ボーンゴーレム娘「人間の子供拾ったっす」ドラゴン「お前ざっけんなよマジで」 (591)

赤子「ううー?」キョトン

ドラゴン「おまっ……いやお前マジ何してんの?何?さらって来たん?」

ボンゴレ「違うっすよ。なんかこう、山歩いてたら……見つけてー」

ドラゴン「見つけてたまるかよこんなもん」

赤子「だー!だー!」

ボンゴレ「あー、そういやこの子の近くに、馬車の残骸があった気がしますが……まあ関係ないすよね」

ドラゴン「絶対それ関係あるだろぉ」

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ドラゴン「っていうかこんな生き物、俺の住んでる所に連れて来んなよ!どうしろっつーんだ!」

ボンゴレ「アンタ一応この山のヌシじゃないすか!ヌシの住む洞窟に連れて来なくて、何処に連れてけっつーんす!?」

ドラゴン「ヌシじゃねーよ、俺はドラゴンにしては若造だっつの。まだピチピチの200歳だ」

ボンゴレ「あぱー、ドラゴンの年齢感覚が理解できないー」

ドラゴン「じゃあまあ、都合の良いヌシ命令だ。元いた所に捨ててこい」

ボンゴレ「血も涙もないすね!?」

ボンゴレ「可哀想じゃないすかー!アンタ赤い血流れてんすかー!?」

赤子「だー!」

ドラゴン「血が流れてないお前に言われたくないなぁ」

ボンゴレ「いや一部流れてるすよ?ほら、顔とか胸とか、肉ある所は」

ドラゴン「けどお前、胸から下はほとんど骨じゃん」

ボンゴレ「食べても太らないって凄くないすか?モテモテじゃないすか?」

赤子「あう、あう」

ドラゴン「いや俺、人間が痩せたがる意味がよく理解出来ないんだよな」

ボンゴレ「えー?皆がうらやむスレンダーボディなのになー」

ドラゴン「スレンダーっつうか、骨じゃん。お前ボーンゴーレムじゃん。……なんでボーンゴーレムなのに顔とか肉ついてんだよ」

ボンゴレ「まあまあ、身体の事は置いといて……ほら、アタシ元人間っすからー、こーいうの見過ごせないワケなんすよ」

赤子「あいー」

ドラゴン「見過ごせないて……え?どうすんのこれ?」

ボンゴレ「そりゃあ……親探すとか?」

ドラゴン「……馬車の残骸があったんだよな?」

ボンゴレ「あー、あったっすねー。なんか崖から落ちたみたいで」

ドラゴン「……そこに、あー……人の死骸とか、なかった?」

ボンゴレ「えっと、男と女の死体がジゴクハゲタカに食い散らかされてたっすねぇー」

ドラゴン「100パーそれじゃーん……」

赤子「あうー?」

ボンゴレ「え、あれが親だったんすか?うわー……もうカケラも残ってないすよ」

ドラゴン「家族のいない、みなし子か……」

赤子「だあ!だあ!」

ボンゴレ「可哀想に……けど、親がいないとなると……どうしましょ?」

ドラゴン「面倒くせえな……食うか?」

ボンゴレ「絶対ダメっす!」サッ!

赤子「あいー?」

ドラゴン「んな事言ってもお前!人間とか俺ら魔物の敵だろうが!大きくなる前に殺すに限る!」

ボンゴレ「何の罪もない子供殺す訳にゃーいかないっすよ!やーっと首すわったくらいの赤ん坊っすよ!?こんなん殺してどうするんすか!」

ドラゴン「だからってお前コイツどうする気だよ!もう親はいないんだぞ!?そんなの生かしといて何になる!」

ボンゴレ「そうかもしんないすけど!アタシは見過ごせないんすよっ!ドラゴンさんには優しい心ってモンが無いんすか!?」

ドラゴン「何も出来ないのに可哀想可哀想言うのは、優しい心って言わねえよ!半端な優しさは残酷だぞ!?」

ボンゴレ「だからーっ!アタシは半端じゃなく全力で――……!!」

ドラゴン「何を!テメェはいつもノーテンキでアホな事ばっか――……!!」

ギャーギャー!!

赤子「……ふ……ふえ……」

赤子「ふええええええ……!!」

エーンエーン!!

ボンゴレ「あぱー……ドラゴンさんが騒ぐから、泣いちゃったじゃないすか!」プンプン

ドラゴン「俺のせいじゃあねえだろ……あーくそ、うるさいガキだな。食うぞ」

ボンゴレ「食わないでくださいっす!」

赤子「あーん!あーん!」ヒックヒック

ドラゴン「……おい、何でもいいから、泣き止ませろよ。やかましくてかなわんぞ」

ボンゴレ「……いや、そんな事言われても……どうすりゃいいんすか?」

ドラゴン「…………」

ボンゴレ「…………」

赤子「えーん!えーん!」ビャービャー!

ボンゴレ「えーっとえーっと!い、一発……一発ギャグ!一発ギャグやります!」

ドラゴン「一発ギャグだと?」

赤子「ふえ?」

ボンゴレ「アタシの首をですね、ここをこうして……こうすると……!」

ボキッ!ゴキッ!

ボンゴレ「はーいっ!アタシの首が……取れちゃいましたーっ!」スポン!

ジャーン!

ドラゴン「怖いわ!!子供泣き叫ぶわッ!!」

ボンゴレ「え!?こ、怖いすか!?すごくないすかこれ!?」

赤子「…………」ジーッ

赤子「お……おおー?……アハー!キャッキャッ!」ニコニコ

ドラゴン「おお……?」

ボンゴレ「あっ……!」パアッ

ドラゴン「……笑ったな」

ボンゴレ「笑ったっすねぇ」ニコニコ

ドラゴン「……なかなか神経ズ太いガキだ」

ボンゴレ「どーしてそーいうイヤな感じで言うんすか、もうっ」

ボンゴレ「笑うと可愛いっすねぇ。美人さんですよ、この子」

ドラゴン「……可愛いかぁ?」

ボンゴレ「可愛いっすよー!まあアタシには負けますが」ドヤァッ

ドラゴン「ないない、それは無い。……っていうか美人って、こいつメスなのかよ」

ボンゴレ「女の子っすよー。アタシ見ましたもん。ついてませんでした」

ドラゴン「……メスは乳臭くてマズいんだよなぁ。臭くなる前に食った方が……」ブツブツ

ボンゴレ「どんだけ食欲旺盛なんすか……」

ボンゴレ「そんな事よりドラゴンさん。アタシ……決めましたよ」

ドラゴン「は?……何を?」

赤子「あいー?」

ボンゴレ「アタシ……この子、育てます!」

バン!

ドラゴン「……あのな、ネコの子を拾った訳じゃあないんだぞ」

ボンゴレ「わかってますよ!けど、親がいない子なんて、放っとけないじゃないすか」

ドラゴン「はあ……」

ボンゴレ「大丈夫っすよ!立派な魔物の王に育て上げますから!」

ドラゴン「無茶苦茶言いやがるなーお前」

ドラゴン「まあ、そういう事ならガンバレ。俺の知ったこっちゃあねえわ」

ボンゴレ「何言ってんすか。ドラゴンさんも手伝うんすよ!」

ドラゴン「……は?」

ボンゴレ「だってアタシ、子育てとかやった事ないっすし」

ドラゴン「俺だって無いわ」

ボンゴレ「え?」

ドラゴン「『え?』ってお前……」

ボンゴレ「つまり……え、もしかして……アレすか?」オソルオソル

ドラゴン「……何だよ」

ボンゴレ「ドラゴンさんは御年200歳だというのに……童貞だと」オソルオソル

ドラゴン「恐るおそる何言ってんだテメェ」

ドラゴン「だから俺はドラゴンの中では若者で……っていうか子育てとかメスの仕事だろ!俺の知ったこっちゃあねえ!」

ボンゴレ「あぱー、ドラゴンさんダメ親父の考えっすよーそれ。っていうか女を敵にまわしてますよ」

ドラゴン「うるせえ」

ボンゴレ「いやー、しかし、ドラゴンさん……」

ドラゴン「今度は何だ」

ボンゴレ「……どうしましょう、この子……」

ドラゴン「……さあ……」

赤子「うー?」

…………

変なボーンゴーレム(肉付き)とドラゴンの子育て話です
3日~1週間に一回を目安にやっていきたいです

目指せエタなし

>>6
のスレはもう書かないの?

>>25
理由を書くととても長くなりますが世界観ミスったとしか
あと今更戻れないってのもあります

…………

赤子「あーん!!あーん!!!」ビエエーッ!!

ビリビリビリ……!!

ドラゴン「……おい」

ボンゴレ「はいはい何っすか!?今話してる場合じゃないっすよ!ほーら赤ちゃん、首すぽーん!すぽーん!!」カポンカポン

ドラゴン「さっきから全然泣き止まねーじゃんか!なんだコイツは!!」

ボンゴレ「知らないっすよーアタシに言われても!ほら、お姉ちゃん腕も取れるんすよー!」スポンスポン

赤子「うえーん!!えーん!!」ギャー!

ビリビリビリ……!!

ドラゴン「おい、お前ら俺の洞窟から出ていけ。反響してえらい事なってる」

ボンゴレ「はあっ!?何ハクジョーな事言ってんすか!?ここ出たらアタシらどこで雨風凌げっつーんす!?」

ドラゴン「お前死んでるから雨風関係ないだろ」

ボンゴレ「アタシは良くてもこの子が死ぬっすよ!しばらくここに住むっすからね、アタシら」

ドラゴン「お前……お前ホントふざけんなよ……俺の安息の地を……」ブツブツ

ボンゴレ「ブツブツうるさいっすねー。広いからいいじゃないすか!それよりこの子どうしましょ?全然泣き止む気配ないすよ」

ドラゴン「だから、泣き止まないなら食うっつってんだろ」

ボンゴレ「食うなっつってんすよ、アタシはっ!!」

ボンゴレ「……ん?『食う』?」ハッ

ドラゴン「どうした?お前も食いたいのか?」

ボンゴレ「んな訳ないでしょ!あのっすね、もしかしたらこの子……」

赤子「うえーん!えーん!!びえー!!!」オンギャー!

ボンゴレ「……お腹がすいてるんじゃないすか?」

ドラゴン「何、ハラが?」

ボンゴレ「ええ。この子を拾った時太陽は真上にありましたが、今はもう夕焼け空ですし」

ドラゴン「……ハラが減ったならそう言えばいいだろうに」

ボンゴレ「喋れないすから。赤ん坊なんで」

ドラゴン「テレパシー呪文とか使えばいいのに。風魔法の応用で」

ボンゴレ「みんなが皆ドラゴンさんみたいに呪文使える訳じゃあないすからね?」

ドラゴン「とにかく、何か食わしたらいいんだな?……人間のガキって何食うんだ」

ボンゴレ「人間って何でも食いますけど……赤ちゃんだとアレでしょ」

ドラゴン「生肉のミンチか」

ボンゴレ「なんでそうなるんすか!?」

ドラゴン「……産まれたての頃は消化能力低いから、母親が噛んで柔らかくした肉を与えるんだが……」ションボリ

ボンゴレ「うん、それドラゴン系の魔物限定すね」

ボンゴレ「じゃなくてー、赤ちゃんだったらミルクでしょ!おかあさんのおっぱい!」

ドラゴン「ミルク……お前おっぱい出るのか?」

ボンゴレ「ででで、出る訳ないっすよ!何言ってんすかマジで!」

ドラゴン「いやお前……それならこいつのミルク、どうすんだよ……」

ボンゴレ「……」

ドラゴン「……」

赤子「えーん!!えーん!!」ビヤー!

ボンゴレ「ちょちょちょ、ちょーっと待ってて下さいっ!」

ドラゴン「待……は?」

ボンゴレ「アタシが山で、ミルク探してきます!」バーン!

ドラゴン「……いやお前何言ってんの?」

ボンゴレ「山は広くて色んな魔物が住んでるっすから……きっと、ミルクが出る魔物もいるはずっす!!」

ドラゴン「おい落ち着け。そう都合良くいく訳ねえから」

ボンゴレ「じゃ!少しの間その子お願いしますよーっ!」バビューン!

ドラゴン「おい待……お前、おいーッ!!」

ドラゴン「……え、俺どうすりゃいいの……?」

赤子「あーん!うああーん!!」ギャー!

ドラゴン「……」

赤子「ひっぐ!うえ、うええ……!」

ドラゴン「……か、風の魔法の応用で……『風精シルフィードよ。我の下に集いて奇跡を呼び起こしたまえ』……」ブツブツ

ブワッ!

ドラゴン「ほ、ほーら!高いたかーい!」

フワフワ……

赤子「うえ?……おー、おー……」パチクリ

ドラゴン「あっちょっと泣き止んだ!俺すげえ!!」

赤子「おー……キャッキャッ!あはー!」

ドラゴン「よっしゃこの調子でやってやるぞ俺!頑張れ俺!!」

…………

…………

バタバタバタ

ボンゴレ「連れてきましたよーっ!!」ズザザーッ!

ドラゴン「遅ェよこの野郎!もう魔法のレパートリー無いわ!!」

ドパーンドパーン!

赤子「わー!キャッキャッ!」

ボンゴレ「わ、なんですかそれ?花火?」

ドラゴン「火の魔法と土の魔法の応用だ。土の成分を空中で燃やして……ってんな事ァどうでもいいんだ。これやめたら泣くから、早くメシ食わせろ!」

ボンゴレ「ふふふ、任せて下さい。んじゃ、お願いしまーす」グイッ

ミノタウロス娘「あ痛たったたた!何しやがるこのホネ野郎っ!無理矢理引っ張ってきやがって!!」ジタバタ

ボンゴレ「見てくださいドラゴンさん!この乳!すっごいおっぱい出そうでしょ!?」

ドラゴン「胸の大きさで判断してんじゃねえよ!!!」

ドラゴン「ミノタウロス……牛と人の特徴を持つ魔物か……たしかオスは牛の頭で、メスは人の頭にツノが生えてるんだったか」ジロッ

ミノ娘「う、うぎゃー!?どどど、ドラゴンっ!?やめろ!おれなんか食っても美味くないぞー!?」

ドラゴン「いや食うつもりは無いが」

ボンゴレ「いやいやドラゴンさん、そこは『食われたくなかったら乳を出せー』くらい言わないと」

ドラゴン「変態じゃねえか」

ミノ娘「こ、こんな筋肉だらけのおれの身体が目当てなのか……?」ガクブル

ドラゴン「ちょっと黙っててくれる?」

ドラゴン「乳じゃなくて、母乳だ。おっぱい」

ミノ娘「え、ええー……ドラゴンって、母乳が主食なのか?」

ドラゴン「んな訳ねえだろ」

ボンゴレ「そうっす。主食じゃなくて、性的欲求っす」

ミノ娘「うわあ……ドラゴンもオス、なんだな……///」

ドラゴン「違うっつってんだろ。こいつの飯だ、こいつの」ズイッ

赤子「ふ……ふぇ……」グシッ

ドラゴン「あ、ヤバイ!なんかもう泣きそうなってる!!」

ボンゴレ「あわわわわ、スポーン!腕スポーン!」スポスポ

ドラゴン「お前それ骨をガチャガチャやってるだけだろ!!」

ボンゴレ「何をー!?雑魚モンスターのスケルトンとかだと、下手したら取れた腕戻らないんすよ!?アタシ結構上位な存在なんすよ!?」

ドラゴン「んなバックボーンは知らねえよ」

ドラゴン「おりゃ!水芸っ!」シピーッ

ボンゴレ「おおー!水の魔法で虹が出来たっ!こりゃすげーっす!」

赤子「おおー……」ジーッ

ミノ娘「……何やってんだ、お前ら……これ人間の子供か?」

ドラゴン「そうだよ!コイツが腹減ってずーっと泣いてんだ。早く乳飲ませてやってくれ!」

ミノ娘「……い、いや……おれ、子供とかいないから乳出ないぞ」

ドラゴン「なんだとこの野郎!!!」

ボンゴレ「っざっけんじゃないっすよー!アンタそのおっぱいは飾りっすかー!?」モミュンモミュン

ミノ娘「うるさいな!おれだってこんなでかい乳欲しくないんだよ!乳を揉むなー!!」

ボンゴレ「よーしわかりました。ドラゴンさん!」

ドラゴン「何だ?」

ボンゴレ「ちょっとこの乳オバケ孕ませて下さい。そーすりゃ乳出るでしょ」

ドラゴン「何を言い出しとるんだお前は」

ミノ娘「怖いよ、この骨怖いよ」

ボンゴレ「あぱー、種族違うから妊娠しないっすよね。ウッカリしてました」

ドラゴン「それ以外の問題が盛り沢山だろうが」

ミノ娘「そんなノリで初めて失うの、イヤだぞおれ」

ボンゴレ「じゃーどーすりゃいいんすか!?この娘以上の乳の持ち主他にいます!?」ボヨンボヨン

ミノ娘「乳を叩くな!つーか、胸の大きさ関係ないだろ!赤ん坊がいる魔物に頼めばいい話だろー!?」

ドラゴン「赤ん坊がいる魔物……」

ミノ娘「人間の子供なんかに飲ませてくれるかは知らないけどな……」

ボンゴレ「赤ん坊がいる魔物なんか、どこにいるっていうんすかー!?」ムニョンムニョン

ミノ娘「すぐ近くに住んでるだろ」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「……へ?」

ミノ娘「いや、だから……」

…………

…………

近くのほら穴――

プギープギー!

子オーク2「かーちゃーん、かーちゃーん!おにーやんがイジメるー!プギー!」

子オーク1「かーちゃんこいつが悪いんだブヒー。おいら悪くねーやーい」

子オーク3「はらへったー。はーらーへったー!」ブヒブヒ

姉オーク「おかーさーん、こいつらうるさーい。あたしやっぱ一人の部屋がいいー」

赤子オーク「びえーん!えーん!」エグッエグッ

母オーク「はいはいもう喧嘩するんじゃあないよまったくもう!この子が泣いちゃってるだろう!ほら、アンタお兄ちゃんなんだから下の子いじめないようにしな!」

子オーク1「おいら悪くねーしー」

姉オーク「いい加減にしろ、こらっ」コツンッ

子オーク1「いっでー!かーちゃんねーちゃんがブッたー!!」ブヒブヒ!

姉オーク「ハァ……おかーさん、あたしの部屋っていつ出来るのー?」

母オーク「はいはい、とーちゃん達が帰ってきたら、新しいほら穴掘ってもらうよう言っとくからね」

子オーク3「かーちゃーん。はーらー!めーしー!!」

母オーク「はいはいはいはい。今この子におっぱいあげてるから、ちょっと待っておくれ」

赤子オーク「んく、んく……」コクコク

……ガサガサガサ……

子オーク2「?……なんか外うるさい……」

子オーク1「え!?とーちゃん達帰ってきたのか!?」プギーッ!

ガサッ!!

ミノ娘「うっす。オークー、いるかー?」

ボンゴレ「どもども、こんちはー」

ドラゴン「……ん」ノソッ

子オーク1「!!」

子オーク2「うおッ……」

子オーク3「ど……」

子オークs「「「ドラゴンだ――ッ!!!」」」

子オーク1「うおー!すげーかっけー!!ブヒー!!」

子オーク2「翼でけっ!尻尾でけッ!!」ブヒブヒ

子オーク3「ドラゴンて食ったらうまいのか!?」プギー!

キャッキャッ!

ドラゴン「えーい離れろガキども。まとわり付くなッ!」

ボンゴレ「おー、ドラゴンさん子供に人気すねー。さすが看板モンスター」

ドラゴン「だからここ来たくなかったんだ!!!」

母オーク「あらま!山のヌシのドラゴンさん!珍しいねーこんな所に来るなんて!ちょっとアンタお茶用意してあげな!」

姉オーク「はーいおかーさん」トテトテ

ボンゴレ「あーいいですいいです気ぃ使わないで。こっちはオークのお母さんにお願いあって来たんで!」

母オーク「ええと、アンタはたしか……ボーンゴーレムちゃんだっけ?ちゃんとご飯食べてんのかいアンタ。ウエストがりがりじゃあないか!」

ミノ娘「悪い、母オークさん。ちょっとこいつらのお願いを先に聞いてやってくれるか?」

母オーク「お願い?……そういえば何だいボンゴレちゃん、その腕ん所抱えてるのは」

赤子「えっぐ!ひっぐ……!」グスッ

母オーク「あらまあ、アンタの子かい?」

ボンゴレ「いやー、アタシ子宮腐っててないんですよ。穴しかなくって」

ミノ娘「聞きたくなかったわーそんな情報」

ドラゴン「んな事ァどーでもいいから、早く乳飲ませてやってくれ!!」

子オーク1「ドラゴン火ぃ吐けー火ぃー」ベシベシ

子オーク2「うおっ硬ってー!おらっパーンチ!」ドスドス

子オーク3「あぐあぐ……うえー、硬くて食えねーっ」カミカミ

ドラゴン「もう俺はよ帰りたい」

母オーク「おーよちよち、お腹減ってるのかい?ほーら」ギュッ

赤子「うえー…………ん……」

……チュウチュウ……

ボンゴレ「!!……飲んだ……!」

ドラゴン「おお……!」

ボンゴレ「どどどドラゴンさん!ミルクが赤ちゃん飲んで泣き止んでオークですよ!!!」アパアパ

ドラゴン「感動したのはわかるが落ち着け」

赤子「んんー……」チュウチュウ

ボンゴレ「うおー……すげえっすね。こーんなちっこいのに、一生懸命飲んで……」

母オーク「なんだい、赤ちゃんがおっぱい飲むのがそんなに珍しいのかい。アンタだってこうやって育ったんだよ?」

ボンゴレ「アタシ骨の寄せ集めで出来た存在なんで、育つとかは無縁でー……」

ドラゴン「肉食って育つからなぁ、俺らの種族は……」

ミノ娘「やるせねえな、お前ら」

母オーク「というか、この子人間の子かい?どうしたんだいこんなの。親は?」

ドラゴン「死んだ。この骨が見つけて拾ってきた」

母オーク「あらあらまあまあ……そりゃあ可哀想にねえ……」

母オーク「よしよし、お腹いっぱいかい?ほーらゲップしなー」トントン

赤子「けぷっ」

ボンゴレ「ゲップ!ゲップしましたよゲップ!うわー女の子なのにお下品っ!アタシそんな子に育てた覚えはありませーんっ!」キャーキャー

ドラゴン「うわあ絶妙にうざい。今日拾ったばっかだし」

子オーク1「おいっドラゴンー火ぃふけよー!」

子オーク2「そーだそーだ火だ火ー!ブヒー!」

子オーク3「火で焼いたら食えるかー!?」

ドラゴン「うるさいな……ほらっ」ボーッ!

子オークs「「「すげーっ!!!」」」プギー!

ボンゴレ「ドラゴンさんは子供に人気っすねえ……」

ミノ娘「ああ……ところで母オークさん、随分オークの数が少ないが、おやっさん達は?」

母オーク「ああーダンナなら若いの連れてお隣さんと狩り行ったよ。数日もすれば戻ってくるだろ」

姉オーク「……おにーちゃん達、大丈夫かな……」

赤子オーク「むい……」

母オーク「心配する事ぁないよ!人里に近づかなきゃあ問題はないさ!」

ミノ娘「ああ……最近、人間の魔物狩りが盛んだしなぁ」

母オーク「あたしらが何したっていうんだい、まったく……」フゥー

母オーク「で?アンタ達、この子はどうする気だい」

赤子「う?」キョトン

ドラゴン「……」

ボンゴレ「……へ?」

母オーク「『へ?』じゃないよ。あたしは別にいいんだよ。人間に対しては、まあ……少なからず敵対意識があるけども。この子に罪はないしね。……だけど、人間を憎んでいる魔物が多いのは確かだろ?」

ドラゴン「まあ……なあ」

母オーク「アンタ達、育てる気かい?……大変だよ。赤ん坊を、しかも種族の違う、魔物と相対する人間の子供だよ?生半可な気持ちじゃあ、みんなが辛い思いをするだけさ」

ドラゴン「……そ、それは……」

ボンゴレ「育てますっ!」

ドラゴン「!」

ボンゴレ「アタシ、もう決めましたからっ!この子は、アタシ達がいないと生きていけない……そんな子を見捨てる事なんて出来ません!アタシは……この子を立派な魔王に育てます!」

赤子「……ふえ……」グスッ

ドラゴン「…………」

母オーク「……ボンゴレちゃん」

ボンゴレ「は、はい?」

母オーク「ちょっと、こっち来な」

ボンゴレ「な、なんでしょう?」

母オーク「ほら見な。この子オシメが汚れてるじゃあないか!アンタ気付かなかったのかい?」

ボンゴレ「え?うわ……き、汚いすね」

母オーク「お腹いっぱいになってもグズるはずだよ、まったく!それにほら!手の甲に変な形のアザが出来てるじゃあないか!赤ちゃんってのは弱いんだから、乱暴しちゃ駄目だろう!?」

ボンゴレ「そ、それはですね!アタシのせいじゃないっていうか、たぶん崖から落ちた時の怪我で――……」

母オーク「それにしても、手当とか何かあっただろう!?ボンゴレちゃん……アンタのやる気は認めるけども、子供を育てるには知識が全然足りてないよ!」

ボンゴレ「あ、あぱー……」

母オーク「ちょいとお姉ちゃん、新しいオシメ持ってきて。丁度いい、アンタもオシメの変え方覚えな」

姉オーク「ええ……あたしはいいよぉ」

母オーク「バカ言ってんじゃないよ、アンタもいつかはバンバン子供産む事なるんだからね!」

ミノ娘「子だくさんだからなぁ、オークは……」

母オーク「ほら、妹のオシメ変えたげな」

赤子オーク「ぷぎー?」

姉オーク「えー?……はーい」シブシブ

子オーク3「なーなーそれよりかーちゃん、昼飯はー?」

子オーク1「おいらも腹減ったー」

子オーク2「ドラゴン飯出せー」

ドラゴン「うるせえ食うぞガキ共」

ミノ娘「ああ……おれが何か作るよ。母オークさん台所借りるぞー」

母オーク「あー助かるよ。干したシカ肉とイモがあるから、それで何か作ってくれるかい?」

ワイワイワイ……

母オーク「いいかい?赤ちゃんが泣くのは何かして欲しいサインだ。あやすだけじゃなく、それを見逃さないようにだね……」

ボンゴレ「え、これどうやって巻くんです?え?え?」

姉オーク「こうじゃない?……おねーさん、不器用だよね……」

ボンゴレ「なっ!何をー!?」

ガヤガヤ……

子オーク1「ドラゴンって空飛べるのか?」ベシベシ

ドラゴン「そりゃまあ、飛べるが……」

子オーク2「えーっ!?乗せて乗せてー!!」プギプギ

ドラゴン「危ないから駄目」

子オーク1「んだよ、ケチー!」バキバキ

子オーク3「翼食うぞー!!」グイグイ

ドラゴン「……もう少し大人になったら乗せてやるよ」

子オークs「「「ホントにー!!?」」」

ドラゴン「あーあー。ホントホント。だからお前ら叩くのやめろ。手加減無しは地味に痛い」

ミノ娘「おーい、昼飯出来たぞー。シチューにしてみた」

子オークs「「「わーい!」」」ブヒー!

母オーク「ああそれじゃあ休憩にしようか。ボンゴレちゃん、ご飯の後もお勉強だからね」

ボンゴレ「あぱ、あぱぱ……」パクパク

母オーク「なんだい、これくらいでだらしないねえ」

姉オーク「……おねーさんって、その……腕とかお腹とか骨だけど、頭には脳みそ入ってるの?」

ボンゴレ「んなっ!失礼なー!アタシはこー見えても胸とかおしりとか、色々な所にはお肉がギッシリなんですよー!」

ドラゴン「ボーンゴーレムでそれってどうなんだ?」

ミノ娘「てか絶対アタマん中カラだな、お前」

子オークs「「「ごはん、ごはんー!」」」キャッキャッ

姉オーク「こらーっアンタ達ーっ。いただきますしないとでしょー?」

母「お姉ちゃんの言う通りだよ。行儀よく座りな!まったくもう……」

ドラゴン(……大変そうだな、子育てってのは……)

ミノ娘「おーい、ドラゴンって何食うんだ?シチュー食うなら用意するけど、木のスプーンとか持てないだろ?」

ドラゴン「俺は生肉で――……いや、なんでもない」

ミノ娘「?……肉なら保管庫にあったけど……」

ドラゴン「いやいい。俺もシチューをいただくよ。スプーンは風魔法で浮かして使えるし……せっかく、作ってもらったんだしな」

ミノ娘「……別に気にしねえけどな。まあ……そう言ってくれると嬉しいよ」ニコッ

ボンゴレ「あーっ!何イイ雰囲気なってるですかー!!言っておきますけど、ドラゴンさんはアタシのダンナっすよ!」プンスカ

ミノ娘「そ、そーいうんじゃねえよっ!」

ドラゴン「俺はお前を嫁にした覚えはない」

ボンゴレ「何言ってんすか!この子はアタシとドラゴンさんの子なのにー!」

母オーク「えっやっぱりそうなのかい?……ドラゴンとゴーレムから子供って出来るもんなのかい?」

ドラゴン「違います母オークさん。この骨の言う事真に受けんで下さい」

ボンゴレ「そりゃー本当の子供じゃーないっすけど!でもでも!……この子は二人で育てるんすよ。ねっ?」

赤子「あいー?」

ドラゴン「…………」

ミノ娘「……おい、ドラゴン?」

ドラゴン「……ああ。……わかったよ」ボソッ

ボンゴレ「!!…………にひっ」

ボンゴレ「よーしっ!母オークさん!ご飯食べながらでも色々教えて下さいっ!」

母オーク「あらまあ元気だねえ。じゃあ赤ちゃんの成長について、ざっくり教えとこうか」

ボンゴレ「はいっ!お願いします!」

子オーク2「うへー、なんかかーちゃん難しそーな話してるー」

子オーク1「早く食ってドラゴンと遊ぼうぜー!」

子オーク3「メシうめー!めちゃくちゃうめー!」ブヒー!

姉オーク「黙って食べなよ、アンタ達」

ミノ娘「あはは……元気な子たちだなー……」

ドラゴン「…………」

ミノ娘「?……どうかしたか?ドラゴン?……シチュー、口に合わないか?」

ドラゴン「いや、美味いよ。……そうじゃなくてさ……」

ミノ娘「?」

ドラゴン「……人間の赤ん坊一匹が、ハラ減らしてるだけで俺はオタオタして何も出来なかった。……若造とはいえ、200年生きてるくせにな」

ミノ娘「……」

ドラゴン「そんな俺に……子育てなんて、出来るかどうか……少し、不安でな」

ミノ娘「……」

ドラゴン「すまん、忘れてくれ。ガラにもなく弱気になっちまった」

ミノ娘「あのさ、おれ……馬鹿だからよくわかんねえけど」

ドラゴン「ん?」

ミノ娘「不安になるくらい、真剣に考えられるんなら……そういう心があるんなら、大丈夫なんじゃねえか?」

ドラゴン「…………」

ミノ娘「……そんなに不安なら、お前も母オークさんから色々教えてもらったらどうだ?ガキどもの相手はおれがするしさ」

ドラゴン「……そうだな」

ドラゴン「……巻き込んで悪かったな。ミノタウロスの」

ミノ娘「とんでもねえさ。久々に戦い以外で楽しい日だったよ」ニヤッ

ドラゴン「…………美味い、シチューだ」ズズッ

ミノ娘「へへっ」

…………

今回はここまでです

…………

ボンゴレ「いないいなーい……あぱー!」ベー!

赤子「きゃっきゃっ!」ニコニコ

ドラゴン「……コイツを拾ってから、もう結構経ったなあ……」

ボンゴレ「いやー、最初はどうなるかと思いましたが、何とかなるもんすねえ」

ドラゴン「オーク母さんのお陰だな……あの人いなかったらヤバかったわ」

ボンゴレ「いや本当に。おっぱい貰いに行けるのメチャクチャ助かります」

ボンゴレ「けど未だにこの子、オークのお父さん達の顔見たら泣いちゃうのが、少し困りものですねー……」

ドラゴン「顔怖いからなぁ、おやっさん……良い人なんだけど」

ボンゴレ「10人家族でしたっけ?お兄ちゃん達も結構顔怖いっすよねー……」

ドラゴン「……あのチビ達もいずれはあんな顔になるんだろうな……」

ボンゴレ「想像出来ないっすねえ……」

赤子「うー?」

ボンゴレ「ああそう言えば、もうそろそろ首もしっかりすわってきましたし、離乳食を始める時期かもーってオーク母さん言ってましたね」

ドラゴン「……離乳食って何与えるんだ?……ミンチ?」

ボンゴレ「いい加減ドラゴン基準やめて下さいっす……なんか、オークさん達の所では、茹でた豆をドロドロに潰したのとか与えてるらしいっすねー」

ドラゴン「豆……」

ボンゴレ「あとはまあ野菜とか果物とか、消化の良くて胃に優しいものをいくつか」

ドラゴン「面倒だな……ミンチも消化良いだろ」

ボンゴレ「冗談でもやめて下さい」

ドラゴン「ああっもう本当面倒くさい。ドラゴンなら三ヶ月もありゃあ空飛べるんだぞ!?人間ってのはどーしてこんなにも弱いんだ?」

ボンゴレ「それが人間ってもんですよ……」

ドラゴン「そのくせ群れると強い上に、稀に勇者とか剣士とかみたいなバカ強いのとか、魔法使いみたいな魔物より魔力高いやつとかが出やがるし……訳わからん種族だよ、本当」

赤子「あう?」

ボンゴレ「あ、あはは……その訳わかんなさが、人間の魅力なんじゃあないっすか?」

ドラゴン「…………まあ、そうかもな……フン」

ドラゴン「しかし……流石に一から十までオーク達の世話になる訳にはいかないしなあ。……探して取ってくるしかない、か……」

ボンゴレ「アタシがひとっ走り、人間の町まで行って離乳食に良さそうなの買ってきましょうか?」

ドラゴン「うーん……」

ボンゴレ「ドラゴンさんのウロコとか高く売れますし、アタシは身体とか手とか隠せば人間に見えますし」

ドラゴン「出来る限り危険は避けたいな。……毎日ドラゴンのウロコ売って離乳食買っていくヤツがいたら目立つだろう」

ボンゴレ「あー、確かに」

ドラゴン「……それに、ウロコ剥がすの結構痛いんだからなあれ」

ボンゴレ「なんかそっちが本音っぽいなー……」

ボンゴレ「しかしまー、お野菜ですか……」

ドラゴン「俺、野菜とか果物とか食わないから全然わかんねーぞ……」

ボンゴレ「アタシもあんまし食べないっすからねえ……どうしたもんか」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「……」

シーン……

スタスタ……

ミノ娘「おーいドラゴンにボーンゴーレム、いるかー?赤ちゃんの顔見に来たぜー」ヒョコッ

ドラゴン「……お前は本当いい所に来るなあ」シミジミ

ボンゴレ「困った時のミノタウロスさんですねえ」シミジミ

ミノ娘「……は?」

…………

…………

ミノ娘「ああ……野菜や果物?それなら南にある『迷いの森』かな」

ドラゴン「ああ、あそこか……行ったことないけど」

ボンゴレ「何やら物騒な名前っすねー……」

ミノ娘「魔法がかかってるんだよ。魔力の低い人間なんかが入ると、ぐるぐる同じ所回った挙句、いつの間にか町へと戻ってしまうんだと」

ボンゴレ「ひえー、なんか怪談みたいで怖いっすねー」

ミノ娘「……ほとんど骨のホラー怪物が何言ってんのかな?」

ミノ娘「おれは許可もらってるから自由に立ち入れるけど……あそこに住む奴らは他種族が嫌いだからなぁ。おれが連れて行った所で、森に入れるとは限らねーぞ」

ドラゴン「俺たちを連れて行って、お前の立場が悪くなっても困る。俺たちが勝手に向かうよ」

ミノ娘「お?そうか?」

ドラゴン「俺もコイツも、見た目よりかは魔力が高い。ある程度の幻術系魔法ならそうそう効かんだろ」

ボンゴレ「……いや、そうっすけど……幻術魔法無視して森ん中入るとか、怒られません?」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「森に入ってほしくないから、幻術魔法かけてるんでしょ?野菜もらいに行くのに怒られるような事して……大丈夫すか?」

赤子「むぃー……」

ドラゴン「……ま、怒られたらそん時はそん時だ」ズンズン

ボンゴレ「イーヤーでーすーよーっ!!アタシ他の種族と仲良く生きてきたいのにー!!平和主義者なのにぃー!!」

赤子「ういー!ういー!」

ドラゴン「ほら、コイツも『行け行けー!』って言ってる」

ボンゴレ「違いますねー!!絶対『やめとけー!』って言ってるに決まってますー!!」

ミノ娘「……一筋縄じゃいかないだろうが、まあ頑張ってくれ。応援してる」

ドラゴン「おう。行くぞーボーンゴーレム」

ボンゴレ「うう……もっと長生きしたかったですぅ……」シクシク

ミノ娘「お前もう死んで骨なってるじゃん……っていうか、死にはしないって」

赤子「うー」コクコク

…………

今回はここまでです

…………

チュンチュン

チチチ……

ドラゴン「……ここか」ドスドス

ボンゴレ「わー!なんだか綺麗な所ですねー!鳥さんが飛んでますよー!ほら、見えますかー?」

赤子「おー!」キラキラ

ボンゴレ「ねー?すごいっすよねー?うんうん!」ニコニコ

ドラゴン「……しかし、なんか木々がちょっと萎れてないか?元気ないっつーか……」

ボンゴレ「えー?気のせいっしょー。青々として綺麗っすよー?」

赤子「あいー」

ドラゴン「…………」ジッ

ボンゴレ「?……どうかしました?」

赤子「あう?」

ドラゴン「あー……しまった。この子ミノタウロスに預けて来たら良かったな……」

赤子「あいー……」

ボンゴレ「え?いや、そりゃあ幻術魔法無視して立ち入るのは怒られるかもしれませんけど、ただお野菜とか分けてもらうようお願いするだけですし……いいんじゃないすか?ミノタウロスさんも死にはしないって言ってくれたし……」

ドラゴン「うーん……ケンカになるかもしんないからなぁ」

ボンゴレ「やめて下さいよそういうの!穏便にいきましょうよ!アタシ達はただ、お野菜とか果物もらえたらそれでいいんですから!!」

ドラゴン「んな事言ってもなー……見ろよこの幻術魔法」ズンズン

ボンゴレ「どれどれ……わ、結構すごい魔法かかってますねー。これ普通の人だと突破出来ないっすよ」テコテコ

赤子「おおー……」パチクリ

ドラゴン「もし俺がこの魔法をかけた側で、この魔法無視して入ってきたら……めっちゃキレるくらいにはガチめだな」ズンズン

ボンゴレ「普通にアタシら入っちゃってますよねえ……遺書書いとこうかなあ……」オヨヨ……

ドラゴン「……なあボンゴレ、一つ確認するが……」

ボンゴレ「あい?何です?」

ドラゴン「俺たちの身に危険が迫った時は……森燃やす勢いで攻撃していいのか?」

ボンゴレ「出来たら森燃やさない勢いでお願いします」

ドラゴン「難しいな……火ィ吐いたら簡単なんだが」

ボンゴレ「ドラゴンさん、色々魔法使えるんでしょ?別に火に頼らなくっても」

ドラゴン「色々っつうか、まあ……四元素魔法と二色魔法、合わせて六大魔法の一応全て扱えるけどさ」

ボンゴレ「チートっすねえ……四元素だけならともかく、黒魔法と白魔法の二色両方まで扱えるなんて……人間だったら賢者とか大魔法使いとか言われてますよ」

ドラゴン「それでもな、魔法唱えるのは面倒だし、火ィ吐くのは魔法関係ない俺の能力だから楽なんだよ」

ボンゴレ「はあ……そういうモンすか」

ドラゴン「そういうモンだ。特に二色魔法はな――……おっと、止まれ!」

ボンゴレ「へ?」

赤子「あう?」

ヒュンヒュンヒュン!

ドカカカカッ!!

ボンゴレ「あぱーッ!?ななな、何ですかっ!?足元に弓矢がっ!?」

???「そこを動くな!……何用だ、貴様ら!」

バン!

ドラゴン「……随分な挨拶だな」

赤子「ふ……ふえ……!」ジワッ

ボンゴレ「わー!わーっ!怖くないっ!ぜーんぜん怖くないでちゅよーっ!だから泣かないでっ!ほら、いないいなーい……あぱー!!」ベーッ!

赤子「ふえ?……きゃっきゃっ!」ニコニコ

ドラゴン「あっぶなー……ナイス、ボンゴレ」

ボンゴレ「ふふーん、毎日あやしてるアタシをナメない方がいいっすよ!」ドヤアッ

???「……質問に答えろ!貴様ら……我々を舐めているのかっ!!」ギリリ……

ドラゴン「うるせェこちとら子供が泣きわめく方が重要案件なんじゃ」

ボンゴレ「そうですよー!この子が泣いたらどんだけうるさいか、アンタわかって――……」

ヒュン!

ドカア!!

ボンゴレ「あぱー!?」

ドラゴン「うおっ!?……お、おいボーンゴーレム?大丈夫か?……頭に矢ァ刺さってんぞ」

ボンゴレ「あー、大丈夫っす。かなりクラクラきますけど……」アパアパ

ドラゴン「おいお前ふざけんなよ!コイツがこれ以上アホになったらどうする気だ!」

ボンゴレ「今のでせっかく覚えてた7の段忘れちゃいました!」プンプン

ドラゴン「九九くらいは全部覚えとこうぜ」

???「……貴様ら、我々を馬鹿にしているのか?」イラッ

ドラゴン「姿も見えないのに馬鹿にするもクソもあるかよ。木の陰に隠れてんじゃねーッ」

ボンゴレ「そうっすよー!お話するんなら、まずお互い顔を合わせるべきじゃないっすかー!?」

赤子「あいっ!」

???「…………」

シュタッ!

ドラゴン「……おっ。下りて来た」

……スタスタスタ……

ザッ!

エルフ娘「……これで満足か?……化物め」

キリッ!

ドラゴン(……『エルフ』か。耳の長い、長命で美しい亜人種……弓の名手と聞くが、なるほどな……)

ボンゴレ「ぷぷーっ!ドラゴンさん、化物って言われてますよ!」プククッ

赤子「あはっ!きゃっきゃっ!」

ドラゴン「化物はオメーだよ」

エルフ娘「貴様ら二人共だ」

エルフ「頭に弓矢が刺さっても死なないとは、貴様……ボーンゴーレムだな。話には聞いている」

ボンゴレ「お、アタシ有名人っすか?」ワクワク

エルフ「……ボーンゴーレムのくせに肉がついていて自我がある、変わり者……だとな」

ボーンゴーレム「っ!……」

ドラゴン「……」

エルフ「そして、お前はドラゴンだな?北にある山のヌシの」

ドラゴン「……自分からヌシだと名乗った覚えは無いがな」

エルフ「去れ。この森の主様は、貴様らを歓迎していない」キッ

ドラゴン「……」

ボンゴレ「……」

赤子「……う?」

エルフ「自分たちの居るべき所へ帰れ。礼儀知らずめ」

ボンゴレ「……随分な言われようですね」

ドラゴン「歓迎とか別にしなくていいけどさ……いきなり弓矢ぶっ放す奴に、礼儀だ何だと言われたくはないな」

エルフ「……」

ドラゴン「争うつもりは無い。とりあえず……話を聞いてくれないか?」

エルフ「去れ。そんな暇はない」

ボンゴレ「そこを何とか!お願いしますっ!」

エルフ「くどい!!」

赤子「あうー……」ションボリ

エルフ「……」

ドラゴン「勝手に森に入った事は謝る。しかし、俺たちはこの森を荒らしに来たんじゃない。お願いがあって来たんだ」

赤子「あいあいっ!」シュピッ!

エルフ「何度も言わすな!私たちは……!」

赤子「うぃ?」キョトン

エルフ「……さっきから何なんだ、この赤ん坊は!!」

ボンゴレ「アタシとドラゴンさんとの愛の結晶です」

ドラゴン「ああ……いや違うよ?」

ドラゴン「色々あって俺たちが育ててる子供だよ。……断じて俺たちの子ではない」

ボンゴレ「むー!そんなに否定しなくてもいいじゃないすかー!」

赤ん坊「あい!」

ドラゴン「うるせえよお前ら」

エルフ「人間の子、だと?……き、貴様ら、何と卑怯な!!」ギリッ!

ドラゴン「いやまあ人間連れてきたのは悪かったが、こいつは赤ん坊で……ん?『卑怯』?」

エルフ「こんな……こんなっ!」

エルフ(こんな可愛い生き物を連れてくるなんて――……!!)ドキドキ

ドラゴン「あれーなんかこいつチョロくねー?」

『『『……山のヌシが人間の赤ん坊を育てているという噂は、本当でしたか……』』』

ザワザワザワ

ドラゴン「!?」

赤子「あう?」

ボンゴレ「な、なんですかこれ!?……も、森の木々が……しゃべってる?」

エルフ「!!……あ、主様っ!申し訳ありませんっ!侵入者を許してしまって……!!」

『『『良いのです。エルフよ……心優しい貴女に、辛い仕事を与えてしまいましたね……』』』

エルフ「そ、そんな……勿体無いお言葉!」ピシッ!

ドラゴン「……なあ、この森の主って、木なのか?」

エルフ「少し黙ってろ」

―じゃあ、まず年齢を教えてくれるかな?
ハッゲ「29歳です」
―29歳?もう働いてるの、じゃあ?
ハッゲ「自称映画監督です」
―自称映画監督?あっ…(察し)ふーん

『『『……貴方が、山の主ですね。……話には聞いております』』』

ドラゴン「え?あ、ハイ。……どうも?」

『『『……幾千万の呪文を唱え、大空を舞う覇者、と……そう伝え聞いておりますが』』』

ドラゴン「……いや、ちょっと尾ヒレつきすぎじゃね?確かに六大魔法は唱えられるけども」

ボンゴレ「普通は一つの系統の魔法しか唱えられないすからね?頑張って二つか三つが限界っす」

『『『……確認しますが、貴方は……六大魔法全てが扱えるのですね?』』』

ドラゴン「え?ああ、うん」

『『『……火、水、土、風の四元素魔法、全てが扱えるのですね?』』』

ドラゴン「いやそうだけど……それが何だよ」

『『『……わかりました。……エルフよ』』』

エルフ「は、はいっ!」ピシッ

『『『……彼らを、私の所まで連れて来なさい』』』

エルフ「なっ!?」

ボンゴレ「えっ?」

赤子「ふえ?」

ドラゴン「……へ?」

エルフ「な、何故ですか!?主様っ!」

『『『……理由は、貴女ももうわかっているはずですよ……』』』

エルフ「……くっ!」

『『『……お願いしますよ。……それでは、また……』』』

ザワザワザワ……

エルフ「……あ、主様……!!」

ボンゴレ「……ねえねえドラゴンさん……どういう事でしょ?」

赤子「あうー?」

ドラゴン「わからん。が……あれだろ」

ボンゴレ「どれすか?」

ドラゴン「なんかこう……めっちゃ怒られるか殺されるかのどちらかだろ」

ボンゴレ「何ですかその二択ー」

ドラゴン「いやまあ悪い事にはならないんじゃないか?もしかしたら友好的な展開かもしれん……たぶん」

ボンゴレ「メチャクチャ不安ですよぉ……」オヨヨー

エルフ「くっ……貴様ら、ついて来い!主様の元まで連れて行く!」キッ!

ドラゴン「主様って……この喋ってたように見えた木々は?」

エルフ「あれは主様の力だ。……主様は、植物と心を通わせ、ある程度使役する事が出来る」

ボンゴレ「ほえー……凄いっすねえ、アルジサマは」

ドラゴン「お前は魔物とすら心通わせる事出来ないのになぁ……」

ボンゴレ「むかー!なんですかそれー!!」

エルフ「早くついて来い!」

…………

今回はここまでです

…………

……ザッザッザッ……

ドラゴン「おいちょっと待てお前ら。歩くの早い」ゼーゼー

ボンゴレ「ドラゴンさんが歩くの遅いんすよー」

ドラゴン「狭いんだよこの道!道っつーか木と木の間じゃねーか。ケモノすら通ってねえ」

エルフ「ふん、これだからズウタイばかりデカいドラゴンは……この程度の道ですら弱音を吐くか」フフーン

ドラゴン「ナメんなよ、この身体には夢と希望が詰まってんだぞ」

ボンゴレ「詰まってんのは魔力でしょ……ほら、早く行きますよー」スタスタ

赤子「ういっ」

ドラゴン「だから待てって……痛っ!枝引っかかった!」

……ガサガサ……

アルラウネA「あれー?エルフさん。お客様ー?」

フワッ……

エルフ「む、アルラウネ達か……」

アルラウネB「わあっ、主様にお客様ー。すごい久しぶりぃー。うぷぷー」

アルラウネC「みんなに知らせないと。ボク達も後でお話しに来るねー」

ウププププ……

サァッ……

ボンゴレ「……なんですか、今の方たちは」キョトン

エルフ「花の妖精、アルラウネだ。楽天家で性に奔放……噂好きでイタズラ好き、集団でオスをからかうのが好きな魔物だ」

ドラゴン「良い所ねえな……」

エルフ「いつもはアラクネが奴らをまとめているんだがな。まあ後で会えるだろう……気をつけろよドラゴン。おそらく貴様のような奴は、アルラウネ達の好きなタイプだ」

ドラゴン「えっ」

エルフ「おっと、話をしていたらすぐだったな……着いたぞ。ここだ」

ザッ!

サァァ……

ボンゴレ「ふえー……すごい綺麗な所っすねー」

赤子「おおー……」

ドラゴン「……ん?ここは……」

エルフ「……わかるか、ドラゴンよ」

ドラゴン「……マナの流れが濃い。それにこの澄んだ空気……『聖域』か」

エルフ「……流石だな。主様が認めただけある」ボソッ

ボンゴレ「ほえ?どういう事すか?」

赤子「あい?」

ドラゴン「……お前本当に魔力高いのか?」

ドラゴン「人に荒らされていなくて、魔力の源……『マナ』が多量にあるだろ。『聖域』……滅多にない、神聖な場所なんだよここは」

ボンゴレ「アタシそーいうの鈍感だからなー」

ドラゴン「……まあいい。それで?主様というのは?」

エルフ「こっちだ」スタスタ……

ガサッ

エルフ「……主様。申し付け通り、連れて参りました」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「どきどき……」

ドライアド娘「……ご苦労様でした。エルフさん……」

サァァ……

ドラゴン(……なるほど、『ドライアド』か。……樹木の妖精で、植物のような緑色の肌や花の咲いた髪等の特徴を持つ……)

ボンゴレ「ふわー……なんだか綺麗なお姉さんですねー」

赤子「あいー……」

ドライアド「…………」

ドラゴン「……おいお前、あんま失礼な行動すんなよ」ヒソヒソ

ボンゴレ「むかかーっ!失礼なのはドラゴンさんっすよー!アタシはただ褒めただけじゃないすかー!」

ドラゴン「いいか……聖域を守っているという事は、ここを狙う他の魔物や人なんかと戦って、勝利したという事だぞ」ヒソヒソ

ボンゴレ「……ほえ?それって……」

ドラゴン「見かけで判断するな。あいつ……相当強いぞ」ヒソヒソ

ボンゴレ「……りょ、了解っす」

赤子「ういっ」

ドライアド「…………さて、貴方達……」

ドラゴン「お、おう」

ボンゴレ「……」ドキドキ

ドライアド「……その、あの、えっと……わざわざこんな奥地まで来て頂いて、その……あああ、ありがとう、ごじゃいましゅ」ペコリ

ドラゴン「…………」

ボンゴレ「…………」

赤子「…………」

ドライアド「……え、エルフさぁん……肝心な所で噛んじゃいましたぁ……」ウルウル

エルフ「大丈夫ですよ主様!問題ないです!!……おい何だ貴様らその顔はぁッ!!」

ドラゴン「何だって言いたいのはこっちだ――ッ!!っていうかどういう顔したらいいんだよ、こういう時は!!」

ドラゴン「えーっと……確認したいんだけど、アンタが主様とかいうヤツなんだな?……さっき木を使って話してきた」

ドライアド「は、はい……ごごご、ごめんなさい」ペコリ

エルフ「主様!貴女が謝る事はありません!!」オロオロ

ドラゴン「全ッ然イメージと違うんですけど……え?違う人じゃないの?」

エルフ「失礼な事を言うな貴様!主様はなあ……ものすっごい人見知りのアガリ症で、人前に立つと上手く話す事が出来ないのだ!!!」

ドライアド「姿を隠してたら大丈夫なんですけど……しゅ、しゅみません……」オドオド

ボンゴレ「あぱー……いやーなんていうか……残念っすねぇ……」

ドラゴン「いやもう本当……さっきまでのドキドキ返して欲しい」

ドライアド「ううう……に、苦手なんですよお話するの……植物は喋らないし、わた、私……あまり自分に自信持てないっていうか……」モジモジ

ドラゴン「いやお前、聖域守るくらいには強いんだろ?それって相当、自信持てる事だと思うが……」

ドライアド「ひ、人に会いたくないから幻術魔法張って引きこもってただけですよぉ……私なんて、私なんて……」イジイジ

ドラゴン「何という事でしょう」

ドライアド「いつの間にか、エルフの皆さんとかアラクネさんとかアルラウネさんとか、フェアリーさんとかマタンゴさんとかハーピーさんとか、色々な方に慕われるようになりましたけど……」

ボンゴレ「いや、慕われすぎでしょ……すごくないですかそれ」

ドライアド「私なんてそんな大層なモンじゃないですよぉ……誰か立場変わってくれないかなぁ……うう……」ドヨンドヨン

ドラゴン「おいコイツ本当にドライアドか?キノコとか菌類系の魔物じゃねえの?」

エルフ「だから失礼な事を言うな――っ!!」

ガサガサッ!

モブエルフ「お取り込み中の所、失礼します主様っ!」シュタッ!!

フェアリーA「でんれー、でんれー」パタパタ

フェアリーB「いえーい」パタパタ

ボンゴレ「わっ、他にもエルフいたんですね」ドキッ

エルフ「どうした、何があった?」

モブエルフ「森に侵入者です!人間の男、年は20歳前後!」

フェアリーA「イケメンだよー」

フェアリーB「けどよわそうだよー」

エルフ「侵入者か……今どこにいる?」

モブエルフ「ハーピーの報告によると、入口のA地点です!現在、幻術魔法にかかり同じ場所をぐるぐると周っております!!」

エルフ「なら問題無いな。ご苦労、下がっていいぞ。……主様!」

ドライアド「え、ええ……わた、私の出番ですね……」

ドラゴン「え?」

ドライアド「あー……えへんえへん!おっほん!……あー↓(低音)あー→(普通)あー↑(高音)」

ドラゴン「え?え?……いや、何?」

ザワザワザワ……!!

ドライアド『『『……今すぐ引き返しなさい、愚かな人間よ……今ならまだ、貴方は許されます。しかし……これ以上踏み込めば、貴方には……神の裁きが落ちる事でしょう……!!』』』キリッ

ザワザワザワ……!!

ドラゴン(キャラ違ェ)

ボンゴレ(ああー、いますよねー……舞台に立つとキャラ変わる人)

赤子(あぱー……)

ドライアド「ふうー……ええっと、その、ど、どうでしたか?え、エルフさん?」オドオド

エルフ「バッチリです。いつもながら素晴らしい……!!」キラキラ

ドラゴン「あかん、ツッコむのが面倒臭くなってきた」

ボンゴレ「頑張って下さい、ドラゴンさんが頼りです」

ドラゴン「ええーっとだな……その、人見知りのドライアドが、わざわざ俺たちをこんな所まで連れてきたのはどういう事だ?……他人に会いたくなかったんだろ?さっきみたいに脅してさ」

ドライアド「……そうも言ってられないのです……」

赤子「だー?」

ドライアド「私が、人見知りなのにも関わらず……」

ボンゴレ「……」

ドライアド「……もう本当に、知らない人と顔合わせたくなくって……本当怖くって、足ガタガタ震えてて……こここ、こうしてお話してる間にも、すごく、なんていうか……枯れそうになってるんですけど……」ガタガタシオシオ

ドラゴン「おい無理すんな、頼むから」

ドライアド「……それにも関わらず!こうして、大切な聖域にまでお呼びしたのは……貴方達、いえ、ドラゴンさんに、『お願い』があるためなのです」

ドラゴン「……え?俺?」

ボンゴレ「っていうか……『お願い』?」

ドライアド「見て下さい、この森の木々を……草花を……果実を、幹を、植物達を……」

サァァアア……

ボンゴレ「……綺麗な所ですよねぇ。花の他にも、食べられる野菜や木の実なんかも育ってますし……」

赤子「うー……」コクコク

ドラゴン「……やっぱり、これは……間違いない」

ドライアド「……気付きましたか?そのー……どどど、ドラゴン、さん?」ビクビク

ドラゴン「ああ。……あの、ビクビクすんのやめてもらっていい?」

ドライアド「ぜ、善処します……」オドオド

ドラゴン「この森に入った時も思ったが……草木に元気が無い。萎れているんだ」

ドライアド「その通り、です……最近の日照り続きで、水が足りないのです……このまま日照りが続けば、この森は死んでしまうでしょう……もちろん、森と命を共にする、私も……」

エルフ「くっ……主様、お労しや……!」ウルウル

ドライアド「聞く所によると、貴方は……えっと、その……六大魔法全てが、使えるんですよね?」

ドラゴン「ああ……まあ、な」

ドライアド「お願いです……水の魔法を使って、この森に潤いを下さいませんか?こ……この通り、です」ガバッ

エルフ「あ、主様っ!どうか……頭をお上げくださいっ!!」

ドラゴン「……」

ドライアド「……ひ、人見知りの私が、貴方と直接会ったのも……大切な聖域に、貴方をお呼びしたのも……私なりの、誠意です」

ドラゴン「魔法使えないのかよお前は。聖域に住んでるって事は、ちっとはやるんじゃねえのか」

ドライアド「わ、私は土魔法だけで……あとは白魔法と植物の心がわかるくらいで……エルフさんやフェアリーさん達は風魔法しか使えませんし、他に水を得る手段は……」ウルウル

ドラゴン「……そうか」

ドライアド「こ、こうしている間にも、同胞の苦しむ声が聞こえます。どうか、どうか……!!」

ドラゴン「そうだなァ~~……もちろん水はやってもいいが、『タダ』っていうのはイヤだなァ~~……なあ?ボーンゴーレム?」ニタリ

ボンゴレ「え?……あ、あーそうですねっ!タダ働きなんて本当、イヤですもんねッ!」アセアセッ

赤子「えっえっえっ……」ニヤリ

ドライアド「!……」

エルフ「き、貴様ら……下手に出ていれば、勝手な事をッ!」

ドラゴン「勝手だぁ?ウチのボンゴレのドタマに弓矢ぶっ刺したのは何処のどいつだよ?あ~~ん?」

エルフ「うぐっ!」

ボンゴレ「そうっすよー!見て下さいコレ、かなりしっかり刺さってます!」プンプン

ドラゴン「お前は早くそれを抜け」

エルフ「し、しかしそれとこれとは――……」

ドライアド「……わ、わかりました……」

エルフ「あ、主様ッ!?」

ドライアド「わた、私の身体が目当てなんですね……まだ受粉していない、綺麗な身体です。……ど、どうぞ///」オズオズ

ドラゴン「いやそういうのは求めてねえ」

ドライアド「で、では……わ、私の命、とかですか……?食べても青臭くて美味しくないと思いますけど……」オドオド

ドラゴン「お前の中でドラゴンってどんだけ悪者なんだよ」

ボンゴレ「まあ今思いっきり悪者顔してましたからねぇ……」

ドライアド「……あの、それでは、何を?……も、申し訳ありませんが、聖域を渡すのは、その……」

ドラゴン「聖域なんていらねえよ。これだけ大切に育てた草花、俺には勿体ねえ」

ドラゴン「俺らの望みは……この子の食べる野菜や果物を分けて欲しいって事だ」

赤子「あい!」

ボンゴレ「っす!」

ドライアド「…………」

エルフ「そ、そんな事でいいのか?もっと、こう……難しい事でも良いんだぞ?」

ドラゴン「こっちからしてみれば死活問題でね……食う物が無くてコイツに毎晩泣かれると、うるさくてかなわん」フンッ

ボンゴレ「もー、まーたドラゴンさんは嫌な言い方してー……」

ドライアド「…………わ、わかりました」キリッ

エルフ「主様……」

ドライアド「その子の命が尽き果てるまで、微力ながら、お世話いたしましょう……」

ボンゴレ「なんかスケールでかい!」

ドラゴン「ドライアドは植物と同じで長命だからな……さて!交渉成立、かな」ニヤッ

エルフ「ああ……頼む。ドラゴンよ……」

ドラゴン「……『水精ウンディーネよ。我の下に集いて奇跡を呼び起こしたまえ』……」ブツブツ

…………

…………

ザアアアア……

エルフ「おお……!雨だ!数ヶ月ぶりの雨……!!」

ドライアド「す、すごい……森全域に雨を降らすなんて、凄まじい魔力……!!」

ドラゴン「聖域のマナのおかげだよ。ありったけ魔力練ったから、水不足が解消されるくらいには降るだろ」

ボンゴレ「おおー!凄いですねー!ほーら、これが雨でしゅよー!」

赤子「うー?」

ドラゴン「おいボンゴレ、そいつ雨に濡らすなよ!風邪ひいたらどうする!」

ボンゴレ「大丈夫っす!ドライアドさんから大きな葉っぱ貰ったんで、傘代わりにしました!」サッ!

赤子「ういー」

ドラゴン「なら良し!」

エルフ(良いコンビなのだな……)

ザアアアア……

ドラゴン「また水不足とかあったら呼んでくれ。このくらいならいつでも力になる」

エルフ「済まない、迷惑をかける」ペコリ

ドラゴン「お互い様だ。野菜に果物、これから頼むぜ」

エルフ「ああ。手塩にかけて育てた作物……お前達に食べてもらえるなら、こちらとしても本望だ」ニコッ

ドラゴン(『達』って……俺、基本肉食なんだけどなあ……食べないと駄目なんかなあ……食べるけどさあ……)

ドライアド「あ、あのー……ぼぼぼ、ボーンゴーレム、さん?」

ボンゴレ「はい?なんでしょー?あ、葉っぱの傘ありがとうございます」ペコリ

赤子「だっ」

ドライアド「あ、いえいえ……あの、えっとですね、その……こ、こんなお願いしてもいいのかな?けど……ええと……」モジモジ

ボンゴレ「?……はい」

ドライアド「そ、その子……抱っこさせてもらっても、その……い、いいですか?」シドロモドロ

ボンゴレ「ああなんだ、そんな事ですかー。はい、どうぞ」ズイッ

赤子「あいー」

ドライアド「わっ、わっ、わっ!ええーっと……こ、こんな感じですか?」ヒシッ!

ボンゴレ「もうちょい肩の力抜いていいっすよ。肘を曲げた所に頭が来るようにしてー……そうそう、そんな感じっす」

ドライアド「……ふわあ……」ドキドキ

赤子「うー……」

ボンゴレ「……えへへ。どうっすか?アタシとドラゴンさんの子は」

ドライアド「……その、とても可愛いです。けど……なんだか、弱々しくって、触ると壊れちゃいそうで……こ、怖いです」

ボンゴレ「うんうん、アタシもいつも思います。けど触れてあげないと寂しくって死んじゃうんですって」

ドライアド「……植物とは、全然違う……」

ドライアド「……植物は、どんなにひどい目にあっても、立ち直る事が出来る強さを持っています。大きなカエデの木も、名も無い雑草と呼ばれるものも、皆……とても強い」

ボンゴレ「はい」

ドライアド「けれど、この子は……言葉を話して、自由に動ける、植物よりも凄い『生き物』なはずなのに……ふにゃふにゃで、ひどい目にあったら立ち直れない、弱い存在……」

赤子「あうー……」ウツラウツラ

ドライアド「……それが、とても愛おしい、ですね。……ふふふっ」ニコッ

赤子「すー、すー……」スヤスヤ

ドライアド「……あら?」

ボンゴレ「あぱー、眠っちゃいましたねー。ドライアドさんの腕の中が気持ち良かったんでしょうか?」

ドライアド「え?そ、そんな……わた、私なんて……」オロオロ

ボンゴレ「この子を寝かしつけるの、すーっごく大変なんですからねーっ。羨ましいですよ、このーっ」ツンツン

ザアアアア……

ドライアド「……今日は、良い日ですね。……ふふっ」

ザアアアア……

エルフ「……主様、お身体の調子は……?」

ドライアド「……ええ。身体に力がみなぎるようです。ドラゴンさんにボーンゴーレムさん。そして……この子のおかげですね」

赤子「すー……すー……」スヤスヤ

ドライアド「……森に住む全ての種族と、草花を代表して、改めてお礼を言わせて下さい。……ありがとうございました」ペコリ

ボンゴレ「いえいえー!どーいたしましてっ!」ペコリッ

ドラゴン「お前何もやってねえだろ」

ボンゴレ「むむっ!身体を張って矢を受け止めたりしましたよっ!?」

ドラゴン「もう何か色々と違ェ」

ドライアド「……ふふふっ」

ザアアアア……

ドライアド「…………ですが……私は、もう駄目です」

エルフ「えっ」

ドラゴン「は?」

ボンゴレ「へっ?」

ドライアド「ひ、久々に沢山、知らない人とお話したから……せ、精神が……心が……」シオシオシオ……

エルフ「あ、主様ぁー!!ドラゴンっ何とかしてくれぇー!!!」

ドラゴン「白魔法でも心の病気は治せねえよ」

ボンゴレ「ちゃんちゃんっ」

赤子「あうー……」zzz……

…………

今回はここまでです

少し説明などなど
『ゴーレム』は物を集めてそれを魔法で動かしている魔導物という感じです
骨の寄せ集めが『ボーンゴーレム』、死体の寄せ集めが『フレッシュゴーレム』ですね
この話に出てくるボーンゴーレム娘は、骨の寄せ集めのくせに一部肉があり、自我があるという変わり者です

服で隠していますが、胸から下がほとんど骨の寄せ集めになってます。アバラ全開です
イメージ画像は友達からいただきました。ありがとうございます

http://imgur.com/eemQmp6.jpg

…………

ボンゴレ「ふーっ、ふーっ……はい、お口あーんしてー」スッ

赤子「あー?」

パクッ!

赤子「……んぐんぐ……」モキュモキュ

ボンゴレ「はーい、もぐもぐー。ごっくん!……よく食べられまちたねーっ!えらいえらいっ」ヨシヨシ

赤子「だー!だー!」ニコニコ

ドラゴン「……お前、子育てスキル上がったよなぁ……」シミジミ

ボンゴレ「あ、ドラゴンさんお帰りなさーい。お野菜もらえました?」

ドラゴン「ああ。必要以上にエルフが押し付けてきたよ……後で芋とかは干して、保存食にしておいてくれるか」ドサッ

ボンゴレ「はーい。あ、果物もいっぱいありますねー。ジャムやドライフルーツなんかにしますかー」

ドラゴン「迷いの森の草木は問題なさそうだったよ。最近は雨の日も多いしな……ドライアドとエルフがこの子に会いたがってた」

ボンゴレ「また今度連れて行きましょうっか。しかしお野菜や果物が元気になって良かったですねー」

ドラゴン「ああ……」

ボンゴレ「この子、お野菜の離乳食が美味しいらしくって、お腹いっぱいになっても食べようとするんですよー。おっぱいもまだまだいっぱい飲むし、すくすく育ってますねぇ」

ドラゴン「太らせすぎるなよ。太った人間は、アレだ、……醜い」

ボンゴレ「……それ、私腹を肥やしてる人間でしょ」

ドラゴン「人間の金持ちってのはどうしてあんなにブクブクしてるかねぇ……」

ボンゴレ「このくらいの歳の子はちょーっとコロコロしてる方が可愛いんですよ。ねーっ?」

赤子「あーいっ」

ドラゴン「あっそう……」

ボンゴレ「ああそうだ。この子のご飯の事なんですけどね、ドラゴンさん」

ドラゴン「うん?」

ボンゴレ「離乳食に慣れてきたら、お肉やお魚、タマゴなんかも試していこうと思うんですよ」

ドラゴン「つ、ついにミンチか!!」ガタッ

ボンゴレ「生じゃないっすよ!なんでテンション上がってんすか!!」

ボンゴレ「すりつぶしたのをトロトロに煮込んだのを与えていくんですってば。肉類の調達、お願いしますよー」

ドラゴン「へいへい……つっても俺らが普段食ってるのでいいんだろ」

ボンゴレ「まあそうなりますねー」

ドラゴン「……クマとか大トカゲとかでもいいのか?」

ボンゴレ「……ギリセーフ、ですかね」

ドラゴン「なら良し」ウン

ボンゴレ「たくましく育ちますね、この子」ウン

ボンゴレ「はーい、じゃあママはお野菜仕舞ってきましゅからねー。ここでパパと一緒に、ぐっすりスヤスヤしててくだしゃいねー?」

赤子「うー?」

ボンゴレ「じゃ、ドラゴンさん様子見ておいて下さいね。あと子守唄歌ってあげて下さい」

ドラゴン「歌えねえよ」

ボンゴレ「じゃあ子守雄叫びとかでもいいです」

ドラゴン「うわあすげえ目が覚めそう」

ボンゴレ「ふんふんふーんっ♪もらったーおイモは何しよかーっとっ♪」パタパタ

ドラゴン「……」ジーッ

赤子「う?」

ドラゴン「……おい、寒くないか?洞窟は結構冷えるからな。毛布を敷いているから大丈夫だと思うが……寒かったら、こう……言えよ」

赤子「……」キョトン

ドラゴン(…………人間っていつぐらいから話せるようになるんだ?……何考えてるかサッパリわからん)

赤子「……ういー……」ググッ……

赤子「だっ!」コロンッ!

ドラゴン「うおっ!?」

・ ・ ・

ドラゴン「……え?何?何転がってんのお前」

赤子「……う~~……だっ!」コロンッ!

ドラゴン「おーい待て待て!それ以上転がるとベッドの外出る!岩肌に直はヤバイ!」ワタワタ

ボンゴレ「ほえ?どーかしました?ドラゴンさん」

ドラゴン「た、助けてくれ!コイツがいきなり寝返り打って――……」

ボンゴレ「え!?寝返り!!?」

ボンゴレ「きゃー!きゃー!見せてくださいアタシにもっ!」ズイッ

赤子「う~~……だっ!」コロンッ!

ドラゴン「おお、逆回転……コイツ賢い」

ボンゴレ「わー!わー!見ました!?寝返り!寝返り打ちましたよ!!」

ドラゴン「……え、うん……それが?」

ボンゴレ「感動が薄いっ!!」ガーン

ボンゴレ「成長したって事ですよー!今まで寝返り打った事なかったでしょー!?」

ドラゴン「え、こういうのも成長なのか……?」

ボンゴレ「足腰がしっかりしてきたって事ですよ!いやーめでたいっすねー。この分だと案外すぐに歩けるようになるかもしんないっすよー」ニコニコ

ドラゴン「成長……そうか……何てことはない日々が続いてると思ったけど……コイツ、いや……この子は成長しているんだな……」

ボンゴレ「しかし、寝返り打てるようになったって事は、この子のベッドも何とかしないとですねー」

ドラゴン「石の上に藁置いて毛布敷いてるだけだもんな……柵みたいなの作らないと駄目か?」

ボンゴレ「そうですね。ちょっと可哀想かもですけど、転がってどっか行かないようにしないと……」

赤子「う~~…………」プルプルプル……

ドラゴン「?……何だ?」

ボンゴレ「ほえ?」

赤子「だっ!だっ!だっ!」

ゴロゴロゴロゴロ!!

ドラゴン「うおおおおおいお前っ!出てるっベッドから出てるッ!!」

ボンゴレ「きゃあああああああ!!!だだだ、大丈夫っすかぁぁっ!?硬い地面で怪我ぁぁぁああ!!!」

ワーキャー!!

赤子「きゃっきゃっきゃ!あははっ!」ニコニコ

ボンゴレ「も~~、寝返り打てるのが楽しいのかもしんないっすけど、無茶しないで下さいよっ!」ギュッ

ドラゴン「うわーすげえ笑ってる……タフだなーこの子」

ボンゴレ「あっ!けどオデコから血ぃ出てます!ど、ドラゴンさん!白魔法で治してあげてくださいっ!」

ドラゴン「何で泣かないんだこの子……」

ドラゴン「『汚れを知らぬ私のこの手に、貴方の痛みを預けておくれ。傷ついた戦士達の身体に、私の優しさを与えておくれ』……」ブツブツ

シュウウ……

赤子「おおー……」パチクリ

ボンゴレ「良かったー。綺麗に治りましたねー」ホッ

ドラゴン「あーしんど」ハァー

ボンゴレ「それにしても、相変わらず鮮やかっすねー。アタシもそういうの使えたらいいんすけど」

ドラゴン「白魔法と黒魔法の二色魔法は、めっちゃ魔力使うからおすすめはしないぞ……」

ボンゴレ「あ、そうなんすか?」

ドラゴン「自然にあるマナと自分の魔力を練らず、自分自身の魔力だけを使って唱えるからな……っていうか、魔法の基本だろ」

ボンゴレ「ゴーレムになってから魔法の基本とか色々忘れちゃったんですよねー。あぱー本当大変だー」

ドラゴン「……まあ、覚えてる事があるだけでも異常っちゃ異常だけどさ。……それにしてもこの子、だいぶたくましくなったな」

赤子「あいっ」ニコッ

ボンゴレ「最近はオークのお父さん達の顔見ても泣かなくなりましたしねー。お父さん達喜んでましたよ」

ドラゴン「あーそういえば……ちょっと前までびーびー泣いてたな」

ボンゴレ「ふふふ……それでこそ未来の魔王っすね!!」

ドラゴン「お前まだそんな事言ってんの?」

ボンゴレ「当然っすよー!全ての魔物の頂点に立つ、最強の者っ!そんな子の育ての親とかテンション上がるじゃないっすかー!!」

ドラゴン「いや、全然」

ボンゴレ「ちぇー、ノリ悪いっすねー。魔王とか強さとか、そういうの興味ないんすか?」

ドラゴン「興味っつーか、ここは魔王の支配下じゃない土地だからな。疎いんだよそういうの」

ボンゴレ「ああ、なるほど……」

ボンゴレ「支配下じゃないって珍しいっすよね。近頃はどいつもこいつも魔王軍の配下じゃないすか?」

ドラゴン「だな。あんなのの何がいいんだか……」ハァー

赤子「……あい?」ピクッ

ボンゴレ「配下になれば魔王のネームバリューで色々お得っすよー?名が売れて上の地位まで行くと領地とかもらえるらしいですしー」

ドラゴン「その代わりに人間の町侵略したり、勇者と戦ったりしないといけないんだぞ。面倒くせぇ……嫌だわそんなん」

赤子「あいっ!あいっ!」パタパタ

ボンゴレ「しかし、支配下にない土地でしたら……魔王軍が侵略しに来てもおかしくないっすよねー」アハハー

ドラゴン「ねーよ。無い無い。魔王城がある北の果ての不毛大陸からここまで、どんだけ離れてるんだっつの」ワハハー

ボンゴレ「ですよねー!」ニャハハー

赤子「あぶー……あい、あいっ!」グイグイッ

ドラゴン「……さっきから騒がしいな。どうした?」

ボンゴレ「んー?外見てどーしたんですかー?今日のお天気でも気になります……か……?」

ピタッ

飛竜「「「グオオオオオオオオオオオオオ」」」

オオオオオオオオオオオオ!!!

ビリビリッ!

ボンゴレ「!!?……なんっ……!?」キーン!

ドラゴン「!!……わ、『飛竜』(ワイバーン)!?」

赤子「ふえ……うええええーんっ!!!」ビエー!

ドラゴン「!!……ボンゴレ、その子連れて洞窟の奥行ってろ」

ボンゴレ「え!?でも……」

ドラゴン「怖いもん知らずのそいつが泣いてんだぞ。……マズいかもしれん。っていうか、実際マズい」

ボンゴレ「ま、マズいって……!!」チラッ

ゴオオオオオ……

ボンゴレ「……あの飛竜(ワイバーン)、何ですか?旗みたいなの、掲げてますけど……」

ドラゴン「……あの旗に書かれてるのは……魔王軍の紋章だ」

ボンゴレ「ほわっ!?」

今回はここまでです

自分がイメージイラスト描いた時は別にメーテル似てなかったんですが、
「服装はメーテルみたいな感じ」と注釈入れたらめっちゃ寄りました
絵上手い人ってすごい

飛竜「グオオオオオオオオオオオオオ!!!」

ゴオオオオオ

ボンゴレ「あの飛竜……もしかして、上に誰か乗ってます?」

ドラゴン「奥行ってろっての」

タンッ

ヒュウウウ……

ボンゴレ「?(何かが飛竜から落ちて――……いや!『降りて』きている!?)」

スタンッ!

ドラゴニュート娘「…………」

ザッ!

ボンゴレ「!!(な、なんちゅー足腰……あんな高い所飛んでる飛竜から飛び降りて、無傷っすか!?)」

赤子「うえええ……」ヒックヒック

ドラゴン「……竜人族か。一体何の用だ?」

ドラゴ娘「…………貴様がこの辺りを治めている、ドラゴンか?」キリッ

ドラゴン「ああ……お前は魔王軍のやつか?」

ドラゴ娘「そうだ。ドラゴン……貴様の事は音に聞いているぞ 。幾千万の呪文を唱え、大空を舞う絶対強者、と……」

ドラゴン「やめてなんかそれ恥ずかしいんだけど」

ドラゴ娘「私は魔王軍四天王の一角、火の『明星』ドラゴニュートだ」

バン

ボンゴレ(し、してんのー!?)アパアパ

ドラゴン「あー……四天王変わったんだ。前はオーガじゃなかった?」

ドラゴ娘「フン、奴は所詮力だけの雑魚……殺すのは容易かったわ」

ドラゴン「あ、そう……」

ドラゴ娘「先代の火の四天王を殺した時、私は思ったのだ……魔王軍は腐敗し、弱さという毒に侵されていると」

ドラゴン「……そりゃ熱心な事で……」

ドラゴ娘「私は考えた。……どうすれば魔王軍を、元のような強き集に変えられるか、とな。……そこで、思い当たったのが貴様だ」

ドラゴン「……いや、いきなりすぎますし……意味がわからん」

ドラゴ娘「とぼけるのもいい加減にしたらどうだ?……元・魔王軍四天王。火の『覇者』ドラゴン」

ドン

ドラゴン「…………」

ボンゴレ「うえええええええええ!!?」

赤子「あぱー?」

バーン!

ドラゴ娘「……何だ、貴様は」ギロリ

ドラゴン「洞窟の奥行ってろってお前」

ボンゴレ「い、いやいやいや……え、ドラゴンさんが元四天王?……はい?」

ドラゴン「100年以上昔の話だぞお前……あん時は若くてちょっと調子乗ってたし。結構黒歴史なんだよ」

ドラゴ娘「黒歴史?……歴代最強の四天王と呼ばれるのがか?」

ドラゴン「ああそうだよ。恥ずかしいわ」

ドラゴ娘「……フン、腑抜けたな。ドラゴンよ」

ドラゴン「……」

ドラゴ娘「貴様を我が魔王軍の配下へ加え、100年前の地獄を世に見せつけようと考えていたのだがな……」

ドラゴン「そりゃご愁傷様。お断りだ」

ドラゴ娘「……見た所、あいつらが……今の貴様の拠り所か?」スッ

ボンゴレ「へ?」

赤子「あい?」

ドラゴン「拠り所っつーか……なんか、成り行きで?」

ドラゴ娘「……歴代最強と言われた貴様が、人間の赤子なんぞを育てているとは」

ドラゴン「成り行きだよ、成り行き」

ドラゴ娘「残念だ……弱くなった。貴様、魔物としての誇りを何処へ失った?」

ドラゴン「おい待て、弱くなった?誇り?……お前なあ……」

ドラゴン「夜中に泣き止まないから背中に乗せて山ん中散歩したり……」

ドラゴン「風邪引いたから全速力でドライアドの所まで薬草貰いにいったり……」

ドラゴン「教育のため、この俺ともあろうモンがメシのたびにわざわざ風魔法使って、ナイフとフォーク浮かせてきちんとしたテーブルマナーで食事したり……」

ドラゴン「不慣れながらもくっせぇオムツ替えたり……」

ゴゴゴゴゴゴ……

ドラゴン「本当に弱くなってたら――……んな事誰が出来るかぁぁぁああ!!!」カッ!!

ドッゴォ――!!!

ドラゴ娘「なっ、炎!?くっ!!」バッ!

ズッドォ――ッ

ドラゴン「魔物のプライドや誇りなんざで赤ん坊が泣き止むかぁぁあああ!!」ボウー!!

ボンゴレ「ちょーちょちょちょ!!ドラゴンさん火ぃ吐くのやめて下さいっ!山に燃え移りますってばぁっ!」

シュウウ……

ドラゴ娘「……ハァ、ハァ!こ、この威力……!!」

ドラゴ娘(火の高位魔法と同程度のものを、詠唱・溜め無しで、だと……!?)

ドラゴ娘「……名剣・『竜殺し(ドラゴンキラー)』で受けなければ死んでいたな……!」

ザッ!

ドラゴ娘「……面白い。衰えてはいないという事か……!!」

ドラゴン「よーしボンゴレ、ちょっと待ってろよ」

ボンゴレ「はい?」

赤子「う?」

ドラゴン「今日の晩飯はドラゴニュートの丸焼きだ」

ボンゴレ「いやいやいやいや……魔物食べるのはアタシ嫌なんですけど」

ドラゴ娘「……殺る気という訳か。覇者・ドラゴン」ギロリ

ドラゴン「お前が帰らねえなら、そういう事になるな。……っていうか俺はドラゴニュートが気に入らねぇんだ。二本足で歩けりゃエラいのかよ」

ドラゴ娘「良かろう。ただし、私が勝利したなら……私の配下についてもらうぞっ!!」

ダッ!

ドラゴン「寝言は寝て言え」ヒュッ

ガキィン!!

今回はここまでです

赤ちゃんの名前はとりあえずつけるつもりはなく、
作中では名前で呼ばれてるみたいな感じで

ギギギ……!

ドラゴ娘「!?私の剣を尻尾で受け取めるとは……!!」ガギギッ

ドラゴン「痛たたた!『竜殺し(ドラゴンキラー)』じゃねーかこれ!!」ブン!!

ザザッ!

ドラゴ娘「くッ!?(切り落とすつもりだったが……弾かれた!?)」

ドラゴン「なんで竜人がドラゴン特効の武器持ってんだよ……ウロコちょっと切れたぞこの野郎」

ドラゴ娘「一太刀目から予想外だな。……何故効かない?」

ドラゴン「いや効いてる効いてる。見て尻尾から血ィ出てるから」

ドラゴ娘「……この剣は、勇者が祭壇で手に入れた伝説の剣を、ドワーフによって打ち直させ、教会の祝福を重ねた剣だぞ……!」

ドラゴン「マジでなんでそんなヤベー武器持ってんだよ……普通にキくからやめろや」

ドラゴ娘「……効いてる割には余裕だな」

ドラゴン「まあ……真面目に俺を殺したけりゃあ、光の勇者を連れてくるべきだろうよ」

ドラゴ娘「フン!ならばこれならどうだッ!?『火精サラマンダーよ!我の下に集いて奇跡を呼び起こしたまえ!』」ゴウッ!

ドラゴン(火魔法?別にそのくらい……)

ドラゴ娘「『明けの明星・血に濡れた同胞・復讐に燃ゆる魂・刹那』――……」ペラペラペラ

ドラゴン(あ、やべ、あれ高位魔法だ……受けたら痛いし、弾き飛ばしたとして山に燃え移るの怖いな……っつかあいつ詠唱早いなー。あーどうしよ……)

ドラゴ娘「終わりだ!『――燃やし尽くせ!フレイム・ブラスト』!!」

ドゴウッ!

ドラゴン「『水精ウンディーネよ――』……『奇跡を――』……」

ペラペラペラペラペラペラ!!

ドラゴン「……『――守れ。ウォーター・ウォール』」

ザバアッ!!

ドラゴ娘「何ッ!?」

ジュオウッ!!

シュウウ……

ドラゴ娘「……く!」

ザッ!

ドラゴン(危ね、間に合わない所だった)タラリ

ドラゴ娘(……何故間に合うッ!?)ギリリッ

ボンゴレ「……ビックリするくらいアタシ空気なんですけど……なんか、実況とかした方がいいですかね?」

ドラゴン「隠れてろお前。危ないぞーこいつ結構強いわ」

ドラゴ娘「『結構強い』程度で済ますな!私は現・四天王だぞ!?」

ドラゴン「じゃあ……相当強い」ウン

ドラゴ娘「言い方の問題じゃあない!」

ドラゴ娘(こいつ……ふざけた態度を取っているが、実力は本物だ……私以上に早い呪文詠唱なんぞ、初めて見た……!!)ギリッ

ドラゴン「?……どうした?終わりかー?」

ドラゴ娘「っざけるな!まだ……」

ドラゴン「次、俺攻撃していいかー?」

ドラゴ娘「……な――……!?」

ドラゴン「すうー……」コオオオ……

ドラゴン「おりゃ」ゴオッ!

ドラゴ娘「うわあっ!糞っ!」ガガガッ!

ドラゴン「てーい」ボオッ!

ドラゴ娘「このッ……!!」ガガガッ!

ドラゴン「もういっちょ」グオッ!

ドラゴ娘「チッ!受けきれな――……!!」ガガガッ

ドラゴン「そーらよ」グオー

ドラゴ娘「待、待――……!!」プルプル……

ドラゴ娘「待て貴様ぁっ!適当な感じで私の全力の火魔法レベルのを吐き出すな!!」バッ!

ドラゴン「はっはっはー。ドラゴニュートは残念だな。二足歩行で歩ける代わりに火を吐き出す事も出来んとは」

ドラゴ娘「貴様レベルの炎は普通のドラゴンでも吐けないぞ!?」

ドラゴン「元四天王ナメんなよ」

ボンゴレ「ドラゴンさん、それだけチートなのに何でこんな所いるんすか?」

ドラゴン「……確かに俺は自分でも驚くくらい、ただのドラゴンにしては、まあ強いよ。……つーか普通のドラゴンは喋る事すら出来ないし」

ボンゴレ「え、そこから?」

ドラゴン「けどな……そんな強さ持ってても、人間の勇者にゃあ中々勝てねえ。もしそいつに勝ったとしても、また強い勇者が現れる」

ドラゴ娘「……」

ドラゴン「最後にゃあ光の勇者のお出ましだ。キリが無ぇし、勝てる訳ねえ。……魔王の言う、人間を滅ぼして魔物の王国作るっつーのは、無理なんだよ……100年前によーくわかったんだ」

ドラゴ娘「…………」

ドラゴン「だからもう俺は争いたくねえ。ここでのんびり、暇つぶしにガキでも育てるのが性に合ってんだ」

ドラゴ娘「……」

ドラゴン「わかったら帰れ。……悪いけど、お前の強さはだいたい理解した。このまま戦うなら、本当に丸焼きにするぞ」

ドラゴ娘「……だ、黙れ」

ドラゴ娘「私は……現・魔王軍四天王だぞ。尻尾を巻いて逃げ出した貴様とは違う」

ドラゴン「逃げ出したっつーか……まあそうだけどさ」

ドラゴ娘「そんな貴様に……私は負ける訳にはいかないのだっ!!」

ブワッ!

ドラゴ娘「『他者を愛せぬ私の右手で、貴方の心を貫こう!全てを傷つける貴方の牙が、私の左手に食い込もうとも』――……!!」

ゴゴゴゴゴ……

ボンゴレ「こ、この詠唱……もしかして、黒魔法!?」

ドラゴン「お前は俺を殺す気か」

ドラゴ娘「貴様を超えるためならば……何だってしてやる!!」

ドラゴン「あーもー何なんだよコイツはー」

ゴゴゴゴゴ……

赤子「ふ、ふえ……」

ドラゴン(避けて赤ん坊に当たりでもしたら最悪だ……けどまともに受けたら死ぬよなぁ。白魔法で相殺出来るか?……やった事ねえ。一か八かになるか)

ゴゴゴゴゴ……

ドラゴン「こっちも全力で止めるぞ。『汚れを知らぬ私のこの手に、貴方の痛みを預けておくれ。傷ついた戦士達の身体に、私の優しさを与えておくれ』――……!!」

ドラゴ娘「遅いッ!終わりだ!『デス・――……」

赤子「ふ……うえええええーん!!!」

ビエー!

ドラゴン「あ、ちょっとタイム」

ドラゴ娘「――ブレイド・――……』……は?何?」

ドスドスドス……

ドラゴン「おーよしよし泣くな泣くな。ほーら風魔法で高いたかーい」ブワッ

赤子「えーん!えーん!!」ビヤー!

ボンゴレ「いないいなーいあぱー!足をすぽーん!」カポッ

ドラゴン「お前はもっと笑わすネタねえのかよ」

ボンゴレ「何をー!?ドラゴンさんだって高いたかーいしかないじゃないすか!」

ドラゴン「花火・水芸・土の揺りかごに火吹きも出来るぞ」

ボンゴレ「あぱー、何気に多様性がすごいー」

ドラゴ娘「……ま、待てドラゴン、貴様……!!」ワナワナ

ドラゴ娘「私を舐めているのか!?勝負の最中に何をしているーっ!?」ジタバタ

ドラゴン「いや、だって子供が泣いたし……」

ドラゴ娘「ふ!ざ!け!る!なっ!!」ジダンダッ

ボンゴレ「ドラゴンさん、泣き止ますの上手くなりましたよねー」

ドラゴン「俺だって毎日成長してる訳だなー」

赤子「あぶ……えへへへへ……きゃっきゃっ!」ニコー

ボンゴレ「あー良かった。やっぱこの子には笑顔があってますね」

ドラゴン「ん……そうだな」

ドラゴン「よっしゃ、タイム終了ー。今どんな感じだっけ」

ボンゴレ「ええーと、ドラゴニュートさんが黒魔法唱えてた所だったような」

ドラゴン「ああそうだった。よっしゃもっかい撃ってこい。今度は受けたる。なんとかそらしたらいける気がする」バッチコーイ

ドラゴ娘「……どう考えてもそんな空気じゃあないだろう……!!」ワナワナ

ドラゴ娘「貴様は……貴様という奴は……本当に腑抜けている。どうしようもないくらいに……!!」

ドラゴン「腑抜けてる言われてもなあ……」

ドラゴ娘(……しかし、そんなコイツに、私は……本気で戦ってすらもらえない。……それが今の私の実力、か……!!)

ドラゴ娘「……貴様のような奴は産まれて初めてだ。……本当に腹が立つ」

ドラゴン「……なんかごめんなさい」

ドラゴ娘「貴様のような腑抜けを……腑抜け中の腑抜けで、腑抜けを腑抜けで煮込んだような奴を連れて行った所で、箸にも棒にもかからんわ。この……腑抜けが!!」

ドラゴン「腑抜け言い過ぎだろ。流石に傷付くぞ」

ドラゴ娘「……糞!貴様が腑抜けでなければ……魔王軍はもっと……!!」ギリッ

ボンゴレ「……あのー、ですね。ドラゴニュートさん」

ドラゴ娘「……何だ、骨女」

ボンゴレ「大丈夫です!あと数年……数十年ほど待ってくれれば」

ドラゴ娘「……何だと?何の話だ」

ボンゴレ「その頃にはこの子、すっごく強くなって……魔王になってますから!」

バン!

赤子「……あぱ?」

ドラゴ娘「……何を言ってるんだこいつは」

ドラゴン「すまん、こいつ脳まで骨なんだ」

ボンゴレ「ちーがーいーまーすー!ドラゴンさんを渡して魔王軍強くするのは無理ですけど、将来この子を強く育てて、魔王にして、魔王軍を強くさせるって話ですよ!」

赤子「あいー」

ドラゴ娘「……冗談にしては笑えんな」

ボンゴレ「冗談じゃないっすもん!」

ドラゴ娘「……本気で言っているのか?貧弱な人間の子供を……私よりも強く、全ての魔物の頂点に立つ……魔王にすると」

ボンゴレ「はいっ!」

赤子「あいっ」

ドラゴ娘「……フフフ……ハハハ……」

ドラゴ娘「ハハハハ!面白い!冗談ではないからこそ、面白いな……」

ボンゴレ「むっかー!結局笑うんじゃないすかー!」プンスカ

ドラゴン「どうどう、落ち着け」

ドラゴ娘「……フフ、人間の子が、魔王に……か」

ドラゴ娘「その泣き虫の赤ん坊が、どう育つのか……少し、興味がわいた」

ボンゴレ「!」

ドラゴン「……」

ドラゴ娘「……腑抜けた貴様がその子をどう育てるか……期待しているぞ。ドラゴン」

ドラゴン「……ああ。腑抜けが育てたとは思えんくらいにしてやるよ」

ドラゴ娘「……フン」

ザッ!

飛竜「オオオオオオ……」バサアッ!

ヒュウウウ……

ドラゴン「……行ったか。フウ……誰も怪我しなくて良かった」

ボンゴレ「さーてと!四天王に大見得を切っちゃったんだし!これから忙しくなりますよー!」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「やっぱり魔法はある程度使えるようにしたいでしょ?剣術だって教えないといけないし……あ!魔王だったら頭も良くないとダメですよね……そういうのって小さい時から教えないといけないのかなー……」ウーン

ドラゴン「……なあ、ボーンゴーレム」

ボンゴレ「なんすか?アタシ今この子の育成方針で考え中なんすけどー」

ドラゴン「いや、あのな。これ常識だと思ってたんだど……」

ドラゴン「魔王って基本、世襲制だぞ」

ボンゴレ「…………えっ」

ドラゴン「『えっ』ってお前……」

赤子「あぱー……」

…………

今回はここまでです

…………

テコテコ……

ボンゴレ「こんにちはーっ、母オークさーん」ヒョコッ

赤子「あーいー」

母オーク「あら、ボーンゴーレムちゃんじゃあないか。おっぱいかい?」

赤子オーク「ぷぎ?」

ボンゴレ「はいー。少し飲ませてあげてもらえますかー?」

母オーク「おーよしよし、さぁおいでー」ギュッ

赤子「んー……」チュウチュウ

母オーク「この子も大きくなったねぇ。もうだいぶ離乳食を食べるようになったんじゃないかい?」

ボンゴレ「そうですねー。おっぱい頂くのも、もうそろそろ終わりになりそうですねぇ」

母オーク「そうかい。それは寂しくなるねぇ……」

赤子「んー……」チュウチュウ

ボンゴレ「いえいえ、今まで無理言って甘えてすみませんです」

母オーク「なんの、子供の一人や二人増えた所で変わんないよ!」

ボンゴレ「オークの赤ちゃんも大きくなりましたねぇ。いないいなーい、あぱー!」ベー!

赤子オーク「きゃっきゃっ!」ニコニコ

ボンゴレ「うんうん!目鼻立ちとか母オークさんに似てきましたねえ。美人さんになりますよーこの子も」ニコニコ

母オーク「そういやボーンゴーレムちゃん、あんたおんぶ紐持ってるのかい?こうしておんぶしてたら家事とか楽だよ?」

ボンゴレ「あぱー、持ってないですねぇ。こーいうのって下の人間の町で買えますか?それとも革をより合わせて作る感じですかねぇ」

母オーク「いいよいいよ!このくらい何本も余ってるからさ!……おーいアンター!奥におんぶ紐置いてなかったかーい!?」

ノソノソ……

父オーク「おう、これか?……んん?なんだボーンゴーレムちゃん。来てたのか」ノソッ

ボンゴレ「どうもお邪魔してます、父オークさん」ペコリ

父オーク「おー坊主も一緒かー。いないいなーい、オラー」クワッ!

赤子「きゃっきゃっ!」ケラケラ

ボンゴレ「よく笑えるなぁこの子……鬼のような形相なのに」

母オーク「アンタ!この子は女の子だって何回言わすんだい!坊主じゃないよ!」

父オーク「カタい事言うない……俺ァ男子が好きなんだ」ブスッ

母オーク「またそんな事言って……ちょいと聞いとくれよボーンゴーレムちゃん。この人ったらウチの上の娘にデレデレでねえ。一人部屋のほら穴掘ってほしいって言われて、ウチのリビングなんかより大きな穴掘っちゃって!」

父オーク「うるせーぞ母ちゃん!ベラベラうちの事喋るない!」

ボンゴレ「あ、あはは……まあ娘さん可愛いですもんねぇ。優しくなっちゃうのもわかりますよー」

父オーク「うん、母ちゃんに似たんだ」ニコニコ

母オーク「恥ずかしい事言うんじゃないよアンタは!」バシッ!

母オーク「娘が可愛いのはわかるけどねえ、息子の方も可愛がってあげなよ。上のお兄ちゃんはともかく、下の三人はまだ小さいんだから」

父オーク「男はみんな戦士だ。可愛がるなんてバカ言っちゃいけねえよ……お前も男だったらなあ。立派なオークの戦士に育てたっていうのに……」

赤子オーク「ぷいー?」

父オーク「ちくしょう、母ちゃんに似て可愛いなあコイツも」

母オーク「バカな事ばっかり言ってんじゃないよアンタは!」バッシィー!

父オーク「いちち、母ちゃん年々力強くなってるぜ……」

ボンゴレ「下の男の子達三人は、今何してるんですか?」

父オーク「戦士の特訓だ」

母オーク「向こうの丘で、お兄ちゃん達三人と遊んでもらってるよ。上三人は三つ子でねえ、今15かそこいらなんだけど、下の年子の三人の良い遊び相手だよ」

ボンゴレ「本当、大家族ですね。お兄ちゃん三人に6歳のお姉ちゃん、5歳から3歳までの弟に、今年産まれた妹ちゃん……」

父オーク「たまに誰が誰だかわからんくなるんだ」ガハハ

母オーク「こんだけ産んだんだから、ちょっとは家事の手伝いして母ちゃんに楽させて欲しいもんだよ!」

父オーク「バカ言うない、女は家庭を守って、男は戦士になるんだ」

母オーク「はいはい古臭い考えだよ。戦士ったって、遊んでるだけじゃないか」

父オーク「ああいう遊びを通じて戦士へ成長していくんだよ」

ボンゴレ「……その遊びって、そのー……強くなるんですか?」

父オーク「うん?」

父オーク「ああ。上三人には子供の時からみっちり俺が剣術やら斧での戦闘やら教え込んどるからなぁ。……あいつらがやってるのは戦いごっこだが、オークの子供は年上から叩きのめされて成長していくんだ」

母オーク「上三人もお隣さんの子に昔っからよくいじめられてねぇ。よくタンコブ作って帰って来たもんだよ」

父オーク「その痛みがあればこそ、俺のような立派なオークになれるんだよ」ムキッ

母オーク「はいはい、アンタいつまでも家でゴロゴロしてないで、晩御飯何か獲ってきな」

父オーク「……母ちゃんには勝てねえぜ」ノソノソ……

ボンゴレ「うーん……そういうのって何歳くらいからやるもんなんですかねー?」

母オーク「なんだいボーンゴーレムちゃん、オークの子育てに興味あるのかい?」

ボンゴレ「いや、アタシこの子を強く育てたいんですよ」

赤子「あう?」

母オーク「……女の子だろう?この子。別に強く育てなくったって……」

ボンゴレ「そうはいきません。アタシはこの子を魔王にするんですからっ!」フンスッ

母オーク「あーあー、前に四天王だか何だかが来た時に約束したんだったか。うーん……けどねぇ、魔王ったって……」

ボンゴレ「……難しいですかね?」

母オーク「オークってのは身体が強くてね。子供ん時から大怪我したって数日経てばケロッとしてるもんさ。だからあたしも安心して無茶な事やらせて、結果として強く育てちゃいるが……人間の、しかも女の子ってのは弱いからねえ……」

ボンゴレ「うーん……」

母オーク「まあ、まだ赤ん坊なんだしそんな先の事考えたってしょうがないさ!いい年になったらウチの子と遊ばせて、色々教えてもらったらいいだろ!」

ボンゴレ「ありがとうございます。色々迷惑かけますねぇー」

母オーク「ご近所付き合いなんて迷惑かけてナンボさアンタ。ああけど、ウチの娘とも遊ばせてもらっていいかい?」

ボンゴレ「え?」

母オーク「ウチは男だらけだからねぇ。ウチの娘、その子が来た事で妹がもう一人出来たみたいだって喜んでんだよ。強く育てるため息子と遊ばせるのもいいけど、たまには娘とも遊ばせてやっとくれ」

ボンゴレ「ええ、必ず。……ふふっ、まーだちっこい赤ちゃんなのに、将来の予定はぎっしりですねー?」

赤子「あうー?」

母オーク「ははっ、せわしない事だよ!」

アハハハハ……

…………

…………

テコテコ

ボンゴレ「ただいま帰りましたーっ」

赤子「あーい」

ドラゴン「おかえりー……遅かったな。なんかあったか?」

ボンゴレ「いえいえ。ちょっと母オークさんと話し込んじゃっただけですよー」

ドラゴン「そうか。母オークさんの話は勉強になるからなぁ。……狩り行ってきたぞ。野生化した馬がいたから一匹とってきた」

ボンゴレ「おっと、じゃあ血抜きしないとですねー」

ボンゴレ「よっこい、しょっ……っと。うひー、でっかいっすねーコイツ」グイッ

ボタボタ……

ドラゴン「母オークさん、何か言ってたかー?」

ボンゴレ「色々お話しましたけどー……あ、この子の子育て方針についてちょっと相談しまして」

ドラゴン「……強く育てるには、か……」

ボンゴレ「そうっすよ。ドラゴンさんあんまり乗り気じゃないっすねー」

ドラゴン「いや、別にそういう風に育てたいなら協力はするが……うーん……」

ボンゴレ「何すかー?何か言いたいことあるんすかー?」

ドラゴン「えっと、あのな……」

……バタバタバタ!

ドラゴン「……ん?」

ザザッ!

ミノ娘「……はぁ、はぁ!ど、ドラゴンにボーンゴーレム!赤ちゃん!無事なのかよっ!?」

ボンゴレ「あぱー?ミノタウロスさん、どうしたんすか?息切らして」

ミノ娘「た、旅先で……四天王が南の山のヌシを襲ったって聞いたから、急いで戻って来たんだよ!!」

ドラゴン「お前それ結構前の話だぞ」

ミノ娘「ううう、うるせえっ!これでも全速力で帰って来たんだぞ!赤ちゃんは!?」

ボンゴレ「怪我一つありませんよ。ほーら抱いてもらいまちょうねー」

赤子「あーいっ♪」ヒシッ

ミノ娘「おっとっと、よしよし……おっ、結構重くなったな」

ボンゴレ「ミノタウロスさん、旅ってどこまで行ってたんですか?」

ミノ娘「ん?ああー大したもんじゃねえよ。ムックォーの山まで行ってただけだ」

ボンゴレ「遠っ!馬で10日はかかりますよ!?」

ドラゴン「お前、いい加減流浪の旅とかやめたらどうだ?いい歳だろ」

ミノ娘「いや、だから……婿探しに旅してんだよ」ボソッ

ドラゴン「あ、そう……」

ミノ娘「あそこに魔物の村があるって聞いたから行ってみたんだが、エルフの隠れ里だったよ……無駄足だ」ハァー

ボンゴレ「今時珍しいですね、隠れ里って」

ドラゴン「そうでもねえよ。人間と共存してるエルフもいるが、自然を好んで森に住むのが大多数だ……迷いの森に住んでる奴らもそうだろ」

ボンゴレ「あ、そういえば確かに……」

ミノ娘「って、おれの話はどうでもいいんだよ!四天王はどうだったんだ?戦ったんだろ?」

ドラゴン「いやまあ一応戦ったけど……どういう噂が広がってんだ?」

ミノ娘「四天王とドラゴンの総力戦で、始まりの町が壊滅状態だって聞いたけど……」

ドラゴン「尾ヒレ付きすぎィ!」

ボンゴレ「始まりの町って、下にある人間の町の事ですか?あんな所まで攻撃飛ばないっすよ遠い!!」

ドラゴン「平和ーにバシバシやりあって、平和ーにお帰りいただいただけだ」

ミノ娘「平和ってなんだよ」

ドラゴン「事実なんだが……」

ボンゴレ「向こうは殺す気で攻撃してたっすけどねえ……あ!そーですよ聞いて下さいよミノタウロスさん!」

ミノ娘「は?」

ボンゴレ「ふっふっふ……実はですねぇ、このドラゴンさん!今まで隠してたそうですが、何と!!……元四天王だったんですよ!ぱんぱかぱーん!!」

ミノ娘「あー……やっぱそうなんだ」

ドラゴン「うん」

ボンゴレ「反応が薄いっ!」ガビーン

ボンゴレ「なーんなんですかぁーもうー!もっと驚いて下さいよおっ!」プンスカ

赤子「きゃっきゃっ!」ニコニコ

ミノ娘「いや、旅してたら意外と元四天王ってのに会うんだよな……それにこいつが強いのは知ってるし」

ドラゴン「風の四天王は入れ替わり激しいからなぁ……まあ元四天王っていうの、嘘も多いけど」

ミノ娘「つーかお前、なんで四天王辞めたんだよ。こんな田舎の山ん中で暮らすよりよっぽど良い生活だったろ」

ボンゴレ「そ、そうですそうですそれですよっ!ドラゴンさん敵なしレベルで強かったんでしょ?いくら勇者達と戦うのが嫌だからって……」

ドラゴン「……自信、無くしてな」

ミノ娘「へ?」

赤子「あい?」

ボンゴレ「……『自信』?」

ドラゴン「……大昔の話だ。100年前……俺は魔王軍四天王として、遠征中……北の大地で人間の軍隊に出会い、不覚を取った……」

…………

…………

ワアアアアア……!!

「「「射て――ッ」」」

ヒュンヒュンヒュン!!

ドスドスッ!

オ オ オ オ オ オ

「やった!当たったぞ!!」

「覇者に深手を与えた!もっと弓を射て!!」

「死ね!ドラゴンめ!!」

ヒュンヒュンヒュン!

ドスドスッ!

「!!!……」ガフッ

ゴウッ!!

「「「ぎゃあああああ……」」」

「炎に怯むな、もっと射て!!」

「化物め!!この……悪魔めえっ!!」

ヒュンヒュンヒュン!!

ドスドスドスッ!!

「!……ぐ……」

バサッ!

バサッバサッ……

「逃げていくぞ!卑怯者め!」

「追え!殺せーっ!」

「見たか、人間の力!」

「万歳、ばんざーい!」

ウオオオオ……

…………

今回はここまでです
少し中途半端ですが……

…………

ヒュウウウウ……

ドラゴン「く……ハァハァ、人間め……!祝福された矢を射るとは……!!」

ボタボタ……

ズルズル……

ドラゴン(糞、傷が塞がらん!白魔法……も、魔力が足りんか……)

ググッ……

ドラゴン「……畜生、こんな、所で……!」

ドサッ

ヒュウウウウ……

ドラゴン(……寒い……俺の一生は、こんな荒れ果てた氷の大地で終わるのか……)

……ヒュウウウウ……

ザッ

女「……あの……大丈夫、ですか?」

ドラゴン「……」ピクリ

ヒュウウウウ……

ドラゴン(……人間……追っ手か?いやしかし、一人だし……女?)

女「うわ、すごい傷……矢が刺さったままですよ。痛そう……」スッ

ドラゴン「さ……わるな!」

女「あ、大丈夫です!私、少し白魔法の心得ありますので!」

ドラゴン「……何を言っているんだ、貴様は……!!」

女「いや、だから治そうと……」

ドラゴン「俺が誰だか知らないのか?四天王の火、覇者と呼ばれる……」

女「あー……知ってます。噂くらいは」

ドラゴン「……知っているなら、わかるだろう。俺はもう動けん。……四天王を殺す、チャンスだぞ」

女「……いや、えーっと……」

ドラゴン「……この傷は、貴様ら人間から受けたものだ」

女「……」

ドラゴン「その事に、恨みは無い。ここまでされるほどには、俺も人間達を襲ったし、殺した。……だから殺されても、文句は無い」

女「……」

ドラゴン「しかし、安い同情なんかで命を拾うのは、恥だ。それも、貴様のような小さな人間に……」

女「安い同情なんかじゃありませんっ!」

ドラゴン「!!」

女「私は……本気で貴方を助けたいんです!そのためなら……貴方に殺されたっていい!」

ドラゴン「……何故だ?何故、そこまで……」

女「何故、って……」

女「苦しんでいる人がいたら、助けたい。……それが、おかしな事ですか?」

ドラゴン「!……」

女「動かないで下さいね。……『汚れを知らぬ私のこの手に、貴方の痛みを預けておくれ。傷ついた戦士達の身体に、私の優しさを与えておくれ』――……」ブツブツ

シュウウ……

女「……ふーっ。どうですか?傷は……」

ドラゴン「……あ、ああ。……問題ない」

女「そうですか?良かったぁ」ニコッ

ドラゴン(……馬鹿な、祝福された武器でつけられた傷だぞ……一回の呪文で治すとは……!)

女「それで……どうします?」

ドラゴン「……何がだ?」

女「私のこと……殺しますか?」

ドラゴン「……」

ドラゴン「……治してくれた礼だ。見逃してやる。……しかし、次は無いぞ」

女「はぁー良かった!今ので魔力切れちゃったから、襲われたらどうしようかと思いましたよー」アハハ

ドラゴン「……何故……」

女「え?」

ヒュウウウ……

ドラゴン「……何故、そこまでして助ける?」

女「だから、言ったじゃないですか。苦しんでいる人がいたら――……」

ドラゴン「そうじゃない。魔力が切れて、襲われたら殺されていたというのに……何故そこまでして助けるんだ?ただの博愛主義では説明がつかん。人間とは……自分の生命が最も大切なのだろう?」

女「それは――……そういう人もいますけど……」

ドラゴン「それに……俺は魔物で、四天王だぞ。傷付いた俺を助けると、もっと沢山の人が傷付くんだぞ」

女「…………」

ドラゴン「俺を生かすと、もっともっと沢山の人が死ぬんだぞ?……それでも、助けると言うのか?」

女「……」

女「……貴方を助ける事で、もっと沢山の人が傷付くのなら……もっともっと沢山の人が、死ぬのなら……」

ドラゴン「……」

女「私はもっともっと、もっともっともーっと沢山の人を、助けます。……貴方が傷つける人も含めて、それ以上も。傷つけませんし、殺させません」

ドラゴン「……」

女「そうやって旅してきたんですよ。人や、魔物や、動物だって、苦しんでいたら助けてきました。みんなが苦しんでいたら、私は彼ら以上に、苦しい。……だから、私は目に見える全てを、助けたいんです。……それが原因で、私が殺されたとしても……私は、助けたい」

ドラゴン「……」

女「強いていうなら、それが理由です。……それに、私……貴方が心の底から悪い人だなんて、思えませんから」ニコッ

ドラゴン「…………馬鹿だろ、お前」プイッ

女「えへへ、面と向かって言われると照れますねぇ」テレテレ

ドラゴン「褒めてないんだが」

ドラゴン「……助ける、か。……四天王として殺し続けてきた俺とは、真逆だ」

女「良いもんですよ?命を助けるっていうのは」

ドラゴン「……全くわからんな」

女「貴方が今まで、奪い、殺してきたのなら……これから先の人生、少しでいいから、命を助けて、育んでみて下さい。そしたら、きっと……今までの人生とは違うものが見えるはずです」

ドラゴン「……」

女「とりあえず、今はですねー……」

ピトッ!

女「風をしのいで、私の命を助けてもらっていいですか?すっごく寒いんですよー」

ドラゴン「おい、くっつくな!」

女「いいじゃないですか。私、命の恩人ですし?……あ、それとも私を殺します?やっちゃいます?」

ドラゴン「こ、この野郎……!!」

女「えへへ……あー、すっごくあったかい……」

ヒュウウウウ……

…………

…………

ドラゴン「……っていう事があってな……」

ミノ娘「へぇー……」

赤子「あうー……」

ボンゴレ「なるほど、それで悪い事から足を洗った訳ですねー……良い話です……」グスッ

ドラゴン「あーいや、そうじゃなくて」

ドラゴン「実はそいつ、勇者だったらしくてさー……そのすぐ後に当時の魔王と戦って、三分でノしたそうで……」

ボンゴレ「どういう事ですかそれ」

ドラゴン「当時の魔王泣いて謝ったらしい」

ミノ娘「バケモンじゃねーか」

今回はここまでです

ドラゴン「まあ、そういう事が大昔にあって、四天王っていう立場に自信無くしてな。……引退してそいつの生まれ故郷だっていう町の近くに住む事にした訳だ」

ボンゴレ「ま、まあ細かい事はともかく……良い話ですねぇ。一人の女性に救われた事で人生が変わるっていう……」

ミノ娘「良い話かな、これ……」

ボンゴレ「あれ?んじゃあ今は魔王誰がやってるんですか?負けちゃったんですよね?」

ドラゴン「お前本当何も知らないんだな……娘だよ。その魔王の娘」

ミノ娘「世襲制だからなぁ魔王は……支配力は下がったが、その時の魔王より数段強いって聞く」

ボンゴレ「ほえー……え、じゃあ今魔王軍すごくないすか?」

ドラゴン「当時の四天王、俺とか他のヤツとかが抜けたから総合的な強さはトントンだろ。昔戦った事あるけど、今の風の四天王とか俺の半分以下の強さだぞ」

ミノ娘「お前ホンット意味わからんくらい強いんだな……」

ドラゴン「っていうかボンゴレ。さっき言おうとしてた事なんだがな……」

ボンゴレ「はい?」

ドラゴン「魔王っていうのは、基本的に世襲制で……一応、魔王を倒した魔物が次の魔王になれるっていう制度はあるんだか」

ボンゴレ「え!?そうなんですか!?」

ミノ娘「まあ、魔王と戦う前に四天王とかとも戦わないといけないから、正直無理だけどなぁ……そこまでして魔王になりたいとは思わねえよ」

ボンゴレ「けどけど!それならこの子が魔王倒せば、魔王になれるんですよね!?」

ドラゴン「いや問題はそれなんだけど」

ドラゴン「っていうかボンゴレ。さっき言おうとしてた事なんだがな……」

ボンゴレ「はい?」

ドラゴン「魔王っていうのは、基本的に世襲制で……一応、魔王を倒した魔物が次の魔王になれるっていう制度はあるんだか」

ボンゴレ「え!?そうなんですか!?」

ミノ娘「まあ、魔王と戦う前に四天王とかとも戦わないといけないから、正直無理だけどなぁ……そこまでして魔王になりたいとは思わねえよ」

ボンゴレ「けどけど!それならこの子が魔王倒せば、魔王になれるんですよね!?」

ドラゴン「いや問題はそれなんだけど」

>>284
すみませんコピペミスです

ドラゴン「この子……人間だろ?」

ボンゴレ「はい」

ドラゴン「……人間が魔王倒したら……そいつ、何って呼ばれると思う?」

ボンゴレ「…………真の勇者・人類の希望の光……『光の勇者』、ですねぇ……」

ドラゴン「な?」

赤子「……あぱー……」

ミノ娘「やるせねえなぁ……」

ボンゴレ「むー!じゃあ今から身も心も魔物にするしかないっすね!てーおーがくっすよ、てーおー!」

赤子「えおー?」キョトン

ミノ娘「上手くいくかなぁ……」

ボンゴレ「ドラゴンさん!アタシさらにやる気出てきましたよ!一生懸命育てましょうね!!」

ドラゴン「……ああ……」ジッ

赤子「あうー?」キョトン

ドラゴン「…………」

…………

『少しでいいから、命を助けて、育んでみて下さい。そしたら、きっと……今までの人生とは違うものが見えるはずです』

…………

魔物と人間の違いってなんなんだろう

ドラゴン「……未だにわからんよ、俺には……」ボソッ

赤子「……あうー……!」グッ

ドラゴン「……ん?」

ヨチヨチ……

赤子「あいっ!あいっ!あいっ!」

ドラゴン「……う……うおおおおあああ!?」ビクーン!

ボンゴレ「ひゃっ!?ど、どうしましたドラゴンさん!?」

ドラゴン「み……見ろ!こ、こ……この子っ!!」

ドラゴン「四つ足で歩いてやがるー!!」

ギャーン!!

赤子「あいー!」ヨチヨチ

ボンゴレ「……ええっ!?」

ドラゴン「どどど、どうしようボンゴレ!?ずーっと俺の歩く姿見てたから、この子四つ足で歩くようになっちゃったのかな!?」オロオロ

ボンゴレ「落ち着いて下さいドラゴンさん、正常ですからこれ!」

ミノ娘「おおー!ついにハイハイするようになったのか!」

ドラゴン「……『ハイハイ』?」

ミノ娘「赤ちゃんっていうのは初めから足腰が強い訳じゃないですから、こうやって歩く練習から始めるんですよ」

ドラゴン「……つまり……これが普通に、成長したって事?」

ボンゴレ「そういう事です」

赤子「あうー」ヨチヨチ

ボンゴレ「わー!わー!すっごいですねー初めてでこんなに歩くなんて!」

ミノ娘「すげーすげー!ほーらこっちおいでー」

赤子「あいっ!」ヨチヨチ

ドラゴン「……成長、か……」

赤子「あいっ!」ニコッ

ドラゴン「…………」フッ

ドラゴン「……ちょっとは見えた、かな。……違うものっていうの」

…………

今回はここまでです

>>290
説明するほどのモンじゃあないけど説明すると長い

人間……『我々の世界』の人間。耳が短く60年くらいしか生きないくせに、女神の祝福を受けることが出来て、ものすごい魔力を持つ事がある種族

魔物……『我々の世界』にいない生き物。だいたいは人間に攻撃的

亜人……『我々の世界』におらず、人間と交配可能な人間に似ている種族。ただし交配すると9割亜人の子が生まれる。エルフやゴブリンの一部は人間と生活していたりする。
基準は割とあいまい



この中でも色々あって、例えば作中のドラゴンさんを人間レベルだとすると、ドラゴニュート娘に乗り物として使われたワイバーンはチンパンジーレベル
です
種族間でそういう上下や差別が色々ある世界です。『我々の世界』でもそうだしね

…………

赤子「まーま!まーま!」

ドラゴン「……」

ボンゴレ「……」

ドラゴン「……う……」

ボンゴレ「……き……」

ドラゴン「うおおおおおおおお!!!」

ボンゴレ「きゃあああああああ!!!」

ドラ・ボン「「しゃべったああああああ!!!」」

ボンゴレ「あ、アタシ!?アタシのことですよね!?ほら、アタシはー?」

赤子「まーま!」

ボンゴレ「じ、じゃあこっちはー?」

赤子「ぱーぱ!」

ドラ・ボン「「ひええええええええええ!!」」

ミノ娘「……朝っぱらからうるせーなぁ。おれのねぐらまで響いたぞ……どうした?」ノソッ

ボンゴレ「ききき、聞いて下さいよミノタウロスさん!この子が、しゃべ、しゃべ……!!」

ミノ娘「おっ、やっと喋れるようになったかー!どーれ赤ちゃん、おれはー?」

赤子「おっぱ!」

ミノ娘「…………なあ、こいつおれの事『おっぱい』って言ってねえ?」

ドラゴン「いやまあ、事実だし……」

ミノ娘「ざっけんな!おれだってなあ、『おねえちゃん』とか、そういう……」

ボンゴレ「まーまーまーまーミノタウロスさん。喋れるようになっただけでも凄いんですから……」ニコニコ

ドラゴン「俺はー?」

赤子「ぱーぱ!」ニコッ

ドラゴン「……ぐふ、ぐふふふふ……」ニマニマ

ミノ娘「ドラゴン、お前今めっちゃキモいぞ」

ミノ娘「なあ、おれは……?」

赤子「おっぱ!」ニパー

ミノ娘「……チクショー今日中に呼び方『ミノタウロスのお姉ちゃん』に変えてやる」

ボンゴレ「長すぎますよ……無理ですって」 

ドラゴン「いやしかし、めでたい事だな……今日は豪勢にいくか!?」

ボンゴレ「そうですねー!じゃあ取っておいた世界樹の実でも出しますか!?」

ドラゴン「おーう出せ出せ!何でも出しちまえー!」

赤子「まーま、まんまー?」

ボンゴレ「そうでしゅよー、今日のまんまは豪華でしゅからねー?」ニコッ

赤子「あぱー!」

ボンゴレ「あぱー!」ニココーッ

ドラゴン「!…………」

ミノ娘「ん?どうしたドラゴン、なんかいきなり暗い顔してるけど……」

ドラゴン「いや……喋れるようになった事で、心配になってな……」

ミノ娘「心配?」

ドラゴン「このまま変な言葉使いとか覚えたらどうしよう……」ガタガタ

ミノ娘「お前、結構子煩悩だよな……」

ドラゴン「だってよ、俺もお前もボンゴレも、正しく綺麗な言葉使ってるかっていうと、微妙だろ?」

ボンゴレ「んまっ!なんですかそれー!アタシはめちゃんこ綺麗な言葉使いっすよー!」

ドラゴン「すでに怪しいわお前」

ミノ娘「まあ確かに、おれも結構男っぽい言葉使いとは言われるしなぁ……」

ドラゴン「だろ?」

赤子「おえー?」キョトン

ドラゴン「ほら!なんか『おれ』って言葉覚えようとしてんじゃん!駄目だろそれは!」

ミノ娘「いやまあ……なんかすまん」

ドラゴン「お前ほら、この子を魔王にするっつってんだろ?」

ボンゴレ「まあ、そうっすけど」

ドラゴン「もしこの子が魔王になったとして、『おれが魔王っすよーあぱぱー!』とか言ったら、なんか凄い残念じゃね?」

ボンゴレ「なんかすっごい馬鹿にされたような気がするんすけど」

ミノ娘「奇遇だな、おれもだ」

ドラゴン「学ぶって事に『早すぎる』ってもんはねえ……今すぐにでも、しっかりとした教育をすべきだ」

ボンゴレ「……と言っても……どうするんすか?オークさん所に行きます?」

ドラゴン「いや……実は俺に、心当たりがある」

ボンゴレ「ほえ?」

ミノ娘「!!……も、もしかしてドラゴン、お前……『生命の湖』に行く気か?」

ドラゴン「知ってたか、ミノタウロスの」

ミノ娘「馬鹿、危険だ!やめとけって!何人も食われてんだぞ、あいつにっ!」

ボンゴレ「食……なんの話ですか、それ」

ドラゴン「話に尾ヒレがついただけだっつの。そんなビビるもんじゃねーよ」

ミノ娘「尾ヒレとかじゃねーよ!マジで危ないんだって!」

ミノ娘「一見綺麗な湖で、あらゆるものに知識や生命を分け与えてくれるが……礼儀を知らない人間や魔物が近づくと何者かが襲いかかり、水中に引きずり込まれて死んでしまうという……!」

ボンゴレ「わーわーわーわー!聞きたくないっ!めちゃんこホラーじゃないっすか!!」

ミノ娘「なんでもあの湖には、水の精霊ウンディーネが住んでいて、湖を汚した人間や魔物を憎んでいるって……!」

ドラゴン「ウンディーネじゃねえよ、あそこに住んでるのは。……っていうか精霊とか実在しねえって」

ドラゴン「あの湖に住んでるのは、俺の昔なじみだ。頭良いから子供の教育とか完璧にやってくれるだろ」

ミノ娘「人間や魔物を殺す奴だぞ!?赤ん坊の教育とか無理だろ!!っていうか昔なじみて、魔物か?……精霊ウンディーネが実在した方がマシだろ……」

ボンゴレ「まあその話が本当なら、アタシもこの子を危険にさらしたくないすよ。魔物って基本的に人間嫌いじゃないすかー」

ミノ娘「人間どころか魔物も嫌ってるんだぞ、あそこにいるヤツは!」

ドラゴン「迷いの森に住んでる連中、たまにあそこに遊びに行くって言ってたぞ。木々に与える綺麗な水を汲みに行くって、エルフが……」

ミノ娘「あいつらは大丈夫なんだろ、無害そうだから!お前らすげえ有害そうだもん!!」

ドラゴン「有害って言葉を生き物に使う所、初めて聞いたわ」

ドラゴン「何も問題ねえって。最低限死ぬ事ァねえよ」

ミノ娘「おれはお前らを心配して――……!!」

ドラゴン「ああ、ありがとうな。だけどまあ大丈夫だ。俺、元四天王だし」

ミノ娘「なんか腹立つなーその言葉ー」

ドラゴン「おーい準備して行くぞーボンゴレ。食料やら雑貨やらありったけ持っていけよー。しばらくここには戻らんから」

ボンゴレ「へ?……へ??し、しばらくって……どのくらい?」 

ドラゴン「この子がしっかりした言葉覚えるまで」

ボンゴレ「それ年単位じゃないっすかー!?どういう事っすかそれ!?」

ドラゴン「心配すんな、俺がいない間はオークのおやっさん達がなんとかしてくれるだろ」

ボンゴレ「そういう心配はしてないっす!!」

赤子「あぱー!」

ボンゴレ「そうです!あぱーですよあぱー!」

ドラゴン「それどういう意味なの?」

ドラゴン「んじゃ、ちょっくら行ってくるから。何かあったら頼むなーミノタウロス」

ミノ娘「ドラゴン、ボーンゴーレム!……頼むから、生きて帰ってこいよ……」グスッ

ボンゴレ「え、マジで死ぬんですか私!?」

ドラゴン「大丈夫だって……なあ?」

赤子「ううー?」キョトン

…………

今回はここまでです

…………

ガサガサ……

ボンゴレ「……魔物どころか、ケモノすらいない所を歩いてもう二時間……どこまで行くんですか、ドラゴンさん」

ドラゴン「おっかしいな……この辺りなんだが」

赤子「うー」

ボンゴレ「確認しますけど、本っ当に大丈夫なんでしょうね!?」

ドラゴン「大丈夫大丈夫、問題ないって……」

ガサッ

アルラウネA「あれー?ドラゴンさんだー」

ヒョコッ

アルラウネB「あれあれー?ボーンゴーレムちゃんもいるよー?」

アルラウネC「赤ちゃんもいるー。うぷぷー、みんな勢ぞろいだねー」

ウププププ……

ボンゴレ「あれ?アルラウネさん達……?」

赤子「あらーらねー!」キャッキャッ

ドラゴン「お前ら何でここにいるんだ……迷いの森に住んでるはずだろ」

アルラウネA「ボク達がどこにいようが、ボク達の勝手でしょー?」

アルラウネB「人権無視だよ、人権無視ー」

アルラウネC「ボク達、人じゃないけどね……うぷぷっ」

ウププププ……

ドラゴン「……嫌いなんだよなぁ、こいつら……」ボソッ

ボンゴレ「どーどー、抑えて下さいドラゴンさん」

赤子「どー!どー!」

アルラウネA「ボク達、『生命の湖』のほとりまでピクニックに来ているのー」

アルラウネB「アラクネお姉様と一緒にね……だけど、うぷぷっ」

アルラウネC「はぐれちゃったんだ。アラクネお姉様、どこ行ったのかしら。ボク達迷子になっちゃったぁ……」

アルラウネs「「「うぷぷぷぷー……」」」

ボンゴレ「……アラクネさんを撒きましたね、この子達……」

赤子「あいー……」

ボンゴレ「っていうか、『生命の湖』にピクニックって……大丈夫なんすか?」

ドラゴン「大丈夫だって言ってるだろ……あー、アルラウネよ。その『生命の湖』っていうのは、どこにあるかわかるか?俺達も行きたいんだが」

アルラウネA「こっちかな?」

アルラウネB「そっちかも?」

アルラウネC「あっちでしょ?」

アルラウネs「「「どっちだろうね〜〜?」」」

ウププププ……

ドラゴン「火ィ吐いていいか?」

ボンゴレ「駄目です。我慢して下さい」

アルラウネA「そんな事よりドラゴンさん。ボク達ともっと楽しい事しようよぉ」

アルラウネB「そうそう。楽しくって、気持ちいい事しましょう」

アルラウネC「きっとドラゴンさんも気に入るよ……うぷっ!」

ドラゴン「……一応聞いてやろうか。……何するつもりだ」

アルラウネA「ええっとねぇ。始めの文字が『え』でぇ……」

アルラウネB「最後が『ち』で終わってぇ……」

アルラウネC「真ん中の文字が、小さな『つ』なの」

ドラゴン「答え一つしかねぇなー。死ね」

ボンゴレ「怖いっすよドラゴンさん」

アルラウネA「ねえお願いー。受粉したいんだよぉーボク達ー」

ドラゴン「同じ植物系の魔物探せよ」

アルラウネB「アルラウネはメスしかいない種族なんだよ?それにぃ……」

アルラウネC「ボク達は、どの種族のオスとも受粉して子孫を残す事が出来るんだぁ……うぷぷーロマンあるでしょー?」

ドラゴン「知らんがな」

ボンゴレ「あの、ウチの子の教育に悪いからやめてもらえません?」

赤子「あう?」

アルラウネA「ねぇ、お願いードラゴンさぁん」サラサラ

アルラウネB「ちょっと天井のシミ数えているだけでいいからぁ」サラサラ

ドラゴン「天井とか無いんですけども」

アルラウネC「ボク達やさしくするよー?何も怖くないよぉ?」サラサラ

ドラゴン「お前らホントに焼いて食うz……ん?何だ?ちょっと待て……なんか、すげえ、眠い……」ウトウト

アルラウネs「「「うぷぷぷぷ……」」」サラサラ……

ボンゴレ「ちょーちょーちょー!!何アンタたち眠りの花粉出してんすか!?」

アルラウネA「わあ、バレちゃった」

アルラウネB「残念むねーん」

アルラウネC「また来週……うぷっ!」

ボンゴレ「しっかりして下さい、ドラゴンさん!」ペチペチペチペチ!

ドラゴン「あ痛たたたたた、ビンタはやめろお前」

赤子「いあい?」ナデナデ

ドラゴン「何この子、すごい優しい」トゥンク……

ガサガサ……

ボンゴレ「?……誰か近付いてくる……?」

ガサッ!

アラクネ「……アッ!こんな所にいたのネ、アナタ達!」

バーン!

ボンゴレ「ああ、誰かと思えばアラクネさん」

赤子「ああうねー」

アラクネ「ハァ、ハァ……もう!森の中散々探したから、髪に小枝や葉っぱが絡みついちゃったワ……!」プリプリ

アルラウネA「わあっ、お姉様だー」

アルラウネB「見つかっちゃったー」

アルラウネC「きゃー逃げろー」

サササッ!

アラクネ「逃がさないワヨ、アナタ達ッ!!」シュバッ!!

グルグルグルッ!!

アルラウネA「わあっ、いつの間にか糸が巻きついて……」

アルラウネB「これじゃあボク達動けないよー」

アルラウネC「捕まっちゃったー。うぷぷーっ」

バーン!

アラクネ「捕獲、完了」フーッ

ドラゴン「随分とあっけないな……」

ボンゴレ「手慣れてますねえ……」

赤子「おおー……」パチパチ

アラクネ「迷惑かけたワネェ、ドラゴンちゃんにボンゴレちゃん」ペコペコ

ボンゴレ「いえいえ、問題無いですよー」

ドラゴン「もうリード離すんじゃねえぞ」

ボンゴレ「犬じゃないんですから……」

アルラウネA「ペットみたいに扱われるのも、ちょっぴり興奮するよねー」

アルラウネB「お姉様みたいな美人になら、ボク扱われたいなぁー」

アルラウネC「けどドラゴンさんは嫌だね。ブおとこだしぃーちょっとここでは言えないような命令してきそうだしぃー。うぷぷー」

ドラゴン「うるせーんだよお前ら」

アラクネ「あまり悪く思わないでネ。この子達も悪気があった訳じゃないノ」

ドラゴン「まあ、別にいいけどさ……」

アラクネ「ただ、ドラゴンちゃんがアンマリにも童貞クサくて、からかい甲斐があるから、ついネ」ニッコリ

ドラゴン「俺に味方はいねえのか」

アラクネ「じゃあ、ワタクシ達は帰るワ。お元気でネー」カサカサ

アルラウネA「ねぇー、糸外してよぉーお姉様ぁー」

アルラウネB「反省してるってばー。ボク達良い子にするよー?」

アルラウネC「けどもうちょっとだけ遊びたいなー」

アラクネ「良い子にしないと……アナタ達の頭に咲いてるお花、いじくり倒して舐め回すワヨ?」ニコリ

アラクネs「「「ごめんなさいお姉様。ボク達良い子にします」」」ピシッ

アラクネ「よろしい」ニコッ

ドラゴン「……あいつも子育て大変だなぁ……」シミジミ

ボンゴレ「子育てじゃないっすけどね……あ、ちょっと待って下さいアラクネさん」

アラクネ「なあに?美しさの秘訣かしラ!?」キラーン

ボンゴレ「いやあっ……それはぶっちゃけどうでもいいです……」

アラクネ「女はいつでもどんな時でも美しくあろうとしなくっちゃ、駄目ヨ?フケるワヨ?」

ボンゴレ「アタシ死んでるからフケないんで良いんですっ。それよりー、『生命の湖』って、どっちに行けばいいのかわかりますか?」

アラクネ「それなら、ワタクシが来た方向に行けばいいワ。そこから来たからネ」

ボンゴレ「ありがとうございますー」

赤子「あいあとー」

アラクネ「フフッ、じゃあネ。ドラゴンちゃんにボンゴレちゃんに、可愛い赤ちゃん」ニコッ

カサカサ……

今回はここまでです

……ガサガサ……

ボンゴレ「……で、どこまで行けばいいんですかね?行けども行けども森・森・森……」

赤子「ふぃー……」クタッ

ドラゴン「んー、たぶん方向はあってるんだが……あの野郎、水魔法か何かで妨害してやがんのか?霧濃いし……」

ボンゴレ「あー、こんな事ならもうちょい詳しい話聞いとけばよかったっす……あの人達、嵐のように現れては嵐のように消えるんすから……」ハァ

ガサッ

ドラゴン「ん?……あ、ここだ」

ボンゴレ「え?」

赤子「……おー……」

サァァァ……

……キラキラ……

ボンゴレ「うわっ、綺麗な湖……すごい……」

赤子「ぴーちゃ!ぴーちゃ!」

ボンゴレ「そうでしゅよー、ぴちゃぴちゃでしゅねー。ふぃー……ごめんなさい、ちょっと休憩」トサッ

ドラゴン「おい、俺たちはピクニックに来たんじゃねえんだぞ」

ボンゴレ「いやけど足がクタクタで……棒のようなんですよ!骨だけに!!」ボーン!

ドラゴン「そこまでうまくない」

ボンゴレ「ちぇー、ちょっとくらい笑ってくれてもいいじゃないすか……で?ドラゴンさん、ここに来たのって……?」

ドラゴン「ここにいるはずなんだが、まだいるのかなアイツ……おーい、俺だー。いるかー?」

……ボコッ

ボコボコボコ……

ボンゴレ「!!(水面が泡立って……!!)」

『『『……去りなさい、愚かな人間よ……ここは聖域。貴方達が立ち入れる領域では無いわ……』』』

ボコボコボコ……

ドラゴン「俺だよ、俺」

『『『……?……貴方……』』』

ドラゴン「十年ぶりくらいか?とりあえず、姿見せてくれると嬉しいんだが……」

『『『…………』』』

ボコボコボコ……!

ザパアッ!

クイーンスライム「……久しぶりね、ドラゴン君。まさか貴方の方から姿を現すなんて……」

ドン

ボンゴレ(……なんか、めっちゃ強そうで綺麗な方が湖から出て来たんすけど……)

ドラゴン「ようクイーンスライム。元気だったか?」

クイスラ「元気じゃあないわね。ここは水が汚れているから……」

ドラゴン「……十分綺麗に見えるんだが?」

クイスラ「昔はもっと綺麗だったのよ。全く……」ハァ

クイスラ「それにしても、ドラゴン君……貴方が誰かを連れて来るなんて、初めての事ね。……誰?その人達は」

ドラゴン「ああ、紹介が遅れたな。こいつらは今一緒に暮らしている、ボーンゴーレムと……人間の赤ん坊だ」

ボンゴレ「ど、どうも初めまして……」ペコリ

赤子「あい」コクリ

クイスラ「……ドラゴン君、貴方ともあろう者が……訳のわからない魔導物に、人間の赤ん坊なんかと一緒になって暮らしているの?」

ドラゴン「まあ……そういう事だ」

クイスラ「……成長したというか、退化したというか……間を取って、馬鹿になったという事かしら」

ボンゴレ「それ間取れてないっすよね?」

赤子「あいー」コクリ

クイスラ「……何?私に歯向かうというのかしら?」ギロリ

ボンゴレ「めめめ、滅相もない!っていうか……ど、ドラゴンさん?彼女は、あのー……?」

ドラゴン「ああ、言ってなかったな……このプルプルしてんのはクイーンスライム。元・水の四天王だ」

ボンゴレ「し……!!」ガビーン

クイスラ「懐かしいわね、四天王っていうのは」

ボンゴレ「ちょーちょーちょー……ドラゴンさん、ちょっと待って下さい……なんでそんな方と知り合いなんですか?」

ドラゴン「俺が四天王だった時、こいつも四天王だったんだよ」

クイスラ「まあ、そういう事ね。『冥界』なんて呼ばれてたかしら……懐かしい」

ドラゴン「俺が四天王辞めるって時に、こいつがお目付け役として付いてきたんだが……」

クイスラ「元四天王が各地で傍若無人に振る舞うと、魔王軍のパワーバランスが崩れるから。仕方なく、ね……」

ボンゴレ「あぱー……そういう事ですか……」

ドラゴン「俺が別に悪さする訳じゃないってわかったら、なんかコイツもついでに四天王辞めてちゃってさ。んで、今はこの湖に引きこもってんだよ」

ボンゴレ「ついでで辞めたんですか!?」

クイスラ「簡単に言うとそうだけど……ついでで辞めた訳じゃないし、引きこもった訳でもないわよ」

クイスラ「ドラゴン君についていた時に、生まれ故郷が人間に汚されているのを知っちゃってね……守るためこの土地に留まったのよ」

ドラゴン「ああ、確かそんな理由だったな……」

クイスラ「あれから約100年……やっと水の汚染を食い止める事が出来るようにはなったけど、まだまだ全盛期よりは汚れているままよ……先が長い話だわ」フゥ

ドラゴン「だからってお前、この湖に来る奴を手当り次第に襲うのやめろよ……変な噂立ってるぞ」

クイスラ「あら、私は何もしてないわよ。ただ……冒険者や木こりや獣人なんかが、ここで立ち小便したり昼食の残飯捨てたりしたら、ちょっとだけ足つかんで引きずり回すくらいで」

ドラゴン「それをやめろっつってんの」

クイスラ「全盛期の私だったら、肛門から侵入して『スライム☆ビックバン』をやる所なのに、我慢してるのよ?」

ボンゴレ「技名からなんとなーくヤバいってのが想像出来ますね……」

クイスラ「毎日掃除しているのに、ゴミは多いしどこからか汚水は流れてくるし……隠居生活も大変よ」ハァー

ドラゴン「そりゃあご苦労さん……」

クイスラ「……それで?ドラゴン君。貴方は何の用があってここに来たの?」

ドラゴン「ん?ああ……えっと……あー……(いざ言うとなると、なんか口にしづらいな……)」ゴニョゴニョ

クイスラ「?なあに?」

ドラゴン「いや……何から言ったもんかな……」

ボンゴレ「……ドラゴンさん、なんか話を聞く限り、この人あまり人間に良い印象持ってない感じですけど……大丈夫なんですか?」ヒソヒソ

ドラゴン「んー……けどコイツ一時期、幼い現魔王の教育係やってたくらいだからさぁ」ヒソヒソ

ボンゴレ「……マジですか」ヒソッ

ドラゴン「勉強に関してはコイツに任せるのが一番なんだよなぁ。しかしどう言ったもんか……」ヒソヒソ

クイスラ「……大方、私に頼み事があって来たんでしょ?」フンッ

ドラゴン「……は?」

ボンゴレ「あぱー?」

赤子「あぱー……」

ドラゴン「…………よくわかったな」

クイスラ「貴方がここに来る理由なんて、そのくらいだものね。八十年前に来た時も、同じようにモジモジして頼み事するのをためらってたわよ」

ドラゴン「……モジモジなんかした覚えは無いが」ムスッ

クイスラ「してたわよ。八十年前……狂乱の魔女と戦って大怪我を負った時も、死にそうなのにいつまで経っても頭下げようとしないで……」

ドラゴン「あーあーあーあーやめようその話は。あの時は悪かったですーごめんなさいー」ペコリッ!

ボンゴレ「何があったんですか、何が」

クイスラ「だいたい予想は出来るわ……その赤ん坊でしょう?」

ドラゴン「!……」

ボンゴレ「ほえー……すごい考察力……」

赤子「あいー……」

クイスラ「わかるわよ、そのくらい……どう見てもイレギュラーだもの」

ドラゴン「じゃあ……!」

クイスラ「ええ、私に任せなさい……」

クイスラ「邪魔だから湖に沈めてこの世から消し去りたいのよね?苦しまないよう殺してあげるわ」ニコリ

ドラゴン「違っげええええええええええ!!!!」

ドラゴン「逆だ逆!全てが真逆だ!!」

クイスラ「えっ……という事は、貴方達が入水自殺……」

ボンゴレ「違います違います!なんで死ぬ事前提なんすか!?」

クイスラ「もう、じゃあ何をして欲しいのよ?訳がわからないわ」

ドラゴン「単刀直入に言おう……この子を教育してほしいんだ」

赤子「あいっ」

クイスラ「…………えっ、バカじゃないの?」

ドラゴン「ストレートに言われると傷付くなぁ……」

今回はここまでです

クイスラ「えっ……えっ?貴方本当に……人間の子供なんか育ててるの?」

ドラゴン「そうだよ。文句あるか」

クイスラ「噂には聞いてたけど……嘘だと思ってたわ」

ボンゴレ「あの、アタシ達この子を未来の魔王にしたいんです!そのためにしっかりした教育を……」

クイスラ「は?……人間を、魔王に?……えっ、ギャグ?」

ドラゴン「悲しいけれど本気だよ……」

クイスラ「ええー……いやいや人間が魔王になるとか無理だし……っていうか人間なんか殺した方がいいんじゃないの?」

ドラゴン「お前は何だかんだで人間と争うの反対派だったじゃねえか」

クイスラ「昔はそうだったけど……今は、湖を汚す愚かな生物なんて死んだ方がいいと思っているわ」

ボンゴレ「ええー……」

クイスラ「それに、教育って……言葉も喋れない赤ん坊に何をしろっていうの?」

ボンゴレ「あ、言葉は喋れますよー!ほーら、アタシはー?」

赤子「まーま!」

ボンゴレ「こっちはー?」

赤子「ぱーぱ!」

ボンゴレ「じゃあ、あの人はー?」

赤子「……ぷゆぷゆー?」

クイスラ「いい度胸してるわね、この子」

ドラゴン「待ってくれ喧嘩売ってる訳じゃないんだ」

ドラゴン「言葉を喋れるようにはなったが、これから先、俺達じゃあきちんとした教育を施せる自信が無い……だから、しっかりした言葉遣いから魔王としての教養まで、教えてやってほしいんだ」

クイスラ「……その間、貴方達はどうする気?まさか、私にこの子押し付けて消えるつもり?」

ドラゴン「心配するな、ここに住んでこの子の衣食住の世話はするから」

ボンゴレ「あ、やっぱりそういう感じなんですね……」

クイスラ「それは果てしなく邪魔だから、帰って」キッパリ

ドラゴン「やっべー墓穴掘ったか」

ドラゴン「わかった。何でもお前の言うこと聞いてやるから。それでウィンウィンって感じにしないか?」

クイスラ「全然Win-Winじゃないわよ。そもそもねぇ、この子言葉喋れると言っても一言二言しか喋れないじゃない。そんな子に勉強なんて早いわよ」

ドラゴン「遅いよりかはいいだろ。気付いたら『あぱー!アタシは魔王っすよー!へらへらぷー!』とかいう言葉遣いになってたら嫌じゃん」

ボンゴレ「ちょ、アタシそんなアホな喋り方してないっすよ!?」

クイスラ「いえ……今のは似てたわね」ウン

ドラゴン「だろ?」ナー?

ボンゴレ「味方がいないっ!」ガビーン!

クイスラ「あとね、さっきも言ったけど……どんなに鍛えようが勉強しようが、人間が魔王になるなんか、無理よ。四天王の配下にも勝てるかどうか……」

ボンゴレ「それはやってみないとわからないじゃないすか!」

赤子「あいっ!」

クイスラ「そんな博打に労力使うほど、私は暇じゃないの。何しろ私はこの湖の浄化を――……ちょっと待って」ピタッ

ボンゴレ「はい?」

クイスラ「……その子、よく見せなさい」

ボンゴレ「え?あ、はいどうぞ」ズイッ

赤子「あうー?」キョトン

クイスラ「…………この手……それに、魔力の量……この子まさか……それに魔法の素質が……?」ブツブツ

赤子「あぱー?」

ボンゴレ「な、何でしょうか?一体……」

クイスラ「……ドラゴン君、貴方……気付いてるの?」クルリ

ドラゴン「は?……すまん、何が?」

クイスラ「……えーっと、細かい事は省くけど……この子、魔力の量が異常よ」

ドラゴン「……人間の赤ん坊ってみんなこんなんじゃないのか?」

クイスラ「そんな訳ないでしょ。バカなの?貴方バカなの?」

ドラゴン「二回も言うな」

クイスラ「いえ、ごめんなさい。強いて言うなら……うん、バカね貴方」

ドラゴン「三回も言いやがったぞコイツ」

クイスラ(この子なら、もしかしたら……)ジッ

赤子「う?」

ボンゴレ「あのー……クイーンスライムさん?」オズオズ

クイスラ「フーッ……わかったわ。ドラゴン君、時期が来たら貴方が魔法を教えなさい。私は文字の読み書きや計算、礼儀作法等をこの子に教えてあげる」

ドラゴン「!……」

ボンゴレ「……じゃあ……!」

クイスラ「ただし、私が教えるのは知識だけ。強くするのは貴方達が勝手にやりなさい。頑張れば、まあ……今の四天王に勝てるくらいは、なるかもしれないわね。……素質、あるわ。この子」

ドラゴン「……そりゃあ楽しみだ」

クイスラ「私やドラゴン君に勝てるレベルだとか、魔王に勝てるレベルにはならないと思うわよ……」

ボンゴレ「ふふーん、未来なんか誰にもわかりっこないですよ!」

クイスラ「…………勝手にしなさい」

クイスラ「とりあえず、五年……ここで色々と教えてあげるわ。その間、貴方達は私の代わりにこの湖を死ぬ気で綺麗にしなさい」

ボンゴレ「……えー……」

ドラゴン「……あー……」

クイスラ「何?その顔は」ギロリ

ドラ・ボン「「何でもないです」」

クイスラ「何でもするって言ったのは貴方でしょう?全く……この湖のほとりで暮らすのは、しょうがないから認めてあげるわ。……湖汚したら殺すけど」

ドラゴン「うぇーい……ありがとうございまーす……」

クイスラ「ほら、わかったらさっさとゴミ拾いでも何でもしてきなさい。私は今からこの子の教育方針について考えるから」

ドラゴン「うーっす……ボンゴレ、お前はどっか俺らが住めそうな場所探せ」

ボンゴレ「あ、はーい」

クイスラ「……向こうの方に、昔コボルトが住んでいたほら穴があるわ。小さいけれど、掃除したら使えるはずよ……」

ボンゴレ「ありがとうございます!じゃあちょっと見てきまーす」テコテコ

クイスラ「…………ハァー……」ガックリ

ドラゴン「……何だよ、溜め息ついて……」

クイスラ「いえ……私も甘くなったものだと思ってね……この私が人間の教育、かぁ……」

赤子「あうー……」

ドラゴン「……俺も前までそう思ってたよ」

ドラゴン「けど、その、なんだ……あー……」

クイスラ「……何?」

ドラゴン「いや、な。……ずっと一緒にいて、あやしたり飯食わせたりしてると……こう……」

クイスラ「……」

ドラゴン「……愛着が湧くというか……意外と、可愛いっつーか……」ゴニョゴニョ

クイスラ「……バカなの?」

ドラゴン「いや、ハイ。なんかもうバカでいいわ……」

クイスラ「ハァ……」チラッ

赤子「あうー?」キョトン

クイスラ「……無いわね、無い……絶対、無い……」

ドラゴン「俺もそう思ってたよ。うん」

クイスラ「……バーカ」

……………………

…………

……

今回はここまでです
次回から少し作中の時が飛びます。書き溜めが尽きたので遅れるかもですが……

んじゃあ名前募集します
名前欲しい派の人は候補いくつか下さい。由来とかもあれば
良さそうなの選びます

名前いらない派の人も言ってくれればその数見て決めます
今のところ『娘』にする感じです

娘でいいかな

赤子(アカコ)とか?
世界観的に無しかな

>>384
話が赤ん坊時代から少し飛びますので、名前が赤子だと読んでる方が混乱するかと思いますので……

ますは名前からってことでマオーとかどう?

>>386
だったらマオとかのが良さそう

娘で私はいいかな
ありがちな名前つけるより

>>386
>>387
ボンゴレとドラゴンがそんな会話してそうで面白いのでマオ採用します

>>383
>>389
ご意見ありがとうございます。まあボンゴレももうオリジナルの名前みたいなもんなので、ご理解いただければと

……………………

…………

……

……それから、七年の月日が流れました。

赤ちゃんが二本足で立ったり、色々な言葉を喋れるようになるたびに。
ドラゴンとボーンゴーレムは喜び。

元気に走り回って怪我をしたり、ちょっとしたワガママを言うたびに。
ドラゴンとボーンゴーレムは悲しみ、怒って、心配なんかをしました。

そうやって、うだるように暑い夏を越えて。

凍えるような冬を越えて。

赤ちゃんはすくすく大きくなり、もう赤ちゃんとは言えないくらいになり。
クイーンスライムの所から離れて、元々住んでいた洞窟に戻り。

三人で……ドラゴン一頭とボーンゴーレム一体、人間一人で仲良く暮らして。



……七年という月日が流れました。



…………

…………



とある森の中――……



少女「――……ハァ、ハァ……!!」ガサガサッ!

「ブヒー!待てー!」

「ついに追い詰めたぞー!」

「プギプギー!」ドドドドッ!

大変です!
女の子が、オークに追い回されています!

少女「くっ……ハァ、ハァ……!」ザッ!

「逃げ回るのも終わりだブヒー!」

「これで終わりだ!プギー!」

「終わらせて飯にすんぞー!!」

グ オ ッ ・ ・ ・

少女「――……い……い――……!!」

少女「ィヤア――ッ!!!」ヒュン!

ドバキイッ!!

「ブヒー!?」ドサッ!

「ああっ!おにーやーん!」

少女「たぁ――っ!!」

ドカアッ!

「プギャー!?」

少女「とぉ――っ!!」

ドッカァン!

「「「やられたブヒー!」」」ドサアッ!

…………

…………

姉オーク「……はーい、今日もマオちゃんの勝ちー」

マオ「えへへ……」テレテレ

妹オーク「マオちゃん、すごい……!」キラキラ

姉オーク「……っていうか、アンタ達弱すぎでしょ……三人がかりで何で負けてるの?」

少年オーク1「違ぇーってねーちゃん!マオが強すぎるんだよ!」

少年オーク2「剣術じゃ勝てなくなったなー……昔は圧勝だったのにー」

少年オーク3「もう半年くらい負けまくってるよね……腹減ったぁ」

マオ「ミノタウロスさんに色々教えてもらってるからねー。剣術の他にも斧とか槍の使い方とか」

少年オーク2「うーん、今日は追い詰めたと思ったんだけどなー……」

マオ「あ、ゴメンね。追い詰めたように思わせたら、隙が出来ると思ってー」

少年オーク1「演技かよチクショー。なんだよこいつー」

姉オーク「ねえ、マオちゃん。今日はもう乱暴なことやめて、妹と一緒におままごとでもしない?」

妹オーク「うん……」モジモジ

マオ「あ、ごめん姉オークちゃん……あたし今からお野菜もらいに行かないといけなくて」

少年オーク1「えー!勝ち逃げかよー!?」

少年オーク2「おにーやん、最近ずっとそうだよ」

少年オーク1「うるさいんだよお前はっ!」グリグリ

少年オーク2「うわー!おねーやーんおにーやんがイジメるよー!!」バタバタ

少年オーク3「もういいからご飯食べに帰らない?」

姉オーク「妹ちゃん、下のお兄ちゃん三人見て育ったらダメだからね」

少年オーク1「ねーちゃんヒドくね?」

妹オーク「あたし、おにーちゃん達好きだよ?」

少年オーク2「妹ぉ……」キュン

妹オーク「ちょっぴり弱い所とか、ぼせーほんのーがくすぐられるよね!」ニパッ

少年オーク1「妹が一番ひどい気がする」

マオ「ねー妹オークちゃん、ぼせーほんのーって?」

妹オーク「なんかね、アルラウネさん達が言ってた」

姉オーク「今度あいつら叱っとかないとなー……」

マオ「じゃ、そろそろ行ってくるねーみんなー」

姉オーク「気をつけてねー」

少年オーク1「帰ったらもう一回戦えよ、マオっ!」

少年オーク2「そんな時間ないと思うよ、おにーやん」

少年オーク3「お土産は食べ物でよろしくー」

妹オーク「ばいばい、いってらっしゃーい」フリフリ

マオ「うん!いってきまーす!明日はいっしょに遊ぼーね!姉オークちゃん、妹オークちゃん!」

タタタッ……

…………

…………

テコテコ……

マオ「ふー、ちょっと走り疲れたなー」テコテコ

ガサガサッ!

エルフ「止まれ!何者だ!?」ガサッ!

マオ「あたしだよっ」ブイッ

エルフ「む?……何だ、マオか。よく来たな。歓迎する……野菜か?」

マオ「うん。キャベツが欲しいっておかーさん言ってたー」

エルフ「すぐ用意しよう。その間、主様の所にいると良い」

マオ「はーい。お邪魔しまーす」ペコリ

ガサガサガサ……

ドライアド「ふぁー……」ゴロゴロ

エルフ「失礼します、主様」ガサッ

ドライアド「ふえっ!?えっ、あっ、なんでしょうか!?」ワタワタ

エルフ「マオが来ましたので、野菜を用意する間ご一緒に、と思いまして」

マオ「こんにちは、ドライアドさん」ペコリ

ドライアド「わあぁ……!よく来ましたね、マオさん!お久しぶりですっ!」パァァッ

マオ「あぱー、先週も来たと思いますけどー」

ドライアド「さあさあさあさあそんな所に立ってないで、ここに入って下さい」

マオ「なんですかこれ?机に葉っぱがかかってますけど……」

ドライアド「東の小国に伝わる家具で、『コタツ』というものがあるのですが、それを真似て作ってみました」

マオ「ここに足を入れるんですか?」

ドライアド「はい!どうぞ!」

マオ「よいしょっ……おお?なんかひんやりしてるー」

ドライアド「この家具は厳しい冬の寒さを超すためのものらしいのですが、それを夏用にアレンジしてみまして。……こうして氷で中を冷やすのも中々良いものでしょう?」ニコニコ

マオ「わー、なんか良いですねこれー」キャッキャッ

ドライアド「最近はこれに入って一人チェスをするのがマイブームなのです」

マオ「ドライアドさん、外出しないと身体にわるいよー?」

ドライアド「大丈夫ですよぉ。私植物ですしぃ」ゴロゴロ

ドライアド「はい、マオさん。夏みかん剥きましたよー」

マオ「ありがとうございます。んっ、あまーい!」

ドライアド「ふふふ……さあ、私と一緒にゴロゴロ引きこもりライフを楽しみましょう!ここでずーっと!」

マオ「ええー?この後もあたし予定あるしなー」

ドライアド「いいじゃないですか!予定なんてちょっとくらい無視しても問題ないですよぉ」

エルフ「……あのー、野菜の収穫終わりましたけど……」ガサッ

マオ「あ、はい。ありがとうございますエルフさん」ペコリ

エルフ「量多いが、持てるか?マオ」

マオ「大丈夫です。おかーさんも喜ぶと思いますー」

ドライアド「ほら、マオさん。おせんべいでも食べませんか?ゴロゴロしながら食べるおせんべいは最高ですよぉー」ダラダラ

マオ「えーっと……ごめんなさいドライアドさん。あたしやっぱり予定があるんで」

ドライアド「」ガーン!

ドライアド「いや!待って!行かないで!!私をひとりぼっちにしないでぇぇぇ……!」エッグエッグ

エルフ「泣かないで下さい主様……毎週こんなやり取りしてるじゃないですか」

ドライアド「引きこもりの私にとって、どもらず話せるのは貴女だけなのぉ……」ヒッグヒッグ

エルフ「社会復帰して下さい」

マオ「ごめんなさいドライアドさん。また来ますねー」フリフリ

ドライアド「うん!待ってますわ!」ニッコー!

エルフ(主様の今後が心配だなぁ……)

…………

今回はここまでです

オーク姉弟は全員序盤の子供オークの成長した姿です。赤子オークは妹オーク

合計14年後か

>>410
ごめんなさい七年後です
わかりづらかったっすね

…………

生命の湖、畔――……

タッタッタッタ……

マオ「はあ、はあ……遅くなっちゃった。ごめんなさーいせんせー!遅れましたー!」

ボコボコボコ……

クイーンスライム「……3分の遅刻よ。マオちゃん」ザパーッ

マオ「あぱー……言い訳はしません。あたしの足が遅いのがいけませんでしたっ」ペコリッ

クイスラ(……まあ、大の大人が半日かかる道のりを、一時間そこらで走ってくるのだから……本当なら褒めてあげる所なんだけど)

クイスラ「反省しているようだし、許してあげるわ。ただし、私の3分を無駄にした罪は重いわよ」ギロリ

マオ「はい。ごめんなさい先生」ペコリ

クイスラ(……私は心を鬼にしてこの子を教育する!それがこの子のためになるのよ!)キリッ

クイスラ「じゃあ、今日の勉強会を始めるわよ。宿題はやってきた?簡単な掛け算の問題をいくつか出してたけど……」

マオ「はい。しっかり持ってきましたー」サッ

クイスラ「……その前に、マオちゃん」

マオ「はい?先生」

クイスラ「……貴女、汗臭いわよ。どれだけ必死に走ってきたの……」

マオ「あ、あぱー……ちょっと、来るときこけちゃいまして……すごく急いじゃいました……」

クイスラ「何!?傷を見せなさい!早く!!」

マオ「えっ、あ、いやー、そんな大した怪我じゃないですけどー」イソイソ

クイスラ「ああもう、消毒消毒……濃いお酒がどこかにあったはずだけど……マオちゃん、大丈夫なの?痛くない?」バタバタ

マオ「ちょっとウルッてきましたけど……おとーさんはこんな怪我じゃ泣かないと思ったので」ハイ

クイスラ「あのバカは別よ。何百本の矢が突き刺さってもうめき声一つあげないんだから……まあ、見た目はひどいけどかすり傷みたいね。すぐ白魔法で治してあげるから、湖で傷口を洗うついでに汗も流しちゃいなさい」

マオ「はーい」

クイスラ「あーあー、服も土で汚れてるじゃないの。洗って乾かしといてあげるから、替えの服着ときなさい。人間の服の一枚くらいあったでしょ」バタバタ

マオ(……クイーンスライムの先生はいつも優しいなぁ……)

ザパザパ

マオ「うーっ、冷たくて気持ちいーっ」バシャバシャ

クイスラ「ほら、身体洗っている間も勉強よ。今日の予定は割り算!来週には分数まで行くわよ」

マオ「わ、わりざん?ぶんすー?」アパ?

クイスラ「掛け算が出来るんなら割り算も出来るわよ。その前に復習ー。1✕1から20✕20まで全部言いなさい」

マオ「せんせー、10の上くらいからすごく難しいんですけどー……」

クイスラ「こんなの微分積分に比べたらフェアリーの鱗粉みたいなもんよ。ほらほらさっさと言う」

マオ「あ、あぱー……」

…………

…………

カァーカァー……

クイスラ「……つまりまあ簡単に言うと、二乗するとその数になるのを平方根と言ってー……」カリカリカリ

マオ「せんせー、なんかもうすでにむずかしいですー……」

クイスラ「だらしないわね。今の魔王様はこんなの3秒で理解したわよ」

マオ「むー……じゃあ頑張らないとですね」カキカキ

クイスラ(……あれ?人間の7歳って平方根とか習うのかしら?……まあ、いいわよね)

クイスラ「じゃあ次……と思ったけれど、もう時間ね。日が傾いてるわ」

マオ「ありがとうございました、先生」ペコリ

クイスラ「……しまったわ。結局割り算あまり勉強出来なかったわね……」

マオ「いえ、だいたいわかりましたから。あとはお家で復習します」

クイスラ「そう?ならいいけど……明日はお休み。明後日は国語の勉強するわよ」

マオ「はーい」

クイスラ「最終的には古代禁忌呪文書くらいは読めるようにならないとね。あとエルフ文字とノーム文字も読めるようにして……あーゴブリン語も話せるようにするべきかしら……けどあの言語は『くたばれ!』だけで42個もあるしなぁ……」ブツブツ

マオ「よくわかりませんけど、頑張りまーす」

クイスラ「帰り道気をつけなさいよ。怪我しないように!」

マオ「はーい。それではさよーならー先生」ペコリ

クイスラ「はいさようなら」

マオ「よーし……」ググッ……

ダッ!

タタタタ……

…………

…………

洞窟――……

……タタタ……

マオ「ただいまー、おとーさん!おかーさん!」ザッ!

ドラゴン「おー、おかえりー」

ボンゴレ「おかえりなさーい!ごはんもうすぐ出来ますよー」ニコニコ

マオ「わーい!」

ドラゴン「今日はどうだった?」

マオ「あのねー、オークのみんなと遊んでねー、ドライアドさん所でお野菜もらってー、先生のお勉強むずかしかったー」

ドラゴン「そうか。……怪我はしてないか?」

マオ「ちょっとこけちゃったけど、クイーンスライムの先生に治してもらったよー」

ドラゴン「ん、そうか。……ちょっと見せてみろ。痛くないか?」

マオ「だいじょーぶ。おとーさんだったらこんな怪我、痛くもかゆくもないもん!」

ドラゴン「いやまあお父さんはそうだけどさぁ……うん、綺麗に治ってるな。気をつけろよマオ。怪我をするな、とは言わないが……森の中で大怪我して動けなくなったりでもしたら、大変だぞ」

マオ「うん。気をつけるー」

ボンゴレ「そうですよー。お母さんなんか昔、崖から落ちて全身の骨がバラバラになった事ありますし」

マオ「えー!?おかーさんそれ大丈夫だったのー?」

ボンゴレ「全部繋げるのに一週間かかりましたねぇ……首だけで転がりまわってパーツ集めて……」シミジミ

ドラゴン「マオ、お前はそーいう事にならないようにな。死ぬから」

マオ「?……けど、おかーさんが大丈夫だったらあたしも……」

ドラゴン「お前はダメなのっ」

ボンゴレ「ほらほら、お話もいいけど晩御飯にしましょっ」

ドラゴン「ああ……」

マオ「おかーさん、これもらってきたお野菜ー」ガサッ

ボンゴレ「おー!ありがとうねーマオちゃん!じゃあこのお野菜でサラダも作りますか!」

マオ「うんっ!今日の晩御飯はなにー?」

ボンゴレ「クジラの唐揚げです!今日お父さんが取ってきてくれたんですよー!」イソイソ

ドラゴン「海まで遠かったわ」

ボンゴレ「じゃあ……」

「「「いっただっきまーす」」」

モグモグ……

マオ「そういえばおとーさーん、へーほーこんってわかるー?」

ドラゴン「……一応わかるけど……え?マオ、それどこで聞いた?」

マオ「クイーンスライムの先生から今日習ってー。それと割り算予習しないといけないのー」

ドラゴン「勉強方法おかしいだろあいつ」

ボンゴレ「……ドラゴンさん、へーほーこんってなんですか?」ヒソヒソ

ドラゴン「生活には全く必要ないから、お前は知らんでも問題ないぞ……」

マオ「なんかねー先生がねー。魔王様はすぐ理解したって言ってたからー。がんばらないといけないのー」

ドラゴン「とはいえ詰め込みすぎだ。今習ってるのは掛け算なんだろ?それと割り算しっかり勉強してからじゃあないとわからんぞそんなもん……」

マオ「そうなの?」

ボンゴレ「そうっすよー。お母さんなんか掛け算ですらビミョーです!」エッヘン

ドラゴン「胸を張るな。……いやまあ文字書けるヤツがそんないない中頑張ってる方だけどさ」

カチャカチャ

モグモグ……

ドラゴン「ご馳走さまでした」ペコリ

マオ「ごちそうさまでしたー」ペコリ

ボンゴレ「おそまつさまでした」ペコリ

マオ「美味しかったー。あ、おかーさんお皿洗うよーあたし」

ボンゴレ「いいのいいの!今日はたーっぷり遊んで勉強して疲れたでしょー?お父さんと川で身体洗ってきなさいなー」

マオ「そう?ありがとーおかーさん!」ニコッ

ボンゴレ「あぱぱー」ニッコリ

マオ「あぱぱぱー」ニコニコ

ドラゴン「何なのそのコミュニケーション……マオー行くぞー」

マオ「はーい」テコテコ

…………

…………

ゴシゴシ

マオ「気持ちいいー?おとーさん」

ドラゴン「あーいい気持ちだ……ん、交代。背中向けなー」

マオ「はーい。けどあたし、お昼も先生の所で汗流したんだけどー」

ドラゴン「そっから走って帰って来たんだから汗かいてるだろ。ほらほら背中むけろ」

マオ「はーい」クルリ

ドラゴン「……『風精シルフィードよ。我の下に集いて奇跡を呼び起こしたまえ』……」ブツブツ 

フワッ

ゴシゴシ……

マオ「……そういえばおとーさんって、どうやってタオルとか食器とか浮かしてるのー?あたしもやりたーいっ!」

ドラゴン「これは魔法だよ。自分の魔力とマナを練って呪文で精霊の力を借りて……話すとややこしいな。んー、まだお前には早い」

マオ「えー」

ドラゴン「また今度な。今度……もうちょっと大きくなったら教えてやる」

マオ「あぱー……絶対だよ?」

ドラゴン「ああ。約束するよ」

ゴシゴシ……

…………

…………

ドラゴン「――……でな?エルフ文字っていうのは読み方にクセがあって……マオも文字を書いてる時、こういう記号があったの見ただろ?」カキカキ

マオ「うんー」

ドラゴン「これがあるのは口を閉じて言葉を発さないといけなくてだな……口語と文語がエルフ文字は一部一緒になってて――……」

ボンゴレ「ドラゴンさんーマオちゃんー。汗流して帰ってきてからずーっとお勉強してますけど、疲れますよー?そろそろ寝ましょうー」

マオ「えー?おかーさん、今とっても面白いのにー」

ボンゴレ「ダーメーでーすーっ。もうお月さまがあんな所にありますし、ランプの燃料だってタダじゃあないんですよー?そろそろ寝ますよー」

ドラゴン「……ランプは俺の魔法で灯してるんだけど」

ボンゴレ「お父さんは黙っててください」

ドラゴン「んじゃあ後は今度な、マオ。……というか、勉強疲れただろ?」

マオ「んーんっ。クイーンスライムの先生もおとーさんも、それぞれ教え方に違いが合って面白いしー。たまーにオークのみんなとか迷いの森のエルフさんとかがあたしのわからない言葉しゃべってる事あるんだけど、こーやって教えてもらったら、それがわかるからおもしろいよー!」ニコッ

ドラゴン「ん、そうか。……とはいえ詰め込みすぎてもダメだ。今日はゆっくり休んで、明日はしっかり遊びなさい。……クイーンスライムの勉強会、休みだろ?明日」

マオ「うん!明日はおままごとするー!」

ボンゴレ「お、いいですねーおままごと!じゃあお母さんはお弁当持っていってあげますねー」

マオ「やったー!」ニコッ

ボンゴレ「じゃあ、おやすみなさい。マオちゃん」

マオ「うん!おやすみなさい。おかーさん、おとーさん!」

ドラゴン「おやすみ。身体冷やさないように、布団しっかりかぶっとけよー」

ボンゴレ「お父さんとお母さんは後でお布団入りますから!少しだけ先におやすみしてくださいねーっ」

マオ「はーい」

テコテコ……

ボンゴレ「…………」

ドラゴン「…………」

ボンゴレ「……クイーンスライムさんはあたしが思ってる以上に色々教えてるみたいですねえ。ありがたいことです。……へーほーこんってマジでなんなんすか?」コポコポ

ドラゴン「知らなくていいって。人間の数学者とかが習うやつだし。……マオの小ささで覚える事ではないと思う」

ボンゴレ「んま、しかしそこまで習っているのなら、そろそろ魔法とか本格的な武術も教えてあげたほうがいいかもしれませんねえ。はいドラゴンさん。お茶入りましたよ」スッ

ドラゴン「ん、ありがとう」

ボンゴレ「戦い方はミノタウロスさんに教えてもらっているし、ほぼ毎日オークさん所の下の息子さんたちと遊んでもらっていますけど、やっぱり四天王クラスの方に教えてもらいたいっすよねー」

ドラゴン「……」ズズッ

ボンゴレ「それに、魔法!クイーンスライムさんはそういうの教えてくれないらしいですし、ドラゴンさんは全部の魔法使えますもんねー。あの娘もいい子に育って手がかからなくなってきましたし、そろそろそーいうのも教えてあげていいと思うんすよー。やっぱり魔王になるには、幼い時から教えるべきっすよねえ」

ドラゴン「……いや、けどさあ、ボンゴレ……」

ボンゴレ「はい?なんすか?」

ドラゴン「……そーいうの教えて……怪我したら、イヤじゃん?」

ボンゴレ「……あたしもドラゴンさんのこと言えませんけど……子煩悩っすよねえ……」

…………

今回はここまでです

…………

妹オーク「はい。おとーさんごはんが出来ましたよー」クイクイ

姉オーク「ありがとうおかーさん。うん、おいしいごはんだー」クイクイ

少年オーク1「……ねーちゃん達、人形動かしてたのしーい?」

少年オーク2「マオー。人形でおままごとしてないでおいらたちと遊ばねー?」

マオ「今日はおままごとするって決めてたからー」クイクイ

姉オーク「アンタ達はお兄ちゃんとこ行っときなよ」

少年オーク3「……なあ、マオはなんの役なの?これ」

マオ「え?これはねー。魔王」

姉オーク「…………ん?」

マオ「ふははははー!あたしは魔王さまだぞー!つよくてやさしくてつよいんだぞー!」クイクイッ!

妹オーク「ああっ!たすけてー魔王さまー!晩ごはんをわるいゴブリンに盗まれちゃいましたー!」

マオ「くらえー!なんかすっごい魔法!どかーんばきーんずどーん!」バタバタ

姉オーク「…………」

マオ「ふっ、ゴブリンも食べるのに大変だろうけど、他の人からとっちゃだめだよ。狩りとかワナとかがいいよ」

妹オーク「ありがとうございますー魔王さまー」ペコリ

マオ「ふはははは!みんなの幸せこそが魔王の喜びなのだー!むっ、誰かの悲しむ声がする!さらばだ!とうっ!」ビシッ

妹オーク「きゃーかっこいいー魔王さまー」

姉オーク「違う。これ、おままごとと違う……」

…………

…………

ボンゴレ「マオちゃーん。お弁当持ってきましたよー」フリフリ

マオ「あ、おかーさんだー。ありがとー」

姉オーク「なんか久々だね。ボーンゴーレムのおねーさん」

妹オーク「マオちゃんのおかーさんー」

ボンゴレ「ミノタウロスさんから小麦をもらったので、パンを焼いてサンドイッチにしましたよー。みんなも食べましょう」

マオ「わーい!」

姉オーク「おねーさん料理うまくなった?」

ボンゴレ「ふふん、ダテに主婦やってませんからね!」ドヤッ

姉オーク「昔はおむつ替えるのもヘタだったのに……」

ボンゴレ「あぱー。昔の話はやめましょーよぉ」

ボンゴレ「あれ?弟ちゃんたちは?」

姉オーク「おままごと見てるのに飽きて、向こうの丘でお兄ちゃん達と遊んでる」

ボンゴレ「みんなの分もたっぷり作ってきたんで、マオちゃんちょっとみんな呼んできてもらえます?」

マオ「はーい」

姉オーク「あーいや、たぶんあたし達のお家帰ったらみんな戻ってると思う。お昼時だし」

ボンゴレ「あぱー、そういえばお弁当持ってくるってこと、母オークさんに伝えるの忘れてましたね……持ってきすぎちゃったかも」

妹オーク「大丈夫だとおもうよー?おにーちゃん達いっつもいっぱい食べてもお腹すいたーって言ってるし」

姉オーク「そのサンドイッチだけだとおやつくらいにしかならないかなあ……」

ボンゴレ「育ち盛りの食欲なめてたなあ」

姉オーク「あたし達のお家でみんなで食べよう。お母さんも喜ぶと思う」

ボンゴレ「いやーすみませんねえ。お世話になります」

マオ「おかーさん、あたし持つよーお弁当」

ボンゴレ「あらそうですか?ではお願いしましょうかね」

マオ「うんっ!……そういえばおとーさんは?」

ボンゴレ「まだちょーっと狩りがかかるみたいです。お昼は狩り場で食べるって」

マオ「むー、そっか。おとーさん、ごはんのために頑張ってるんだね。ありがとー」

ボンゴレ「ふふ。お家帰ったらお父さんに言ってあげてくださいね?」

マオ「うん!そーするー!」

…………

…………

カァーカァー……

マオ「あーよく遊んだねー」

妹オーク「ありがとうマオちゃんー楽しかったー」ニコニコ

姉オーク「……まあ、二人が良かったならいいんだけど……」

マオ「もうお日さまがオレンジ色になっちゃってるねー。あたし、そろそろ帰らないと」

姉オーク「うん、気をつけてねマオちゃん。先に帰ったボーンゴーレムのお姉さんにありがとうって伝えておいて」

妹オーク「ばいばーい、マオちゃん」

マオ「うん。ばいばーいまた明日ねー」フリフリ

テクテクテク……

マオ「きょーうのばんごはんはなーにっかなー♪シカ肉シチューならうれしいなー♪」

テクテクテク……

マオ「……あぱ?」

少女「…………うう……」グッタリ

マオ「……あぱー、誰か倒れてる。……エルフ族かな?大変……」

タタッ

マオ「もしもーし。大丈夫ー?」ツンツン

少女「う……あ、アンタ誰……?町の子……?」

マオ「あたしはマオだよー。あなたは?」

少女「……あたしは少女だけど……別に名前聞いた訳じゃないのよ。あイタタ……あー、ちょっとボーっとしてたみたい……」ムクリ

マオ「大丈夫?動けるー?」

少女「なんでもないわよ。ちょっとクラっとしただけ……」

グゥー……

マオ「……おなか、空いてるの?」

少女「空いてないわよ!ししし、失礼ね!今のは……そう!オナラ!オナラだから!」

マオ「それ逆に恥ずかしくない?」

少女「うるさいっての。あたしはね、空腹で倒れるような、そんな恥ずかしい血族の者じゃあないのよっ!」ビシッ

マオ「けつぞく?って?」

少女「あたしのお母さんのお母さんの、そのまたお母さんはスゴイ人なのよ!もう町でも有名で――……って、アンタ」

マオ「あぱ?」

少女「…………あたしのこと、知らないの?」

マオ「え?うん。……初めて会ったよね?」

少女「……そうだけど……」

少女(なにこの子……あたしの事知らないワケ?服もボロっちいし……町の子じゃなくって、このあたりに住んでるの?)

マオ(あれ、この子耳短いなー。エルフじゃないのかな。手も骨じゃないし、なんかあたしに似てるー)

少女「ま、まあいいわ。あたしそろそろ行くから……」

マオ「どこ行くのー?」

少女「……今夜寝るとこ探すのよ。ごはんも探さないと……」ヨロッ

マオ「そんなフラフラの状態じゃ無理だよー。それにもう暗くなってきてるし、森に入るのあぶないよー?」

少女「うるさいなあ。仕方ないでしょ。今夜はここで過ごすんだから」

マオ「狩りするのなら道具もいるよ?ウサギならいけるかもだけど、それでも弓矢でもないと……」

少女「い、いや……木の実探すつもりだったんだけど……」

マオ「そうだ。ウチ来なよ。おかーさんがごはん作ってくれてるし」

少女「…………アンタん家?」

マオ「うん。一人くらい増えても大丈夫だよ」

少女「あたし、町に戻るつもりはないわよ」

マオ「まちってどこ?」

少女「え?」

マオ「あぱ?」

マオ「あたしの住んでるのはこっちだよー。来て来て」

少女(……ついていって大丈夫かしら。けどメッチャお腹空いてるのも事実だし……)

マオ「どうしたのー?こっちこっち!」

少女「……ハア。わかったわよ……変な物食わせたら承知しないわよ?」

マオ「おかーさんのごはんはいつも美味しいよー大丈夫大丈夫」テクテク

少女(……心配だわ……)テクテク

…………

今回はここまでです

…………

タタタッ……

マオ「おとーさんおかーさん、ただいまー」タタッ

ドラゴン「おーおかえりー」

ボンゴレ「おかえりなさーい。遅かったですねー」

マオ「ごめんね遅くなって。あのねあのね、おかーさん」

ボンゴレ「はい?なんでしょう」

マオ「友達をね、そこで待たしてるんだけど……おなか、空いてるみたいなの」

ボンゴレ「ほう、お友達」

ドラゴン「オークさん所のか?」

マオ「ううん。さっき知り合ったの」

ドラゴン「……友達か?それ」

ボンゴレ「迷いの森の人っすかねえ?種族は?」

マオ「わかんない……あたしに似てるよ」

ボンゴレ「ならエルフ族かなー。お野菜準備しないといけませんかね」

マオ「んー、耳は短かったけど」

ボンゴレ「あぱー?じゃあなんでしょ。ドワーフかノームか……ハーフリングはこのあたりじゃ見ないし……」

ドラゴン「まあ、待たしたまんまのも悪い。とりあえず連れてきなさい」

マオ「はーい」テコテコ

ボンゴレ「ええと、食器食器……お肉食べられる種族の方だったらいいんですけど」イソイソ

ドラゴン「……」

ボンゴレ「ほえ?どうかしましたかードラゴンさん。こわーい顔になってますよ?」

ドラゴン「いや……」

ドラゴン(娘に似ていて耳が短い?ドワーフもノームも町に住んでるのが大半だし、もしかして……)

マオ「ほら、こっちこっちー」

少女「こっちって、家もなんもないけ、ど……」ピタリ

ドラゴン「…………」

少女「…………」

マオ「紹介するねー。この子少女ちゃん!あ、少女ちゃん。あたしのおとーさんとおかーさんだよ」

ドラゴン「……」

少女「……」

ドラゴン(うえええええええええ!!!?人間じゃねえかあああああああ!!!?)ガビーン!

少女(ぎゃああああああああああ!!!!!どどど、ドラゴンだあああああああ!!!?)ズガーン!

ボンゴレ「いらっしゃーい。マオちゃんのお母さんでーす。……あぱー、なんだかあたしに似てますねえ。ボーンゴーレム仲間ですかね?」

ドラゴン「いや違ェよ!人間だ人間!」

ボンゴレ「あぱ?にんげ……え、マジすか」

少女「あばばばばばば……どどど、どら、どら……」ガタガタ

マオ「?……どうかした?少女ちゃん」

少女「どうしたもこうしたも!!あ、アンタ、一体……?」

少女「もしかしてアンタ、魔物!?」

マオ「うん。魔物だよー」

少女「あ、あたしを罠にハメて食べようっていう気!?ドラゴンが親って……アンタもしかしてドラゴン、いや竜人族なの!?」

マオ「種族はニンゲンだよ?」

少女「どういう事なの!?」

少女「はっ!……わかったわ!そこのドラゴンがそのお姉さんやこの子に洗脳魔法をかけているのねっ!?」

ドラゴン「おおう……なんかすげえ悪者にされてる」

ボンゴレ「まーまーまーまー落ち着いて。ええと、少女ちゃんですっけ?」

少女「は、はい……」ガタガタ

ボンゴレ「そんなに怖がることないですよー。ドラゴンさん見た目は怖いっすけど、いい人っすからねー」

少女「そんな事言われても――……ん?」

ボンゴレ「はい?」

少女「ちょ、貴女……手、手……!!」

ボンゴレ「手?」ガチャガチャ

少女「イヤアアアア!!手がほ、骨ェ――ッ!」

ボンゴレ「あぱー、なんか新鮮な反応」ガチャリ

ドラゴン(いやこれマジでどうすんだ)

ドラゴン(どうしよ。人間にマオの事バレるのは面倒だぞ……町で言いふらされたりでもしたら……)

少女「食べたの!?ドラゴンに食べられたの!?はっ!……骨を魔法で動かしてるってワケ!?あ、アンデット……スケルトン……」

ボンゴレ「そんな低級種族じゃありませんよ。シッケイな」

マオ「おかーさんはボーンゴーレムだよ?」

少女「何それゴーレム!?生き物ですりゃないじゃん!!」

ボンゴレ「生きてますよぉ何てこと言うんですかー」

ドラゴン(マオを保護するとか言って人間が押し寄せてくるか?魔物狩りが来たら迷いの森や生命の湖に迷惑が――……)

ボンゴレ「はい!首すぽーん!」ガチャーン!

少女「ぎゃあああああああああああ!!!!」

マオ「あははっ!おかーさんすごーい!」キャッキャッ

ボンゴレ「いやー反応面白いっすねー」

ドラゴン「俺今真剣に考えてるんだけど」

少女「あ……ああ……」

ヘタリッ

少女(もうダメだあ……お腹空いたし驚きすぎたしで、力が……)

ドラゴン「!……ったく……おい、もういいだろボンゴレ」

ボンゴレ「ちぇーっ。もう少し遊びたかったのにー」

ドラゴン「状況を見ろ、状況を」

ボンゴレ「はいはい。すぐ準備しますからー」パタパタ

カチャカチャ……

少女(準備……あたしを料理する準備かな……うう、せめてもう少し長生きしたかった……)

マオ「おかーさん、あたしなにすればいいー?」

ボンゴレ「ではこのスプーンを運んでもらいましょうかね」

マオ「はーい」

ガチャガチャ

少女(スプーン?……何に使うんだろ……)

ボンゴレ「さーて、ではお皿に取り分けて、と……」

マオ「おかーさん、今日のごはんはなーにー?」

ボンゴレ「ふふふ、今日はですねー」

少女(あたしの丸焼き?あたしのカツレツ?なんだろ……)

ボンゴレ「シカ肉のシチューとカモ肉ステーキ、それにパンとサラダに、デザートにはオレンジを用意しましたよーっ」

バーン

マオ「わーいシチューだー!」

ボンゴレ「ふふふ、マオちゃんはシカ肉シチュー大好きですもんねー?」

マオ「うんー!」ニパー

少女「…………へ?」パチリ

ボンゴレ「はい、少女ちゃんの分」スッ

少女「う……ええ……?」

マオ「おかーさんの料理はすっごくおいしんだよー!?」

ボンゴレ「あぱぱー、テレますねえ」

ドラゴン「……シカ肉シチューはミノタウロス娘からレシピ教えてもらったんだろ」

ボンゴレ「アタシがアレンジしたのでアタシのレシピっすよっ!」

ドラゴン「じゃあ……」

「「「いっただっきまーす」」」

少女「…………ます……?」

マオ「んー!今日もおかーさんのごはんはおいしいー!」モグモグ

ドラゴン「うん、うまいな。パンも綺麗に焼けてるよ、ボンゴ――……お母さん」パクパク

ボンゴレ「んふふっ、おかわりもたーんとありますからねーっ」イソイソ

少女「…………」

ボンゴレ「さ、さ。どうぞどうぞ少女ちゃんも食べてくださいな。一気に食べるとお腹にワルいかもしれませんから、ゆっくりシチューをのんでみてください」

少女「……」

少女「……あ……あたしを……」

ドラゴン「?……」

ボンゴレ「はい?」

少女「……あたしを太らせてから食べる気……?」ビクビク

ドラゴン「……疑り深いやつだなーコイツ……」

ボンゴレ「そんなことしませんってぇ……」

今回はここまでです

少し更新遅れます。すみません
水曜か木曜あたりになるかと

ボンゴレ「確かにアタシ達は魔物ですけど、人を襲ったりしませんって」

ドラゴン「……ん」

ボンゴレ「あー……ドラゴンさんは時効ってことで」

少女「……」ジトッ

マオ「おかーさん、おかわりー!」

ボンゴレ「はいはい、ちょっと待ってくださいねー」イソイソ

ドラゴン「……冷めるぞ、シチュー」

少女「……い、いただきます……」スッ……

ズズッ

少女「!!……え、おいし……」

ボンゴレ「!!」パァァ!

ドラゴン「ボンゴレ、顔に出過ぎ」

マオ「ねー!おかーさんのシチューおいしいよねー!?」

少女(しょ、正直……)

少女(魔物の作った料理なんて、野菜の切れ端や腐った肉使ってるとか思ってたけど……失礼だった)

少女(ていうかいつもあたしが食べてるものより美味しいし……なにこれ)

少女(野菜が甘い……すごい新鮮で、お肉も……こんなの買ったらいくらするのか……)

少女「……」ゴクゴクゴク

ドラゴン(……すげえ勢いで食うなあ……)

ボンゴレ「鴨肉とパンもどうぞ。熱いですから気をつけてくださいねー」

少女「うう……いただきます……」パクパク

少女(うう、焼いたお肉をこんなにも豪快に食べるなんて……生まれて初めてだし)パクパク

少女(パンも……パンってこんなにもやわらかくて、あったかいものだったの?)ガツガツ

ボンゴレ「よっぽどお腹空いてたんですねえ」

ドラゴン「……やけどすんなよ?」

少女「……うっうっ……うう……」ジワッ

ドラゴン「あーあー、言わんこっちゃない」

ボンゴレ「あぱー、大丈夫ですか?あつあつですからねえ。お水でも――……」

少女「ちがう……違うの……」

ドラゴン「?……」

少女「こんな美味しいごはん……食べるの、初めてで……おいしくって……!」ポロポロ

ドラゴン「……そうか」

…………

…………

ドラゴン「ご馳走様でした」

マオ「ごちそーさまでしたー!」

少女「……ごちそうさま、でした」

ボンゴレ「おそまつさまでした。ではでは後片付けはお母さんがやりますからねー」

マオ「ありがとうおかーさん!明日はあたし手伝うよー」

ボンゴレ「はい、お願いしますねマオちゃん」

マオ「じゃあ少女ちゃん、身体洗いにいこっか?」

少女「え、身体?……別に汚れてないからいいけど」

マオ「ダメだよー毎日身体洗わないといけないっておかーさん怒るものー」

少女「そ、そうなんだ……」

ドラゴン「あー、マオ。今日はお母さんと身体洗いに行ってきなさい」

マオ「あぱ?」

ドラゴン「ボンゴレも、食器は後で俺が手伝うから」

ボンゴレ「珍しいですね、ドラゴンさんがそんなこと言うなんて」

ドラゴン「……送ってくから」

ボンゴレ「あ、そういう……了解しました。……細かい説明も任せますよ?」

ドラゴン「ああ。そのつもりだ」

ボンゴレ「じゃあマオちゃん、今日はお母さんと身体洗いっこしましょっか!」

マオ「はーい」

テクテク……

ドラゴン「……さて……」

少女「?……」

ドラゴン「色々あって驚いただろうが……改めて。俺は見た通りドラゴンで、あいつはボーンゴーレムって魔物で……マオは、人間の娘だ」

少女「え、あ……はあ」

ドラゴン「数年前、赤ん坊のあいつを拾って……俺たちが親となって育ててる」

少女「……」

ドラゴン「別に人間に危害を加えようって訳じゃあないし、あの娘を魔物として育てたい訳でもない。ただ――……」

ドラゴン「……ただ、あの娘には立派に育ってほしいだけなんだ」

少女「……」

ドラゴン「だから……今日見た事は、言いふらさないでもらえると……非常に、助かる」

少女「……うん。大丈夫。……だって……あたし、友達だし」

ドラゴン「……ありがとう」

少女「あ、あはは……なんか、魔物ってもっと怖いかと思ってたけど……町の人間なんかより、優しいんだね?」

ドラゴン「……お前……少女、って言ったか」

少女「あ、はい」

ドラゴン「俺は百年ほど前の町しか知らんが――……その頃の町人はもっと上等な服を着ていたし、一人でこんな山の中まで来ようとはしないもんだが」

少女「……」

ドラゴン「……少女、町のどこに住んでるんだ?親は?……送っていってやる」

少女「親は、死んで――……今は遠い親戚のおばさん家で……暮らさせて、もらってる」

ドラゴン「……」

少女「あたしのね、お母さんのお母さんのお母さん……『狂乱の魔女』なの」

ドラゴン「!」

少女「だから、あたし――……『墓暴きの一族』だとか、『人智の理を外れたバケモノ』だとか、散々でさ……おばさんからもまともな暮らし、させてもらってない」

ドラゴン「……子孫に罪はないだろうに。人間ってのは……」

少女「いいの。あたし……あたしはね、偉大なる血を……人とは違う、魔女の血を受け継ぐもの、なんだから」

ドラゴン「……」

少女「だから、あたし、もう人間として、生きるのやめようって決めて――……この山で暮らそうって決めたの」

ドラゴン「……」

少女「そしたら、あの子にあって……今日、生まれてはじめてよ。あんなおいしいご飯食べたの!」

ドラゴン「……背中に乗れ。ひとっ飛びで町の近くまで送っていってやるから」

少女「ねえ、お願いよ。あたしを――……」

ドラゴン「おばさんには何も言ってないんだろ?」

少女「……」

ドラゴン「……心配しているだろう。……送っていってやるから」

少女「……また……」

少女「……また、遊びに来てもいいかな?」

ドラゴン「……ああ。マオも喜ぶよ」

…………

今回はここまでです

すみませんだいぶ遅くなってます
今週更新します。申し訳ないです

ごめんなさい明日更新です
ちょっとスランプ入ってるなあ

…………

ゴォォオォオオォ……

『どうした、ドラゴン。その程度か』

ドラゴン『……魔女、テメェ……!』

『私を止めてみろ、ドラゴン。私は自分の野望のため……貴様を殺す!!』

ズオオオオ

ドラゴン『――!!』

ゴォオオォォ……

…………

ドラゴン「!!……」パチリ

チュンチュン……

ドラゴン「……あー……ヘンな夢見た……」

ムクリ

ノソノソ……

ドラゴン「……すまん、寝過ごしたか。ボンゴレ」

ボンゴレ「おはようございますドラゴンさん。お疲れのようっすねー?」

ドラゴン「ん、まあ……」

ボンゴレ「保存してある食材はたくさんありますし、今日はゆっくりお休みしたらどうです?」

ドラゴン「あー……悪いな。そうする」

ボンゴレ「いえいえ。いつもご苦労さまです」

パンッ

ボンゴレ「うーん、こう天気がいいと気持ちいいですねー。洗濯物がよく乾きそうです」イソイソ

ドラゴン「マオは?」

ボンゴレ「今日は朝からクイーンスライムさん所でお勉強だそうです。早くから行っちゃいましたよ」

ドラゴン「ん、そうか……勉強、か……」

ボンゴレ「……なにやら浮かない顔っすねぇ。せーっかくの晴れの日が曇っちゃいますよ」

ドラゴン「いや……別に暗い気分な訳じゃあないんだよ。ただ……」

ドラゴン「……そろそろ色々教えといた方がいいのかなあ、と……」

ボンゴレ「色々、って……」

ドラゴン「なんとなく詳しく説明してなかったしな。人間と魔物について、とか。人間の町について、とか」

ボンゴレ「そうっすねぇ……」

ドラゴン「マオは娘だが……人間だからな。色々と……教えといた方がいいだろう」

ボンゴレ「……」

ドラゴン「昨日みたいに、いつ人間がここに来るかわからん。最低限……な」

ボンゴレ「確かにそうっすねえ。今度町に連れて行って、お買い物の仕方とか教えてあげましょうか」

ドラゴン「ああ……簡単な法律やルールなんかもな」

ボンゴレ「他には――……」

ドラゴン「まあ、そのくらい……最初は簡単に教えたらいいだろ」

ボンゴレ「そうっすね。……あぱー?なーんか忘れてるような」

ドラゴン「気のせいだろ。最初はそーいうんからでいいんだよ」

ボンゴレ「そうっすかねえ」

…………

…………

サワサワサワ……

クイスラ「さて、マオちゃん。今日は理科よ。色々な生き物を見ていきましょう」

マオ「はーい」

クイスラ「マオちゃんはどんな生き物を知っているかしら?」

マオ「んーっと……おとーさんはドラゴン!おかーさんはボーンゴーレムで、友達はオークでー」

クイスラ「ああ、魔物じゃなくって、普通の生き物は?」

マオ「えー?……んーっと、ウサギとかー、ハトとか?」

クイスラ「……狩猟系ばっかじゃないの」

マオ「この前すっごくおおきなウサギとったんだよ!」

クイスラ「ああそうなの。今はその話置いとこうかしら」

クイスラ「今日は昆虫や草花を中心に見ていくわよ。迷いの森まで行くから、気になったものはどんどん言いなさい」

マオ「はーい」

クイスラ「っと……素手で触ったらちょっと危ないかしら。手袋でもあればいいけど……あ、そうだマオちゃん」

マオ「はい先生」

クイスラ「もうそろそろ、魔法結構使えるようになったんじゃない?ドラゴン君の教えがあれば、二元素くらい貴女なら習得出来るでしょう」

マオ「あぱ?」

クイスラ「貴女は風か水が使えそうだけど、どっちか使えるかしら?これから生き物は素手で触らず、魔法で捕まえるようにしたいのよ」

マオ「……えーっと、先生」

クイスラ「何?……あ、もしかして攻撃呪文しか教わってないの?」

マオ「いや、あのー……そうじゃなくってー……」

マオ「あぶないから……魔法、教えてもらってない……です」

クイスラ「……」

マオ「……あぱー……」

クイスラ「…………」

クイスラ「…………はァ゛?」ミシリ

マオ(あぱー……先生、怒ってる……)

…………

…………

パンッ!

ボンゴレ「よーし、洗濯物、終わりーっと」

サンサン……

ボンゴレ「うひー、太陽が眩しいっす。ちょっとお茶入れて休憩しようかなー」

ドラゴン「……俺は二度寝しようかな。あったかくて眠くなってきた」

ボンゴレ「あ、それいいっすね。アタシもご一緒しますよ」

ドラゴン「いやご一緒はしなくていい」

ボンゴレ「なーんて冷たいことを!」

ボンゴレ「ほらほらー、そこでしゃがんで。手は前にしてください」

ドラゴン「ええー……」

ボンゴレ「よっこいしょ……わ、ドラゴンさんあったかーい。ポカポカですねえ」ピトッ

ドラゴン「ひっつくなよ……お前は冷たいんだよ。骨が」

ボンゴレ「翼!翼上からかけてくださいよ!翼ふとん!」

ドラゴン「羽毛じゃないからそんな良いもんじゃねえぞ」バサッ

ボンゴレ「いやいや良いもんですよーこれ。ほんのりあったかくて」

ドラゴン「あっそ……」

ボンゴレ「ふー……」

ドラゴン「……ふぁア~……」

ボンゴレ「……こうして干した洗濯物を見ながら、天気の良い日にゴロゴロするのも、なかなかオツな――……」

……ゴロゴロゴロ……

ボンゴレ「……あぱー?」

ドラゴン「えっ」

ザアアー!!

ボンゴレ「あ、あぱぱー!!急に雨がっ!いきなり天気が悪く!!」

ドラゴン「……ええ……」

ピカ!

ピシャアアン!!

ボンゴレ「あわ、あわわわわわわ、洗濯物!洗濯物取り込まないとっ!!」

ドラゴン「……いや、待てボンゴレ」

ボンゴレ「なんすかー!?今しゃべってる場合じゃないっすよ!雷もすごいですし!」

ドラゴン「すまん手は動かしていい」

ドラゴン「いや、な……この雨、魔力を感じるっつーか……ていうか絶対、魔法で降らしてる雨だな」

ボンゴレ「な、なんでそんなイヤガラセを!?ていうか誰がっ!?」

ドラゴン「俺も一回、魔法で雨降らした事あるけど……ぶっちゃけ四天王クラスの魔力ないと無理だからな、こんな芸当」

ボンゴレ「も!……もしかして、昔に火の四天王が来たみたいに、今度は水の四天王が!?」

ドラゴン「いや……四天王は四天王だが――……」

ザバザバザバザバ……

クイスラ「…………」ズゥゥウウン……

マオ「……あぱー……」

ボンゴレ「……あれ?クイーンスライムさんと……マオちゃん?」

ドラゴン(なんで滅茶苦茶キレてんだ、こいつ……)

クイスラ「……悪いわね、ボーンゴーレムちゃん。私、日光に弱いのよ。お肌が乾燥してね」

ボンゴレ「いや、それはいいんすけどー……こっちに来るなんて珍しいっすね、クイーンスライムさん。……えっと、もしかしてその、娘が何か……?」

クイスラ「いいえ。マオちゃんは何も悪いことしてないわ。……今回ちょっと、ドラゴン君に用があって、ね」

ドラゴン「俺かよ」

クイスラ「……もうわかってるでしょ、ドラゴン君」

ドラゴン「……え、何が?」

クイスラ「とりあえず、土下座しなさい」

ドラゴン「何故だ」

クイスラ「私じゃあなく、マオちゃんに」

ドラゴン「なおさら何故だ」

マオ「せんせー、おとーさんいじめたげないでよー……」

クイスラ「貴女はもっと怒ってもいいのよ、この爬虫類に」

ドラゴン「誰が爬虫類じゃい」

クイスラ「私、言ったわよね?この子を預かる時に」

ドラゴン「は?……7年前の事か?」

クイスラ「私は文字の読み書きや計算、礼儀作法等をこの子に教えてあげるって」

ドラゴン「……言ってた」

クイスラ「時期が来たら、ドラゴン君……貴方が魔法を教えなさい、って」

ドラゴン「…………言ってました」

クイスラ「なーんでまだ初歩魔法どころか魔法理念の一つすら教えてないの?こーの過保護バカが!!」ゴオッ!!

ボンゴレ「あーそういう感じっすか……」

ドラゴン「いやだって!まだその、早いんじゃあねえかって思ってさぁ……」

クイスラ「『来たれ天上の恵み。今ここに、全てを裁く災厄となりて――……』」

ドラゴン「待てお前水の上位魔法はやめろ。マジで死ぬ」

ドラゴン「っていうかお前には関係ないだろ!魔法教えようが教えまいが!」

クイスラ「何言ってんのよ!この子の魔力わかってんの!?そこらのザコ魔法使いなんてメじゃないレベルの潜在力よ!!」

ボンゴレ「褒められてますねえ、マオちゃん」

マオ「よくわかんない……ちょっと先生こわい……」

ドラゴン「潜在力あろうがなかろうが、まだ子供だろ。マオは」

クイスラ「ダイヤの原石腐らせるような事して……!!私だったら2歳の頃から仕込んでるわよ!」

ボンゴレ「それはやりすぎだと思うっす」

クイスラ「この子が魔法覚えたらどんな使い方するのかなーとか、水魔法色々教えてあげたいなーとか考えてたのに、何をしてんのよ、貴方は!!」

ドラゴン「お前の考えは知らんがな」

クイスラ「とにかく!……マオちゃん、今日の授業は特別編よ」

マオ「あぱー?」

クイスラ「ドラゴン君が魔法を教えてくれるから……しっかり習得しなさい」

マオ「!……本当にー!魔法、教えてくれるの?おとーさん!」

ドラゴン「……」ブスッ

クイスラ「なあにドラゴン君、そんなに私の水魔法喰らいたい?しょうがないわねー」

ドラゴン「あーわかったわかった……教える……教えますよ。くそ……」

ドラゴン「いいか?マオ。まず言っておくが、魔法ってのは危険なものなんだ」

マオ「……そうなの?べんりで楽しそうだけどー」

ドラゴン「ウサギを獲る時に使う弓矢や皮を剥がすのに使うナイフだって、便利だが怪我することもあるだろ?」

マオ「……ゆび切ったとき、いたかった……」

ドラゴン「魔法は使い方によっては、誰かを傷つけることもあるんだ。それをよーく理解して――……」

クイスラ「はやく本題に入りなさいよ、イライラするわね」

ドラゴン「あっハイ」

ドラゴン「ではまず、魔法というのは四元素魔法と二色魔法があって、合わせて六大魔法と呼ばれ――……いやそれより魔法理論のが先か。いいか、この世界にはマナと呼ばれる魔法の元になるのがあって、魔法を唱えるにはこのマナと自分の魔力を混ぜ、精霊の言霊により形にし――……」

マオ「?……??……あぱー?」

クイスラ「……説明下手ね」

ドラゴン「ううう、うっさいわ!」

ボンゴレ「……クイーンスライムさんが教えたらいいんじゃないっすか?」

クイスラ「ハァ、仕方ないわね……いい?マオちゃん」

マオ「はい」

クイスラ「目を閉じて――……水をイメージするの。川の水や湖や――……」

ドラゴン「お前それ水魔法の唱え方じゃん」

クイスラ「仕方ないでしょ、私それ以外わかんないもの」

ドラゴン「お前も教えるの下手じゃねーか!まずどの系統が合ってるかだな――……」

クイスラ「何はともあれ唱えるのが先でしょ!この子ならなんでもいけそうだし――……」

ドラゴン「変な癖つくだろ!ていうか魔法の成り立ちから――……」

クイスラ「それよりも実践的なものから――……」

アーダコーダ……

マオ「……おかーさん、魔法教えてー」

ボンゴレ「あぱー、アタシもよくわかんないんすよねー」

マオ「えー」

???「失礼……皆々様方」

ザッ

ドラゴン「……は?」

クイスラ「……何?貴方」

???「いえ……私は通りすがりの『紳士』……なのですがね……」

ボンゴレ「……あぱー?」

???「見たところ、その子に魔法を教えようとしている……所ですね?」

ドラゴン「……そうだけど……え?」

クイスラ「!……もしかして、貴方――……」

???「何も言わなくて良いですよ。ふふふ……この私、『紳士』が……ひと肌脱ぎましょうか?宜しければ……ですが」

マオ「……おー……」

マオ「鳥さんだ!」

鳥紳士「いえ、私は『紳士』……ですが、お嬢さん。貴女が仰っしゃりたいのであれば、『鳥紳士』……と呼んでいただいても結構ですよ。ふふふ……」

ドラゴン「……鳥?」

ボンゴレ「あぱー……顔が鳥、ですね……」

ドラゴン「……けど身体、人間だぜ?……スーツ着た」

ボンゴレ「…………」

ドラゴン「……ハーピー、か?いやけど翼ないし……」

ボンゴレ「ハーピーの亜種、ですかねえ。顔だけ鳥の人間……初めて見ます……」

鳥紳士「『紳士』ですよ。おせっかい焼きの、ね……」

クイスラ「……」

鳥紳士「教えてあげましょう、お嬢さん。魔法のABCを、ね……ふふふ……」

ドラゴン(大丈夫か、これ……)

ボンゴレ(誰なんだろ、この人……)

…………

今回はここまでです
ちょっと間空きすぎましたね……投稿頻度上げます。すみません

申し訳ありません、更新かなり遅れることになります
ここで書くことで筆が乗ってきたんですが、
ずっと放置していた他の話にこの勢いを使いたくなりまして……申し訳ないです。もしかしたら更新1月とかになるかもしれません……すみません
再開した時は更新頻度上げようと思います。本当に

今週更新ってことで許して下さい……

…………

鳥紳士「――という事で、世界にあふれるマナのお陰で魔法を唱えられる訳ですね」カキカキ

マオ「なるほどー」カキカキ

ドラゴン「な……なんだコイツ……ふざけた見た目のくせして滅茶苦茶わかりやすい説明……!!」ガタガタ

ボンゴレ「あぱー……魔法についてなにも知らなくても今すぐ唱えられそうですよ!」ブルブル

クイスラ「貴方達が教えるの下手すぎるのよ……よくそんなので親やれてるわね」

鳥紳士「では、実際に魔法の練習をしてみましょうか」

マオ「はーい」

鳥紳士「時に、そちらのお父様……ドラゴンさん」

ドラゴン「おっ、おう?俺か」

鳥紳士「貴方は魔法を唱える時、何を考えていますか?」

ドラゴン「……何を?……えーっと、呪文……?」

クイスラ「いや、そうじゃなくって魔力の練り方の話でしょ……」

ドラゴン「あ、ああ。そういうことか」

ドラゴン「ええと……呪文に合ったマナと魔力を混ぜるために、イメージして……練る」

鳥紳士「GOOD。『呪文に合ったマナ』というのが大切ですね」

マオ「?……どーゆーこと?」

鳥紳士「例えば、水の魔法を唱えたいのに、燃え盛る炎をイメージしても、上手くいきそうにないでしょう?」

マオ「……なるほどー」

鳥紳士「そしてそのイメージには、自分に合ったものと合わないものがあります」

マオ「……それは、どーやったらわかるのー?」

鳥紳士「難しく考える必要はありませんよ、お嬢さん。ふふふ……まず、目を閉じて下さい」

マオ「……ん……」ギュッ

鳥紳士「胸に手をあてて、深呼吸ー。息を吸うたびに、マナが体内に満ちていき……呼吸を通して、身体が世界に溶けていくイメージで……」

マオ「……すー、はー……」

鳥紳士「息を吸って、はいて。鼓動に集中」

マオ「……すー、はー……」

鳥紳士「……貴女は今、マナが満ちた世界にいます……貴女の心に、どんな風景が映っていますか?」

マオ「…………すーっ……」

ヒュウウウ……

マオ「…………草原?」

クイスラ「……草原……」

ドラゴン「……草原かあ……」

鳥紳士「ほう、草原……」

マオ「えっとね、風がね……草を、ゆらゆらーって……そんなのがね、思い浮かんだんだけど……」パチッ

クイスラ「…………」

マオ「……先生、どーしたの?顔くらいよ?」

クイスラ「……水魔法だったら良かったのに」ボソッ

ドラゴン「お前水以外唱えられないもんな」

鳥紳士「ふふふ、貴女に合っているのは風魔法のようですね」

マオ「そうなの?……ぱっと思い浮かんだだけだよ?」

ドラゴン「そういう『思いつき』が大切なんだよ。……俺は最初、火山の山しか想像出来なくて、水魔法の感覚掴むのに苦労したし」

ボンゴレ「アタシも墓場の土しかイメージ出来ませんしねえ」

ドラゴン「それは土魔法とちょっと違う」

鳥紳士「では、そのイメージの中に自分が立ち、心地よいと感じているイメージを作りましょう」

マオ「んー……こんなので魔法となえられるのー?」

鳥紳士「ええ。大自然の精霊と心を合わせるのが大切なのですよ」

クイスラ「貴女の場合は風魔法だから、どんな状況でも『風と仲良し!』って思わないといけないわよ」

マオ「はーい。……んー、なかよし、なかよし……」

……ズズズ……

ドラゴン「……お?」

マオ「……なかよし、なかよし、なかよし……」

ゴゴゴゴゴゴゴ……

ドラゴン「…………最上位魔法でもとなえるつもりか?」

ボンゴレ「あぱー……マオちゃんの周りにオーラが見えますよお」

クイスラ「わかってはいたけど……魔力ホント凄いわね、この子」

鳥紳士「はい、良いでしょう。止めてくださいお嬢さん。……私は紳士なのでびっくりしたり焦ったりしませんが……凄いですね」

マオ「?……すごいの?あたし」

ドラゴン「凄いすごい。並みの魔法使いなんかメじゃねえな」

ボンゴレ「さすが!お母さんとお父さんの子ですね、よーしよし!」ナデナデ

マオ「えへへー」

鳥紳士「あとは魔力を練る量や加減を覚えていきましょうか。魔力は練るだけで精神力を使いますからね」

マオ「うーん、むずかしい……」

ドラゴン「感覚覚えたらすぐなんだけどなあ」

鳥紳士「まあ、それはおいおいお父様とお母様に教えていただければ、と」

ドラゴン「え?」

鳥紳士「少しばかり退屈な鍛錬ですからね。お時間をかけてのんびりやっていくのが良いかと」

ボンゴレ「そーいう事ならまーっかせてくださいな!」

ドラゴン「いやお前は教えるの無理だろ」

鳥紳士「代わりに、簡単な呪文をお教えしましょう。私実は、風呪文を少々嗜んでいましてね。ふふふ……」

クイスラ(少々……)

マオ「ホントにー!?やっと魔法つかえるんだ、あたしもー!」

鳥紳士「少し呪文が難しいかもしれませんが……試してみましょうか。まず、精霊との誓いですが――……」

ワイワイ……

…………

…………

鳥紳士「……では、あの棒に向かって……教えた通りに」

マオ「はーい。鳥紳士さん」スッ

ドラゴン「……」ゴクリ

ボンゴレ「ど、ドキドキしますね……!」ドキドキ

クイスラ「な、なによ貴方達……ソワソワしちゃって。ただ呪文唱えるだけじゃないの」ソワソワ

マオ「いきまーす。えーっと……」スウーッ

マオ「『風精シルフィードよ!我の元に集いて奇跡を呼び起こしたまえ!』」

ブワッ

マオ「えっと……『溢れ出るは感情の流出・止めどなくは精神の慟哭』……『思いを硬め・鍛え・研ぎ・汝の敵を』――……」

シュルルルル……

マオ「――……『斬り伏せろ。スライス』!」

ビュッ!

ズバアッ!!

鳥紳士「……Very Good」

ドラゴン「おおー、初歩とはいえ攻撃呪文を一発で成功させたか」

ボンゴレ「わああああああ!み、見ましたかドラゴンさんドラゴンさん!マオちゃんが!マオちゃんが!!」ユサユサ

ドラゴン「あーあー見たよ見たよ」

クイスラ「うっ、うっ……成長ね……さすが私の教え子だわ……」サメザメ

ドラゴン「なんで泣いてんのお前……」

ボンゴレ「マオちゃーん!」ギューッ

マオ「わぷ。えへへ、出来たよおかーさん。すごいー?」

ボンゴレ「すごいすごい超すごいですよ!いやもう激スゴイっす!マジパねーっす!」

ドラゴン「なんじゃそら」

鳥紳士「ふふふ……おや、もう夕刻ですか。そろそろお暇しませんと……」

マオ「えー、鳥紳士さん、帰っちゃうのー?」

ボンゴレ「マオちゃんに魔法教えてくださったお礼に、ぜひともウチで晩ごはんでも、どうです?」

鳥紳士「いえ、私は紳士ですので。……これにて失礼しますよ。お嬢さんにお父様、お母様。そして……クイーンスライム様」ペコリ

クイスラ「……」

スタスタ……

クイスラ「……貴方、何が目的だったの?」ボソッ

鳥紳士「……はて、目的……とは?」

クイスラ「とぼけないで。大方……ドラゴン君か私の暗殺でも企てていたんじゃないの?」

鳥紳士「……いえ。私は紳士ですので、そのようなことは」

クイスラ「……」

鳥紳士「ひと目、お会いしたかった。……それだけですよ。ふふふ……」

クイスラ「……フン」

…………

…………

――暗黒大陸・魔王城――
……『四天王の間』――……

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

狐娘「……はぁ~~……何やっとるんじゃ、他の奴らは……」バリバリ

土の『不滅』
『九尾の狐』

狐娘「他の奴らは四天王としての自覚がなさすぎるんじゃ。まったく。年寄りを待たせよってからに……せんべい無くなってしまうわい」バリバリ

人魚「フゥ……大方ドラゴニュートなどはまた何処かで遊んでいるのでしょう」

水の『流転』
『マーメイドクイーン』

人魚「だいたい私はあいつのことガボッ、ガバガボガボガボ、ガーボガボ、ガボボッ!」ブクブク

狐娘「……話すなら水から上がって話したらどうじゃ?」

人魚「嫌ガボ!エラが乾いたらほんとにしんどいガボボッ!」

狐娘「あーもう喋らんでくりゃれ。せんべいが湿気るじゃろうが……」

ドラゴ娘「……私は遊んでなどいないぞ、マーメイドクイーンよ」

火の『明星』
『ドラゴニュート』

狐娘「おー、よーやっと来よったわい」

人魚「何処に行ってたのよ、ガボボ」

ドラゴ娘「たいそう腕の立つ人間が集まるという闘技場があったのでな。人間の強さを確かめるため参戦したが……拍子抜けだ。つまらん」

人魚「……やっぱり遊んでるんじゃない。ブクブク」

ドラゴ娘「魔物の恐ろしさを人間に教えてやったまでだ。……それで……」

ドラゴ娘「『風』はどこだ?姿が見えんが――……」

「おや、きちんと時間は守ったつもりですがね……ふふふ」

ドラゴ娘「む……」

鳥紳士「失礼。素敵なお嬢さんと時を忘れるほど遊んでおりまして」

風の『逆凪』
『ハーピー・ロード』

狐娘「ようやっと揃い寄ったのお。風の四天王、お主新顔のくせに時間に『るうず』すぎるぞ?」

鳥紳士「きちんと守ったつもりでしたが……私の懐中時計が少し居眠りをしていたみたいですね。これは申し訳ない」

人魚「エセ紳士め……貴方なんてガーボガボ!ガボ、ゴボゴボ!ガボボボボ!」

ドラゴ娘「水を飛ばすな、私は湿気が苦手なんだ」

狐娘「まあええじゃろう。さっそく会議を始めるとするかのう……」

狐娘「世界を支配し、魔物の王国を作るのじゃ。うしし……!」

…………

今回はここまでです
遅くなって申し訳ないです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2021年02月04日 (木) 18:52:04   ID: S:sm2bdc

続きが楽しみです

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