【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十三輪目】 (292)

このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
  楠芽吹の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです

やりたいこと

披露宴
 ・お色直しと交流
  →(夏凜、友奈、風、沙織)
  →(東郷、園子、樹)

安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
基本的には9月14日目が最終
勇者の章に関しては、2月14日目が最終

戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます

wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
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天乃「ほら、うまくできたでしょう?」

友奈「は、はいっ」

天乃「緊張、してるのね」

身体は密着させていないものの、

握る友奈の手からは震えが伝わってきて、

いつもより暖かく感じるその感覚が、

心臓の音まで教えてくれているような気がして、天乃は微笑む。

友奈の方が身長は上だが、それでも高すぎるというほどではない。

顔を上げれば、俯きがちな友奈の耳元に囁きは届くだろう

天乃「抱きしめて、あげましょうか」

友奈「っ……だ、だめですっ」

天乃「かわいいのに」

友奈「久遠さんっ」

天乃「ふふっ」


友奈にとってはとても呼びなれた【久遠さん】という呼び方

高校生の頃はまだ「久遠先輩」だったけれど

次第に先輩からさん付けに慣らしていって、変わったのだ

そこから下の名前で呼ぶようにと段階を踏んだのだが、

やっぱり、そっちの方が馴染み深いのだろう

焦った友奈のその声に、天乃は思わず笑ってしまう。

嫌味ったらしくない……嬉しそうな、笑い声

友奈「……」

恥ずかしさに赤くなっていた友奈は自分の「久遠さん」に遅れて気付いて、

けれど、天乃の幸せそうな横顔には何も言えなくて

ドキドキとする胸の奥

その興奮が冷めないままに、友奈は口を開く

友奈「可愛いのは、天乃さんもです。そうやって笑っているところが、本当に」

天乃「あら、ありがとう」


天乃は余裕たっぷりに微笑むと、

まだ二人で握ったままのナイフを一瞥して「残念ね」と零す

天乃「貴女の頬にクリームが付いていたなら、キスの一つでもできたのに」

友奈「……っ」

胸が弾む。

みんなに見られている場で――という恥ずかしさがないわけではない

けれど、結婚式ではそれをするのが通常だとみてきた友奈は、

まだ、それをしなかった分が残っていると、強引な解釈と共に、しり込みしそうな唇を噛む

友奈「しますか?」

天乃「えっ」

友奈「ケーキ、食べさせてください」

一歩踏み込む。

一矢報いる……報いるというようなものではないのだけれど

攻められてばかりではいないのだと示そうとする友奈の可愛らしい誇り顔を、天乃はじっと見つめる

天乃「それって、私の好きにして良いってことよね?」


友奈「ほ、ほどほどに――」

天乃「ダメよ」

踏み込んだ一歩を引き下げようとした友奈だが、

握られたままの手が引かれて、その場に留まる

天乃の左手がナイフの余っている持ち手の部分を掴んで引き抜き、

そのまま、右手が友奈の手を握る

積極的だ~と、賑やかな友人の面々

あらあらと困り顔の親族

天乃の視界には入らないそれらを目にしてしまった友奈は目を背けようとして、天乃と目があってしまう

天乃「ほら、目を瞑って」

友奈「……はい」

友奈は少しだけ考えて、自分に向けられるカメラを一瞥すると目を瞑る

どちらが花嫁なのか分からなくなってしまうが

どちらも花嫁なのだから問題はないだろう


目を瞑って佇んでいる友奈は、

タキシードも相極まって、男顔負けの格好良さがある

友奈はもう少し成長したかったと言っていたけれど、

控えめなプロポーションだからこその感覚を、天乃は嬉しく思う

そして、からかってみたくなってしまう

天乃「……」

天乃は見守る人たちに向けて唇に人差し指を立てて見せると、

果物を一つつまんで、クリームをすくって

天乃「友奈……」

友奈「っむっ!」

囁くように名前を呼んで、友奈の唇に押し込む

キスをされると思っていた友奈は驚いて目を見開き、

緩んだ口の中に、天乃の指がすっぽりと入っていく

天乃「キス、されると思った?」

ちゅぷ……と、指を引き抜いた天乃の意地悪な笑みに、

友奈は早鐘を打つ心臓を押さえるように息を飲んで

友奈「……して欲しかったです」

本音を漏らした


では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


遅くなりましたが、少しだけ


天乃「あー……」

泣いてはいない

ただ、とても寂しそうな顔をしているだけだ

悪いのは間違いなく天乃で

周囲の目は「責任とったほうが良い」と語っている……ように感じる。

夏凜の時のように頬にクリームが付いていない

唇はつやつやと女の子らしいが、ケーキの汚れはない。

どうするべきかと考えた天乃は、

意を決して、フルーツを一つまみして、咥える

友奈「あま――」

天乃「んっ……」

そして、唇からはみ出させた数センチを、友奈の唇に差し込む。

咥えていたパインは熟しているせいか柔らかく解けて、

果汁の甘酸っぱさと、友奈の唇の柔らかさが口いっぱいに広がる

流石に長々とするわけにはいかなくて、すぐに離れた


天乃「ん……」

口の中に残ったパインとクリームを飲み込む。

普段よりも潤ってしまう口の中の物をもう一度飲み下して、息を吐く

思ったよりも、ドキドキとしてしまった

夏凜にしたのとは違う、唇に触れてしまったキス

勢いもなく、自分の意思だったのも大きいかもしれない

友奈の手を離し、

一歩引いた天乃は手持ち無沙汰な自分の手を握り合わせて、友奈を見上げる

天乃「……満足、した?」

友奈「は、はい……っ」

天乃「そう……」

シャッター音が聞こえる

顔の赤い友奈が顔を背けると、天乃も視線を下げて、胸に手を当てる

友奈はして欲しかったと言ったけれど、触れる程度で満足したと言う

この場限りの嘘なのか、本当なのか

嘘なら良いなと、天乃はこっそり思って自分の唇を舐める。

甘くは、無かった。


風「あの二人の次とかちょっと困るんだけど」

天乃「大丈夫よ、別に変なことしないから」

風「変なことした結果があれなのに……?」

風の目は天乃の後ろ、

すでに餌食になった夏凜と友奈に向いている

夏凜に関しては驚かせただけだが、

友奈にはやりすぎてしまったと自覚のある天乃は、

風の訝し気な視線から逃れるように顔を動かす。

天乃「変な事じゃないわ……食べさせあいよ」

風「あたしは普通にやるからね」

天乃「ええ、分かってる。振りってやつよね?」

風「違うからっ」

ちょっぴり声を張り上げた風だが、

怒っているわけではないので、安心して距離を詰める

元クラスメイトのみんなは、

二度あることは三度ある……と言うのを期待しているように感じる

では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から

遅くなりましたが、少しだけ


天乃「そんなに焦らなくたっていいじゃない」

風「いや焦るわっ!」

夏凜はされるなんてわかっていなかっただろうから、

風や友奈のように何をされるのかなんて緊張感はなかっただろう

しかし、友奈はまだ頬にされるくらいならと思ったはずだ

だが、風はその両方があり得る

それ以外の場所にされる可能性もある

だから――ドキドキとする

天乃が、触れ合いの中でキスを最も好んでいると知っているから。

風「みんな、見てるんだから……」

天乃「良いじゃない、普通の結婚式だったら誓いのキスをするんだから」

風「そう言えばキスオッケーとか思ってるでしょ」

天乃「ちょっとだけ思ってる」

そうじゃないと、夏凜だけ狡い。と、後が大変になりそうだから


風「満面の笑みで答えられると困るわね」

天乃「したり顔の方がお好みかしら?」

風「普通の笑顔で良いわよ……あぁもう」

調子狂うわね。と風は困ったように零した。

調子を取り戻した天乃は手強い

歳を重ねるにつれて、大人しくなってはいたものの

それ以前に押し殺していた子供らしさの片鱗が見られることがある

今はそのはっちゃけることが許されてしまっているので、手が付けられない。

風「加減、してくれるのよね?」

天乃「もちろんよ。やりたいことをやっていたら吸い尽くしてしまうもの」

風「吸い、尽くす?」

天乃「そんなことよりも先に進みましょう?」

にこやかな笑顔で天乃は流す。

一応は頷いた風だが、吸い尽くすって何? と、

思わず半歩後退りをしてしまう


天乃「風は私の手を握――」

風「握りたい」

天乃「そ、そう?」

圧の感じられる風の勢いに天乃はたじろぐ

握られたら何をされるのか分からないと警戒してのことだろう

だが、握っていなくても何をするのかは分からないのが天乃なのだが。

じゃぁ握ってと促された風は、

ケーキの傍らに置かれていたナイフの持ち手を握る。

その手を持ち上げると、天乃の手が伸びて来て風の手を包む

風「もう少し柄の長いナイフにして貰えば良かったかも」

天乃「それでも、私は風の手を握ると思うわ

風「……そっか」

持ち手が長かろうと触れるところは変わらない

天乃は風に限らず、相手のことを感じたいのだ

その距離感も今ではなりを顰めつつあるが、

学生時代の遠慮のなさは大変だったと、風は思い出し笑いをする

風「そっかぁ、なら仕方がない」


天乃「何笑ってるのよ」

風「可愛いなって思って」

天乃「……」

天乃の驚いた顔が、すぐ横で見上げてくるのを風は感じて

視線を泳がせた風は、けれど逃れられずに天乃の方を見てしまう

天乃「……もう」

天乃の顔はケーキのほうを見ていて見えなかった。

天乃の空いた手は胸元に当てられていて

少しだけ垂れている横髪に遮られている耳元が、赤らんでいるように感じる

天乃の肌は白い

日焼けをしたくないからではなく、出来ないからだ

だから、良く良く分かる

それがまた――筆舌に尽くしがたく

しかしながら明確に、愛おしい。

両立できないそれが出来てしまうような心持ちになってしまう

約20cmも低い、天乃の身体

対面ではなく横に並ぶとそれはまた顕著で、華奢で、可愛らしくて

けれども花嫁衣装が美しく――

風「……抱きたい」

天乃「えっ?」

風「あっ、いや……手早く済ませましょ」

やっぱり、好きだと風は改めて感じられた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから


遅くなりましたが、少しだけ


天乃「普段より温かいのね」

風「そりゃ……まぁ」

天乃「可愛いところあるのよ、貴女にも」

風「っ……」

自信を感じる声。

風が可愛らしいということを冗談では言っていないと感じられるそれに、

風は言葉を返せなかった。

目を向ければ、天乃は目を向けていない。

普通のクリームとフルーツばかりではと考えられてか、

ハートの形をしたショコラケーキを嬉しそうに見つめている。

そのうえで「可愛いところがある」と天乃は言ったのだ

見た目を言ってはいない

天乃「どうしたの? ケーキカットするんでしょう?」

風「へっ、はっ、あ、あぁ、うん……」

天乃「あんまり手汗かかないようにしてよ? 滑って落としたりしたら危ないんだから」


恥じらっていた可愛らしさはもう隠れてしまっていて天乃は平然としている。

赤らんでいた横顔も落ち着いていて、

ただ、自分の手を包み込んでいる風の手の温もりに微笑んでいる

大人びた微笑は、可愛らしいというよりも綺麗に感じるのは気のせいではないだろう。

可愛くもあり、綺麗でもある

久遠天乃と言う女性は齢15歳の見た目のまま、

そんな彩りを持っているのだと風は噛みしめる

もしもバーテックスなんていなければ、出会わなかったかもしれない。

三百年以前に終わっていたならば、天乃も自分も別の誰か

それこそ、異性と結婚していたかもしれないと、風は思って――首を振る

例えそうであったとしても、この場で考えて良いことではない。

天乃「……そんなに強く握らなくても、私はどこにもいかないわ」

風「えっ」

天乃「何考えたのかは考えないでいてあげるから、ケーキ、一杯食べて頂戴ね?」

風「天乃……」

天乃は笑顔を見せる

風が考えてしまったことを悟っていても、気にすることなく――いや、気にしているかもしれないけれど

ちょっとしたパフォーマンスで終わりにしてしまおうという天乃の笑みに、

風は「タキシードが汚れない程度にね」と、苦笑した。


ショコラケーキは、とても簡単に切ることが出来た。

ナイフを傍らに置いた天乃は、そのまま大きなスプーンを手に取ってすくう

天乃「はい、一杯」

風「おぉう……」

スプーン一杯

それも、一段しかないとはいえ約10cmほどはありそうな厚みを、

上から下までひとすくいしたのだ。

天乃はそれをどうぞ。と、差し向けてきている

天乃「あ~んっ」

風「悪魔の笑みに思えて仕方がないんだけど」

弾むように高い声と童顔ゆえどうしても可愛らしくなってしまう笑顔

それなのに風は困ってしまって、目を背ける

一杯とは言ったが、普通は使わないような大きなスプーンが埋まるほどの一杯とは誰だって思わないだろう

高さはあっても幅がないのが良心だろうか


天乃「何よ、あの子のケーキは食べられるのに私のケーキは食べられないって言うの?」

風「あの子って誰っ!?」

天乃は鋭く睨みを利かせて詰め寄るようなそぶりを見せて、

思わず引き下がりそうになった風の戸惑う声に、くすっと笑った。

天乃「樹かしら、お祝いの時に試しに作ったケーキ食べてたでしょ?」

風「あったわねそんなこと」

天乃「どうかしら? ちょっとドキドキした?」

風「びっくりはしたわね、まぁ」

誰に吹き込まれたのかは知らないが、ヤンデレというキャラクターを演じて見せたのだろう

今ここでやるかと言いたいところではあるのだが

こういうところだからこそ、少し踏み切ってみたのかもしれないと風は思う。

軽く微笑んで、風は口を開く

風「あ~――むぐっ!」

口いっぱいに広がっていくほろ苦さ

ケーキのほんの少しのひんやりとしした冷たさが顎のあたりから感じられて

鼻腔にはチョコレートの匂いが満ちていく


天乃「ふふっ、べったりね」

風「んっ……っ」

普通のクリームではなく、

口の中に残りやすいショコラだからか、

風は飲み込むことに苦戦しているようで、

口元から零れそうになっていたひとかけらを、天乃は布巾で拭う

キスしても良かったけれど、それは夏凜に使った手だ

何より……

天乃「キス、されたい?」

風「ん゛っ」

天乃「そんな驚かなくたって分かっていたことでしょう?」

天乃は困ったように笑って、薄茶色に汚れた布巾を見つめる

夏凜や友奈なら、ウェディングドレスという辛さはあるものの天乃が背伸びを頑張ればどうにかなる

しかし、風はそうはいかない。

たとえつま先立ちを頑張っても10cmにも満たない増量では風の唇に届かないのだ

天乃「わかる、でしょ? 私じゃ……頑張っても風の唇に届かないのよ」


ムッとして目を逸らしたように見える天乃だけれど、

その頬は赤らんでいて、風は飲み込むのを少し諦めて見つめる

今は背が低いことをコンプレックスに思っているわけではないので

それ自体を恥ずかしがっているわけではない

ただ、体温が少し高くなっているのだ

風「ん……」

何? キスしたいの? と、普段なら返す言葉もあるのに

今は口が一杯でそれが出来ない風は、少しだけ屈む

天乃が簡単に届かない高さに抑えたのは精一杯の仕返しだろう

風「………」

天乃「意地悪なんだから」

天乃はそうぼやいて風の袖を引く

天乃「もう少し屈んでよね」

力一杯に下に引いてみれば、風が膝を曲げて

天乃はその勢いのまま、風の鼻頭にキスをした


ほんの少しだけ感じられるチョコレート

ほろ苦いその味わいの中に甘さが広がる

風は驚いた様子はなく、天乃もすぐに離れて勢いあまって数歩下がる

天乃「ふふふっ」

風「っ……」

離れた天乃は嬉しそうに笑う。

その笑顔はやっぱり、可愛らしいもので

風は思わずキスをされた鼻に触れようとして、天乃の手が止める

天乃「今触ったら汚れちゃうわ。待って」

風「んっ」

天乃「一ヶ月くらいじゃ、私のお姉さんにはなれないみたいね」

少しだけ背伸びをしながら風の頬や口元を拭った天乃は、

汚れた布巾を傍らに置くと「沙織の方に行くね」と、向かって行ってしまう

頬でも唇でもなく鼻へのキス

それは「可愛い」と思っているからこそなのだろうかと悩む風は、

まだ口の中に残るケーキを無くそうと、もぐもぐと口を動かした。


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


遅くなりましたが、少しだけ


沙織「楽しんでるね」

天乃「うん、とっても」

沙織「夏凜ちゃんも友奈ちゃんも、犬……風さんも大変だね」

沙織はまるで自分はそうではないというような口ぶりで

けれど口元を綻ばせると「あたしもかな~?」と、望むように天乃を見つめる

少しだけ屈んでくれて入るものの、

それでも見下ろす形になってしまっているのが、天乃の小ささを引き立たせる

大人の女性――今は男性と言うべきだろうか

それと、女の子

そんな風に見えてしまいそうな差があった

天乃「そう言われると出来ないのが私なのよねぇ」

沙織「ううん、それでもしてくれるのが久遠さんだよ」

天乃「さて、どうかしら?」

ニヤリと笑った天乃だけれど

沙織は余裕綽々といった笑顔を崩さない


沙織「三人のようにはいかないよ」

天乃「別に弄ぼうだなんて思ってないのに」

自慢げな沙織の言葉に、

天乃は少し困ったように笑いながらぼやいて沙織との距離を詰める

楽しんでるねと沙織は言った。

その通りでしかない

天乃は今を全力で楽しもうと思っているだけ。

それが驚かせるという形になってしまっているだけ。

――なんて。

天乃「ふふっ」

沙織「思ってるんでしょ?」

天乃「ちょっとだけね」

沙織は本当に良く分かっている

あるいは、天乃がとても分かりやすいだけか。

きっと、その両方だ


ちょっとよちょっと……そう言いながら

親指と人差し指で測って見せる天乃はやっぱり子供っぽいと、沙織は思ってしまう。

ウェディングドレスを着ているのに、子供のよう

結婚式も、披露宴も

全力で楽しもうとしているのが感じられる

歳相応――ではないけれど

見た目相応にはしゃいでいる天乃を、沙織は嬉しそうに見つめる

沙織「手を握られるのと握るの、どっちがいい?」

天乃「そうねぇ……」

沙織「っ」

天乃は考えるように語尾を霞ませて、

右手で沙織の右手を持ち上げて、左手を重ね合わせる

天乃よりも大きな手

包み込むのは風よりも難しいだろう

天乃「握って貰えると助かるわ」


では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から

すみませんが所用のため本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能な限り通常時間から。


では少しだけ


沙織「ほんと、気を抜けないね」

天乃「少しは気を抜いても良いのよ?」

沙織「気が乗ったらね」

そう言って重ね合わせていた手を離した沙織を一瞥した天乃は、

右手でナイフを手に取って、持ち手を沙織へと向けると

沙織は天乃に覆いかぶさるような形で後ろに回り、

天乃の右手に右手を重ねる

天乃「沙織……?」

沙織「こういうのもありだと思うよ?」

天乃「ありなの?」

安全を考えれば無しなような気もする天乃だけれど、

沙織の自信ありげな表情を見てしまうと、ありだと思えてくる

天乃「ちゃんと届くんでしょうね?」

沙織「大丈夫だよ。よゆうよゆー」


茶化すような崩した声を出した沙織は、

天乃の肩に左手を当てて抑えると、身体をぐっと押し当てていく

天乃や東郷ほどではないにしても、

しっかりとしたふくらみのある沙織は、

タキシードを着るにあたって、多少なりと胸を抑える努力をしている

それでも、背中に押し当てられる圧迫感は確かで

天乃「ちょ、ちょっと」

沙織「ドキドキしてる?」

天乃「そうじゃないけど……」

沙織「なら良いでしょ」

笑いながらより強く身を寄せた沙織に押し込まれるようにして、天乃の体が半歩だけ前に出る

沙織は距離を詰めたいのかもしれないが、

それには、沙織の体が大きすぎたのだ


天乃「それ以上押したら倒れるからっ」

沙織「華奢だよね~」

天乃「ヒールっ、ヒールが高いのよっ」

天乃はただでさえ上がっているかかとがまた浮くのを感じて、慌てて制止する

天乃は基本的にヒールの高い靴を履いたことがない

ならばせっかくだからとそれなりに高めのヒールを選んだのが、仇となっている

いや、功を奏したというべきか。

沙織は残念そうに「そうだった」と呟いて天乃に体を密着させたまま、

天乃と握るナイフを動かして、切っ先をケーキへと触れさせていく

天乃「んっ……」

沙織「少しだけだから、ね?」

天乃「もう……っ」

沙織の左手が天乃の腰を抱き込んで、周りからは嬉しそうな声が上がる

黄色い声と言うべきか、楽し気な歓声に天乃は困り顔を浮かべたが、

すぐに振り払って沙織に身を委ね、ナイフを下におろしていく


二人分の力はケーキを容易に分断する

ナイフを引き抜くと、沙織の力が抜けて手が離れていく

それと同じように天乃の身体から沙織の温もりが冷めていき、

一歩下がった沙織は「上手くできたね」と、呟いた

天乃「好きなだけやってくれちゃって」

沙織「あははっ」

天乃「ヒールが折れるかと思ったわ」

慣れていない履物はとても不安定で、

沙織の体重も少しだけかかっていた天乃は、

心配そうに足を動かして確かめると、安堵のため息をついてナイフをケーキの横に置く

夏凜も友奈も風も、天乃が好きなように相手をした。

だからすきかってされる前に先手を打とうと考えたのだろうと天乃は苦笑して

天乃「ここからは私の好きにさせてくれるのよね?」

沙織「うんっ、良いよ」

満面の笑みを見せる沙織は、

何か裏がありそうで

天乃はそれを見抜こうとする視線を逸らし、スプーンを手に取る。

さて、どうしてあげようか。なんて、悪いことを考えながら。


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


遅くなりましたが、少しだけ


沙織「手づかみでも良いんだよ?」

天乃「そんなはしたないことできるわけないでしょ」

沙織「……タルトにするべきだったか」

フルーツ一口分なら、手づかみで出来るけれど

沙織とのケーキカットに使われたのはごく普通のホールケーキだ

あえてごく普通のケーキを選んだのは沙織だが、

タルトにすべきだったかと悩まし気な沙織に、天乃は笑みを零す

天乃「タルトでもしないわよ。指まで食べられそうだわ」

沙織「美味しいからね」

天乃「それはどうも」

生クリームと、ちょっとしたフルーツそしてスポンジ

これなら風のようにはならないだろうと考えた天乃は

大きなスプーンでケーキをがっつりとすくう

夏凜達の時とりも一回りほど大きいのは、気のせいだ

天乃「覚悟は良いかしら」

沙織「あ~ん」

天乃「……乗り気ねぇ」


恥じらいを持っていた夏凜達と

全く恥じらいを感じられない積極的な沙織

どちらも良いものなのだが、

悪戯をするとなれば、積極的なのはちょっとムッとする

その分、鼻を明かしてやりたくなるので

天乃としてはやっぱり、沙織の積極的なところも好きだ

天乃「はい、どうぞ」

沙織「んぶっ」

大口開けて待っている沙織の口に、

今にも崩れそうなひとすくいのケーキを支えるスプーンを差し向ける

やや斜めがかっていたケーキの先端を沙織の口に入るように調整したけれど、

先端に歯止めがかかれば崩れが大きくなって、スポンジとスポンジの間、

クリームの部分から二つに分かれて沙織の鼻にベチャリと張り付く

天乃はそれを知りつつ、グッと押し付けて

天乃「てぃっ」

沙織の顔にべったりとケーキをぶつけた


沙織「んっ……んんぅ」

天乃「ちょっとやりすぎたかしら……」

口周りだけでなく、鼻の周りにまでべったりとクリームをつけた沙織は

目を瞑ったままで入るものの、

苦しいといった雰囲気は全くなく、嬉しそうにもむもむと頬を動かしている

天乃「沙織」

沙織「んぅ?」

天乃「貴女ってば、ほんとうに……隙が無いんだから」

驚く素振りを見せない

困った表情も見せない

それは天乃が悪戯をしたがっていると分かっているからで

それならと、天乃は自分の手が汚れるのも厭わずに、沙織の頬を包む

天乃「させてくれないかしら――キス」

下から見上げて望む。

悪戯を心待ちにしているのなら、正攻法だ。


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から

では少しだけ


沙織「んん゛っ」

天乃「屈んでくれないと届かないんだもの……お願い」

涙目で懇願……なんていう技術は天乃にはなかったため、

必然的になる上目遣いのままに沙織へと願う。

天乃が正攻法で来るとは思っていなかったからか、

少し喉を詰まらせてしまったような反応を見せた沙織は半歩ほど下がる

沙織はキスがしたくないわけではないだろう。

式の時には誓いのキスだってなかったのだから。

ただ、驚いてしまって――

天乃「したく、ない?」

天乃はそこでも攻めていく。

詰め寄ったりせずに、足を止めて

下がってしまった沙織から目を離さないで、けれど残念そうに。


天乃「したくないなら、仕方がないわね」

天乃はそう言って、布巾を手に取る。

どうするかと迷っている躊躇いでもあるかのように、きゅっと握りしめて

視線を下げて、沙織を一瞥してから――沙織に詰め寄る

天乃「動かないでね、キスはしないわ……拭くだけよ」

沙織「ん……」

天乃の手は頬に触れたものの、

下げさせるような力はなく、右手に持った付近が頬の辺りについていたケーキを拭って、

鼻先の汚れも落とす

天乃「ケーキは取れたから、もういいかしらね」

沙織から手を離して、一歩下がる

汚れてしまった布巾を一目見て、台の上に置く

沙織「んくっ……っ」

喉を鳴らした沙織は口元を手で押さえて

沙織「ちょま、待って……待ってよ天乃さん」


天乃「なに?」

沙織「しないの?」

天乃「そもそも出来ないのよ、見て」

天乃は沙織に近づくと、精一杯に背伸びして沙織との距離を詰める

それはほんのわずかで、

ドレスのスカートで見ることは出来ないが、天乃の表情から無理しているのが分かる

天乃「これが私の限界」

沙織「……あたし、嫌がったわけじゃないよ」

天乃の背伸びは沙織にはまるで届かない

横になっているときならともかく、

互いに立っている状態では、同意の上……受け入れて貰えなければキスは出来ない。

天乃「今更屈んで貰っても」

沙織「っ」

天乃が普通にしていても届くように屈んだ沙織は、けれど、首を振る天乃に目を見開いて、目を伏せってしまう

頬にも鼻にも唇にもケーキのクリームはついていない

だから――フルーツを一つ抓んで咥え、キスをする


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから

遅くなりましたが、少しだけ


沙織「っ」

天乃「ん……」

半分ほど沙織の口の中に押し込んでから、

沙織の唇を噛むかどうかの絶妙なところで、フルーツを噛み切る

その勢いのママ唇を咥えるようにして――離れる

天乃「っふ……んっ」

口の中に広がっていく甘酸っぱさを飲み込んだ天乃は

少しだけ下がって、微笑む

天乃「フルーツキスよ。どうだった?」

沙織「ん……うん……よかった」

天乃「沙織が初めから受け入れてくれたらもっと甘いキスが出来たのに」

沙織「ごめんね」

天乃「謝らなくていいわよ。分かってるから」


沙織が受け入れたくなかったわけではないと分かっている

天乃はあえてそれを弄っただけだ。

天乃「ちょっとやりすぎちゃったかしら」

沙織「キスして貰えないかと思っちゃったよ」

天乃「ふふっ、そうしたほうが良かったかしら」

そんなことされたらあたし泣くよ。と、

沙織は本当に泣きそうな素振りを見せたが、

天乃は笑って首を振る

天乃「そんなことしないわよ」

夏凜達にもやってきて、

そのうえでの沙織なのだから。

何より、ここで沙織にだけしなかったら後が怖い。

天乃「ちょっとだけやり返したかったのよ」

沙織「ベッ――」

天乃「しーっ! それは駄目ッ!」


天乃は手を思いっきり引っ張って、

言ってはいけないことを言おうとした沙織を止める

聞き耳を立てている友人もまばらに居るが、流石に駄目だ。

天乃「それ言ったら一週間はしてあげないからね」

沙織「えっ」

天乃「当たり前でしょ、もぅ……」

披露宴であっても、ベッドでどうかなんてことを披露されても困るだろう

もっとも、誓いのキスがなかったとはいえ、

みんなとキスするのもどうかと思うかもしれないけれど。

沙織の横を抜けて、樹のところへと向かう。

ウェディングドレスとウェディングドレス

カラーやデザインは違うが、

同じ衣装が並んでいると、少しばかり雰囲気が変わってくる


樹「お色直ししてからの方が良かったのでは……?」

天乃「そうは言っても、私と樹達は同じ衣装に着替える予定でしょう?」

樹「あぁ」

そう言えばそうなんですよね。と、ちょっぴり残念そうな樹は、

仕方がないですね。と、割り切ったように微笑む。

そう決めたのはみんなだし、

たとえお色直しでずらせるとしても

そうする時間を含めると余計に参列者のみんなを待たせてしまうことになる

それを考えると、やっぱりこのままでいくべきだ

天乃「ドレス同士も味があって良いと思わない?」

樹「でしたら、私が天乃さんに食べさせても良いですか?」

天乃「樹が私に……」

さっきから、先手は天乃でそのまま天乃が一口分ほど食べるという形になっている

だから、相手からと言うのは少々気になると天乃は少し考えて

天乃「良いわね。それで行きましょう」


樹のケーキはその名前を模したかのように、

切り株のような形になっている。

チョコではなく、ココアの風味が強いココアケーキ

振りかけられている粉砂糖が雪のようでおしゃれに見える

樹「クリーム多めですけど、中はスポンジですよ」

天乃「おしゃれでいいわよねぇ……家でも作ってみたくなるわ」

樹「今度一緒に作りますか?」

天乃「そうね。作ってみましょうか」

ウェディングケーキはおしゃれなものが多いけれど、

形作るのにはやや難易度が高いように感じる

けれど、切り株の形なら簡単なものなら本来のスポンジに対しひと工夫でどうにかできる。

そう考えた天乃はケーキをまじまじと見つめて

樹「天乃さん、ケーキのチョコがとけちゃいますよ」

天乃「あっ」

ケーキは7人分あるため、スムーズにやっていかなければいけないが

一人につき数分かかっている。

それを気にしてか、樹は自分からナイフを手に取ると、天乃の方に持ち手を向けた


天乃「プレートのチョコ文字が少し溶けちゃってるわね」

樹「仕方がないですよ」

本来なら、一度で終わっているケーキ入刀

それが7回ともなれば、後になるにつれて一部のチョココーティングがとけてしまうのは仕方がないことだ

一番最後の園子の分はまだ準備されていないが、

東郷の方に関しては出していないだけで準備されているだろう。

天乃「でも手早く済ませるのって、あんまり……」

樹「だからこそ、キスしてくれているんですよね?」

天乃「えぇと……」

キスは悪戯である。

そうでなくともしたいからしているだけ。

樹の純真な眼差しを向けられた天乃は、

悩ましそうに目を逸らして……にっこりと微笑む

天乃「そうよ」

樹「違うんですね」

当然、バレたのだけれど。


樹「見てれば分かります」

声も聞こえてましたし。と、

樹は可愛らしく笑って「久遠先輩」と、ナイフの持ち手の部分をもう一度向けてくる

天乃さんではなく久遠先輩と、馴染み深い呼ばれ方をされた天乃は、

少しだけ驚いて、けれどすぐに取り直した笑みを浮かべて樹の手に重ねるようにナイフを握る。

樹の手は沙織や風と比べれば一段と小さく、

少し頑張れば天乃の手でも覆えてしまいそうだと錯覚するほどだ

天乃「さっきも思ったけれど、立派な手よね」

樹「ありがとうございます……天乃さんの手も、綺麗で小さくてでも力強い立派な手だと思います」

樹は少し照れながら、天乃の誉め言葉に返す。

そんな可愛らしい抵抗を受けて、天乃も微笑む

天乃「ありがと……」

樹「……なんだか、照れくさくなっちゃいますね」

天乃「目線を要求されていないだけ、有難いと思いましょ」

このやり取りの最中にも聞こえてくるシャッター音

目を向けていなければその恥ずかしさが若干ではあるが薄れるので、

こっちを見て欲しいという要求がないことに天乃も樹も少しだけありがた差を感じながら、

ケーキへとナイフを差し入れていった


ケーキはスポンジの柔らかい抵抗感こそあったものの、

概ねすんなりとカットすることが出来た。

樹はナイフに着いたクリームを少し勿体ないですね。と言いつつ諦めて、

スコップのようにも見えるものを手に取った樹は、

それをやや自慢げに、参列者に混ざっている歌野の方へと向ける

樹「歌野さんと決めたんです。ちょっぴり特別なものが良いって話をしていたら、たまたまスコップが手元にあって」

天乃「なるほど」

夏凜の煮干しに関しては天乃の悪戯を全力で込めていたが、

夏凜以外のみんなに関しても、どういったものを使うかと言う話をしていたのだが、

普通にします。と言う答えだったはずの樹は、しかし企んでいて

天乃はちらりと視界の端に見えた歌野を認めて、苦笑する

天乃「良いわね。持ち手の部分に私達のネームが刻印されていてスペシャルで、掬い部が小さめでキュートだわ」

樹「あはは……」

ちょっぴり歌野らしい感想を述べて、樹をまっすぐ見る

天乃「覚悟を決めるから、どーんと来なさい。べちゃっとでもいいわ」

樹「汚したくないので、そんなにたくさんはやらないですよ」

樹はそう言いながら、ケーキへとスコップを差し込んで掬い上げた

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


では少しだけ


樹「天乃さん、どうぞ」

スコップの先端にケーキをすくった樹は、

天乃の方へとそれを差し向ける

天乃「あ~ん……しないの?」

樹「言わないとダメですか?」

天乃「その方が雰囲気あるじゃない」

何の雰囲気があるのかと、樹は困ったように眉を顰める。

あるのは新婚さんっぽい雰囲気だ

一つ一つの所作に照れくささが残っていて、

まだ初々しく感じられるというのが分かりやすいだろうか

樹「それ、なら」

樹は少しばかり頬を染めつつ、

グッと息を飲んで

樹「あ、あ~ん……」

そうっと差し出す


天乃「あ~ん……」

樹の差し出したスコップを出来る限り広げた口で受け入れる。

本来のスコップに比べればだいぶ小さいものだが、

それでも天乃の口にはとても大きくて、先端から数センチもいかずに止まる

クリームで口元を汚しながら天乃は唇を閉じたけれど、

樹はスコップを引き抜かない

天乃「ぃふひ?」

樹「そのまま、噛み切ってください」

天乃「ん……?」

樹「このスコップ、食べられますから」

天乃「……」

口の中に感じるスコップは、

味覚こそケーキの甘さで誤魔化されているが、

金属的な冷たさは感じられない


唇ではなく、スコップに歯を立てて、噛んでみると

最初こそ固い抵抗感は感じられたもの、

割れるというよりは溶けるように

スコップの金属だと思われていた部分が欠けて、口の中に残る

樹が手を引くと、スコップは天乃に食べられた痕を残しているのが見えた

天乃「ん……」

樹「実は飴細工なんですよ。驚きました?」

持ち手の部分はべたつきを無くすためにクッキー生地だが、

金属的な部分は飴細工だ。

砂糖菓子でのつくりも考えられたが、それではケーキをすくう耐久に不安があって、飴になった。

飴なら、大きさを押さえたうえで、すくうのを軽めにすれば何とかなる

天乃「……驚いたわ」

口いっぱいにはならなかったケーキを飲み込んで、

天乃は微笑む

樹の可愛らしく、おしゃれなサプライズは嬉しかった


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


樹「驚いてもらえたなら、良かったです」

天乃「食べられるスコップだなんて、考えもしなかったわ」

樹の嬉しそうな笑顔に天乃は少し考えながら答える

飴を作るくらいなら、天乃にも容易にできるだろう。

それを平たい形でなら動物の形にするといったことも、

べっこう飴という飴を作ったときに試しているので、出来ると思っている。

けれど、ここまで精巧なものは作れない

天乃「凄いわね……借りて良い?」

樹「あ、はい……」

天乃「これ持ち手の部分も食べられるの?」

樹「食べられますよ」

天乃「食べて良い?」

樹「どうぞどうぞ」


持ち手の部分は、一見本当に木製のそれのようで、

けれど、匂いを嗅いでみるとちゃんと美味しそうな匂いがする

天乃「……ん」

樹がするわけがないと信頼を置きつつ

ドッキリの可能性もあると警戒してちょっぴり齧ってみると、

パラパラと欠けたクッキーが舌の上に落ちる

ちゃんと、食べられるものだ

天乃「あ、美味しい……」

樹「飴とクッキーって言うのが、ちょっとアンバランスなんですけどね」

天乃「あら、そういうのもあるらしいわよ。作ったことないけれど」

天乃はそう言いながら、

食べかけのスコップを一瞥する

持ち手と先端に歯型のついているスコップはなんだかおもしろい。

天乃「樹」

樹「っ――」

天乃はスコップの先端をもう一度齧って――樹にキスをする


舌は忍ばせずに、唇だけで

口の中で少しだけ溶けた飴を、樹へと移していく

みんなよりも長くキスをしてしまうと、何かありそうですぐに離れる

天乃「ん……っ」

樹「っふ」

渡しきれず、

天乃と樹の唇の間に残ってしまっていた飴混じりの唾液が糸を引いて

披露宴に似付かわしくなく、艶めかしさが演出されてしまう

樹「は……ふ……」

垂れてきたそれを、樹は仕方がなく指で絡めとると

ただの布巾ではべたつくと判断したのか

ただそうしたかったのか、

その指を天乃の唇に押し込む

天乃「んっ」

樹「されるだけじゃないですよっ」

急にされたキス

されると解っていても、

飴の口移しとは思っていなかった樹は頬を染めつつ、攻めの姿勢を見せた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


遅くなりましたが少しだけ


天乃「ん……」

樹「っぁ……んっ」

樹の差し込んできた指を天乃はそのまま唇で包み込む

樹が強く引き抜こうとしても、怪我をしないように優しく

けれど、引っ張る気が起きないように甘く噛みながら

指の腹の部分を、舌先でちろりと舐める

天乃「っふ……ん……」

鼻ではなく、口の端から息を吐く

樹の顔が真っ赤になっているのが見えて、

それでも天乃は唇をもにゅもにゅと動かして、弄ぶ

樹「っ……」

天乃「っは……ふ」

拘束のようなそれを離してあげると、

今度こそ、本当にそれらしい糸が伝う

さっと手を引いた樹の瞳は潤んでいて、

天乃は、やはり笑みを浮かべた


天乃「甘いわね……ふふふっ」

樹「あ、甘いって――」

天乃「どっちの話かしらねぇ?」

指が甘いのか、詰めが甘いのか、

どちらも甘いのは樹なのだけれど。

にこやかな天乃を、樹は直視できない。

攻めをそのまま絡めとられて、

してやったりという嬉しそうな笑顔

負けてしまった悔しさ

それを大きく上回る心。

だからきっと、目を合わせてなんてしまったら――

天乃「俯いたら、私と見つめ合うことになるわよ」

樹「っ!」

天乃「ふふっ」

下から伺うように顔を覗かせた天乃は、しかし屈んだりなどはしていない。

天乃の誇らしげな笑みに、樹はお手上げとばかりに苦笑いを浮かべた


すぐ隣を歩いていると、いつも見えるのは天乃の頭だ

下を向かないと顔は見れない。

少し離れてくれないと目を合わせることが出来ない。

だからと、高校生の時に天乃が言ったことがある。

【天乃「そんなに俯いてばかりいたら私と目が合っちゃうわよ? そんなに見たいの?」】

――なんて。

にんまりと笑っていたので、

冗談半分だったのだろうと、樹は今でも思っている。

でも、確かに……悩む必要はなかった。

前を向けば追いかける背中が見えて、

下を向けば、寄り添い微笑んでくれる笑顔が見られて

大変な勉強も、頑張っているアルバイトも

そのためならと思えばいつだって幸せだった

樹「狡い、ですよ」

天乃「そうかしら……そう? だったら、小さい身体も誇れるわね」

樹は天乃の体を抱きしめる

互いにドレスで多少の窮屈な感覚はあったけれど、

天乃は優しく笑みを浮かべて、それを受け入れた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はすみませんが所用のためお休みとさせていただきます

明後日は可能であれば少し早い時間から


遅くなりましたが、少しだけ


園子「凄いことになってるんよ~」

天乃「そうかしら?」

園子「あとで痛い目を見るね」

天乃「……やっぱり?」

結婚式でキスをしていなかった分、

悪戯と言う形で清算していこうとも思っていたのだが、

もちろん、それで解決などするわけもなく。

それを見ていた園子の笑み交じりの呟きに、

天乃も困ったように笑う

天乃「家に帰ったら大変よね……絶対に」

園子「私とも、してくれる?」

天乃「そんな窺わなくても、園子一人除け者にしたりなんてしないわよ」


園子「そっかぁ~」

満足そうに頷く園子は、

若紫色のドレスのスカートの部分を摘まんでひらひらと振る

照れ隠しのつもりなのだろう

やや俯き気味な園子の頬がちょっぴり赤らんでいるのが見えた

園子「悪戯なしにして欲しいなぁ」

天乃「面と向かって言われると、ちょっと対応に困っちゃうのだけど……そうね」

園子もからかってみると可愛らしい反応を見せてくれる

もちろん、からかうことをしなくても園子は可愛らしいのだけれど

せっかくの披露宴なのだ、飾っていない可愛らしさを引き出したいと思うものなのだ

けれど、悪戯せずにして欲しいと本人から願われると

流石の天乃も、その手を引かざるを得ない

天乃「良いわ。驚かしはなしにしましょ」


園子「でも、その言葉で安心できないのが……お姉様なんよ」

天乃「あら、心外だわ」

園子「隙をついてやろうって、虎視眈々と狙ってる」

天乃「今は大丈夫よ」

園子の悪戯心が垣間見える声色に対して、

天乃は穏やかに答える。

園子がすぐに信じないのは、天乃の日頃の行いだ

別に怒るようなことはしていないので

嫌われたり、どうなりなことはないし

むしろ、なにをしてくれるのかと期待するまであるのだけれど。

天乃「今回は、園子と私の記念だもの、貴女を困らせたりしないわ」


園子「そう言って不意を突いてくるのに……今日だけは信じるんよ」

天乃「ありがと」

園子「笑っても誤魔化されないよ」

園子はそう言いつつ、天乃からケーキへと視線を移す

キスをされるとしても、ケーキを食べさせる段階になってからになる

ナイフを誤って落としてしまったりしないように気遣ってくれるので

その部分も大丈夫だろう。

園子のケーキは、

園子が今もなお自室で使っているサンチョというキャラクターの抱き枕の形を模したロールケーキだ

紫色の部分にはブルーベリー、口の部分などにはベリーなどを用いて着色されており

園子から見ても、その完成度は高く見える

園子「ちょっと、切るのがもったいないんよ~」

天乃「そうねぇ、可愛いもの」

園子「お姉様……天乃さん、お願いがあるんだけど……」


園子はどうしても見下ろすことになってしまうのを残念に思いつつ、

天乃へと向けて、瞳を潤ませてみる。

天乃にも夏凜にも東郷にも風にも樹にも沙織にも友奈にも通じない。

通じると言えば、デート中に絡んでくる異性くらいだ

けれど、天乃達は可愛いと言ってくれるので、良く使う手だ

園子「サンチョのケーキで記念撮影したいんよ」

持ち上げる素振りを見せる園子は、

どこか昔を思わせる幼さが感じられて、

天乃は困ったように笑みを浮かべる

天乃「ケーキで? 重いわよ?」

園子「このくらいなら大丈夫」

勇者としてのお役目が終わって以降、

夏凜に付き合ってのランニングを除けば、

園子はごく普通の女の子としての生活をしてきた。

それゆえに、筋力的にはそこまでしっかりとしていない。

それでも、普通の同年代に比べれば、体つきはしっかりとしているけれど。

天乃「分かった。でも気を付けてね」

園子「大丈夫なんよ~」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから


遅くなりましたが、少しずつ


ケーキの置かれている平皿を引いた園子は、

その重さを感じて眉を顰めると

両手で少しずつ引っ張って、中央からずらしていく

こうしてみると、ロールケーキで良かったと天乃は思って

天乃「係の人の手を借りなくていいの?」

園子「二人の作業なんよ」

天乃「だったら、少し待って」

園子の手を止めさせて、

ケーキと一緒に引っ張られてしまうテーブルクロスを逆側に引っ張る

滑り止めが加わった分、園子は難しい顔をしたけれど

天乃が逆に引っ張るのと同時に平皿を引けば、少しは簡単になる

園子「天乃さんっ」

天乃「落とさないようにね」

端からはみ出た平皿の下に手を添えて、

少しずつ持ち上げていく園子を手伝って、天乃も平皿を持ち上げる

テーブルクロスは少し不格好になってしまったけれど

そこは、樹と東郷が補ってくれた


園子「結局助けられちゃったんよ~」

天乃「ふふっ、やっぱり二人じゃ少し無理があったわね」

左右から手助けしてくれた二人は、

テーブルクロスを整えるだけで、さっと身を引いた。

元々準備されていた時よりも綺麗に見えるテーブルクロス

丁寧な東郷もそうだが、

介護も含めての仕事を行うために樹がしっかりと身に着けたおかげだろう。

樹が微笑んだ「二人だけじゃないよ」は、まさにその通りだ

天乃「ケーキカットは完璧にこなしましょ」

園子「ううん、それだけじゃない」

園子は首を振って、天乃に笑みを浮かべる

ちょっとだけ悪だくみしているのが透けて見える

園子「ほんの数分間だけの、私達の披露宴を完璧にするんよ」

その数分以外はみんなでの披露宴

でもこのわずかな時間だけは二人だけのもの。

そう思ったって良いよね。と、園子は心の中で思うと

天乃は察したように頷いて「そうね」と、答えた


目線こっちにくださ~い。と楽しそうな声に従って、

サンチョケーキの目を向けてあげると「二人も」と笑い交じりに声が続く。

ケーキと一緒に一、二分撮影を行って、

もう一度テーブルの上に戻す。

二人とは言え、

手で支えていたのは少し疲れたのだろう

手首を軽く振って、一息つく

園子「縦? 横?」

天乃「そうねぇ……普通ならお腹の辺りから半分よね」

ズバッと……と

ナイフを持たずにやるように見せた天乃は、

ナイフの持ち手を軽く撫でる

天乃「斜めからがいい?」

園子「その手に従うんよ」


ナイフに触れる天乃の手に手を重ねるようにした園子のささやき

天乃は小さく笑うと頷いてナイフを握る

その手から滑るように動いた園子の手は、

ナイフの持ち手、余りのある部分を掴む

柄の代わりになっているフラワーリングが、少しこそばゆい

天乃「もう片方の手は使わないの?」

園子「動かしにくくなっちゃうから」

天乃「……そっか」

園子の指先だけしか触れないナイフ

それが少しさびしいと

天乃は園子がしない分を自分のもう一方の手で補う

園子「天乃さん?」

天乃「二人三脚は――息を合わせれば簡単よ」

園子「そうだねぇ」

そう言われると困っちゃうなぁ。と

園子は天乃の手に、もう一方の手を重ねた


園子「サンチョぉ……」

天乃「ふふふっ」

切ると決めたのに

ケーキだと分かっているのに

自分たちで決めたデザインなのに

今にも泣きそうな声でサンチョケーキにナイフを入れて行った園子に、

天乃は思わず笑ってしまう。

今日家に帰ったら

きっと真っ先にベッドの上にある枕を抱きしめに行くだろう

天乃「デザイン、やっぱり別のにしたほうが良かったかしらね」

園子「キャラ弁で鍛えたから大丈夫」

天乃「なるほど……」

星乃達のお弁当用に作っていたお弁当

それと似たものを自分にも作ってと園子はお願いしていたのだ

天乃「そういうことね」


サンチョケーキほど立派なものだったとは思えないけれど、

園子が練習になったならなったのだろうと

天乃は一先ず頷く

天乃「園子はどっちがいい? 食べるか、食べさせるか」

園子「選んで良いの?」

天乃「もちろ――」

園子「じゃぁ、あ~んっ!」

それはもう、普段のんびりとしている園子とは思えないほどに素早かった。

天乃と一緒ににっぎていたナイフから手を離した瞬間、

ケーキの横に置かれていた、スプーンを手に取る

持ち手はやっぱり、サンチョモチーフ

だからか、それをぎゅっと握りしめている園子は成人しているようには見えない

天乃「かわいい」

園子「っ……私が、食べさせるんよ」

天乃「お願いします」


天乃は素で口にしてしまったのだけれど

だからこそ、園子は顔を赤くしてしまって

子供っぽかっただろうかと。

それを誤魔化すような勢いのある「食べさせたい」という言葉

天乃はそれに笑顔で答えて待つ。

目を閉じ少しだけ口を開いて、数秒。

雑音と言ってしまうのは聊か心苦しいものだけれど

二人の空間には不要な音に満ちている会場の中

それらのいっさいが抜けて行って、園子の息遣いだけを感じ取る

天乃「緊張してる?」

園子「し、してないんよ」

天乃「そっか」

園子の心臓が跳ねたような気がする

心音までは聞こえないけれど、そんな気がして――

唇の先に柔らかい……液体のようで液体には満たない感触が触れた


甘さの強いクリーム

焼きたての食パンのようにふんわりとしているスポンジ

甘さを引き立てさせたり、抑えたり

一番忙しそうなブルーベリーの僅かな酸味を感じる

天乃「ん……美味しい」

噛まなくても、クリームは舌に融けていく

クリームとベリーソースが唾液と染みたスポンジ

天乃「食べたい?」

園子「っ」

天乃は必ず見上げる姿勢になることを考慮の上で、

園子に視線を向け、わざとらしく……自分の唇に人差し指を触れさせる

園子「え、と……」

天乃「あぁ、駄目ね」

悪戯はなしだったわねと、あとから思い出したように笑った天乃は、

唇からを指を離し、手で口元を覆って――飲み込む

園子「あぁ……うん、そう、なんよ」

選択肢に何があったのか察していた園子としては、

ちょっぴり、残念で

天乃「スプーン、貸して」

勿体ないことをしたかなと、園子はスプーンを手渡す


スプーンを受け取った天乃は、

手慣れた手つきでケーキをすくうと園子へと差し向ける

天乃「あ~ん」

園子「あ、あ~ん……」

悪戯に一歩足を踏み入れた分のリードがあるからか、

園子の頬が赤らんでいるのが見える。

口をついた「かわいい」が一番効いていると思うと

やっぱり、可愛らしいと思ってしまう。

ひとすくいのケーキを、園子の小さな口の中に納める

ゆっくり閉じる唇

何度も重ねたことのある、柔らかさを良く知っている唇

引き抜いたスプーンは艶やかで、

天乃はすぐに引き出せる言葉を、飲み込む

悪戯禁止……だから「間接キスだね」なんて

今更、ドキドキともしにくい言葉は使わない。

ただ園子の頬に触れる

見上げてしまうのはやはり武器だと言えるだろう

天乃「して――いい?」

悪戯なしに、正直に……答えは下りていく瞼。


その仕草はとても自然だっただろう。

見ている人が慣れていると……感じるくらいに。

園子の身体は背の低い天乃を少しでも支えるように

腰の辺りから斜めに抱き上げるようにしていて

天乃はそれを信じて出来る限りの背伸びで、唇を重ねる

それでも園子の頭がやや下がっているのは、

少しでも自分から近づきたいという心の表れ。

天乃「っふ……」

園子「っ……」

離れる前に、瞼を上げる。

園子の瞳と天乃の瞳は互いの中に自分を見て、

そうして離れて、天乃が半歩下がる

暫く言葉はなくて、唇の潤いにキスを想わされてか、

園子は手の甲で口元を隠すと、撮影の音から顔を背けてしまう

天乃「……やりすぎちゃった、かしらね」


結婚式で行うような、

誓いを立てる接吻とは違った感情の含まれていたキス

だから園子も羞恥心には抗えない。

いや、素直な感情が表に出てしまっているから、見られたくなかったのだろう。

化粧をしていない顔はあまり見せたがらないものだ

天乃「園子、ありがとね」

甘かった。

そんな、からかうつもりのない言葉も今の園子には大きいだろうと

天乃は横を通る間際に、その一言だけで留める。

当然、どちらも天乃の正直な気持ちだ。

東郷「久遠先輩は、容赦がないですね」

天乃「ふふ……悪戯心はなかったのよ」

最後の一人、東郷はじっと天乃を見定めて

その奥で揺れる、かつては親友であり今は家族の一人である園子を望む。

笑う天乃は少し困り顔で、

どうにも止められなかったと言った様子

けれど東郷は「私は全部受け止める所存ですよ」と、手を広げる

東郷「時間をすべて使えるのが、大取りの特権です」

天乃「熱心に主張したのはだからなのね」

天乃がそう言うと、東郷はくすりと笑みを浮かべた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


交流、最後


昨日は出来ませんでしたが、本日は少しだけ


天乃「それにしても凄い作りよね、このケーキ」

東郷「色々考えた結果、やっぱりこの形が落ち着くかと……」

天乃「落ち着く?」

形が二段のケーキにするにはそれなりに丁度良くて、

かつ、思い出になりそうとのことで、その形にデザインされた。

食用ではなく、イミテーションケーキとしての制作も予定されたが、

やはり、ケーキカットしてそれをそのまま――というのが良い。という話で

ちゃんと食べられるものになっている。

東郷曰く、航空母艦のなんとかかんとか。

元々は潜水母艦だった――という話のやつだ

天乃「東郷から見ても文句はなし?」

東郷「他に比べれば、隆起点も少なめとはいえ、簡単ではないので……作って頂けただけ感謝です」

見せて貰ったデザインと比べると、

柱のみの部分が埋められていたりと

やや手が加えられているが、そこは重量的な問題なのだろう

甲板と言っていた部分は、

ケーキカットを考慮してチョコレートなどのプレートではなく、スポンジになっているように見える


天乃「思ったのだけど、航空とか潜水とか色々あるけど船が二つに――」

東郷「それはそれです」

航空母艦だろうが潜水母艦だろうが、

二つに切られてしまったらどうなるのか……は同じ結末なのだけれど

東郷としては、そこは一考の余地もないらしい。

天乃は少し考えて、笑みを浮かべる

天乃「そうね」

東郷「久遠先輩――いえ、天乃さん。ようやくですね」

天乃「長く待たせちゃったわね」

東郷「いえ、待たせたのは私達です」

いつだってできた

いつでも良かった

けれど、みんなが大人になるまではと時間をかけて今になった。

付き合いを始めてから約8年

全てが終わってから7年

一人一人が、1年ずつ時間を貰ったと思えば、ちょうどいいのかもしれない。

東郷はそう考えて

東郷「一人ずつで考えれば、約1年半の交際での結婚ですし……程よいかと」


天乃「なるほどねぇ」

そう考えれば、確かに交際の始まりから結婚までの期間的に言えば、

遅くもないし早くもない

丁度いい期間なのかもしれない。

実際には、みんなで住んでいるし、約8年間なのだけれど。

天乃「東郷もだいぶ落ち着いてくれたし……」

東郷「あれは重要だったからですよ。そうしなければいけない。そうしないと――だったから」

東郷は約8年前のことを思い返して、

少し寂し気に、目を細めながら静かな笑みを浮かべる

東郷は天乃の体の問題が無くなってからというもの

積極性は控えめになっていった。

もちろん、その感覚の恋しさや自分以外の相手がいることもあって

普通の人に比べれば欲求は多かったかもしれないが、

それでも、全盛期よりは控えめになっていった。

東郷「ですが――今夜は、久しぶりに興起しても良いかもしれません。いえ、しているかもしれません」

天乃「それはちょっと」

東郷「責任は、取ってくれると信じています」


にっこりと微笑む東郷は、

やはり、以前に比べればとても大人びている。

可愛らしさよりも優美さが勝っていて、

それに触れたことがなければ、息を飲んでしまうほどに。

しかし、その中にも学生だった東郷の雰囲気はまだ残っているように思う

そうしてくれると信じている、期待

それを感じるからだ。

天乃「そう言われると弱っちゃうのだけど……」

東郷「大丈夫ですよ。明日はお休みです」

天乃「そうなのだけど、でも、待って……それはここで言うべきではないわ」

押し倒そうとでもしているかのように

ぐいっと距離を縮めてきた東郷から、天乃は思わず足を下げてしまう。

最近の東郷なら大丈夫

けれど、今ばかりは少し心配で

それを察しているのだろう、東郷は「大丈夫です」と先手を打って

東郷「本番は夜――ですから」

天乃は、普段は控えているだけなのだろうかと困ったように笑った


東郷「手、握っていいですか?」

天乃「え、ええ……」

ナイフではなく天乃の手を握りたいと言った東郷は、

天乃がナイフを持った手にそのまま手を重ねて

申し訳程度に添えられたもう一方の左手が、ナイフに触れる

東郷「やっぱり、お綺麗です……」

天乃「ふふふっ、ありがとう。東郷だって綺麗だわ」

入場前にも話したこと

それをまた、感慨深そうに零した東郷は、

企みの感じない笑みを零して、白い肌を僅かに赤らめる

東郷「私にも、して貰えますか?」

天乃「驚きたい? 驚きたくない?」

東郷「胸に優しいものが良いです」

天乃「難しいけど、善処してあげる」

東郷の自分を見ないお願いに、

天乃は寄り添いながら、囁くように答えて……ケーキへとナイフを降ろしていく

東郷も、綺麗だけれどまだまだ可愛らしい。

そう思って、天乃は気付かれないように笑みを浮かべた


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


遅くなりましたが、少しだけ


ナイフを引き戻す力には少しばかり東郷の抵抗感が加わる

邪魔をしようとしているというより無意識なその力は

天乃の力を感じてか、すぐに抜けていく

天乃「緊張しているのね」

東郷「……そうですね」

天乃「期待してるって、言っても良かったのに」

東郷の手が離れるのを感じた天乃は、

ナイフをテーブルの上に戻して東郷の体に触れる

まだケーキは口にしていない。

なら大丈夫、接吻は行わない。

そう思っていた東郷は驚いて、僅かに後退りしてしまう

東郷「せんぱっ」

天乃「もちろん、まだしないけどね」

東郷「っ……」

天乃「それともケーキなんて関係なく、キスがしたいのかしら」


東郷「……意地悪、ですね」

天乃「いつもの私でしょう?」

東郷「それはそうなのですが……」

分かっていながら、分かっていないふりをする

それを使ってからかって、

求めても求めなくても

分かってくれているから、愛してくれる

東郷「胸に優しくしてください」

天乃「そのくらいの包容力はあるでしょ?」

触れるのはさすがにないと思ったのか、

天乃は東郷の胸元を指さすだけで、何もしない

浮かべる笑みはいつものいたずらっ子

東郷「そんな包容力は詰まってませんっ」

天乃「私には、詰まってるんだけど……」

東郷「もう……先輩ってば」


天乃さんと呼ぶより、言いやすい先輩

学校を卒業していなくても、しても

結婚しようとしまいと、

天乃はずっと先輩で、東郷はずっと後輩で

頑張って下の名前で呼ぼうとして

夏凜や風の「天乃」に憧れて

けれど、どうしても呼ぶことが出来ない

天乃「東郷――」

東郷「美森です。天乃さん、私は美森です。久遠美森です」

天乃「そうね。美森」

天乃は、まるで初めからそう呼んでいたかのように

慣れた様子で、東郷の名前を呼ぶ。

その表情は嬉しそうで、優しくて

東郷「あの……」

天乃「食べたい? 食べさせたい?」

天乃が基本的に「東郷」と呼ぶ理由

それを改めて口にされてはと思ったのか

天乃はスプーンを手に笑みを浮かべて、東郷の言葉を遮った


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みになるかと思います

明後日は可能であれば通常時間から


では少しだけ


自分が天乃を「天乃さん」と呼べないように、

天乃も「美森」と呼びづらいのではと思ってみたものの

まったくの勘違いだった。

天乃はいつだって「美森」と呼ぶことが出来て

けれど、東郷が「久遠さん」や「久遠先輩」と呼ぶから、

それでも構わないのだと……示してくれていて、寄り添っていた

東郷「……食べさせたいです」

天乃「じゃぁ、はい」

東郷「………」

天乃は自分が先に手にしていたにも関わらず、

全く不満のない様子で、ケーキをすくうためのスプーンを手渡した。

ケーキと違って、スプーンは特に手をくわえていない普通のものだ。

というのも、予定としては零戦と呼ばれるかつての戦いに使用されていた戦闘機だったが、

一般の人の知識ではうん十うん式爆撃機だの戦闘機だの攻撃機だのも曖昧だろうし、

その中からさらに個別の名称を持ち出したところで分かるはずもなく。

そのため、

ケーキのデザインを航空母艦、龍鳳にするだけに終わったのだ。


ケーキを前に、天乃を隣に。

東郷はどうしても緊張してしまいながら、

跡が残ってしまうくらいに握りしめてしまっている東郷は、

食べさせるとは言ってもと困った様子で、手を止めてしまう

東郷「少しだけで良い……ですよね?」

天乃「ん~――」

天乃は少し考える素振りを見せる

けれど、鷲尾須美としての付き合いを含めれば、

約10年と言っても良いほどの付き合い

それでなくても敏感な東郷は目を細めて

東郷「悪戯なこと言っても、本気にしますからね」

天乃「あら……」

とんでも無いことを言われる前に先手を打つ。

驚いたような顔を見せた天乃だが、

選択肢を潰しきれたわけではないのは、東郷でも分かってしまう

天乃「私はただ、貴女の気持ちの分を食べさせて欲しかったのだけど――多すぎるわね」

残念だわ。なんて

困った顔をする天乃は、本気に見えた


東郷「……多すぎますね」

気持ちの分を食べさせるとなったら、

残念ながら、この空母ケーキでは物足りない。

良くある数段積み重ねたウェディングケーキであれば、

ギリギリ足りるかもしれない

東郷「なので、少しだけにはなりますが一口で食べられる分にします」

天乃「一口分だけ?」

東郷「天乃せ……さんには、いつだって綺麗でいて欲しいと思うので」

天乃「ふふっ」

先輩と言おうとして、堪えて

そうして天乃さんと言った東郷は、

本当に天乃の小さな口でも一口で食べられる分をスプーンですくうと

天乃の方に差し向けて

東郷「では」

天乃「ん……」

東郷「ぁ……あ~ん」

ただ目を閉じた天乃に対して、

東郷は周りの視線にちょっぴり恥じらいを見せながら、

二人きりや、みんながいるときには良くやるそれで、天乃に食べさせた


本当にたった一口で食べきれる分のケーキは、

すんなりと天乃の口の中に納まる

普通のケーキを食べる一口分のようなそれは、

あっさりと口の中に消えてしまう

ケーキを食べさせ合う、ファーストバイト

その想いを伝えると考えるとやや心許ないかもしれないけれど、

それでいいと東郷はスプーンをテーブルの上に置こうとして

天乃がその手を掴む

天乃「貴女がまだよ」

東郷「えぅ、あ……」

天乃「ふふっ、同じスプーンは駄目かしら」

いつも……ではないにしても、

食べさせあいもしている東郷としては吝かではない

東郷「天乃さんが良いのでしたら……」

天乃「いつものことでしょ?」

東郷「そう、なんですが……あんまり、言われてしまうと困ります」

天乃と東郷のやり取りを見守る友人や肉親

その視線から逃れるように左手で影を作った東郷は、

しかし、赤らんだ耳元がはっきりと見えていた。


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


東郷がすくってくれたのと同じくらいの量を、スプーンですくう

この場ではやっぱり少し物足りなさがあるが、

食べさせあうのはちょうどいい感じかもしれない

天乃「ぁ~ん、して」

東郷「……いざやるとなると、恥ずかしいですね」

天乃「喫茶店でだって、したことあるじゃない」

東郷「ありましたけど」

高校生時代の話だ。

共学に進んだ天乃達

男子にも積極的に絡んでいく天乃や友奈

控えめな東郷達

それはもう、みんな揃いも揃って人気だった。

当然のように言い寄る男子はいたし、

下駄箱にラブレターなんて古式ゆかしい手法が使われることもあった。

それがどれほどあったのか覚えがないが

天乃達の中の誰かが「もういっそ、公にいちゃつけばいいんじゃないかな~」と

趣味8割の気分で言い出したので、決行したのだ

東郷「それとこれとは話が――」

天乃「一緒よ。あの時も今も、私のことだけを見ていてくれればいいんだから」


東郷「先輩……」

天乃「先輩って呼ばれると、本当にあの日の再現になるわね」

東郷「っ」

天乃「はい」

天乃は容赦なく東郷へと攻めて、

東郷の準備が整わないうちにケーキを乗せたスプーンを差し出す。

周りのみんなからの視線が集まってきていて

東郷の窺うような視線が天乃へと向かう

けれど天乃は笑みを浮かべているだけで、

スプーンを差し向ける手は東郷の口元へと近づいていく

東郷「ぁ……」

天乃「あ~ん」

東郷「あ……あ~……ん……」

きゅっと目を瞑った東郷は、

意を決したように口を開けて差し出されたスプーンに食いつく

かつんっと小さな音がスプーンから伝わって

唇がクリームを完全に舐めるように滑り、艶々としたスプーンが残る


すぐに離れた東郷は動く口元を手で覆い隠しながら、

カメラのシャッター音から顔を背けるものの、

それでは良い写真が撮れないと、

こっち向いてという声が多くかけられる

天乃「大丈夫?」

東郷「大丈夫……です」

天乃「とてもそうは見えないのだけれど……」

白い肌はもう真っ赤で、

視線が欲しいと求められていても答える余裕もない

羞恥心に負けている東郷は

しかし、天乃にとってはとても愛らしいもので

悪戯なしとは言うけれど、

東郷達が常日頃言うように

これは【誘い受け】なのだろうと思って、東郷の頬に触れる

天乃「だから言ったじゃない――私だけを見てって」

東郷「っ……んっ」

優しく、唇を重ねる

驚きと、戸惑いと

揺れる東郷の瞳が瞼に覆われていくのを見守って、

天乃はみんなよりも少しだけ長くキスをする

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から

では少しだけ


天乃「っふ……」

東郷「ぁ……」

離れていく天乃を追いかけるように、

東郷は瞼を開いて、その瞳に天乃を捉える

少し、キスが長かったのかもしれない

東郷の手は天乃の頬へと延びて、もう少し先を求めてしまう

天乃「東郷」

東郷「美森です……天乃さん」

天乃「……美森」

手のひらの温かみを頬に感じる天乃は

しかし、それを払わないまま、東郷へと声をかける

東郷は自分の状況を分かっているだろう

分かっていても、もう少しだけ。と、思っている

いつもよりもずっとずっと甘いキス

それはとても心地よくて、解けていくようで

天乃「落ち着いて」

東郷「落ち着いています、冷静です」


天乃「流石に必要以上には……ね?」

一回は、みんな―参列者ではなく夏凜達―も許してくれる

けれど二回目はいけない

それをやってしまったら無法地帯に陥る

かつて鈍いと言われた天乃でも

約8年間、7人との付き合いを続けてきたら

何が調和を崩壊させ、自分の明日が危ぶまれるのかはそれなりに分かっているつもりだ

だから――駄目だ。

東郷「私には、必要なんです」

天乃「それはそうなんだろうけど」

東郷には必要だが、

みんなにだって必要なこと。

なので

天乃「また後で、ね?」

少し未来の自分に丸投げする

どうなるかは体が覚えているのだが、仕方がない。


東郷「先輩……」

天乃「いい?」

東郷「それなら」

頬に触れていた感触が離れていくのを感じて、

天乃は一先ず安堵のため息を零す。

頑張れ数時間後の自分。と、

自分が通って来た道半ばからの視線に天乃は眉を顰める。

天乃「ねぇ、美森」

東郷「はい」

天乃「私は別に、強制する気はないわ」

東郷「えっと……」

天乃「鷲尾でも東郷でも久遠でも。貴女が須美であり美森であることには変わりがないんだもの」

他の人が聞けば困るとは思うけれど

それらの人に教えるような目的でもないのであれば、好きに呼んでも問題はないだろう

少なくとも、二人の時にそんな気遣いは不要だ

天乃「貴女にとっての私を、好きに呼んで頂戴」

それが先輩なら先輩で良い

久遠なら久遠でもかまわない

もちろん、下の名前で呼んでくれるのならそれも良い。

ただ、無理はさせたくないと天乃は思って、東郷へと笑みを浮かべた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は場合によってはお休みをいただく可能性があります

明後日は、可能な限り早い時間から

では少しだけ


披露宴がただのいちゃつきの場になりつつある中、

飽きもせずに見守ってくれるみんなと

もんもんとしてしまっている夏凜達

広がりつつある温度差を仕切りなおすようにお色直しが行われた。

天乃、東郷、園子、樹がウェディングドレスからタキシードに

夏凜、友奈、風、沙織がタキシードからウェディングドレスへ

女性だったのが男性、男性だったのが女性に切り替わると

それはまた大きく印象が変わってくる

ただ、

タキシードに切り替えた4人のうち2人ほど、

着付け役が男性らしく胸元を控えめにすることを諦めざるを得なかったが

どうにか形にはなった。

樹「まさか、男装用に強く絞めたら出てきちゃうとは思いませんでした」

天乃「子供産んでるからね……何度も」

園子「それを除いても絞めきれなかった人もいるんよ~」

東郷「やめてそのっち」

樹「それはそれで男装らしくて良いんじゃないでしょうか?」


相も変わらず……と言ってしまうと、

樹には可哀想だが、

大きくなったと言っても本当に微量で、ストン……としている。

樹自身はもう、

それを特別コンプレックスに思うことはなくなったが、

やはり、天乃達と並んでしまうと小さく見えてしまう。

園子「髪型が同じでも、衣装が違うと全然違うもののように見えるんよ」

天乃「そう?」

新しいタキシード組も比較的髪が長い

みんなポニーテールで纏めているのは

天乃といえば、その髪型だったからだ。

今の天乃は家の中ではとてもラフだ

下はパンツ系で、上はTシャツ

冬場はもう少し厚着をするが、ほとんどが袖の長短くらいの違い。

そしてオプションでエプロンをつけているくらいで

子供達に猫じゃらしに飛びつく猫のように引っ張られることもあるからと

髪を降ろしているのが普段の天乃だ


樹「えっと……美森、さん。も、天乃、さんも格好いいですよ。とっても似合ってます」

天乃「先輩でもいいのよ?」

樹「っ」

タキシードを着てにっこりと微笑む天乃は、

流麗というべきか、とても様になって見える。

胸の主張が激しいので、異性とは到底勘違い出来ないが

それでも、恋をしてしまった樹としてはドキリとしてしまうもので。

園子「わっしーは普段スカート系が多いけどパンツも似合うね~」

東郷「それはそのっちも同じでしょう?」

園子「私はよくよく履いてるから。それ以上に履いてる天さんはむしろだからこそ様になってる」

天乃「褒めても出せるものなんてないわよ?」

樹「やっぱり佇まいが違いますね。私も、後一年で同じようになれると思います?」

東郷「樹ちゃんには樹ちゃんの良さがある。可愛いは正義だって、風先輩も言ってるでしょ?」

樹「お姉ちゃんを参考にするのは、ちょっと間違ってる気がするんですが」

樹が困ったように言うと、

そのずっと後ろの方、

廊下を埋め尽くすような影が近づいてきて

風「なぁにか……嫌な話が聞こえた気がするんだけど?」

樹「気のせいじゃないかな」

沙織「意外に辛辣だよね。樹ちゃんって」


天乃「似合ってるわよ、夏凜」

夏凜「お世辞はいいから……別に」

天乃「本心なんだけど」

東郷「友奈ちゃんも素敵よ」

友奈「えへへ……ありがとっ。東郷さんも格好いいよ」

照れくさそうに顔を背ける、ウェディングドレスの夏凜と

嬉しそうに満面の笑みを浮かべる友奈

その対照的にも見える可愛らしさには、園子も沙織も思わず笑ってしまって

夏凜の「笑うな」という照れ混じりにそれは増長する

天乃「沙織も、流石だわ。私なんて比にならないわね」

沙織「あたしは背が高いだけだよ」

樹「胸も大きいですし、お姉ちゃんくらいに」

風「そのくせ、あたしよりも背が高いからね。やっぱり、モデルになったら?」

沙織「私の身体は売り物にはしないよ~。天乃さんのものだからね」

ふふんっと胸を張って見せた沙織の視線を感じて、

天乃は笑みを返す

天乃「ありがと、大切にするわ」

園子「天さんはアイドルになれるよね? スカウトされたことあるし」

天乃「小学生アイドルの話でしょう? 鼻で笑ってスカウトの人の顔をひきつらせたから無理だわ」

夏凜達とではなく、娘である星乃達と一緒に買い物をしているときの話だ

妹さんたちとおつかいなのかと言われた時点であれだったが、

小学生のアイドルユニットに加えたいという話だったので、鼻で笑って身分証を提示したのだ。

東郷がそうだったように、胸の大きさで判断するわけにはいかないのは分かるが、

せめて中学生に思って欲しかったと、天乃は今でも思っている。

天乃「それに、私だってみんなのものだもの。この身体を売るつもりはないわ」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


みんなで交流で最後


すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から


遅くなりましたが、少しだけ


風「別にアイドルだってモデルだって体売ってるわけじゃ無いんだけどね」

東郷「ある意味ではそうとも言えるかもしれませんが」

園子「本当の意味で体を売った経験もある私達としては、人目に晒すくらいどうってことないんよ~」

天乃「命も、懸けたものね」

今となっては、過去の話。

最後の最後まで死にかけたのが天乃だからか、

友奈達はそれを軽く言うのはまだ不満なようで、笑い事ではないと首を振られてしまう

友奈「命を賭けるくらいなら、天乃さんにはアイドルやって貰いたいです」

沙織「あたしマネージャーやっても良いかなぁ?」

夏凜「事務所はいる必要あるんじゃないの?」

そういう仕事のことなんて詳しいことは知らないけれど、

そうされてしまうくらいなら、アイドルでもモデルにでもなって、

いなくなることなんて、一切考えられない状況になってしまう方が良いと

みんなが思っている


天乃「止めてよ、私……小学生でデビューなんてしたくないわ」

天乃の本来の年齢を考えれば

今からというのは、やや難しいのかもしれない。

しかし、それを隠して

中学生―小学生―でも通せなくもない状態で成長が止まってしまった天乃が

それで押し通したとしても、

その年齢での子持ちは、アウトである。

もちろん、子供がいようがいまいが天乃はそんな詐称などする気もないけれど

天乃「ほら、みんなもう待っているんだから」

夏凜「それもそうね」

東郷「友奈ちゃん」

友奈「え、本当にするの?」

東郷「賑やかしよ。賑やかし」

困り顔の友奈ではあったけれど

東郷が両手を広げると、友奈は「せっかくだからね」と、苦笑して体を委ねる

東郷はとても手慣れた様子で、友奈の体を抱き上げた


風「……やる?」

樹「お姉ちゃんは、妹にお姫様抱っこされて嬉しいの?」

風「棘が痛い」

樹「痛いのは視線だよ~」

そう言った樹は少し照れくさそうに笑うと、

でも、私も力はあるんだよ。と、自慢気な表情を見せる。

介護は力仕事というわけではないものの、

力はあるだけあったほうが良い。

とりわけ、夏凜達に付き添って人並み以上に体力もついている樹は、

太っているわけでもないたった2歳上の姉を抱き上げるくらいは問題なく出来る

ゆえに当然ながら、天乃のことも簡単にお姫様抱っこ出来てしまう。

樹「サプライズ、やってみたい?」

風「言うようになったじゃないの……ほんと」

樹「お姉ちゃんの妹で、歌野さん達の弟子で天乃さんのお嫁さんだもん。強くもなるよ」

にっこりと浮かべる樹の笑みがとても強かに感じられて

風は逆にしておけばよかった。と、零す。

風「良いわ樹、やってみなさい」

せっかくの披露宴なのだから、少しは面白みある演出があっても良いと、風は樹に委ねた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はその分、可能であればお昼ごろから

遅くなりましたが、少しだけ


沙織「園子さんはどうします?」

園子「私はするよりも見たいんよ」

園子は自分と沙織を見比べると、

何度か握り拳を作って、手首を動かす

園子「さおりんをお姫様抱っこできる自信もない……」

沙織「あたしってそんなに重いかなぁ?」

園子「いっつんや天さんなら余裕だけど、私はね~」

そんなに鍛えているわけではないという園子は、

沙織と比べれば確かに小柄ではある。

それを言えば樹だって小柄ではあるが、

樹は鍛えているのでだいぶ大きい沙織も、どうにかできる

園子「にぼっしーに遠慮しなくても良いんじゃないかな」

沙織「遠慮はしないよ? ただ、今は夏凜さんかなって思って」

少し考えるように言う沙織は、

天乃と夏凜を見つめて、小さく息を漏らす

沙織「天乃さんなら二人いけそうな気がする…・・」

園子「それは無理だと思うな~」

いまだに扱うことのできる力を用いればそれも可能だと思うが、

通常の状態の天乃に、二人は無理だ


沙織「そっかぁ」

残念そうに言う沙織だが、

表情は全く残念そうではなく、むしろ嬉しそうに天乃と夏凜を見守っている。

沙織は天乃に好意を抱いていても独占欲はあまりない

寧ろ、園子と同じように天乃が幸せならそれでいいという考えなので、

園子ともよくよく気が合うタイプだ

沙織「……でも、手持ち無沙汰は寂しくないかな?」

園子「え? えっ!?」

何の話かと、振り返った園子の手を沙織は強く引く

その勢いのままに園子の右肩に手をかけ、

手を引き、体勢を崩させた手で園子の膝裏を打ち抜いて一気に持っていく

園子「わっ……」

沙織「園子さんが難しかろうと、あたしは余裕だよ」

園子「ま、待ってさおりん。これはまずいんよっ」

沙織「男装側がお姫様抱っこするなんて決まり、あたし達にはないと思うんだよね」


沙織「あたし的には、抱っこされる夏凜ちゃんも抱っこされる天乃さんもどっちも見てみたい」

園子「……そのための踏み台?」

沙織「照れてる園子さんが可愛いって、天乃さんも喜ぶと思って」

にっこりと笑みを浮かべる沙織

ウェディングドレスというやや身動きのとりにくい衣装でありながら

身軽そうに、園子を抱き上げる姿勢を調整する

園子「だからって……これはちょっと恥ずかしいんよ」

沙織「だから良いんじゃないかな。乃木さん……若葉さんも驚かせられるし」

園子「ちーちゃんがからかいそうだね~……」

ほんのりと赤らんだ表情で言う園子は

しかし、その二人を想像してか、一息ついて意を決した表情を見せる

園子「いいよさおりん、こうなれば勢いだ~」

沙織「やったーっ」

なぜか一気にテンションのあがった二人を、

夏凜が困ったように一瞥して

夏凜「私はやらないからね?」

天乃へと先手を打った


天乃「え~」

夏凜「え~じゃないし」

東郷「夏凜ちゃんが嫌なら、抱いてあげれば良いのよ」

夏凜「それはなにか違くない?」

ドレスの自分がするのはと控えようとした夏凜だが、

その視界の端には、ドレスで抱きシードの園子を抱き上げている沙織と、

恥ずかしさを殺しきれていない園子が見えていて

友奈「沙織さんも関係ないって言ってましたし」

夏凜「聞こえないふりしてたのに」

天乃「ふふふっ、それは無理なお話ね」

廊下はそんなに広いわけではない

そして、離れているわけでもない。

当然ながら聞こえていた園子達の会話を無視しようとしていた夏凜は

乗り気な天乃を見下ろすと、眉を歪ませる

夏凜「天乃はやりたい……のね。まぁ、その顔見ればわかる」


天乃はどちらかと言えば、お姫様抱っこをしたい側だ

されるのもやぶさかではないのだけれど

普段からされ慣れている天乃としては

やっぱり、特別な日くらいは自分が優位に立ってみたいと思うもので。

それが顔を見ればわかる夏凜は困り切った様子で東郷達を見る

東郷も樹も沙織も、

それぞれが友奈や風、園子をお姫様抱っこしていて、準備を終えている

このまましばらく時間を稼げば、抱けなくなるだろうか。

そんな事を考えた夏凜は、何も言わずにこやかな天乃を見て

夏凜「身体は大丈夫なの?」

天乃「大丈夫よ。今なら九尾だって抱き上げられるかもね」

夏凜「人の方? 狐の方?」

天乃「人の方よ。夏凜よりも大人だもの」

夏凜「ドレスの私より?」

天乃「容姿年齢的にはね」

夏凜「なら、やってみる?」

夏凜はそう言って、ドレスでは見難いけれど、身構えた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


では少しずつ


天乃「緊張しないでね? 身体が固いと危ないから」

夏凜「大丈夫、任せるから」

夏凜は気恥ずかしさこそ捨てきれていないものの、

天乃には全幅の信頼を置いているようで、緊張は感じられない。

天乃と夏凜の身長差は、約10センチほど

天乃が少し屈むだけで、夏凜の足腰に手が添えやすい

天乃「くすぐったい……一気にいくからね?」

夏凜「ん」

屈んで身を寄せた天乃の顔にはドレスが重なって

鼻先を掠めるむず痒さに顔を顰めながらも、

足腰、夏凜を抱きかかえる腕にしっかりと力を入れて、夏凜の体を抱き上げる

夏凜の体は強張ることなく、

ドレスの裾だけが勢いよく暴れて、天乃の腕の中に夏凜の体が――おさまらない。

園子「……あらまぁ」

風「いや、うん……大丈夫。セーフセーフ、いけるって」


通常の服装だとしても、

夏凜の体は―友奈達の体でも―天乃の小さな体には余る。

そこに、ウェディングドレスが追加されているのだ

天乃の体の約8割が見えなくなってしまっているし、

ドレスの裾は殆ど引き摺る形になってしまっている

天乃「ん……どう思う?」

夏凜「……風達は大丈夫らしいけど」

風や東郷達は、これでもありだと笑っている

とはいえそれはあくまで、披露宴の一種のネタとしてだろう。

夏凜のドレスにもはや埋もれていると言っても良い天乃が、

そのまま入場すれば、解錠はきっと大賑わいになる。

ドレスの裾で天乃の下半身もほとんど見えないので、

一見では、夏凜が浮遊しているように見えるかもしれない

友奈「前見えます?」

天乃「かろうじて」

東郷「私は見えますか?」

並ぶように立っている東郷が声をかけると、

ドレスを振り払うように首を動かした天乃は、頷く

天乃「両隣は前よりも見やすいわ。前は駄目ね。夏凜が太ったのかも」

夏凜「太ってないわよっ」


天乃「おかしいわね……妊娠させた覚えは……」

夏凜「どう見てもドレスでしょうがっ」

膨らんでいるのは腹部ではなくスカートだ

重力に従って床に垂れているのを除いても、

膨らんだ分が天乃の前方をやや覆ってしまっている

沙織「夏凜さんが案内してあげれば良いんじゃないかな?」

園子「にぼっしーのドレスの裾は踏まない? 大丈夫?」

天乃「どうかしら」

足にかかる裾の感覚

それを超えないように歩けば、どうにか踏まずに済みそうなものだけれど

それで大丈夫というのは、不安ではある

夏凜「私の身体、自分でどれだけ安全に抱えられる?」

天乃「なんで?」

夏凜「私が肩から手を離して平気かって聞いてるのよ」


よくある形のように、夏凜は天乃の方に手を回している

その手を離しても平気かと言われれば、天乃は平気ではある。

今も負荷はかかっていないし体格差があると言っても力はあるので、

樹が風を抱えられるように、天乃も問題なく夏凜を抱えることが出来る

天乃「平気だけど、どうして?」

夏凜「スカートは持ち上げておいてあげる」

天乃の方から左手を離して、

垂れ下がるスカートの一部をかきあげながら持ち上げていく

それでもやはり、天乃の身体には大きく見えてしまうものの、足元だけは何とか確保できた。

視界はより不安が増したけれど。

夏凜「どう?」

天乃「足元は平気そう。前が完全に見えないけど」

東郷「それなら、私達が先導するから、夏凜ちゃんは付いて来れるように案内してあげて」

樹「スカートとかが引っかかりそうなところがあったら、私達が声かけますね」


夏凜を降ろすのではなく、

天乃がそのまま行けるようにと、みんながどうするべきかを決めていく

天乃がそうしたいならさせてあげたいからだ。

もちろん、それで安全が確保しきれないなら断念も致し方ないが、

出来るのならやる。それが夏凜達だ

夏凜「なんかちょっと不格好だけど……披露宴だから許してあげる」

天乃「ありがと」

沙織「でも、本当は大好きなお嫁さんの隠し切れない胸が腰に当たってるからなんだよね?」

園子「や~ん」

夏凜「思春期かっ!」

当たっているのは事実だし、

それがほんの少し――というのもあるにはあるが、

別に邪まな気持ちなんて持ってはいない。

こういうのは、もうそれなりに慣れている

風「は~い。タキシード……じゃないのもいるけど、みんなが疲れないうちに行くわよ~」

東郷「では参りましょう」

そうして、天乃達は決めた順番で入場していった


それぞれがお姫様抱っこをしての入場は大好評で

友奈と東郷は様になっていると喜ばれていて

二人もまんざらではなく、撮影に応じていたし、

風と比べて華奢に見える樹が姉である風を抱きか替えているのを見た友人たちは、

樹に驚いたり、顔を真っ赤にしていく風に笑っていたりと、楽し気で

女性役に抱かれる男性役の沙織と園子は、

考えていた通り……ではなかったが、球子が若葉をからかうのが見えた

そして、

見えなくなっている天乃にはなぜだか、声援が送られて

子供のお使いに頑張れと声をかけるかのように、

樹や東郷達だけでなく、周りからもそっちはぶつかるとか、頑張ってとか

優しい声が複数かけられて、

それ以上に、シャッター音とカメラのレンズが向けられていた。

披露宴のサプライズな演出としては、大成功だったと言ってもいいだろう。


ウェディングドレスと、タキシード

それぞれが入れ替わるように着直すお色直し

そして、全員が衣装を揃える紋付き袴

全員が統一して並んでいるというのも、

独特な披露宴としては面白みがあったのかもしれないけれど、

天乃くらいは、白無垢の方が良かったのではという意見もあって、

天乃達全員が紋付き袴を着ている写真と、

天乃だけが白無垢を着ている写真の二枚が出来上がることとなったり、

両親の挨拶が天乃の母親だったり、

新婦からの手紙―全員新婦―が、天乃の知らない間に夏凜に決まっていたりと

色々あったが、無事に披露宴は終えることが出来た


すみませんが回線不調なので少し中断いたします
IDが複数乱れるかと思いますが、
酉はそのままなので気にしないでください


ではもう少しだけ


結婚式も披露宴も無事に終わって、自宅へと帰った天乃達

そこまで大きく騒いだ覚えはないものの、

各々の自室へと戻ってすぐに、深く息を吐いて体を伸ばした。

白無垢、ドレス、タキシード、紋付き袴で、白無垢

天乃は何度も着付けをしていて、

流石に苦しかったのだろう、胸元を軽く擦る

天乃「今日はもう、ゆっくり眠りたい気分だわ」

夏凜「私は良いけど、東郷……美森達はどうだかね」

天乃「一応、ケーキ入刀でキスしたのに?」

夏凜「あんなの煽っただけでしょ」

天乃「式で誓いのキスしたいって話があったから、その分を取り戻しただけ――にはならないのね」

夏凜の困った表情に諦めた天乃はそう零して、

子供を含目れば4人が横になれるベッドに、身体を横倒しにする

天乃「分かってはいたけど」

夏凜「分かってたならあんなことしなければよかったんじゃない?」

天乃「したかったのよ。私も」


夏凜「結婚初夜って知ってる?」

天乃「言葉だけは知ってるけど」

夏凜「そう言えば東郷が言ってたんだっけ?」

天乃「東郷じゃなくて友奈から言われたのよ……驚いちゃったわほんと」

友奈も、もはや無垢というには経験の多い女の子になってしまっているのだけれど

それでも知識的には夏凜達に遅れている

そんな友奈から「結婚初夜はどうしますか?」などと真っ直ぐに言われてしまっては、

流石の天乃も、言葉を失った。

天乃「東郷さんはしたいらしいです。って言われてね」

夏凜「するって言ったの?」

天乃「考えておくって。さすがに、今日の体が大丈夫かどうかなんてその日は分からないし」

夏凜「大丈夫そうなの?」

天乃「……無理ね」

夏凜「だろうと思った」


天乃も疲れを感じてはいるが、

結婚初夜を迎えることに関しては別段問題はなかった。

しかし、それは相手が夏凜だけの場合だ

夏凜だけでなく、友奈に東郷と風に樹そして沙織に園子もいる

それを体力的に乗り越えられるとしても、

子供達がいるので、全員で同時にはそもそも無理な話だ

天乃「少しだけ相手するくらいなら、出来なくもないけれど」

夏凜「そういう隙は見せない方が良いんじゃない?」

天乃「あら……誘ってるとは思わないの?」

夏凜「そう思っていいなら、そうすることも吝かじゃないんだけどね」

ベッドで横になっている天乃の傍に腰かけた夏凜は、

いつもそうするように、天乃の体に跨るようにする

夏凜「私だけで終わるとは思えないし……明日、お昼過ぎに起きることになるわよ。天乃」

天乃「そう、よねぇ」


夏凜「天乃がやりたいなら、子供は若葉達に見ててもらうことも出来るけど」

天乃「若葉が質問攻めにされるやつね……」

まだ察しがついているわけではないだろうけれど、

天乃達が何かをしているというのは分かっているようで、

お母さんたちは何しているのかと、質問攻めにされたとかなんとか。

それでも子供達は千景がいればそれなりに満足できるようで

最終的には千景がもみくちゃになっているのが基本だ。

天乃「夏凜はしたいの?」

夏凜「私はどっちでもいいわよ。まぁ、あの子は今日は一緒に寝たいだろうけどね」

星乃と月乃

それに、夏凜や東郷、沙織との子供もいて

みんな一緒に一つのベッドというのは難しいので

東郷と沙織の子供は、基本的にそっちの部屋で寝させている

まだ小さい夏凜との子は一緒の方が良い。

天乃「今日はほとんど1日、春信さん達に任せてしまったものね」

夏凜「兄貴達は喜んでたけどね」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

メインの夏凜


すみませんが本日は所用のためお休みとなります
明日は可能であれば、通常時間から


遅くなりましたが、少しだけ


天乃「春信さん、本当に子供好きよね……星乃と月乃も可愛がって貰っちゃって」

夏凜「絶対に親ばかになるわね、あれは」

天乃「そろそろ結婚するの?」

夏凜「するんじゃない? まぁ……たぶん」

夏凜の数歳も年上である春信は、

年齢的に結婚していてもおかしくはないが何分、仕事熱心なためにまだ未婚だった。

けれど春信にも相手はいるらしいがはっきりしていないし、

明らかにされたわけではないので、夏凜も曖昧に答える

夏凜「結婚式、どうだった?」

天乃「あっという間だったわ。あんなに待って、あんなに念入りに考えて……それまでは沢山だったのに」

宣誓とは言え

みんなへの言葉を、みんなの前で言うというのには

多少の緊張感は持っていたけれど、大きな緊張はなくて

本当に、気付いたら終わっていた

天乃「7年も経って、もうやらなくても良いんじゃないって言われたこともあるけど、やって良かったって本当に思う」

夏凜「そうね」


夏凜「披露宴は、ちょっとやりすぎた気もするけど」

天乃「良いじゃない、みんな楽しんでくれたんだから」

夏凜「楽しかった?」

天乃「楽しかったわ」

夏凜「私も楽しかった」

聞かれるよりも前に、夏凜は天乃の言葉に上乗せする

一番大変だったのは着替えが多く、相手も多く、いろんな撮影を要求された天乃だったとは思う

その天乃が楽しんでいたという披露宴は、

夏凜にとっても楽しく幸せだった。

頑張って、死にかけて、ようやく手に入れた日常

最も負担のかかっていた天乃がみんなと一緒に楽しんでいて

みんなに抱っこされたりみんなを抱っこしたりと賑やかで

それを見られているのが、幸せだった


夏凜「本当は、感動して泣いたりするのかもしれないけど……そんな余裕もなかった」

天乃「笑ってばっかりだったわよね、私達」

ここまでに7年という長い時間があって

ずっと待ち焦がれていた一日だったはずなのに

ちょっぴり、感動ではない瞳の潤ませ方をさせてしまった子もいるけれど、

夏凜達はみんな、感動するよりも結婚式や披露宴を楽しんでいた。

それはきっと、たった一人を除いて……現代を生きた勇者達が無事で

護ることのできた世界を生きる友人たちがみんなを受け入れて、一緒に居てくれたからだろう

天乃「銀は……銀はね。お嫁さんになるのが夢だったんだって」

夏凜「聞いた」

天乃「ありがとね、呼んでくれて」

夏凜「物凄く迷ったけどね。瞳にも、兄貴にも、天乃達の親にも相談して――決めたのよ」

本当なら天乃達と同年代の娘がいた三ノ輪家。

親戚と呼べなくもないみんなを呼ぶのを、しかし天乃は迷っていて

それに裏から手を回したのが、夏凜達

そうして、銀の両親や弟たちは快く参加してくれた。

夏凜「幸せになりましょ、これからも。ずっと」

夏凜はそういうと、

ベッドの上、隣に並ぶ天乃の体を抱き寄せて――軽くキスをした。


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


天乃「ん……なぁに? するの?」

夏凜「軽くね、軽く」

天乃「軽くってどのくらい?」

夏凜「披露宴と少しくらい」

夏凜はからかうように答える

星乃達は千景たちのところにいられれば全然いいのかもしれないが、

夏凜との子供は、まだ三歳

姉妹である星乃達や、

親類……というのはやや違うが、球子たちもいるので

任せることは出来るのだけれど、やはり、そうするべきではないと夏凜も思っているのだろう。

体を起こして、天乃の身体に覆いかぶさるように位置取る

夏凜「バレない程度」

天乃「だったら深いのはなしにして頂戴ね。バレちゃうから」


夏凜は大丈夫と言いながら、唇を重ねる

軽く、触れ合わせる程度の緩いそれは、すぐに離れて薄れていく

天乃「積極的ね」

夏凜「穴埋めよ……されてばっかりだったから」

夏凜は勇者としてのお役目が終了するまでは非常に奥手だったが、

それからはだんだんと積極的に触れてくれるようになった。

成長し、女の子から女性らしさへと変わっていき

鍛えているおかげか、男顔負けの力強さを併せ持っている――夏凜

天乃「抱いてくれないの?」

夏凜「抱いてあげるわよ」

性的にではなく、ただ純粋に

横になっていた天乃の体を夏凜は抱き起して、

ベッドの上で座り込むようにしながら、唇を重ねる

一度、二度……そうして、夏凜は天乃をじっと見つめた


夏凜「お疲れ様、天乃」

天乃「どうしたの急に」

夏凜「いや……なんていうか、ひと区切りついたかなと思ったのよ」

戦いを終えた約8年前

それから、大人になったら結婚式を挙げるということを目標にここまで来た。

それが終わりなわけではないけれど

一つの区切りとしては、ちょうどいいと夏凜はおまったように笑みを浮かべる

夏凜「全員が全員そういうわけじゃないけど、私達にとっては結婚が一つの目標だったでしょ?」

天乃「そうね……最年少の樹が二十歳になったら結婚式を。そうして頑張ってきたのよね」

結婚式、披露宴

それをするために学生時代にはバイトを頑張ったと、天乃は笑みを浮かべる。

天乃「これからは?」

夏凜「漠然としたものしかないわね」

人生で一度きりともいえるような、壮大な目的は中々見つからないかもしれない。

けれど、退屈――ではないだろう。

日々を楽しく健やかに幸せに。

その普遍的な日常というものが、どれだけ貴いものであるのかを知っているから。


歳をとっていくのは、少し怖い。

天乃を置いて、いなくなってしまうという未来を今からでも怖く思う。

けれど、少しでも長く傍に居たい

いつかこの体が、天乃と違って酷く衰えるとしても、

少しでもそれを遅らせたい。

夏凜「二度目の成人式とか、還暦、傘寿、卒寿……百寿。それをみんなで迎えるのが目標ね」

天乃「あら、簡単そうで大変よ?」

夏凜「バーテックスと戦い続ける以上の苦労が他にあるとでも?」

天乃「確かに、それはそうだわ」

命懸けの戦いを経た夏凜達にとっては、

死に物狂いで頑張る――なんてことは序の口で

それが勉強だろうと運動部系の何かであろうと必要であれば全力で頑張ることが出来るし、

そうしてしまえば、とても優秀な成績を収めることは容易だった。

それでも、健康な体で長生きすることが簡単だとは思えない。

けれど――だとしてもだ。

夏凜「私達はずっと、天乃と一緒に居たい。私も、子供達も、その子供……それは今は考えたくないけど」

娘、孫、ひ孫……そして、天乃と同じく長く存在し続けられる精霊達。

たとえ自分たちが去って行っても、きっとみんながいてくれる。

夏凜はそこまでの想いを抱きながら、言葉にはせず、ただ口元を綻ばせて

夏凜「だから――まぁ、これからもよろしく」

天乃「ふふ……なんだか、ちょっと気恥しくなるけれど」

改まっての申し出

頬を赤くしている夏凜に目を向けた天乃は思わず声を出して笑って

天乃「ええ、末永く――宜しくお願い致します」

そう、返した。

ではここまでとさせていただきます。

ぶつ切りになりすぎてしまったので
エピローグらしくなくなってしまいましたが、以上で終わりとなります。


夏凜との本番は、これから始めるとまた果てしなく時間がかかるかと思うので
オマケとして追加できればと思っております。


では、終了処理を行います。


改めて、これにて今回の物語は終了とさせていただきます。
今回の物語の開始が2016/05だったので、約4年半もの間お付き合いありがとうございました。


未来的には色々ありますが、今回もハッピーエンドでの終了となります。

未定稿な部分としては【園子と天乃】、【夏凜と天乃】ですが
余裕のあるときにオマケに追加できればと思っております

エピローグ以前の最終関係表

最高値は夏凜、次点で沙織、友奈
エピローグ時は、西暦組も100にまで上がっている想定になっています。


三好夏凜との絆  170(最高値)
結城友奈との絆  158(かなり高い)
東郷美森との絆  157(かなり高い)
犬吠埼風との絆  144(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  128(かなり高い)
乃木園子との絆  120(かなり高い)

乃木若葉との絆  118(かなり高い)
土居球子との絆  65(中々良い)
白鳥歌野との絆  63(中々良い)
藤森水都との絆  56(中々良い)
  郡千景との絆  70(中々良い)

   沙織との絆  161(かなり高い)
   九尾との絆  85(高い)


今回の物語中、極力日刊を心掛けておりましたが中々うまく進まなかったのと
恐らくですが、ニューゲームを開始した場合また4年半ほどかかるので

ニューゲームに関しては、特に考えておりませんので
ニューゲームの有無は一応、安価を取ろうかと思います。


舞台設定としては
ゆゆゆ(楠芽吹、勇者の章含む)、わすゆ、のわゆの三つの舞台があります。
キャラメイクに関しては、作り終えている天乃が一番完結させやすいのかなと思っているので
のわゆ以外では、固定させていただくことになるかと思います。


舞台設定

・ゆゆゆ
 ゆゆゆ一期二期を合併しているので最長

・わすゆ
 状況によりますがそこまで長くならないかと思います

・のわゆ
 正直未知数です

安価は23時00分から開始したいと思います。


1、ゆゆゆ
2、わすゆ
3、のわゆ
4、開始しない


安価↓~↓3

※23時10分まで


1と3が両方なので、
安価スレらしく先取りされた【3】にしようかと思いますが、よろしいでしょうか

問題があれば、1と3を半々のコンマ判定にします。

のわゆの場合は主人公は陽乃さんになりますか?

>>266

天乃は使えないので、
陽乃さんか、新規でキャラメイクになります。

ありがとうございます
問題なさそうなら個人的には陽乃さん希望でお願いします

>>268
すみませんが、そこは安価で決めさせて頂きます。
舞台設定に関しては、特に反応がないので【3、のわゆ】で実施いたします。


主人公に関しては、35分から安価を行います。


1、久遠陽乃(天乃の先祖設定)
2、キャラメイク

↓1~3


まだ途中ですが、過半数のため【1、久遠陽乃】で進行しようかと思います。

設定は以下

学校:勇者学科3年
勇者部:無所属
誕生日:6月6日
身長:160cm
趣味:映画、読書、運動系全般 
好きな物:うどん・辛いもの

性格:物語開始時は【温厚】

※性格については、物語によって変化します。


では、またよろしくお願いいたします。

開始は明日の通常時間、
21時頃からとさせていただければと思います。


■のわゆでの注意点
・勇者が普通に死にます(原作と違って早死にもあります)

■キャラメイキングについて
・この設定でスタートいたしますが、進行中に必要があれば随時追加します。

■投稿について
・極力日刊を心がけますが、基本は21~23頃かと思います。

・現在、卑猥な描写のためSS速報Rで投稿中ですが、
 ニューゲームに伴い、SS速報で開始することも可能です。

 SS速報RよりもSS速報の方が追いやすい等あれば戻りますが
 その点は変更の必要ありますでしょうか?

このほか、何かあればお願いいたします。


のわゆ編でもよろしくお願いいたします(後できればRのままを希望)
以下質問で恐縮ですが、のわゆの作中日数はどこまでになるのでしょうか?

新作の応援はもちろん、園子と夏凜の本番も楽しみだな

今更だけど久遠さんの方も含めて原作にはある血液型の設定は特にない感じ?


では少し回答して、新スレを用意いたします

>>275
開始が2015/07/30
そこから飛んで2018/07/30~2019/08/14
一ヶ月は2週間(7×2の14)を想定しています
なので14×13の182日になります。


>>279
血液型は特に考えていませんが、決めますか?


では血液型だけ設定して進めたいと思います

1、A型
2、B型
3、O型
4、AB型
5、コンマ判定


↓1~3

※30分まで
※同率なら先取り有効

ではこの設定で進めていきます。

名前:久遠陽乃
学校:勇者学科3年
勇者部:無所属
誕生日:6月6日
身長:160cm
血液型:B型
趣味:映画、読書、運動系全般 
好きな物:うどん・辛いもの

性格:物語開始時は【温厚】


では、ニューゲームはこちらのスレで始めます

【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1601649576/)


リアル多忙のため、
連日休載で申し訳ないですが、次スレは明日立てます。

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