【友人帳×ガルパン】夏目貴志「鈴木貴子、名を返そう」 (88)

???「タカシィ、タカシィィィ・・・」

貴志 ゾクッ!?

ニャンコ先生「夏目、また厄介な妖(あやかし)ものに憑かれおって」ヤレヤレ


友人帳×ガルパンだと真っ先にコレを思い浮かべるよね?

1月10日は貴ちゃんの誕生日♪

友人帳の舞台は熊本らしいね、八ツ原の森が試合会場だとみほが落ち着いてはいられなかったハズだけどそこはスルーしてくださいまし

あと友人帳はTVアニメしか知りません

それとその場限りのSS内独自設定に噛みつくの禁止!

      *
   茜
※   色
  た に
  な 
  び  ∫
 く

   *

~病院~

華「ここですね」

おばあ<もういいから帰りな!いつまでも病人扱いするんじゃないよ
おばあ<あたしの事はいいから学校に行きな!
おばあ<遅刻なんかしたら許さないよ、なんだいその顔、人の話ちゃんと聞いてんのかい?
おばあ<まったくおまえはいつも返事も愛想も無さ過ぎなんだよ
麻子<そんなに怒鳴ると血圧が・・・

優花里「・・・帰ります?」ウェェ

華「いえ、せっかく来たのですからここは突撃です」

優花里「五十鈴殿ってけっこう肝すわってますよね」

みほ「あはは」

華「失礼します」

沙織「あ、華」

みほ「失礼します」

沙織「みぽりんにゆかりんも、入って入って」

おばあ「なんだいあんた達」ジロッ

麻子「戦車道一緒にやってる友達」

おばあ「戦車道?あんたがかい?」

麻子「うん」

「あ、西住みほです」「五十鈴華です」「秋山優花里です」

沙織「私達、全国大会の一回戦勝ったんだよ」ドヤァ

おばあ「一回戦くらい勝てなくてどうすんだい」

おばあ「で、戦車さん達がどうしたんだい?」

麻子「試合が終わった後おばあが倒れたって連絡が」

麻子「それで心配してお見舞いに」

おばあ「あたしじゃなくてあんたのの事心配して来てくれたんだろ!!」

麻子「わかってるよ」

おばあ「だったらちゃんとお礼言いな」

麻子「わざわざありがとう」

おばあ「少しは愛想良く言えないのかい!」

麻子「ありがとう」////

おばあ「さっきと同じだよ!」

だから怒鳴ったらまた血圧上がるから」

沙織「おばあちゃん、今朝まで意識無かったんだけど目が覚めるなりこれなんだもん」ヤレヤレ

おばあ「寝てなんかいられないよ!明日には退院するからね」

麻子「いやだからまだ無理だっt「何言ってんだいこんなとこで寝てなんかいられないんだよ」

麻子「おばあ、皆の前だからそれくらいに・・・」

華「あの花瓶あります?」 ギャーギャー

沙織「無いけどナースセンターで借りられると思うよ、行こ」 ギャーギャー

華「はい」

おばあ「あんた達もこんな所で油売ってないで戦車に油さしたらどうだい」

みほ「え?」

おばあ「おまえもさっさと帰りな、どうせ皆さんの足引っ張っているだけだろうけどさ」

みほ「そんな、冷泉さん試合の時いつも冷静で助かってます」

優花里「それに凄く戦車の操縦が上手で憧れてます!」

おばあ「戦車が操縦できたって、おまんまは食べられないだろ」

麻子「じゃあおばあ、また来るよ」スタスタ

みほ「あ・・」オロオロ

おばあ「・・・あんな愛想の無い子だけどね」

おばあ「よろしく」ポツリ

みほ「はい」ニコッ



おばあ(あの子が戦車道を・・・因果かねえ)

北本「大会2回戦の大洗×アンツィオ、八ツ原の森でやるってよ」

夏目「へえ、そうなんだ」

西村「なんだよノリ悪いなぁ」

夏目「いや、戦車道って女子の武道なんだろ?」

西村「だからだろ、見てみろよこの一回戦の記事の写真、可愛い子が揃ってるだろ?」

北本「両校ともに前評判を覆して強豪を破ったと話題になってるな」

西村「この黒髪ロングの子スッゲー美人、やっぱ戦車道女子はレベルが高いわ」

笹田「まーた男子がくだらない話で盛り上がってる」

北本「俺と夏目は違うぞ」

西村「なんだよこの裏切り者ー!」

西村「笹田も戦車道やれば少しはイイ感じになるんじゃねーの?」

笹田「ふーん、戦車に乗らない女の子は可愛くないんだ?だってさ、多軌さん」

西村「わわっ!?うそうそ、冗談です!!」アセアセ キョロキョロ

笹田「なーんちゃって、いないわよ」クスクス

西村「ぐぬぬ」

北本「やめとけ、お前じゃ笹田には勝てねえよ」

笹田「戦車道といえばウチの学校にも昔はあったんだって、お婆ちゃんが言ってたわ」

夏目「まあ斜陽競技なんて言われてるくらいだから履修者が集まらなくなったんだろうな」

西村「・・・なあ笹田、そのカバンに付けてるマスコット」

北田「なんで包帯ぐるぐる巻なんだ?」

夏目(包帯・・・的場さんを連想するな)

笹田「ボコのこと?お隣の民子ちゃんに貰ったの、カワイイでしょ」

笹田「まだあるからあげるわ」

西村北田「えー、いらねー」

笹田「夏目くん、そのポーチ飾り気が無いから付けてあげる」コネコネ

夏目「あ、ちょっと」(いや変に断るのもおかしいか)

~帰り道~

夏目「そういえば戦車道の試合、八ツ原でやるんだろ、大丈夫なのか?」

田沼 「寺の事か?父さんは乗り気だけどな」

西村「うわ、俗っぽい」

夏目「?」

北本「知らないのか?試合での損壊は全部保証の対象だ」

田沼「むしろ縁起物ってくらいだからな」

夏目「へぇ」

田沼「古寺だけでなく俺の部屋も新しくしてもらいたいくらいだ」

北本「ははっ、そりゃいいな」

西村「つー訳で試合見に行くからな」

北本「どんな訳だよ」

田沼「おっともう別れ道か」

北本「じゃあな夏目」

西村「風邪ひくんじゃねーぞ」

夏目「ああ、また明日な」

一ツ目「なっつめっ様~♪、今お帰りですかな」

牛頭「お帰り、お帰り」ヤンヤヤンヤ

夏目「なんだ中級達か」

一ツ目「これから犬の会で宴会ですぞ、ここは夏目様にも是非」

夏目「俺は酒は飲めないんだ、いつも言ってるだろ?」

一ツ目「まあそう言わずに、そりゃ!」カツギアゲッ

牛頭「そりゃそりゃ!」カツギアゲッ

夏目「わわっ!?やめろーー!!」ワッショイ ワッショイ

ニャンコ先生「ウィ~、酒もっと持ってこーい!」ヒック

一ツ目「斑様、始めるのが早うございますぞ」

牛頭「早い早い」

ニャンコ先生「おぅ夏目も一緒か」ピョン カタノリッ

夏目「うわっ、酒臭っ!」

ニャンコ先生「ふっふーん、酒の良さわからんとは哀れな奴め」

一ツ目「先程夏目様と一緒に居たヒトの子の言の端に戦車道とありましたが」

一ツ目「まさか夏目様がおやりになるのですか?」

夏目「しない!俺は男だ!!」

三篠「何ぃ戦車道だとぉ!?おのれ許さんぞヒト共め!!」チリーン

夏目「三篠?」

三篠「またしても森を荒らすならば纏めて一捻りにしてくれる!」

夏目「待ってくれ三篠!」

一ツ目「いやいや三篠殿のお怒りはもっともですぞ」

牛頭「もっとも、ずっとも」ウンウン

一ツ目「チカラ無きヒトのカラクリなどでは我らは一切傷ついたりはせぬのですが」

一ツ目「木々をなぎ倒し爆発を撒き散らすあの鉄の箱は煩くて敵いませぬ」

牛頭「敵わぬ、かなめも」ウンウン

三篠「それだけではないっ!!」ドン!!

三篠「我が配下の者達がどれほどの危険に晒されるか!!」

ヒノエ「だったらその時だけ森から手下ごと離れていればいいじゃないのさ」( ゚Д゚)y─┛~~

三篠「何ゆえヒトごときに我が下手に出ねばならぬのだ?」

ヒノエ「戦車道なんだろう?当然若い娘が沢山集まるんだろうね?」

三篠「」

ヒノエ「なぜか戦車道には器量良しが多いからねぇ」ウキウキ

ヒノエ「夏目、安心おし、娘達には私が指一本触れさせないからね」

一ツ目「ヒノエはほんにブレませぬなぁ」

夏目「ハハハ」

ニャンコ先生「・・・」

貴志「ただいま帰りました」

塔子「おかえりなさい貴志君、あらネコちゃんも一緒ね♪」

貴志「あれ塔子さん、なにか良いことありました?」

塔子「直接に良い事があった訳じゃないんだけどね♪」

貴志「?」

~夜~

滋「ただいまー」

貴志「おかえりなさい滋さん」

塔子「おかえりなさい、晩ごはんもう少し待ってね♪」

滋「貴志、塔子さんご機嫌だけど何かあったのか?」

夏目「いえ、わかりません」

塔子「たいした事じゃないんだけどね」

塔子「今度の日曜日、近くで戦車道の試合があるからさなちゃんと見に行こうかと」

滋「ああ、そういう事か」

貴志「もしかして塔子さん、戦車道してたんですか?」

滋「してたも何も高校時代に練習試合も含めて負け知らずの全国三連覇、しかも隊長車の乗員だからな」

貴志「それは凄いですね」

塔子「凄いのは私じゃなくて隊長のしほさんよ、私はその通信手ね」

滋「塔子さんのジャケット姿はそれはもう凛々しかった」

滋「試合後にしほさんに一目惚れした親友と一緒に告白したのはいい思い出だ」

塔子「もう滋さんてば」//////

貴志(なんか気恥ずかしいな)

~夕食~

塔子「ウフフ」

貴志「どうしたんです?」

塔子「いえね、初めてのデートを思い出して」

滋「ああ、あれは酷かった」

塔子「友達のさなちゃん、砲手の子なんだけど『塔子としほを男なんかに渡すもんですか!』といって私達のダブルデートに付いてきたのよね」

滋「映画の後に喫茶店に寄った時ついカッコつけて「何でも好きな物を頼んでいいよ」なんて言ったらもの凄い勢いで食べだしてな」

塔子「あの時の滋さんと常夫さんの顔ったらなかったわ」クスクス

滋「俺達の一週間のバイト代が30分足らずで消費されたんだぞ?今思い出しても冷や汗ものだよ」

貴志「それはまた豪快ですね」

滋「塔子さん、貴志にもアルバム見せたらどうだい?」

滋「どうだ貴志、塔子さん格好いいだろう?」

貴志「はい、颯爽とした感じの中に今と変わらない優しい雰囲気がありますね」

塔子「この子がさっき言ってたさなちゃん」

塔子「隊の中でも男嫌いで有名だったんだけど今はやんちゃ坊主二人に手を焼かされてるって幸せそうに愚痴ってたわ」

滋「でこっちが隊長のしほさん」

貴志「怖いくらいに美人ですね」

塔子「そうなの、だから下船した時も周りの男子達は尻込みして遠巻きに眺めるだけで誰も話かけようともしなかったのよね」

滋「常夫も人生で一番緊張したって言ってたな」

塔子「その告白も傑作で今でもハッキリ覚えてるわ」

滋・塔子「「ボクを西住の婿養子にしてください!!」」

貴志「それはまた・・・」

塔子「黒森峰戦車道隊は厳格な気風なんだけど流石に隊員一同大爆笑だったわ」

塔子「でもその後がしほさんのしほさんたる所以ね」

塔子『自身に好意を寄せる殿方をお前達は嗤うか?いや嘲笑った者を捨て置くか?』

塔子「一喝一睨みで即鎮まったのよね」

貴志「豪気ですね、その常夫さんという方も改めて惚れたんじゃないですか?」

滋「ああ、その通りだとも、そのおかげで僕は落ち着いて塔子さんに告白できたわけだ」

塔子「この子が操縦手の菊代ちゃん」

滋「菊代さんは、まあ、なんていうか」

塔子「菊代ちゃんはしほさんに生涯の忠誠を誓うって常々言ってたんだけど」

塔子「その時は戦車道特有のノリだとばかり思ってたの」

塔子「まさか未婚を貫いて西住家の家政婦、しほさんの秘書になるなんて誰も思いもしなかったわ」

貴志「そこまでするほどにしほさんの人柄に惚れ込んだんですね」

塔子「それでこの子が装填手のカエサルちゃん」

貴志「カエサル?外国人なんですか?」

塔子「普通に日本人よ、いつも赤いストールを巻いて古代ローマの薀蓄を披露してたわね」

塔子「卒業以来音信不通なの、元気でやっているといいんだけど・・・あれ?」

塔子「あらやだ、本名なんていったかしら?」

滋「おいおい、それはひどいなあ」

塔子「今度観に行く試合、大洗の隊長はそのしほさん達の下の娘さんなの」

滋「そうなのかい?常夫からは戦車道の無い学校に転校させたとは聞いたけど」

滋「ん、大洗?なにか聞き覚えが」

塔子「私達の高校生最後の大会、初戦で当たった相手、滋さん達と出会った時のね」

滋「ああ、あれは白熱した試合だったね」

塔子「珍しくしほさんが冷や汗を流していたわ」

滋「確かその試合を最後に戦車道が廃止されたんじゃ」

塔子「今年から再開したみたいなの」

滋「奇縁だね、昨年のあの一件の事もあるから」

塔子「ええ、しほさんも家元になったばかりで気負ってたのかしらね・・・」

塔子「もともと厳しい人ではあったんだけどみほちゃんへのあの仕打ちはらしくなかったわ」

滋「先代の圧力から娘を守りきれなかったと常夫も悔いていた」

塔子「先代の家元・・・私あの人のこと苦手だったわ」

塔子「少しのミスで平手打ちされる子もいて、あの人が指導に来る日はみんな憂鬱だったわね」

滋「・・・二人の結婚式前に常夫と二人で飲み明かした時に言ってたな」

滋「しほさんには母親が用意した縁談があったそうなんだ」

滋「同じ大学で僕は建築設計、常夫は機械整備を専攻していて、その『若い整備士が婿養子に来てくれる』」

滋『西住の家に産まれてなお自分に女学生らしい恋愛ができるなんて思わなかった』

滋「腕の中でしほさんに泣かれた事があると」

塔子「家元が反対するにも拘わらず門下生でない私やさなちゃんを傍に置いたり縁談を拒否したり」

塔子「しほさんも家元には思うところがあったのね、だからこそ負けて隙を見せる事は決してできなかった」

塔子「そしてそれは二人の娘にも」

滋・塔子「・・・・・」

滋「貴志、戦車道は女子の嗜みだ、この話はもう終わりだ」

貴志「はい」

ニャンコ先生(・・・)

~就寝前~

ニャンコ先生「塔子はともかく滋まではしゃぎおって」

夏目「とても楽しい学生生活だったんだろうな」

夏目「俺も何かに打ち込めば将来懐かしく思い出すのかな」

ニャンコ先生「ガキのくせに年寄り臭いことを」

ニャンコ先生「・・・戦車道、見に行くのか?」

夏目「ああ田沼達とな」

夏目「なんだ先生も行きたいのか?さては屋台が目当てだな?」

ニャンコ先生「バカモノ!茶化すな」

ニャンコ先生「レイコもな・・・」

ニャンコ先生「一度だけだが試合をしたことがある」

夏目「レイコさんが?」

ニャンコ先生「ヒトから疎まれ避けられていたレイコだが」

ニャンコ先生「隊員の一人が独りでいるレイコを気にかけたようでな」

ニャンコ先生「ただ試合が終わったら二度と顔を出すこともなくなったが」

夏目「それってレイコさんがいいように使われたってことか?」

ニャンコ先生「まあレイコ本人も数合わせだと言っていたが」

ニャンコ先生「しかしあのレイコがタダで利用されるタマとも思えん」

夏目「・・・それもそうだな」




――夢を見た――

レイコさんがもう一人の女子と一緒に戦車に乗っていた

操縦するのはレイコさん、もう一人が残りを担当し小型戦車を走らせている

轟音響く戦車の中で互いに怒鳴り声でやり取りするも二人共どことなく楽しそうだ

友人帳の中のレイコさんが時折り見せる人を小馬鹿にした不敵な笑みとは違う年相応の笑顔

レイコさんにも本音で話せる大切な友がいたことがなんだか無性に嬉しかった

~試合当日~

塔子「それじゃ滋さん、行ってきますね」

滋「洗濯物の取り込みとかもやっておくからゆっくり楽しんでくるといい」

貴志「俺も行ってきます」

塔子「あら貴志君も見に行くの?なら一緒に」

貴志「いえ、友達と待ち合わせしてから行くので」

滋「まあその歳で一緒にというのも照れくさいだろう」

塔子「残念、デートできると思ったのに」

滋「貴志っ!」

貴志「はい!?デートなんてしませんよ!」ビクッ

滋「付き合うなら隊長車の通信手がいいぞ、気配り上手で気立てが良くて朗らかなのは間違いない」

塔子「やだもう」//////

西村「遅いぞ夏目」

夏目「悪い、ってまだ待ち合わせ10分前だろ?」

北本「西村、張り切りすぎだ」

西村「出会いが俺を待ってるんだ!!」ムフー!!

田沼「先生もついてきたのか」

夏目「屋台のイカ焼き食わせろってきかないんだ」

夏目「ついてくるなんて言ってなかっただろ」ヒソヒソ

ニャンコ先生「行かないと言った覚えも無いがな」ヒソヒソ

~観覧会場~

ニャンコ先生(んほおおお~!!夏目あそこにイカ焼き売ってる、早く早く!!)ジタバタ

夏目「わかったから落ち着いてくれ」ヤレヤレ

西村「なあ大洗の陣地に行ってみないか?」

北本「いや流石にそれはマズイだろう」

西村「ちょっとだけなら平気だって、試合開始までまだ30分ある」

田沼「たぶん試合前でナーバスになっているだろうし止めておこう」

西村「いいや俺は行く!!」フンス

夏目「試合前の砲撃練習とかやってたら洒落にならないぞ?」

西村「いいやそれは無い!」

北本「なんでわかるんだよ?」

西村「俺は女の子とお近づきになる為にはどんな労力も惜しまない!」

西村「昨日調べた大会運営ルールに『会場入り後は発砲厳禁』とあったからな」

3人(そのやる気をもう少し勉強に活かせばいいのに・・)

ニャンコ先生 イカヤキ モグモグウマウマ

西村「おっ、いたいた黒髪の子、写真より美人だ」コッソリ

北本「なあ、やっぱりやめようぜ」

田沼「非常識は嫌われるぞ?」

西村「うーん、それもそうだな」

夏目 ポーチ ガサササ(友人帳が反応してる?)

夏目「田沼、ちょっといいか?」ヒソヒソ

田沼「ん、なんだ?」

夏目「大洗の隊員、何人いるように見える?」ヒソヒソ

田沼「何人て、見ての・・・妖怪がいるのか!?」ヒソヒソ

夏目「気配を感じるんだ」ヒソヒソ(友人帳の事は言えない)

田沼「えっと、5、3、4、4、6、全部で22人だな」ヒソヒソ

夏目「俺にも同じに見える、すまない気のせいか」ヒソヒソ

田沼「いや夏目がそう感じるのなら人の姿に化けて紛れ込んでいるのかも、カイの例もあるしな」ヒソヒソ

夏目「かもしれない、とにかくここから離れよう」ヒソヒソ

田沼「西村、話かけるにもきっかけは必要だ」

田沼「試合後なら勝ってお祝い、負けて慰めの言葉で自然に近づけるぞ?」

西村「その手があったか!」



カエサル「あいつは!?」

西村「勝った場合、負けた場合両方のパターンを用意しないとな」

北本「今日のお前かなりアグレッシブだな」

田沼「ちょっと怖いぞ?」

夏目「ははは」

シュルルルルッ マキツキッ

夏目「っ!?」(赤い布!?声が出せない)

ズサササーーッ ツレサラレッ

西村「みんなも一緒に考えてくれよー」

西村「あれ、夏目は?」

田沼「えっ!?」

北本「さっきまで居たよな?」

田沼「夏目?夏目ーー!!」タタタッ

田沼「夏目っ!どこだ?返事をしてくれー!!」

ニャンコ先生「田沼よ、夏目がどうかしたのか?」

田沼「先生っ!夏目が突然いなくなったんだ!」

ニャンコ先生「ふむ、妖ものの匂いがするな」ボワンッ

田沼「消えた!?」

斑「ええい世話ばかりかけおって!」ビュン

斑「むっ夏目の匂い、近いな」ビューン

斑「見つけたぞ!ソレはワシのものだぁ!!」ガシッ

カエサル「ぐっ、邪魔をするなあ!」シュルルルルッ マキツキッ

斑「そんな布切れでこのワシを封じれるとでも思ったか?」額 ピカー

カエサル「うわー!?」

夏目「待ってくれ先生!この妖怪に敵意は無いみたいだ」

夏目「赤い布に巻き付かれても苦痛は感じなかった」

斑「・・・チッ」ボワンッ

ニャンコ先生「・・・」

カエサル「夏目レイコ、名を返してもらう!」

夏目「レイコさんは他界した、俺は孫の夏目貴志だ」

カエサル「死んだ・・・?レイコが?」

カエサル「そうか、そうだな・・・ヒトのレイコがあの時のままの姿でいるわけもないか」

夏目「その赤いストール、お前・・・もしかしてカエサルさんか?」

カエサル「どうして私の名を!?」

夏目「塔子さんの昔話に赤いストールのチームメイトが出てきたんだ」

カエサル「塔子!?お前は塔子を知っているのか?今どうしている?」

夏目「結婚して今は主婦をしている、俺はその家にお世話になっているんだ」

夏目「今日もさなさんと一緒に試合を観戦しに来ている」

カエサル「さなも・・・そうか、二人共息災なんだな」ナミダツー

夏目「人の姿なら塔子さんに会えるんじゃないのか?」

カエサル「20年過ぎてなおこの姿では流石に会うことはかなわない」

カエサル「子供に戻る事はできてもレイコに真名を取られた時以上に齢を重ねた姿にはなれぬのだ」

夏目「ここに友人帳がある、名を返そう」

カエサル「頼む」

夏目「我を護りしものよ、その名を示せ」

友人帳 パラララ

夏目「カエサル、いや鈴木貴子、名を返そう」スウ パンッ



―――

―――――

(友人帳からのイメージ)

レイコ「zzz」スヤスヤ(木陰でお昼寝)

 ルノーFT-17 ドドドドドー

レイコ「・・・」ピョン! スタッ!

 ルノーFT-17 停車ハッチパカッ

???「まさか走っている戦車に飛び乗るとはね、流石ね夏目さん」

レイコ「ふーん、わざとギリギリ近くに走らせたんだ?堂にいった嫌がらせね」

レイコ「で、私に何か用?お団子頭さん」

???「長い髪はまとめるのは校則推奨よ!」

久子「まあいいわ私の名は久子、あなたヒマでしょ、私と戦車道なさいな」※イメージキャラ そど子

レイコ「戦車道?ずいぶんと乱暴なお誘いね」

レイコ「せっかくだけど興味無いかr「あなた単位足りてるのかしら?」

久子「他にも遅刻欠席無断早退、進級が危ないのは知ってるわよ」風紀委員の腕章チラミセ

レイコ「・・・」

久子「単位は戦車道で取れるし遅刻のほうは私の権限でなんとかできるわよ」

久子「流石に成績をいじる事はできないけど苦手な科目があれば見てあげるわ、どう?悪い話じゃないでしょ」

レイコ「なぜ嫌われ者の私な訳?他を当たればいいじゃない」

久子「今年の戦車道の選択者は私一人でね、今年限りで科目の廃止が決まったの」

久子「隊員数が足りなくてこのままじゃ大会出場もできないのよ」

久子「私はそれでも構わないけど先輩達には最後の大会なの」

レイコ「答えになってないわね、私である必要を聞いてるんだけど?」

久子「素人にいきなり乗れといっても普通は怯えて何もできないから、その点あなたは胆力だけは申し分ないわ」

久子(いつも一人でいてほっとけないのよ!)

レイコ「本当にその条件を守るんでしょうね?」

久子「女に二言は無いわ!」

レイコ「それで他の乗員はどこにいるのかしら?」

久子「いないわよ、この戦車は二人乗りだから」

レイコ「えぇ、この見るからにポンコツにあなたと二人きり?」ゲンナリ

久子「失礼ね!」

久子「隊長、ルノーの乗員を連れてきました」

久子「これで10両目、私も試合に出してください!」

レイコ「なによ、あなたが試合したいだけじゃない」ヒソヒソ

久子「そういう事にしないと先輩の立場が無いの」ヒソヒソ

隊長「あなた、夏目さんね?」※イメージキャラ カルパッチョ

レイコ「ふーん、私ってば結構有名人?」

笹田(副隊長)「程度の低い男子どもに嫌がらせをされているのは知ってるぞ」※イメージキャラ ペパロニ

レイコ「・・・」

隊長「まあ今どき戦車道を選択する私達も奇異の目で見られる事も多いんだけどね」

久子「あんなくだらない人間に関わるだけ時間の無駄よ!」

レイコ「自己紹介はいらないみたいね、私負けるの嫌いなの」

レイコ「やるからには勝ちにいくわ、よろしく」

隊長「やる気になってくれてるみたいね、じゃあ大会一回戦だけお願いね」

レイコ「一試合?初戦敗退前提で試合に望む訳?」

隊長「相手は絶対王者の黒森峰、対抗無しの優勝候補本命なの」

笹田「しかも今の隊長は家元の娘、現師範代なんだよな」

レイコ「だから何?何度も言うけど私負けるの嫌いなの」

レイコ「久子、こんな負け犬根性の先輩に従うのは御免だわ、私達だけで勝ちにいくわよ!」

久子「ちょっと夏目さん、先輩になんて口の利き方を」

隊長「いえ夏目さんの言う通りね、やるからには勝利を目指すべきだわ」

隊長「久子、夏目さん、隊長権限であなた達に試合中の独立行動を認めるわ、好きに動いていいわよ」

久子「そんな勝手を認めていいんですか?」

隊長「どうせまともにやっても勝てないし」ウフフ

笹田「久子、お前が夏目さんに気があるのバレバレだぞ?」ヒソヒソ

隊長「これからの練習は戦車の中で密室デートね」ヒソヒソ

久子「な!?そんなんじゃありません!!」////// アワアワ

~戦車倉庫~

久子「ほら、ここも違う」

レイコ「どこ?」

久子「壬申の乱は672年、中学で習う範囲よ」

レイコ「思うんだけど歴史の年表を覚えるのに意味なんてあるのかしら?」

久子「それが決まりなんだから文句は言わないの」

久子「だいたいあなたは地頭は悪くはないんだから、ルノーの操縦だって私よりも上手くなってるし」

久子「集中すればすぐに覚えられるわ」

レイコ「歴史の出来事は文章物語として順序立てて頭に入るけど3、4桁の数字の羅列はどうもね」

久子「そこは語呂合わせでもなんでもいいから丸暗記よ」

レイコ「ハイハイ」

久子「返事は一回で!」

レイコ「はーい」




隊長「久子、最近明るくなったわね」

笹田「相変わらず夏目に小言が多いが表情から険しさが取れてきたかな」

隊長「入隊したての頃はマニュアルから外れたことは何一つ見逃してもらえなかったわね」

笹田「鬼の形相でな、怖い1年生もいたもんだ」

隊長「・・・あの二人、いい友達になれそうね」

笹田「互いにクラスでは浮いた者みたいだしな、私ら上級生だけしか話し相手がいないってのは久子にとっても良いことじゃない」

隊長「ええ、これで心置きなく最後の試合に臨めるわね」

~試合当日~

隊長「試合前の挨拶はやはり格下のこっちが出向かなきゃならないわよね」ウーン

笹田「いってら~」

隊長「あなたも行くのよ!」

笹田「隊長不在時に隊を纏めるのは私の役目ですから」キリッ

隊長「本音は?」

笹田「怖いもん」

隊長「いいから来なさい!」

レイコ「私じゃダメかしら?試合前にそのこわーい西住流師範代の顔を見ておきたいわ」

隊長「じゃあお願いするわね、誰かと違って遥かに頼もしいわ」チラッ

笹田「私もそう思う」ウンウン

久子「夏目さん、無用なトラブルは起こさないでね」

レイコ「たのもー!試合前の挨拶に来た!!」

隊長「ちょっと夏目さん、そんな喧嘩腰で」

赤星(黒森峰上席副隊長)「御足労痛み入ります、今隊長を呼びに行かせたところです」(フン、弱小校風情が)※イメージキャラ 5話のアリサ

七瀬(黒森峰次席副隊長)「今暫くお待ちを」

レイコ(戦車も大きいしウチと違って隊員もダレた雰囲気が全く無い、これは流石にムリかな)

貴子「副隊長、隊長をお連れしました」

レイコ(!?)ピキーン

西住「よくいらっしゃいまs「やあやあ久しぶり」

レイコ「元気みたいでよかったわ」ガシッ貴子に抱擁

貴子「!?」

レイコ(あなた、妖怪ね?)ボソッ

貴子「なっ!!?」

レイコ「申し訳ございませんが少し二人でお話してきてもよろしいでしょうか?」

西住「ええ、構わなくてよ」

赤星「貴子の幼馴染か、つもる話もあるだろうが試合前だ手短にな」

レイコ「ありがとうございます、ささっ゙貴ちゃん"行きましょ」

貴子「・・・」

レイコ「ここなら誰も来なさそうね」

貴子「・・・」

レイコ「今までいろんな妖怪を見てきたけどここまで堂々と人に紛れてるのは初めてよ?」

レイコ「一体何が目的なのかしら?」

貴子「私が妖怪と知ってなおその態度、そうか、お前が噂の友人帳の夏目レイコか」

貴子「安心しろ、ヒトに危害を加える事はしない」

レイコ「言葉だけならなんとでも言えるし・・・そうね私と勝負しなさい」

レイコ「私が勝てば名前を貰って本当の事を言ってもらうわ」

貴子「私が勝っても何の利点も無いんだが?」

レイコ「全部黙っててあげる」

貴子「今この場で口を利けなくすることもできるのだがな」

レイコ「あら、人に危害は加えないんでしょ?」

貴子「・・・いいだろう相手になってやる」

レイコ「どうでした、西住流の師範代さんは?」

隊長「いい人だったわ、こっちを見下すわけでもなく全力で相手をしてくれるそうよ」

隊長「あなたの方はどうだった?」

レイコ「ええ、楽しくお話できました」

レイコ「改めて確認しますが最初の約束の独立行動の件、間違い無いですよね?」

隊長「ええ、自由に動きなさい」

隊長「というよりあの西住流の隊長さんに私達の3年間をぶつけてみたくなったわね」

隊長「久子には悪いけどあなた達は員数外として扱わせてもらうわ」

レイコ「私は貴ちゃんを狙わせてもらいます」

審判「これより熊本県大会一回戦第三試合、黒森峰女学院対古内高等学校の試合を始めます」

審判「一同、礼!」

「「よろしくお願いします」」




審判「試合はじめ!!」

 ルノーFT-17 ドドドドドー

久子「ちょっと夏目さん、味方から離れすぎよ!」

レイコ「こんなボロ戦車じゃ足手まといになるだけよ、私達は偵察に徹するわ!」

久子「へぇ、以外に協調性があるのね」

レイコ「言ったでしょ、勝つためよ」

レイコ(戦車のボロさもそうだけど問題は久子に違和感を感づかれない事なのよね)

―――――

―――



貴子「賭けはいいとして何を以って勝敗とする?」

レイコ「うーん、隊としての勝負は流石に勝てそうもないし・・・」

レイコ「そうね、乗車が先に撃破された方の負けでどうかしら?コレなら明確に勝負がつくしあなたにアドバンテージがあるわ」

貴子「私はフラッグの装填手なんだが?」

レイコ「それはそっちでなんとかして、まさか隊の一番奥で引きこもるなんて真似しないわよね?」



―――

―――――

Ⅲ号装填手「貴子、どこに向かう?」

貴子(車長)「F・7地点に進路を、本隊より先行して偵察に向かうわ」

Ⅲ号操縦手「了解」

Ⅲ号砲手「威力偵察で撃破してもいいのよね?」ウズウズ

 Ⅲ号戦車 ドドドドドー

貴子(妖力で隊員全員に私とⅢ号車長が入れ替わるのとⅢ号の独立行動を不審に思わない暗示をかけた)

貴子(皆すまない、だが今回だけだ)ギリッ

 Ⅲ号戦車 ドドドドー

低級達「うわーー!」「ひえーー!」

カエル ゲコゲコ

一つ目「お助けー!」アタフタ

牛頭「お助け、お助け!」アタフタ

貴子(どこだ夏目レイコ!どこにいる!!)

 Ⅲ号戦車 ドドドドー

 ルノーFT-17 ギギーッ停車 

久子「ちょっと夏目さん、偵察とか言ってどうして試合場の端にきてるのよ?」

レイコ「前に出るだけが偵察じゃないわ、ふむ、この木でいいかな」

久子「木登りなんて危ないわ!」

レイコ「いいから久子は隊長との通信をしてて」ヨジヨジ

レイコ(樹上)「向こうで土煙上げて走ってるのウチの隊よね?あれじゃ相手に居場所を教えてるようなものよ」ユビサシ

久子「ちゃんと方位と距離を言いなさい!確かに本隊はJ・23を移動中と言ってるわ」地図ペラリ

レイコ(離れて1両で暴走してる敵戦車、アイツね)

レイコ「久子、隊長に伝えて、敵本隊がまっすぐ森の中をそっちに向かってるって」

久子「森の中にいるってなぜわかるの?」

レイコ「何の音も聞こえないのに森から鳥が次々と飛び立ってるのが見えるわ」

久子「なるほど富士川の戦いね、わかったわ」

久子「歴史の勉強が戦車道の役に立つとわね」

レイコ(本当は飛べる低級妖怪が逃げ回ってるのが見えるのよね)

~古内高視点~

隊長「笹田、聞いての通りよ」

笹田「森の中を隊列崩さず移動なんてやっぱ練度が違うよなあ」

隊長「ここは夏目さんの好意を素直に受けましょう」

笹田「何か思いついた?」

隊長「今向かっている丘の先、相手が森から抜ける辺りにいい感じに起伏があるわ」

隊長「あなたの快速戦車隊が稜線を超えた所で遭遇戦で奇襲を受けた形で混乱を装って東の狭隘地に逃げる」

笹田「なるほど、私が追ってくる敵にフタをして閉じ込めて背後から隊長の本隊が稜線を盾にして狙撃するって寸法だな」

隊長「鎚と金床戦術のアレンジよ、各車タイミングを間違えないでね」

笹田「野郎ども!派手に土煙上げて付いて来い!!」

笹田「この丘を越えたら砲撃が来るぞ、奇襲を受けて派手に逃げ回るフリをしろ、小隊全速!!」

快速戦車小隊「「おおーーー!!」」

 ドカーン ズドーン ダーン ドゴーン

レイコ「あ、味方1両やられたわ」

久子「なんで黒森峰相手に正面からあたってるのよ!」

レイコ「副隊長、煙幕焚いて川沿いにこっちに来てる」

レイコ「なるほどね隊長さんの考えがわかったわ、久子私達も行くわよ!」

久子「勝手に仕切らないで、車長は私よ!」

久子「隊長車からの通信で作戦は理解したわ、私達は副隊長に合流するわよ」

レイコ「冗談じゃないわ、崖とに挟まれた川沿いに敵味方が集まってるのよ」

レイコ「せっかくだから一番美味しいところをいただくわ」

久子「勝手な事しないで!」

レイコ「試合に勝てば2回戦に進めて先輩達ともう少し戦車道続けられるわよ?」

レイコ「どうせならカッコイイ所を見せたいでしょ?」

久子「・・・作戦を説明して」

笹田「黒森のクマさん達しっかり付いて来てくれてるな?」

通信手「フラッグ込みで9両、もう1両は見当違いな所で偵察してると久子が言ってる」

笹田「よし小隊各車榴弾装填、2時方向の崖に発砲!落石に巻き込まれるなよ」

 ズガガガーン

 崖壁ドカーン グラララッ ズシーン

笹田「全車反転!落石を防塁にして反撃、ここで足止めする!」

笹田「流石に正面装甲を抜くのは難しい、強行突破を図ろうとして近づいてくる奴に集中砲火だ!!」

隊長「笹田達がやってくれたわ、全車落ち着いて狙って」ダーン

本隊車長A「こりゃいいや、静止目標狙い放題だ!」ズガーン

本隊車長B「よしっ、ヤークトパンター撃破!!」ダーン

本隊車長C「ラング撃破!これもしかしてイケるんじゃないの?」ズドーン

隊長「相手の1両が瓦礫を登ってるわ、全車で砲塔上面装甲を狙って!」

笹田隊車長A「重戦車とはいえ1両で私らとヤろうってか?」

笹田隊車長B「舐めやがって!」

笹田隊車長C「奴っこさんにしてみればそれでもお釣りが出るんでしょ?」

笹田「全車一旦砲撃止め、登り切るその一瞬にどてっ腹に喰らわせてやれ!」

本隊車長A「やった!キングタイガーを仕留めた!!」

隊長「この試合の黒森峰最大戦力を削いだわ!」

本隊車長B「残りの奴ら味方の残骸を盾にしてる!」

本隊車長C「あいつら士気が折れてんじゃないのか?」

本隊車長A「勝てる、あの黒森峰に勝てる!」

隊長「全車突撃!!笹田にも伝えて」

通信手「了解」

隊長「長引けば戦術の引き出しが少ないこちらが不利、このまま勝負をつけるわよ!」

全員「「おおーー!!」」

~黒森峰視点~

審判「試合はじめ!!」

西住(ティーガーⅠ)「七瀬、この試合あなたが指揮を執りなさい」

七瀬(ティーガーⅡ)「隊長自ら全力で当たると相手校の隊長におっしゃったではありませんか?」

西住「復唱なさい、この試合をあなたの次期隊長候補としての判断材料にします」

七瀬「了解!指揮権を受領します」(ここで手柄を立てれば私が上席副隊長、祓い屋なんて浅ましい家業から抜け出して戦車道で身を立てるんだ!)

赤星(パンター)「七瀬に任せてよろしいのですか?ティーガーⅡを与えるのも意外でしたが」

西住「七瀬は能力的には問題はありません、が」

赤星「西住門下ではない、と」

西住「七瀬が失敗すればそれまでの事、勝利してもこの試合の反省点を示して彼女には降格処分を下します」

西住「これからの黒森峰は西住流傘下に組み入れます、異物は不要よ」

赤星「ティーガーⅡは餞別ですか」クスッ

七瀬「全車隊列を維持して森に侵入、中心部に差し掛かったら停止、エンジンも切って!」

七瀬「・・・」 ドドドドドドー

七瀬(この音の方向、相手は定石通り東の丘陵地を押さえるつもりね)地図ペラリ ウワー ギエー

七瀬(それにしても逃げ惑う小妖共が鬱陶しいわね)ヒエー ヒャー

七瀬「全車11時方向に転進、のち散開!」

七瀬「敵を視認したら任意に発砲、ここで終わらせます」

西住(練度の高さに裏打ちされた作戦、県予選一回戦の弱小校相手には十分ね)

赤星(これは非を咎めるにも言いがかりレベルのアラ探しになるかもな)

七瀬「私の小隊が左翼、赤星は右をお願い」

赤星「了解」(フン、今の内にはしゃいでろ)

西住「私はどうすればいいのかしら?」

七瀬「隊長の手を煩わせるまでもありません、後衛で督戦を」(今日の隊長、いつになく穏やかね?)

西住「わかったわ、流れ弾に当たってもつまらないしね」

七瀬小隊ラング車長「正面、敵視認!」

 ドカーン ズドーン ダーン ドゴーン

七瀬小隊ラング車長「一両撃破!」

七瀬小隊ヤークトパンター車長「敵、東に進路を変えてます」

 プシュー プシュー プシュシュー

七瀬「煙幕?小賢しいわね、潰走の苦し紛れね」

七瀬「全車追撃戦に移行、確実に仕留めて!」

西住(七瀬、こんな見え透いた策にかかるなんて)

西住(次期隊長職に目が眩んで判断をを誤ったわね)ハッチパカッ

西住(赤星、あなたの小隊が前に出なさい)サッササッ ハンドサイン

赤星(了解)サッササッ ハンドサイン

七瀬「赤星退がって、ここから先は私の小隊だけで十分よ」

赤星「そうは言っても川と崖に挟まれて今更どうにもならん」

赤星「お前だって私の小隊の後ろについている隊長を押しのけるわけにもいかないだろ?」

赤星「今はせめて掃討戦でスコアを稼がせてくれ『次期隊長』殿」

七瀬(赤星・・・私を認めたってこと!?)

ドカーン ヤークトパンター 白旗シュポッ(七瀬小隊)

七瀬「何っ!後ろから!?」

ドカーン ラング 白旗シュポッ(七瀬小隊)

七瀬「6、7号車回頭、私達もよ、急いで!」

6号車ラング車長「拒否します、命令は赤星小隊長を通してください」

七瀬「今はそんな事を言っている場合じゃないでしょ!!」

ドカーン パンター 白旗シュポッ(七瀬小隊)



西住「七瀬、ここまでね」

西住「これより私が指揮を執ります、七瀬、いいわね?」

七瀬「隊長・・・後ろの敵に気付いていたんですか?」

西住「返答なさい」

七瀬「・・・指揮権を隊長にお返しします」ギリッ

西住「ティーガーⅡは回頭を中止して正面の敵軽戦車集団を“近接攻撃”なさい」

西住「ただし榴弾の使用は不可とします」

逸見(ティーガーⅡ通信手)「瓦礫をよじ登れと言うんですか!?そんなことをすれば車体底面と上面装甲を一度に晒す事になります!!」※イメージキャラ 小梅

七瀬「・・・やめなさい」

逸見「でもっ」

赤星「隊長が西住門下でないお前等にティーガーⅡを任せた意味、わかるな?」フフン

逸見「こんな作戦に従えるわけないじゃない!」

七瀬「試合中の故意による命令無視、最悪停学もありえるわ・・・」

七瀬「命令よ、みんな、いいわね?」

ティーガーⅡ乗員「・・・」ワナワナ

七瀬「ティーガーⅡ前進します」

 ドカーン ズドーン ダーン

西住「赤星、七瀬が相手の注意を引いている間に回頭、敵本隊に気取られないように」

赤星「了解、敵フラッグは後ろにいると?」

西住「甲目標は重戦車、前にいれば追撃中に追いついているわ」

赤星「確かに」

赤星「小隊各車へ、七瀬に道を開けてやれ」ニヤニヤ

 ティーガーⅡ キュラキュラキュラ

赤星「七瀬がやられたら敵は勢いづいて攻勢にでてくる」

赤星「逆に待ち伏せしてのこのこ出てきた所を一気に叩く、西住門下の腕の見せ所だ!!」

ズドーン ダーン ドーン

 ティーガーⅡ白旗シュポッ

西住「フラッグはこのまま正面軽戦車を牽制」

西住「赤星隊に本隊を襲われて支援に駆けつけるであろう車両を確実に撃破なさい」

操縦手「挟み撃ちは裏返せば戦力分散だという事が分かってないみたいね」ニヤニヤ

通信手「西住流相手に練度の低さを策で補おうなんて身の程知らずな」ニヤニヤ

装填手「自分達で作った瓦礫の盾に動きが制限されるなんて間抜けもいいところ」ニヤニヤ

砲手「あんな豆戦車じゃ訓練にもならないわ」ニヤニヤ

カツン コツン コン カン

西住(落石?)ハッチパカッ

 ルノーFT-17(崖の上)

西住(敵戦車!!?)

西住(迎撃!いや仰角が取れない!)

西住(赤星は間に合わない!)

西住(回避行動!いえ前は敵、後ろは味方、左右は崖と川、それ以前に相手の射角から逃げようがない!)

西住(負ける?)

西住(私が?)

西住(一回戦で?)

西住(こんな相手に?)

レイコ「迂回して崖の上に出たらまさか相手フラッグの真上とはね、ツイてるわ」

久子「何を言ってるの?これじゃ俯角が取れないわ!」

レイコ「俯角?敵は下にいるんじゃない、真正面よ!」

久子「それって・・・」サー

レイコ「一ノ谷、鵯越の逆落としよ!」

久子「イヤーー!!」

レイコ「怖いなら引き金に指だけ掛けて目を閉じてて!」

レイコ「私が車体操作で照準をつけるから合図で発砲!いいわね?」

久子「う、うん」ビクビク

レイコ「返事は“はいっ”」

久子「はいぃぃ!!」ビクビク

レイコ「あの顔!キューポラから出てるのは間違いなく西住流!」ニタァ

 ルノーFT-17 ドドドドドドー 崖下り

レイコ「今よ!!」

 ドォーン



ドガーン 白旗シュポッ

――試合後――

貴子 パシーン (平手打ちされる)

西住「貴子、何故私に殴られたか、解かるわね?」

貴子「Ⅲ号の行動が本隊との連携から外れていたからです」ヒリヒリ

西住「分かっているならばよろしい」

赤星「手柄を立てただなんて考えるなよ?西住門下生ならば当然の行動だ」

赤星「そもそもお前がアレを抑えていればこの危機を招く事は無かったんだからな」フン

貴子「承知しております」

西住「七瀬、あなたは副隊長の任を解きます」

西住「あのような無様な試合、黒森峰の名に泥を塗るものと心得なさい」

西住「いい機会だからあらためて言います、西住流は勝利を尊ぶ流派」

西住「失敗は無論のこと負けてなお良い試合だったなどという惰弱な考えは一切棄てなさい」

西住「私は母様、お祖母様とは違うと心得なさい」

赤星「西住門下たる者、我ら全員覚悟は出来ています!」

赤星「将来我が娘、孫が西住流として戦車に乗るのならば勝利の為の礎にしてくれて構いません!」(まあ戦車に乗ってれば安全だからな)

西住「二回戦以降の編成は西住門下生のみで組みます、他の者には整備を命じます」

赤星「これよりデブリーフィングを始める」

赤星「七瀬、お前たちは撤収の準備だ」ニヤニヤ

七瀬「・・・」ギリッ

-整備中-

七瀬「やめてやる!なにが実力主義の黒森峰よ!」

七瀬「結局組織である以上中枢は縁故で固められるだけじゃない!!」

七瀬「皆はどうする?」

「いまさら辞められないし・・」「機甲科から外れれば成績のことも・・」

逸見「私も続けるわ、西住流にも入門する」

七瀬「入門!?あそこまでされて悔しくないの?」

逸見「ええ、はらわた煮えくり返るほど悔しいわね」

七瀬「ならなんで?」

逸見「さっきの赤星じゃないけどもし私の子や孫が戦車道をやるのならその布石になれればいいわ」

逸見「何十年先にでも西住流の幹部になることができれば、それが私の復讐よ」

七瀬「ずいぶんと迂遠な事を考えるのね」

七瀬「でも西住に与するのなら絶交よ、学園ですれ違っても話しかけないでね」

逸見「わかったわ」

七瀬(やっぱり祓い屋を継ぐしかないのね、父さんは的場一門の中堅幹部、なら私はそこでのし上がってみせる!)

貴子「来たか」

レイコ「おまたせ」

貴子「試合は我々の勝ちだが約束は約束だ、人になりすましている理由を話すし名も渡そう」



~試合中 Ⅲ号車内~

通信手「貴子、本隊が戦闘に入ってるけど私達こんな所にいていいの?」

貴子「はっ!?」(しまった、まんまと口車に乗せられた、試合に負ければそのまま賭けも負けになる)

貴子「戦闘域に向かって!全速!!」

操縦手「わっかた」

貴子「状況は?」

通信手「挟み撃ちにされてる、かなりヤバイかも」

貴子「・・・」地図ペラリ

砲手「敵フラッグはどちらにいるか、ね」地図覗き

貴子「山を張るのは危険と考える」

貴子「迂回して崖の上から隊長の直援にはいる」

操縦手「了解、飛ばすぞ!」

 ~崖の上~

操縦手「敵発見、安全策がドンピシャだ」

砲手「撃ちます!!」

貴子「ダメだ、行進間射撃なんてそうそう当たらない」

操縦手「停止する」

装填手「ちょっと待って、あいつ崖を降ろうとしてない?」

通信手「こんな切り立った崖を?どういう事!?」

貴子「・・・はっ!!」

貴子「奴の砲口の先に隊長がいるって事だ!」

貴子「停止せずこのまま降る、フラッグの盾になるぞ!」

操縦手「あいよっ、皆しっかり何かに掴まってろ!!」

 Ⅲ号戦車 ドドドドドドー崖下り

 ルノーFT-17 ドォーン

ドカーン Ⅲ号戦車白旗シュポッ

レイコ「まあ理由は別にいいかな、あそこで私達を狙うより隊長を守るとはね」

レイコ「あの後すぐにコッチのフラッグがやられちゃったし」

レイコ「あんな戦い方をする妖怪が人に危害を加えるとは考えられないわね」

貴子「信じてくれるんだな」

レイコ「ええ、あ、でも名前は貰うわよ、あなたの言うように約束は約束よ」

貴子「ああ、あの豪胆さは流石だった、お前にならそれもよかろう」カキカキ

  ┌─┐
  |鈴|
  |木|
  |貴|
  |子|
  └─┘

レイコ「確かに名前を頂いたわ、これであなたは私の子分よ」

貴子「ああ、呼ばれたらいつでも駆けつけよう」

貴子「!?」グニャア

レイコ「どうしたの?体の形がなにか変よ!?」

貴子「このヒトの姿は依り代の人形に憑依した物、名を渡したせいで維持できなくなったというのか!?」

貴子「お願いだレイコ、やはり名を返してくれ!」

レイコ「うーん、どうしよっかな~」

貴子「頼む!!」アタマサゲ

レイコ「そうだ!」ピコーン

 カバンの中をガサゴソ

レイコ「あった、久子が訓練の合間に勉強教えるって教科書持たされてたのよね」つ世界史B

レイコ「私がパラパラっとめくるからあなたは目を閉じて指で抑える、いいわね?」

貴子「無茶苦茶だ!!」

レイコ「人の姿がいらないのなら私はそれでもいいのよ?」

貴子「くっ・・・」

 パララララ ビシッ

レイコ「えっと、古代ローマのくだりね、あなたの名前は今からカエサルよ」

貴子「」

貴子「・・・」

カエサル「わが名はカエサル、ローマの魂を受け継ぐ者!!」ストール ファサッ

レイコ「あはははは」ユビサシ

カエサル「何が可笑しい!」

レイコ「いえ、ごめんなさいね、名は体を表すとはよく言ったものだなーって」クスクス

レイコ「じゃあ私は帰るからこれからも戦車道がんばってね」ノシ

久子「いたいた、探したわよ夏目さん」

久子「今の相手校の隊員みたいだったけど何を話してたの?」

レイコ「内緒」

久子「まあいいわ、さっき黒森峰隊長が直々に挨拶しに来たんだんだけど笹田先輩ってばホント調子いいのよ?」

久子「ルノーの伏兵が見事だったと褒められたら、全部作戦通りって自慢するんだから」

レイコ「私達の独立行動は隊長の許可あっての事だからあながち嘘ではないわね」

久子「意外ね、私の手柄って自慢するかと思ってた」

レイコ「必ず勝つだなんて大口叩いていながら負けちゃったからね、先輩達には悪い事したわ」

久子「そんな事ないわよ、あなたのおかげで最後にいい試合ができたって喜んでたんだから」

久子「今度は私が約束を守る番、これからずっとみっちりと勉強見てあげるから」

レイコ「お手柔らかにね」ニコッ

 ザワッザワザワッ

妖怪A あれは友人帳の夏目レイコでは?

妖怪B おのれ、よくも森を荒らしてくれおったな

妖怪C 傍らにいるヒトの子はレイコの仲間か?

妖怪D レイコは無理じゃが奴をば代わりに喰ろうてやる

妖怪E そうじゃ喰ろうてやる

 クロウテヤル クロウテヤル クロウテヤル クロウテヤル クロウテヤル・・・

レイコ「・・・」

レイコ「ねえ久子、もう戦車道やらないの?」

久子「やるも何もこの大会を最後に戦車道隊は解散」

久子「皆それぞれ他の選択教科に振り分けられるからね」

レイコ「あんなに打ち込んでたのにずいぶんあっさりしてるのね?」

久子「戦車道を選択したのは規律が厳しいって聞いたから、実際そうでも無かったけど」

久子「自分を律するのは自分、何かに頼る必要は無いわ」

レイコ「うーん残念、せっかく必勝法があるのに」

レイコ「久子となら二人で戦車道界で一暴れするのもいいかなって思ったんだけどね」

久子(ドキッ)//////

久子「戦車道はしないけどその必勝法には興味があるわね」

レイコ「簡単よ」



レイコ「相手を脅迫するだけでいいんだから」

久子「なっ!?」

レイコ「もっとも脅し方にポイントがあるんだけど」

レイコ「相手は車長、それも隊長に心酔してる事が絶対条件ね」

レイコ「『あなたの隊長の個人的なスキャンダルを握っている』と囁くの」

レイコ「それだけで相手は意のままね」

久子「やめて」

レイコ「この場合事実である必要は無いわ、大衆の耳目を集めそうな下品な噂レベルのほうが効果的ね」

久子「やめてって言ってるでしょ!」

レイコ「大切に育てられた人間は自分よりも他人を思いやるから」

レイコ「裏切り行為も敬愛する隊長の名誉を守ると自分に言い聞かせt パシーン

久子「夏目さん、あなたって人は・・・」ワナワナ

レイコ「痛いわね」ホッペタヒリヒリ

久子「さっきの相手校の・・・まさか試合前の挨拶について行ったのは?」

レイコ「そうよ、そんな都合よくフラッグを狙える位置に付けれる訳ないでしょ?」

レイコ「あそこでアイツが正気を取り戻すのは計算外だったけど」

レイコ「ああ、久子ってばそれで怒ってるのね?大丈夫、次はもっと上手くやるから」

久子「ふざけないで!!自分が何をしたかわかってるの!?」

久子「そんな卑怯な手段での勝利に何の意味があるのよ!」

レイコ「ずいぶんとつまらない事にこだわるのね、楽に勝てるならそれでいいじゃない」

レイコ「どうやらあなたとは上手くやれそうにないわね」

レイコ「こうなると遅刻取り消しとかの約束も守って貰えそうにないみたいね」

久子「私はあなたとは違うわ、約束は必ず守る!」

久子「約束した以上不本意でも勉強だって面倒見るわよ!」

レイコ「遅刻の方だけでいいわ、これ以上あなたと顔を合わせるなんてごめんよ」

レイコ「これからも精々お堅く真面目に正論吐いて生きていけば?じゃあね」フフン

久子「・・・」ブルブルワナワナ



久子「私は自分の信念に従うだけ、誰になんと言われようとも決して節を曲げたりしないわ!」ナミダツー



 ザワッザワザワッ

妖怪A 何やら仲違いを始めたようじゃ

妖怪B なんじゃ、あのヒトの子はレイコの仲間ではないのか

妖怪C ならば捨て置け

妖怪D げに忌々しきは夏目レイコ

妖怪E 口惜しや口惜しや 




レイコ「・・・」フフッ

―――――

―――



(友人帳からのイメージ終わり)

ニャンコ先生「しかし鈴木貴子という名前、妖モノでありながらまるでヒトの名ではないか?」

カエサル「この名は主(ぬし)様に付けていただいたものだ、侮辱は許さぬ!」

貴志「コラ、先生!」

ニャンコ先生「フン」プイッ

カエサル「この国において最も多い鈴木姓は例え妖怪であっても決して特別な存在ではないと」

カエサル「そして貴子の名は誇りを持って生きよと」

貴志(俺の両親も貴の字にそんな意味を願ってくれたのかな)

カエサル「・・・夏目、友人帳をいれているポーチのクマのマスコット」

カエサル「お前もボコが好きなのか」

貴志「いやクラスの女子に無理につけられたんだ」

カエサル「そうか、うちの隊長がそのキャラに入れ込んでいるのでな」

貴志「かつての主人と今の隊長、同じくらいに好きなんだな」

カエサル「何故そう思う?」

貴志「話している時の表情が同じように穏やかに見えた」

カエサル「ふむ、レイコの孫のお前になら話してもいいか」

カエサル「主様は西住流の創始者でな、祓い屋でこそないがお前同様に視える者だった」

カエサル「私の正体は戦場で打ち捨てられた血染めのサラシ、歳月を経て妖怪化し止め処なくあふれる恨みと憎しみに駆られてヒトに仇なしていた」

カエサル「主様に出会ったのもそんな時だった、いつも通りに襲ったのだが逆に返り討ちにされてな」

ニャンコ先生「夏目の拳も中々だからな、貧相な身体で霊力だけは無駄に強い」

貴志「先生、話の腰を折るんじゃない」

カエサル「コホン、助かりたい為に命乞いをしたらタスキに丁度良いと穢れし呪われた私をその身に纏ってくれたのだ」

カエサル「そのまま締め頃してやろうとも思ったのだがその甘さが妙に気になりそのまま憑くことにした」

カエサル「彼女は当時始まったばかりの戦車道に入れ込んでいた」

カエサル「始めは女子供の戦争ごっこと冷ややかに見ていたのだが娘達が真摯に打ち込む姿にほだされてな、いつしか私の方が魅入られてしまった」

カエサル「やがて主様も成長し子を為し育て、そして老いて最後を迎える際に初めて私に頼み事をしてくれた」

―――西住の子達を見守ってほしい―――

カエサル「それからは西住家に娘が産まれる度に傍らで隊員として見守ってきたのだ」

貴志「西住流といえばここ熊本だろ?大洗は関東だったはず」

カエサル「私は少しばかり卦の嗜みがあってな」

カエサル「勝利に固執する昏い帳で覆われし西住家に産まれた次女に光明が見えたのだ、舞台は茨城大洗と」

カエサル「初めて戦車に乗る者にも優しく指導するその様は主様のそれと同じ、ヒトの生まれ変わりを信じざるにはいられない程に」

カエサル「周りの者はボコ好きを唯一の欠点と残念がるが包帯を巻かれたぬいぐるみを自分の姿とついつい重ねてな、愛でる姿に顔が緩むのを抑えるのも一苦労だ」

ニャンコ先生「オマエの主(あるじ)はとうの昔に死んだのだろう?気に入らぬ子孫が現れたのならとっとと離れればよいものを」

カエサル「一度でも友と呼ばれ仲間と認めあってしまってはな」

カエサル「もう見捨てる事など出来やしない」フフッ

カエサル「これから試合があるからそろそろ戻らせてもらう、対戦相手にも友がいるのでな」

カエサル「話せて良かったぞ、レイコの孫よ」

貴志「ああ、応援してる」

貴志「・・・友人帳の中のレイコさんには親友になれるはずだった友達がいた」

ニャンコ先生「はずだったとは?」

貴志「レイコさんを敵視している妖怪から巻き添えにならないように突き放したんだ」

ニャンコ先生「ならばそれこそ妖モノをけしかければよいものを、何の為の友人帳だ、まったく」

貴志「レイコさんは相手構わず勝負を仕掛けていたけど気に入らない妖怪からは名前を取ったりはしなかった」

貴志「友人は式じゃないんだ」

ニャンコ先生「どうだかな、単に人付き合いが面倒だったんじゃないのか」



他人から嫌われる事、独りでいる事に慣れすぎていたレイコさん

先生の言う通り妖怪に助けを求めると考えるより先に悪態をついて距離を取る事を簡単に選んでしまったのだろう

その友人のこれからの生き方に決して小さくはない影響を及ぼすとも思わずに

田沼「夏目っ!無事だったか」ホッ

貴志「ああ、先生が来てくれたから」

ニャンコ先生「フン、私は何もしとらんがな」

貴志「早く西村達の所に戻ろう、先生にもイカ焼きもう一本奢るぞ」

ニャンコ先生「ウホッ早くしろ!グズグズするな!」タタタッ

貴志・田沼「待ってくれ先生」

西村「あっ、夏目、どこ行ってたんだ?」

夏目「すまない、ちょっと立ち眩みがして木陰で休んでた」

北本「大丈夫なのか?」

夏目「ああ、もう平気だ」

西村「ホント夏目はもやしっ子だな」

田沼「まあそう言うなって」

夏目「早く観覧席に行こう、試合が始まる」

審判『フラッグ車P40走行不能、大洗女子学園の勝利!』



 木陰から覗き見

北本「勝利のお祝いを伝えに来たんだが」

田沼「なんか大宴会になってるな」

西村「流石にこの場での告白は無理だよ」

西村「・・・なあ、あの子」冷や汗ダラダラ

北本「ああ・・・」冷や汗ダラダラ

西村「食べるペースがおかしくないか?」

北本「大皿のスパゲティが流れるように消えてるぞ?」

西村「夏目の先生より大食いだよ・・」アゼン

北本「食べ方がきれいな分余計に怖い」

田沼「先生?流石にニャンコ先生はそこまで食べないだろ?」

夏目(以前先生がレイコさんの姿に化けて二人に奢らせた事があったんだ)ヒソヒソ

ニャンコ先生(ふむ、何やら良い匂いがするな)クンクン

ニャンコ先生(ちょっと行ってくる)タタタッ

夏目「あっこら先生!?」




「なになにこの子まん丸ー」

ニャンコ先生 ニャ~ン スリスリ

「やだなつっこーい」ナデナデ

「ピカタ食べるかな」

「食べた食べたー」

「フリットもあるよー」

ニャンコ先生 モグモグウマウマ



西村「あの猫うまいことやりやがって!」クウ~

北本「猫と張り合うな」ヤレヤレ

 裏手

カルパッチョ「貴ちゃんも装填手だったんだ」

カエサル「うん」モグモグ

カルパッチョ「最後はやっぱり装填スピードの勝負だったね」

カルパッチョ「ん?うふふふ」

カエサル「なんだよ?」ムッ

カルパッチョ「お友達が心配してるみたい」

カエサル「え?」

3人 うわわ タオレコミ

エルヴィン「生徒会がリーダーに招集をかけてる気がするんだが、取り込んでるなら私がいくぞ?」

カエサル「今行くよ」

カルパッチョ「来年もやろ、貴ちゃん」テヲサシダシ

カエサル「うん」アクシュ

カエサル「・・・貴ちゃんじゃないよ」

カルパッチョ「え?」

カエサル チラッ

3人 ソワソワ

カエサル(カエサルの名でこそ得ることのできたヒトの友)フフッ

カエサル「私はカエサルだ!」ストール フワッ スタスタ

カルパッチョ「そうね、じゃ私はカルパッチョで」カミカキアゲ

終わり

貴志「後日談、というか今回のオチ」



―藤原宅・夜―

貴子(4X)「ごめんください、夜分遅くすいません」

塔子「はーい」ガララッ

塔子「あ・・カエサルちゃん?ううん、貴子、貴子ちゃんなの!?」

貴子「久しぶりね、塔子」

塔子「今までどうしてたの?連絡もくれないで」

貴子「卒業してから南米に渡ってね、武者修行ってトコかな、その後は現地の子供達の指導をしてたわ」(という事にしておかないとな)

塔子「いくらラテン語堪能だからって・・・」

塔子「まあいいわ、ささっ上がって上がって」

塔子「滋さーん、貴子ちゃんが来たわよー」

貴子「こんばんわ滋さん、お久しぶり」

滋「いらっしゃい」

貴子「ふたりはそのまま付き合って結ばれたのね、ごめんなさいね結婚のお祝いできなくて」

塔子「まったくよ、式には出てほしかったのに」

塔子「貴子ちゃんはどうなの?」

貴子「貴子はなんかこそばゆいな、昔みたいにカエサルって呼んでほしい」

貴子「私も結婚はしたわ、娘が一人、戦車道もやってる」

塔子「もしかして大洗のⅢ号突撃砲に乗ってた赤いストールの娘さん?」

貴子「知ってるの?」

塔子「観覧席のモニターに映ってたのを見て、似てたからもしかしたらって」

貴子「とりあえずカッコイイ所を見せれたかな」

塔子「ええ、準決勝進出おめでとう」

塔子「その頬どうしたの?すごく赤いけど」

貴子「ここに来る前にさなの所に先に寄ってね、会うなりいきなり平手打ち」

貴子「ひとしきり昔話や近況に花を咲かせておいとまする時帰り際にまた平手打ち」

貴子「塔子は優しいから代わりにってね、お願いだからこれ以上ぶたないほしい」

塔子「まあ」

滋「さなさんは相変わらず塔子さん想いだね」

貴子「そうそう、二人は養子を迎えたんですって?さなに聞いたわ」

滋「正式に養子というわけではないんだ」

塔子「里子というのが近いのかしらね」

貴子「それでも・・・二人の子、なんでしょ?」

滋「ああ」

塔子「ええ」

貴子「塔子のその顔、間違いなく母親の顔よ」ニコッ

貴子「さてと、そろそろここもおいとまするわ」

塔子「もう帰っちゃうの?」

貴子「今日中にしほ達の所にも行って明日日本を発つの」

塔子「忙しくしてるのね」

貴子「そう遠くないうちにまた来るわ」

 玄関

塔子「しほさんに顔を見せに行くのなら覚悟しなさいね」

塔子「しほさんは厳しい人だけど決して暴力で人を従わせるような事はしないわ、けど」

貴子「菊代がなあ・・・」ゲンナリ

塔子「菊代ちゃんは礼節にうるさいからね、平手打ち2発飛んで来るかもね」クスクス

貴子「笑い事じゃないわy「ごめんくださーい」

左衛門佐「あの私、杉本清美とといいます、こちらに夏目貴志君がいると伺ったのですが」

貴子「左衛門佐!?何故ここに?」

左衛門佐「私のソウルネームを?その赤いストール・・もしかしてカエサルなのか!?」

貴子「この姿の私をカエサルと呼ぶ・・・え?左衛門佐もあやk」

左衛門佐(ここでそれ以上言うんじゃない!!)念話

塔子「ふたりはお知り合い?」

貴子「いや、その、娘の戦車道仲間なの」冷や汗ダラダラ

左衛門佐「カエサルさんの装填にはいつも助けられています」冷や汗ダラダラ

塔子「親子揃ってカエサルなのね、いいわねそういうの」

塔子「それで貴志君に用というのは?」

左衛門佐「そうでした、中学の時に夏目君に貸していたモノがあったのですが」

左衛門佐「私が病欠していた日に急に転校されてしまったので」

左衛門佐「試合の為に寄港したこの機会に返してもらおうかと」

塔子「貴志君なら二階にいるわ、さ、どうぞ」

左衛門佐「おじゃまします」ペコリ

塔子「貴志君にもこんな可愛い友達がいたのね」ウフフ

貴子「ここまで来たんだから私もその貴志君とやらに会っていこうか」

 階段 ミシミシ

カエサル「しかし左衛門佐も妖だったとはな、気付かないものだ」

左衛門佐「それはお互い様だ、だがエルヴィンとおりょうには隠し通さねば」

カエサル「ああ、ヒトに正体がバレたらそこには居られないからな」

左衛門佐「この部屋か、夏目殿、名を返していただくぞ」襖 ズザザッ

貴志「エルヴィン、いや松本里子、名を返そう」スウ パンッ

カエサル「」

左衛門佐「」

エルヴィン「」

カエサル「・・・」冷や汗ダラダラ

左衛門佐「・・・」冷や汗ダラダラ

エルヴィン「・・・」冷や汗ダラダラ

貴志「なんだ、知り合いなのか?」

おりょう「夏目様、名を返していただきたく」窓 ガララッ

カエサル「」

左衛門佐「」

エルヴィン「」

おりょう「」



ニャンコ先生「レイコよ、オマエは本当にヒドイ奴だ」

終わり

ガルパンを観に独りで映画館には行ける、お仲間のガルパンおじさんがいっぱいいるからね

でも友人帳は無理でした

こちらもどーぞ

オレンジペコ「大洗スレイヤー、ダージリン様」【ゴブスレ風ガルパン】
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