幼馴染「ぷろ、ぽーず……?」 (79)

――通学路

幼馴染「ねぇ男くん、歩いてる時はスマホやめた方がいいよ」

男「ちょっと今手が離せないんだ」ポチポチ

幼馴染「むぅ……でも歩きスマホはよくないよ!!」

男「…………」ポチポチ

幼馴染「もー男くんってば!聞いてる??」

男「よし、っと」

幼馴染「なにしてるの??」

男「プロポーズ」

幼馴染「え……?」

男「……」ポチポチ

幼馴染「ぷろ、ぽーず……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1597447909

男「お、返事きた……おお、ははっ!」

幼馴染「へ?へ??」

男「幼馴染、俺結婚する事になったわ」

幼馴染「えええぇぇぇ!!!??」

幼馴染「け、けけけ結婚!?」

男「…………」ポチポチ

幼馴染「だだだだ誰と!?」

男「…………」ポチポチ

幼馴染「男くん!聞いてる!?」

男「ん?ああ、結婚といってもゲーム内だぞ」ポチポチ

幼馴染「ゲーム……?」

男「最近俺がハマってるオンラインのアプリゲームに結婚システムがあるんだ」ポチポチ

幼馴染「オンライン……ってことは相手もちゃんと実在する人?」

男「ん?ああ、そうだよ」ポチポチ

幼馴染「!!」

男「結婚っつっても目的があるからするだけで、そこまで深い意味はないけどね」ポチポチ

幼馴染「男くんが……結婚……」ボソボソ

幼馴染「結婚……男くんが結婚……」フラフラ

男「ん??」チラッ

男「っておいっ!!学校はそっちじゃない!!」ガシッ

幼馴染「はっ!」

男「朝から寝ぼけてんのか?」

――朝 B組教室

幼馴染「女ちゃん聞いて!!」バンッ

女「どうしたの?」ポチポチ

幼馴染「男くんがゲーム内で――って何見てるの?」

女「んー?プロポーズの文面」ポチポチ

幼馴染「ぷ、ぷ、ぷろぽーず……!?」

女「今朝送られてきたんだけどさ、これがまたおかしくって!ふふっ」

幼馴染「け、今朝!!??」

女「どうしたの?そんなに驚いて」

幼馴染「そんな……嘘……まさか相手は女ちゃん!?!?」

女「なに?なんのこと??」

幼馴染「女ちゃん!!」

女「はい!?」

幼馴染「女ちゃんって……最近ゲームにハマってるって言ってたよね!?」

女「ん??スマホゲームのこと?」

幼馴染「うん、それってどんなゲームなの!?」

女「オンラインのRPGよ」

幼馴染「オ、オ、オ、オンライン!?」

女「ええ。ハマってるといっても暇な時間にちょこっとやるくらいだけど」

幼馴染「今朝……オンライン……プロポーズ……ああ、そんな……」ズーン

女「??」

女「それよりも幼も見る?姉の恋人がプロポーズの手紙を書いて――って」

幼馴染「…………」ズーン

女「あれ?ねぇちょっと、聞いてる??」

幼馴染「だ、だいじょうぶ、へいきだよ、げーむだし」

女「ええ!?」

――同時刻 A組教室

男「親友!あのゲームで結婚したぞ!」

親友「おお、おめでと。これでやっと夫婦限定ミッションに挑めるね」

男「ああ!」

親友「でも結婚って誰としたの?僕らのギルド内の人?」

男「事情話したらギルマスが『サブ垢でよければ』って結婚相手になってくれたんだ」

親友「ギルマスって……たしか男の人だよね?」

男「ああ。別にゲームだからどうでもいいだろ」

親友「えー……まあ、男がそれでいいならいいけど」

男「これでやっと欲しかった素材がゲットできるぜ!!」

親友「言ってくれれば僕がその素材譲ってあげたのに」

男「自力でやることに意味があるんだよ」

親友「はは、うん、そうだね」

――放課後 A組教室

親友「あれ?幼馴染ちゃんが迎えに来ないのって珍しくない?」

男「言われてみれば確かに」

親友「迎えに行ってあげれば?」

男「向こうが来ないってことは別々に帰ろうってことだろ」

親友「はぁ、これだから……たまには男から――って!!」ビクッ

幼馴染「…………」ジーー

男「どうした??」

親友「い、いや、なんでもない――」

男「んー?ドアの方になんかあるのか??」チラッ

幼馴染「!!」ササッ

男「あいつ、何してんだ?」

親友「逆に男がなにしたのさ……」

男「別になにもしてないぞ?」

親友「とりあえず……迎えに行ってあげなよ」

男「ああ、そうする」

――下校 校門前

男「なんで覗いてたんだ?」

幼馴染「な、なんとなく?」

男「ん?変な奴」

幼馴染「……」

男「……」スッ

幼馴染「……!」

男「……」ポチポチ

幼馴染「あ!!!」

男「あー悪い、歩きスマホは危ないもんな」サッ

幼馴染「そうだけど!うん!その通りだけど!!」

男「はあ??」

幼馴染「うう……」

男「??」

幼馴染「うー!!」

男「大丈夫か?熱でもあるんじゃねーか?」

幼馴染「熱なんて、ないよ」

男「どれどれ」ピト

幼馴染「あっ……」

男「ん……ちょっと暖かいような……」

幼馴染「お、男くんの手が冷たいだけっ///」

男「そうか。俺はお前がいなきゃ困るからな、風邪引かないでくれよ」

幼馴染「え……?」

男「幼馴染が起こしにきてくれるから遅刻しないで済んでるし」

幼馴染「目覚まし代わりとして困るってこと!?」

男「ああ」

幼馴染「むー!!なにそれ!!」プンプン

男「あと幼馴染は朝から元気だから、俺も元気を分けてもらってる」

幼馴染「え……?」

男「お前が休みだと俺も調子狂うんだよ」

幼馴染「!」

男「だから幼馴染にはいつも元気でいて欲しいと思ってる」

幼馴染「男くん……!!」パァァァ

幼馴染「そうだよね!!ゲームなんかより、やっぱり現実の方が大事だよね!!」

男「ゲーム??あっ!!そうだ!早く帰って夫婦限定ミッションやらなきゃ!!」

幼馴染「え??」

男「悪い!待ち合わせしてるんだ!先帰るわ!!」

幼馴染「え?え?」

男「じゃあな!!」タタタタタ

幼馴染「ええぇぇぇ!!?」

――幼馴染 自室

幼馴染「男くんのバカ!!バカバカバカ!!」ポスポス

幼馴染「まさか男くんと女ちゃんがゲーム内で結婚してるなんて……今頃二人は……うーー!!」バタバタバタ

幼馴染「で、でも所詮ゲームだし……」

幼馴染「それでも嫌なものは嫌だよぉぉ……」

幼馴染「男くん……昔、結婚の約束してたのに……忘れちゃったのかなぁ……」

幼馴染「幼稚園の頃だもんね、覚えてないよね……」

幼馴染「……」

幼馴染「あの二人ってお互いの事知ってるのかな?」

幼馴染「もし知ってて結婚したなら……」

幼馴染「…………」

幼馴染「…………うー!!」

幼馴染「ゲームだもん……」

幼馴染「別に気にしないもん……」

――朝 男自室

幼馴染「男くん起きて、朝だよ」ユサユサ

男「んん」

幼馴染「男くん!」ユサユサ

男「んんん」

幼馴染「ご飯食べる時間なくなっちゃうよ!」ユサユサ

男「……」ムクッ

幼馴染「やっと起きた!」

男「……」バタン

幼馴染「って!寝るなーー!!」ユサユサユサ

男「……」ムクッ

幼馴染「もー!いつもより起きるの遅いっ!」

男「ふわぁぁぁ……昨日盛り上がっちゃって……むにゃむにゃ」

幼馴染「!!!?」

男「ふわぁぁぁ」

幼馴染「も、盛り上がったって……ゲームのこと?」

男「ん」コクン

幼馴染「そう、なんだ……」

――通学路

男「今日は幼馴染がいなきゃ本当にヤバかった、間違いなく遅刻してた」

幼馴染「男くんのお母さんに頼まれてるから……」

男「ああ、毎日悪いな」

幼馴染「ううん、男くんのお父さんとお母さん朝早くに出社しちゃうし……」

男「ああ。うちの家族みんな幼馴染には感謝してるよ」

幼馴染「……」

男「それに家の合鍵渡すくらい信頼してるし」

幼馴染「…………」

男「まぁ幼馴染にとっては、家が隣ってだけで面倒な役割を押し付けられて災難だろうけど」

幼馴染「そんなこと……ないよ……」

男「まぁ、いつまでも甘えてるわけにはいかないし、俺もしっかりしなくちゃな」

幼馴染「いいよ」

男「?」

幼馴染「男くんはそのままでいいよ、もっと私に甘えていいよ」

男「いやいや、そういうわけにはいかないだろ」

幼馴染「男くんは……嫌?」

男「嫌というか……いつまでも幼馴染に迷惑かけるわけにはいかないし」

幼馴染「……」

男「ほら、さっさと行くぞ!」

幼馴染「……うん」

――朝 B組 教室

幼馴染「ねぇ……女ちゃん」

女「なぁに?」

幼馴染「……ううん、なんでもない……」

女「どうしたの??なにかあった??」

幼馴染「えと……あのね、変なこと聞いちゃうけど、いいかな?」

女「うん?」

幼馴染「き、昨日言ってたプロポーズしてきた人って……知ってる人?会ったことある??」

女「え??うん、知ってるし会ったことあるけど……それがどうしたの?」

幼馴染「!!!!」

女「あ、やっぱりプロポーズの内容気になる??」

幼馴染「……」

女「??」

幼馴染「ご、ごめん、、ちょっと用事思い出した」タタタタタ

女「ちょ、幼!?」

――女子トイレ

幼馴染「もしかしてとは思ってたけど……」

幼馴染「二人はお互いのこと分かってて結婚したんだ……」

幼馴染「うう……ぐすっ……」

幼馴染「大丈夫、ゲームだもん……大丈夫」

幼馴染「深い意味はないはず……」

幼馴染「ない……よね?」

――昼休み A組 教室

親友「あ!そういえばミッションどうだった?」

男「12周してやっと目当ての素材ゲットしたぞ」

親友「12周!?やり過ぎっしょ!!」

男「おかげで寝不足だわ……ボスだけ連戦できたらここまで苦労せずに済んだのに」

親友「あのミッションは再受注して1からやり直さなきゃいけないからね」

男「ああ、付き合ってくれたギルマスには感謝しかない」

親友「ははは!間違いない!」

男「結婚も解消したし、またのんびりソロプレイを楽しむわ」

親友「あ、別れたんだ」

男「ああ、元からそのつもりだったし」

ガラガラ
ヒョコ

女「男くん、ちょっと」チョイチョイ

男「あれ?女さん……珍しいな」

親友「本当に珍しいね、僕はいいから行ってきていいよ」

男「ああ」ガタッ スタスタ

男「どうしたの?」

女「男くんに少し聞きたい事があるんだけど……」

男「聞きたい事??女さん一人?」

女「ええ」

男「幼馴染は??」

女「その幼馴染についてよ」

男「……?」

――中庭

男「幼馴染の様子がおかしい??」

女「ええ、心当たりはない?」

男「たしかに昨日からちょっとおかしいかも……」

女「男くんと幼って登下校いつも一緒じゃない?なにか知ってるかなって思って」

男「うーーん」

女「些細な事でもいいから教えて」

男「昨日、歩きスマホを注意された」

女「歩きスマホ?」

男「うん、ゲームしながら歩いてたからそれを怒られた」

女「ゲーム?」

男「今流行ってるオンラインのRPGのやつ」

女「あ、それ私もやってる」

男「マジで!?意外なんだけど!」

女「って、今はそんなことはどうだっていいわ。それより他に心当たりはない?」

男「そうだなぁ……」

男「昨日一緒に帰ってる時に、幼馴染を置いて先に帰った……のはマズかったかも」

女「はあ!?なんでそんな事するの!?」

男「ゲーム内で約束があってさ」

女「呆れた……」

男「そう考えると今日の朝も……」

女「今朝??なにかあったの?」

男「深夜までゲームしてたせいで中々起きられなくてさ、その事を話したら……なんか少し元気がない感じだった」

女「またゲーム……」

男「もしかして幼馴染の様子おかしいのって……俺のせい?」

女「そうかもね。最近かまってあげてる?」

男「それは……」

女「まぁ……今は色々なイベントが開催されてるから気持ちはわかるけど、現実を疎かにしちゃ駄目じゃない」

男「うぐ……でも俺と幼馴染は別にそういう関係じゃないし」

女「はあ??それ本気で言ってるの?」

男「実際そうだろ」

女「はぁ……こんな調子じゃ幼も大変ね……」

男「……は?」

女「とにかく!幼の前ではゲームを控える事!ゲームの話題もね」

男「ああ、うん。そうするよ」

女「ところで誕生日プレゼントはなにか用意してるの?」

男「誰の?」

女「誰のって……幼の誕生日に決まってるじゃない!!」

男「ああー、うん、そういえばそうだったなー」

女「ありえない!!アンタら昔っからの付き合いでしょ!?そんな大事な事も忘れてたの!?」

男「先週までは覚えてたぞ」

女「誕生日は明後日よ!?今忘れてちゃ意味ないじゃない!!」

男「…………」

女「その様子じゃなにも用意してないのね」

男「明日休みだし買いに行く」

女「はぁ……」

男「……」

女「ガラス細工の猫の置物なんてどう?」

男「は?」

女「この前一緒に買い物したときに、あの子ソレにすごく食い付いてたのよ」

男「マジか!!その情報は助かる!!」

女「なんなら画像送るけど……ってお互い連絡先知らないわね」

男「んー」スッ

男「“知り合いかも?”の一覧にいないかなぁ」ポチポチ

女「どれどれ」ヒョイ

男「ある?」

女「あ、これ私」

男「追加していい?」

女「どうぞ」

男「ほい、完了!」

女「じゃあ画像とショップ情報送っておくから」

男「ありがとうございます!!」

――2F 廊下

幼馴染「…………」ジーー

親友「あれ?幼馴染ちゃん、こんな所でなにしてんの?」

幼馴染「…………」ジーー

親友「ん??どこ見て――ってあれは……男と女さん」

幼馴染「…………」ジーー

親友「ねぇ幼馴染ちゃん」ポン

幼馴染「はぇ!?」ビクッ

幼馴染「あ、親友くん……」

親友「珍しいね、一人なんて」

幼馴染「そ、それは……うん」

親友「なにか悩み事??」

幼馴染「…………」

親友「??」

幼馴染「親友くんは……男くんがゲームで結婚してること知ってる?」

親友「うん?知ってるけど……それがどうしたの?」

幼馴染「その相手が……女ちゃんってことも知ってる?」

親友「ええ!?」

幼馴染「親友くんでも知らなかったんだ……」

親友「いやいや、それはないよ!!」

幼馴染「男くんがプロポーズした朝に、女ちゃんもプロポーズされたって言ってた……」

親友「えええ!?てか女さんもあのゲームやってるの!?」

幼馴染「うん、だから……偶然にしては出来すぎてるなって思って……」

親友「でも男の結婚相手はたしか……」

幼馴染「??」

親友「………………」

幼馴染「???」

親友「いや、なんでもないよ」ニコッ

幼馴染「……」

親友「それにしてもゲームとはいえ男が女さんと結婚なんて、ねぇ」

幼馴染「うん……二人とどう接していいかわからなくなっちゃって……」

親友「あの二人あんまり接点なさそうなのに」チラッ

男「――――」
女「――――!」

親友「仲良さそうだね」

幼馴染「…………」

親友「幼馴染ちゃん」

幼馴染「?」

親友「一人で抱え込んじゃだめだよ?僕でよければ話くらい聞くから」

幼馴染「……うん」

親友「なんなら今日の放課後、少し話さない?」

幼馴染「え?……で、でも……」

親友「幼馴染ちゃんのモヤモヤした気持ちを一旦吐き出そう!ね?」

幼馴染「う、うん」

親友「あ、そろそろ教室戻らないと!じゃあ今日の放課後、校門前で待ち合わせね!」

幼馴染「うん……ありがと。じゃあね」

親友「うん。ばいばい」

――――

親友「男の結婚相手が女さん?そんな事ありえないのになぁ」

親友「でも……ふふ、これを利用しない手はないよね」

――放課後

親友「幼馴染ちゃん迎えに来ないね」

男「そうだな」

親友「…………」

男「女さん曰く、様子がおかしいって言ってたが……」

親友「今日のお昼はその事を話してたの?」

男「ああ、うん」

親友「ふーーん」

男「たまには俺から迎えに――」

親友「ねぇ男」

男「ん?」

親友「幼馴染ちゃんの事、どう思ってる?」

男「はあ?どうした急に」

親友「いいから答えて」

男「どうって……家が隣同士で生まれた時から一緒にいるから家族みたいなもん……かな?」

親友「じゃあもし……幼馴染ちゃんに恋人ができたらどう思う?」

男「あいつに恋人?そんなこと考えた事もないし、想像もつかないな」

親友「あのね男、ひとつ忠告しておくけど」

男「?」

親友「今の日常がいつまでも続くとは思わない方がいいよ」

男「は?どういう意味だ?」

親友「言葉通りだよ」ニコッ

男「……」

――放課後 B組

ガラガラ

男「あれ?」キョロキョロ

女「え?男くん?」

男「あ、女さん!幼馴染は?」

女「……知らない」

男「知らない!?」

女「てか、男くんを迎えに行ったんじゃないの!?」

男「来てない。俺はてっきり女さんと一緒にいるのかと思ってた」

女「幼とは……」

男「ん?」

女「幼とは朝少し話したっきりで、それ以降は避けられてる」

男「ええ!?なんで!?」

女「こっちが知りたいわ」

男「ダメだ……電話も出ない」

女「幼……」

男「あいつ基本的にスマホはバッグに入れてるから気付かない事の方が多いんだ」

女「そう……」

男「一回家に帰って、幼馴染の様子を見に行くよ」

女「その方がいいわね。お願いしていいかしら?」

男「もちろん!原因は俺にあるっぽいし、幼馴染と話してみる」

女「なにか分かったら……教えてほしいな」

男「了解」

女「もし私に原因があるならちゃんと謝りたいし……」

男「そうだね」

女「……」

男「今から帰りだよね?よかったら途中まで一緒に帰らない?」

女「ええ、そうね」

――校門前

親友「遅くなってごめん!待たせちゃったかな?」

幼馴染「ううん……」

親友「落ち着けるお店知ってるからそこに行こうか」

幼馴染「あの、友くん!やっぱり今日は男くんと帰ろうと思うの……」

親友「え?……どうして?」

幼馴染「友くんの言うように、私……一人で抱え込んでた」

親友「……」

幼馴染「だから男くんとキチンとお話したいって思ってて……」

親友「幼馴染ちゃんは平気なの?」

幼馴染「うん。心配してくれてありがとう。友くんの言葉のおかげでちょっぴり勇気がでたよ」ニコッ

親友「…………」

幼馴染「ごめんね、私これから男くんのところに行くから……それじゃあ――」

親友「待って!」

幼馴染「?」

親友「今、男の所に行くのはやめた方がいいと思うよ?」

幼馴染「どうして?」

親友「だってほら、下駄箱のところに」

幼馴染「!!!」

男「――」
女「――!」

親友「“夫婦”で仲良く帰宅するみたいだよ?」

幼馴染「……」

親友「これから二人でゲームでもするのかなぁ……それとも放課後デートかな?」

幼馴染「そ、そんな……」

親友「どうする?男のところに行く?」

幼馴染「え、あ……うう」

親友「それとも僕と一緒に過ごす?」

幼馴染「か、帰るっ!」

親友「え!?あれ!?」

幼馴染「バイバイっ!!」タタタタタ

親友「はは、ちょっとイジワルし過ぎたかな」

――下駄箱

女「あれ!?」

男「どうしたの?」

女「今、校門に幼がいた気がする」

男「校門??」チラッ

男「ん??幼馴染はいないけど代わりに親友がいるぞ」

女「親友くんが?なんで?」

男「さあ……」

女「幼を見たか聞いてみましょう」

男「そうだな」

――校門前

親友「やあ!お二人さん」

男「いきなりだけど、幼馴染を見なかったか?」

親友「さっきまでここにいたよ。少し話して帰って行ったけど」

男「そうか……急いで追いかけたら間に合うかも!」

女「ええ、任せていいかしら?」

男「うん」

女「いい?明後日の日曜日は幼の誕生日よ、来週までに仲直りすること!」

男「はぁい」

親友「…………」

男「じゃあな!二人とも!」

女「ええ、さようなら」

親友「またねー」

男「ああ!」タタタタタ

親友「……」

女「どうしたの?神妙な顔して」

親友「また二人は元通りになっちゃうのかなぁって思ってね」

女「……まるで仲直りしてほしくない、みたいな言い方ね」

親友「僕にとっては今の状態の方が都合がいいんだ」

女「それってどういう意味?」

親友「言葉通りだよ」ニコッ

女「……」

親友「ねぇ女さん」

女「なに?」

親友「男にプロポーズされたって本当?」

女「男くんにプロポーズ!?そんな事された覚えはないわ!」

親友「やっぱり幼馴染ちゃんの勘違いか」

女「勘違い……親友くんそこらへんの事詳しく聞かせてもらえないかしら?」

親友「それは……女さん次第かな」ニコッ

女「私次第?」

親友「僕に協力するって約束するなら教えてあげるよ。どうする?」ニコニコ

女「…………」

――――
――

男「はぁはぁ……幼馴染!!」

幼馴染「え!?」ビクッ

男「はぁ……おい、ついたぁ……」

幼馴染「男くん!?どうして……?」

男「何も言わずに一人で帰るなんて随分水臭いじゃないか」

幼馴染「そ、それは……」

男「幼馴染の様子がおかしいって女さんが凄く心配してたぞ」

幼馴染「……」ムスッ

男「なにかあったのか?」

幼馴染「男くんは女ちゃんが心配してるから追いかけてきたの!?」

男「はぁ?」

幼馴染「別に私なんて追いかけずに、女ちゃんと一緒に帰ればよかったのに!」

男「ちょっと待て!なんでそうなるんだ!?」

幼馴染「だって!ゲーム内で結婚するくらい仲良いんでしょ!?」

男「はあぁぁぁ!!?俺と女さんが結婚!?」

幼馴染「私、知ってるもん!」

男「いきなり何を!俺は女さんと結婚してないから!」

幼馴染「え……そ、そんなの嘘だもん!!」

男「嘘じゃないって!そもそも女さんがこのゲームをやってる事は今日初めて知ったんだぞ?」

幼馴染「で、でも女ちゃん、プロポーズの文面みて嬉しそうにしてたし……」

男「ていうか……女さんは俺にプロポーズされたって言ってたのか?」

幼馴染「それは…………」

幼馴染「あれ?」

男「ちなみに俺があのゲームで結婚した相手は男の人だ」

幼馴染「え……ええぇぇぇ!!?」

男「夫婦限定のイベントに参加するために協力してもらっただけで、今はもう結婚すら解消してる」

幼馴染「解、消?」

男「イベントのために結婚して、今はもう離婚してるってこと」

幼馴染「…………」

男「つまり、全部お前の勘違いだ」

幼馴染「かん、ちがい……?そ、そんな、嘘だよ……だって」

男「嘘じゃないっつーの!」

幼馴染「ほ、ほんとに?」

男「ああ、本当だ」

幼馴染「あ、あ……あわわわわわわ!!!」

男「はぁ……」

幼馴染「ど、ど、ど、どうしよう!!私、女ちゃんに酷い態度とっちゃったよぉぉぉ!!」

男「女さんは俺に相談するほど悩んでたぞ?」

幼馴染「ふぇ……ううう……」

男「大丈夫。ちゃんと説明したら分かってくれるから、落ち着いたら連絡とればいいよ」

幼馴染「うぅぅ……うん」コクコク

男「まったく」

幼馴染「うう……ごめんなさい」シュン

男「大体、ゲーム内の結婚くらいで大袈裟なんだよ」

幼馴染「え……」ピクッ

男「まぁ生まれた時から家族同然に育ってきたから、お前の気持ちもわからなくはないが……暴走するほどか?」

幼馴染「だ、だって……」

男「それに……今までずっと一緒にいたけど、いつかは離れ離れになる日がくる」

幼馴染「…………え?」

男「いつまでも一緒になんていられないんだ」

幼馴染「!!!!」

男「それでも――」

幼馴染「男くんのバカーーー!!!バカバカバカ!!」

男「なっ!?」

幼馴染「もう知らないっ!!嫌いっ!!!バカ!!」

男「ちょ!話を最後まで――」

幼馴染「男くんの嘘つき!!バカ!!」

男「は!?嘘つき!?てか、さっきからバカって言い過ぎだろ!」

幼馴染「本当の事だもん!!もう起こしてあげないもん!!全部遅刻しちゃえ!!」タタタタタ

男「はぁ!?」

クルッ

幼馴染「べーーーっだ!!!」タタタタタ

男「ガキかあいつは……」

――幼馴染 自室

幼馴染「はぁぁぁぁ」

幼馴染「男くんのばか……」

幼馴染「むぅ……」

幼馴染「女ちゃんとのことは私の誤解だったみたいだけど……」

幼馴染「そうだ!!女ちゃんに電話して謝らなきゃ!!」

ゴソゴソ
ピッ

幼馴染「あっ……」

幼馴染「男くんから着信履歴……」

幼馴染「あれ?知らない番号からも着信が……メッセージも」ポチポチ

『親友です。女さんから連絡先を聞きました。落ち着いたら連絡ください。』

幼馴染「親友……くん?どうして?」

幼馴染「どうしよう……連絡した方がいいのかな?」

幼馴染「男くん……」

幼馴染「むっ、知らないっ!」

幼馴染「…………」ピッ

幼馴染「あ……もしもし」

親友『幼馴染ちゃん!連絡くれて嬉しいよ!』

――男 自宅

男「長いな、まだ話し中……か」

男「謝ろうと思ったけど、女さんと電話でもしてんのかな?」

男「…………」

男「明後日は幼馴染の誕生日……」

男「プレゼントは明日買いに行くからいいとして、明後日までに機嫌も良くなってるよな?」

男「…………」

男「誕生日か……」

男「てか忘れるわけないだろ。何年一緒にいると思ってんだ」

男「うし!」

男「女さんには悪いけど、自分で選んだモノを渡すか」

男「日頃の感謝の気持ちを込めて多少は奮発してやろう」

男「さて今年はどうすっかなぁ」

――日曜日 誕生日当日

男「幼馴染のやつ、まだへそ曲げてんのか!?」

男「電話はでない」

男「メッセージはスルー」

男「いつもなら一晩経てばケロっとしてるのに、今回はやけに強情だな」

男「そっちがその気なら……家は隣なんだ、こっちから突撃してやる!!」

男「いざ!!」

――幼馴染 玄関

男「え?遊びに……でかけた??」

幼母「そうなのよ。たしか、親友くんって言ってたわね」

男「親友!?」

幼母「あら?聞いてないの?」

男「う、うん……」

幼母「え、なに、あなた達……喧嘩でもしてるの?」

男「喧嘩というか、一方的に怒らせてるというか……」

幼母「ああ、いつもの事ね」

男「まあ……うん」

幼母「帰ってきたら男くんが来たってこと伝えておくから」

男「宜しくお願いします。じゃあ俺はこれで……」

幼母「またいつでもいらっしゃいね!」

男「うん、それじゃあ」

――男 自宅

男「どういうことだ?」

男「今日は幼馴染の誕生日で……親友と遊びにでかけている……?」

男「…………」

ピロン

男「ん?女さんからのメッセージ?」ポチッ

女『偶然見かけたんだけど、どうなってるの!?』

男『は?なんのこと?』

ピロン

女『二人が仲良さそうに歩いてるところを見掛けたの!!』

男『二人?』

女『百聞は一見にしかずよ、これを見て』

ピロン

男「画像が………………え?」

女『どっからどう見ても幼と親友くんでしょ?』

男『そうだな』

女『仲直りしたんじゃないの!?』

男『誤解は解いたけど……また怒らせてしまった』

女『はぁ……何してんのよ……』

女『このままじゃ親友くんに幼をとられちゃうけど、男くんはそれでいいの?』

男「……とられる……」

男『それは幼馴染が決めることで俺が決めることじゃない』

女『まぁ男くんがそれでいいなら、私は構わないけど』

男「………………」

女『じゃ、明日学校でね』

男『うん』

男「親友と幼馴染が二人で遊んでるだけだ。別に深い意味はないだろ」

ズキズキ

男「くそっ……なんだこれ、胸が……」

男「…………」

男「いつまでも一緒にいられない……って俺が言ったことじゃないか」

男「…………」

男「親友と幼馴染が……」

ズキズキ

――朝 男の自室

男「!!」ガバッ

男「何時だ!?」

男「やばっ!!遅刻する!!」

男「てかいつもなら幼馴染が……」

男「幼馴染が…………」

男「きてない……のか……」

男「はは、は……マジか……」

男「結局プレゼントも渡せないままだし、いつか離れ離れになるって言っても……急すぎるだろ」

男「…………」

男「はぁ……」

男「とりあえず学校行くか」

――朝 A組 教室

ガラガラ ピシャン

男「…………」スタスタ

親友「おはよ!男ってば遅刻なのに堂々としすぎ」

男「あ……おお」ジー

親友「どうしたの?」

男「いや……なんでもない」

親友「ほら授業始まっちゃうよ!」

男「ああ」

――昼休み

男「なぁ親友、ちょっと話したい事が――」

親友「ごめん男!!これから一緒ご飯食べる約束してて!」

男「約束?」

親友「うん、幼馴染ちゃんと」

男「!!!」

男「そ、そうか」

親友「放課後なら……あ、放課後もダメだ」

男「…………」

親友「話があるなら、夜電話してくれる?」

親友「なんでも答えるからさ」ニコッ

男「…………」ズキズキ

親友「じゃ、僕は行くね」

男「ああ……」

――放課後 廊下

男「あ」

幼馴染「あ」

男「今帰りか?」

幼馴染「う、うん……」

男「俺もだから、一緒に帰る?」

幼馴染「ご、ごめん……今日は親友くんと……その……」

男「ッッ!!」ドクンッ

男「そ、そっか……邪魔して悪かった」ドクンドクン

幼馴染「……」

男「じゃあ俺は行くから」

幼馴染「う、ん」

男「……」

幼馴染「……」

男「あのさ――」

親友「幼馴染ちゃん、お待たせ!」

男「!?」

幼馴染「あ……親友くん」

親友「じゃあ行こうか」

幼馴染「う、うん」

男「…………」

親友「今日は遅くなるってご両親に伝えてくれた?」

幼馴染「う、うん……時間は大丈夫だよ」

親友「ふふ、よかった」ニコニコ

男「お、俺は先帰るから、じゃあな二人とも」ズキズキ

幼馴染「あ……」

親友「男!」

男「ん?」

親友「連絡するなら夜遅く、日付変わる頃にお願いね」ニコッ

男「……」

親友「じゃ、僕らも行こうか?」

幼馴染「うん……」

――B組 教室

ガラガラ

男「」ヒョイ

モブ「男じゃん、どうした?」

男「ん、人探し」

モブ「幼馴染さんなら先帰ったぞ」

男「いや、女さんを」

モブ「女さん?女さんも先に帰ってるけど」

男「そう、か」

男「あ!そうだ!」

モブ「ん?」

男「今日の幼馴染と女さんの様子、どうだった?」

モブ「はあ?いつも通り仲良かった感じだけど、それがどうした?」

男「いや、それならいいんだ。じゃあな」

モブ「おー」

――夜 自宅

男「幼馴染と女さん、仲直りできたみたいだな」

男「よかった」

男「本当よかった」

男「…………」

男「親友のやつ……夜中に連絡して、か」

男「別にわざわざ――」

親友『あのね男、ひとつ忠告しておくけど』
親友『今の日常がいつまでも続くとは思わない方がいいよ』

ドクン

男「く……」ズキ

男「やっぱり、そういうことなのか?」ズキズキ

男「いや、まだそうと決まったわけじゃ……」

男「明日になれば元通りになってるかもしれない」

男「連絡は……」

男「しないでおこう……」

――朝 男宅 自室

ユサユサ

幼馴染「起きて、朝だよ」

男「!!」ガバッ

幼馴染「あ、おはよ」

男「幼馴染……!!」

幼馴染「……」

男「よかった……もう起こしにきてくれないのかと思ってた……」

幼馴染「男くんのお母さんに頼まれてるし……」

男「ああ!それでもよかった!これで元通りに――」

幼馴染「き、今日で!今日で、最後……だよ……」

男「…………え?」

幼馴染「ごめんね……」

男「どう、して……?」

幼馴染「…………」

男「幼馴染?」

幼馴染「ご飯食べて学校に行こ?」

男「…………」

――通学路

幼馴染「……」ポチポチ

男「……」

幼馴染「……」ポチポチ

男「なぁ、最後かもしれないって……どういう意味だ?」

幼馴染「……」ポチポチ

男「てか歩きスマホ……前に注意したお前がしてちゃダメだろ!」

幼馴染「……」ポチポチ

男「聞いてるのか?」

幼馴染「……」ピタッ

男「ったく、珍しいな。一体なにを見てたんだ?」

幼馴染「男くん、あのね」スッ

男「ん?」

幼馴染「私、男くんがハマってるゲーム始めたの」

男「は?ゲーム??」

幼馴染「うん。一昨日の私の誕生日から親友くんに勧められて」

男「親友に……?」

幼馴染「うん……それでね……それで……」

男「それで?どうした?」

幼馴染「今、プロポーズされた」

男「ぷろ、ぽーず……?」

幼馴染「うん」

男「う、受けるのか……?」

幼馴染「男くん」

男「な、なに?」

幼馴染「いつか離れる日がくるんだよね?ずっと一緒にはいられないんだよね?」

男「そ、それは!!違くて――」

幼馴染「男くん、私結婚する事になったよ」

ドクンッ

男「な……」ズキズキ

幼馴染「私は……例えゲーム内でも、どうでもいいと思ってる人とは結婚しないよ」

男「え……」ドクンドクン

幼馴染「だからこうやって朝起こすのも、一緒に登校するのもこれで最後になると思う」

男「そ、そんな……幼馴染……」ドクンドクン

幼馴染「ごめんね、男くん」

男「あ……あ……」ドクンドクン

幼馴染「じゃあ私、先に行くから……」

男「…………」ドクンドクン

幼馴染「さようなら男くん」

ドクンッ‼︎

男「!!!」

タタタタタ

男「あ……あぁ……」ストン

男「俺は……馬鹿だ……」

男「今になって自分の気持ちに気付くなんて……」

――昼 男宅 自室

男「はぁはぁ」

男「学校サボって……俺はなにをしてるんだ……?」

男「親友と幼馴染のことを考えると……胸が苦しくて」ドクンドクン

男「吐きそうになるくらい辛くて……」ドクンドクン

男「それなのに、どうして……」

男「どうしてこんなに……」ドクンドクン

――翌日 教室

親友「男!!大丈夫!?」

男「親友……」

親友「昨日、無断で学校休んだ男のこと皆心配してたんだよ!?」

男「みん、な?」

親友「うん!僕も女さんも、もちろん幼馴染ちゃんだって!みんな心配してたよ!!」

男「それは、悪かったな……」

親友「スマホも繋がらなかったし……あ、メッセージ見てくれた?」

男「メッセージ?」

親友「見てないの!?」

男「スマホは……ああ、充電切れだな」

親友「男……」

男「……」

親友「昼休み、みんなで集まろう。もちろん男もだよ、いいね?」

男「ああ……」

――昼休み

幼馴染「男くん!!」

男「ん、ああ、幼馴染……」

幼馴染「ご、ご、ごめんなさい!!」

男「どうして謝るんだ?」

幼馴染「それは……」

女「ちょっと男くん、大丈夫?顔色悪いけど」

男「ん」

親友「……僕から説明してもいいかな」

男「説明?」

親友「うん。僕と幼馴染ちゃんの関係を」

男「っ!」ドクンドクン

親友「関係といっても……実はなんにも変わってないんだ」

男「は?」ピタッ

親友「付き合ってもないし、ゲーム内で結婚もしてない」

親友「ゲーム内で結婚したのは女さんと幼馴染ちゃんの二人だよ」

男「え…………」スーー

親友「僕はね、男から幼馴染さんを奪うふりをして、男の嫉妬心を煽っていただけなんだよ」

男「なんだ……それ」

親友「こうでもしなきゃ、男は自分の気持ちに正直になれないでしょ?」

男「……」

親友「男にとって幼馴染ちゃんが如何に大切な存在か気付いてほしかったんだ」

男「……」

親友「無断欠席するほどショックだったんだよね?」

男「それは……まぁ……」

親友「ごめんね、こんな方法しか思い付かなくて」

男「……」

幼馴染「男くん……本当にごめんなさい……」

男「はは、いや、いいんだ」

親友「女さんにも事情を話して、無理言って付き合ってもらったんだよ」

女「ええ。実は幼の誕生日の日は三人でいたのよ」

男「……」

女「偶然でもあんな写真撮れっこないし」

男「そうだったのか」

女「あまりいい気分しないよね?ごめんなさい」

男「……」

幼馴染「私も……わざと突き放すようなことしちゃって……」

親友「あれも僕の指示なんだ。ほんとにごめんよ、男」

男「ああ、おかげで色んな事に気付かされたよ。だから謝らないでくれ」

幼馴染「私も、男くんと離れて気付いたことがあるの」

男「気付いたこと?」

幼馴染「やっぱり私は、男くんとずっと一緒にいたい」

男「!!」

女「あらっ」

親友「おお」ニヤニヤ

幼馴染「離れるなんて寂しいこと言っちゃ嫌だよ……」

男「そう、だな。うん、俺も同じ気持ちだ」

幼馴染「本当?」

男「ああ」

親友「おっと、お昼休みもそろそろ終わりだよ?」

女「あとは放課後、二人っきりでどうぞ」ニコッ

男「ああ」

――放課後 男宅 自室

男「……」

幼馴染「男くん、やっぱり昨日までのこと怒ってる……?」

男「いや、怒ってないよ」

幼馴染「でもずっと……帰り道も無言だったし……」

男「それは……」

幼馴染「なにか考え事?」

男「……」

幼馴染「今なに考えてるのか……教えて欲しいな……」

男「なぁ」

幼馴染「??」

男「親友とは……本当に何もなかったのか?」

幼馴染「親友くん?何もないよ!!」

男「……」

幼馴染「信じてもらえないかもしれないけど、本当になにもないよ!!」

幼馴染「一昨日の事だって、あれは女ちゃんと二人でゲームしてただけだし!」

男「なんだ……何もないのか……」

幼馴染「え……?」

男「……」

幼馴染「なにか、あってほしかったの……?」

男「……」

男「幼馴染、聞いてくれ」

幼馴染「えっ?う、うん」

男「俺は幼馴染の事が好きだ」

幼馴染「!?」

男「もちろん異性として、幼馴染のことが好きなんだ」

幼馴染「お、男くん……」

男「気付いたのはつい最近だけど、ずっと昔から幼馴染の事が好きだったんだと思う」

幼馴染「!!」 ジワッ

男「今まであまりにも近すぎて、側にいるのが当たり前になりすぎてたから……失いそうになってやっと分かったんだ」

幼馴染「私も男くんのことが好き!!大好き!!」ギュッ

男「幼馴染……」

幼馴染「私も昔からずっと、ずーーっと男くんのことが大好きだったんだよ?」ギュゥゥゥ

男「…………」

男「それと、もう一つ……正直に告白したいことがある」

幼馴染「へ?」

男「悪いけど一旦離れてくれないか?」

幼馴染「う、うん」パッ

男「幼馴染を失いそうになった時、幼馴染に“さよなら”って言われた時……」

男「頭が真っ白になって、胸が締め付けられて、吐き気がして」

幼馴染「……」

男「悲しくて、辛くて、苦しくて……そして……」

幼馴染「……」

男「興奮した」

幼馴染「…………え?」

男「軽蔑するよな?」

幼馴染「ど、どういう、こと……?」

男「俺は幼馴染が親友に寝取られることで、どうしようもなく興奮してしまったんだ……」

幼馴染「寝取られる?え??」

男「…………」

幼馴染「え、なにそれ……意味がわからないよ……」

男「俺は……俺は!!」

幼馴染「!?」

男「お前が親友に抱かれるところを想像して、性的に興奮してしまったんだ!!」

幼馴染「…………」

男「俺は幼馴染の事が好きだ、とても大切な存在だ。でも、お前と付き合う資格は俺にはない……」

幼馴染「男くん……」

男「だから……お前とは……」

幼馴染「大丈夫だよ」ギュッ

男「え……?」

幼馴染「男くんはきっと錯乱してよく分からなくなっちゃっただけなんだよ」

男「……」

幼馴染「大丈夫、これからはずっと一緒だよ?」

男「……」

幼馴染「いずれ一緒に暮らして、結婚して、子供が出来て……」

男「……」

幼馴染「そうやって二人で幸せになろ?」

男「平穏な日々だな」

幼馴染「うん、私は絶対に裏切らないから……もう男くんを不安にさせないから」

男(裏切らない?不安にさせない?)

幼馴染「だから私を信じて?」

男(それって……もうあの興奮を味わえないってことか?)

男「……」

幼馴染「男くん、大好きだよ」ギュゥゥ

男(……いや、待てよ……)

男(この先、幼馴染は俺を裏切らないかもしれない)

男(だけど、もし……もしも、そんな幼馴染が俺を裏切る時がきたら……)

男(その時、俺はどうなってしまうんだ?)

男(精神的な苦痛が大きければ大きいほど……きっとこれまで以上の興奮を味わえるんじゃないか?)

男(付き合っていく中で、幼馴染が俺を裏切るような状況を作り出すことができれば……)

男「……」ゴクリ

幼馴染「男くん?どうしたの?」

男「幼馴染……」ギュッ

幼馴染「えっ」

男「ずっと一緒にいてくれるか?」

幼馴染「うん!ずっと一緒にいる!私は男くんとずっと一緒にいたい!!」ギュッ

男(いつか訪れるその時に備えて)

男「大好きだよ幼馴染」

幼馴染「私も……大好きだよ……」

男(目の前の彼女と愛を育んでおこう)

男「ふふ」ゾクゾク



――終わり――

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom