神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 5社目(531)


巫女「ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・」グスッ

??「ありがとう」

巫女「なんで・・・ なんで謝ったりするの・・・?」

??「私はずっとこの村を・・・ そして・・・ これからもあなたを見守り続けます」ゴボッ

巫女「いや・・・ うそ・・・ いやだ・・・」

??「辛い思いをさせて・・・ ごめんね」ウッ

巫女「いやだ・・・ お願い・・・ 嫌だよ!」

??「笑って・・・ 笑顔を見せて・・・ そしたらまた私は・・・・・・」ニコッ

巫女「嫌ー!!!」

――――
―――
――


~あらすじ

神様「私は神様! ボン!キュッ!ボーン!の見事なボデーを誇るかわゆい女神!」

神使「ツルペタ幼女体型である神様へお使いする神使と申します」


■ ~ 番外編 2019年冬『おにゅおにゅ神社』~


神使「良いお天気ですね、神様」テクテク

神様「・・・・・・」トテトテ

神使「見て下さいよ、この大自然。 空気がとても美味しいです」ニコッ

神様「うがー!!」ゲシッ ゲシッ ゲシッ

神使「痛いっ! ちょ、痛いですよ神様」

神使「おい、クソ犬! また私を騙してこんな田舎に連れてきやがって!!」

神使「騙したなんてとんでもないですよ」

神様「昨日、『次は都会方面に行きます』って言っただろ!」

神使「私は東海方面って言ったんです。 都会じゃなく東海地方の東海です」

神様「・・・・・・」

神使「聞き違えたのは神様です」

神様「神使くんさぁ・・・ マジ腹立つんだけど」イラッ


●田舎道

テクテク

神使「今回は神社の確認だけですから、すぐ終わると思いますよ」

神様「そんな誰でも出来るような仕事、私たちがやる必要ないんじゃない?」

神使「それが特別手当の額がとても良い案件なんです」

神様「お前・・・ それ、訳あり物件じゃねーの?」

神使「そんな事はないと思うのですが・・・」

神様「今回はサクッと終わらせてすぐ帰るぞ。 深追いはナシな」トテトテ

神使「あっ、見えてきました。 あの神社のようですね」

神様「期待通り、見事なボロ神社」

神使「そんな失礼な・・・ あれ? 境内裏の草地に誰かいますね」

神様「昼寝なんて良い身分だな」

神使「そうでなく、あの格好はもしかして・・・」

神様「うほっ!」タッタッタッ

神使「あっ! ちょっと神様ー!」


●境内裏

チュンチュン

少女「・・・・・・」ボー

 ウヒャヒャヒャ

少女「!?」ビクッ

神様「巫女さんみーつけた~ きゃ~わ~ゆ~い~!!」ピョーン

神使「初対面で飛びつきはダメです」グイッ

神様「グヘッ!」

少女「・・・・・・」

神使「驚かせてしまい申し訳ございません。 ほら神様、ちゃんと謝って下さい」

神様「だって、巫女服がかわゆいんだもん。 飛びつかない方が失礼だろうが」

神使「その格好、もしかしてこの神社の巫女さんでしょうか?」

少女「・・・・・・」ガクガク


神使「あ、あの・・・ 大丈夫ですか?」

少女「こ、こちらこそ・・・ ごめんなさい」タッタッタッ

神使「あっ・・・」

少女「」タッタッタッ


神使「・・・行ってしまいましたね」

神様「どう思う?」

神使「あの怯え方は普通ではないですね」

神様「私的には、ツインのお団子結いがとってもポイント高かった訳よ」

神使「・・・・・・」

神様「あれだけ大きなお団子、解いたらとても長いロングだろうな。 かわゆい」

神使「謝りに行きますよ」

神様「望むところよ!」

神使「全く・・・ すぐ見境無く飛びつくんですから」ハァ

神様「・・・・・・」


●鬼遊神社

神様「おにあそび神社?」

神使「鬼と遊ぶと書いて“おにゅおにゅ”と読むそうです」

神様「うん、百歩譲って“おにゅ”は良いとしよう。 何で2回言うの?」

神使「さあ? 私に聞かれましても・・・」

神様「主神にみっちり問い詰めてやる」ニヤッ

神使「このお社に主神様はいないとの事ですよ?」

神様「あ?」

神使「その状況も合わせ、神宮から確認するよう言われています」

神様「・・・・・・」

神使「何か気になる事でも?」

神様「いや、取りあえず本殿に行きますか」

神使「その前に神様はやることがありますよね?」

神様「・・・・・・。 はい、巫女さんにビックリさせてごめんなさいって謝ります」


●社務所

トントン

神使「ごめん下さい」

ガラガラ

少女「は、はい」チラッ

神使「先程はどうも」

少女「あっ」ビクッ

神様「さっきは急に抱きつこうとしてごめんなさい」ペコリ

少女「い、いえ・・・ 私の方こそ申し訳ございませんでした・・・」ペコ

神様「抱きついた後に、ペロペロしようと考えていてごめんなさい」ペコリ

少女「・・・・・・」

神使「あ、あの・・・ こちらの神社の巫女さんでしょうか?」

少女「」コクリ


神使「少しお話しをさせて頂いてもよろしいですか?」

少女「・・・・・・。 村の方ではないみたいですが・・・」

神使「私たちは神宮の者です」

少女「神宮?」

神様「神ちゃんです!」ズイッ

少女「!」ビクッ

神使「神様、またそうやって前のめりにならないで下さい」

神様「あっ、ごめんね」ハハハ

少女「わ、私こそごめんなさい・・・」

神様「外寒いし、中に入っても良い?」

少女「」コクリ


●社務所内

少女「お茶くらいしかお出しできる物がなくて」コトッ

神様「あんがと」ニコッ

少女「はぅ・・・///」

神様「?・・・」ズズズ

神使「改めまして、私たち神宮から参りました。 こちらは・・・」

神様「私は、かわゆい神ちゃん。 巫女を少々」

神使「私は神使と申します」

少女「おにゅおにゅ神社の巫女で少女です」ペコリ

神使「このお社には少女さん以外は?」

少女「私一人・・・ です」

神使「それは大変ですね」

少女「いえ。 それでご用件の方は」

神使「大した用事ではなく、この神社に関する簡単な確認だけですので」


神様「ちょっと数日泊まって調査させてもらおうかなぁ~って」

神使「え? 泊まる!?」

少女「この村に旅館とかはない思いますが、お知り合いでも?」

神様「水くさいなぁ~ ここに泊めてよ」

少女「ここに・・・ ですか?」

神様「何か問題でも?」

少女「いえ・・・ でも、何もおもてなしが出来ないですが・・・」

神様「適当に過ごすから気にせず、いつも通りで良いよ」

神使「滞在費や食事などは自分達で何とかしますので」

少女「・・・分かりました。 少し小さいですが空き部屋がありますので」

神使「お手数をおかけします」ペコリ

神様「さて、それじゃまずはメシだな。 近くに食堂は?」

少女「小料理屋が1軒ありますが、営業は夜だけなので・・・」


神様「スーパーとかは?」

少女「10分くらい歩けば小さな商店がいくつか」

神様「しゃーないな、自炊か」

神使「買い出しに行きますか? 簡単なものでしたら私が作りますが」

神様「豚キムチ食べたい」

神使「キムチ?」

神様「神使君が高級キムチを隠しもっていることを、私は知っている」

神使「・・・・・・」

神様「さて。 んじゃ少女ちゃん、お店まで案内してくれる?」

少女「・・・・・・。 私は一緒にいかない方が良いと思いますが・・・」

神使「何かお仕事でも?」

少女「いえ、そういう訳では・・・」

神様「案内して?」ニコッ

少女「・・・・・・」


●田舎道

テクテク

少女「」キョロキョロ


神使「少女さんは何故あんなに辺りを警戒しているんでしょう」

神様「ん~・・・」

神使「あまり外を出歩いたり、人と接するのが得意ではないようですね」

神様「そんな単純な理由かなぁ?」

神使「それより神様、どういう風の吹き回しですか? 急に泊まるだなんて」

神様「何となく?」

神使「やっぱり何か隠してるんですね」

神様「いや、ちょっと引っかかるんだわ」

神使「少女さんのことですか?」

神様「それもあるけど~ う~ん・・・」


テクテク

神使「ようやく家や建物が見えてきましたね」

少女「あっ、はい。 この辺りからが村の集落なので」

神様「おっ、畑に村人発見」

神使「こんにちは」


 村人A・B「」チラッ


少女「・・・・・・」ペコリ


 村人A「」コソコソ

 村人B「」コソコソ


神使「神様」ボソッ

神様「あぁ」ボソッ


少女「・・・・・・」


●小さな商店街

神様「うお~ ガチャガチャだ! 懐かしい~」タッタッタッ

神使「無駄遣いはダメですよ?」

神様「となり肉屋じゃん。 丁度良いや、少女ちゃん豚コマ500g買ってきて」

少女「え・・・?」

神様「コレ財布。 ダサいけど」スッ

神使「あ! それ私の財布。 いつの間に」ゴソゴソ

少女「・・・・・・」

神使「大丈夫です。 私が買ってきますから」

神様「ダーメ! 犬ころは、このガチャガチャで電気ショックのオモチャ取って」

神使「そんな物は後でも―――」

神様「合わせろ」ボソッ

神使「?」

神様「お願い、少女ちゃん」ニコッ

少女「・・・・・・。 はい」


●肉屋

少女「あの」

肉屋の息子「いらっしゃ・・・」

少女「・・・・・・」ペコリ

肉屋の息子「何か用?」

少女「あ、あの・・・ 豚コマ500g頂けないでしょうか」

肉屋の息子「随分と多いな」

少女「神社にお客様が来ていまして・・・」

肉屋の息子「少しは遠慮しろよ」チッ

少女「・・・ごめんなさい。 あの、お幾らでしょうか?」

肉屋の息子「嫌みか?」

少女「・・・ごめんなさい」

肉屋の息子「ほら」スッ

少女「ありがとう・・・ ございます」ペコリ



神使「神様」

神様「どう見ても普通じゃないな」

神使「いくら何でもあの対応は」

神様「・・・・・・」

神使「先程の村の人達と良い、少女さんは村八分にされているんじゃ?」

神様「でも、お金払わずにお肉をもらってたな」

神使「確かに。 でも、寄進・・・ って訳でもなさそうですね」

神様「う~ん・・・」


●夜・社務所

神様「ふぁ~ 食った食った」ゲップ

神使「はしたないですよ?」

神様「ちょっとキムチ辛すぎ。 今度からもう少しマイルドなヤツにしろ」

神使「神様に食べてもらうために買った物ではないのですが・・・」

少女「とても美味しかったです。 ごちそうさまでした」

神使「お粗末様でした」ニコッ

少女「はぅ・・・///」

神使「どうされました?」

少女「あ、いえ・・・ 誰かと一緒に食事をするのが久しぶりだったので・・・」

神様「ねぇ、ここに主神・・・ 神はいないの?」

少女「・・・・・・」

神様「やっぱいいや、気にしないで」

少女「ごめんなさい・・・」

神使「謝らないで下さい。 誰にでも話したくない事はありますから」


少女「・・・・・・。 あっ、お風呂どうされますか?」

神様「私たちはいつも遅いから、少女ちゃん先に入って」

少女「そうですか。 では、お先に頂きます」テクテク

ガチャッ バタン


神使「神様? こちらの主神様をご存じで?」

神様「私が記憶する限りでは“おにゅ”だった気がする」

神使「おにゅ様? 鬼遊神社・・・ まさか」

神様「あぁ、千年前に途絶えてしてしまったが鬼族の子だ」

神使「え!? おに?」

神様「鬼と言っても頭にツノがある以外、見た目は普通の人間だったけどな」

神使「本当に存在していたんですか・・・」


神様「鬼族はかなり少なかったから・・・ 色々と大変だったみたいだけど」

神使「大変とは?」

神様「人は自分と違う対象には畏怖するものだ。 見た目が自分たちに近ければ近いほど」

神使「確かに・・・」

神様「おにゅは鬼族最後の生き残りだ。 神にする以外の方法はなかった」

神使「苦労されたのですね」

神様「当時はまだ7つ、そんな歳の子には重すぎる人生だった」

神使「・・・・・・」

神様「でも、おにゅは人を恨んだりすることは絶対無かった。 優しいヤツだよ」

神使「おにゅ様はこの村にもう居ないのでしょうか?」

神様「だとしたら・・・ 悲しいな。 おにゅは本当に良い子だったから・・・」

神使「神様・・・」


●30分後

ガラガラ

少女「お湯、お先に頂きました」

神様「あ~ パジャマ姿もかわえぇの~」ウットリ

神使「自重して下さいよ、神様」

神様「うん、無理! うひょー 辛抱たまら~ん」ピョーン

少女「えっ!?」

神様「この大きなお団子かわえ~ 2つとも私が食べちゃおうかなぁ~」アムアム

少女「お、お願いですから髪には触らないで下さい!」

神使「神様! 少女さんはお風呂上がりなんですから」

神様「私のヨダレは聖水だー」アムアム

少女「あの・・・ 本当に・・・」

神使「ほら、少女さん嫌がっているじゃないですか。 離れて下さい!」グイッ

神様「うにゃー! 嫌じゃー!!」ジタバタ

少女「きゃっ!」


ファサァ~

神様「あ~ 少女ちゃんの髪が解けちゃったじゃん!」

少女「髪・・・ !!」ハッ!

神使「少女さん大丈夫で――― えっ!?」

神様「やっぱり少女ちゃんの髪って凄いロング・・・ だ・・・」

神使「少女さん、それは・・・」

神様「頭から何かニョッキしているように見えるんだけど・・・」

少女「あ・・・ あの・・・ こ、これは・・・」

神様「まさか、ツノ?」

少女「!! あ・・・ ご、ごめんなさい。 私・・・」ブルブル

神使「少女さん?」

少女「嫌・・・ 近寄らないで!! ごめんなさい・・・ ごめんなさい」ブルブル

神使「少女さん落ち着いて下さい。 大丈夫です、 私たちは何も―――」

少女「ひっ! ごめんなさい! 言うこと聞きます! ごめんなさい!」ガタガタ

神様「・・・・・・」

おやすみ、パトラッシェ……


神使「神様、少女さんの様子が」

少女「助けて・・・ 違うんです、私は・・・ お願い。 助け・・・ ごめんなさい」ガタガタ

神様「神ちゃーんパーンチ!」

ボフッ

少女「うっ・・・!」バタリ

神使「ちょと神様!」

神様「気絶させてだけだよ。 神の御業だ、心配ない」

神使「ただのローブローじゃないですか・・・ もう少しやり方が」

神様「あのままにして置く方がマズいだろ。 彼女の精神的にも」

神使「確かに、尋常ではありませんでしたね」

神様「しかし、驚いたな。 これツノだよな」ツンツン

神使「髪でお団子を結っていたのはツノを隠すためなんですね・・・」

神様「う~ん・・・」ペタペタ

神使「まさか少女さんは鬼族の・・・」


ポロッ

神様「あっ、取れちゃった・・・」

神使「え!?」

神様「これ、ツノの飾りがついたカチューシャじゃん」

神使「どういう事です? 何で取れるツノをわざわざ髪で隠して・・・」

神様「・・・・・・」

神使「村の人たちの少女さんへの態度と関係があるんでしょうか」

神様「それだけなら良いんだけどな」

神使「他にも何か?」

神様「・・・・・・。 犬ころ、本殿からご神体もってきてくれるか?」

神使「この神社のですか?」

神様「いま彼女から目を離したくない。 悪いけどすぐ持ってきてくれ」

神使「分かりました」スタスタ

神様「・・・・・・」


●数分後

ガラガラ

神使「お待たせしました。 たぶんこれがご神体かと」コトッ

神様「随分と願いが溜ってるな」

神使「私たちがいる限りでは参拝者は一人も来ていないようでしたが」

神様「ちょっと覗いてみますか」

ポワポワ

神使「どうですか?」

神様「・・・・・・」ハァ

神使「神様?」

神様「今までよく耐えてきたな・・・」

神使「?」

神様「それは少女ちゃんが背負う罪じゃない・・・」

少女「―――」


―――――
―・・・・・・
・・・

~10年前

おにゅ「おじさん! お肉下さい!」

少女「下さい!」

肉屋「おっ、今日は2人揃ってお買い物かい?」

おにゅ「今日は少女の誕生日なんです!」

少女「です!」

肉屋「そりゃめでたい。 おや? 少女ちゃんの頭に付いてるのは何だい?」

少女「おにゅとお揃いのツノー、可愛いーでしょ~」

おにゅ「恥ずかしいなぁ~ もぉ~・・///」

肉屋「はははっ! こりゃ参った。 さすが鬼遊神社の巫女さんだ」

少女「でも私のツノは取れるけど」ポコッ

肉屋「この村に神さまが2人もできちまったな」ハハハ

おにゅ「むぅー」


肉屋「よし、今日は可愛い神さま達に奮発しちゃおう!」

おにゅ「うわっ! こんなに高いお肉・・・ 安い方で大丈夫です・・・」

肉屋「誕生日なんだろ? 気にすんなって」

おにゅ「お金払います。 お幾らですか?」ゴソゴソ

肉屋「良いって。 この村を守ってくれている2人からお金なんて取れないよ」

おにゅ「でも、流石に今日は・・・」

肉屋「村の決まりだ。 その代わり、これからも村をよろしくな」

少女「はい! 行こ! おにゅ」タッタッタッ

おにゅ「あっ、こら少女! おじさんにちゃんとお礼を!」

少女「わ~い」タッタッタッ

おにゅ「まったく・・・」ハァ


肉屋「少女ちゃんはいつも元気いっぱいだねぇ」ハハハ

おにゅ「すみません。 お肉、ありがとうございました」ペコリ

肉屋「子供が遠慮なんかするもんじゃないよ」

おにゅ「なりは子供だけど、これでも千年も生きてるんだから!」

肉屋「はははっ! 確かに、おにゅちゃんはこの村の生き字引だもんな」

おにゅ「神をおちょくるなんて罰当たりですよ!」

肉屋「可愛い神さまに当てられるバチなら喜んで」

おにゅー「むー」

肉屋「まぁ、でも変な気を遣わず毎日でも来てくれて良いんだからね」

おにゅ「ありがとうございます。 少女の事はこれからもよろしくお願いします」ペコリ

肉屋「あぁ、約束するよ。 俺だけじゃなく村の皆で見守る事を」

おにゅ「おじさん大好き! おじさんに神の加護を!」タッタッタッ


肉屋「2人とも可愛いねぇ~」フフッ


●帰り道

テクテク

少女「今日は豪勢だね! いっぱいもらっちゃった!」

おにゅ「少女? どうしてこんなに沢山頂けたのか分かってるの?」

少女「私の誕生日だから!」

おにゅ「・・・・・・」

少女「おにゅが、この村を守っているからそのお礼だよね!」

おにゅ「違いますよ」

少女「違うの?」

おにゅ「良いですか、少女。 村の人から良くされたら、きちんとお礼をしないとダメですよ?」

少女「ごめんなさい」シュン

おにゅ「よし! ちゃんと謝れる子は良い子です」

少女「うん!」

おにゅ「早くお家に帰って今日はいっぱい食べるぞー!」オー

少女「おー!」タッタッタッ


●数日後・神社境内

悪ガキA「この本殿って、宝がいっぱい隠してあるって話知ってるか?」

悪ガキB「うそ! 探検しようぜ」

悪ガキC「面白い物が沢山ありそうだな」


少女「こらー!」タッタッタッ


悪ガキA「やべ、見つかった!」

少女「そこは、おにゅのお部屋だよ!」

悪ガキB「だから何だよ!」

少女「悪戯してるとおにゅに怒られるんだから!」

悪ガキC「おにゅ? あ~ アイツか」

悪ガキA「変な名前だよな。 ツノ生えてるし」

悪ガキB「化物だよな」ハハハ

少女「おにゅをバカにするな!!」


悪ガキA「お前もそんなツノの飾りなんか付けて化物の仲間なんだろー」

悪ガキB「いっつも一緒にいるもんな」

悪ガキC「やーい、化物の仲間ー」

少女「あなた達なんか、おにゅに祟られちゃえ!」

悪ガキ達「!?」

少女「おにゅは神さまなんだから! バカにするとみんな罰が当たるんだから!」

悪ガキA「う、嘘つけー!」

少女「本当だもん! おにゅを怒らせたら村だって滅んじゃうんだからね!」

悪ガキA「うっ・・・ か、帰ろうぜ」タッタッタッ

悪ガキB・C「う、うん」タッタッタッ


少女「・・・・・・」グスッ

ポタッ ポタッ

少女「雨・・・」


ザー


●翌日・社務所

ザー

少女「昨日からすごい雨だね・・・ 全然止まないよ」

おにゅ「・・・・・・」スタッ

少女「おにゅ?」

おにゅ「少し出かけてくるね」

少女「え? 危ないよ。 村の有線でも消防団以外は家から出るなって」

おにゅ「大丈夫。 これでも神さまなんだから!」

少女「そんなの知ってるけど・・・ どこいくの?」

おにゅ「ちょっとね」テクテク

少女「おにゅ・・・」

おにゅ「遅くなると思うから先に寝ててね。 おやすみ、良い夢を」ニコッ


●河川敷

ザー

おにゅ(予想以上に川の氾濫が進んでる・・・)ポワポワ

村長「流石おにゅちゃん。 だいぶ濁流の進路が変わったわい」

おにゅ「これでこの場所は持ちこたえると思います」フゥ

 村人「村長ー!」タッタッタッ

村長「お~ 上流の方はどうじゃ?」

村人「土手の決壊が始まってます。 上流の方を急いで塞がないと」

村長「そうか、手の空いている者を向かわせよう。 おにゅちゃんも一緒に」

おにゅ「いえ、先に下流側の補強を」

村長「下流?」

おにゅ「上流は地盤が固いので決壊は起こりません」

村人「しかし、土手の隙間から川の水がすでに漏れはじめていて!」


おにゅ「私の言葉を信じて下―――」

 村人「おーい大変だー!」

おにゅ「?」

村長「どうした!」

村人「土砂崩れです。 家が何軒か巻き込まれたようで」

おにゅ「!? すぐ行きます」タッタッタッ

村長「お、おい! おにゅちゃーん」

村人「それより村長、一刻も早く上流に人を。 田畑が台無しになってしまします!」

村長「え? あぁ。 でも下流の方を先に・・・」

村人「今年は上流地区が不作です。 これ以上の被害は流石に・・・」

村長「そ、そうじゃな。 うちの畑もあるし・・・ 手の空いている者を上流に集めよう」

村人「はい」タッタッタッ


●崩落現場

おにゅ「・・・・・・」ポワポワ

村人「どうだい、おにゅちゃん・・・」

おにゅ「大丈夫。 この中に人の気配はないみたい」

村人「はぁ~ よかった・・・」

ウー ウー

おにゅ「警報?」

村人「大変です! 下流の堤防が決壊したようです!」

おにゅ「下流が!? でも、補強の方をしていたはずじゃ?」

村人「いえ・・・ 特に手は付けていないみたいでしたが・・・」

おにゅ「・・・・・・」

村人「下々地区が壊滅的だそうです」

おにゅ「そんな・・・」

村人「今日はこれで中止にするそうです。 おにゅちゃんも一旦集会場の方へ」

おにゅ「・・・はい」


●深夜・村の集会場

おにゅ「ちょっと待って下さい!」バンッ

村長「おにゅちゃん、落ち着いて」

おにゅ「被害を全て防げなかった事は私の力不足です。 それは認めます」

村長「何もそこまで言ってるわけでは・・・」

おにゅ「でも、少女は関係ない!」

村人A「昨日、うちの息子が少女に村が滅ぶと告げられたって言ってるんだよ」

おにゅ「少女が!?」

村人B「うちの子も聞いたそうだ。 祟りだって」

おにゅ「・・・・・・」

村人C「あんたら本当はこの村を恨んでいるんだろ?」

おにゅ「なっ!?」ガタッ

村人A「少女の両親が亡くなったことを村のせいだって」


おにゅ「あれは老朽化した神社の建物が原因で―――」

村人B「俺達がちゃんと寄進していれば防げたって、内心では思ってるんだろ?」

おにゅ「そんな事・・・ 一度も思ったことなんか!!」

 ドクン

おにゅ「っ!?」ズキッ


村人A「少女に祟られろって言われて、うちの子が事故に巻き込まれたんだよ!」バンッ!

おにゅ「え?」

村長「今朝、水車小屋の水車が倒れる事故があってな」

村人B「少女に祟りだって言われた子が全員巻き込まれた」

おにゅ「・・・・・・」

村長「でも、お宅らの子が水車小屋で悪戯していたって証言も。 しかもこんな雨の中で・・・」

村人A「県議の息子の俺が嘘をついているとでも言ってんのか?」

村長「・・・・・・」


村人C「これでも2人が生活できるように支援はしているつもりなんだけどね」

村人A「それをこんな仕打ちするなんて。 なぁ」

村人B「まったくだ」

おにゅ「っ!」ギュ

 ドクン

おにゅ「!?」ウッ

村長「まぁ、その位で。 おにゅちゃん、大丈夫かい? 顔色が悪いようだけど」

おにゅ「だ、大丈夫です。 ごめんなさい・・・」

村長「いや・・・ こっちこそ」

おにゅ「・・・・・・」


●社務所

ザー

少女「まだ雨降ってる・・・ おにゅ大丈夫かな?」

ガラガラ

少女「あっ、おにゅ帰ってきた」タッタッタッ

おにゅ「・・・・・・」ポタッ ポタッ

少女「どうしたの!? ビショビショじゃん!」

おにゅ「凄い雨が降っててね」ハハハ

少女「傘持っていかなかったの?」

おにゅ「・・・・・・。 少女、昨日神社で何かありましたか?」

少女「どうしたの急に。 真面目な顔して・・・」

おにゅ「もう一度問います。 昨日神社で何かありましたか?」

少女「おにゅ、怖いよ・・・ そんな神さまの時みたいな喋り方で・・・」

おにゅ「神として問うています。 お話しなさい、人の子よ」

少女「うっ・・・ ひっぐ・・・ ご、ごめんなひゃーい」ウワーン


●社務所内

おにゅ「そう、私を庇ってくれたんだね」

少女「うっ・・・ ひっぐ・・・」グスッ

おにゅ「ありがとう少女。 心の優しい子・・・」ギュ

少女「おにゅ・・・ ごめんね」ギュ

おにゅ「大丈夫。 嫌なことも全部吹き飛んじゃった」ニコッ

少女「おにゅ、怒られたちゃったの?」

おにゅ「・・・・・・。 その悪ガキ達が、今朝事故に遭ったみたいで」

少女「え?」

おにゅ「水車が倒れてケガしたんだって。 雨の中で悪戯した自業自得なんだけど」

少女「もしかして、おにゅのせいだって言ってるの!?」

おにゅ「大丈夫。 私はそんな事しないし、そんな力はないから」

少女「私のせいだね・・・ ごめんなさい」シュン


おにゅ「いっその事、私がやったって事にしちゃおっか」

少女「え!?」

おにゅ「みんな私のことを崇め奉ってくれるかも。 おにゅ様~って」テヘッ

少女「ふふっ、おにゅはそんな事しないよ」

おにゅ「?」

少女「おにゅは、そういうの嫌いだって知ってるもん!」

おにゅ「・・・・・・。 ありがとう、少女」ギュ

少女「おにゅ?」

おにゅ「さて、今日は神さまのお仕事終わり! もう遅いし寝よう!」

少女「一緒のお布団で寝よ?」

おにゅ「うん!」ニコッ


●寝室

少女「Zzz・・・」ムニャ ムニャ

おにゅ(私・・・ 村を守るだなんて見栄張って・・・)

おにゅ(守るどころか・・・ 挙げ句の果てには、村の人達にあんな感情まで持って・・・)


少女「Zzz・・・」ムニャ ムニャ

おにゅ(少女がいなかったらきっと私は・・・)

おにゅ(・・・これじゃ、どっちが神だか分からないね)フッ


少女「ん・・・ おにゅ?」ポー

おにゅ「どうしたの? 少女」

少女「嫌な夢見たの・・・」

おにゅ「もう大丈夫。 神さまが一緒についてるから・・・」

少女「うん・・・ Zzz」

おにゅ「・・・・・・」ギュ


●翌朝・社務所

少女「おはよ~ おにゅ」ムニャムニャ

おにゅ「おはよう」

少女「今日は早いね。 って、どうしたのその格好!」

おにゅ「少女、一緒に本殿に来てくれますか?」

少女「本殿っておにゅのお部屋?」

おにゅ「そうです」

少女「でも、おにゅのお部屋は入っちゃダメだって・・・」

おにゅ「少女に話しておきたいことがあります」

少女「おにゅ?」

おにゅ「それと、私が装束を着ている時は神として接しなさい」

少女「・・・・・・。 はい」


●本殿

ギー

少女「わ~ 凄い・・・」

おにゅ「少女がここへ入るのは初めてですね」

少女「うん」

おにゅ「少女には以前話したことがあると思いますが、私は鬼です」

少女「でも、おにゅは神さまだよ。 良い鬼だよね」ニコッ

おにゅ「少女? 先程私は神として接しなさいと言いました」

少女「あっ、ごめんなさい。 鬼神様」

おにゅ「・・・いくら神でも、私の体には鬼の血が流れています」

おにゅ「鬼は人と違い・・・ 残忍で冷酷です」

少女「おにゅは・・・ 鬼神様はそんな性格じゃないと思います」

おにゅ「私もそのつもりです。 故に争いを嫌い非道な行ないを敬遠しています」

おにゅ「しかし・・・ 私の中の血がそれを許しません」

少女「?」


おにゅ「・・・・・・」

少女「おにゅ・・・ 鬼神様?」

おにゅ「少女、ご神体の裏にまわりなさい」

少女「はい」テクテク

おにゅ「ご神体が置かれた台の下が扉になっていると思います。 そこを開けなさい」

少女「これかな」ゴソゴソ

ギー

少女「うわー 金色の長い棒がある」

おにゅ「それを持ち、私の前へ」

少女「んしょ。 重い」テクテク

おにゅ「それは、神剣と言います」

少女「しんけん?」

おにゅ「もし・・・ もし、私が悪鬼となりこの村に災厄をもたらすことがあった場合・・・」

少女「?」


おにゅ「その剣で私を・・・ 刺し殺しなさい」

少女「え?」

おにゅ「神・・・ 鬼である私を止めることが出来るのは、その剣しかありません」

少女「何言ってるの? おにゅ・・・」

おにゅ「この神社の巫女の役割は、神である私が悪鬼と化したときに殺すこと」

少女「そんな・・・」

おにゅ「つまり、それが・・・ 鬼遊神社の巫女であるあなたの役目です」

少女「嫌だ・・・」

おにゅ「では、この社からすぐに立ち去りなさい」

少女「!?」

おにゅ「役を果たせぬ巫女を側に置いておく訳にはいきません」

少女「で、でも・・・ そんな事・・・ できないよ」グスッ


おにゅ「心優しき人の子よ、よく聞きなさい」

おにゅ「あなたのご先祖様も役を受け入れてくれました」

少女「私は・・・ ひっく・・・ 嫌だよ」グズッ

おにゅ「この社の巫女は、少女で82代目・・・ みな少女のように優しい心の持ち主でした」

少女「おにゅ・・・」

おにゅ「あなたのお母様も、お婆さまも・・・ 巫女として役を受け入れてくれた」

少女「何で・・・」

おにゅ「もし、私に何かあったときは・・・ この社の巫女に最後を託したいのです」

おにゅ「少女のご両親があのような事故で逝かれてしまい・・・」

おにゅ「・・・幼きあなたに、このような話をしなければならない事を許して下さい」

少女「嫌だよ・・・ ひっぐ・・・ 嫌だよー!」ウワーン

おにゅ「ごめんなさい少女・・・ ごめんなさい・・・」


●夕方・少女の部屋

トントン
ガチャッ

おにゅ「少女~ 寝てるの~?」

少女「・・・・・・」

おにゅ「もう夕方になっちゃうよ?」

少女「・・・・・・」モソモソ

おにゅ「」ハァ


おにゅ「私お買い物にい行ってくるから、お留守番よろしくね」

少女「・・・・・・」

ギー バタン


少女「おにゅのバカ・・・」


●村道

テクテク

おにゅ「あっ、お婆さん。 おはようございます!」

婆「?」クルッ

おにゅ「お買い物ですか?」ニコッ

婆「え? あ、あぁ・・・ 家に帰るところでね・・・」

おにゅ「この前は煮物ありがと―――」

婆「ご、ごめんね。 ちょっと急ぐから」スタスタ

おにゅ「あ・・・ はい」

婆「」スタスタ

おにゅ「?」


●商店

おにゅ「すいません、お肉下さい!」

肉屋の息子「?」

おにゅ「あれ? 今日おじさんは・・・」

肉屋の息子「何か用?」

おにゅ「え? あ・・・ 豚コマ100g下さい!」

肉屋の息子「」ゴソゴソ

おにゅ「あの・・・ そっちじゃなくて、こっちの100g80円の安い方で」

肉屋の息子「神さまなんだろ? 少しは売り上げに貢献してくれよ」

おにゅ「え?」


肉屋の息子「ほら」スッ

おにゅ「・・・ありがとうございます」

肉屋の息子「100gで300円」

おにゅ「・・・・・・」

肉屋の息子「まさかタダでもらえるなんて思ってないよね?」

おにゅ「いえ、そんな事は。 今お金払います」ゴソゴソ

肉屋の息子「前から思ってたんだけどさぁ」

おにゅ「?」

肉屋の息子「その頭のツノって本物なのか?」

おにゅ「・・・・・・。 はい」

肉屋の息子「へぇ~」ジー

おにゅ「・・・これお金です」ジャラジャラ

肉屋の息子「売ってあげるだけでも感謝しろよ」

おにゅ「・・・・・・。 ありがとうございます」


●社務所

少女「・・・・・・」ボー

~~~

少女「私ね、大きくなったらおにゅと同じ神さまになるの!」

おにゅ「えっ、巫女さんじゃなくて!?」

少女「うん! それでこの神社をもっと儲かるようにするの!」

おにゅ「あ、あはは・・・ なんか私がダメ神みたいで耳が痛いな・・・」ハハハ

少女「おにゅは大きくなったら何になりたいの?」

おにゅ「私が大きく? ん~・・・ 少女が誇れるような立派な神さま、かな?」

少女「本当!? じゃ、一緒に頑張ろうね!」

おにゅ「うん、約束」ニコッ

~~~

少女「おにゅが鬼になるなんて無いよ・・・ 今まで大丈夫だったんだもん」

少女「そうだよ、約束したし! あっ、もしかしておにゅのお仕置き?」ハッ

少女「おにゅのヤツ~」タッタッタッ


●神社前

少女「おにゅ、お買い物に行くって言ってたっけ」キョロキョロ

少女「商店街かな?」タッタッタッ


 おう、どうだった


少女「?」キョロキョロ


 商店の連中は押さえた


少女(悪ガキのおじさん達だ・・・)コソッ


村人A「集落の方はどうだ」

村人C「あぁ、下流地区と上流地区の住人は何人か押さえた」

村人A「金の力は怖いね~」ハハハ

村人C「災害見舞金とか言って抱き込むなんてよく考えたな」

村人A「ハハハ! まぁ、丁度良いタイミングだったしな」

村人B「金よりお前の親の力が恐いんじゃねぇの?」

村人A「この村の象徴気取りやがって。 何が神だよ、馬鹿馬鹿しい」

村人C「で? これからどうするんだ」

村人A「あのガキ共を追い出して、代わりに俺が村を牛耳る」

村人B「あいつらも、一ヶ月もすれば耐えられなくなって出て行くだろうな」

村人C「この神社、結構貴重な物もゴロゴロあるみたいだぜ?」

村人A「何だかんだ言っても千年以上の歴史があるからな」

村人B「本当の目的はそっちかぁ?」

村人A「一石二鳥。 徹底的にあのガキの信用を落とすんだ。 その為なら―――」


少女(そんな・・・)ヨロッ

ガサッ

少女「はっ!」


 村人達「!?」クルッ


少女(見つかっちゃった!)


 村人B「おい、あれ! 神社の」

 村人A「くそ、居たのかよ! 聞かれたか、捕まえろ!」


少女「早くおにゅに知らせないと!」タッタッタッ


 村人「待てコラー!」


● 村道

おにゅ「・・・お肉しか買えなかった」

おにゅ「今からバスで隣町まで行って夕飯までに間に合うかな・・・」トボトボ


 キャー


おにゅ「?」キョロキョロ


 村人B「大人しくしろ!」

 少女「嫌ー 助け―― むぐむぐ」


おにゅ「少女!?」


 村人A「おい、縄で縛って工事現場の倉庫に運ぶぞ。 車出せ」

 ブーン


おにゅ「少女!」タッタッタッ


●工事現場倉庫

少女「ハァ・・・ ハァ・・・」グッタリ

村人B「おい、大丈夫か? この子」

村人A「息が上がっているだけだ」

村人C「なぁ、さすがにコレはマズくないか?」

村人B「これって誘拐・・・ だよな」

村人A「このガキが盗み聞きなんてしてなきゃこんな事には」チッ

村人C「家に帰した方が良くないか?」

村人B「あぁ。 さすがに犯罪はマズいだろ」

村人A「そうだな・・・ なぁ、少女ちゃん?」

少女「!?」ビクッ

村人A「鬼ごっこ楽しかったねぇ~」ズイッ

少女「ひぃ!」ガタガタ

村人A「今日はこれでお開き。 お家に帰っても誰にも言っちゃダメだよ」ニタァ

少女「・・・・・・」ガタガタ


村人A「聞こえたのか!!」

少女「ひぃ!! ご、ごめんんさい・・・ ごめんなさい」 ガタガタ

村人A「おい、この縄ほどいて帰らせろ」

村人C「あぁ」

村人B「何か手を打った方が良いんじゃないか?」

村人A「そうだな」

村人C「縄がきつくて解けないぞ?」ギシギシ

村人A「そこに斧があるだろ。 それで縄を切れよ」

村人C「ん? あれか」スタスタ

村人A「ガキに傷つけんなよ。 面倒になる」

村人C「分かってるよ。 動くなよ!」スッ

少女「ひぃ!」ガタガタ


バンッ

おにゅ「少女! ここにいるの!?」ハァ ハァ

村人達「!?」クルッ

少女「うぅ・・・」ガタガタ

おにゅ「!!」ハッ

 ドクン


少女「お、おにゅ・・・?」ガタガタ

おにゅ「・・・・・・。 お前達・・・ 少女に何をした」

村人A「な、何も・・・ 俺達はただ・・・ なぁ」

村人B「あぁ、まだ何もしちゃ・・・」

おにゅ「その振り上げている斧を少女の視界から退けよ」

村人C「斧? あ、これは違う。 縄を解こうとして―――」

おにゅ「斧を退けよと申した! 我に二度言わすな!!」カッ


ボン!

村人C「うわっ!」ズサー

村人B「ひぃ!」

おにゅ「最初の問いに答えよ。 少女に何をした」

村人B「な、何も・・・ 何もしちゃ―――」

おにゅ「問いはもう繰り返さぬ」

ボン!

村人B「ぐぁ!」バタッ

村人A「う・・・ うそだろ。 お前ら何を勝手に吹っ飛んでんだよ・・・」

おにゅ「おいお前、何か言い残すことはあるか?」ギロッ

村人A「お、俺に何かしたら2人ともこの村に住めなくし―――」

おにゅ「知ったことか。 こんな村に用はない」

ボン!

村人A「うっ!」バタッ


少女「お・・・ おにゅ・・・?」

おにゅ「」ギロッ

少女「ひぃ!」ゾワッ

シュルシュル

少女「縄が解けた・・・ おにゅ!」タッタッタッ

おにゅ「・・・・・・」

少女「おにゅ・・・ おにゅ! ありがとう・・・ 怖かった」ブルブル

おにゅ「我より離れよ、人の子よ」

少女「え?」

おにゅ「聞こえなかったか? 離れよと申した」

少女「おにゅ?」


おにゅ「我はこの村を滅ぼす。 跡形もなくな」

少女「滅ぼすって・・・ ダメだよ、おにゅはそんな事しないよ・・・」

おにゅ「忘れたか? 我は鬼、そしてこの村の神。 生かすも殺すも我次第」

少女「そんな・・・ うそ・・・ おにゅはそんなこと言わないよ・・・」

おにゅ「この地に最大級の神罰を。 絶望の神殺しの惨状をもたらしてやる」ニヤッ

少女「!!」ゾクッ

おにゅ「我を止めたくば、神剣で我が胸を突くことだな」クククク

少女「おにゅ・・・」ガタガタ

おにゅ「たっぷり時間をかけ村の者達を屠ってやる。 我が力を知るが良い!!」ヒャヒャヒャ

・・・
―・・・・・・
―――――


少女「・・・にゅ・・・」ウーン

神使「!? 神様、少女ちゃんが!」

神様「少女ちゃ~ん、朝ですよ~」

少女「おにゅ・・・ おにゅ!」バサッ

神使「少女さん、気がつきましたか」ホッ

少女「はぁ・・・ はぁ・・・ ここは・・・」キョロキョロ

神使「社務所です。 痛みとかはありませんか? 特にお腹とか」

少女「私・・・ どうして・・・ !?」ハッ

ペタペタ

神様「髪は結い直しておいた」

少女「・・・・・・」

神様「おにゅとは知り合い?」

少女「!?」

神様「私は、おにゅの親友。 もう千年以上前からかなぁ」

少女「せん・・・ ねん?」


神様「私はアイツと同じ神だ」

少女「・・・・・・」

神様「おにゅは争いごとが嫌いで、人思いの心優しい子だった」

少女「おにゅ・・・」ウルウル

神様「ありがとう、心優しき人の子よ」ギュ

少女「え・・・?」

神様「長く辛い道を歩んできたアイツに、救いを差し伸べてくれてありがとう」

少女「私は・・・ 私は、おにゅを・・・ おにゅを・・・」グスッ

神様「少女ちゃん・・・」

少女「おにゅをこの手で・・・ この手でっ! あっ・・・あーーっ!!」

神様「落ち着いて」

少女「うぅ・・・ うっ・・・ おにゅ・・・ おにゅ」ポロポロ

神様「大丈夫。 それは人が背負う罪じゃない」ギュッ

少女「うぅ・・・ うっ・・・」ポロポロ


神様「おい、犬ころ」

神使「・・・はい」

神様「これから神勅を出す。 一字一句漏らさず正確に神宮と神様機構に伝えよ」

神使「畏まりました」フカブカ


神様「最高神、神様より神勅を申す! ―――」


●翌日

ガラガラ

神様「お、来たか」

狐神「・・・・・・」

神様「いらっしゃい、早かったな」

神使「狐神様?」

神様「お茶でいいか? みかんは籠から落ちてるヤツから先に食べて」

狐神「あんたねぇ、私も忙しいの。 毎回変なことに巻き込まないでくれる?」

神使「どうして狐神様が?」

狐神「アンタ達何やらかすつもり? 今回ばかりは流石の私もドン引きなんだけど・・・」

神様「良い勉強になるだろ」

狐神「今時代にこんな物を神勅するヤツがいるなんて・・・」ハァ

神使「あの、どういう事です?」

狐神「あ~ えっとね――― ん?」

少女「?」キョトン


狐神「神ちゃん、この子は?」

神様「勇者様」

少女「はい!?」

狐神「そう、あなたが・・・。大変だと思うけど、私も初めてだしお互い頑張りましょう」

少女「あの・・・ 何かなさるのですか?」

狐神「・・・・・・。 神ちゃん?」

神様「あ?」

狐神「いつも言ってるわよね? 話の順番が違うって」

神様「いや~ 私も今回ばかりは内容を全部覚えてないから説明できなくて」

狐神「覚えていないものを神勅で出すな!!」

神様「まぁまぁ。 神ともあろう者がそんな短気じゃダメだと思うの」

狐神「何で私が今回の順番だったんだろう」ガクッ

神様「頼んだよ、生け贄さん」ニタァ

狐神「勘弁してよ、私まだ死にたくない・・・」


神様「説明しよう! 今回行う作戦は、ずばり“神殺し”!」

少女「!?」ピクッ

神様「神が行える神罰のうち、最大レベルの作戦だ!」

狐神「簡単に言うと対象の地から神を抹消するための特殊工作なんだけどね」

神使「神を抹消?」

狐神「うん。 何らかの理由で神をその地に置くことが出来なくなった場合の神法特例第18項」

神使「神を置けなくなった場合というのは?」

狐神「例えば、統廃合とかで神から人へ管理を任せる必要になった場合とか」

神使「委任とは違うのですか?」

狐神「もし、神の信仰が極端に高い土地から神が居なくなった場合どうなると思う?」

神使「みんな悲しみますよね」

狐神「それだけで済めば良いけど、実際は求心力が無くなって村は崩壊する」

神使「そこまでなるものでしょうか?」

神様「経験上間違いなく起こる。 物理的、秩序的、精神的と色々な形でな」


狐神「だから、神がいなくなる前にその後を継げる者へその任を移すの」

神使「それは信仰を移すという事ですか?」

狐神「実際には人にその任を移すから、信仰というより一種のシンボルね」

神使「しかし、今回はその神がいないので当てはまらないと思うのですが」

狐神「それが今回私が派遣された理由」

神使「?」

狐神「何らかの理由で神が役を遂行できない場合、持ち回りで他の神が代理で立つの」

神様「で、都合良く今回はコックスが順番だった訳よ」

神使「なるほど。 それで、どのような方法なのですか?」


狐神「文字通り、神を殺す」ニヤッ

神使「え?」

狐神「といってもお芝居だけどね」

神様「まず、消える予定の神が村を壊滅寸前まで追い込む」

少女「!?」

狐神「そして、次を継ぐ者が衆人環視でその神を神剣で刺して消滅させる」

神様「すると、あら不思議。 勇者様は村から絶大な支持を集めることが!」

狐神「で、神はその地を離て神殺し終了」

少女「・・・・・・」

神使「破壊って・・・ 流石にそれは・・・」

神様「大丈夫。 被害を最小限にするために綿密な下調べはするから」

狐神「村に損害が出た場合は、神宮保険の神罰損害安心特約が適用されるわ」

神様「このために毎月給料から天引きされてるんだから使わないとな」


神使「そんな手法・・・ よく考えつきましたね・・・」

少女「あ、あの・・・」

神様「?」

prrrr prrrr

神使「すいません、私の携帯です。 ちょっと失礼します」


神様「なに? 少女ちゃん」

少女「いえ・・・ 私の思い違いかも知れないですが、実は―――」

 神使「え!? 本当ですか!?」

一同「」ビクッ

神様「なんだよクソ犬! 少女ちゃんがお話しをする大切な場面なんだよ!」

神使「神様・・・ 神勅が取り消されました」

神様・狐神「!?」


神使「はい、いま神様に替わります」

神様「だれ?」

神使「神様機構の長官さんです」スッ

神様「ちょっと長官君! 取り消しって一体・・・・・・ うん・・・・・・ いやだって・・・・・・」


狐神「神ちゃんの神勅が取り消されるなんてあり得ないんだけど」

神使「それが、すでにこの地に神殺しの神勅が発令されているようで」

狐神「は!?」

神使「それも10年前に」

狐神「それって・・・ 10年前に誰かが出した神殺しが解除されていないって事?」

神使「その様です」


 神様「分かった」ピッ

狐神「あっ、神ちゃんどういう事なの?」


神様「・・・・・・」

少女「やっぱり・・・」

一同「?」

少女「やっぱり、おにゅのお芝居だったんだ・・・ なのに私は・・・ 本当に・・・」ガタガタ

狐神「ちょ、あなた震えが凄いけど大丈夫?」

少女「私が気付かずに・・・ この手で・・・ おにゅを・・・ あぁ・・・」ガタガタ

神様「アッチョー!」

ボフッ

少女「うっ・・・!」バタリ

狐神「アンタはいきなり何やってんのよ!!」

神様「心配いらない。 ただのローブローだ」

神使(神の身技では・・・)

狐神「可哀想に・・・ この子気絶してんじゃないの」

神様「それより色々と問題がありそうだな」

狐神「私、来たばかりで詳しい事情が分からないんだけど・・・ ちゃんと説明しなさいよ」


神様「・・・・・・。 おにゅが・・・ 消えた」

狐神「消えたって、どこに?」

神様「神力消滅だ」

狐神「え!?」

神様「鬼の血に飲まれて、村を・・・」

狐神「おにゅが? そんな・・・ 冗談でしょ!?」

神様「この少女ちゃんが神剣を使って・・・ おにゅを救ってくれた」

狐神「・・・・・・」

神様「」コトッ

狐神「?」

神様「この神社の神体だ。 神力使って見てみろ」

狐神「またアンタはそんな簡単に・・・ 普通の神には結構大変なんだけど」スッ

ポワポワ


ポワポワ

狐神「・・・・・・」ハァ

神様「事情はそういう事だ」

狐神「なるほどね。 アンタはこれを見て神殺しを発動しようと考えた」

神様「この村、そして少女ちゃんの為にも一度リセットが必要だ」

狐神「神ちゃん」

神様「?」

狐神「アンタ、おにゅが鬼の血に飲まれたなんて本当に思ってるの?」

神様「あ?」

狐神「・・・アンタってヤツは」ガタッ

神様「グヘッ! ヘブロブバー!」ズサー

神使「神様!?」

神様「痛たた・・・ 何だよいきなりビンタしやがって!!」


狐神「いや叩いてないし・・・ みかん取っただけだし・・・ アンタが勝手に吹っ飛んだんでしょ」

神様「おにゅを信じることが出来ないなら神を辞めた方が良いんじゃない? ってか?」

狐神「・・・・・・。 いや、そんな事全く考えて無いんだけど」

神様「分かってるよ、その位」

狐神「面倒くさいなぁ・・・ 合わせればいいの?」ハァ

神様「おにゅはずっと悩んでいたんだな。 無理もない」

狐神「そうね。 自身で神殺しを発動させるなんてよっぽどよね」

神様「は!?」

狐神「・・・・・・。 は?」

神様「エキノコックスは何言ってんの?」

狐神「それはこっちのセリフ。 というかフォックスは許すけどその呼び方は辞めて」

神様「フォックスなんて言わねーよ。 コックスだろうが」


狐神「・・・もしかして、アンタと私が考えていることは違うの?」

神様「そうみたいだな。 フォックスとコックスの区別がつかないなんて老年性の難聴なんじゃね?」

狐神「呼び方の話は良い。 おにゅの件よ」

神様「ついカッとなって暴走しちゃいました、テヘッ! 的なヤツだろ?」

狐神「いやいや、おにゅは元々正気を失っていないでしょ」

神様「いやいや、おにゅの暴走を神体経由で見ただろ? あれ演技ってレベルじゃないぞ?」

狐神「おにゅだってやるときは全力でやるでしょ。 自分で神殺しを出したんだから」

神使「おにゅ様は10年前に自身で神殺しを発動されたんですか?」

狐神「うん。 神勅宣言はしてないけど」

神様「確かにそれっぽい言葉は言ってたけど、神殺しなんて神勅宣言しないと発動できないだろ」

狐神「自分の管理地だったら問題ないでしょうが」

神様「いやいや、神殺しだよ? 事前に神宮と機構に許可だって必要だし」

狐神「人命に関わるような緊急性があれば、緊急神勅が出せる。 現に少女ちゃんはあの時・・・」

神様「そういえば、そんな特例があった気がするような」


狐神「あんた痴呆?」

神様「うるせーよ! 私の記憶力はそこら辺の人間の非じゃないぞ!」

神使「しかし神殺しであれば、おにゅ様が消えたままというのはおかしいのでは?」

神様「そうだよ、それ! 本当は私もそれが言いたかったの!」

狐神「本殿に神剣が戻ってない」

神様・神使「神剣?」

狐神「神ちゃんさぁ、本当にマニュアル覚えてないのね・・・」

神様「100ページのマニュアルなんか覚えきれるかよ」

神使(記憶力・・・)

狐神「神を討った神剣は、最後に本殿へ戻さないと神は消えたまま具現化できない」

神様「なにそれ?」

狐神「当然おにゅは具現化できていないから神勅解除も出ていない」

神使「では、おにゅ様は・・・」

狐神「えぇ、神剣を本殿に戻せばおにゅは戻ってくる」

神様「!?」


狐神「まぁ、おにゅは本当に消えるつもりだった気があるけどね」ハァ

神使「それはどういう・・・」

狐神「たぶん、任せたんでしょ」

神使「少女さんにですか?」

狐神「この子かも知れないし・・・ 私たちにかも・・・」

神様「・・・・・・」

狐神「少女ちゃんは今までよく耐えられたわね。 可哀想に・・・ 罪の意識で押しつぶされそう」

神様「いや、押しつぶされてる。 おにゅを手にかけたこと、そして村から神を奪ってしまったことを」

少女「―――」

神様「見ろ、気を失っているのにこの苦痛な表情・・・ 可哀想に」

狐神「アンタがローブローを叩き込んだからでしょ」

神様「やることは決まったな」

神使「まずは神剣の行方を調べないといけませんね」

狐神「所在は大体分かるけどね」

神使「?」


神様「でも、この村はもう一度恐怖のズンドコに陥れる必要がある」

狐神「そうね、その件に関しては私も異論はない」

神使「しかし、神殺しは出来ないのでは?」

狐神「一つだけ抜け道があるわ」

神様「ほぉ、聞こうじゃないか」

狐神「神法特例第18項付属4項が適用できる」

神様「あ~ あれね。 アレはいい手だわ」

狐神「・・・・・・」

神使「その付属特例とは?」

狐神「・・・神移し」

神様・神使「神移し?」

狐神「アンタ、そのいい加減な性格直した方が良いわよ?」

神使「その神移しというのは?」

狐神「神殺しとほとんど同じなんだけど、後継を人ではなく別の神に移す場合に適用される」

神使「神が神を殺すという事ですか?」


狐神「そう」

神様「ったく、いつの時代から神はそんなに細かい規則だらけになったのかねぇ~」

狐神「アンタが最終決済してるんだけど・・・」

神使「しかし何でそんな特例が・・・ それこそ神同士で話せば済むことでは?」

狐神「本来この特例は、元の神が更迭される場合に適用するの」

神使「なるほど、委任までの期間が短かすぎて権威を継承できない時という事ですね?」

狐神「さすが頭の回転が早いわね」

神様「恐縮です」ペコリ

狐神「アンタを褒めてない」

神使「・・・・・・」

狐神「まぁ理由はどうあれ、これなら別の神勅になるからきっと通るはずよ」

神使「しかし、その場合少女さんは・・・」

狐神「神ちゃん、私はこの子を神にすることを進言するわ」

神様「・・・・・・」

狐神「少女ちゃんにはその資格が・・・ いえ、少女ちゃんは神にするべきだわ」


少女「・・・ん・・・」ポー

神使「あ、少女さん」

狐神「良かった、気がついたようね」

少女「私・・・ ぅっ!」ズキッ

狐神「どうしたの? どこか痛む?」

少女「少しお腹に痛みが走っただけです」

神様「それは昨日食べたキムチが原因。 後で一緒に犬ころをボコしよう」

神使「・・・・・・」

神様「それより少女ちゃん、ちょっと話があるんだけど良い?」

少女「?」


●本殿前

少女「あの、お話しって・・・」

神様「私がおにゅと初めて会った時、あいつは死の寸前にいた」

少女「え?」

神様「悲惨な環境でたった一人・・・」

少女「・・・・・・」

神様「ツノがあるというだけで差別され・・・ おにゅは鬼族最後の一人になってしまった」

少女「おにゅにそんな過去があったんですか・・・」

神様「でも、あいつは決して人を恨んだりしなかった。 それどころか鬼族である自分が悪いんだと」

少女「・・・・・・」

神様「アイツは昔から自分の責任を重く捕らえる悪い癖があるんだよね。 あと、優しすぎる」

少女「私、おにゅはいつも隣に居るのが当たり前だって勝手に思い込んで・・・ それが悔しくて情けなくて・・・」

神様「・・・・・・。 少女ちゃん、おにゅをもう一度救ってくれない?」

少女「え?」

神様「お願いします! おにゅを助けて下さい!」ドゲザ


●社務所

ガラガラ

狐神・神使「?」クルッ

神様「・・・・・・」トテトテ

神使「神様、少女さんは?」

神様「すぐ来る」

狐神「ダメだったか・・・」ハァ

神使「え?」

狐神「神が増えた気配がない」

神使「そんな・・・」

ガラガラ

少女「お待たせしました」スタスタ

神使「少女さん?」

神様「お団子結いも可愛かったけど、私はそっちの方が少女ちゃんに合っていると思う」


狐神「? その頭についてるツノみたいなのは何?」

少女「これは、おにゅと共に生きる私の決意です」

狐神「・・・・・・。 そっか、ありがと」フッ

神様「さて」

狐神「?」

神様「おいコックス、ちょっと手を出せ」

狐神「手?」

神様「早く!」

狐神「?」スッ

神様「少女ちゃんも手を」

少女「はい」スッ

狐神「何? 決起の誓い? 良いわね、私そういうの結構好―――」

神様「秘技! 神力譲渡!!」


ポワポワ

狐神「うギャぎゃぎゃぎゃ!!」

少女(温かい・・・)

ポワポワ

神様「フ~ これでよしっと」

狐神「アンタ・・・ 何したのよ・・・」グタッ

神様「少女ちゃんを神にしたんだけど」

狐神「にゃんで・・・ わだじの神力を゛・・・」ヘナヘナ

神様「だって私は神力ないし~」

狐神「あ~・・・ そういう・・・」

神さま「あと、猫でもないのにニャンとか言うな、狐はコンコンだろ」

狐神「狐は、そんな声・・・ 出さない・・・わ゛」バタッ

神使「狐神様!」


神様「よし! それじゃ早速神勅を出すか!

狐神「待ちなさい。 再神勅を出すとしても、一つ問題があるわ」ヨロッ

神様「あ?」

狐神「残念だけど、私はこれ以上手伝うことが出来ない」

神様「は!? 何でだよ! あんなもんで拗ねるなよ!」

狐神「拗ねてないわよ!」

神様「お前、言い出しっぺだろうが」

狐神「私がここへ招致されたのは、先の取り消された神勅によるもの」

神様「は?」

神使「なるほど・・・ 神殺しの神勅が取り消されたから狐神様もその任は取り消されると」

狐神「そういう事。 たぶん神移しの神勅の方で別の神が来るんじゃない?」


神様「え~ お前がいちばん適任だったんだけど」

狐神「どういう意味?」

神様「お前って人を脅かしたり騙したりするの好きだろ?」

狐神「好きじゃない! 私を何だと思ってるのよ」

神様「だって~ 神罰用のガラクタいっぱい持ってんじゃん」

狐神「うぐっ・・・」ギクッ

神使「ちなみに、次の番の神はどなたなんですか?」

神様「うさーとか頼りないヤツは勘弁な」

狐神「確か~・・・ ふふっ、ある意味私が取り消されて良かったかも」ニヤッ

神様・神使「?」


●翌日・神社

猫神「」ポワポワ

神様「まさか猫神が次の順番だったとは・・・」

狐神「私は猫神ちゃん以外の適任者を知らない」

神使「猫神様は破壊とかそういう野蛮な行為は向かないような気が・・・」

神様「お前は、まだ猫神の本性を知らないからそんな事が言えるんだ」

狐神「うんうん」コクコク


猫神「・・・ふぅ」

神様「あ、神体見終わった?」

猫神「うん」

狐神「猫神の力が必要なのよ」

猫神「少女ちゃ~ん」

少女「?」

猫神「あなたには、私の全てをかけてでも幸せな人生を叶えてあげる~」ギュ


神様「はいはい、百合はそこまで~」

猫神「できるだけ早めに作戦を実行したが良さそうだね~」

狐神「神剣ってどうする? この神社のやつは無いみたいだし」

猫神「わたし自分の持ってきたからこれ使って~」

狐神「うわっ、凄! 高そうな神剣ね・・・」

猫神「私の神力が詰まっているから、刺されてもそれほど痛みはないし~」

神様「え? やっぱ痛みとかあるの? わたし神殺しって経験した事ないから」

猫神「刺されるんだも~ん。 そりゃ痛いよ~」

狐神「・・・・・・。 私、やっぱり外れて良かった・・・」ホッ

神様「よし! それじゃ早速準備に取りかかろう」

猫神「その前に~ 一つ良いこと思いついちゃったんだけど~」

神様「良いこと?」

猫神「狐神ちゃ~ん、出番よ~」

狐神「私?」


●夕方・神社裏

村人A「俺を呼びだしたのはお前か?」

狐神「そうだ」

村人A「アンタ誰だ? この村の者じゃねーな。 それにその格好・・・」

狐神「神」

村人A「はぁ?」

狐神「おにゅと同じ力を持つ者。 いやそれ以上と言えば理解できるか?」

村人A「!?」

狐神「そう怖がるでない。 私はお前の味方だ」ニヤッ

村人A「ど、どういう意味だ」

狐神「預言を授けよう」

村人A「・・・預言?」

狐神「明日、この村に10年前と同じ災厄が訪れる」

村人A「10年前って・・・ まさか!」

狐神「鬼がこの村を焼き尽くす。 誰一人逃げられぬぞ」ククク


村人A「!?」

狐神「だが、助かる方法が一つだけある」

村人A「そ、それは一体・・・」

狐神「お前がこの村を救うのだ」

村人A「何をバカな。 そんな事を信じられるわけ―――」

シュン

村人A「消えた!?」

狐神「後ろだ」ボソッ

村人A「!?」クルッ

狐神「我の言っていることを信じる気になったか?」ニヤッ

村人A「あ・・・ あぁ」ゴクリ

狐神「お前が、鬼を討つのだ。 あの時の少女のように」

村人A「・・・・・・」

狐神「なぁに、難しいことはない。 同じようにすれば良いだけだ」

村人「で、でもどうやって・・・」


狐神「持っているのだろ? その時の剣を」

村人A「何でそれを・・・」

狐神「神に隠し事などできぬぞ?」

村人A「そ・・・ その鬼とやらを、俺がその剣で・・・ いや、無理だろ・・・」

狐神「私には見える。 お前が鬼を討つ姿が」

村人A「・・・・・・」

狐神「そして、村を救った英雄として絶対的な力を手に入れる姿が」

村人A「!?」

狐神「あの剣は特殊でな、鬼は近づくことすら出来ぬほど極端に嫌う」

村人A「そういう事か・・・ それで10年前あんな小さなガキが鬼を退治できた訳か」

狐神「理解が早いな」

村人A「で、でもアンタは何で俺にそんな事を?」

狐神「これでも私は神だ。 鬼の悪行をほおって置けないのでな」

村人A「・・・分かった。 乗るぜ、その計画」

狐神「良い選択だ」ニヤッ


●社務所

狐神「どう? 上手くいったと思うんだけど」スタスタ

神様「お前、結構良い演技するじゃん」

猫神「狐神ちゃんって昔からああいうの上手だよね~」

神使「神の神秘さ、畏れが滲み出ていて感銘しました」

狐神「別に・・・ 神なんてああいうのが仕事みたいなものだし///」モニョモニョ

少女「あの人が、おにゅの神剣を・・・」

猫神「10年前、混乱の中でこっそり持ち去ったみたいだね~」

神様「その神剣を本殿に戻せば、おにゅは帰ってくる」

狐神「少女ちゃん、覚悟は出来た?」

少女「はい。 おにゅに会えるなら何だってします」

猫神「全力でよろしくね~」

少女「今度は、最後まで絶対に役を果たしてみせます」

神様「よし、作戦は明日の朝。 気合い入れて行くぞ!」

一同「オー!」


●翌日・村の中心街

 村人達「キャー 助けてー!」

 村人達「あぁ・・・ 村が・・・ 俺達の村が・・・」

ズドーン メラメラ


猫神「ニャーハハハッ! どうした人間共! 弱い! 弱すぎるぞ!!」

ズドーン ズドーン


猫神「我を止めぬと村が滅んでしまうぞ? まぁ、抵抗しようが時間稼ぎにもならぬがな」ニタァ

猫神「ニャーハハハッ! ほれほれ~っ!」

ズドーン ズドーン


神様「あ、あいつ本当に神かよ・・・ あんなの誰も倒せないだろ・・・」ブルブル

狐神「ね、猫神・・・ 怖い・・・ 怖いよ」ブルブル


猫神「破壊とはなんと愉快なり! 逃げ惑え! 愚かな人間共!!」

猫神「さぁ、最初に喰われたいヤツは誰だ! ニャーハハハッ!!」



神使「・・・・・・」ブルッ

少女「あの・・・ あれって本当に演技なんでしょうか?」ガタガタ

神使「たぶん・・・ 本当の猫神様はとても優しい方だったと思いますので・・・」

少女「でも、予定外の所まで破壊している気がします・・・」

神使「取り壊し予定だった建物なのでは・・・」

神様「お前は本当の猫神の怖さを知らないからそんな事を言えるんだ・・・」ブルブル

狐神「あんなの止めるなんて自殺行為よ・・・」ブルブル

神使「少女さん、ファイトです」

少女「・・・・・・。 私、あの中に入るのはちょっと・・・」

神様「なぁ・・・ 中止して皆でおうち帰らない? あれ無理だって・・・」ブルブル

狐神「怖い・・・ 怖いよ」ブルブル


猫神「ニャーハハハッ!」

ズドーン ズドーン


村人A「まて!」スタッ

猫神「あ?」ギロッ

村人A「!?」ビクッ

猫神「何だ~お前? 喰われたいのかぁ?」ニタァ

村人A「そ、そんな口叩いていられるのも・・・ い、今だけだ」ブルブル

猫神「ニャーハッハッ! 足をガクつせて何を言っているのかなぁ?」

村人A「う、うるさい。 勝負だ!」ブルブル

猫神「ほぉ~ お前が我の相手をすると申すか。 人の分際で我を相手にすると~?」ニャハハハ

村人A「コレを見てもそんな事が言えるのか?」

スッ

猫神「そ、それは!」ピクッ

村人A「形勢逆転ってな」ニヤッ

猫神「何故それを・・・ それは神に選ばれし者しか扱えぬ剣」グヌヌ

村人A(へっ、どうやら本当にあの目狐の言った通りに事が進みそうだな)


ジリジリ

猫神「ま、待て! 望みは何だ! お前が望むなら私の右腕に―――」

村人A「だれが、アンタみたいな化物の仲間になんかなるかよ!」タッタッタッ

猫神「くっ! ここまでか~」

村人A「おら~ くたばりやがれ!!」

猫神「」ニヤッ

スッ

村人A「え?(消えた!?)」

猫神「後ろだよ~」ボソッ

村人A「またかよ!」クルッ

パンッ

村人「ぐあっ!」ズサー


猫神「おめでとう~ 神に選ばれし者よ~」

村人A「痛つつ・・・ 何ビンタなんかしてん―――」

パンッ

村人A「痛っ! てめぇ!」

パンッ

村人A「ふざけやがっ―――」

パンッ

村人A「ぐぁ! いい加減にし―――」

パンッ

村人A「おま―――」

パンッ

村人A「ぐっ!」ドサッ

猫神「倒れるのはまだ早いんじゃないの~? 神の怒りに触れ神罰を受ける者よ」グイッ

村人A「うっ・・・」

パンッ パンッ パンッ パンッ


狐神「うわ・・・ 猫神、完全に切れてるわね」

神使「猫神様・・・」

神様「・・・・・・」


村人A「」ドサッ

猫神「この神剣は返してもらうわね~ あなたのような者が触れて良いものではないから」

村人A「ぅっ・・・」

猫神「今回はこの位で勘弁してあげる~」

村人A「・・・・・・」グッタリ

猫神「ただし~ 二度とこの地を踏むんじゃないぞ。 分かったな?」ギロッ



神使「」ブルッ

狐神「久しぶりに見たわね、猫神の本気」ゴクリ

神様「・・・・・・」

狐神「神ちゃん?」

神様「・・・・・・」

神使「あっ、これ神様失神してますね」

狐神「通りで静かだった訳ね・・・」

神様「」ジュワ~

神使「神様・・・ 洗濯する方の身にもなって下さい」


狐神「少女ちゃん、怖いのは分かるけどそろそろ出番・・・ って」キョロキョロ

神使「あれ? 少女さんがいませんね」

狐神「まぁ、あんなの見せられちゃ無理もないか・・・」ハァ


猫神「さ~て、次は誰が私の相手をしてくれるんだ~い?」


少女「私がお相手いたします」ザッ

猫神「へぇ~ その格好はこの村の巫女さんかなぁ~?」

少女「あなたに名乗る必要はありません」キッ

猫神「ほぉ~ 若くて美味そうだ」ニヤッ

少女(怖い・・・)ゴクリ


狐神「へぇ、やるじゃんあの子」

神使「とても凜々しいですね」


村人「おい、あれは・・・」

村人「まさか、少女ちゃんか?」

村人「少女ちゃーん! また村を守ってくれー!」

村人「そうだー! やっぱり鬼遊神社の巫女さんはこの村の守り神だー!」



狐神「随分と勝手なものよね」

神使「少女さんへあれだけの仕打ちをしておきながら・・・」

狐神「でも、少女ちゃんよく耐えてるわね」

神様「・・・・・・」


村人「そんな鬼なんかその剣で一突きにしてしまえー!」

村人「あの時みたいに格好良く頼むぞー!」



少女「うるさいな・・・」ボソッ


村人達「・・・・・・」


少女「」ジリジリ

狐神「さぁどうした、人の子よ。 怖くて踏み出せぬか?」

少女「・・・・・・」ゲシッ ゲシッ

村人A「お、おい・・・ 何故俺を蹴るんだ・・・ けが人だぞ・・・」

少女「失礼。 そんなところで転がっているのでゴミかと思いました」

村人A「・・・・・・」


狐神「やっぱ少女ちゃんでも怒るよね」

神使「どことなく神様と似た雰囲気がするのは気のせいでしょうか?」

神様「・・・・・・」



少女「」スチャッ

猫神「ほぉ~ 随分と良い剣じゃないか」

少女「あなたへの餞です」

猫神「ニャハハ! その言葉、そのまま返してやろう」



猫神 「さぁ、勝負だ。 その神剣を我に向けよ」
おにゅ『さぁ、勝負だ。 その神剣を我に向けよ』

少女「!?」スチャッ

少女(あの時と同じ・・・ 剣が勝手に・・・)


猫神 「ふははっ! 良いぞ、では参る!」ザッ
おにゅ『ふははっ! 良いぞ、では参る!』ザッ

少女(体が勝手に!?)

タッタッタッ

猫神 「死ねー!」
おにゅ『死ねー!』


グサッ



――
――――


ドサッ

おにゅ「・・・・・・」

少女「お・・・にゅ・・・?」

おにゅ「さすが少女・・・ 素晴らしい立ち振る舞いでした・・・」ウッ

少女「ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・」グスッ

おにゅ「ありがとう」

少女「なんで・・・ なんで謝ったりするの・・・?」


おにゅ「私はずっとこの村を・・・ そして・・・ これからもあなたを見守り続けます」ゴボッ

少女「いや・・・ うそ・・・ いやだ・・・」

おにゅ「辛い思いをさせて・・・ ごめんね」ウッ

少女「いやだ・・・ お願い・・・ 嫌だよ!」グスッ

おにゅ「笑って・・・ 笑顔を見せて・・・ そしたらまた私は・・・・・・」ニコッ

少女「嫌ー!!!」


――――
――


少女「・・・おにゅ」


猫神「とても綺麗な立ち振る舞いでしたよ~」ウッ

少女「猫神様!」ハッ

猫神「頑張って・・・ 少女ちゃん・・・」ゴボッ


村人「・・・勝ったのか?」

村人「やった・・・ やったぞ!!」

村人「これで村が守られたー!!」


少女「うるさい・・・」ボソッ

村人達「?」

少女「うるさい!! 私は今のこの村を守ったんじゃない!!」

村人達「・・・・・・」

少女「私は・・・ 私はおにゅが愛した10年前の村を守ったの! 勘違いしないで!!」グスッ



神使「少女さん・・・」

狐神・神様「・・・・・・」


少女「こんな村、わたし一人なら絶対に守ったりしない・・・」

少女「でも、おにゅが守ったから・・・ おにゅが居てくれれば私は一緒に・・・ もう一度」グッ


村人達「・・・・・・」



少女「神勅! 三度鬼の出でしこの地へ“鬼之神おにゅ”と“おにゅ之神少女”が鎮座し、村の平穏を導く事とする!」

少女「以上! おにゅ之神少女から神勅を申し伝えた!」


狐神「中々様になってるじゃない」

神使「はい。素晴らしい神勅ですね」

神様「・・・・・・」


狐神「ったく、アンタはいつまで気を失ってるのよ」

神様「起きてるよ」

狐神「?」


少女(おにゅ、わたし役目を果たせたかな・・・)


●本殿

神様「さてと、んじゃ久しぶりにおにゅとご対面といきましょうか」

狐神「こら、その前に猫神でしょ」

神様「あの悪鬼は永久封印で良いんじゃないか?」

狐神「あんた・・・ 後で猫神に言いつけてやるから」

神使「猫神様にお仕置きしてもらった方が良いかもしれませんね」

神様「!? う、嘘だよ・・・ 嫌だなぁ~」アハハ

狐神「少女ちゃん、猫神の神剣を貸して?」

少女「はい」スッ

神様「どうやって猫神を復活させるの?」

狐神「剣を本殿の祭壇に置いて、って知らないのかよ・・・」

神様「知ってる」

狐神「嘘くさいなぁ・・・」

神様「早くやれよ。 おにゅが待ってる」


狐神「分かったわよ」コトッ

シュー

猫神「ハロ~」

神様「なんかあっけないな。 つまんない」

神使「もう少し神秘的な感じを期待していましたが・・・」

猫神「え~ 折角のご対面でそんなこと言わないでよ~」

少女「猫神様・・・ 先程は失礼しました!」ドゲザ

猫神「いやいや、気にしないで~ 私も久しぶりに暴れて楽しかったし~」ツルン

神様「お前、村をあんなに破壊して本当は楽しんでたろ」

猫神「じゃぁ、神ちゃんもやってみる~? 剣で刺されるのって痛いんだよ」ギロッ

神様「!?」ジュワー

神使「神様、一日に何度漏らせば気が済むんですか・・・」

神様「バ、バカ! 一滴だけチビッただけだよ!」

神使「全出しじゃないですか」


狐神「はいはい。 それじゃぁ、メインイベントいきましょうかね」

猫神「久しぶりだなぁ~ おにゅちゃんに会うの~」

狐神「少女ちゃん、おにゅの剣を祭壇の上に」

少女「」コクリ

スタスタ

少女「おにゅ・・・」コトッ

ピカピカ

神様「うお~ 猫神の時と全然違う!」

神使「凄い光ですね」

シュー

おにゅ「・・・・・・」バタリ

少女「おにゅ・・・ おにゅ?」


神様「おい、アレ大丈夫なのか?」

狐神「長いことコッチと離れていたからね」

猫神「大丈夫。 すぐ覚めるよ~」

おにゅ「う~ん・・・」ムクッ

少女「おにゅ?」

おにゅ「あれ? えぇと・・・」

少女「おにゅ!」ダキッ

おにゅ「うわぁ! あの・・・ どちら様です?」

少女「久しぶりだね・・・ おにゅ」ウルウル

おにゅ「そのツノの飾り・・・ もしかして少女?」

少女「うん・・・ ごめんね、遅くなって」ギュッ

おにゅ「・・・・・・」


神様「よっ、久しぶり」

おにゅ「神ちゃん? それと・・・ お猫さんとお狐さんも・・・」

猫神「久しぶり~」

狐神「大丈夫そうね」ホッ

おにゅ「・・・神ちゃん、なんかお股が濡れて―――」

神様「あんま心配させるなよ」

おにゅ「え? あっ、私・・・ そういえば・・・」ハッ

神様「ちょっとゴタゴタがあって神殺しの遂行が遅くなった」

おにゅ「・・・・・・。 どうして」

神様「お前、神殺し発動させるなら少女ちゃんにきちんと話しておけよ」

おにゅ「・・・・・・」


狐神「少女ちゃんがあんたを助けてくれたのよ」

おにゅ「少女が?」

少女「私は何もしてない。 神ちゃんさまが」

おにゅ「どうして・・・ 私は消えるつもりで。 それより神ちゃんのお股が凄い事―――」

神様「少女ちゃんがこの10年間どんな思いで過ごしていたのか分かってんのか!」

おにゅ「!?」ビクッ

猫神「神ちゃん・・・」

狐神「おまた」ボソッ

神使「・・・・・・」

神様「少女ちゃんは・・・ 少女ちゃんは!」

少女「私は大丈夫です!」


おにゅ「少女・・・ 私、すごく迷惑かけてみたいだね・・・」

少女「悪いことをしたら?」

おにゅ「ごめんなさい」ペコリ

少女「きちんと謝れる子は良い子です」ニコッ

おにゅ「うっ・・・」グスッ

神様「今回の件、きちんと罰は受けてもらうぞ」

おにゅ「・・・はい」

神使「神様・・・」

猫神「今回くらいは良いんじゃないの~?」

神様「ダメだね。 こんだけ迷惑かけて、私たちだけでなく守るべき人にまで迷惑かけたんだから」

狐神「おまた」ボソッ

神様「」イラッ


おにゅ「罰・・・ 何でも、何千年でもお受けします」

神様「お前、この地の主神を剥奪な」

少女「!?」

おにゅ「・・・・・・。 はい、承知いたしました」フカブカ

猫神「神ちゃ~ん、それは厳しすぎるよ~」

狐神「そんなにお漏らしの件が気に入らなかったの?」

神様「うるさい、これは最高神判断だ。 口出しするな」

猫神・狐神「・・・・・・」

神様「本日よりこの地の主神は少女。 巫女をおにゅとする」

おにゅ・少女「え!?」


神様「明日は主神をおにゅ、巫女は少女」

一同「?」

神様「明後日は主神を少女、巫女を―――」

狐神「ちょ、ちょっとアンタ何言ってんの?」

猫神「なるほど~ それは厳しい罰だねぇ~」

神使「どういう事です?」

猫神「この大きさの神社だと神を二人も配置することが出来ないしね~」

神様「日替わりで主神と巫女を2人で入れ替える。 間違いは即神法違反」

狐神「なるほどね」フッ

おにゅ「それが罰?」キョトン

神様「厳しいだろ? 少女ちゃんは耐えられる?」

少女「はい!」


神様「おにゅはどうだ?」

おにゅ「・・・・・・」

神様「無理か?」

おにゅ「いや、その前に少女が神って? あと、神ちゃんのお股が気になって」

神様「少女ちゃんは神籍に入った」

おにゅ「神籍?」

少女「新米だけど///」

おにゅ「えー!?」

少女「神さまのお仕事を色々教えてね、おにゅ」ニコッ

おにゅ「少女・・・」

少女「2人でこの村を守っていこう? ずっと2人で・・・ 協力して」

おにゅ「ありがとう・・・ ありがとう少女」グスッ


狐神「アンタにしては良い締め方ね」

猫神「流石神ちゃんだねぇ~ 年期が違うよ」

神様「褒めてないよね、それ」

神使「でも、神様らしいですね」


神様「
こうして、かわゆい神様はその大役を果たしこの地を去った。
おにゅと少女は互いに協力し、村の発展に尽力。
寂れた村は立派な町へ、そして市へ、県庁所在地にまで反映を遂げる。
街の中心には常に助言を与え続けた神ちゃんの功績を称え、立派な神ちゃん像が鎮座。
そして―――



神使「神様? 勝手に変な妄想を垂れ流さないで下さい」

狐神「言っておくけど、今回アンタ大して役に立ってないから。 お股濡らしただけだから」

猫神「どちらかというと~ いちばんの功労者は私じゃないかなぁ~」

神様「うるせーよ! このままの流れじゃヤバいんだよ!」

神使「・・・確かに」

狐神「どういう意味?」


長官「こういう意味だ」


神様・神使「!?」ギクッ

長官「おや? 神ちゃん、お股が濡れているようだが」

神様「さっきオロミミンCこぼしたから」

猫神「長官く~ん 久しぶり~」

狐神「態々現地に出張るなんて珍しいわね」

長官「やぁ、久しぶりだね。 おにゅ」

おにゅ「お久しぶりです、長官さん」ペコリ


長官「君が神籍に入った少女神だね?」

少女「少女神だなんてそんな・・・ 私なんかまだ・・・///」ゴニョ ゴニョ

長官「後で神籍証を発行するから、これからよろしくね」

少女「・・・はい。 おにゅのように立派な神になれるよう精進いたします」

おにゅ「はぅ・・・///」

長官「期待しているよ」ニコッ

狐神「間違ってもお漏らしするような神にはならないでね?」

猫神「威厳に関わるからね~」

神様「さて、問題も解決したし私たちもお暇しようか」

神使「そ、そうですね神様。 まずは洗濯ですね」

神様「そうね」ハハハ


長官「何故、私が来たのかは神ちゃんと神使君なら分かるよね?」

神様・神使「・・・・・・」

長官「分かるよね?」

神様「まぁ・・・ 何となく・・・ いつものような感じでしょうか?」

狐神「あんた達、まーた何か悪さしたんでしょ」ケラケラ

猫神「も~ 神ちゃんは相変わらずだなぁ~」フフフ

長官「猫神君と狐神君にも話がある」

狐神・猫神「?」

長官「狐神君、君は何で今回の件に絡んだのかな?」

狐神「え?」

長官「君は最初の神勅取り消しで派遣を取り消されていると思うんだけど?」ニコッ

狐神「あ・・・ いや・・・ 何というか成り行きで・・・」オロオロ


長官「猫神君は、村の破壊が規定の10倍になっているんだけど?」

猫神「・・・・・・」

長官「村が滅茶苦茶なんだけど? 保険金が凄いことになるんだけど?」

猫神「それは~ あの位しないと迫力が~」オロオロ

長官「神ちゃんと神使君は、それら全ての元凶。 つまり首謀者だ」

神様「ちょ、それは間違いだ! 今回私は何の役にも立っていない!」

神使「確かに。 神様は今回オシッコ漏らしていただけのような・・・」

神様「そう! それ!! 皆も証明してくれる」

狐神「まぁ、確かに今回は・・・」

猫神「そうだね~ ほとんど失神してたし~」

長官「と言うことは、首謀者は猫神君と狐神君という事で良いかね?」

猫神・狐神「・・・・・・」

長官「首謀者の分の罰も二人が負担すると?」

神様「すまんね、猫ちゃん。 狐ちゃん」ニタァ


狐神・猫神「首謀者は神ちゃんです」

神様「ぇ?」

長官「だそうだ、神ちゃん」

神様「お前らふざけんなよ! 本当に私何もタッチしてないだろ!」

長官「神移しの神勅を出した張本人がそんなこと言っても説得力は無いよ?」

神様「うぐっ!」

長官「神ちゃん! 猫神君! 狐神君! そして神使君! 神宮で説教だ」

神様「ふーんだ! 今回は猫神と狐神が説教担当じゃないし怖くないよーだ」ベー

長官「説教担当は、神宮が誇るダメ巫女A子ちゃんだよ?」

神様「ぇ?」


長官「A子ちゃんプレゼンツ、96時間耐久A子の面白い話を聞き続ける会」

神様「ヤダ! ヤダヤダ!!」

狐神「なんか大したことない気がするけど」

神様「お前はA子ちゃんの面白い話が本当に面白いと思っているからそんな事が言えるんだ!」

猫神「? それってつまらないって事~?」

神様「そんな次元じゃない・・・ 私は5分で泡を吹く自信がある!」

神使「それはそれで逆に興味があるのですが・・・」

長官「それは神宮に帰ってのお楽しみだ。 さっ、行こうか」

おにゅ「あの、私は・・・ 私も罰を受ける必要が」

長官「おにゅちゃんも連れて行く予定だったけど、神ちゃんが先に罰を出しちゃったからね」

神様「マジかよ! じゃぁ私たちの罰は牡蠣食べ放題にする! 神ちゃん命令!」

長官「はいはい分かったから、行くぞ。 車を待たしてある」


神様「うわ~ん 嫌だよ~ 助けておにゅー! 少女ちゃーん!!」ズルズル

狐神「2人とも頑張ってね」ハハハ

猫神「何かあったら連絡してねぇ~」

神使「お二人のご活躍を願っております。 良い村にして下さい」ニコッ


おにゅ「ありがとう!」ニコッ

少女「皆様、ありがとうございます」フカブカ


おにゅ「あっ! なんか少女ってば落ち着きがあって格好いい」ムスッ

少女「10年の歳月は長かったの。 私、成長したんだから」ボイン

おにゅ「!? 少女が嫌な子に育ってるー」

少女「おにゅってこんなに小さかったっけ~?」ニヤッ

おにゅ「キー! 少女が鬼だ! 鬼畜だ!」ジタバタ

少女「そうよ、私は少女と同じ鬼。 頭にツノだってあるでしょ?」

おにゅ「・・・・・・」


少女「おにゅ?」

おにゅ「・・・ありがとう。 それを付けてくれたとき本当に嬉しかった」

少女「当たり前じゃない、これはおにゅと共に歩む私の覚悟・・・ 友情の証なんだから」


おにゅ「少女大好き! 少女に神の加護を!」

少女「おにゅにも神のご加護を」


 神様「その加護、私にも頂戴ー!」ズルズル


少女・おにゅ「ふふっ!」

少女・おにゅ「あはははは!」




神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
~ 番外編 2019年冬『おにゅおにゅ神社』~
おわり


〓〓〓〓〓〓〓〓〓


女「あら、参拝者かしら? 珍しいわね」

?「気をつける也や。 彼奴は人とは異なる存在」

女「へぇ~ それはアンタと同じって事?」

?「あんなヤツと一緒になどするなど、我に対する侮辱であるぞ」

女「あらあら、そんな怖い顔なんかしてたら可愛い顔が台無しよ?」

?「無礼者め」

女「でも、これは楽しくなりそうね」フフッ

?「まさか、奴らを招き入れよう等とは考えてはおらぬよな?」

女「さぁ? でも・・・ その前に邪魔者を追っ払わないとね」


~あらすじ

神様「かわゆい女神、神ちゃんがお付きの神使と旅をする!」


■ ~ 番外編 2020年春『継々乃社之領域』~


神使「お疲れ様でした。 目的の神社に到着したようです」

神様「3時間も歩かされるとは思わなかったんだけど・・・」

神使「神様がバスを待ちたくないって言ったんじゃないですか」

神様「だって2時間待ちとか無理だろ!」

神使「途中でバスに追い抜かされましたし、待っていた方が良かったと思いますが」

神様「うるせーよ! クソ犬!」ゲシッ

神使「痛っ! いつも言っていますが、もう少し神宮の女神らしい振る舞いをですね」

神様「嫌だ! 無理!」

神使「全く・・・」

神様「それよりさぁ、疲れたしサボって温泉行こうぜ」

神使「また、そんな事を・・・ 仕事が終わったら連れて行ってあげますから」テクテク

神様「微塵も思ってねーだろ・・・ はぁ~ 仕事したくねぇな~」トテトテ


――― 継々神社(継々乃社之領域)


神様「う~ん・・・ つぎつぎじんじゃ?」

神使「つぐつぐじんじゃ、正式には“つぐつぐのやしろのりょういき”と言うようですです」

神様「センスねー名前だな」

神使「由緒のある立派な社名だと思いますが。 古い作りの神社のようですし」」

神様「マジメ過ぎなんだよ。 私なら“入拝即呪之社”とか付けるね」

神使「何でそんな近寄りがたい名前にするんですか・・・」


神様「この位パンチがないと今時神社なんかに誰も来ないって」

神使「神社に必要な物は古きを敬う心、それに見合う荘厳さと威厳です」

神様「そんな見た目とか過去ばっかり追い求め・・・・・・ ん?」チラッ


 ???「」コソッ


神使「どうされました?」

神様「いや・・・ 今、向こうの木の陰から誰かに見られていた気が」

神使「向こうって、バス停の先にある木ですか?」

神様「うん」


神使「村の人がバスを待っているのでは?」

神様「う~ん・・・」

神使「そうやってバス停まで行って、来たバスに乗って帰ろうとする魂胆ですね?」

神様「お前いくら私でも・・・ いや、それ良いアイデアだな」

神使「ふざけてないで社務所の方へご挨拶に行きますよ」テクテク

神様「へいへい」トテトテ


 ???「・・・・・・」


――― 社務所


神様「ちわ~」ガラガラ

神使「神様・・・ いきなり扉を開けちゃダメですよ」


 シーン


神様「・・・・・・」

神使「誰もいませんね。 お留守でしょうか?」

神様「よし、帰ろう」

神使「今来たばかりです」

神様「いや、今回は素直に帰った方が良い気がする」



 ??「何かご用でしょうか?」


神様・神使「?」クルッ

少女「参拝でしたら―――」

神様「ひゃー!!」

少女「!?」ビクッ

神使「お、落ち着いて下さい! 私たち怪しいものではございませんから!」

神様「殺さないで! 何でも言うこと聞く!! 私の隠しチョコあげるから!!」

少女「あ、あの・・・ どうされたんですか?」

神使「そ、その手に持っている刀を一度置いて下さい!」

少女「刀・・・? あっ」

神様「それ日本刀だよね!? スパッっといけちゃうヤツだよね!?」ブルブル

少女「すいません! あの・・・ これは違くて!」オロオロ

神様「まだ死にたくなーい」ギャー


――― 社務所内


少女「驚かせてしまい本当に申し訳ありませんでした」ペコリ

神使「こちらこそ取り乱してすみません。 お恥ずかしい限りです・・・」

少女「害獣が忍び込んだので、追っ払っていたところで」

神使「害獣?」チラッ

神様「?」

神使「確かにうちの神様はよく間違えられますが、一応知性はありますので安心して下さい」

神様「何で私なんだよ! 猿とかイノシシとかだろ普通!」ゲシッ

神使「痛っ!」


少女「え~と・・・ お社の方は参拝でしょうか?」

神使「私達こちらの神社の巫女さんに用がありまして」

少女「巫女?」

神使「申し遅れました。 私は神宮から派遣されました神使と申します」

神様「私は巫女の神ちゃん。 気兼ねなくかわゆい神ちゃんと呼んでね」

巫女「はあ」

神使「こちらの神社を管理されている巫女さんはご在宅でしょうか」


少女「お話しでしたら私の方で伺いますが」

神様・神使「?」

少女「この社の巫女で少女と言います」ペコリ

神様・神使「・・・・・・」

少女「何か?」キョトン

神使「少女さんがこの神社の?」

神様「巫女?」

少女「はい。 そうですが・・・」


神使「失礼ですがその制服は・・・ まだ学生さんですよね?」

少女「中学2年です」

神様「人手不足もここまで来たか」

少女「あっ、お茶も出さずにすみません。 今お持ちします」

神使「すぐ帰りますので、お気遣い無く」

少女「遠慮なさらず。 コーヒー・紅茶・ジュースがありますが」

神使「では、私はコーヒーを。 神様はいかがしますか?」

神様「・・・・・・」キョロキョロ

神使「神様?」

神様「ん? 私も同じで」

少女「分かりました。 少々お待ちください」スタスタ


 ガチャ



神使「神様どうしたんです? 落ち着かない様子ですが」

神様「別に? なんか古そうな物がいっぱいあるな~ と思って」

神使「ブラウン管テレビに真空管ラジオ・・・ 黒電話までありますね」

神様「なんかタイムストリップ劇場した気分だ」


神使「しかし驚きましたね、神社を管理している巫女が中学生だなんて」

神様「・・・・・・。 で、何でここに来たの?」

神使「神宮からこの村で毎年行われるお祭りを調べるようにと」

神様「祭り?」


神使「はい。 神宮で神事内容が把握できないようでして」

神様「う~ん、それは密祭って事?」

神使「簡単に言えば、そのようです」

神様「別に構わないだろ。 古そうな村だし、密祭なんて他の土地にも沢山あるし」

神使「そうなんですが、実は他にも―――」


 ガチャッ


少女「お待たせしました」テクテク

神様「おっ、ありがとさん」


少女「お口に合えば良いのですが」コトッ

神様「う~ん、芳醇な香り。 これはブルーマウンテンかな?」グビッ

少女「ブランデーを混ぜた特製コーヒーです」

神様「ブゥーッ!」ゲホゲホ

少女「あっ! ごめんなさい。 やっぱりおかしかったですよね」フキフキ

神様「だ、大丈夫。 ちょっと驚いただけ」ハハハ

神使「何と言いますか・・・ その・・・ だいぶアルコール分も高めですね」ハハハ

少女「都会で流行っていると聞いたもので・・・ 本当にすいません」キッ


 ガタッ


神様・神使「?」


少女「あっ、古い建物なので建て付けが悪くてたまに軋みが鳴るんです」

神使「そうですか・・・」キョロキョロ


少女「それで、お話しというのは?」

神使「えーと・・・ 失礼な質問で恐縮ですが、少女さん以外に他にどなたか?」

少女「私はこれでもこの社の巫女です。 信用できませんか?」

神使「いえ、そういう意味ではなく」

少女「両親は早くに。 ですから私がこの社を一人で切り盛りしています」

神使「すみません、変な聞き方をしてしまいまして」ペコリ

神様「少女ちゃんは歳の割にしっかりしてるね。 本当に中学生?」

少女「小さい頃から巫女としてお仕えしてきましたから・・・ 自然と」

神様「ふ~ん」

少女「・・・・・・」


神使「早速ですが、こちらのお祭りの事でお話を伺ってもよろしいでしょうか?」

少女「祭り、ですか?」

神使「はい。 神宮の調査命令でして」

少女「祭りと言っても、特に変わったことはしていませんが」

神様「密祭って聞いたけど」

少女「社で祝詞を上げるだけで衆人環視でもないので、そういう意味では密祭ですね」

神使「予定では今週末に神事が執り行われると聞いておりますが」

少女「はい」


神使「その神事に私達も参加させてもらう事は可能でしょうか」

少女「・・・・・・」

神使「何か不都合でも?」

少女「いえ、そういう訳では・・・ その・・・ 私の一存では今すぐにお返事は難しく」

神使「神宮から必ず調査報告を上げるようにと言われております」

少女「・・・・・・」

神使「少女さん?」

少女「電話で確認してみます。 お時間の方は大丈夫ですか?」

神使「ありがとうございます。 私たちは大丈夫です」

少女「では、こちらで少々お待ちください」スタスタ


 ガチャッ



神様「なんか神使君、珍しく今回は強気じゃん」

神使「神様、何か違和感を感じませんか?」

神様「というと?」

神使「表現が難しいのですが・・・ 私たち以外に誰かの気配を感じて・・・」

神様「ん~ 気のせいじゃない?」ポチポチ

神使「そういえば、先程神様もバス停で誰かに見られていると言っていましたね」

神様「う~ん」ポチポチ


神使「神様? 仕事中は携帯で遊ぶのは禁止で―――」

 ブーブー

神使「?(メール)」ゴソゴソ


FROM:神様
本文:それ以上喋るな


神使「!?」クルッ

神様「気にし過ぎじゃない?」

神使「そう・・・ ですね」



 ガチャッ


少女「お待たせしました」スタスタ

神様「お帰り~」

神使「いかがでしたでしょうか?」

少女「はい。 問題ないそうです」ニコッ


 ガタン! ガタン!


神様「・・・・・・。 本当に?」


少女「どちらか宿はお取りになられていますか?」

神使「宿?」

少女「もしよろしければ、こちらに泊まっていかれては?」


 ガタンッ! ガタンッ! ガタンッ!


神様・神使「・・・・・・」

少女「すいません、建て付けが」フフッ

神様「もう建て付けってレベルの音じゃないよね?」


神使「えーと・・・ 神様、いかがしましょう?」

神様「どうせ宿なんか取ってないんだろ」

神使「・・・・・・まぁ」

少女「それではお部屋を用意してきますので」スタスタ


 ガチャ


神使「神様、あの―――」チラッ

神様「ビローン」ベー

神使「・・・急に変顔しないで下さい。 にらめっこなんかしませんよ」

神様「お前にやったんじゃねーよ」

神使「?」

神様「はぁ~ 帰りてーな~ 面倒くせーなぁ~」


――― 客間


少女「滞在中はこちらのお部屋をお使い下さい」

神使「ありがとうございます。 正直助かりました」

少女「お手洗いは廊下を挟んで正面、洗面所は突き当たりに・・・・・・」

神様「」ジー

少女「・・・・・・」

神使「どうされました?」

少女「え? あっ、私お夕飯を買ってきます」

神使「私達もお供いたします」

少女「友達と一緒に行く約束をしているので」ニコッ


神様「私達が一緒の方が迷惑だろうよ」

少女「それではごゆっくり」スタスタ



 シーン


神様「神使君」

神使「はい」

神様「帰ろう。 バックレて逃亡しよう。 職務の放棄を提言する」

神使「そんな事できる訳ないじゃないですか」

神様「ここはダメだ。 私の第六感、いや全感覚が滞在を拒絶している」

神使「この神社、普通ではない何かがあるという事だけは理解できます」

神様「おや、何かお心当たりでも?」

神使「大ありですよ。 何ですか、あのメールは」

神様「犬ころは何か気付いたこととかある?」


神使「少女さんと私たち以外に誰かいるんですね? 私には見えない誰かが」

神様「いる。 いや、いるっぽいねぇ~」

神使「こちらの神社の主神さまでしょうか?」

神様「う~ん」

神使「違うのですか?」

神様「何でそう思ったの?」

神使「少女さんにいくつか違和感を感じました」

神様「ほぉ」

神使「神事は祝詞奏上だけなのに、誰の許可が必要なのでしょうか?」

神様「崇敬会とか?」


神使「誰も参加しないのにですか?」

神様「まぁ変だよな」

神使「もう1つ、少女さんとお話をしているときの変な間が気になりました」

神様「間?」

神使「何と言いますか・・・ たまにワンテンポ遅れが合ったような気がするんです」

神様「あ~」

神使「通訳を入れて話しているような、そんな感じを受けました」

神様「確かにちょっと違和感があったよな」


神使「一体どうなっているのでしょうか?」

神様「さぁね~」

神使「神様も分からないんですか?」

神様「う~ん、どれから手を付けて良いか分からんのよ。 ちょっと考えさせて」

神使「承知しました」

神様「おっ、随分と物わかりが良いねぇ」

神使「この場では、ですが」


神様「それより、どうして神宮は急にここを調べろって言い出したんだ?」

神使「理由は二つ。 一つは以前からこの神社の神事内容が不明だったこと」

神様「それはさっき聞いたよな」


神使「二つ目は、この神社の巫女です」

神様「巫女? 少女ちゃんのこと?」

神使「・・・今、詳細をお話ししても?」

神様「あ? あ~ 大丈夫みたい。 少女ちゃんと一緒に出て行ったぽい」

神使「何が大丈夫で何が出て行ったのかは知りませんが・・・ これを見て下さい」ドサッ

神様「何この書類」

神使「この神社の登記書類です」

神様「随分と量があるな」

神使「この神社から毎年提出された過去60年分の書類です」

神様「これが何か?」


神使「この神社の代表管理者の欄を見て下さい」

神様「代表・・・ 今年の登記は少女ちゃんの名前だな」

神使「これが10年前の登記です」ペラッ

神様「ん? 少女ちゃんの名前だ」

神使「そして、60年前のものがこれです」ペラッ

神様「・・・・・・」

神使「変だと思いませんか?」

神様「何で神宮は今頃これに気がついたんだ?」

神使「田舎の神社は長いこと管理者が変わらない事も珍しくないですから」

神様「でも60年って・・・」

神使「そこです。 異常に長すぎるんです」

神様「つまり、ずっと変更されないから変だと思った訳か」


神使「少女さんにお目にかかってビックリしました」

神様「まぁ、登記通りなら少女ちゃんはヨボヨボのお婆ちゃんのはずだしな」

神使「世襲で下の名前を代々受け継いだ、という可能性もありますが・・・」

神様「おっ、いいねそれ。 そうしておこうぜ」

神使「私が考えついたという事は、神宮だってその点は調べたと思いますよ?」

神様「バレたら、その時はごめんちゃい! で」

神使「それで済めば良いですが・・・」

神様「無理だよなぁ。 やっぱ調べる必要はあるかなぁ~」

神使「それがよろしいかと」

神様「うへ~ やっぱ面倒くせ~」


――― 翌日


神様「おはよ~」トテトテ

少女「おはようございます」

神様「あれ? お出かけ?」

少女「学校に。 中学生ですから」ニコッ

神様「早いね~」

神使「もう朝の8時です」

少女「ご飯はテーブルの上に用意しておきましたので適当に食べて下さい」

神様「うれし~ 後でチンして食べるね」

少女「すみません、うちには電子レンジがなくて・・・」

神様「・・・オッケ。 了解・・・」

少女「なんかすみません・・・」

神様「わ、私たちずっとここでウダウダしてるから心配しないで」アハハ

少女「そうして頂けると助かります。 それでは」スタスタ



 シーン


神使「神様、この後はどうされますか?」

神様「ガサ入れ?」

神使「それは・・・ あまり気が乗りませんが」

神様「じゃあ気分転換に外にでも行ってみますか」

神使「お散歩ですか?」

神様「情報収集だよ」



――― 田舎道


神様「しかし、本当に何もない村だな」トテトテ

神使「長閑で良いところじゃないですか」テクテク

神様「おっ、野生の爺さん発見」

爺さん「んぁ?」

神使「おはようございます。 精が出ますね」

爺さん「おんや? 二人とも見かけん顔じゃな」

神使「私たち継々神社の方へ用事がありまして」

爺さん「お~ 少女ちゃんの所かえ」


神様「爺さん、それなに育ててるの?」

神使「アサガオ・・・ でしょうか? とても綺麗ですね」

爺さん「これから神社に奉納するんじゃよ」

神様「ふ~ん」

爺さん「神社があるのは逆側じゃぞ?」

神使「ご挨拶は済ませまして、暇なので村を散歩していたところです」

爺さん「そーか。 めんこい子じゃろ、村自慢の巫女様じゃ」

神様「少女ちゃんって生まれはこの村?」

爺さん「んぁ~ そうじゃな」


神様「中学生とは思えないほどしっかりしてるんだけど、あの性格って昔から?」

爺さん「んぁ~ 昔からあんな感じじゃった気がするのぉ」

神様「巫女はいつからやってんの?」

爺さん「いつからじゃったかの~ もうずっとじゃ」

神様「前の巫女は?」

爺さん「前? 前~・・・ はて、誰じゃったかのぉ」

神使「少女さんのご両親、お母様ではないのですか?」

爺さん「両親?」

神使「早くにお亡くなりになったと少女さんから伺いましたが」

爺さん「んぁ~ 両親・・・ そういえば少女ちゃんはいつから一人じゃったかのぉ~?」


神様「もう一個だけ教えて。 少女ちゃんが友達と遊んでいるの見たことある?」

爺さん「あの子にゃ同学年の子はいないで。 中学生は少女ちゃんだけじゃ」

神様「そうなんだ」

爺さん「じゃが、随分昔は仲の良い同級生と毎日のように遊んでおった気もするのぉ~」

神使「小学生の頃とかでしょうか?」

爺さん「んぁ~ いつじゃったかのぉ~」

神様「なるほどね。 あんがと」

爺さん「この辺は日が落ちると真っ暗になるけぇ、早く帰るんじゃぞ」テクテク


神使「年のせいでしょうか? 話の内容が混乱していたような・・・」

神様「そうかな?」

神使「?」

神様「これ、ちょっとヤバいんじゃね」


――― 継々神社・客間


神様「・・・・・・」

神使「さっきから何を考えているんですか?」

神様「ん~ 分かった」

神使「?」

神様「私もそう思う。 たぶん大丈夫だ」

神使「神様?」

神様「姿を現しても良いぞ」


 ?『それでは、失礼いたします』スー


神使「!?」


神様「大丈夫、コイツは忍神。 私たち側」

忍神「ご挨拶遅れました、神使殿」ペコリ

神使「忍神・・・ 様?」

忍神「神様機構、諜報室の忍神と申します」

神使「諜報室!? 噂では聞いたことがありますが、本当に存在していたんですね・・・」

神様「まぁトップシークレットだしね~」

忍神「私は、2年ほど前からこの神社で隠密の諜報活動をしております」

神使「そんなに前から・・・ 神様の指示でしょうか?」

神様「流石だろ。 私の手回しの早さを褒め称え、そして牡蠣を献上せよ!」ウヒャヒャ

忍神「私は60年ほど前から神様には進言しておりましたが・・・」

神様「ウヒャ・・・」ギクッ


神使「・・・・・・」ジトー

神様「・・・・・・」プイッ


忍神「先程声を掛けるまで、私の存在にすら気付いていなかったようでしたが?」ズイッ

神様「・・・顔、近いっすね」


神使「神様・・・ 流石の私もドン引きなんですが・・・」

神様「ほ、ほら私も色々忙しいから」アハハ

神使「そんな理由で忍神様の助言を60年も放置したんですか?」

神様「いや、でもちゃんと諜報活動の許可は出てるって事で」ハハハ

忍神「結局長官さん経由での諜報任務ですが?」

神様「うん。 謝罪しますので、この場は何卒穏便に願います」ドゲザ


神使「でも、どうしてこの神社が諜報対象に?」

神様「あれは、私がまだ幼かった頃―――」

神使「忍神様はどうしてこちらの神社をお調べになっているんですか?」

神様「・・・・・・」

忍神「元々、この地は神が入ることが許されない禁足地でした」

神様・神使「え!?」

忍神「・・・・・・。 そのように申したのは神様ではないのですか?」

神様「は!? そんな事いつ言った!?」

忍神「私は別の神経由で聞いたので。 神様が何千年も前に仰ったと」

神様「マジかよ! なんで?」

忍神「さぁ、私には・・・」

神様「全然記憶にないんだけど」


神使「取りあえずその話は置いておきましょう」

神様「置いておいてもOK?」

神使「思い出せないようでしたら、後で良い薬がありますから試してみましょう」

神様「薬ってポラギノール的な? 私のお尻を狙うなんて神使君のへ・ん・た・い」

忍神「でしたら、私もかなり効く薬を持っておりますので」

神様「いや・・・ お前のはマズいだろ・・・」

忍神「ご安心を。 吹矢で一刺し、即効性です」

神様「・・・それって薬か? 日本薬局方にちゃんと載ってる?」


神使「忍神様、話の続きをお伺いしてもよろしいでしょうか」

忍神「今から60年程前、特殊な歪みを感じたと近くの管理神から報告がありました」

神使「歪み?」

忍神「正体は不明。 それ以降、毎年決まった日に歪みを検出しています」

神使「決まった日って、まさか」

忍神「お察しの通り、この村の神事とされる日と一致します」

神使「神様、お心当たりは?」

神様「ない。 いや、今必死に思い出してるから吹矢はちょっと待って」


神使「その神事と今回の件は何か関係があるのでしょうか?」

忍神「お二人も感じたかと思いますが、私達と少女さん以外に何者かの気配を感じます」

神使「確かに感じましたが、私が感じたのは忍神様の気配では?」

忍神「別のものかと思います」

神使「他にも誰かいるのですか?」

神様「気配は2つあるな」

神使「え!? あと二人も正体が分からない何かがいるって事ですか?」

忍神「一つは人の物。 この神社を監視している男がいます」


神様「少女ちゃんはそれを?」

忍神「気付いております」

神様「なるほど。 日本刀・・・ か」

忍神「何度か刀を振りかざしながら、追い返している姿を確認しました」

神様「私がバス停で感じた気配はそいつだな。 で、その男の目的は?」

忍神「十中八九、この神社の宝物を狙っているのではないかと」

神使「宝物?」

忍神「太古の土器のようです」

神様「土器か~ 土器は興味ないなぁ」

神使「神様の興味は関係ございません」

神様「いや、経験上さぁ土器ってどこも買い取ってくれないんだよ」


神使「・・・その土器というのは何か特殊な由来でもあるのでしょうか?」

忍神「神体クラスではありますが学術的価値はそれほど高くはないと思われます」

神様「ほらね」

忍神「ただ・・・ 少し変といいますか、気になる点がありまして」

神様「お前が曖昧な表現になるなんて珍しいな」

忍神「昨年はその土器は無かったのですが、今年は存在しているようです」

神使「どういう事でしょうか?」

忍神「ある日を境に土器が出現しました」

神様「パードゥン?」

忍神「今思えば、昨年本殿裏でその欠片を見たような気がいたします」


神使「・・・つまり、去年は粉々だったけど今年は復活していると?」

忍神「確証はございませんが」

神様「イミフなんだけど・・・ 頭大丈夫?」

忍神「ある日を境に、突如土器が出現したのは事実でございます」

神使「もしかして・・・」

忍神「はい、神事とされる日です」

神様「またそれかよ・・・ 神事で何が起こってんだ?」

忍神「正確な報告には相当な時間を要するかと思われます」

神使「確かにその神事がトリガーになっているとしたら、1年に一度だけしか調べるチャンスがないですからね・・・」


神様「もう一つの気配の方は?」

神使「少女さんには見えて、私達には見えない何か・・・ ですね?」

忍神「仰る通り」

神様「少女ちゃんがそれと喋ったりしている光景は見たのか?」

忍神「独り言のような感じでボソボソしているのは遠巻きで確認しております」

神様「会話の内容は?」

忍神「接近は避けておりますので」

神使「確かに感づかれると隠密活動が台無しになってしまいますからね」

忍神「私も相手が見えない分、余計慎重にならざるを得ず・・・」

神様「まぁ、相手さんは忍神の存在には気付いているだろうな」

忍神「私もそう思います。 会話は私が近づけない場所で行っている印象を受けましたので」

神様「両者監視の元での我慢比べ大会か・・・」

神使「どちらかが動く必要がある訳ですね」


神様「他に気になる点は?」

忍神「実は・・・ こちらが一番不可解でして、少女さんは現在中学2年生なんです」

神様「若干大人びた感じはするけど、何も不審な点はないだろ」

忍神「去年も中学2年生でした」

神様「留年? 少女ちゃんてそんなに頭悪いの?」

神使「流石に中学で留年は無いのでは・・・ まさか、成長していないと?」

忍神「成長はしているようですが、神事の日を境に・・・ 少女さんだけが1年戻っています」

神様「村人の方は?」

忍神「特に影響は感じられません」

神使「村の人が気付かないなんて事あり得るんでしょうか?」


神様「忍神さぁ、その日に何か感じなかった? 特に匂いとか」

忍神「匂いですか?」

神様「そう、お香とか甘ったるい匂いとか・・・ 煙たいとかそんな感じの」

忍神「そうですね、1年前ですので・・・ あっ、でも強烈な眠気を感じました」

神使「眠気?」

忍神「疲れがたまっていたのかと思いますが、少し異常とも思える眠気でした」

神様「・・・・・・」


神使「やはり神事を見てみないと手の出しようがありませんね」

神様「忍神以外に私達まで参加したんだぞ? たぶん早々に行動してくるはずだ」

忍神「やはり私達の方から先に仕掛けるべきかと」

神使「神事まであと2日しかありませんね」

神様「そうだなぁ~・・・・・・ ん?」

忍神「少女さんが学校から戻ってきたようですね」

神様「一旦解散だ」

忍神「はい」

神様「それと神使、忍神」

神使・忍神「何でしょう」

神様「吹矢だけはちょっと待って下さい!!」ドゲザ


――― 社務所前


少女「・・・フッ」ニヤッ

少女「えぇ、分かってる」

少女「・・・そうね、予定通り今夜決行するわ」

少女「私達が先に・・・」


少女「殺してやる」キッ


――― 夜・居間


神様「この煮物美味しい」モグモグ

少女「味、濃くなかったですか?」

神様「丁度良い。 私の好きな味」

神使「少女さんはお料理がお上手ですね」

少女「一人暮らしが長いので」

神使「いつからお一人で生活を?」

少女「そうですね・・・ もう60年くらいでしょうか」

神様・神使「・・・・・・」


少女「冗談ですよ」フフフ

神様「・・・この神社って建立はいつ位なの?」

少女「私も社の成り立ちは詳しく知らないですが、相当古くからあるようです」

神様「変わった作りの神社だよね」

少女「ここ以外で同じ作りの社は存在しないと聞いたことがあります」

神様「へ~」モグモグ


少女「ご飯よそりましょうか?」

神様「うん。 重めでお願い」

神使「重めって・・・ 少しは遠慮してくださいよ神様・・・」


――― 客間


神様「・・・・・・」

神使「どうされたんですか? 神様」

神様「気になることがある」

神使「体重ですか?」

神様「ちげーよクソ犬」ゲシッ

神使「痛っ! では何が気になるんです?」

神様「ここって何?」

神使「神社・・・ 継々神社ですね」

神様「本当に?」


神使「どういう意味です?」

神様「ここの正式名称って“つぎはぎのもりもり”だろ?」

神使「“つぐつぐのやしろのりょういき”です。 何一つ合っていませんが・・・」

神様「○○神社とか、大社とか宮とかではないんだよなぁ」

神使「そう言われれば、少し特殊ですね」

神様「社号でなくて俗称って線もあるけど、ちょっと名称が変なんだよ」

神使「しかし、どう見ても神社形式だと思いますが。 神宮にも登録されていますし」

神様「継々神社ってのは神宮が勝手に付けた称号じゃないのか?」

神使「可能性はありますが、それが何か?」


神様「少女ちゃん一回もここの事を“神社”って言っていないんだよ」

神使「え?」

神様「もしかして、私たちが根本的に勘違いをしているんじゃ・・・」

神使「根本?」

神様「・・・・・・。 もう一つ、重要なことがある」

神使「何でしょう」

神様「隙間風が気になる。 寒くて寝られない」

神使「古い建物ですし・・・ それは我慢しましょう」

神様「う~ん・・・」ゴロゴロ


神使「あっ、神様また服を脱ぎっぱなしにして・・・ シワになってるじゃないですか」

神様「お前の布団の下に敷いておけば朝にはピシッとなるだろ」

神使「全く、私が寝相悪かったらどうするんですか・・・」

神様「私はシワシワでも気にならないけど」

神使「私が気になるんです。 あれ?」

神様「何々? ポッケにお金でも入ってた? それ、私のだから寄越せよ」ガバッ

神使「そんな物入ってませんよ・・・ それより、この壁見て下さい」

神様「あ? 何その穴」

神使「覗くと外が見えます」

神様「隙間風はそこから入っていたのか。 荷物置いて塞いでおけよ」


神使「あっ、少女さん」

神様「どこ?」キョロキョロ

神使「外です。 この穴から本殿の裏手にいる少女さんが見えます」

神様「こんな時間に掃除か? ってか覗きかよ・・・」

神使「大量のアサガオを運んでいるようですね。 手伝いに行きましょうか」

神様「そういえば野生の爺さんが奉納するとか言っていたな」

神使「・・・・・・」

神様「どした?」

神使「少し遠くてよく分かりませんが、作業しながら誰かと話をしているようで・・・」

神様「・・・・・・。 ちょっと変われ」

神使「どうぞ」

神様「ん~・・・」ジー


――― 本殿裏


少女「うるさいなぁ、 何をそんなに怒っているのよ。 ちょっと小休止よ」グビッ

少女「・・・お酒くらい良いじゃない。 相変わらず面倒くさいなぁ」

少女「・・・そう? 私はイレギュラーな展開は大歓迎。 あなたは違うの?」フッ


神様「疲れを取るなら酒より睡眠! 食べて寝て、また食べて寝る!!」


少女「!?」クルッ

神様「中学生にお酒はまだ早いと思うなぁ~」トテトテ

少女「こ、これは紅茶です! っていうかいつからそこに!?」


神様「少女ちゃんって普段はそんな大人な喋り方だったんだ~」

少女「・・・・・・」

神様「何ていうか別人だよねぇ~ でも、私は猫かぶり少女ちゃんも性格すり切れ少女ちゃんも両方好き」

少女「す、すり切れ!?」

神様「今、誰とお話ししてたの?」

少女「・・・私は見ての通り一人ですが」

神様「まぁいいや。 トイレってどこだっけ」

少女「神ちゃん様達のお部屋の真ん前です・・・」

神様「そういえばそうだった、あんがと」タッタッタッ


少女「・・・・・・」


――― 客間


神様「ただいま~」

神使「いかがでしたか?」

神様「モリモリ出たね。 もうすんごい量」

神使「それは聞いておりません。 少女さんの方です」

神様「忍神、もし居るなら気配だけ出せ」


ポワッ


神様「居るようだな。 話だけ聞いてろ」


神使「こちらから先に動くのですか?」

神様「さっき仕掛けた。 いや仕掛けられたのかも知れないけど・・・ 近いうち動きがあるぞ」

神使「作戦は?」

神様「ない」

神使・忍神「・・・・・・」

神様「いや、どう出てくるのか分からないし。 まぁすぐ行動できるようにしておけ」

神使「分かりました」

神様「明日は忙しくなるぞ~」


――― 深夜・寝室


モクモク


神様「・・・・・・」

神使「Zzz」スヤスヤ

神様「犬ころ、起きられるか?」

神使「Zzz」スヤスヤ

神様「・・・・・・。 忍神は意識あるか?」


シーン


神様「だいぶ強めに焚いてるみたいだし、無理か」ハァ

神様「忍神まで落とすなんてどんな調合だよ・・・ 仕方ない、私一人で行きますかね」


――― 本殿裏


少女「・・・・・・。 分かったわ、あなたが物音を立てたら突っ込む」

少女「大丈夫よ、覚悟は出来てる。 準備して」

少女「絶対に・・・ 絶対に殺してやる」シャキン


 神様「あれ~ 少女ちゃん、日本刀なんか持って何してるの~?」トテトテ


少女「!?」クルッ

神様「お~こわっ、そんな怖い顔見たら流石の私でもブルッちゃうよ」

少女「あなた・・・ どうしてここに・・・」キッ


神様「チョウセンアサガオで眠らせたと思った? あとでこっそり調合教えてよ」

少女「・・・・・・」

神様「まぁ私以外はグッスリだけど」ウヒャヒャ

少女「ちょ、大きな声を出さないで」


 盗人「!? ちっ、感づかれたか」タッタッタッ


少女「あっ!」クルッ

神様「おや、こんな遅くに参拝者かな?」


少女「待ちなさい! 逃がさな―――」

神様「追いつかないよ」グイッ

少女「離して! あいつを殺さないと!!」

神様「・・・・・・。 そんな事聞いたら余計離せないって」

少女「!」クッ

神様「歳のわりに良い目つきだ。 中学生には出せない重みがある」

少女「・・・・・・」

神様「おい、もう一人・・・ って言って良いのか分からんが誰かいるんだろ?」


 シーン


神様「この状況でも出てこないのか」ハァ

少女「・・・・・・」


神様「詳しい話をして欲しい」

少女「あなたに話しても信じてもらえないわ」

神様「そうかな? これでも結構その手の話には造詣が深いんだけど」

少女「今更話したところで・・・ もう、手遅れよ」

神様「じゃぁ、私から先に話をしよう」

少女「一人にして。 今はあなたと話をする気力は無いの」

神様「だったら、何で私達を招き入れたの?」

少女「え?」

神様「邪魔だったら泊めてくれるはずないよね? 普通は追い返す」

少女「・・・・・・」


神様「さっきだって、私に気付かれるような所で話をしてた」

少女「それは・・・ たまたま油断して―――」

神様「嘘だね。 うちの諜報が2年監視してても隙を見せなかったくせに」

少女「・・・・・・」

神様「私は神宮の神、この国で最高神の役を司っている」

少女「神?」

神様「神の存在は信じない口? んな訳ないよね?」

少女「そうね。 流石神宮の神さま、話の持っていき方が上手いわ」

神様「お褒めにあずかり至極光栄だね」

少女「そんな事思ってもないくせに」フッ

神様「お互い様。 じゃ本題、詳しい話を聞かせて欲しい」

少女「・・・・・・」


神様「たぶん私達は少女ちゃんの力になれる。 だから―――」

少女「・・・少し黙っててちょうだい」

神様「?」

少女「ごめんなさい、あなたに言ったんじゃないわ」

神様「可能なら、少女ちゃんの意思で話して欲しい」


少女「私・・・ 明日の夜に―――」


――― 寝室


神使「Zzz」スヤスヤ


 バンッ


神様「起床!!」ゲシゲシッ

神使「痛っ! 痛たた!!」


神様「敵襲!! 夜討だー!!」

忍神「何? 夜討!? 敵はどこだ!!」ハッ


神様「二人ともやっと起きたか」

神使・忍神「神様?」

神様「話がある。 付いてこい」トテトテ

神使・忍神「?」


――― 本殿前


神使「こんな所に連れてきて何があるんです?」

忍神「私は姿を現していても大丈夫なのでしょうか?」

神様「大丈夫。 お、居たいた」

神使「あれは・・・」

神様「お待たせ」トテトテ


少女「・・・・・・」クルッ


神使「少女さん?」


少女「こんばんは、神使さん。 それと・・・」

神様「紹介する。 こいつは忍神」

忍神「こうしてご挨拶するのは初めてになります。 忍神と申します」

少女「そう、あなたが。 初めまして忍神さん」フフッ

神使「少女さんの雰囲気がいつもと違う気がしますが・・・」

少女「どっちが本当かなんて忘れちゃったけど、こっちの方がしっくりくるわ」

神様「見た目とのギャップが萌え萌えで良いねぇ~」

神使「あの・・・ これは一体・・・」

少女「私からも、もう一人紹介します」

神使「もう一人って、まさか・・・」

神様「どこにいるのかなぁ?」キョロキョロ


少女「あの子は、私以外に見ることが出来ないの。 だから私を媒介にするわ」

神様「媒介?」

少女「あの子と一時的に入れ替わる」

忍神「そんな事が・・・」

少女「入れ替わっている間は私の記憶が飛ぶ。 もし、私に戻す場合は3回手を叩いて」

神様「3回拍手をすれば良いって事?」

少女「そうよ。 じゃぁ入れ替わるわ」パンッ パンッ パンッ


 ポワッ


少女「」ガクッ

神様「入れ替わった・・・ のか?」


少女「・・・・・・」キッ

忍神「瞳が赤く・・・」ゴクリ

神使「失礼ですがあなた様は・・・」

少女「我に言葉を発するなど無礼にも程があるぞ貴様」ギロッ

神使「・・・・・・」

神様「お前は・・・」

少女「久しいな」ニヤッ

神様「・・・・・・」

少女「言葉も出ぬか。 まぁそれも仕方の無いこと、我を前にして―――」

神様「」パン パン パン

少女「ちょ、おま―――」


 ポワ ポワッ



少女「・・・ん・・・。 あの子と話は出来た?」

神使「ちょっと神様! 何で戻してしまったんですか!?」

神様「いや、だって生意気だったから」

神使「すいません少女さん。 まだ何も話しておらず・・・

少女「・・・・・・。 まぁ理由は大体察しが付くけど」

神様「すっげー嫌な感じだったんだけど、なにアイツ」

少女「あの子、いま神ちゃんさんを全力で蹴りまくっていますよ?」フフッ

神様「え~・・・ マジかよ」

少女「あの子だと余計に話がこんがらがりそうだし、私から触りを話すわ」


――― 本殿内


神使「人守様?」

少女「本当はどういう名称だったか今となっては分からないけど」

神様「それって少女ちゃんしか認識できないの?」

少女「この子は私専用。 一人に対して一人の人守が付いていたそうよ」

神使「いた、という事は・・・」

少女「今は私だけみたいだけど」

神様「背後霊みたいのもの?」

少女「あの子が一番嫌っている呼び名だけど、簡単に言えばそうね」クスッ


忍神「神様はご存じで?」

神様「ん~・・・ 私もそんな存在は初耳だなぁ」

少女「嘘つけこの女、耳齧るぞ! ってツグが叫んでるわ」

神使「ツグ?」

少女「さっき私を介して会った子よ。 本名は継姫って言うらしいけど、ツグで良いわ」

神使「継々神社でツグ様ですか・・・」

少女「“様”なんて付けるほど立派じゃな――― ちょっと、耳元で大声出さないでよ」シッシッ

神様「ツグちゃ~ん、おイタしちゃダメよ~」

神使「神様、あまりちょっかい出してはダメですよ」

神様「へいへい。 んじゃ聞きましょうか、特に少女ちゃんが明日殺されるって言う件を詳しく」

神使・忍神「え!?」


少女「私の家系は、代々ツグのような人守をもつ家だった」

神使「それが、この神社の巫女の勤めということですね?」

少女「その言い方は遠慮してもらえると助かるわ」

神使「?」

少女「私は何とも思っていないんだけど、ツグが嫌がるの」

神様「神社」

忍神「どういう事でしょうか」

神様「ここは神社じゃないんでしょ?」

少女「そうね。 ここには神なんかいないし、ご神体も無いから」

神使「しかし、本殿や鳥居も・・・ 社務所もあるようですが」


神様「時代の流れで一緒くたにされたんだろ」

忍神「失礼ながら、ツグ様は神とは違うのですか?」

少女「さぁ、ツグは一緒にされるのは嫌みたいね」

神使「ではどうして神社の形式に?」

少女「色々あってね。 神宮の管理下にしておいた方がこっちも助かるの」

神様「背に腹は代えられないって事か」

神使「?」


神様「毎年登記書類が提出されたって事は、神宮から補助金が支給されてる」

忍神「なるほど。 確かに神宮に運営困難神社補助制度がございますね」

少女「これでも維持にはお金がかかるの。 未成年である私の生活もあるし」

神様「わかる。 分かるよ、働かずもらうお金ほどありがたい物はないし」

神使「少女さんは中学生だから働けないだけです。 神様の不純な考えと一緒にしないで下さい」

忍神「しかし、よく今まで神宮にバレませんでしたね」

少女「こんな田舎の末端まで調べてたら切りが無いんじゃないかしら」

神様「まぁ今年は気付かれたみたいだけど」

少女「構わないわ。 私の命も明日で終わりだしね」フッ


神使「先程、その・・・ 少女さんが殺されると仰っていましたが」

少女「えぇ。 私は明日殺される」

神使「一体誰に?」

少女「この社にある土器を盗もうとしている男よ」

神使「そんな・・・ でも、何故そんな事が分かるんですか?」

少女「だって、もう60回も殺されてるんだもん」

神使「え・・・」

少女「何度繰り返してもダメだった・・・ 土器を予め壊しても、私がこの地を離れても・・・」


少女「必ず私はあの男に殺される・・・」

神様「そのツグとか言うヤツがその度に時間を戻しているって事?」

少女「そう。ツグの力で私が死んだ後に1年戻してくれているわ」

忍神「そんな事が・・・ 神である私達でさえ人の死は戻すことが出来ないのに・・・」

神様「・・・・・・。 ちょっとツグちゃんと話がしたいな」

少女「もう一度変わりましょうか?」

神様「いや、少女ちゃんも同伴で」

少女「でも、どうやって・・・」

神様「土器はある?」


少女「土器ならその隅っこに転がっているわ」

神様「あ~ あれね・・・」

神使「扱いがあんまりですね・・・」

少女「何度もあれで殺されているし、正直あまり見たくないの」

神使「確かにそうですよね。 軽率な発言失礼しました」

少女「気にしないで。 はい、これが土器よ」スッ

神使「見たところ普通の土器のようですね」

忍神「特に神力が溜っているような事もございません」

神様「好都合だ。 忍神ちょっと手を出して私の手を握ってくれ」

忍神「?」


神様「お前の力が必要だ」キリッ

忍神「仰せのままに」スッ

神様「んじゃ、歯を食いしばって」ギュ

忍神「?」

神使「この流れはまさか・・・」

忍神「一体何をなさるつもりで―― ウギャギャギャー!!」


ポワポワ


神様「お前って結構神力持ってるのな。 頑張れ~」


忍神「ウギャギャギャー!!」

神様「男を見せろ、お前なら出来る。 もっとだ、もっと土器に力を!」


ポワポワ


神様「よしっ」

忍神「ふへっ・・・」フラフラ

神様「あっ、ごめん。 ちょっと取り過ぎちゃった」テヘッ!

忍神「・・・・・・」バタリ


――― 本殿前


神使「忍神様は本殿に置いたままで大丈夫でしょうか・・・」

神様「放っておけばすぐ回復するだろ。 アイツ忍びだし」

神使「神様の忍びのイメージってどうなっているんです?」

神様「そんな事より、サッサと始めるぞ」

少女「これから一体何をするの?」

神様「ツグちゃんを見えるようにする」

少女「ツグを?」


神様「この土器を一時的に神体にして神力を入れた」

神使「なるほど、その神力を継姫様が取り込むという事ですね?」

少女「さっきの拷問はそういう事・・・」

神様「拷問じゃないよ? 儀式」

少女「・・・物は言いようね」

神様「ツグちゃ~ん、良い子だからこの神力をたんとお食べ~」

神使「少女さん、継姫様のご様子は?」

少女「もの凄い勢いで拒絶してるわ」

神様「根性ねーな。 怖いんでちゅか~」ベロベロ

神使「神様、あまり挑発しないで下さい」

少女「ツグ? 物は試し、やってみたらどう?」


神使「・・・・・・。どうですか?」

少女「ダメね」ハァ

神様「何かツグがノッて来る魔法の言葉ってないの?」

少女「・・・・・・。 ツグ? 言うこと聞いて実体化できたらチョコを沢山あげるわ」

神様「チョコ?」

少女「大好物なの。 まぁ食べられないから、いつもは匂いだけで我慢しているけど」

神様「私のピエーロマルコニーニを1個上げるぞ」

少女「・・・・・・。 全部寄越せですって」

神様「オッケーオッケ~。 んじゃ神体の上に手をかざすように言って」

少女「もうかざしているわ」

神様「早いな・・・ よし、犬ころ私のお守り一つ出してくれ」

神使「お守りですか?」ゴソゴソ


神様「それを通して神力の波長を変換しながらツグに流し込む」

神使「そんな事出来るんですか?」

神様「知らないけど大丈夫だろ。 土器とツグの手の間に差し込む感じで持ってろ」

神使「継姫様の手が私には見えないのですが・・・」

少女「貸して。 私がやるわ」

神使「お手数おかけします。 よろしくお願いします」

神様「あっ、それは~」

少女「私じゃダメだったかしら?」

神様「う~ん・・・ 大丈夫、それで行こう。 少女ちゃんナイスアイデア!」グッ

少女「?」


神様「犬ころ、お守りもう一個もってる?」

神使「はい、ございますが」スッ

神様「こっちのお守りは少女ちゃんが握って持ってて」

少女「私が?」

神様「ただのお守りだから。 さっ位置について」


少女「・・・こんな感じで良いかしら?」

神様「グ~。 んじゃいきますか」



神様「秘技、神力を移す何か良い感じの儀式!」


ポワポワ


神様「ツグの様子は?」

少女「・・・ツグって呼ぶなって騒いでます」

神様「大丈夫そうだな。 一気に行くから気を緩めるなよ~」


神様「神力解放!」


ピカピカ


少女「くっ!」

神使「少女さん大丈夫ですか!?」

少女「ちょ、ツグ! 少し我慢しなさい! 私だって結構キツいんだから!」

神様「もう一息! 根性見せろ~」



ピカピカ
バチバチッ


少女「うっ!」

神使「凄い光ですね。 目を開けていられません」

神様「あっ、目やられるからあんまり見るなよ」

神使「そういう事は先に言って下さい!」


シュー


神様「終わった。 目を開けて大丈夫」

少女「ん・・・ 何か不思議な感じが・・・ あっ」


継姫「・・・・・・」


神様「えっと・・・ 初めましてでオッケ?」

継姫「き、貴様・・・ さっきはよくも我を侮辱してくれたな・・・」ワナワナ


少女「すごい・・・ ツグがハッキリ見える・・・」

継姫「えっ? 本当也か!?」

神様「どうよ、私の実力は。 これが神宮きっての最強にかわゆい女神の力だナリ」ニヤッ

継姫「真似をするでない!」

神様「あれ? もしかして、ちょっとビビっちゃった? まぁ無理もない! 我の力を前に―――」

継姫「もー頭にきた也! 貴様を血祭りに上げてくれるわ!!」カッ



少女「ツグ!!」

 ゴツン

継姫「痛い! 痛い也ー!!」ジタバタ


少女「ダメよ、そんなに威張っちゃ」

継姫「うっ! うるさい! 彼奴とは決して相まみえる存在ではない也!」

少女「あの方は神宮の女神様なんでしょ? ツグよりも格上じゃないの」

継姫「ち、違うわ! 彼奴と我は全く別の存在であって―――」

神様「いや、本当に初対面で。 マジでどちら様です?」

継姫「この期に及んでまだそんな戯れ言を!」グヌヌ

神様「そ~んな小学生みたいなかわゆい姿で言われても、ねぇ?」ニヤッ

少女「小学生」プッ

継姫「少女ー!」


神様「それに、随分と面白い格好をしてますなぁ」

継姫「我が装束をバカにする気か!」

神様「いや、それ私が卑弥呼してたときの時代くらいのヤツじゃね?」

継姫「貴様らが真似をしたのではないか! これは我らが先に考えたもの也!!」

神様「へー そうなんだー すごいねー」

継姫「もう完全に怒った也! 少女、此奴らをたたきのめす也や!」

少女「神ちゃんさんは最高神なんでしょ? ツグより偉いんじゃないの?」

継姫「我の方が先にこの地へ住み着いた也や! ヤツら一族は我よりも後に誕生した存在也!」

神使「え!?」

少女・神様「そうなの?」

継姫「あー! イラつく! イラつく也!!」ジタバタ


少女「うるさいわね。 黙らないと1週間口きいてあげないわよ?」

継姫「・・・・・・」チラッ

少女「何よ」

継姫「1週間って・・・」ボソッ

神様「やーい、怒られてやんの。 シュンとしちゃってかわゆいでチュね~」

継姫「貴様・・・ いい加減にしろ! 少女は・・・ 少女は明日には―――」

少女「ツグ!」

継姫「・・・・・・。 ごめんなさい也」シュン

神様「それって、本当に回避できないのか?」

神使「神事がトリガーになっているのでしたら、何かしら方法があるのでは?」

少女「実際はこの60年祭りなんてやっていないし、神事なんかそもそも無いんだけど」


神使「では、本当に少女さんは明日・・・」

少女「今回は土器があるから、その土器で頭を強打されるパターンね」

神様「で、お前が時間を戻していると」

継姫「そうだ」

神様「60回も?」

継姫「くどい」

神様「正気か? お前・・・」

継姫「他に・・・ 他にどうしろというのだ!」

神様「・・・・・・」

継姫「少女がいなくなってしまうんだぞ! それだけは・・・ それだけはダメだ!」

神様「何がダメなんだよ」


継姫「少女がいなければ、我も消えてしまう」

神様「あ? お前、そんな事で繰り返しなんかしてるのか?」

継姫「そんな事・・・ だと?」ギロッ

神様「そうだよ。 そんな理由で少女ちゃんは60回も殺されたんだぞ?」

継姫「!?」

神様「少女ちゃんの心をどれだけ痛めつけているか分かってんのか?」

継姫「我と少女が必死で生きようとした時間をバカにするな!!」

少女「ふふっ」

継姫「何がおかしい也や、少女」

少女「だって、いつもなら社務所で震えて明日への死のカウントダウンに怯えている時間よ?」

継姫「それがどうしたという也」


少女「分からないの? いつもと違う展開なのが」

継姫「・・・まさか、此奴らが流れを変えるとでも」

少女「思ってる」

継姫「本気也か?」

神様「ツグちゃ~ん、少女お姉ちゃんの言う事はちゃんと聞かないとダメでちゅよ~」

継姫「貴様ぁ・・・ どこまでも我を侮辱しおって」グヌヌ

神使「神様? いい加減にして下さい」

神様「へいへい」

少女「ツグと神ちゃんさんて似てるわね」フフッ

神様・継姫「似てない也!」

継姫「だから真似をするでない!!」


神様「ま、少女ちゃんの言うとおり今回は間違いなく回避できる」

少女・継姫「!?」

神使「神様、またそんな安請け合いを・・・」

継姫「どうするという也や・・・ この60年、我ですら惨状を回避できず見守ることしか出来なかったんだぞ」

神様「見守る?」

継姫「我は少女以外に姿は見えぬ。 触れることすら出来ずににどうしろというのだ・・・」

神様「私見えてるけど。 犬ころはどう?」

継姫「はっきりと確認できます。 なんならお声も届いております」

神様「だ、そうだ」ポンポン

継姫「なっ!」


少女「そういえば・・・ 確かにツグを触れるわね」ペタペタ

継姫「!?」

少女「あら、ツグって意外と肌が柔いのね」ウリウリ

継姫「にゅあ、やめりょにゃりぃ」

少女「なんか憎たらしいほどすべすべな肌ね」イラッ

継姫「えい! いい加減に顔をいじるではない!」

神様「今回お前は実体化してるし、イレギュラーに私達もいる」

継姫「・・・・・・」

神様「これで回避できないなんて考える方がおかしいだろ」

継姫「少女が人である以上運命には逆らえない・・・ それは絶対だ」

神様「それでも今までお前は回避しようとしたんだろ?」

継姫「・・・・・・」


神様「話を聞いた限りでは、少女ちゃんが殺されるパターンが必ずしも同じではないみたいだけど?」

少女「そうね。 直前までの行動で多少変わるわね」

神使「なるほど。 つまり死を回避できる可能性も存在すると」

神様「0%ではないって事だ」

継姫「この60年一度も存在しなかった也」

神様「日本の神は確率を扱って運を開くのだよ」ニシシ

一同「?」

神様「大丈夫、少女ちゃんは絶対に死なない。 私が約束しよう」

継姫「その自身はどこから来る也や・・・」ジトー

神様「良い作戦があるんだわ。 聞くか?」ニヤッ

次の更新少し間が空くナリ


〓〓〓修正

継姫「その自身はどこから来る也や・・・」ジトー
      ↓
継姫「その自信はどこから来る也や・・・」ジトー

〓〓〓

継姫「・・・続ける也!」

神様「ナリ」ニヤッ

―――


少女「ぜひ聞かせて欲しいわ」

神様「1京歩譲って、少女ちゃんが人である事で必ず殺されるとしたらその因果を変えれば良い訳よ」

継姫「・・・どういう意味也や」

神様「経過を変えてもダメなら、大元を変えちゃえば結果は変わるって事」

神使「それって、少女さんが人でなければ良いという事ですか?」

少女「猿にでなれば良いの? できれば猫が良いわね」

神様「う~ん・・・ それは私の力でも流石に無理だなぁ」

神使「まさか少女さんを神にするという事ですか!?」

神様「ザッツライト!」

少女「私が神に!?」


継姫「話にならぬ也。 とっとと帰り給え」シッシッ

神様「でも、これなら少女ちゃんは確実に助かるんだけどなぁ~」

継姫「・・・・・・」

少女「いくら何でも私が神になるなんて、そんな事・・・」

神様「神になるのは嫌?」

少女「嫌とかどうこうより、考えが追いつかないわ」

神様「神になると私みたいにかわゆくなれるよ?」

少女「・・・・・・」

神使「それは神になる利点と言えないのでは・・・」

神様「どう考えても利点だろ」

継姫「我が最も忌み嫌う奴らと同族になるなど許さぬぞ少女」


神様「もし! 少女ちゃんが神になれば、神宮から多額の補助金が支給される」

継姫「」ピクッ

少女「お金なら今までも神宮からもらっていたけど」

神様「お幾ら?」

少女「月3万8千円」

神様「それ以上の支給額だぜぃ」

少女「へぇ、悪い話ではないわね」

継姫「少女! そんな奴の言うことなど聞く必要は―――」

神様「支給額は毎月40万! 無税ナリ!!」

継姫・少女「乗った也!!」グワッ

神使「・・・・・・」


継姫「少女! さぁ早く神になる也や。 悔しいが背に腹は代えられぬ也!」

少女「そ、そうね。 毎月40万もあれば、じり貧生活から解放されるわ!」

継姫「チョコ也。 手始めにチョコをたくさん買う也!」

神使「あの・・・ お金は出来れば神社運営のために使って頂きたいのですが・・・」

継姫「うるさい! 我らはこれまで長いことひもじい生活をしてきたのだ!」

神様「お、おう・・・ 苦労してんのね・・・」

継姫「少女! 新しいテレビが欲しい也! 村長の家にあるような勇気いーえるのでっかいヤツが!」

少女「良いわね」フフッ

継姫「あと、部屋をもっと可愛くしたい也や~ って///」モジモジ

少女「そうね」

継姫「あっ、携帯電話も欲しい也~」


神様「お前電話する相手いるの?」

継姫「う、うるさい也! 少女と話すのに使う也!!」

神様「いっつもくっ付いてるじゃねーかよ・・・」

少女「決めたわ」

継姫「お~ 携帯電話も買ってくれる也か?」

少女「まずは沢山チョコを買って、それからツグのために使いましょう」

継姫「え?」

少女「ツグも今まで我慢してくれていたのね・・・ ありがとう」

継姫「いや、我はそういう意味で言ったのでは・・・」


少女「私が、ツグにもう少し良い生活をさせてあげられたら・・・」

継姫「な、何を言っている也や少女。 我は少女さえいてくれればそれで―――」

少女「ごめんなさい、継姫・・・」

継姫「少女・・・」

少女「私は自分の運命が憎かった・・・」

継姫「・・・・・・」

少女「私がお金を稼げる位まで生きていられれば・・・ それが悔しくて・・・」グッ


少女「神ちゃんさん」

神様「?」

少女「私が神になれば明後日もツグと一緒にいられますか?」

神様「最高神の名において約束しよう」

少女「なら、迷う必要はありません」

継姫「少女・・・」

少女「ツグ、私はあなたと一緒に未来へ進む道を選ばせてもらうわ」

継姫「・・・・・・」

少女「神ちゃ・・・ いえ、神様」

神様「何かな?」


少女「私を神にして下さい」フカブカ


神様「決まりだな」


神使「少女さんを神にするには準備が必要ですね」

少女「またこの土器を使うのかしら?」

神様「あ~ それはもう用済みだし、ここのご神体にでもしておけば?」

少女「そうね。 これからは大切に扱わないといけないわね」

継姫「ご神体とか、何か神宮に乗っ取られた気分で嫌な感じ也や」

神様「乗っ取られたんだよ」ウヒャヒャ

継姫「ぐっ・・・ 少女、やはりこの話は無かったことに―――」

少女「ツグが神宮を乗っ取れば良いんじゃない?」

継姫「おお! それは良き案也や。 さすが少女」


神様「いつでもかかって来いや。 そう簡単には渡さないけどね」ベー

継姫「これからは枕を高くして眠れるとは思わなぬ事也!」ベー

神様「へーんだ! お前みたいなガキんちょに負ける気なんかしませんの事ナリ」

継姫「だから真似をするな! 本気で似てない也!」

少女「やっぱり二人は似てるわね」クスッ

神様・継姫「似てないナリ!!」

継姫「キー! もう完全にぶち切れた也!!」

ギャーギャー


少女「全く・・・ ところで、ご神体って本殿に置いておけば良いのかしら?」

神使「そうですね。 祭壇を作ってその上に置いておくのが一般的です」

少女「ここに転がしておくのも何だし、一旦本殿に置いてくるわ」


神様「あっ、本殿の中で忍神が寝てるから起こして連れてきて」

少女「分かったわ」スタスタ


神使「あの神様、どうやって少女さんを神にするんですか?」

神様「どうって、いつもみたいに神力をチューッって感じで」

神使「神力を補給できる方が居ないと思うのですが」

神様「忍神がいるじゃん」

神使「本殿で干からびているのでは?」

神様「大丈夫でしょ、あいつ忍びだし。 いけるいける」

神使「忍びって何なんです?」



 キャー!


一同「!?」クルッ

神使「今のは少女さんの悲鳴!?」

継姫「少女・・・ 少女!!」タッタッタッ

神様「まさか・・・ 明日じゃないのかよ!」タッタッタッ

中々ラストまで辿り着かないなぁ~


――― 本殿裏


少女「きゃっ!」ドサッ

盗人「おら! 大人しくその土器を渡せ!」ゲシッ

少女「何で今日・・・ 明日じゃないの・・・?」

盗人「何言ってんだ? まぁ明日にしようとは思っていたが予定変更だ」ニヤッ

少女「そんな・・・」

盗人「大勢居れば安心だとでも思ったのか? 隙だらけだったぜ?」

少女「これはこの社に必要な物なの! 絶対に渡さない!」ギュ


盗人「ふざけんじゃねーぞ! 良いから渡せ!!」ゲシッ

少女「嫌ー!!」

盗人「ったく、これ以上大声出されると面倒だな」

少女「うそ・・・」

盗人「どっちにしろ顔を見られちまってるしな」ニヤッ

少女「嫌・・・ ここまで来たのに・・・」


少女「やっと・・・ ここまで・・・」


 ドカッ



 ガシャーン


盗人「あ~あ 土器が粉々じゃねーか」チッ

盗人「ま、これだけありゃ良いか」


 少女ー!


盗人「チッ、流石にバレるわな。 急いで逃げるか」タッタッタッ


――― 参道


 盗人「」タッタッタッ


神使「神様! あの男!」

神様「!?」クルッ

神使「私は男を追いかけます」

神様「頼んだ! 何をしてでも捕まえろ!」

神使「承知です!」タッタッタッ


――― 本殿裏


神様「おい、少女ちゃんは!!」タッタッタッ


継姫「・・・・・・」

少女「」グタッ


神様「!?」

継姫「運命には逆らえぬ・・・ そんな事は分かっていたのに・・・」ガクッ

神様「・・・・・・」

継姫「救ってくれるのではなかったのか? 少女は死なないのではなかったのか!!」

神様「・・・・・・」


継姫「それがお前達のやり方・・・ この場所を・・・ 少女が守ってきたこの場所を奪い・・・」

継姫「挙げ句の果てに・・・ 我からも大切な少女を奪いおって!」


継姫「恥を知れ」ギロッ


神様「あの・・・ ツグ?」

継姫「お前の顔など見たくない。 去れこの下衆―――」


ゴツン

継姫「痛い!」


少女「さっきも言ったでしょ? 偉そうにしちゃダメだって」

継姫「少女!? え? あれ?」

少女「何よ」

継姫「少女は死んだ也よね?」

少女「そうなの? 生きてるみたいだけど。 まぁ、結構蹴られてあちこち痛いけど」


神様「計画通り」ニヤッ

少女「計画?」

継姫「ど、どういう事也や?」

神様「運は我らに味方したナリ!」ウヒャヒャ


――― 本殿前


 神使「神様~」タッタッタッ


神様「おお、犬ころか。 って本当に犬ころの姿じゃん」

少女「ちょっと、何あれ!?」

継姫「狼? いや、見たことない動物也や」

神様「うちの神使君って狛犬なんっすよ。 凄くないっすか?」

少女「あれって神使さんなの!?」



 タッタッタッ

神使「盗人の足が速くこの姿で追いかけて捕まえた物で、すみません」

神様「お前、いくら何でも口に咥えて連れてこなくても・・・」

神使「誰にも見られていないのでご安心を」

神様「んじゃ、ご褒美にそいつを餌にして良いぞ」

少女「まさか食べるの!?」

神使「食べません」


 ボンッ


継姫「お~ 姿が戻った也や」

少女「驚いたわね・・・」


神様「盗人は気絶してるな」

神使「流石にあの姿を見たので・・・ ビックリしたんだと思います」

神様「まぁ良くやった」

神使「この盗人はどうされます?」

少女「日本刀ならすぐ持ってくるけど」

継姫「我にもやらせてくれ也。 長年の恨みがある故、細切れにしたい也」

神様「まあ待てって。 コイツの件は後回し、取りあえず木に括り付けておけ」

神使「分かりました」


神様「さてと、んじゃ次の計画に移りますか」

継姫「おい、その前に少女の件について詳しく話をする也」

少女「私殺されたみたいなんだけど、どうして生きているの?」

神様「そんなの決まってんじゃん、人じゃないからだよ」

少女「あら、とうとうゾンビになっちゃったのかしら。 まぁ悪くはないわね」

神様「少女ちゃんて人間辞めたいの?」

継姫「勿体を付けずにさっさと言うなり」

神様「少女ちゃんは神になったのでした」

一同「え!?」


少女「ちょ、どういう事? 私が神に!?」

継姫「おい、貴様はやって良い事と悪いことの区別もつかぬ也か? あ?」

神様「ちょ、ツグちゃんマジ切れはダメだって・・・」

神使「きちんと説明して下さい」

神様「いや、さっきツグを実体化させるときに神力が少女ちゃんにも流れ込んだんだよ」

少女「あの時に?」

神様「ま、こうなることを予見した私の先見の明ってところだね」ウヒャヒャ

神使「そういえば、少女さんが仲介すると言った時に神様一旦止めようとしてましたね」

神様「・・・・・・」


神使「まさか・・・」

神様「思惑通りだよ? 最初からこうなることを確信してたの」アセアセ

継姫「貴様・・・ そんなヘマのせいで我の大切な少女を」ワナワナ

神様「ヘマじゃないし! 運が良かっただけだし!」

継姫「もっとタチが悪い也!」

少女「まぁ、結局助かったんだし結果オーライって事で良いんじゃない?」

神様「さすが少女ちゃん。 話が分かる」

少女「ツグもお礼を言ったら? これで時間を戻さなくても済むんだし」

継姫「ありがとう也。 お帰りはあちらとなります、さようなら」

神様「私も帰りたいんだけどさぁ、ここで終わったら色々とマズいんだよ」

神使「どういう事です?」



 ギー


一同「?」クルッ


忍神「う~・・・」ヨロヨロ

神様「お~ 忍神、復活したか」

忍神「何とか・・・ 神力の方は回復させましたが・・・」

神様「どうやって? ほとんど吸い取ったと思うんだけど」

忍神「忍びに伝わりし秘伝の回復薬がございますので」

神様「ナイス! さすが忍びは違うねぇ~」

忍神「何やら悲鳴が聞こえた気がしましたが、今はどのような状況で?」キョロキョロ

神様「これから少女ちゃんを神にするところ」


一同「は?」


神使「あの、神様? 先程少女さんはすでに神になったと仰いましたよね」

少女「ちょっと言っていることが矛盾しているわね。 頭大丈夫?」

継姫「どさくさに紛れ小賢しい手段で神にしたと言ってた也。 頭大丈夫也か?」

神様「おっと、総攻撃ですね」

神使「当然です」

神様「まぁ何というか、少女ちゃんに入っている神力はツグ寄りの力だから」

少女「どういう事?」

神様「さっき神体から放出した神力はツグの力に合うように波長を変換して流し込んだ物なんだわ」

神使「それは、少女さんが継姫様と同じ人守になったという事ですか」

神様「大体そんな感じ」

少女「なるほどね。 何となく理屈は分かったわ」

継姫「では少女は神にならずとも良いではない也か! 少女は我と同じ也~」


神様「いやダメだ。 私もそれで良いとさっきまでは思ったんだけど」

一同「?」

神様「ツグに付く元になる人間がいなくなる」

継姫「あっ」

神様「このままだとツグちゃん消えちゃうの」

継姫「・・・・・・」

神使「だとすると、少女さんも消えてしまうのでは?」

神様「少女ちゃんは私の握らせたお守りの効力で、すぐに消えることはないと思うけど」

少女「ツグが消えるのは困るわね。 それだけは絶対避けないと」

継姫「少女・・・」


神様「神宮から補助金も下りなくなるね」

少女「それが一番困るわね」

継姫「少女・・・ 我よりも補助金の方が大切とか酷い也・・・」ウルウル

少女「冗談よ」フフッ

神使「では、早く少女さんを神にしないといけませんね」

少女「でも、神力とやらを供給するものがないといけないんでしょ?」

神様「あるじゃん、そこに」

一同「あ!」クルッ


忍神「?」


神様「忍神、回復して早々悪いがおまえに新たな仕事がある」

忍神「どのような内容で」

神様「手を出せ。 お前にしか出来ない任務だ」キッ

忍神「仰せのままに」スッ

神様「少女ちゃん、私の手を握って」

少女「これで良いかしら?」ギュッ

神様「は~い、歯を食いしばって~」

忍神「?」

神使「またですか・・・」



神様「秘技! 神力譲渡!!」


 ポワポワ


忍神「神様! ちょ、待っ!! ウギャギャギャギャー!!」ビリビリ

神様「大丈夫! 私の知ってる忍びはそんなにヤワじゃない!!」


 ポワポワ


神様「は~い、終わりナリ!」

忍神「ふへっ・・・」フラフラ


神様「やっぱお前すげーよ。 忍びすごい」

忍神「お役手に立てて・・・ 光栄・・・ です・・・」バタリ

神使「忍神様・・・」

少女「ねぇ、忍神さんが干からびてるけど大丈夫?」

継姫「なんたる鬼畜・・・ 恐ろしい也」ゾッ


神様「少女ちゃん、気分はどう?」

少女「あまり変わらない気もするけど・・・ でも」ジー

神様「?」


少女「なるほど。 やっぱり神宮の神さまって凄いのね」フッ

神様「よせやい、そんな面と向かってかわゆいなんて言われたら照れちゃうって」

継姫「そんな事、一言も言っていない也」ジトー


少女「それにツグも・・・ 驚いたわ」

継姫「?」

少女「あなたも凄いのね。 今まで神の力なんて見えなかったから」

継姫「そんな面と向かって立派だなんて言われたら照れる也よ///」

神様「そんな事、一言も言ってないナリ」

継姫「だからいい加減に真似をするのを止める也!」


神様「まあ神の力が認識できるって事は少女ちゃんは神になったって事さね」

継姫「我の力を神の力と一緒にするでない、穢らわしい」プイッ

神様「おや~ 神になった少女ちゃんにそんなこと言ったら可哀想だと思うけどな~」

少女「ツグ・・・ あなた私のことが嫌いになっちゃったのね・・・」

継姫「ち、違う也! そういう意味で言ったのでは・・・」オロオロ

少女「ふふっ、冗談よ」

継姫「貴様! いつか必ずその座から蹴落としてやるから覚悟しておく也よ!」

神様「何で私に八つ当たりするんだよ・・・」


神様「ま、これで一件落着ですな」

神使「いささか順番が逆だった気もしますが」

少女「神にしてくれって頼んだのは私だし、順番なんて問題にもならないわ」

神様「やっぱ少女ちゃんは話が分かる。 神の素質ありすぎ」

継姫「少女、此奴はおだてて自分の失敗を帳消しにしようと考えるだけ也。 真に受けるでないぞ」

神様「おっと、やっぱツグには神の素質はないな」

継姫「こちらから願い下げ也。 だれが神なぞ相手にするか」プイッ

少女「ツグ・・・ 何だかんだ言ってやっぱり私のことが嫌いなのね・・・」

継姫「ち、違っ! あー! もーイラつく也!!」ジタバタ

少女「面白い」フフッ

継姫「貴様! 絶対耳を齧りに行くから覚えておく也よ!!」

神様「だから何で私に矛先を向けるんだよ・・・」


少女「流石に少し疲れたわね」

神様「そうね、んじゃ戻りますか」

神使「その前に、あの盗人はいかがすればよろしいでしょうか」

神様「あ~ 忘れてた。 食べても良いけど証拠は残さず全部食えよ」

神使「ですから食べませんってば」

神様「ってか何でアイツは土器なんか盗もうとしてたんだ?」

少女「あの土器はちょっと変わった物で出来ているの」

神使「粘土とかではないのですか?」

少女「今では絶滅したとされる植物が含まれていて、それが目的らしいわ」

神使「人の命を奪うほど希少な植物なのですか?」

少女「幻覚作用の強い・・・ 麻薬と同じ作用があるの」

神様・神使「はい!?」


少女「絶滅した植物だから厳密には違法ではないんだけどね」

神使「つまり法に引っかからない新たな麻薬が作れる可能性があの土器にはあると」

少女「そうね、ちなみにその植物の種も壺の中に入れてあったの」

神様「マジかよ・・・」

少女「たぶんその男が持ってるんじゃない? さっき見たら種を入れておいた袋が空だったし」

神様「犬ころ、調べて」

神使「はい」

神様「少女ちゃんって、もしかしてそれ栽培してるの?」

少女「私はしてないけど・・・」プイッ

神様「?」


神使「神様、これを見て下さい」ゴソゴソ

神様「それがタネ?」

神使「男のポッケに入っていたんですが、アサガオの種に似てますね」

神様「・・・・・・。 これって、もしかしてアレ?」

少女「さぁ、何のことかしら? 私は神事用のチョウセンアサガオ似の花しか知らないわ」

神様「まぁそういう事にしておいた方がよさそうだね・・・」

神使「この男は警察に引き渡しますか?」

神様「う~ん・・・」

少女「出来れば内密にしておいてもらえると助かるんだけど」

神様「あっ! 良いこと思いついた」

神使「・・・それ絶対良いことではないですよね」

神様「神ちゃんショーでも開催しますか」ニヤリ


――― 1時間後/深夜・本殿前


モクモク


盗人「・・・ん・・・ ここは・・・ 何だ、この煙は?」ゲホゲホ

少女「あら、お目覚めかしら?」

盗人「!? お前は・・・」

少女「何で生きてるのか、って顔をしているわね」

盗人「くたばってなかったのかよ」チッ

少女「人ごときが私を殺す? そんな事が出来る訳ないじゃない」クスッ

盗人「はぁ?」


少女「そうだ、さっきはこの子が失礼したわね」

神使「・・・がう」

盗人「ひぃ!! な、なん何だよソイツは!」

少女「狛犬は初めて? あまり刺激すると、あなたも仲間みたいになっちゃうわよ?」

盗人「仲間? 何言ってんだ、俺は一人で――― !?」


忍神「」グテッ


盗人「おい・・・ 何だよアレ・・・ 干からびてるじゃないかよ・・・」

少女「あら、仲間じゃなかったの? 間違えて殺しちゃった。 可哀想に」クスッ

盗人「どうやったら人があんな風になるんだよ・・・」

少女「精気を吸い取ったの。 干からびるまで、た~っぷりと」ニヤッ

盗人「!?」


少女「神を怒らせた人間は死ぬ定め。 だから殺した」アハハハハハ

盗人「!?」ゾクッ

少女「ねぇ、逃げないの?」ズイッ

盗人「ひぃ!」ブルッ

少女「あなた、美味しそうね。 私が直接食べちゃおうかしら」ニタァ

盗人「た、頼む! 助けてくれ!」

少女「じゃぁ逃げれば? この子が追いかけるより速く逃げられればだけど」

神使「・・・がう」

盗人「た、助けて・・・」ガタガタ

少女「やっぱり私に食べられたいんだ」

盗人「違う! くそっ! 足が震えて立てねぇ!!」

少女「たっぷり悲鳴を上げて、苦しんで死になさい」グワッ

盗人「ひー!!!」バタリ



少女「やれやれ」フッ


神様「少女ちゃん怖すぎ。 犬ころは必要なかったな・・・」

神使「お役に立てず、すみません・・・」ボンッ

神様「てか、あれ大丈夫か?」

神使「気絶しているだけですよね? 死んでませんよね?」


盗人「・・・・・・」ブクブク


少女「そこまで脅してないけど? ちょっと焚きすぎじゃないかしら?」

神使「いえ、危険なので煙だけで麻薬は焚いておりませんが」

少女「あら、そうなの?」

継姫「少女、格好いい也」キュン

神様「お前、どういう神経してんの? あんなのホラー映画より怖いじゃん」


少女「ま、これで少しは懲りたんじゃないかしら」

神使「解放した後で仲間とか連れてきませんかね?」

神様「忍神が起きたら神宮の諜報室に連れて行って処理してもらおう」

神使「・・・・・・。 処理って一体何をなさるんです?」

神様「それは私の口からはちょっと・・・」プイッ

神使「・・・・・・」

少女「それより、忍神さんはあのままで大丈夫なの?」

神様「大丈夫だって。 忍びだよ?」

継姫「我の見た感じでは息をしていないように見える也が」

少女「そうね、もう1時間は止まっているわね」

神様「そんな事ないって・・・ 大丈夫だよ・・・」ハハハ


忍神「」グテッ


神様「・・・・・・。 神使君、私のお守りってまだある?」


――― 翌日・社務所


少女「ツグ、書けたの? 神ちゃんさん達が待ってるわよ」

継姫「丁度出来た也。 我ながら会心の出来也よ」

少女「へぇ・・・ ツグって字が下手くそなのね」

継姫「んが! 酷い也よ少女・・・」グスッ

少女「ま、まぁ初めて書いた字にしては上出来かしらね」クスッ

継姫「やっぱりもう一度書き直して―――」

少女「何度やっても同じよ。 早く行くわよ」


――― 鳥居前


少女「待たせてごめんなさい」スタスタ

神使「丁度こちらも準備出来たところですので」

忍神「こちらが神宮から寄贈された神額になります」

継姫「神額ってなん也か?」

忍神「鳥居の上部につける神社名が入った飾りです」

神様「随分立派だな。 高そう」

神使「後はこの額に社名の入った額束をはめて鳥居の上に設置すれば完成ですね」

少女「ツグ、神使さんにそれ渡して頂戴」

継姫「分かった也」スッ


神様「うひゃ~ 汚ねー字だな」

継姫「お前、マジで殺すぞ?」

神様「・・・だからマジ切れは止めろって、怖いよ」

忍神「趣があって良い字だと思います」

神使「そうですね。 重みのある独特の力強さがございます」

継姫「良く分かっているではない也か」ドヤッ

神様「はいはい、上手い上手い」

忍神「それでは、私が設置いたしますので危ないですからお下がりを」

継姫「あんな高い所にどうやって設置する也か?」

少女「神よ? 忍びなのよ? きっと格好いいわよ」



 忍神「ヨイショ、ヨイショ」ヨジヨジ


継姫・少女「・・・・・・」

神様「まぁ、あれだよ。 神は飛べないし・・・」

継姫「もっと忍びらしい登り方はできぬ也か?」

少女「せめてピョンピョンって感じで昇る姿は見たかったわね」

神使「ご期待を裏切るような展開ですみません・・・」


 忍神「神様、位置はこの辺りでしょうか?」


神様「もうちょい右・・・ そこ! そこでOK」


 忍神「では、こちらで固定します!」

 ポワポワ


継姫「固定するのは力を使う也か・・・」

神様「まぁアレが落ちるとヤバいし。 それに紙で書いてあるから劣化しないように一応ね」

継姫「ふ~ん」


神様「でも、本当に社名を変えちゃっていいの?」

神使「今までの社名も神秘的でとても良かったと思いますが」

少女「今日からここは本物の神社になるんだし、それに・・・ 新しいスタートの日でもあるわけだしね」

神様「ツグは良いのか?」

継姫「ツグと言うな。 ま、我はそんな小さい心の持ち主などではない也よ」


 忍神「固定完了しました! これで嵐が来ても耐え忍ぶでしょう」


神様「お疲れ~ 降りてきて良いぞ」


少女「思ったより良い感じね」

神使「神額もさることながら、それに負けないとても綺麗な社名ですね」

忍神「参拝者が最初に見る、まさに神社の顔に相応しき額束にございます」


少女「そういえば、盗人ってどうしたの?」

継姫「今朝早くにそこの忍びがどこかへ担いでいったみたい也が」

神様「盗人って何? そんな奴いたっけ」

忍神「さぁ、私は存じ上げませんね」

神様「この社に盗人は来なかった。 いいね?」

少女「あっ、そういう事にするんだ」


神様「そてと。 じゃ少女ちゃん、これからもこの地をよろしく」

少女「私より、ツグに頑張ってもらわないとね」

継姫「我が也か!?」

少女「そうよ? だって・・・」


少女「今日からここは“継姫神社”なんですから」


〓〓〓修正

神様「そてと。 じゃ少女ちゃん――」
   ↓
神様「さてと。 じゃ少女ちゃん――」

〓〓〓

神様「高貴な神は“そてと”と言うナリ」

継姫「貴様はもう帰り給え」シッシッ

―――


――― 帰り道


 テクテク

神使「色々と後処理に骨が折れそうですが、無事解決できて良かったですね」

神様「まぁ私にかかれば、どんな難事件もこんなもんよ」ウヒャヒャ

神使「・・・・・・。 あの神様、気になることがあるのですが」

神様「盗人の件は知らないぞ? 諜報室に任せてあるから」

神使「いえ、継姫様の件なのですが」

神様「あのガキんちょがどうした?」

神使「神様、本当に初対面なんですか?」

神様「・・・・・・」


神使「やっぱり、ご存じだったんですね」

神様「あんなの忘れるわけないだろ、ちゃんと覚えてるよ」

神使「どうして隠してたんです?」

神様「その方がすんなり解決できそうだったし」

神使「過去に何かあったんですか?」

神様「さぁね。 でも・・・ 私の目に狂いはなかったな、って」

神使「?」



――
――― 太古の昔


継姫「痛みはない也か?」

少女の遠いご先祖「継姫の燻してくれた薬草が効いてるみたい」

継姫「それは良かった也」

ご先祖「ごめんね継姫・・・」ゲホゲホ

継姫「我のことなど心配せずとも良い」

ご先祖「この村最後の人守様だったのに、私が病弱でこんなに早く・・・」

継姫「我は主と一緒に過ごせて楽しかった也よ」ニコッ


ご先祖「ありがとう、継姫・・・ ごめんね・・・」

継姫「謝るでない、我は最後の人守として主に寄り添えた事を誇りの思う也ぞ」

ご先祖「・・・・・・」ニコッ

継姫「ありがとう、安らかに・・・」

ご先祖「」


継姫「我も、すぐそちらへ行こう・・・」グスッ



??「最後の人守、継姫というのは其方か?」


―――
――


――― 本殿前


少女「ツグ、そっちの薬草を持ってきてくれる?」

継姫「・・・・・・」ボー

少女「ねぇ、ツグ?」

継姫「え!? な、なん也?」

少女「どうしたの? ボーっとして」

継姫「何でもない也。 少し昔を思い出していただけ也」

少女「・・・・・・。 神ちゃんさんと過去に何かあったの?」

継姫「彼奴は我の宿敵であり―――」

少女「そうじゃなくて」ジー

継姫「・・・・・・」ハァ


少女「聞きたいな」

継姫「我ら一族は落第だった也」

少女「?」

継姫「人を導く役を、我らは上手く果たせなかった・・・」

少女「神ちゃんさんはツグより後に生まれたって言っていたわね」

継姫「我らは任を解かれ、神と名乗る存在が後を継ぐ事になった也よ」

少女「じゃあ、ツグ達の一族はそれで消滅したと言う事?」

継姫「そう也。 人守は共にした人間が亡くなると一緒に消え、新たな人守は生まれてこなくなった」

少女「そうなんだ」

継姫「遠い昔のつまらぬ話也よ」


少女「次いでだし、前から気になっていたことがあるんだけど聞いても良いかしら?」

継姫「なん也か?」

少女「何でツグだけは消えなかったの?」

継姫「・・・・・・」

少女「人守ってその人専用なんでしょ? ツグは私より前の先祖からずっと付いているのって変じゃない?」

継姫「忌々しき話也よ・・・」

少女「?」

継姫「・・・・・・。 消える直前に、ヤツが我の前に現れたのだ」

少女「それって、神ちゃんさんの事?」

継姫「そう也」フッ



――
―――


神様「最後の人守、継姫というのは其方か?」

継姫「・・・お前は我の姿が見える也か?」

神様「初めてご挨拶します。 我はこの地を新たに任されることになった神様と申す」

継姫「・・・そうか」

神様「早速ですが、あなた様一族の任はこれで終わりとなります」

継姫「分かっている。 じきに我も消えるであろう」

神様「申し訳ございませんが、それを阻止させていただきます」フカブカ

継姫「なに?」

神様「狭い地ではございますが、この場所を継姫様にお預けいたします」

継姫「どういう事也や?」


神様「いや~ 私めんどいこと嫌いでさぁ、上手くこの地を導けたら私に手柄頂戴よ」ニヤッ

継姫「おま・・・ ちょ、何を申して―――」

神様「子子孫孫の人守になる何か良い感じのおまじない~」


ポワポワ


継姫「うぐっ!」


―――
――



少女「ぷっ! 神ちゃんさまらしい」フフフ

継姫「笑い事ではない也!」

少女「なるほど、それでツグはず~っとこの地にいるんだ」

継姫「いい加減疲れた也よ」ハァ

少女「神ちゃんさんに感謝しないとね」

継姫「少女は神になって頭まで毒されてしまった也か?」

少女「そうかもね」クスッ

継姫「彼奴め・・・ やはりコテンパンにのしてやるべきだった也」グヌヌ

少女「ありがとう」

継姫「いきなりどうした也?」


少女「だって、ツグとこうして一緒に居られるのはその時のおかげでしょ?」

継姫「それは結果論であって!」

少女「因果でしょ?」

継姫「・・・・・・。 そう也な」フッ

少女「?」

継姫「ありがとう」

少女「そのお礼は誰宛?」

継姫「ご想像にお任せする也よ」ニコッ


少女「それよりツグ?」

継姫「?」

少女「神ちゃんさんから高級チョコってもらったの?」

継姫「・・・・・・。 あっ」

少女「追いかければまだ間に合うかもしれないわよ?」

継姫「あのタヌキめ! 我のチョコー!!!」ダッダッダッ


少女「ツグってば実体化して余計騒がしくなったわね」クスッ


 継姫「少女! 一緒に来る也!」


少女「あら、どうして?」


 継姫「どうしてって、我は少女から離れられない也よ!!」


少女「私の神力はこの村全体をカバーしてるのよ?」


 継姫「?」


少女「試しに一人で鳥居から出てみたら?」


 継姫「・・・・・・」ソー



少女「お先に失礼」ダッダッダッ

継姫「えっ!?」


少女「神ちゃんさんの高級チョコは私が全部もらいに行くわ」ダッダッダッ

継姫「卑怯也ー! 待つ也よ、少女ー!」ダッダッダッ


少女「ふふっ、私の早さにツグは付いてこられるかしら?」

継姫「負けない也よー!」



少女・継姫「せーの! チョコを寄越せー!!」タッタッタッ





神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
~ 番外編 2020年春『継々乃社之領域』~
おわり

終わったね


〓〓〓〓〓〓〓〓〓


――― 海ノ町・路地裏


隣町の主神「ふい~ ちょっと飲み過ぎちゃったかなぁ~」フラフラ

 モクモク

主神「ん? 霧・・・ いつの間に」キョロキョロ

 『この・・・ 町から・・・ 出て・・・』

主神「え? 誰かいるんですか?」

 『あなた邪魔・・・ この町に必要ない・・・』

主神「ど、どこに隠れているんです? 悪戯にしてはタチが悪いですよ」キョロキョロ

 『隠れてないよ。 上・・・』

主神「うえ?」クルッ

 『あはははははは!』


主神「・・・ぁ」バタッ


~あらすじ

神様「神宮の女神、神ちゃんです!」

神使「お付きの神使です」


――― 数日後・山ノ町神社


主神「本当なんです! 信じて下さいってば~!」

神様「神使君、帰ろう」

主神「待って下さい! 私だって怖いんです!!」ガシッ

神様「別に怖い訳じゃねーし! もう秋だし! お化けは夏だし!!」

主神「話を聞いて頂けるまで離しません!!」

神様「話なら今聞いただろ! それモノノケだよ! 私の管轄外だ!!」

主神「400年生きてますがモノノケなんて見たことないですよ~」

神様「目撃第1号おめでとさん! よかったね!」

主神「も~ お願いですから助けて下さいよ神様~」

神様「得体の知れない物に触って、何かあっても責任取れねーんだよ!」ゲシゲシ

主神「それを言ったら私だって! 隣の海ノ町は元々の管理地じゃないですし!」


神使「まあまあ、お二人とも取りあえず冷静に」

主神「神使さんは信じてくれますよね!」

神使「要約すると、霧の中で人影を見たという事ですよね?」

主神「あれは人ではありません、でも女の子でした」

神様「女の子なら人だろ・・・」

主神「人って浮きませんよね? それにカピチューが肩に乗ってたんです」

神様「・・・・・・。 えっと・・・ なに?」

主人「カピチューです。 こう、黄色くて丸っとした」

神様「・・・・・・」

神使「私の知る限り、カピチューはゲームのキャラだと思うのですが認識は合っていますか?」

主神「はい。 30センチくらいでしょうか、その子の肩にチョコンと」


神様「神使君、こいつに良い医者を紹介してやってくれ。 じゃバイバイ」

主神「神様~ 話はこれだけじゃないんですよぉ~」ガシッ

神様「だから離せって!!」

主神「はい、話します。 実は―――」

神様「そっちの話せじゃねーよ!」

神使「神様も、ちゃんとお話を最後まで聞いたらお小遣い上げますから」

神様「うむ、その言葉をずっと待っていた。 話を続け給え主神君」

主神「ありがとうございます神使さん。 後で是非お礼をさせて下さい」

神様「私にしろよ…」

主神「実はこちらが本題なのですが・・・―――」

ゆっくりと進みたい


~ 数日前・隣町(海ノ町)


主神「今日のお昼はホッケ定食にしようかなぁ~♪ うん、そうしよう!」テクテク

 「あの」

主神「ん? 私ですか?」クルッ

少女「この町へは何をしに?」

主神「何をって、ご飯を食べに。 そこの定食屋です」

少女「止めに来たんじゃないんですか?」

主神「止めに? 何をです?」キョトン

少女「そんな事も分からないなんて、神の力って大したことないんですね」ハァ

主神「!? あなた、何で私の正体を・・・」

少女「先日忠告をしたと思うんですが」

主神「忠告・・・ !? あなた、まさか先日のカピチュー!?」


少女「・・・・・・」

主神「いえ、その・・・ すいません」

少女「警告です。 30分以内にこの町から出て下さい。 でないと・・・」

主神「・・・でないと?」ゴクリ

少女「この町に災厄が降ることになります。 あなたは望みますか?」ズイッ

主神「ひぃ!」ゾッ

少女「あはははははは」

主神「・・・・・・」バタリ


~~~
~~



主神「という事がありまして」

神様「怖っ! っていうかお前気絶しすぎだろ」

神使「その少女さんは、最初にお話し頂いた子と一緒だったんですか?」

主神「ハッキリとは覚えてはいないのですが、そうみたいですね」

神様「お前取り憑かれたね。 やっぱり私の管轄外だし帰る」 トテトテ

神使「神様、取りあえず最後まで話を聞きましょう」

主神「そうですよ!」グイッ

神様「グヘェ! いや、聞いたってどうにもならないって!」ジタバタ


神使「30分以内に町を出ろというのはどういう意味なのでしょう」

主神「それなんですが・・・ 実はその1時間後に事故があったんです」

神使「事故?」

主神「海ノ町の大通りで地盤沈下が」

神様「あっ、それニュースで見た。 3日くらい前だよな」

主神「タイミングが良すぎると思いませんか?」

神様「偶然じゃねーの?」

神使「確か奇跡的に巻き込まれた人はいなかったと聞きましたが」

主神「もしかしたら、あの子が防いだんじゃないかと」

神使「少女さんの言った“止める”というのは、地盤沈下による犠牲者・・・」


神様「だったら普通地盤沈下の方を止めない?」

神使「神であれば止めることは出来るのでしょうか?」

神様「分かりもしない事故なんかどうやって止めんだよ。 預言者じゃあるまいし」

神使「それですと、少女さんは神以上の存在という事になりますが」

神様「やっぱモノノケだね。 よし帰ろう」

主神「これを見てもそう言えますか?」ペラッ

神使「これは・・・ お札(ふだ)ですか?」

神様「綺麗な字だね。 上手上手」

主神「どうぞ」スッ

神様「パードゥン?」

主神「どうぞ」ズイッ


神様「・・・・・・。 ちょっとだけだぞ。 先っちょ触るだけだからな」ペトッ

神使「どうですか?」

神様「先っちょが濡れて・・・ いや~ん、この温もり体が火照っちゃう」クネクネ

神使「神様?」ジトー

神様「うそうそ。 っていうか何だよこれ。 何か変なの感じるんですけど・・・」

主神「結界のような物じゃないかと。 事故があった現場の周囲に置かれていました」

神使「まさか、このお札のお陰で巻き込まれた人が出なかったと?」

主神「断言は出来ませんが」

神使「その少女さんというのは一体・・・」


トントン


一同「!?」ビクッ



ガチャ


巫女「本日はようこそ」フカブカ

主神「巫女さんでしたか」ホッ

巫女「お飲み物をお持ちしました」スタスタ

神様「お、いいね~ 私はできれば気付けにシュワシュワしたものを」

巫女「コーラですがよろしいでしょうか」ニコッ

神様「ナイス! これが欲しかったの!」

巫女「こちらは濃いめの緑茶です」コトッ

神使「良い濁りですね。 ありがとうございます」

巫女「主神様はコーヒー牛乳ですね」コトッ

神使「いつもすみません。 頂きます」

巫女「何かございましたらお声を。 それでは、ごゆっくり」スタスタ


ガチャ


神様「今の子は?」

主神「巫女です」

神様「そんなの見りゃ分かるよ。 あの格好で巫女じゃなかったら何なんだよ・・・」

神使「こちらの神社の巫女さんですか?」

主神「はい、確か高校を卒業してからすぐに。 しっかり者でとても良い子です」

神様「良いね~ かわゆいし、一番脂がのってる時期だね」ジュル

神使「えーと・・・ お話しの続きなのですが、その少女さんの素性はお調べになったのですか?」

主神「はい。 隣町の中学2年生、聞いた限りでは普通の女子中学生のようですが」

神使「どうされますか神様」

神様「そうだね~ この場合は経験上放置がベストな選択かな」

神使「まずは気付かれないように少女さんを詳しく調べる必要がありますよね」

主神「しかし、私は素性がバレているようですし」


神様「んじゃ、解決したらメールだけ送っておいて。 話聞いたし私は帰る」

主神「待ってくだいさよ神様~」ガシッ

神様「だから離せよ! そんなの神宮の調査部にやらせろって」

神使「それは少しマズいですね」

神様「は? 何でだよ」

神使「私達に報酬が入りません。 お金が欲しいんです」

神様「お前・・・ いつからそんなこと言う子になっちゃったの?」

神使「あっ! 良い方法を思いつきました」

神様「神使君の良い方法はいつも良くない気がします!」

神使「きっと神様も気に入ってくれると思いますよ?」

神様「どんな妙案でも私は100パーセント動かないからな」


――― 翌日・隣町 海ノ中学校


教師「では、自己紹介をお願いします」

神様「三重の方にある何とかっていう学校から来た“神宮 御子(じんぐう みこ)”です」ペコリ

教師「神宮付属皇學院中学校だね。 他に挨拶とか抱負はある?」

神様「そうですね、まずはこの2年4組を私の配下に置くことが目標です」グッ

教師「ここは2年3組だよ。 まずは自分のクラスを覚えないとね」ハハハッ

神様「え?」

教師「じゃ、神宮さんはそこの空いている席に座って下さい」

神様「はあ」トテトテ


教師「神宮さんは来月までの限定的な転校なので、短い間だけど皆仲良く」

生徒達「はーい」


神様「よいしょ。 よろしゅうねお隣さん!」ニコッ

隣席の少女「よろしく」ニコッ

神様「私の事は親しみを込めて“かわゆい神ちゃん”って呼んで欲しいなぁ」クネクネ

少女「私は少女。 困ったことがあったら何でも言ってね」

神様「・・・ん? ごめん、もう一度名前教えて?」

少女「少女だよ?」

神様「・・・・・・。 え~と・・・」

少女「どうかしたの?」

神様「いや、なんで同じクラスなのかなって」

少女「だって、同じクラスの方が都合が良いでしょ?」フフッ

神様「・・・・・・」

少女「神ちゃんて凄い後光だね。 何の神さま?」ニコッ


――― 30分後・校門


神使「急でしたが、これで無事に転入手続きは終わりです」

主神「しかし神様を転入させるなんて凄いアイデアですね」

神使「神様の性格上、絶対に快諾すると思いました」

主神「バレたりしないでしょうか?」

神使「少女さんとは別クラスで手配したので、神様がミスさえしなければ大丈夫かと」

主神「それが一番心配ですが」


 神様「本当だよ」


神使・主神「!?」クルッ

神様「チャオ」

神使「神様! 学校はどうされたんですか!?」

神様「バレちゃいました」テヘッ


――― 昼・定食屋


神使「いくら何でもバレるのが早すぎますよ・・・」

神様「私のせいじゃないって! 大体何でクラスが同じなんだよ、話が違うだろ」

神使「え!? 同じクラスだったんですか?」

神様「2年3組。 しかも隣の席が少女ちゃんなんてあり得ないだろ」

主神「神使さん、これは一体・・・」

神使「おかしいですね。 確か神様は2年4組だったはずですが」

神様「いきなり“神ちゃんて後光が凄いね”って言われた」

神使「後光?」

主神「もしかして、少女さんは神力を察知出来る能力があるのでは?」

神使「いえ、その線は薄いと思います」

主神「?」


神使「神様は神力ゼロですから」

神様「そうそう、私って神力ないから気付かれない。ってうるせーよ」ゲシッ

神使「痛っ!」

主神「では一体どうして・・・」

神様「今回に限っては私は1ミリも悪くないからな」


店員「はいお待たせ。 牡蠣フライ定食に牡蠣フライ追加の方は?」


神様「あっ、私だ」

神使「凄い量ですね。 牡蠣フライばかりそんなに食べられるんですか?」

神様「余裕よ」パクパク


神使「しかし、なんでこんな手違いが・・・」

主神「バレてしまったからには別の方法を考える必要がありそうですね」

神使「神様はどう思います?」

神様「私に聞くなよ・・・ まぁ、私の後光が見えたってのはちょっと変だよなぁ」

主神「神様くらいでしたら神力ゼロと言っても、僅かに残っているのでは?」

神様「私だってバカじゃないよ。 今朝、学校へ行く前に神力は完全に抜いたし」

神使「ではどうして神様の正体が・・・」

神様「少女ちゃんは私達の事を以前から知っていた。 または知る機会があった」

主神「私がこの件を相談したのは昨日が初めてですし、とてもそんな時間は・・・」


神使「どちらにしろ別の調査方法を模索した方が良さそうですね」

神様「いや、このまま成り行きに任せて相手の出方を見た方が良いかもな」

主神「何か良い方法でも?」

神様「飯食い終わったら、私はもう一度学校に戻る」

神使「大丈夫でしょうか? 少し心配な気もしますが・・・」

神様「だって」

主神・神使「?」

神様「この制服かわゆいし、もう少し着ていたい」モグモグ

主神・神使「・・・・・・」


神様「すいませーん! 牡蠣フライおかわり!!」


――― 放課後・教室


 ガヤガヤ

生徒A「神宮さん、朝はどうしたの?」

生徒B「急に教室飛び出していったけど」

神様「あ~ ちょっとね。 えーと・・・ 女の子なもので」アハハハ

生徒A「そ、そうだったんだ///」

生徒B「ごめんね、変なこと聞いちゃって///」

神様「変な心配させちゃって悪かったね」ハハハ

少女「でも、良かった。 もう学校に戻ってこないと思って心配しちゃったよ」

神様「私もそれなりに場数踏んでるから、あの位の事ではダメージゼロよ」ニッ

少女「・・・・・・」


神様「あっ、それと皆も私のことは神ちゃんって呼んで」

生徒A「うん。 そういえば、神ちゃんて神宮御子(じんぐうみこ)っていう名前だよね」

神様「そだね。 ちなみに最初の“じ”にアクセントね」

生徒A「・・・そうなんだ」

生徒B「何か御利益ありそうな名前だね」

神様「おみくじは必ず大吉を引けるしね」

生徒A「うそ!?」

生徒B「何か見分け方とかあるの?」

神様「神の力」ニヤッ

少女「・・・・・・」

神様「な~んてね」ウヒャヒャ


少女「神宮の学校に通ってるって事は、将来は神主とか巫女にでもなるの?」

神様「え~ 少女ちゃん、それを私に聞いちゃうの~?」

少女「・・・・・・」

神様「うそうそ。 ま、何を隠そう私は神宮で巫女をやってたしね」

生徒A「え!? 神ちゃんって巫女さんなの?」

神様「こう見えて私は優等生なのだよ」フンスッ

生徒A「少女ちゃんとどっちが成績が上なんだろうね」

生徒B「少女ちゃんはいつも成績トップだもんね」

少女「そ、そんな事ないよ///」

神様「おほほっ。 これはどちらが上か楽しみですな」カッカッカッ

少女「・・・・・・」イラッ


生徒A「あっ、でも中学生で巫女さんって凄いね」アタフタ

生徒B「う、うん。 格好いいよね」アセアセ

神様「巫女の御子ちゃん。 みこみこってダジャレかよオイ!」ウヒャヒャ

一同「・・・・・・」

神様「あっ、神宮巫女と神宮御子でダブルミーミングじゃん。 すげー」

少女「ミーニング。 神ちゃん英語は苦手みたいだね」ニコッ

生徒A・B「・・・・・・(少女ちゃんがキレてる)」タラタラ

生徒B「え~と・・・ か、神ちゃんの家って海ノ町?」

神様「山之町、隣町だね。 転校期間中は山之神社に住んでる」

生徒B「神社に!?」


生徒A「少女ちゃんと同じだね」

少女「・・・・・・」

神様「?」

生徒B「ちょっとA子ちゃん」コソッ

生徒A「あっ、ごめん・・・」

少女「気にしないで」ニコッ

神様「少女ちゃんの家って神社なの?」

少女「神社の近くに住んでるだけだよ」

神様「ふ~ん」

生徒A「そ、そうだ! 神ちゃん、まだここら辺って慣れてないでしょ」

生徒B「案内がてらこの後お茶でもしない?」

神様「だったら歓迎会してよ」

生徒B「え~ それ自分から言うの~?」アハハハ


神様「うちの神社大きいし、これから皆で来ない? もてなすよ」

生徒A「あっ、行ってみたーい」

神様「じゃ、決まり! 少女ちゃんも来てくれるよね?」

少女「私は用事があるから」

神様「え~ 来てよ~ 歓迎してよ~」スリスリ

少女「わ、分かったから。 そんなにくっ付かないでよ」

神様「私、職員室に寄って行くから校門で待ち合わせね。 じゃ、また後で」タッタッタッ


生徒A「神ちゃんて変わってるね・・・」

生徒B「猪突猛進って感じだよね」

少女「なんか・・・ 調子狂うなぁ」ボソッ


――― 廊下


prrr prrr

神使『はい神使です』

神様「あっ、犬ころか? これから皆でそっち行くから」

神使『皆って、まさか少女さんもですか!?』

神様「そう。 少女ちゃん含めクラスメイト3人」

神使『何が事前に準備しておくことはございますでしょうか』

神様「お菓子、ケーキ、コーラ、間に合えばピザも。 後は~」

神使『いえ、そういう意味ではなく・・・』

神様「いいか? 私のこれからの学生生活の立ち位置がかかっている。 手を抜くなよ」

神使『ちょ、かm―――』

ピッ

神様「さ~て、どう出てくるかな?」ニヤッ


――― 山之神社


神様「ささ、みんな上がって」

生徒A「ねぇ神ちゃん、ここって本殿って言うところでしょ?」

神様「よく知ってるね」

生徒B「本殿って神聖な場所だよね。 勝手に入っちゃっても良いの?」

神様「神聖? 金と欲にまみれた願いを聞くための穢れた場所だよ」

生徒A「そうなんだ・・・」

少女「・・・・・・」

神様「ま、立ち話も何だし早く中に入って」ニコッ

一同「お邪魔しま~す」


生徒A「うわ~ 凄い豪華」キョロキョロ

生徒B「壁がキラキラしてる」キョロキョロ

神様「こういうのにお金使わないと色々とうるさいんだって。 税金対策って言うの?」


 トントン


神様「だれ?」

神使「私です。 お菓子をお持ちしました」

神様「お~ サンキュ」

神使「皆さん、ようこそいらっしゃいました」ペコリ

生徒A・B(格好いい!!)キュン


神様「おい犬ころ、ピザとケーキがないんだけど」ゴソゴソ

神使「そんな物すぐに用意できるわけないじゃないですか・・・」

神様「ったく、使えねーな」チッ

生徒A「ちょっと神ちゃん、こちらの方は?」コソッ

神様「ん? こいつは、え~と・・・」

神使「神宮の神職で神使と申します」

神様「そうそう、私のお付きとして連れてきた犬ころ」

神使「お付きというかお守りですね。 皆さん、どうぞよろしくお願いします」ニコッ

生徒A・B(凄く格好いい!!)キュン


神様「そうだ神使君、巫女ちゃんを紹介したいから呼んできて」

神使「それが、先程急用で主神さ・・・ お二人で一緒に外に出られました」

神様「そうなの?」

神使「戻りは遅くなるようです」

神様「ふ~ん」チラッ

少女「」ホッ

神様「・・・・・・」


神様「よーし! それじゃ、神ちゃん歓迎会スタートゥ!」


――― 1時間後


神様「――という訳で全部私の物になった訳よ」

生徒A「神ちゃん面白い!」ケラケラ

生徒B「もうダメ、笑いすぎてお腹痛い」ヒーヒー

神様「どうよ少女ちゃん、私の武勇伝は」

少女「これ以上笑えない・・・ 腹筋が死んだ」ピクピク

神様「おまる」ボソッ

少女「ダメ! それ以上言わないで」プッ クスクス

神様「まぁ私にかかればこんなもんよ」フンスッ

生徒A「神ちゃん、お手洗い借りてもいい?」

神様「おまる貸そうか?」

生徒A「もう良いって! これ以上笑ったら漏れちゃう」クスクス

神様「建物が複雑だから案内してあげる」


――― 廊下


生徒A「大きい神社だね。 確かにこれは迷うわ」テクテク

神様「間借りしてるだけだから、私の家じゃないけどね」トテトテ

生徒A「隣町のちっこい神社とは大違い」

神様「あれ? 隣町には神社がないって聞いてるけど」

生徒A「あ~ 昔はあったんだよ」

神様「学校で少女ちゃんの家も神社だって言ってたね」

生徒A「あっ・・・ うん・・・」

神様「言いたくなければ無理には聞かないけど」

生徒A「そういう訳じゃないんだけど・・・」

神様「?」


生徒A「隣町にあった神社って、元々少女ちゃんの家だったんだよ」

神様「だった?」

生徒A「詳しい理由は知らないけど、廃止されたって聞いてる」

神様「廃止・・・ それっていつ頃?」

生徒A「確か3年くらい前だったかな」

神様「・・・・・・。 少女ちゃんてその神社で巫女さんとかしてたの?」

生徒A「まだ小学生だったし、そういう事はしてなかったんじゃないかな」

神様「そっか・・・」

生徒A「でも、神社がなくなってから大変なんだよ」ハァ

神様「何が?」


生徒A「出るらしいよ~ 先週、うちのクラスのC子ちゃんが見たんだって」

神様「・・・何を見たのでしょうか」

生徒A「カエルの軍曹が、ぴょんぴょん跳ねてるのを!」

神様「・・・・・・」

生徒A「ゲロゲ~ロ! ゲロゲロりんちょ! って追いかけてきて!」ズイッ

神様「・・・・・・」ゴクリ

生徒A「あっ、あそこがトイレ?」

神様「え? あっ、うん」

生徒A「行ってくるね~」タッタッタッ


神様「モノノケやんけ!」


――― 町外れの喫茶店


主神「誰も来ませんね」

巫女「隣町で起こっている怪異の件で話があるという事だったのですが」

主神「電話をしてきた方にお心当たりは?」

巫女「」フルフル

 prrr prrr

巫女「あっ、すいません。 私の携帯です」

主神「気にせずどうぞ」ニコッ

巫女「もしもし・・・ うん・・・ うん・・・ 分かった」ピッ

主神「私達を呼び出した方からですか?」

巫女「いえ。 ・・・妹です」

主神「そうですか。 もう1時間経ちましたし、今日は帰りましょうか」

巫女「そうですね」



――― 神社・本殿


神様「神ちゃんトイレより帰還しました!」


 バンッ!


少女「うん、これから帰るから」ピッ


神様「あっ、ごめん電話中だった? 大きな音立ててすまんね」

少女「大丈夫」ニコッ

生徒B「暗くなってきたし、私達そろそろ帰るね」

神様「うちの犬ころに送らせようか?」

少女「まだ明るいし大丈夫」

神様「じゃ、神社の出口まで見送りを」


――― 鳥居前


生徒A「今日はありがとね、神ちゃん」

神様「今度は神さまを紹介してあげるから」

生徒B「神さま!?」

生徒A「神ちゃん面白~い」

神様「少女ちゃんも、近いうちにゆっくり話そうね」

少女「そうだね」ニコッ

生徒B「じゃ、また明日学校で」

神使「お気をつけてお帰り下さい」ペコリ

神様「ばいばーい」


神様「さてと、社務所戻って残ったお菓子を食べますか」

神使「も~ 神を紹介するだなんて余計なことを話さないで下さいよ・・・」

神様「気にすんなって。 これも作戦よ。さ・く・せ・ん」

神使「本当ですか?」

神様「それより、主神と巫女ちゃんはどこに行ったんだ?」

神使「実は神様達が来る直前に呼び出しの電話がありまして」

神様「急なお祓いの依頼でも入ったか?」

神使「今回の怪異の件で相談があるという内容だったそうです」

神様「は? 相手は」

神使「身に覚えはない方のようです」

神様「ふ~ん」



 主神「只今戻りました」テクテク


神様「おっ、噂をすれば」

主神「うわっ! 神様眩しいですね。 凄い後光が出てますが・・・」

神様「あ? あ~ 忘れてた。 ゴメンゴメン」シュ~ン

主神「収まりましたね。 流石神様、あれほどの後光を出せるとは」

神使「神様、後光を出されてたんですか?」

神様「あ~ ちょっとね」

神使「それより主神さま、例の呼び出しの件はいかがでしたか?」

主神「それが・・・ ここでは何ですし、社務所の方でお話しを」


――― 社務所


神様「怪異の件で呼び出しがあったって聞いたけど」

主神「結局待ち合わせの時間になっても誰も来ませんでした」

神使「内容的に悪戯という事も考えにくいですし、相手の真意が気になりますね」

神様「その呼びだし、ちょっとタイミングが良すぎるな」

神使「どういう事です?」

神様「電話を受けたのはお前か?」

主神「いえ、巫女さんです」

神様「う~ん・・・ あれ? 巫女ちゃんは?」キョロキョロ


主神「今日はもう遅いので直帰してもらいました」

神様「残念。 一緒にお風呂入りたかったのに」

神使「お願いですから巫女さんが嫌がることだけは止めて下さい」

神様「分かってるよ・・・ そんなマジになるなって」

神使「それより、神様の方は少女さんの件で何か分かりましたか?」

神様「ん? そうだね~ ちょっと変だな」

主神「やはり、少女さんから何か得体の知れないものを感じたんですか?」

神様「逆。 あれ、どう見ても普通の中学生だぞ」

神使「普通の女子中学生は宙を浮いたり、預言じみた事など出来ないと思うのですが」

神様「さっき私が出してた後光、ずっと少女ちゃんの前でも出してたんだよ」

神使「後光を?」


主神「まさか、少女さんは気がつかなかったんですか?」

神様「おかしいだろ? 前に“凄い後光ですね”とか言ったくせに」

神使「気付いていない振りをしていたとか」

神様「それはないって。 あんだけの後光を出されたら眩しくて仕方ないし」

神使「私には分からなかったのですが、そんなに眩しいんですか?」

主神「2万ルーメンくらいはありました」

神使「それは直視できない明るさですね。 かなり眩しいです」

神様「後光は電球かよ・・・」


主神「でも、それだけで決めつけるのは早計では?」

神様「他にも色々やったよ。 体に神力流してみたり結界符近づけたりさ」

神使「効果はなかったんですか?」

神様「全く。 久々にすげー勢いで神力使ったから疲れたよ」

神使「あの・・・ その神力はどこから?」

神様「本殿に神力がたんまり詰まった変な像があってさ」

主神「それ・・・ うちのご神体・・・」

神様「そこから吸い取った」

主神「わ、私が丹精込めて貯めた神力が・・・」

神様「半分くらい使っちゃった! ごめーんね」テヘッ

主神「はふっ」ヘナヘナ


――― 翌日・学校


先生「――ですから、この和歌を訳すと~」


神様「はぁ~ 暇だなぁ~」ボー

少女「ちゃんと授業聞かないとダメなんじゃないの? 神なんでしょ?」ボソッ

神様「いや~ あの和歌、訳し方を間違ってるし覚えても意味ないって」

少女「何で神ちゃんがそんな事まで知ってるのよ」

神様「だって、あれ作ったの私だもん」

少女「はあ?」


先生「おい少女、何か質問でもあるのか?」

少女「え!? いえ・・・ すみません」ジロッ

神様「なるほど、ここはそう訳すのか。 ためになるなる」フムッ

少女「・・・・・・」イラッ



先生「ここテストに出るからちゃんと聞いておけよ。 で、次の行は―――」


神様「ごめーんね」ボソッ

少女「もう話しかけないで」キッ

神様「そんなつれないこと言わないでさぁ~」

少女「・・・・・・」

神様「はぁ~ ・・・ん?」

チョロチョロ

神様「・・・・・・。 ねぇ少女ちゃん」

少女「もぉ、今度は何よ」

神様「いや、何か変な生き物が・・・」

少女「変な? どこ?」キョロキョロ



 変な生き物「ハッハー!」


神様「・・・・・・。 ネズミの里?」

少女「は?」



 生徒C「キャー!!」


先生「どうしたんです!?」

生徒C「ネズミの里の生き物が!」

先生「ネズミ?」キョロキョロ


 ガヤガヤ



少女「神ちゃん、まさかこの教室に何かいるの?」

神様「いや、だからネズミの・・・ 少女ちゃん見えないの?」

少女「・・・・・・」


 変な生き物「ハッハー! ハッハー!」テクテク


生徒C「キャー! こっち来ないで!」

先生「大丈夫ですかC子さん!? ネズミなんかいませんよ?」


神様「マズいな」ガタッ

先生「あっ、神宮さん! 席に戻って―――」


神様「C子ちゃん、落ち着いて」ボソッ

生徒C「神ちゃん! あれ! アレ! ネズミの・・・ ミッk―――」

神様「それ以上言っちゃダメ、色んな意味で面倒だから」

生徒C「あれ何? 何で・・・ みんなは見えてないの?」

神様「大丈夫、私には見えてる。 悪いけどちょっと眠ってて」ポワッ

生徒C「え?・・・」ガクッ

神様「昨日の神力少し残しておいて良かったわ」


少女「・・・・・・」


先生「誰かC子さんを保健室に」

神様「なんか気分悪そうなので先にトイレ連れて行きます~」トテトテ


 ガヤガヤ


先生「ほら、みんな落ち着いて」


少女「・・・・・・」ガタッ

先生「少女さん、C子さんの方は神宮さんに任せて」

少女「神宮さんは保健室の場所を知りません。 私も付き添います」タッタッタッ

先生「あぁ・・・ そういえば転校してきたばかりだったな・・・」

久しぶりに見るリアルタイム更新

ありがと神ちゃん


――― 数分後・保健室


コンコン

少女「失礼しまーす」ガラガラ

少女「C子ちゃん? 神ちゃん?」キョロキョロ


 シーン


少女「あっ、C子ちゃん!」タッタッタッ

C子「・・・・・・」スヤスヤ

少女「寝てる・・・ 神ちゃん? 居ないの?」キョロキョロ


 シーン


少女「・・・・・・」ゴソゴソ

少女「ごめんね、C子ちゃん」スッ


 ポワポワ



 神様「何やってるのかな?」トテトテ


少女「!?」クルッ

神様「来ると思った」

少女「神ちゃん・・・ 全く気配感じなかったのに・・・」

神様「私をそこらの神と同じに思っちゃダメよん。 それより、今かなり不思議な力を感じたけど」

少女「・・・・・・」コソッ

神様「後ろに隠したのは何かなぁ~? お札かなぁ~?」

少女「何のこと? じゃ、私教室に戻るね」スタスタ

神様「ねぇ、私に協力する気はない?」

少女「え?」

神様「力になれると思うけど?」

少女「・・・私、神って信じてないんです」スタスタ


神様「ん~・・・」

>>410
なんかトリ抜けた

>>412
ちゃお! 今日はここまで!


――― 社務所


神様「たでーま~」トテトテ

神使「お帰りなさいませ」

神様「今日のおやつは?」

神使「“の”って何ですか・・・ そんな習慣は記憶にないですが」

神様「じゃあ巫女ちゃんにもらうし良いよーだ!」ベー

神使「巫女さんは主神さまと一緒にお仕事中です」

神様「主神と仕事・・・ だと!?」

神使「何でそんなに驚いているんですか・・・」

神様「あいつが進んで仕事をする光景を私は一度も見たことがない!」

神使「そんな失礼な・・・ 神様が勝手に神社の神力を使ったからですよ」

神様「あ~ 参拝者を増やして神力をまた貯めたいのか」

神使「神様もお手伝いしないとダメですよ。 さ、行きましょう」ガシッ

神様「え!? 私も手伝うの?」スルズル


――― 本殿


主神「ネズミの里?」

神様「そう、学校でハッハー!を見た」

巫女「・・・・・・」

神使「それって、着ぐるみとかそんな感じの物ですか?」

神様「違うって。 ハッハー! は中に人なんかいないし」

神使「設定上はそうですが・・・」

神様「設定とか言うな。 本当だからね? 嘘ついてないからね?」

巫女「あの・・・」

神様「ん?」


巫女「それって1体だけですか?」

神様「うん。 私が見たのは1体だけ」

巫女「・・・・・・」

神様「何か思い当たる節でも?」

巫女「いえ、そういう訳では」

主神「確かに巫女さんの言うように、恋人のミギーちゃんやダックもいないと役者が揃いませんよね」

巫女「そういう意味で聞いた訳でもないのですが・・・」

主神「やっぱりモノノケはいるんですね!」

神様「モノノケねぇ~」グテッ

主神「あー! 神様が作ったおみくじ全部大凶って書いてあるじゃないですか!」

神様「どうせ誰も引かないんだし良いだろ。 こっちの方が面白いって」

主神「面白くないですよ・・・ 参拝者来てくれなくなっちゃうじゃないですか・・・」

神様「うるせー」


神使「モノノケが出たとなっては学校は大騒ぎだったのでは?」

神様「それが、見えるヤツと見えない奴がいるみたいなんだよね~」

神使「どういう事です?」

神様「ん~」チラッ

巫女「」サラサラ

神様「・・・・・・」ジーッ

巫女「? どうかなさいましたか?」

神様「何書いてるの?」

巫女「これはお守り用のお札です」

神様「ふ~ん・・・ 巫女ちゃんは字が上手だね」

巫女「え? あ、ありがとうございます」


神様「ねぇ、“繋”って字書いて」

巫女「繋・・・ ですか?」

神様「私、好きなんだよね~ その字」

巫女「分かりました」サラサラ

神様「・・・・・・」ジー

巫女「どうぞ」スッ

神様「あんがと、やっぱ上手いわ。 この字バランスが難しいんだよね~」

巫女「ありがとうございます」ニコッ


神様「じゃ、おやすみ」ゴロン

神使「ちょっと神様、こんな所で寝ないで下さいよ・・・」

神様「色々疲れて、もう無理なんだよ」

主神「夕飯の前にお風呂入りますか? すぐに湧かしますが」

神様「風呂かぁ~」グテー

巫女「あっ、でしたら私が準備して参ります」

神様「巫女ちゃんも一緒に入ってくれる?」

巫女「え!?」

神使「またそんな意味不明なことを・・・」


主神「それでしてら、海ノ町にある銭湯にでも行きますか?」

神様「お、いいね!」ガバッ

巫女「・・・・・・」

神様「巫女ちゃんも行くでしょ?」

巫女「あの・・・ 私はおみくじのセットもしないといけないので・・・」

神様「え~ 一緒に行こうよ~」スリスリ

巫女「・・・・・・。 分かりました」

神様「よし、決まり! んじゃ皆で一緒に銭湯へ!」

巫女「折角ですし、ストロベリー温泉に行きませんか?」

神使「ストロベリー温泉?」


主神「そういえばそんな温泉がありましたね」

神様「何そのイカした名前の温泉! そこにする!」

主神「結構遠いですよ?」

巫女「この時間でしたら電車を使えば間に合うと思います」

主神「そうですね。 折角の提案ですし、ストロベリー温泉にしましょうか」

神様「ヨッシャ! 燃えたぎってきたぜ!」


――― 山ノ駅


神様「うへ~ やっと駅かよ。 こんなに遠かったっけ?」

主神「神社からですと本当は隣町の海ノ駅の方が近いんですが・・・」

神様「じゃぁそっちから乗れよ!」

巫女「こちらの駅の方が電車の本数が多いんです」

神様「あ~ そういう事ね」

神使「では、行きましょうか」


――― 電車内


 ガタンゴトン


神様「どのくらい乗るの?」

巫女「二駅先ですからすぐ着くと思います」

神様「良かった。 38時間とか言われたらどうしようかと思った」

巫女「38時間!?」

神様「冗談だと思うでしょ? でもこのクソ犬は平気でそういう事するの」

神使「金銭的に色々ありまして・・・」


主神「神様はお金いっぱい持っているじゃないですか」

神様「あ?」

神使「神宮銀行の神様の口座には18円しか残高がないんです」

主神「あれ? 神宮資産管理銀行の方がメインですよね?」

神様「ねぇ、そういうトップシークレットをベラベラ話さないでくれる?」

主神「あっ、そうでした。 すみません・・・」

神使「毎日金欠金欠言ってるならその銀行からお金下ろせば良いじゃないですか」

神様「キャッシュカードがねーんだよ。 そもそも、その銀行がどこにあるかも知らねーし」

神使「そうなんですか・・・」



 放送「まもなく~ 海山の境駅に到着しま~す」


巫女「あっ、私ちょっとお手洗いに行ってきます」

神様「あんまり長いことブリブリしてると置いて行っちゃうよ~」

巫女「そ、そんなに長くありません! それに・・・し、小の方です///」スタスタ

神使「神様・・・ はしたなさ過ぎますよ」

主神「あまり虐めないで下さい。 30年ぶりの大切な巫女さんなんですから」

神様「分かってるって。 あそこまで優秀な巫女は中々――― !?」クルッ


 ポワ ポワ~ン


神使「どうしました?」

神様「・・・・・・。 後ろの車両から変な力を感じた」


神使「後ろって、巫女さんがトイレに!」

神様「しまった!」タッタッタッ

神使「あっ、神様!」タッタッタッ


神様「主神はこの車両で待機! 何かあったら――― ウギャッ」ドンッ

巫女「キャッ!」ドンッ

神様「痛たた・・・」

巫女「どうされたんですか!?」

神使「巫女さん無事でしたか」ホッ


巫女「そんなに慌てて何かあったんですか?」

神様「隣の車両で変な物を見たり感じたりしなかった?」

巫女「いえ、特には。 お手洗いに行っただけですから」

神使「後ろの車両を見てきます」スタスタ

神様「気をつけろよ」


神使「あれ?」キョロキョロ

神様「どした、何かあったか?」

神使「後ろにの車両には誰もいないようです。 ただ・・・」

神様「ただ?」

神使「いえ・・・ 何でも・・・」

神様「?」


――― 数分後


神使「一体何だったのでしょう」

主神「私にも微かですが神力に近いものを感じました」

神様「巫女ちゃんは何か見たりしなかった?」

巫女「いえ、特に何も」

神使「・・・・・・。 お手洗いに不審な点はありませんでしたか?」

巫女「なかったと思います」

神使「・・・そうですか」



 放送「まもなく~ ストロベリー温泉駅に到着しま~す」


巫女「あっ、そろそろ着くみたいですね」

神使「どうされますか?」

神様「決まってるだろ」

神使「そうですね、このまま放置しては―――」

神様「ストロベリー温泉で私はイチゴ姫になる!!」

神使「・・・・・・」


 プシュー


神様「ほら、早く降りるぞ」トテトテ


――― 海ノ中学・教室


生徒A「どう? 見つかった?」

生徒B「保健室にはいなかったよ」


 少女「どうしたの? こんな時間まで」テクテク


生徒A「あっ、少女ちゃん」

生徒B「少女ちゃんもまだ学校に残ってたんだ」

少女「委員会が長引いて。 下校時間過ぎてるけど何かあった?」

生徒A「実はC子ちゃんがいなくて」

少女「C子ちゃん? 先に帰ったんじゃないの?」

生徒B「でも鞄はまだあるんだよね」

生徒A「今朝のこともあるし、ちょっと心配で・・・」

少女「・・・・・・」


生徒A「神ちゃんに相談してみる?」

生徒B「そうだね。 電話してみようか」

少女「まって」

生徒AB「?」

少女「私が電話する。 その間にC子ちゃんを探しましょう」

生徒A「探すって・・・ 校舎は全部探したけど当てでもあるの?」

少女「私はもう一度校内を探すから、2人は校外の近場を捜してみて」

生徒B「うん」

生徒A「分かった」

少女「何かあれば携帯で連絡を取り合いましょう」

生徒A「じゃ、私達外行ってくるね」タッタッタッ



少女「・・・・・・。 まさか・・・」ボソッ



――― ストロベリー大浴場


 チャポン


神様「いや~ 良い気持ちだねぇ~」ブクブク

巫女「この温泉は美容にとても効果があるみたいです」

神様「マジで!? んじゃ、体の内側も綺麗にしちゃお~」ゴクゴク

巫女「流石にそれは・・・ あまり飲まない方が良いかと」

神様「卵臭い・・・ そういえば温泉の元って・・・」ウエー

巫女「色はピンクでも、成分は温泉ですから」フフフ


神様「・・・巫女ちゃんはさぁ、どうして巫女になろうと思ったの?」

巫女「そうですね・・・ 私、将来は神社で働きたいと思っているんです」

神様「もう働いてるじゃん」


巫女「その・・・ 巫女としてではなくて、神社を管理できる立場になりたいと」

神様「あ~ 宮司って事ね」

巫女「まぁ・・・ そんな感じですね」

神様「今この業界は大変だよ~ 儲からないし」

巫女「そうみたいですね。 私はあまりお金には興味がないので」ハハハ

神様「まあ、困ったことがあったら何でも言ってね。 相談に乗るから」

巫女「その時はよろしくお願いします」ニコッ

神様「この町に立ち寄って巫女ちゃんと出会えたのも何かの縁だろうしね」

巫女「・・・・・・。 神ちゃん様は海ノ町で起こっている件でこちらに来たんですよね?」

神様「まぁね。 何か知ってたりするのかな?」


巫女「いえ、その・・・・ 私も見たことありますので」

神様「なるほど。 何か隠してそうな感じはしてたけど」

巫女「海ノ町では目撃情報は以前からありましたし。 特に最近は多いですから」

神様「まぁ、私的にはあまり触れたくないんだけどねぇ~」

巫女「モノノケは本当に悪い存在なんでしょうか・・・ 私にはそうは思えないんです」

神様「・・・・・・。 平安の末期、とある地から魑魅魍魎が出ると相談があってさ」

巫女「え?」

神様「私は実際にその地に足は運ばなかったから真偽は不明だけどね」

巫女「どうして、対処なさらなかったのですか?」

神様「対処・・・ か」

巫女「・・・・・・」


神様「私にはモノノケの気配は感じ取れなかったっていうのが正直なところ」

巫女「・・・・・・」

神様「私の知らない事柄に首突っ込んでも良し悪しの判断が出来ない」

巫女「神でも分からない事があるんですか?」

神様「そりゃあるさね。 犬ころが隠してるへそくりの場所とか、全く分からないし」

巫女「それは・・・ 分かってしまったらへそくりではなくなりますから・・・」

神様「それと同じ」

巫女「?」

神様「分かっていたら対処せざるを得ないから」


巫女「もし、神ちゃん様の知らない世界が存在していたとしたら・・・」

神様「したら?」

巫女「神ちゃん様は何かしらの対処をして頂けるんですか?」

神様「面白い質問だ」

巫女「・・・」

神様「今の私の気持ちとしてはやっぱり対処はしないかな」

巫女「それはこの国を治める神としてあまりにも無責任では?」

神様「へぇ~」

巫女「あっ・・・ すいません、失礼な発言でした」

神様「気にしないで。 ただ巫女ちゃんは一つ勘違いをしている」

巫女「勘違い?」


神様「神はこの国を治める存在じゃない」

巫女「え?」

神様「極論を言えば私が知ることが出来ない世界は私の管轄じゃない」

巫女「・・・随分と割り切られているんですね」

神様「ん~ その考え方もちょっと違うな」

巫女「?」

神様「まあ、私が守護する対象である人達に危害を加えるというなら話は別だけど」

巫女「・・・・・・」

神様「あともう一つ、対処をして欲しいと誰かの強い願いがあればその望みは叶える」

巫女「・・・・・・」

神様「まぁ、今は紙一重かな~」

巫女「・・・そうですか」


神様「さて、そろそろ上がりますか」サバッ

巫女「神ちゃん様・・・ お願いがあるのですが・・・」

神様「おや? 何かな?」


巫女「せめて前は隠して下さい///」

神様「そっちか~!」


巫女「・・・・・・」


――― ロビー


神様「うひょ~ このイチゴ牛乳うますぎ!」ゴクゴク

神使「ちょっと神様! 何本飲んでるんですか」

神様「だってこの自販機、手首に巻いた輪っか近づけるだけで出てくるんだもん」

神使「それ買ってるんですよ・・・ 後で精算されるんです・・・」

神様「気にすんなって。 あれ? 巫女ちゃんは?」キョロキョロ

主神「急ぎの用があるようで先に帰りました」

神様「そうなの?」

神使「もしかして、お風呂で巫女さんに引っ付いたりペロペロしたりしたんじゃないですか?」

神様「してねーよ! いつ私がそんな事したよ!」

神使「いつもしてます」

主神「何か携帯の留守電を聞いて慌てて飛び出していったようですが」

神様「ふ~ん・・・」



――― 夜・本殿


神様「Zzz」グガー

神使「神様、寝るなら部屋に戻ってから寝て下さい」

神様「ん~ Zzz」モゾモゾ

神使「あっ、ご神体を枕なんかにしてバチ当たりますよ?」ユサユサ

神様「当てられるもんなら当ててみろってんだよ」ムニャムニャ

神使「まったく・・・」



prrrr prrrr


神使「? 神様、携帯が鳴ってますよ」

神様「んだよこんな夜中に~」モソモソ

神使「夜中って・・・ まだ夜9時前ですが」

神様「もひもひ~ 皆のアイドル神ちゃんでしゅ」

 生徒A『あっ! 神ちゃん! 助けて!』

神様「その声・・・ どうしたの! 何事!?」ガバッ

 生徒A『海ノ町の神社! きゃ!』

神様「海ノ・・・ 今行く! 5分で着くから!」


神使「どうされたんです?」

神様「主神は!」

神使「隣町にお酒を飲みに行かれましたが」

神様「つかえねーなー!」タッタッタッ

神使「ちょ、神様!」

神様「犬ころはここで待機してろ! 何かあったら電話する!」

神使「わかりました・・・」


神使「っていうか、ご神体置いていって下さい!」


――― 海ノ神社前


 神様「お~い!」タッタッタッ


生徒A「あっ! 神ちゃん! 助けて!!」

生徒B「お化け! お化けが!!」


 変な生き物「ハロー ハロー」


神様「!? キテェー・・・」ゴクリ

キテェー「あなた失礼ね。 初対面なんだからさん付けで呼ぶのが礼儀じゃないの?」

神様「あっ、すいません・・・ っていうか声髙っ!」


生徒A「神ちゃん! 向こうからもたくさん来る!」

神様「神社の中に入って隠れよう」

生徒B「それが門に鍵がかかってて入れないの!」

神様「神力錠か・・・」ガチャガチャ

生徒A「しんりきじょう?」

神様「液晶画面付って、いつの間にこんな最新型を作ったんだよ・・・」

生徒A「神ちゃん! 左からも何か変なのが来てる! 囲まれちゃう!」

神様「至急の対策が要の料、神の名におきて鍵を開くことおきつ!」ポワッ


 “文法が正しくありません”


神様「ざけんなよ! 最高神の言うこと聞けや!!」ガチャガチャ

 カチャ

神様「開いた! 2人とも早く神社の中に!」

生徒AB「うん」タッタッタッ


――― 海ノ神社・本殿内


神様「よし! これで内側から鍵かけときゃしばらく持つかな」

生徒A「ねぇ神ちゃん、さっきの何?」

生徒B「やっぱりお化けかな?」

神様「う~ん・・・ キテェーさんをお化けと言って良いのか微妙だけど」

生徒A「どうしよう。 ここに隠れていてもすぐ見つかっちゃうよ」

生徒B「私達食べられちゃうのかな?」

神様「さ~て、どうすっかなぁ~」

生徒A「あれ? 神ちゃん何持ってるの?」

神様「ん? これは・・・ 枕だね。 さっきまで寝てたから持って来ちゃった」

生徒B「随分と硬そうな枕だね・・・ 何かの像に見えるけど」

神様「・・・・・・。 あのさ、二人に協力してもらいたいことがあるんだけど」

生徒A「協力?」

神様「ちょっと巫女してみない?」


生徒B「神ちゃん、こんな時に何言ってるの?」

神様「やっぱり神の力の行使には巫女が必要じゃん?」

生徒A「え? どういう事?」

神様「私だけだと力の暴走が心配でさ。 二人に中和をしてもらいたい訳よ」

生徒AB「?」

神様「私が神力解放したら2人で神力が暴走しないようにコントロールして」

生徒A「神ちゃんが何を言っているのか分からないんだけど・・・」

神様「すぐ分かるから。 二人とも少し眩しいかも知れないから気をつけてね」


神様「持ってて良かったご神体! ごめんね主神! 神力解放!!」


ピカー


生徒A「ちょ! なにこの光!?」

生徒B「眩しい!!」


シュー


神様「もう大丈夫。 目を開けて」

生徒A「ん・・・ って神ちゃん!?」

生徒B「え!? その格好・・・ 何?」


神様「装束。 まぁ着なくても良いんだけど雰囲気が出るし」

生徒AB「・・・・・・」

神様「あー・・・ 驚いちゃった?」

生徒AB「うん・・・」

神様「私は一応神宮の女神。 俗に言う神さまってやつ」

生徒AB「・・・・・・」ポケー

神様「お~い」フリフリ

生徒A「え? あの・・・ え!?」

神様「まぁ驚くのも無理ないよね。 今は基本的に神の存在を隠してるし」

生徒A「嘘でしょ・・・」

生徒B「信じられない・・・」


神様「と言うわけで、二人もお着替え~」ピカッ


ポワポワ


生徒A「え!?」

生徒B「何この格好!? いつの間に・・・」

神様「お、いいね~ 巫女服似合うじゃん」

生徒B「あっ・・・ 神ちゃんに後光が差してる・・・」

神様「期間限定だけど神付巫女になったからだね。 お付きの巫女には見えるんだよ」

生徒A「本当に神ちゃんって神さまなんだ・・・」


神様「さてと、それじゃちょっと暴れますか!」


生徒A「暴れるって何する気?」

神様「さっきも言ったけど、二人は私が神力解放している時に神力の流れを弱めてね」

生徒A「え!? ちょ、何それ!」

生徒B「流れってどうするの!?」

神様「大丈夫。 何とかなるさ」ポワポワ

生徒A「そんな急に言われても―――」

神様「モノノケめ! 私のマイフレンズ達に牙を向けたこと後悔するが良い!」ウヒャヒャ


 ボワー


神様「う~ん 久しぶりやね~ この感じ。 全力で行きまっせ!」ポワポワ


生徒A「すごい・・・ これが神さまの力・・・」

生徒B「神ちゃんの神力が体に流れ込んでくる・・・」

神様「さて、それじゃ発動しますか! 破魔の―――」


 バチン!


神様「痛ッ!? これは・・・ 外部からの対抗? 嘘だろ!?」


 バチン!


神様「うぎゃーん!」ズサー


 モクモク


生徒A「きゃっ!」バタッ

生徒B「うっ!」バタッ



 シュー


生徒A「痛たたっ・・・」

生徒B「何が起こったの? 電気ショックみたいなの感じたけど・・・」

生徒A「あれ? 神ちゃんは?」キョロキョロ

生徒B「・・・消えた」


 ギー


生徒AB「!?」クルッ


 ??「こんばんは。 2人ともケガはない?」


――― 某所


神様「うへぇ~ 凄え神力対抗だったな・・・ ん?」


 「ちょっと何あの子・・・」
 「おいおいマジかよ・・・」


神様「あれ? どこだココ??」キョロキョロ


警官「ねぇ・・・ 君何やってるの?」

神様「え?」クルッ


警官「こんな時間に駅前で・・・ その・・・ ちょっとマズいんじゃないの?」

神様「駅前? ってか、何でこんなに人だかりが・・・ 何かあったの?」

警官「まあね。 女の子が全裸で駅前にいたら人だかりはできるでしょ」

神様「何その痴女! どこ? 私も見たい」

警官「君だよ」

神様「?」

警官「駅前で全裸になっている女の子は君」

神様「・・・・・・。 んが!!」



――― 1時間後・交番


神使「本当にご迷惑をおかけしました」フカブカ

神様「もう全裸で外には出ません」フカブカ

警官「事件性はないようだし、今日の所は大目に見るけど気をつけて」

神使「温情ありがとうございます。 キツく言って聞かせますので」

神様「本当にごめんなさい」ペコリ



――― 帰り道


テクテク

神使「警察から電話が来たときはビックリしましたよ」

神様「私の方がビックリしたっちゅーの。 久しぶりに超恥ずかしかったわ」

神使「神様でも恥ずかしいと思うことがあるんですね。 ちょっと意外です」

神様「お前・・・ 私だって多少の恥じらい位は持ってるっつーの」

神使「多少・・・ それより一体何があったんです?」

神様「あ? 海ノ神社に行ったんだよ。 んで、気付いたら駅前で真裸だった」


神使「海ノ神社? それって、ご学友の方と関係があるのですか」

神様「そうだ! 助けに行かないと!」

神使「ご安心下さい。 みなさん山ノ神社の方にいますよ」

神様「は?」

神使「私が交番へ向かうのと入れ替わりで山ノ神社へ来まして」

神様「マジで!? 私と同じように飛ばされたのか? まさか真裸!?」

神使「いえ、歩いて来ました。 でも2人は巫女さんの格好をしてましたね」

神様「良かった~ 無事だったか」ホッ


――― 山ノ神社


 ガラガラ


神様「たでーま」

主神「あっ、神様。 お帰りなさい」

神様「私のマイフレンズ達が来てるって聞いたけど」

主神「先程みなさんお帰りになりました」

神様「帰った!? まさかJCだけで帰したのか?」

主神「いえいえ。 巫女さんにお願いしました」

神様「巫女ちゃんに?」

主神「はい。 こちらには巫女さんが連れてきたので」

神様「・・・・・・」


――― 社務所


神様「巫女ちゃんが連れて来たってどういう事?」

主神「海ノ神社の前でウロウロしている子達を巫女さんが見つけたようで」

神様「それで保護してここに連れてきたと?」

主神「はい。 巫女さんはそう言ってましたね」

神様「2人の様子は? 何か言ってたか?」

主神「2人? あ~ 巫女服を着ていた子達は何も覚えていないと言っていましたが」

神様「覚えてない?」

主神「私服を着た子の方は何か知っている感じでしたが、何も話してくれませんでした」

神様「ん? ちょっと待って。 2人だけじゃないの?」


主神「3人ですね。 同じ学校の子のようでしたが」

神様「誰だ? それ」

神使「神様の認識と食い違う点があるみたいですね」

神様「私が電話を受けて海ノ神社に行ったときは、クラスメイト2人だけだった」

神使「海ノ神社で何があったんです?」

神様「キテェー・・・ いや、キテェーさんに囲まれてた」

主神「キテェー?」

神様「キテェーさん。 ちゃんとさん付けしないとダメ」

主神「はあ・・・」


神様「んで、ちょっとヤバそうだったから神力使って破魔をしようとした」

神使「破魔?」

主神「珍しいですね。 神様がそんな大技を出すなんて」

神様「しかも結構本気なヤツ。 久しぶりだったから中和のために2人を巫女にたてたんだけど」

神使「なるほど。 それで2人は巫女服を着ていたんですか」

神様「その後は~・・・ そうだ! 私が神力解放したら打ち消されたんだよ」

主神「え!?」

神様「んで、気がついたら駅前で痴女してた」

主神「ちょっと待って下さい。それ本当ですか!?」

神様「本当。 久しぶりにビックリしたわ」

神使「確かに気がついたら駅前で全裸になっていたらビックリですよね」

主神「いえ、そちらはいつものことですので大して驚かないのですが・・・」

神様「おい」


主神「神様の破魔を打ち消すって流石に何かの間違いでは?」

神使「私にはよく分らないのですが、そんなに大変なことなのですか?」

主神「少なくとも神様の力を超える神力容量が必要ですから」

神使「神様の神力が弱かったという事は?」

神様「装束付けたしほぼMAX。 神体からの神力を極限まで圧縮して放出したから」

主神「神体?」

神様「うん。 丁度手元に神体があってさ、助かったよ」

主神「あの・・・ それって・・・」

神様「全部使っちゃった。 ごめーんね!」テヘッ

主神「うおっぷ!」バタリ


――― 翌日・学校


神様「おはよ~さん」トテトテ


少女「・・・おはよう」

生徒A「あっ、神ちゃんおはよう」

生徒B「おはよー 何か眠そうだね」

神様「まぁね。 C子ちゃんもおはよ~」

生徒C「・・・おはよう」


神様「2人とも昨日は大丈夫だった?」

生徒A「昨日?」


神様「あの後、うちの神社に来たって聞いたけど」

生徒B「神ちゃん何言ってるの?」

神様「えっ?」


生徒A「昨日は放課後に皆でサイセリアでケーキ食べてすぐ別れたじゃん」

神様「は?」


生徒B「そうそう。 神ちゃんカキプリンばっかり食べて」

神様「カキプリン!? サイセリアで?」


生徒A「え~ あれだけ食べておいて覚えてないの?」

神様「そんなもの食べたんなら絶対忘れないと思うんだけど」


少女「神ちゃん物忘れ酷すぎじゃない?」フフフ

神様「・・・少女ちゃんも一緒に行ったの?」

少女「酷いな~ あれだけ食べ比べしたのに」ニヤッ

神様「・・・・・・」


生徒C「あの・・・」

神様「ん?」

少女「どうしたのC子ちゃん」キッ

生徒C「・・・なんでもない」ブルッ

神様「そう・・・」


――― 昼休み・トイレ


生徒C「・・・・・・」ハァ


 神様「C子ちゃん?」ボソッ

生徒C「え?」キョロキョロ

 神様「そのまま鏡で身だしなみ整えてる振りでもしてて」

生徒C「・・・神ちゃん? どこ」キョロキョロ

 神様「隣のトイレ。 大丈夫、他から見えないから」

生徒C「・・・・・・」


 神様「昨日何があったか覚えてる?」

生徒C「記憶が曖昧で・・・」

 神様「うちの神社に来た?」

生徒C「うん」

 神様「少女ちゃん達とサイセリアに行った?」

生徒C「行ってない・・・ と思う」

 神様「覚えていることだけでも教えて欲しい」

生徒C「でも・・・」

 神様「もしかして、誰かに口止めされてる? 」

少女「・・・・・・」


 神様「人の記憶が改竄されてる。 正直に話して」

生徒C「でも、こんな話をしたらおかしいと思われるし」

 神様「大丈夫。 私にもハッハーが見えたんだから」

生徒C「・・・・・・。 実はモノノケがいっぱいいる世界に紛れ込んだような気がして」

 神様「昨日?」

生徒C「うん。 保健室で目が覚めたら知らない世界で・・・」

 神様「夢とかじゃなくて?」

生徒C「・・・・・・」

 神様「ごめん。 疑うようなこと聞いて」

生徒C「いいの。 私も夢なんじゃないかって思ってるくらいだから」

 神様「どうやってそこから帰ってきたの?」

生徒C「突然凄い光に包まれて」

 神様「・・・・・・」


生徒C「気がついたら海ノ神社前で・・・ 巫女服を着た2人がいて」

 神様「その時の2人の様子は?」

生徒C「何かボーッとしてた。 そこで山ノ神社の巫女さんに偶然会って」

 神様「なるほどね」

生徒C「やっぱり変だよね・・・ 少女ちゃんの言うように忘れた方が良いのかも」

 神様「もしかして、少女ちゃんに相談したの?」

生徒C「うん」

 神様「・・・・・・」


生徒C「少女ちゃんが―――」


 ギー

 女子生徒「でさぁ~」
 女子生徒「わかる~」


生徒C「誰かトイレに入って来たみたい」

 神様「放課後もう少し詳しく聞かせてもらっても良い?」

生徒C「うん」


 神様「・・・・・・」



――― 廊下


生徒C「やっぱり私おかしくなっちゃたのかな」ボソッ


 少女「そんな事ないよ」


生徒C「え!?」クルッ

少女「言ったでしょ? 早く忘れた方が良いって」ニコッ

生徒C「・・・少女 ・・・ちゃん?」

少女「ごめんね。 保健室で急に神ちゃんが来ちゃったから上手く処置できなくて」

生徒C「なに・・・ 言ってるの?」

少女「今度は大丈夫。 これで全部忘れられるから」

生徒C「な・・・ なにする気?」ブルブル

少女「すぐ終わるから」ニコッ

生徒C「え・・・ やだ・・・ やめ―――」


――― 放課後


神様「C子ちゅあ~ん」ダキッ

生徒C「うわ! 神ちゃん!?」クルッ

神様「さっきの話の続きなんだけど」ボソッ

生徒C「はなし?」

神様「モノノケちゃんのお話し」

生徒C「? そんな話したっけ?」キョトン

神様「・・・・・・」

生徒C「あっ、もしかしてカキプリンに乗ってたお化けみたいなお菓子の件?」

神様「いや、えーと・・・ 何というか・・・ うん」

生徒C「あれ何がモチーフなんだろうね。 私が思うに―――」

神様「・・・・・・」


――― 山ノ神社・社務所


神様「たでーま!」ズカズカ

神使「お帰りなさいませ。 カキプリン食べます?」

神様「お前もかよ! 皆してカキプリン言いやがって」

神使「今日は随分とご機嫌斜めですね」

神様「んがー! 先手打たれた!! ちきしょー! ぐやじぃー」バタバタ

神使「先手? もしかして少女さんにですか?」

神様「私好みのかわゆいオナゴだと思って甘く見過ぎていたようだ」

神使「神様が女子中学生にやられるなんて珍しいですね」

神様「あ? 私がJCなんかに負けるわけないだろうが」

神使「?」



 巫女「あっ、お帰りなさいませ神ちゃんさま」スタスタ


神様「・・・・・・。 ただいま」チラッ

巫女「そのカキプリンとても美味しいので神ちゃん様もどうぞ」ニコッ

神使「これ巫女さんが買ってきてくれたんですよ」

巫女「神ちゃん様が好物だと聞きまして」

神様「カキは好きだね、好物だし。 1日6食カキでも良い」

神使「1日6食って何ですか・・・」

巫女「飲み物がないですね。 今コーラ持ってきます」スタスタ


神様「・・・・・・」ハァ

神使「どうしたんです? 食べないなら私がもらっちゃいますけど」

神様「食うに決まってんだろ! 寄越せよ!」ガシッ

神使「あっ、そんな奪い取らなくても・・・」

神様「ん? これ・・・ 何?」

神使「言ったじゃないですか。 カキプリンです」

神様「カキって果物の柿かよ・・・」

神使「まさか海にいる牡蠣が入ってると思ったんですか?」

神様「だって私の好物だって」

神使「カキ違いですね」

神様「・・・・・・」


神使「どうされました?」

神様「巫女ちゃんは何で私の好物を知ってるんだ?」

神使「さぁ、神様がお話になったのでは?」

神様「・・・・・・」

神使「何か気になることでも?」


神様「あ~ そういう事か・・・」

神使「?」

神様「こりゃ面倒だな。 早々に手を打つか」


――― 夜・本殿


主神「遅くなりました」テクテク

神様「おぉ、巫女ちゃんは?」

主神「帰り支度中です。 あと15分もあれば終わるかと」

神様「よし、んじゃそれまでにで終わらそう」

神使「巫女さんには内緒のお話ですか?」

神様「今回の件の主犯候補がいたらマズいだろ?」

神使「え? どういう事です?」

主神「まさか巫女さんが犯人って言ってます? 少女さんではないのですか?」

神様「まぁまぁ、それを補強するために2人に聞きたいことがあるんだわ」


神使「私達にですか?」

神様「まず主神。 お前、私達がここへ来る前に巫女ちゃんにこの件の話しをした?」

主神「当然してます。 神様達に滞在して頂く部屋や食事の都合もありますし」

神様「もうひとつ、巫女ちゃんと一緒に海ノ町へ行ったことはあるか?」

主神「隣町ですか? う~ん・・・ 記憶にはないですね。 最近は海ノ町方面からの依頼もないですし」

神様「依頼か・・・ いつ頃から仕事が来なくなった?」

主神「3年くらい前からパッタリです」ハァ

神様「巫女ちゃんがこの神社に来た頃からだな」

主神「まさか巫女さんが隣町からの依頼を断っていると!?」


神様「ん~ その話は一旦おいておこう。 次はイチゴ温泉事件」

神使「イチゴ温泉って、先日みんなで行った場所ですよね」

神様「そう、最初は海ノ町にある銭湯に行く予定だった」

神使「確か、イチゴ温泉を提案したのは巫女さん」

主神「イチゴ温泉に何かあるんですか?」

神様「いや、問題は行く途中の電車の中での出来事」

神使「神様が不思議な力を感じたという件ですか?」

神様「あの時、巫女ちゃんはトイレに行っていた」

主神「それが何か?」

神使「トイレ・・・ あっ」ハッ


神様「何だ」

神使「関係があるのか分からないですが、あの電車トイレが付いていなかったんです」

神様「あ?」

神使「私が後ろの車両を見たときにはトイレはどこにもありませんでした」

主神「巫女さんは実際にはトイレに行っていないと?」

神使「気になってトイレに行ったのかを聞いたんですが、行ったと言っていたんです」

神様「・・・・・・。 あの電車が走っていたのは山ノ町だけだよな」

主神「はい。 ほんの一瞬だけ海ノ町を横切る区間はありますが」

神様「ほぉ」

主神「確か、イチゴ温泉の一つ前の駅辺りが海ノ町です」


神様「ちょうど巫女ちゃんがトイレに行って変な力を感じた辺りだな」

神使「もしかして、巫女さんが海ノ町へ入ると何かが起こるという事ですか?」

神様「逆。 私達が入ると何かが起こる」

主神「私達が?」

神様「正確に言うと、神力を持つ者が海ノ町に入ると何かが起こる」

神使「何が起こるのですか?」

神様「神力共鳴による結界異常」

主神・神使「?」

神様「モノノケだよ。 それを打ち消すために―――」



 トントン


一同「!?」クルッ


 ガチャッ


巫女「それでは、私はこれで失礼させて頂きます」ペコリ

主神「ご、ご苦労様でした」

巫女「社務所の方は鍵をかけておきましたので」

主神「ありがとうございます。 お気を付けてお帰り下さい」

巫女「はい。 神ちゃん様と神使様もご苦労様です」ペコリ

神様「ばいばーい」

神使「ご苦労様でした」ペコリ


 ガチャッ



主神「もしかして話を聞かれたでしょうか・・・」

神様「聞かせたんだよ」

主神「え!?」


神様「追うぞ」

神使「追うって、巫女さんをですか!?」」

主神「着替えてきます」

神様「主神はここにいろ。 私と犬ころで追うから」

主神「はあ。 では、お気を付けて」


――― 海ノ町・商店街


 ガヤガヤ

 巫女「コロッケとアジフライ2枚ずつ下さい」

 店主「はいよ」


神様「なぁ、あれどう思う?」

神使「お夕飯の買い物のように見えますが」

神様「あんなに可愛い子がアジフライは無いだろ」

神使「そうでしょうか? 良いチョイスだと思いますが」

神様「お前が犬ころである所以、それは私との絶望的な認識の差」

神使「・・・ちなみに、神様の思考は」

神様「私ならウズラの卵揚げ10個にする」

神使「聞いた私がバカでした。 すみません」

神様「分かればよろしい」



 少女「かーみちゃん」


神様「・・・」チラッ

少女「こんばんは」ニコッ

神様「おやおや、買い物? こんな所で偶然だね」

少女「偶然だと思う?」

神様「いいねぇ~ その全て知ってますが何か? 的な態度。 全知全能の神のつもりですか?」

少女「あはは。 だって、いかにも怪しい挙動だったんだもん」

神様「それはお互い様じゃない? 私達が海ノ町に入ってからずっと付けたくせに」

少女「・・・・・・」

神様「冗談だって。 そこの惣菜屋さんでコロッケとアジフライでも買おうと思ってさ」

少女「なるほど。 今その2つを買った女の人を付けてたんだね」ニコッ

神様「駆け引きは面倒だし、用件を聞きましょうか」

少女「・・・・・・」


神様「何なら場所を変えてもいいけど、サイセリアにでも入―――」

少女「お願いします。 この町から出て下さい」フカブカ

神使「しょ、少女さん!? 急にどうしたんですか?」

神様「そうきたか~ これは想定外」アチャー

少女「神の力を持った者がこの町に入って欲しくないの」

神様「神力を持った者は海ノ町に入ってくれるなって事?」

少女「そう」

神様「それは、少女ちゃんからのお願い? それとも他の誰かからの伝言?」

少女「私からのお願い」


神様「う~ん、残念だけどその願いは叶えられないなぁ」

少女「どうして?」

神様「ん~ まず、願いを受ける前提としての条件が整っていないから」

少女「お賽銭のこと? もし祈願が必要ならすぐにでも山ノ神社へ伺うよ?」

神様「そうじゃないって」

少女「じゃあ、どうしたらお願いを聞いてもらえるの?」

神様「だから、そもそも私と犬ころが海ノ町を出て行く理由がないし」

少女「やっぱり神って人の願いを叶えてくれないんだね。 がっかり」ハァ

神様「そうじゃなくて、私も犬ころも神力は持ってないからその願いは叶えられないんだよ」

少女「え?」


神様「私達の神力の有無も分からずにそんな事を言ったの?」

少女「・・・・・・」

神様「普通のJCなんだから、そんな事に首を突っ込まなくても良いんじゃない?」

少女「っ!」キッ

神様「理由は知らないけど、深追いしない方が良いと思うよ?」

少女「あなたに私の気持ちなんか分かるわけない!!」

神様「・・・・・・」

少女「あっ、大声出してごめん」

神様「早朝、海ノ神社本殿で結界解除の儀を行う」

少女「え!?」


神様「この町に張られた結界は私好みじゃない」

少女「だめ・・・ そんな事をしたらこの町が!」

神様「帰るぞ、犬ころ」トテトテ

神使「え? ちょ、神様」

少女「そんなに全裸で飛ばされたことを怒ってるの!?」

神様「違うし! 怒ってないし! 全然気にしてないし! 恥ずかしくなかったし!!」

神使(かなり恥ずかしかったんですね・・・)


巫女「・・・・・・」コソッ


――― 帰り道


神使「巫女さんの方は追わなくても良いんですか?」

神様「目的は達成できたし。 どうせ全部聞こえてただろ」

神使「そうですね。 あれだけ大声で話せば」

神様「さてと、忙しくなるぞ~」

神使「この後はどうされるんです?」

神様「決まってるだろ。 神ちゃんショーの開幕だよ」

神使「うっ」

神様「ここからはずっと神ちゃんターンだ!」ウヒャヒャ

神使「巫女さん、少女さん、どうかご無事で・・・」


――― 翌日・早朝


神使「神様、神様」ユサユサ

神様「ん~ 何だよ・・・ まだ外暗いじゃん」ムニャムニャ

神使「そろそろ準備した方が良いのでは?」

神様「あ? 何をだよ」

神使「海ノ神社に行くんですよね?」

神様「いかねーよ面倒くさい。 いつもの時間に起こして」モゾモゾ

神使「えぇっ・・・ 少女さんに行くって啖呵切ったじゃないですか・・・」

神様「今日行くとは言ってないし」ムニャムニャ

神使「何て最低な宣戦布告・・・」


――― 朝・社務所


ガラガラ

巫女「おはよございます・・・」フラッ

主神「おはようございます巫女さん。 って眠そうですね」

巫女「え!? あっ、すいません。 少し夜更かしをしてしまいまして」

主神「調子悪いならお休みしてもらっても」

巫女「お気遣いありがとうございます。 午後何も無いようでしたら早めに―――」

主神「あっ、今日は夕方に業者と年末用の限定おみくじの打ち合わせがありますので」

巫女「・・・はい」


神様「おっ、巫女ちゃんおはよ~。 学校行ってくるねー♪」トテトテ


巫女「・・・・・・。 行ってらっしゃいませ」


――― 学校


 神様「おはよ~」トテトテ

生徒達「おはよー」

少女「・・・・・・」ボー

神様「おや? 少女ちゃんは寝不足ですか」

少女「・・・・・・」ジトー

生徒A「今日の1限は国語の小テストだからね」

神様「なるほど。 それで夜遅くまで・・・ いや早朝から頑張っていた訳ですか」ニヤッ

少女「白々しい・・・」ボソッ

神様「私は古文得意だから。 100点間違いなし!」ウヒャヒャ

少女「私も得意だし」

神様「ほぉ~ これはどちらが上か白黒付けようじゃないですか」

少女「っ!」キッ


――― 夕方・社務所


神様「たでーまー」トテトテ

主神「今日は早い戻りですね」

神様「お小遣い尽きちゃって買い食い出来ないし」

巫女「・・・・・・」ボー

神様「巫~女ちゃん!」ダキッ

巫女「え? あっ、お帰りなさいませ! すいません、ボッとしてました」

神様「寝不足? ゆっくりと休んだ方が良いよ?」

巫女「ありがとうございます。 今日はゆっくりと家で休みます」

神様「私もちょっと寝てこようかな」

主神「もう寝るんですか!?」

神様「明日は早いし。 色々と準備もあるしね~」トテトテ

巫女「・・・・・・」


――― 翌朝・社務所


 ガラガラ


巫女「おはようございます」ヨロヨロ

主神「おはよ・・・ って、巫女さん! 大丈夫ですか?」

巫女「お気遣いなく・・・」

主神「休まれた方が良くないですか?」

巫女「午後に地鎮祭があるので、巫女が居ないと格好が付かないと思って。 でも―――」

主神「それもそうですね。 今日も一日頑張りましょう」

巫女「はい・・・」ガクッ


神様「おっ、巫女ちゃんおはよ~。 学校行ってくるねー♪♪」トテトテ


巫女「・・・・・・。 行ってらっしゃいませ・・・」ハァ


――― 学校


 神様「おっはよ~」トテトテ

生徒達「おはよー」

少女「・・・・・・」グテッ

神様「おや? 今日も少女ちゃんは寝不足ですか」

少女「うるさい。 話しかけないで」

神様「ちゃんと寝ないとお肌荒れちゃうよ?」ニシシ

少女「・・・誰のせいだと思ってるのよ」ボソッ


先生「おーい、席に着け~ 昨日のテスト返すぞ」


 ガヤガヤ


先生「まずは少女さん」

少女「はい」スタスタ

先生「凡ミスなんて珍しいな。 でも良い点数だ」


 お~


少女(92点!? しまった! レ点を見逃した・・・ しかも2カ所も)シュン

先生「次は神宮さん」

神様「は~い♪」トテトテ


先生「頑張ったな。 はい」ペラッ

神様「ん? 先生、なんでここ×なの?」

先生「どこだ?」

神様「この作者の気持ちを答えなさいってとこ」

先生「そこは“わざわざ遠くまで会いに来てくれた恋人の事を思っている”が正解だな」

神様「いやいや“おはぎを持ってきてくれた事を喜んでいる”だって」

先生「どこの文脈からおはぎが出てくるんだよ」

神様「私が言うんだから間違いないでしょ。 作った本人なんだし」

先生「そこまで妄想して作者の気持ちを導き出さなくてもいい」

神様「ちぇ~ あいつの持ってくるおはぎは超がつくほど美味しかったのに」トテトテ


神様「あ~あ。 残念」グテッ

少女「一応聞いておくわ。 何点だった?」

神様「98点」ニヤッ

少女「っ!」

神様「わりーね」ウヒャヒャ



――― 夜・本殿


 ギー

主神「遅くなりました」テクテク


神様「お~ お疲れ」

神使「遅くまでご苦労様です」

神様「どうだった?」

主神「ようやく見つけました。 写真も撮ってきました」スッ

神様「間違いない、これだ。 どこにあった?」

主神「逆側の町の境界です。 遠くて大変でした」

神使「これで準備は整ったわけですね」

主神「いよいよ決行です」コトッ

神使「? 主神さま、その牛の置物は?」


主神「これですか? 可愛いですよね、牛の置物。 うちの新しいご神体です」

神使「ご神体?」

神様「私からのプレゼント。 この前神力使っちゃったからそのお詫び」

主神「私、牛乳が好きなので嬉しいです。 中々お目にかかれない一級品とお見受けしました」

神使「神様いつの間にそんな物を・・・」

神様「学校の帰りに100均で買った」

主神「ひゃ!? え? 有名工芸家の作とかではないのですか!?」

神様「私がそんなに金持ってるわけ無いだろ」

主神「・・・・・・」

神様「神力の方は少し溜ってきたみたいだな」スリスリ

主神「えぇ、まぁ。 ここ数日合間をぬって祈願成就を頑張りましたから」


神様「で、巫女ちゃんの様子は?」

主神「それはもうフラフラですね。 先程も帰り際に鳥居に頭をぶつけてました」

神使「だいぶ睡眠不足みたいですね」

主神「ちなみに、少女さんの方は?」

神様「向こうはイライラ全開で尖ったナイフになってる」

神使「若いですから肉体的な疲労よりもイライラが先に出てしまうんでしょうね」

神様「そんな状態でも学校に来てテストも良い点数取って中々ガッツはあるぞ」

神使「お話を聞いている限りでは負けず嫌いの気質があるようですが」

神様「ん~・・・ どうかなぁ」

主神「?」


神様「ま、それは置いておこう。 作戦を次のステップに進めるぞ」

神使「結構危うい作戦のような気もしますが」

神様「大丈夫。 間違いなく上手くいくって」

神使「だと良いのですが」

神様「それよりさぁ、前から気になってたんだけど天井のヤツは何だ?」

主神「天井? あ~ シミでしょうか?」ジー

神様「」ゴソッ

神使「・・・・・・。 神様、何を―――」

神様「ソイヤッ!」ゲシッ

神使「痛い!!」

主神「どうされました神使さん?」


神様「も~ 神使君はシミがお化けに見えちゃうなんてお可愛いこと」オホホ

神使「・・・・・・(神様、ご神体をすり替えましたね・・・)」スリスリ


主神「建物自体は結構古いですし、気になるようでしたら隠しますが」

神様「大丈夫大丈夫。 それより、このご神体そこに戻しておくぞ」

主神「ありがとうございます」


神様「んじゃ、明日は各々作戦準備だけに専念してくれ」

主神「はい!」


神使「・・・・・・(神様は何を企んでいるのやら)」ハァ

面白そうだよね~
やってみようかなぁ


――― 翌日朝・山ノ神社


巫女「おじゃまします」フラフラ

主神「え?」

巫女「あっ、すみません。 こんばんは」

主神「まだ朝ですが・・・ だいぶお疲れのようですね」

巫女「とても良いお布団日よりですね。 羽毛がいいです」フラフラ

主神「・・・・・・」


神様「おっ、巫女ちゃんおはよ~。 学校行ってくるねー」トテトテ


巫女「今日の神ちゃん様の巫女は食べ放題なんですね」フフッ

主神「・・・・・・(怖い)」


――― 学校


神様「おっはよ~」トテトテ

生徒A「あっ、神ちゃん」オロオロ

神様「どしたの?」

生徒A「あれ・・・」チラッ


生徒B「ねぇ少女ちゃん、大丈夫?」

少女「・・・・・・」ボー

生徒B「目の下すごい隈だよ? ちゃんと寝てる?」

少女「結界符いっぱい食べてきたから大丈夫」ボー

生徒B「けっ!? それ何?」


生徒A「少女ちゃんが色々とヤバいの」

神様「みたいだね」



――― 放課後・教室


神様「――うよ、凄い――しょ」

生徒A「凄―― ねぇ、それ――うやってるの?」


少女「ん・・・」ウトウト

少女(寝ちゃってた・・・ もう放課後・・・)


生徒A「神ちゃん凄い!!」

神様「でしょ? これは神の力! 神が扱える神力なのだよ!」ウヒャヒャ


少女「(神力・・・) ・・・・・・神力!?」ガバッ



生徒A「あっ、少女ちゃん起きた?」

生徒B「少女ちゃんも見てよ、神ちゃん凄いの」


 フワフワ~


少女「!?」

神様「消しゴムが空中を浮いてま~す」

少女「神ちゃん・・・ あなた、まさか・・・」

神様「神の力、絶賛開放中!」

少女「そんな・・・(結界を張らないとモノノケが!)」ゴソゴソ

神様「おや、何かお探しですか?」ヒラヒラ


少女「!? そのお札・・・ 何で神ちゃんがそれを!」

神様「床に落ちてた」

少女「返して!」

神様「良いけど。 いらない物だと思って落書きしちゃった。 ごめ~んね」

少女「っ!」タッタッタッ


生徒A「少女ちゃん!? どこ行くの?」

神様「きっとトイレだよ。 ずっと寝てたから」

生徒B「あっ、この消しゴム真ん中に透明な糸が通ってる」

神様「バ~レ~た~か~」テヘッ


――― 山ノ神社


巫女「・・・・・・」ウトウト


神使「巫女さん、ご苦労様です」


巫女「!? 神使様!」ハッ

神使「大丈夫ですか?」

巫女「すみません。 ボーとしてしまいました」

神使「主神様はお出かけなので、早めに上がって頂いて大丈夫ですよ」

巫女「出かけ・・・ え? どちらに」


神使「急な地鎮祭のご依頼があって、海ノ町まで行ったようです」

巫女「海ノ町!? どのくらい前ですか!」ガタッ

神使「30分ほど前ですね」

巫女「そんな・・・」

神使「海ノ町の商店街で16時開始と伺っています」

巫女「(あと5分!?) すみません! 私ちょっと行ってきます!」タッタッタッ


神使「あっ! 巫女さん!!」

神使「・・・・・・。 さて、私も出かけますか」

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