やちよ「魔法少女裁判よ」ひなの「私が裁判長?」 (81)

今イベのifルートです

バグに巻き込まれてここに立ててしまいました。問題がないならばこのまま続けたいと思います。R要素はありません

ねむ「それで裁判長は万年桜に頼もうと思うのだけど」

やちよ「だめね」

やちよ「あなたたちのことを信用してないわけじゃないけど、やはり万年桜の調整者が当事者では中立性に疑義がでるわ」

やちよ「万年桜の情報収集のシステムを構築しているのが里見さんともすればなおさらよ。これではとてもみんなを説得できない」

ねむ「三審制とかにしてもだめかな」

やちよ「結局裁くのがウワサなら、何審やろうが同じことよ」

うい「……」

鶴乃「でもじゃーどうするの?」

やちよ「裁判という形式をとるなら、裁判長には中立な人を頼まざるを得ないわ。たとえ私たちにその資格がなくてもね。」

やちよ「裁判以外の方法があればいいのだけど。難しいでしょうね、ほかの方法は」

廃工場にて

ひなの「――それで私に裁判長を引き受けてくれないか、と」

やちよ「ええ」

ひなの「本当なら調整屋とか、あなたや和泉がふさわしかったのだろうがな…」

やちよ「調整屋はそもそもこの裁判にかけろという声まであるくらいだから…いろはとういちゃんが私と一緒に住んでいることも周知の事実なのよね…」

十七夜「自分も、今回環君とそれなりに長い時間共闘したからな。端からみれば客観性がないように思われるだろう」

ひなの「確かに私には環いろはとの交流はあなたたちほどはない。しかしやはりアタシにそんな器は…」

十七夜「百も承知だ。そもそもそんな器の魔法少女などいない。少なくとも神浜にはな」

やちよ「しかし、だからと言って、あの二人が裁判もやらずに死ぬことも、放免となることもあってはならないと思うのよ」

ひなの「待ってくれ。二人が死ぬってどういうことだ」

十七夜「あの二人は死のうとしている。ウワサによる裁判を提案したのもそのためだ。私が直に確かめた」

やちよ「柊さんはウワサを自由に設定できる。裏を返せば自分たちが極刑になるように操作もできてしまう」

十七夜「13歳に耐えられる罪の重さではなかったということなのだろうな」

ひなの「……」

やちよ「二人が罪に生きて向き合う『儀式』についてあれこれ考えてみたのだけど、結局私たちにはこれしか思いつかなかった」

ひなの「…」

ひなの「……誰かがあの二人を裁かなければならない。その役目を引き受けられるのが私しかいないというのなら――」

裁判当日
法廷弁護人控室(調整屋別室)にて

ねむ「さて、八神やちよが弁護人になってるのはいいんだよ。僕たちが指名したからね。」

ねむ「おかしいのはここにお姉さんとういがいることだね。僕は選任した覚えはないんだけど。この中の誰かが選任したの?」

みふゆ「いえ」

みたま「……私は誰も選任してないわ」

月咲「私たちは十七夜さんがいいって言ったんだけど、『光栄至極の極みだが自分には向いていない』って」

灯火「わたくしも選任してないんだけどなー。言ったじゃない?お姉さまとういは役不足だって。向いてないって自分でも思うでしょ?」

ねむ「ここで欲不足は誤用だよ、灯火。」

灯火「一々細かいんだよ、ねむは」

うい「おかしいね」

ねむ「うん?」

いろは「うん。おかしいよね、うい」

いろは「これから裁判で極刑を受けようとしている人が、弁護人の能力を気にするなんて変だよ」

灯火「……和泉十七夜ィ」

ねむ「やれやれ、僕たちには内心の自由もないんだね」

十七夜「テロリストに内心の自由などあるものか」

ねむ「とんでもない発言が飛び出した」

いろは「それでね、なんで二人が私たちを外したのかなって話してたら、やちよさんが」

いろは「私たちに神浜中の魔法少女の憎悪が向くのを防ぐためだろうって」

灯火「わたくしたちの心を勝手に読まないでよね」

ねむ「それで?僕たちの思いは汲んでくれないのかな?僕たちがしでかしたことでお姉さんとういにみんなの憎悪が向くなんて、死ぬよりつらいことだよ」

いろは「そんなのなんてことない。私は二人が死ぬ方がよっぽどつらいよ。死ぬより辛い」

灯火「お姉さまはわたくしたちがみーんな忘れてる時からずっとそうだったよねえ。わたくしたちにそんな風に気に掛ける価値なんてないんだよ」

うい「どうしてそんなこと言うの?」

灯火「だって事実だもーん。」

ねむ「ういとお姉さんの友人にこんな罪を犯した人間はふさわしくないと思うよ、本当に。」

いろは「確かに灯火ちゃんとねむちゃんが背負っている罪は、二人で背負うには重すぎるものかもしれない」

いろは「だから、その罪を私たちにも背負わせてほしい」

灯花の漢字間違えていました。すいません

灯花「何言ってるの?お姉さまは関係ないじゃん」

いろは「あるよ。あなたたち三人は私を助けるために契約したんだよね?」

ねむ「それはそうだけど…」

灯花「きっかけがそうだっただけだよ。わたくしたちは自分のやりたいことをしただけだよ」

うい「違うよ。本来の二人はそんな人じゃないもん」

ねむ「ういは優しすぎるんだよ。君たち二人に会う前の僕たちなんてろくなもんじゃなかったんだ」

うい「違うよ!」

灯花「違わないんですー」

いろは「ねえ、二人の言う通りだと仮にしてさ、灯火ちゃんとねむちゃんは、たぶんういのことを忘れたからああなっちゃったってことなんだよね」

ねむ「そうだと思うよ。ういがいたらあんなこと絶対にしなかったとは思う」

うい「そして、私のこと忘れたのは、私を救ったから」

いろは「私とういは、確かにねむちゃんと灯火ちゃんに救われたんだよ。そしてその結果として二人があの参事を引き起こした」

いろは「だから私たちは灯火ちゃんとねむちゃんの罪を一緒に背負うって決めたの」

灯花「……」

ねむ「勝手なことを……」

やちよ「……ねえ、いろはが頑固なのは知ってるでしょう?見たところういちゃんもそうね。」

やちよ「こうなったらもう絶対にひかないわよ。どんな手段を使ってでも弁護席にたどり着いて居座るでしょうね」

灯花「……」

ねむ「もう好きにして……」

キリがいいので今回はここで区切ろうと思います

すいません。トリップだけ返させていただきます。次の書き込みの名前でやっていきます

これでいきます

やちよさんの苗字を間違えました。以後気を付けます
それでは続きを投下します

法廷(調整屋)にて

十七夜「というような経緯で我々はこの裁判を行うことを決定し、その役職者を選任した。裁判長は都ひなの、検察側に常盤ななか、遊佐葉月。傍聴席の諸君、この案に異論はないか」
……

十七夜「異議がないのであれば以降の進行役を裁判長殿に譲る。私は以後助手に徹しよう」

ひなの「引き継いだ裁判長の都ひなのだ。弁護人はすでに選任されている。七海やちよ、環いろは、環うい。なおこれは承認事項ではない。」

ひなの「判決と進行は日本の法律と判例も参照して行う。では検察側からお願いする」

ななか「本法廷での審理事項は、みなさんご存じのとおり、神浜に多大な被害をもたらした先日のワルプルギスの夜の襲来です」

ななか「かなりの規模の魔女でした、我々が一人もかけずに撃退できたこと、死者が一人も出なかったことは奇跡であり、結果論にすぎません」

ななか「これを招来させたのがマギウスの翼。本件の被告人はこのマギウスの翼の中心メンバーだった者たち、即ち柊ねむ、里見灯火、梓みふゆ、天音姉妹。およびこれに協力していた八雲みたま」

ななか「検察側は、柊ねむと里見灯火に極刑、梓みふゆに無力化刑、天音姉妹と八雲みたまに制限刑を求めます。以上です」

ひなの「弁護側反論を」

やちよ「えー、まず検察側が上げた者の中に複数名、そもそも訴追されること自体がおかしい人がいるわ」

やちよ「まず天音姉妹。彼女のマギウスの翼における役職は白羽根マギウスにの意思決定に関与できる立場ではなかった」

やちよ「これは梓みふゆも同様よ。なぜこの三人が訴追されているの?」

葉月「天音姉妹は羽根の中では別格の存在だった。マギウスの翼には天音姉妹がいると騒動前から認識していた方も多いと聞くよ。」

葉月「天音姉妹と梓みふゆはマギウスの翼の初期からの中核メンバーで広告塔としての勧誘を担い、他の羽根たちを統率していた」

葉月「マギウスの翼をここまでの組織にしたのはこの三人の責が大きい。」

葉月「特に梓みふゆはマギウスに意見できる唯一の構成員だったとされている。」

ななか「この三人はワルプルギスの夜襲来は知らされていなかった、ないし反対していたようですが、マギウスの翼が最初に起こした大事件、キレーションランドの大量殺人未遂には積極的に関与していました」

やちよ「でもキレーションランドの件は訴追されていないでしょう?」

ななか「そうでしたね。失礼しました。」

ななか「ええ。誰かを犠牲にしてでも救われたいという思い自体は完全には否定しきれません。」

ななか「それだけ切実であったことは理解します。ですから焦点を当てているのはワルプルギスの夜を招来させたことのみです」

やちよ「梓みふゆと天音姉妹がマギウスの翼に貢献してきたのは、まさに自分が救われたいという思いからよ。」

やちよ「その点では他の羽根たちとなんら変わらない。」

やちよ「天音姉妹の貢献度というのも不明確なのよね。羽根の中で上位、ということ以上のものは資料からは読み取れない」

やちよ「どれほどの権限が与えられていたのかは不明確。」

やちよ「梓みふゆについても、マギウスに意見できる立場と言っても、結局それを採用するか否かにはマギウスの絶対的な裁量があった。」

やちよ「ワルプルギスの夜招来計画は直前まで知らなかったし、反対したことでマギウスに殺されかけている。」

やちよ「ワルプルギス招来以外のマギウスの翼の行いは不問、とするならば彼女たちも訴追されるべきではないと考えるわ」

やちよ「それと八雲みたまの訴追理由、マギウスの計画に協力していたというけれど、ワルプルギス計画以外のマギウスの所業を不問とするならば、これに協力したことも不問にならないとおかしいわ」

やちよ「あれほどの組織を相手に完全に中立を保つことは難しかったでしょうし」

ななか「しかしマギウスの翼構成員は調整屋の常連でした。調整屋が記憶を見たことでワルプルギスの夜の将来を知っていた可能性があります」

ひなの「どうなんだ、マギウスの二人、ワルプルギスの夜のことを調整屋が知っていた可能性はあるか?」

ねむ「うーん。あれを思いついたのは計画の割と直前だったからね。羽根に伝わったのはさらに後だから、漏れることはないんじゃないかな」

ねむ「僕もワルプルギス計画が頭にある状態で調整屋に行った覚えはないよ。知らなかったんじゃないかな」

灯花「わたくしもねむと同じだよ」

やちよ「この二人に嘘をついてまで八雲みたまをかばう理由はないわ」

葉月「でも、マギウスはもう一人いたでしょ?アリナ=グレイはどうなのかな?」

ねむ「アリナが計画を知った後に調整屋に行ったか、だよね?正直わかりかねる。僕はほとんど別行動をとっていたから」

灯花「わたくしもずっと一緒だったわけではないからねー」

ななか「アリナ=グレイから知ることはできた可能性があるわけですね。知らなかったとは言い切れません」

やちよ「逆よ。知っていたと言い切れない限り裁くべきではない。裁判の基本よ」

やちよ「以上弁護側としては、梓みふゆ、天音姉妹、八雲みたまの訴追を取り下げることを求めるわ」

ひなの「どうなんだ検察側。そちらが取り下げないならこちらで対応することになるかもしれないが」

ななか「弁護側の主張をのみます」

あきら「ななか、中々苦しい滑り出しだね」

かこ「やちよさんは、さすが大学生って感じです」

美雨「いや、おそらくここまでは想定通りネ」

かこ「え?そうなんですか?」

美雨「ななかもマギウス以外のメンバーを裁くつもりはないと思うネ。だからおとなしく引き下がったヨ。

美雨「自由意志で参加していた構成員が多すぎる。これを全部裁くとなると、神浜の魔法少女の分断を招くことになりかねないネ。」

美雨「やっぱりワルプルギスを知っていたか知らないかで線引きする他ないと思うヨ。」

あきら「じゃあなんで訴追したのかな?」

まさら「みんなの納得を得るため、でしょうね」

美雨「そう。これはマギウスの構成員を私たちが受け入れる儀式ネ。

美雨「たとえ合理性がなくても、私たちの中にくすぶる意見は、この公開の法廷ですべて出し尽くす必要があるということネ」

あきら「となると――」

やちよ「それで次に二人への刑罰なんだけど、本気で極刑なんて適用できると思ってるの?」

ななか「それだけの惨事を引き起こしたと思いますが」

やちよ「何の法律に準拠してるのかしら?」

葉月「えーと殺人未遂?」

やちよ「日本国憲法下で殺人未遂に極刑なんて聞いたことないわ。どんな前例を踏襲してるのかしら?」

ななか「内乱罪、というのはダメでしょうか」

やちよ「それは日本の統治機構を破壊するような行為に適用される罪よ。神浜で暴れたくらいで適用されるものではないわ」

やちよ「というか、法律的には、そもそも彼女たちの年齢で極刑なんてありえないのよ」

ななか「しかしですね、日本の法律を参照するとは言っても、どこまで参照するのかという問題がありますよ」

ななか「結局のところ、これは法律に基づいた正式な裁判ではないわけです」

やちよ「可能な限り日本の法律は参照するべきだと考えるわ。そうじゃないとこれは本当にただのリンチになってしまう」

やちよ「事件としても、物的被害は甚大でも死者は出ていない。法律を参照できないレベルの例外的な重大事案ではないと主張するわ」

ひなの「検察側、反論は」

葉月「特にないよ」

ひなの「では弁護側の主張を認める」

やちよ「それとね。無力化刑だっけ?これが下されると変身できなくなるわけだけど、これが下された場合はその分グリーフシードは供給されるわけよね?」

葉月「やっぱりそうなる?」

やちよ「当然よ魔法少女が変身できないってことはグリーフシードを調達できないってことよ?極刑と同じじゃない」

ななか「そうですか」

ひなの「検察側も異論ないようだな。裁判長としては、極刑があり得ない以上、事実上の極刑も不可と考える」

いろは「やちよさん凄いです!」

ねむ「有能な弁護人というのも困りものだねえ」

灯花「被告人の意思を無視する弁護人って有能なのかなー」

ねむ「そもそも僕たちのためにまじめに働くってのが計算外だよ」

ねむ「大学生の七海やちよに頼んだ方が安心だからって、ういとお姉さんをあきらめさせるための方便のつもりだったんだけど」

やちよ「いくらなんでも極刑なんて容認できるわけがないでしょう」

うい「あれ、これ私たちいらなくない?」

やちよ「何を言ってるの。ここからがあなたたちの出番よ。」

うい「え?」

やちよ「私、極刑さえ回避できれば後はいいかなって考えてるのよ。これから先も私に任せていいのかしら?

やちよ「あとはあなたたちが勝ち取るべきだと思う」

いろは・うい「……はい!」

ねむ「いやもう本当にみんなもう帰っていいんだけど」

まさら「ここまでは計算通りなのかしら」

美雨「ななかの性格上、極刑を本心から望んでいたわけではないだろうからネ。ただ――」

まさら「厳罰は望んでいる、のかしらね?」

今回はここまでにします

投下します

ひなの「次に量刑の審議に移る。弁護側、何か主張あるか」

いろは「ええとですね、まず、そもそもことが起きた経緯なんですけど」

いろは「私を三人が助けようとして、そしたらその場にいたういが魔女になりかけて、ういをこの世界から切り離したら、二人がういを忘れてしまった、ということにあるんです」

いろは「ういはたぶん二人の心のなかの、とても大切な中心にいたんじゃないかなと思うんです」

いろは「ういのことを忘れなければ二人はこんなことをしなかっただろうと二人は言っています」

いろは「ういのことを忘れたのは、ういを助けようとしたから。これって同情すべき点ですよね?」

ななか「それは前も聞いた話ですね」

ななか「正直理解しかねる話ではあるのですが、現実として環ういさんの存在が世界から消失していたこと自体は事実のようですね」

ななか「二人の人格の中で環ういさんが極めて重大なものを担っていた、その環ういさんを忘れてしまったことで二人の人格が変わってしまったと」

葉月「ねえ、それ、いろはちゃんも含めてってことでいいの?その人格の中で極めて重要なものを担っていた、って」

ねむ「そうだと思うよ」

灯花「実際には同時に二人を忘れたわけだから、厳密には不明なのかな。心情的にはどっちもだけど」

葉月「それで、その、いろはちゃんとういちゃんがまたいなくなってしまったら、二人はどうなるのかなってのは気になるよね」

いろは「え?」

葉月「いろはちゃんとういちゃんのことを忘れてしまったからこんなことをしてしまった、二人のことを覚えていたらあんなことはしなかった」

葉月「そういう話だと、じゃあ二人がいなくなったらどうなるのかなって」

灯花「お姉さまとういがいなくなったら……」

ねむ「考えたことないよね。僕たち三人は近しい時に死んで、お姉さんだけが残されるものだとばかり思ってきたから」

葉月「魔法少女だからね。当然ながらある日突然死ぬことはあり得ることだよ」

灯花「ういとお姉さまがある日死んだら……」

ねむ「……何をしでかすかわからないかな」

いろは「!?」

灯花「わたくしたちの唯一のストッパーがなくなるわけだからね」

灯花「悲しみにくれてずっとひきこもるかもしれないし、あとを追うかもしれないし」

ねむ「二人がいなくなっても変わらず回り続ける世界に逆恨みして、全部壊してしまおうとするかもしれないね」

ねむ「あるいはマギウスとしてやったみたいに、やりたいことやりたいままにやって暴走してしまうとか」

ななか「……そういうわけですね。」

ななか「環さん姉妹が二人の中からいなくなってことを起こした、二人がいる限りもう何もしないということは」

ななか「裏を返せば二人がいなくなったら何をするかわからない」

ななか「検察側はマギウスの二人をかなりの危険因子だと考えます」

いろは「大切な人がいなくなって自暴自棄になるなんてありがちなことじゃないですか!そんなことを口にしたから危険因子ってそれは――」

ななか「先のワルプルギスの夜襲来が、まさにこの二人の大切な人がいなくなった結果です」

うい「ちょ、ちょっと待ってください!」

うい「ええとですね、もちろん灯花ちゃんとねむちゃんがしたことはひどいことですけど、始まりはお姉ちゃんを、魔法少女を運命から解放しようとしたことにあるんです」

うい「そのために私たちは契約した。そもそもの出発点はここだったんです!」

うい「想像していなかったことが起こっていろいろ歪みはしましたけど、それでも二人が過激なことをしたのは、私たち魔法少女を解放するためだったんです」

うい「そのためにマギウスの翼はずっと活動してきたんです」

ななか「目的自体は正しかったはずだ、と、そういうことですか」

うい「そうです。さっき救われるために何でもしてしまうのは分かるって話をしてたじゃないですか」

うい「灯花ちゃんとねむちゃんはみんなを救うために行動していたんです!」

灯花「悪いけど、それは違うよ、うい」

うい「……え?」

ねむ「契約したときは解放のことを第一に考えてたのはそうなんだけど、ういとお姉さんのことを忘れてからは、主に自分の目的を追究していた」

ねむ「もともと長くは生きられない身だったから、正直魔女化からの解放というものに自分自身そこまでこだわりはなくなっていたんだ」

ねむ「助けたかった人のことも忘れてたしね」

灯花「解放なんてものは目的のための手段に過ぎなかった。そもそもの目的が手段になってたんだよ

灯花「わらっちゃうよね。どこまで強欲なんだか」

ねむ「僕たちは解放をマギウスの翼の広告手段くらいにしか考えていなかった」

ねむ「ういが言うような崇高な目的のために動いていたわけではなかったんだよ」

こころ「ちょっと、赤裸々すぎない……?」

まさら「あの二人、助かろうという意思が無いように見えるわね」

美雨「結局、自分を守ろうとしない人間の弁護は難しいというものかもしれないネ。環姉妹もなかなかかわいそうな役回りネ」

ひなの「弁護側、追加したい主張はあるか?」

うい「……それでも」

うい「それでも、今、私たちは二人のおかげで魔女化から解放されてる。それは事実だと思います」

ななか「もちろんそれは理解しています」

ななか「私たちが当面魔法少女の運命から目をそらすことができるのはマギウスのおかげです。それは量刑に考慮されるでしょう

ななか「そのうえで、解放のためとは言え神浜を蹂躙されることは容認できないと、私たちはあの時立ち上がったのです」

ななか「そうですよね?環いろはさん」

いろは「はい……」

ななか「何を犠牲にしてでも救われたいと願うことは理解できます」

ななか「ただ、そんな犠牲を払うならば救われなくていいと考えている人もいるんです」

葉月「自分の存在を差し出してでも守りたいものを持っている人だっている」

葉月「君たちにもあるんだよね」

灯花・ねむ「……うん」

葉月「君たちは、そういうものを根こそぎ踏みにじろうとしたんだ」

葉月「あの騒動で自分の大切なものが壊されなかった人達の中には、むしろ君たちに感謝している人もいると思う。口には出せないだけで。」

葉月「だけどね、壊された人だっているんだよ。そういう報告も来ている」

葉月「その人たちはきっと君たちを許せない。アタシにも気持ちは痛いほど理解できる」

葉月「アタシは救われた側だけど、ちょっと運が悪ければ壊された側にいたかもしれない。その人たちの思いは汲み取りたい」

葉月「二人にもそれには向き合ってほしい」

ひなの「弁護側追加主張はあるか?」

いろは・うい「……」

ひなの「ないなら制限刑あたりになると思うが……」

葉月(二人とも涙目でプルプル震えてる)

ななか(自分の不甲斐なさに憤ってるように見えますね。弁護側の問題ではないように思いますが)

ねむ(あーあ。灯花がういとお姉さんをなかせちゃった)

灯花(ねむのせいでもあるでしょー!?)

ねむ(そりゃあね。心苦しいけど、ういとお姉さんが思ってる僕たちと実際の僕たちに乖離がありすぎるから……)

灯花(そんなきれいな人間じゃないもんねえ……)

ねむ(やぱり罰はきちんと受けないと……)

ひなの(おいおい、このまま終わるのか?まだあの話してないぞ?)

やちよ(ふたりとも。言うべきことは分かってるでしょう?)

灯花(わたくしたちは極刑希望なんだよ?)

やちよ(それはもう通らないってわかったでしょ)

ねむ(そうだけど、やっぱり検察側の話聞いたら、ますます極刑しかないんじゃないかって思うよ)

やちよ(葉月さんは生きて罪に向き合えって言ってるのよ?)

灯花(わかるよ?わかってるけどさ……)

灯花(……というか制限刑なら、ういとお姉さまにとってもよくない?事実上の最低刑だよ?)

ねむ(……でも納得してないみたい)

ねむ(後から、まだ言えることがあったって気づいて、ういとお姉さんが自責の念に駆られるのは避けたいよね……)

灯花(……うーん

灯花(…………出しちゃおっか、助け船)

灯花「ねえ、ねむ、この前ニュースで見たんだけど、司法取引ってなんなの?」

ねむ「ああ、それを使ってアメリカ大統領の元側近から証言を引き出したってやつだよね。あれは――」

ひなの(なんて白々しい……)



いろは(司法取引……)

いろは(あ!)

いろは「ええとですね!二人が作ったドッペルシステムは健在なんです!それの維持はもちろん、私たちはそれを世界に広めていく必要があると思ってるんです!」

ななか「それは、ええ。必要なことだと思います」

いろは「それについて、やっぱりもとのシステムを作った二人の力添えが必要だと思うんです」

いろは「というかこのシステムってういとねむちゃんと灯花ちゃんの魔法からできてるものなので!」

葉月「そうだねそう聞いてる。それで?」

いろは「ですから、無力化刑だと維持や今後の研究とかが難しくなる可能性もあって」

いろは「かといって変身するたびに痛みを感じる人にそんなのを押し付けるのもどうかと思うんです」

灯花(それくらいの処遇は受け入れないといけないと思うけどなー)

ねむ(まあまあ)

ななか「つまり司法取引をしろと」

葉月「日本に司法取引ってあったっけ?」

ななか「あるにはありますが、こういう、みんなのために働けば刑が軽くなる、という代物ではなかったかと」

ひなの「どうなんだ弁護側。さっきはこの法廷は基本日本法準拠って話だったが」

やちよ「魔法少女の解放は私たちにとっても切実なものよ。例外が認められるべきだと考えるわ」

ひなの「だろうな。」

ななか「しかし、そうは言っても放免というわけにはいかないでしょう?」

葉月「やらかしたこと考えるとただの監察ってのもねえ」

ひなの「じゃあ、こういうのはどうだ?」

判決主文素案

1.両被告人は都ひなの、七海やちよ、和泉十七夜の監督のもとで解放の研究と魔法少女としての活動を行う

2.両被告人のソウルジェムを、遠隔の指令が与えられることで自壊するように加工する

3.両被告人の一方、あるいは双方が何らかの大規模犯罪を犯そうとしていると認められるときは、都ひなの、七海やちよ、和泉十七夜の多数決の決定により、大規模犯罪を企てた者のソウルジェムを破壊する

いろは「人の命を多数決で奪うのはどうかと……せめて全会一致とか……」

ななか「それだと硬直するでしょう」

ひなの「環いろはの主張は正しいとは思う」

ひなの「ただ、こう言ってはなんだが、ここで七海やちよが反対したら止まるシステムを採用できるなら、そもそも裁判長は七海やちよがやっている」

ひなの「わかってくれ」

やちよ「いろは、十七夜も都さんも、信頼できる人よ」

いろは「……はい」

ななか「その和泉十七夜さんはどうなんですか?客観性に疑問があるからこそ裁判長から外れたのかと」

ななか「和泉さんと七海さんの二人が反対すれば止まるシステムになっています」

ひなの「いざとなった時に私情を捨てられるくらいの信頼性はみんな持ってるんじゃないか?」

ひなの「環姉妹とのかかわりだって七海ほどのものはないわけだから」

やちよ「弁護側としてはその素案を概ね受け入れるわ。ただ、期限が必要だと――」

あきら「落としどころが見つかったみたいだね」

美雨「弁護側と検察側、それに裁判長、それぞれにこういう相場観があったからうまくまとまっているんだろうネ」


灯花「結局こーなるのかー」

ねむ「どうする?司法取引である以上、こんな取引望んでないって言う権利もあるはずだけど」

灯花「うーん。でもわたくしたちが出した助け船だしねー」

ねむ「お姉さんとういが頑張ってくれた成果でもあるからね。受け入れようか」

うい「お姉ちゃん。決まりかけてるけど」

うい「なんだろう……これ……」

ういの言いたいことは分かる、なにかもやもやする

監察なんて処分では、みんなに受け入れられないことは分かってる
今話し合われている案は、制限刑よりは見方によっては軽い

ううん
二人が大規模犯罪を犯そうとするわけがないんだから
やちよさんと十七夜さんが判断を誤ることなんてないだろうから
ひなのさんも、今日の裁判を通して、信頼できる人だと知ったから
これはほとんど無罪と同じなんだ

二人には魔法少女の解放のための研究をこれから押し付けてしまうことになるけれど
解放を謳ってあれだけの人を集めた二人には
解放のためにこれからも行動する責任があると思う
二人もそれは受け入れているみたい

なのにどうして……このひっかかりは何……?


思えば私は、このもやもやを、裁判が始まる前から引きずっていた気がする…


……

………あ


この法廷が始まる前に言った言葉――




――だから、その罪を私たちにも背負わせてほしい――





ああ、そうか

私たちは二人の罪を背負っているのに

二人だけが裁かれて、罰を受けようとしているからなんだ

いろは「……うい」

うい「やっぱり、考えることは同じだよね」

いろは「念のため聞くけど、限りなく可能性は低いけど、死ぬこともあり得るよ?」

うい「灯火ちゃんとねむちゃんと、お姉ちゃんが一緒なら、どこにだっていけるよ」

ねむ「うい……?」

灯花「お姉さま……?」

いろは「裁判長、お願いがあります」

ひなの「うん?どうした?」

いろは「灯花ちゃんとねむちゃんが道を外した時、ソウルジェムが破壊される対象に」

いろは「私とういを含めてください」



「……」



「!?!?!?!?!?」


ひなの「何を言っているんだ……?」

うい「ですから、二人のソウルジェムが破壊されるときは一緒に私とお姉ちゃんのソウルジェムを――」

ひなの「いや、だから、なんでそうなるんだ!?」

いろは「私たち、二人の罪を背負ってるのに罰は受けないのは何か変だなって」

灯花「何がどう変なの!?意味わかんない!!」

うい「罪には罰が与えられるものでしょ?」

ひなの「実際に同じ罰を受けるやつがいるか!!そういうのは心意気で示せ!!」

ねむ「ういとお姉さんに何の罪があるって言うんだよ!」

いろは「私がもっと早く思い出していればこんなことにはならなかったってずっと後悔してるんだ……」

ねむ「そもそもお姉さんが思い出したのが奇跡なんだよ!」

うい「私、イヴになって街を破壊したり、なんかいろんなところで魔法少女を神浜に勧誘したりしてるんだよ……」

灯花「意識もなかった時にしてたことでしょー!?誰がそんなことを問題にしてるってゆーの!?そんなやつがいたら許さない!!」

うい「私だよ?」

灯花「じゃーういのこと許さない!!」

ねむ「裁判長、まさかこんな愚かしい主張受け入れられないよね!?日本のどの法律に照らしたってあり得ないよ!」

灯花「弁護人を解任する!クビだから!」

灯花「和泉十七夜!今すぐういとお姉さまをつまみ出して!こんな主張無効だから!!!!」

ねむ「そもそも僕たちはこんな弁護人選任していない!!!勝手についてきたんだ!!!」

十七夜「う、うーむ、裁判長殿の指示がないと……」

灯花・ねむ「裁判長!!!!!」

ひなの「わかってる!わかってるから!ちょっと待て!」

あきら「……急にすごいうろたえようだね」

まさら「二人にとって自分の処遇よりも余程重大なものが、天秤にかけられているのね」

フェリシア「今まで余裕しゃくしゃくって感じだったのにな。今はなんの話してんだ?」

鶴乃「あの二人が死ぬときはいろはちゃんとういちゃんも死ぬって……」

フェリシア「はあ!?なんだそりゃ!?ありえねーだろ!!おいお前らいったい何を――」

鶴乃「大丈夫だから!!やちよが絶対にそんなの認めないから!!だから落ち着いてフェリシア!」

フェリシア「これが落ち着いていられるかよ!!やちよもなんか泡吹いてるぞ!?」

さな「」

フェリシア「さなもだ!」

十七夜「というか両被告人、このうろたえようはなんだ」

十七夜「大規模犯罪をたくらまなければいいだけだと思うが」

ねむ「僕は自分をそこまで信用できない!」

灯花「そうだよ!わたくしたちはあんなことしでかした人間なんだよ!?」

ねむ「ふむ。確かに」

葉月「で、どうなのこれ」

ななか「妙手です」

葉月「そうなの?」

ななか「ええ。感動すら覚えます」

菜月「いやでも、こんなの裁判長が認めないでしょ?」


ひなの「ありえん!絶対に認めないぞそんなこと!!!」


葉月「ほら」


いろは「そうですか。じゃあ二人のソウルジェムが破壊されたことを知ったら自分で砕くことにします」


ななか「こう返されたら同じことです」

葉月「なるほど……」

ななか「もちろん、ただ単に、二人が死ぬときは私も死ぬ、なんて言われても程度の低い脅迫にしかなりませんが」

ななか「さもそれが当然のことだというように、自分にも死を与えてくれと切り出しましたからね」

ななか「常軌を逸しています。本当にやりかねないと思わせるすごみがありました。」

葉月「マギウスの二人のあの慌てようも、環姉妹なら本当にやると思ってるからこそなんだろうね」

ひなの「七海やちよ!!どうなんだ!!これはハッタリなのか!?」

やちよ「」

ひなの「七海!!」

やちよ「」

やちよ「……」

やちよ「ええと……」

やちよ「いろははブラフとかを使える娘ではないわ……」

やちよ「いろははとても頑固だから……」

やちよ「大事なものを守るために、本当になんでもできてしまう」

やちよ「自分の持っているものすべてを差し出してしまう」

やちよ「そしてそれは、ういさんも同じなんでしょうね」

やちよ「だから、本気で言ってるんだと思う……」

やちよ「本気で、二人が死んだら自分も死ぬ気なんだ……と……」

バタン

いろは「やちよさん!?」

うい「急になんで!?」

ねむ「全部君たちのせいだよ……」

十七夜「落ち着いたか、七海」

やちよ「」

十七夜「ふむ。まだ心ここにあらずか」

ひなの「とにかく無理だ」

ひなの「無実の人間が死ぬかもしれないと思ったら、たとえマギウスの二人が何かやばいことをしようとしていたとしても」

ひなの「アタシには[ピーーー]決断は無理だ」

ひなの「七海やちよは……聞くまでもないか」

ひなの「和泉、お前はどうだ?」

十七夜「うーむ」

十七夜「必要とあれば……と今は言えても、実際にその時が来たらどうかな」

ひなの「……」

ななか「監督者の三人が匙を投げましたね」

葉月「あの案は無理か」

ひなの「……環いろは!環うい!」

いろは・うい「はい!」

ひなの「ここまでやってくれたんだ。あの言葉には責任を持ってもらうぞ……」

ひなの「……さっきの監督者から七海やちよと和泉十七夜を外して、環いろはと環ういを加える!」

ひなの「両被告人は都ひなの、環いろは、環ういの監督の下で解放の研究と魔法少女の活動を行う!」

ひなの「監督者は両被告人の更生に責任を持つ!」

ひなの「ソウルジェムへの細工はなし!」

ひなの「両被告人が何らかの大規模犯罪を犯そうとしていると認められるときは、監督者は全力でそれを阻止し、叶わなかったときはしかるべき責任を取る!」

灯花「ちょっとまって!しかるべき責任!?そのあやふやな概念はなに!?」

ひなの「おのおのが取るべきと考える責任を取るということだ」

灯花「答えになってない!!」

ねむ「そんなの、さっきの流れを考えたら――」

ひなの「それ以上のことはこの場では決められない」

ひなの「異論ないか、弁護側、検察側」

ねむ「大ありだよ!」

灯花「極刑でも無力化刑でもなんだって受け入れるから!ういとお姉さまと巻き込まないで!」

ひなの「被告人の意見は聞いてない」

やちよ「弁護側から異議あり。監督者から私の名前を外さないで」

十七夜「助手からも同じく」

ひなの「……いいんだな?」

やちよ「気を使ってくれたのはありがたいけどね。私たちが責任をとらないわけにはいかないわ」

ひなの「では、監督者に七海やちよと和泉十七夜を加える」

ひなの「検察側はどうだ」

ななか「異議はないです」

ひなの「ではこれにて閉廷!」

裁判終了後
検察側控室にて

ななか「狙っていたんですかね」

葉月「七海やちよも言ってたけど、あれは狙ってないね。本気で『二人の罪を背負う』ことを実行しようとしただけと見る」

ななか「いやはやすさまじい」

葉月「末恐ろしいよ。あれは。」

ななか「……一番苦手なタイプです」

裁判長控室にて

梨花「みゃーこ先輩、お疲れー」

衣美里「大変だったねー」

ひなの「」

ひなの「ああ」

ひなの「本当に疲れた。大変だった」

ひなの「……やっぱり失敗だったかな」

衣美里「ろっはー姉妹にも監督者やらせたこと?」

ひなの「あの二人、どう考えても私たちと同じ立場にはないからな。とれる責任なんてあるはずないんだ……」

ひなの「終わった直後に謝られたが、謝るのはこっちの方だ……」

梨花「でも他にやりようなくない?」

れん「ソウルジェムを担保に取るってやり方ができなくなりましたから……後からみんなで責任とることしかできないと思います……はい」

ひなの「環姉妹があの二人のストッパーになっていることは、公判で十二分に示されたからな」

ひなの「あの二人の力がアタシたちに必要なのも間違いないし」

ひなの「みんなが納得できるようなあの二人への抑止は、もうあれ以外にないと思ったんだ。」

衣美里「それに、いろはちゃんとういちゃんに死んでもらうつもりってわけじゃないっしょ?」

ひなの「そりゃそうだが……あの二人、責任感強そうだからなあ……」

ひなの「そういう事態にならないことを祈るばかりだ……」

ひなの「環姉妹に何かあったらどうするのかってのも未解決だしなあ……」

ひなの「……やっぱり年長者が、かな」

いろは「ごめんなさい、やちよさんと十七夜さんまで巻き込んでしまって……」

やちよ「いいのよ。私が自分で決めたことだから」

十七夜「責任なんてものは自分で決めて自分で取るものだ」

やちよ「謝るならむしろこの世の終わりみたいな顔をして放心しているそこの二人に――」

十七夜「いや、どうだろう、この二人にとっては到底受けがたいのだろうが……」

鶴乃「刑としてはマシにはなってるからね……当人にとっては逆なんだけど……」

鶴乃「二人に悪いことしたと思ってないなら謝らない方がいいよ」

いろは・うい「はい」

すいません。さっきのレスに、弁護人控室にて、とつけ忘れました

フェリシア「いろは……お前、死ぬのか……?」

いろは「え?死なないよ?」

フェリシア「だよな!焦った焦った」

いろは「だって、灯火ちゃんとねむちゃんが大規模犯罪を犯すなんてありえないもん」

フェリシア「……そうなのか?」

灯花「……どうなんだろうね?」

ねむ「なんで君たちは、そんなに僕たちを無条件で信頼できるのか……」

うい「それが友達だよ。灯花ちゃんとねむちゃんも同じでしょ?」

灯花「……いや、それは、ういとお姉さまは信じるけど」

灯花「何が起こっても信じられるけど」

灯花「ねむを信頼できるかと言われると……」

ねむ「ねえ……?」

やちよ「とにかく、もう決まってしまったことだから」

やちよ「絶対に何もしでかさないでね?」

やちよ「あそこまでしてしまっては、今後何かあなたたちがしでかしたら、いろはとういちゃんはもう……」

灯花「……」

ねむ「……うん」

灯花とねむ、帰り道にて

ねむ「ねえ灯花」

ねむ「[ピーーー]なくなっちゃったね」

灯花「わたくしたちが死んだら死ぬなんて、あんな当たり前に言うんだもんね……」

灯花「……そもそも、さ、わたくしたちが誰も人を殺めずに済んだのって、結構な部分はお姉さまのおかげなんだよね」

灯花「全部を思い出した時に、わたくしたちが罪の重さに押しつぶされることがないようにって、ずっと計画を阻止してくれてた」

灯火「それでもたくさんの人たちを傷つけてしまって、罪の重さに押しつぶされたんだけど」

灯花「死人が出ていたら、日本の法律はどうあれ、やっぱり極刑、というかわたくしたち裁判を待たずに自殺していたと思う」

灯花「だから、わたくしたちが今この場に立っていられるのは、お姉さまのおかげなんだよね」

ねむ「これが自分の罪と向き合うようにと、お姉さんが僕たちに与えてくれた余生ならば」

ねむ「勝手に放棄する資格なんて、持ち合わせていなかったのかな」

ねむ「それを理解せずに楽な道に逃げようとした報いだね、これは」

灯花「……それでもわたくしたちの罰にお姉さまとういを巻き込むのは納得いかない」

ねむ「……まあ、あの流れじゃ仕方ないよ」

ねむ「後悔先に立たず。未来のことを考えよう」

ねむ「僕たちが道を誤らなければ、ういとお姉さんにこれ以上迷惑をかけることはない」

灯花「簡単に言うねえ。法廷じゃあんなに荒れてたのに」

ねむ「……」

灯花「ねむ?」

ねむ「僕自身自分の人格がよくわからないんだ」

ねむ「ういとお姉さんを忘れていたときの思考と、今の思考を比べるとあまりにも差がありすぎて」

灯花「……それは分かるよ」

灯花「目的のために大勢の人を不幸にして、[ピーーー]ことになんのためらいもなかったわたくし」

灯花「ういとお姉さまのことを思い出したとたんに罪の意識に絡み取られて、死ぬしかないと思い悩んで」

灯花「それでもせめて、自分の招いたことの後始末はつけようと動いたわたくし」

灯花「本当のわたくしはどっちなんだろう」

灯花「今のわたくしが本当なら、大丈夫だとは思うんだけど……」

ねむ「いつ前の自分が顔を出すかと思ったら怖いよ。あの時確かに僕らは人を傷つけること、[ピーーー]ことをためらわなかったんだから」

灯花「よくわからないよね、ういとお姉さまのことを思い出したとたんに罪の意識が出てくるって」

ねむ「僕たちを人間足らしめているのがういとお姉さん、ということなんだろうね」

灯花「それを忘れなければ大丈夫とは思うんだけど……」

ねむ「これから先、ういとお姉さんの記憶を失う可能性は絶無とは言えない」

ねむ「まさに僕たちがやったように魔法を使われるかもしれないし、魔法とは関係なく頭を打って忘れることだってあるかもしれない」

ねむ「……」

ねむ「ねえ、灯花、さっき言われてた、ソウルジェムを遠隔で破壊する加工って、できる……?」

灯花「え?……わたくし自身が、ってこと?」

ねむ「うん」

灯花「ソウルジェムを純粋魔法的に自壊させるのは調整屋じゃないと難しいだろうけど」

灯花「科学と魔法を合わせて外部から破壊できるようにすることは、今家に帰ってからでもできると思うよ?」

ねむ「灯花だもんね」

ねむ「それ、こっそりやってしまおうか」

ねむ「お互いに、相手がういとお姉さんを忘れたときにために」

灯花「……ちょっとは安心できるかもね」


ひなの「いや、そんなにまで自分に向き合えてるなら必要ないと思うぞ」


「!?」

ねむ「……都ひなの」

灯花「……透明人間か」

さな「ご、ごめんなさい……」

灯花「いいよ。わたくしたちもあなたにひどいことしたもん。こんなことじゃ足りないくらい」

ねむ「まあ、やっぱり僕たちに内心の自由はないんだなという感じはするけど」

ひなの「悪かったな。あんな判決だしてやっぱり死にましたってなったらかなわんからな」

ひなの「まあ、環姉妹は大丈夫だと言ってたし、それについては杞憂だったが」

ひなの「やっぱりついてきてよかったとは思うよ」

灯花「ソウルジェムの遠隔操作のやつ?ダメなの?」

ひなの「ガキが何もかも自分で始末をつけようとするな。年長者を少しは頼ってみろ」

ひなの「何より、環姉妹に胸を張ってやれないことをすべきではないと思うぞ。そんなに感謝しているならな」

ひなの「たとえその意図がなかろうと、環姉妹が身を挺して、お前たちのソウルジェムが加工されないように守ってくれたわけだから」

ひなの「その結果の束縛からの解放は、お前たちが一番尊重すべきものだ」

灯花・ねむ「……」

ひなの「おおかれすくなかれ、みんな身に合わぬ袈裟に苦しんでいるんだ。そんなに深刻になるなよ」

灯花「でもわたくしたちの袈裟は特別だよ?」

灯花七海やちよや和泉十七夜がかないもしなかったんだから」

ひなの「それはお前たちがイヴを自由に使えたからこそだろ。もうアタシたちがそんな環境を作らせない。」

ねむ「……それはそうかもね。神浜中の魔法少女から監視されているようなものだし」

ひなの「あまり好ましいものではないんだろうが……」

ねむ「それくらいでいいよ」

灯花「ほんとに頼るからね?何も小細工しないからね……?何かあったら、殺してでも止めてよね……?」

ひなの「それくらい引き受けられないなら、裁判長なんてやらないさ」

これにて完結です
html化申請しておきます

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