)」

卯月(さっき蘭子ちゃんは下僕は魔王のモノだって言ってました。普段もそうですけど、さっきの慌てぶりを見ればプロデューサーさんが蘭子ちゃんに弱い(※)のは間違いありません!)


※年頃の女の子全般に弱い(ただしパッションにはやや弱い程度)


卯月(私が魔王になれば……プロデューサーさんを……あの尊いプロデューサーさんを私のモノに!)

蘭子「魔王へと堕ちる手段だが、そなたから見れば小悪魔の手をひねるより簡単な事よ(魔王になる方法だけど、卯月さんなら簡単です)」

卯月「え?」

蘭子「そも魔王とは悪魔の中でより一等な力を持つ者。そして悪魔とは天使が堕天してなる。天使の中でも天使である汝であれば、闇の力を纏うだけで悪魔に――否、魔王となる!!!」

卯月「!!?」

蘭子「そなたならば我に並び立つ魔王になれよう。その時が来るのを待ち望んでいるぞ。アーッハッハッハッハッハッハッ! 闇に飲まれよ(卯月さんなら立派な魔王になれますよ。その時が楽しみですね、フフ。それではお疲れ様です)」

卯月「うん……お疲れ様」


テクテクテク


卯月「……」

卯月「闇の力を纏えば魔王になれる……闇の力……そうか、私――」






悪 い 子 に な っ て い い ん だ




※ ※ ※



時子「――――――――――ッ」

法子「時子さん、何かありましたか?」

時子「……別に。何でもないわよ」

法子「まあまあ。ドーナツでもどうぞ」

時子「その油と糖分の塊を近づけるな」

法子「酷い! 時子さんはドーナツをなんだと思っているんですか!?」

時子「[ピザ]と豚の食べ物よ」

法子「あたしは[ピザ]でも豚でもありませーん。ブヒー、ブヒー」

時子「……はぁ」

時子「とりあえずお帰りとだけ言っておくわ、卯月」

法子「お代わり? 今お代わりって言いましたよね時子さん!?」スッ

時子「近 づ け る な と 言 っ た で し ょ う 」ギシギシギシッ

法子「ギブ……ギブギブギブ」パンパン

※ ※ ※



コンコン


武内P「どうぞ」

卯月「失礼します、プロデューサーさん」

武内P「島村さん、何かありましたか?」

卯月「いえ、その……昨日と一昨日の事を謝りたいと思いまして」

武内P「そ、その件でしたら私の方も謝らなければいけませんね」

卯月「いえ、プロデューサーさんは悪くなんかありません! 文香さんと幸子ちゃんがプロデューサーさんと楽しそうにしているのを見て、面白そうだからとマネした私が悪いんです」

武内P「そういう事だったのですね。私とコミュニケーションを取ろうとしてくれた事は嬉しく思います」

武内P「ですが鷺沢さんとは鷺沢さんとのコミュニケーションが、輿水さんとは輿水さんとのコミュニケーションがあり、島村さんとは違う形になると思います。他の方をマネる必要はありません」

武内P「……それに輿水さんのコミュニケーションは問題があるので、今度注意しようと思っています」

卯月「あ、アハハハ。それと実は気になることがあったので、それの確認にも来たんです」

武内P「気になること? いったい何でしょうか?」

卯月「一昨日の事なんですけど……」

武内P「ええ」

卯月「私のお腹に熱くて硬いモノが当たっていたんですけど、それって何だったんだろうって気になって」

武内P「」

卯月「最初はそんなモノ無かったのに、後から私とプロデューサーさんの間に現れたから不思議だったんです。プロデューサーさんはそれが何なのかわかりませんか?」

武内P「す、すみません……」

卯月「そっかぁ。プロデューサーさんもわからないんですね」

武内P「その……すみませんというのはそういう意味ではなく……」

卯月「実は昨日の事でも確認したい事があるんです」

武内P「え?」

卯月「幸子ちゃんがエルブルス山? それに活火山や噴火とか言ってましたけど、それはどういう意味だったんでしょうか。何かの暗喩だとは思うんですけど」

武内P「すみません……すみません……すみません」

卯月「え!? そんな、わからないからって謝らないでくださいプロデューサーさん!」

武内P「そういう意味では……」

卯月「ん~、でも困りました。あれは何だったんだろうかと考える度に感触を思い出して、何だかお腹の周りが熱くなっちゃうんですよね」

武内P「~~~~~っっっ」

卯月「じゃあ他の年上の人に――時子様に訊いてみます」クルッ

武内P「ま、待ってください!!!」

卯月「え?」

武内P「その……どうか他の人に訊くのは止めてください」

卯月「……あの、プロデューサーさん。もしかして心当たりがあるんですか?」

武内P「え、ええ。実は」

卯月「でも答えにくい事なんですね?」

武内P「……はい」

卯月「す、すみません。私変な事を訊いちゃったんしょうか?」

武内P「あ、謝らないでください! 悪いのは……悪いのは全て私で、島村さんは何も悪くなどありませんから!」

卯月「いえ、悪いのは私の方です!」

武内P「いえいえ、悪いのは私です!」

卯月「プロデューサーさんは悪くありません!」

武内P「島村さんの方こそ悪くありません!」

卯月「プロデューサーさんが悪い事をするはずがありませんから!」

武内P「島村さんが悪い事をするなどそれこそあり得ません!」

『……』

卯月「……ププ」

武内P「……フフ。取り合えず謝り合うのは止めますか」

卯月「はい!」

卯月「ええっと、それじゃあ……さっきの件は他の人に話さない方がいいんですよね?」

武内P「え、ええ。どうかお願いします」

卯月「でも教えてくれないんですよね?」ジトー

武内P「その……正直に話すべきなんですが、どう話したらいいか私にはわからないのです」

卯月「ならいいです! 気にはなりますけど、プロデューサーさんを困らせてまで知りたい事じゃありませんから!」

武内P「ありがとうございます」ホッ

卯月「でも代わりに、お願いしたい事があるんです」

武内P「何でしょうか?」

卯月「その……お腹に当たったあの感触が忘れられないんです」

武内P「…………………………え?」

卯月「私に話しづらい事なのはわかりました。だからいつか――プロデューサーさんが今回の事を話せるぐらいに内心の整理がついたら」





卯月「またお願いします♪」





武内P「」

卯月「そ、それじゃあ失礼します!」

武内P「……ハッ!? 待ってくださ――」


ガチャ、バタン


武内P「……私は、いったいどうすれば」

タタタタタタタッ


卯月「ハァ……ハァ……!」

卯月(言っちゃった……言っちゃった!)

卯月(約束しちゃった! 約束しちゃった!)

卯月(体が熱い。顔が真っ赤だって鏡を見なくてもわかっちゃう。走っているせいだって言いたいけど、そうじゃないってお腹の周りが私に教えてくれる)

卯月(プロデューサーさん……プロデューサーさん! 困って、固まって、あの時の事を思い出して興奮して、その事に罪悪感を覚えて!)

卯月(私のせいで! 私によって! 私のために悩み苦しんで、興奮している! 私のプロデューサーさん!)

卯月「ん……っ」ビクッ

卯月(嗚呼――――――――これが、愛おしいっていう感情なんだ)

卯月(大好きな人を困る姿を見て、私は喜んでいる。尊いプロデューサーさんを穢すことに喜びを見い出している。なんて私は悪い子なんだろう!)

卯月(ごめんなさい、ごめんなさいプロデューサーさん。でも、それでも私はもう止まれない。だってこんなにも――)





卯月「へそ下辺りが、むずがゆい……ッ!!!」





~おしまい~

最後まで読んでいただきありがとうございました

私の中で武うづは

武内P:卯月はその笑顔で自分を救い出してくれた天使
卯月:プロデューサーさんは養成所にいた私を見つけ出してシンデレラにしてくれた王子様

という感じでお互いに尊みを感じています
つまりバカップル

それなのに皆が書けって……こういうのを書けって言うから……

俺は悪くねえっ!
俺は悪くねえっ!

これまでのおきてがみ(黒歴史)デース!


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