【MH】ハンターの生態日記 (48)



・よく華々しく紹介されるハンターですが、現実的にその裏には様々な悲劇もあるんだろうなぁと思い、それを書き表してみます。

・地の文ありで書くのは初めてなので、気になる点などあればご指摘ください。

・描写的に一応閲覧注意でお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1600784382



【アオアシラの狩猟】


アオアシラ「グオオォォォォ!!!」ダッダッダッダッ!

ケイ「くっ!?」バッ!

アオアシラが眼前のハンター目掛けてその巨体を踊らせる。ハンターの軽く倍はあるであろう巨躯から繰り出される突進は、まともに食らえば熟練ハンターでもダメージは免れない。まして装備の整っていない新米ハンターでは致命傷足り得る。

ハンターは咄嗟のところで身を投げ出して回避する。
アオアシラは敵を逃したと悟ると、強靭な後ろ脚で強引にブレーキをかけ、直ぐ様立ち上がる。

ケイ「嘘だろ!?」

新米ハンターのケイはまだ立ち上がれる体勢ではない。
アオアシラはそれを好機と見るや、強靭な剛腕を抱き付く様に振るう。



ケイ「くっそ!!!」ズザッ!

ケイは完全に立ち上がる前に、前のめりな体勢を利用してそのまま前転を試みる。
それが功を奏し、風切り音を上げるアオアシラの爪はケイの腰のポーチの留め具を掠めるだけに終わった。

壊れたポーチの中身が散らばる中から、ケイは緑の液体が入ったビンをひとつ拾い上げて立ち上がる。

ケイ「はぁ・・・はぁ・・・中々隙をつけない!ドスジャギィとは訳が違う!」

アオアシラとは距離が空いていることを確認した上で装備が片手剣であることを利用し、抜刀したまま一気に回復薬を呷る。幾分身体の痛みと疲労が引くのを感じた。

アオアシラ「グルルルルゥゥ・・・」

アオアシラも簡単には仕留められない眼前の敵を睨み付け、口の中に低い唸りを木霊させる。



アオアシラ「グオオオオオン!」

ケイ「っ!来るか!?」

アオアシラは両手を掲げ、咆哮を上げる。バインドボイスの様な声量はないものの、巨大生物の威嚇を直視するのは本能的な恐怖を刺激され、生きた心地がしない。

アオアシラ「グゥゥゥ!」ザッ・・・ドタッドタッドタッ・・・

ケイ「ん?!」


猛攻が来るかと思いきや、アオアシラはケイに背中を向け、隣のエリアへ続く開けた道に猛然と走り去って行った。
ウンザリして別な獲物を探しに行ったか、はたまた只の気まぐれか、どちらにせよケイにとっては一難去った瞬間であった。



ケイ「・・・ぷはぁ、ハァ、ハァ、キッツいなぁ。もう少し装備が整えてから来れば良かったか・・・」



ケイが纏うはジャギィシリーズにソルジャーダガー。共にジャギィ種の素材から作られる駆け出しハンター御用達の装備である。当然性能はそこまで高くはない。

ケイ「今更言ってもはじまらない、か。しかし派手にやったなぁ。砥石と、地図と・・・あぁ、あったあった」

ケイは地面に散らばるアイテムを別な空きポーチの中に詰め直していく。しかしこの時、ひとつだけ遠くの茂みに転がったアイテムがあったことを、ケイは気付くことが出来なかったーーー


ケイ「武器も研ぎ直して、スタミナもだいぶ回復したな。そろそろタイムリミットも近いし、次で決めたいけども」ダッダッダッダッ!


そう、全ては次のエリアで決着するのであった。




ケイ「はぁぁぁぁ!!!」ズッ!

裂帛の気合から繰り出した一撃だったが、アオアシラの硬い毛に阻まれ、思う様な痛打にならない。しかしこれが気に障り、アオアシラは怒り状態に移行する。


アオアシラ「ブオオォォ!!!」

ケイ「連続引っ掻きか!?」バッ!

アオアシラの剛腕が振られる。
1回目は後ろに下がり回避出来た。しかし新米故の位置取りの悪さが祟り、直ぐ背後に崖の岩肌があった。アオアシラの位置的にも次を避けられない。
ケイは咄嗟に盾でガードすることを選択した。

ケイ「ぐおおぉぉぉ!!!グッ!」ガギィィン!

何とかガードは成功したものの、反動で腕を跳ね上げられ、大きく仰け反り崖に背中を強打する。



アオアシラ「ガァァァァ!」ブンッッ!

ケイ「ッブッッ!!!??」バキッ!

これで終わるかと思った攻撃だったが、怒り状態のアオアシラは激情に任せてもう1度腕を往復させる。
背中の痛みに怯んでいたケイには、完全に虚を付いた一撃だった。


ケイ「グハッ!ガッ!・・・ぐああぁぁぁ!!!」ドッ!ドサッ!ゴロゴロ・・・


崖の岩肌すら削る程の痛烈な一撃が、ケイの身体の側面に直撃する。左腕からは骨の砕ける嫌な音が響き、吹き飛ばされたケイは地面に叩き付けられ、ゴミの様に転がった。

ケイ「グッ!痛ッッ!!くそぉ!」

何とか立ち上がろうとするケイだが、片腕が使えない上、痛みに全身が言うことを聞かない。酷く緩慢な動きで漸く上体を地面から引き剥がした。




ケイ(腕が折れた!武器が持てない!もう戦えない!回復、いやその前に逃げないと!!!)


痛みに悶えながら頭の中の何処か冷静な部分で状況を探るケイだが、アオアシラも獲物のそんな状態をみすみす逃す捕食者ではなかった。


アオアシラ「グオゥッ!」ガバッ!

ケイ「何ッ!?ぎぁっ!」

アオアシラは短く唸ると小さく跳躍し、ケイにのし掛かり地面に押し倒す。そのまま器用に両前脚でケイを掴み、立ち上がる。
モンスターに比べれば小柄な人間の身体など簡単に宙に浮いてしまう。


アオアシラ「グオウ!グアアアウ!」ギュウウウウ!!!

ケイ「ぐあああああああ!!!」ミシミシミシッ


アオアシラは怪力を活かし、ケイの身体を腕力で締め付けていく。防具の強靭な金属フレームのお陰で潰されこそしないものの、折れた左腕ごと肉体を挟まれ、ケイの身体に激痛が走る。開かれた口からは喘ぎと唾液が溢れ、視界は白く染まっていく。




ケイ(何とか・・・ポーチに・・・)

ケイは薄れそうな意識を必死に繋ぎ止め、右手を何とかポーチに突っ込む。
この状況を打開する為、あるアイテムを探る。しかし・・・


ケイ(こやし玉が・・・無い!?)


確かに持ち込んだはずのこやし玉は、今やポーチの何処を探しても存在しなかった。
先程のエリアで落としてしまっていたのだから。


アオアシラ「ゴアアア!!!」ブンッ!!!

ケイ「ァガッ!!?」ゴシャアッ!


アオアシラは獲物がだいぶ弱ったと見ると、とどめと言わんばかりに地面に叩き付ける。
ケイには最早、受け身を取るような体力は残されておらず、後頭部から背中にかけてを強打する。



ケイ(あ・・・アァ・・・)


今度こそケイの意識が薄れ行く。

殆ど身動ぎも出来ず横たわる。

アオアシラが近付き、数度匂いを嗅ぐと、一息の間にケイの首元に鋭い牙を突き立てる。

渓流の透き通る様な清浄な川の水に生命が溶け出し、徐々に紅く染まっていくのだった。





【QUEST FAILED】


第一話と言いますか、今回はここまで
自分でもやや地の文がくどい気もしますね
次があればもっとあっさり纏めたい


更新します
書き終わってみれば全く地の文が減ってなかったどころか増えていた・・・

※システム的に独自解釈を含みます



【ジンオウガの狩猟】



ベイル「はっ、はっ、待ってろ!カロン!」タッタッタッタッ


大剣使いの男ーーーベイルは走っていた。共に狩りに来た妹のカロンと合流する為に。
クエストでも下位と上位では出発方法が違う。下位はパーティ全員が一つの船や飛行船を使うのだが、上位はフィールド付近で思わぬ対象外モンスターに遭遇する可能性が高い為、ハンターひとりに付き従者ひとりで出発する。万が一の時に共倒れを防ぐ為だった。

今回もカロンと船を並走させて今回の狩場である孤島に向かっていたのだが、案の定孤島の手前でラギアクルスの影を見つけた為、二手に別れて上陸する運びとなったのであった。


ベイル「孤島のベースキャンプは・・・確かこっちの方向だったな」


ベイルたちは上位に相当するハンターであり、孤島にも幾度となく訪れている。今回の様に右も左も分からない森の中に降ろされても、山の形などを頼りに方角を割り出していた。




ーーーゥオオオオオン・・・


ベイル「っ!この声・・・間違いない、ジンオウガだ!カロンが遭遇したか!」


ベイルの結論を裏付ける様に、程なくしてどこからかペイントボールの発する強烈な臭いが漂ってきた。


ベイル「こっちか!」


言うが早いかベイルは一目散に駆け出した。
開けた道を外れ、本来ならばギルドには正式なルートと認められていない森の中を疾走する。
入り組み、凹凸の多い道だが、踏破出来ればこちらの方が近いと考えたからだ。
ベイルの纏うゼクスSシリーズの発する蛍光色の光が、薄暗い森に流星のように筋を残す。


ベイルがジンオウガを視界に収めたのは、それから4時間程後のことだった。



カロン「せいやぁぁぁっ!」ザッ!ザッ!

ジンオウガ「グゥゥ!ルァァァォン!!!」ブォンッ!

カロン「あっぶな!!!」スタッ



カロンがジンオウガと遭遇してから3時間は経過していた。


カロン「ふぅ・・・お兄ちゃんまだかなぁ。片手剣の私だけじゃあ火力が足んないよ!」


カロンが手にするのはネルスキュラの素材から作られるスケイルソードを強化したスケイルソードII。
カロンが睡眠属性の武器でモンスターを眠らせ、そこに大剣使いのベイルが溜め攻撃を叩き込むと言うのが、ここのところのセオリーとなっていた。
そのためカロンは主にサポートを務め、火力を追求していなかった。
防具のフルフルSシリーズにも攻撃翌力を上げるスキルは搭載されていない。



ジンオウガ「ウォン!グゥゥゥ!」ブン!ブン!

カロン「よっ!ハァァッ!」スッ・・・ズバッ!

ジンオウガ「ガゥッ!」バッ!


ジンオウガも縄張りを荒らす侵入者を撃退しようと試みているものの、ちょこまか動き回り攻撃をすり抜ける相手に手をこまねいていた。
流石に業を煮やし、そろそろ本領を発揮しようと考えていた。


ジンオウガ「ヴゥゥ、ォォォォン!」バチバチバチッ

カロン「やばっ!チャージきた!」


ジンオウガは徐に体勢を低くすると、全身の蓄電殻を小刻みに振動させ、電気を放出し始めた。すると辺りの茂みや樹木から、眩く光る蟲たちがジンオウガの背中に集まってきた。



カロン「せめて今のうちに少しでもダメージを!」

カロンにはジンオウガの充電を止める術がなかった。大ダメージを与えれば怯ませることも出来るであろうが、ここまで基本防戦だったのもあり、特定の部位に効率良く攻撃を当てられておらず、それも期待出来なかった。
代わりに、僅かばかりでもダメージと睡眠値を与える作戦に出た。


カロン「ふ!は!セヤッ!」シュッ!シュッ!ズパッ!


ジンオウガ「ウォォォォォン!」


カロンの連撃も、ジンオウガの堅殻に阻まれ、深手を負わせるには至らない。
ジンオウガも一旦カロンを無視して充電に集中していた。


カロン「そろそろまずいかな・・・!」

カロンは身を退こうか考えた。しかしその時ーーー




ベイル「でいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ!


カロン「お兄ちゃん!!!」


ベイル「喰らいやがれぇぇぇ!!!」ガギィンッ!!!

ジンオウガ「ギャウゥゥンッ!!!」バギンッ!


ベイル「見たかジンオウガッ!!!」


ジンオウガの側面にあった数メートルの高さの崖から、ダッシュの勢いそのままにベイルが跳躍。全てのエネルギーを乗せた空中抜刀攻撃をジンオウガの顔面目掛けて叩き込んだ。
ベイルの得物の氷属性大剣、グラシュバリエIIの重く鋭い刃はジンオウガの片角を捉え、一撃の下にへし折って見せたのだった。



ベイル「カロン、待たせて悪かったな!」

カロン「大丈夫!それよりごめん!1段階は溜めさせちゃったと思う!」

ベイル「了解だ!」



ーーーそこから暫くは攻勢が続いた。
兄妹のコンビネーションでジンオウガを翻弄しつつ攻撃を与え、左前脚の爪も破壊した。

そしてその時が来た。


カロン「ふっ!」ズバッ!


ジンオウガ「ゥオウ!ゥゥン・・・」グラッ・・・ドシン!


カロン「寝たよお兄ちゃん!ヨロシク!」


ベイル「ナイスだカロン!」ガチャッ


これまでのカロンの攻撃による睡眠値が蓄積し、催眠成分に身体を侵されたジンオウガの巨体が揺れ、ふつりと糸が切れた様に地面に崩れ落ちると、寝息を立て始めた。




両者ともに回復や武器の研ぎ直しを終えたことを確認すると、ベイルは昏睡しているジンオウガの頭部に近付き、抜刀する。
肩越しに大剣を構える。呼吸を整え、柄を握り直し、腹の中で気合を練っていく。
限界まで力を溜めたベイルは全身の筋肉を連動し、全力の一撃を振り下ろした。


ベイル「おおうりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」ブウォン!!!


しかし、ふたりは気付いて居なかった。
ジンオウガを挟んで反対側に1匹のオルタロスが近付いていたことを。
ジンオウガの身体に進路を塞がれたオルタロスは、腹いせとばかりにジンオウガに蟻酸を吹き付けた。
蟻酸はこれまでの戦闘で傷付いたジンオウガの堅殻に染み、肉を焼いた。
それはジンオウガの覚醒を促すには充分な刺激だった。





ジンオウガ「!グォン!」ガバッ!

ベイル「!何!?」ギャリッ!

カロン「え!?」


目覚めたジンオウガは咄嗟に身を捻り、身体を起こす。
ベイルの渾身の溜め攻撃は、ジンオウガの体表を浅く削る程度に終わってしまった。

そして・・・


ジンオウガ「ゥゥゥウ!ウグォォォォォォォン!!!」バヂバヂバヂバヂッッッ!


ジンオウガは極僅かな溜めにより超帯電状態となり、更に一気に怒り状態にも移行した。
ジンオウガのバインドボイスが大気を揺らす。


ベイル「ぐっ!?」ガラン!

カロン「きゃっ!?」ガギン!


ベイルは溜め動作の余韻のせいもありガード出来ず、思わず武器を取り落とし耳を塞ぐ。
カロンはなんとか盾によるガードが間に合った。




ジンオウガ「ルォォォォ!」ヂヂッバヂッ!


ジンオウガはまず眼前で硬直するベイルに狙いを定めた。右腕に電撃を集中し、上体ごと腕を振り上げ、今にも叩き潰さんと力を溜める。

ベイル(まずいッ!避けられねぇ!!!)


電撃を湛える剛腕が振り下ろされる、その時。


カロン「お兄ちゃん危ないッ!!!」ガバッ!

ベイル「カロン!?」


ジンオウガ「ガゥ!」ズドンッ!!!

ベイル「ぐあああっ!!!」

カロン「ーーーーーーーッ!」


咄嗟に前に躍り出たカロンが、ベイルを庇う。お陰でベイルは直撃を免れた。
ベイルだけはーーー



ベイル「ぐっ・・・カロン・・・カロンは・・・」ググッ・・・


カロン「・・・ぉ・・・お兄、ちゃん・・・」


ベイル「ッ!カロンッッッ!!!」



ベイルから10メートルほど離れた所にカロンは倒れていた。
カロンはジンオウガの鋭爪を躱しきれず、脇腹を深く切り裂かれていた。流れ出る鮮血の量が、その傷の深さを物語る。


ベイル「ぐぅ!待ってろカロン!今助けてやるッ!」グッ・・・

ベイルも直撃を避けたとはいえ、至近距離で電撃と衝撃を受けて吹き飛ばされたため、思うように動けない。
当然、それを待ってくれるジンオウガではない。






ジンオウガ「ヴォォォン!!!」ヂヂヂヂヂッ・・・バッ!

背中に凄まじい電撃を集めたジンオウガは大きく跳躍し、空中に身を投げ出す。
明らかに狙いは、瀕死の重傷を負ったカロンだった。


ベイル「ッ!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


カロン「・・・ぉにいちゃ・・・にげ・・・」





ジンオウガ「グオオォォォ!」ズガァァン!バヂヂヂヂヂヂッ!!!

ベイル「ぐわぁっっ!!」

数メートルもの高さから、ジンオウガの一番の大技、全体重を乗せた背面ボディプレスがカロンに炸裂。
同時に背中の電撃は周囲に拡散し、ベイルは吹き飛ばされた。






ーーージンオウガが身を起こした跡にカロンはあった。潰され、砕かれ、電撃に焼かれ、それはもう人の形をしてはいなかったが。


ベイル「ぐ、ググ・・・グオオオオオオオオ!!!!!貴様ァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ダッ!


最愛の妹を喪った激情に囚われたベイルは武器も持たない満身創痍の身である事も忘れ、獣の様にジンオウガに駆け出した。
ベイルは冷静さを欠いたために周りの状況が見えていなかった。


ベイル「ゥガッ!?」ビクンッ!


ベイルは急に硬直し、地面に倒れ伏す。
その背中には無数の大雷光虫が纏わりついていた。
ジンオウガの背中から放たれた大雷光虫はベイルの周りを漂い、その動きに反応して襲い掛かり、彼を麻痺させたのだった。




ジンオウガ「グガァッ!」ダンッ!


ベイル「グハッッッ!!!」バキッ! ドボンッ!


地面で無様に痙攣するベイルに向け、ジンオウガは容赦無くタックルを見舞う。
弾き飛ばされたベイルは運悪く近くの滝壺に落ちてしまった。


ベイル(ぐっ!ゴハッ!ゴボッ!)ブクブクブク・・・

水面へ上がろうにもベイルの身体は未だ自由を取り戻せていない。水をかくことも、脚をばたつかせることも出来ず、水面が遠退いていくのを眺めているしかなかった。


やがて意識を失う直前、ベイルはカロンの姿を見た。

カロン『お兄ちゃん!』

ベイル(あぁ、そこに居たのか・・・)


暗い水底でその心臓が鼓動を止める瞬間まで、ベイルは笑っていたというーーー



【QUEST FAILED】


ハンターの細かい設定や説明いらない気がしてきた
どうせすぐ死ぬし

文章の構成含め、色々な形式を試してみようと思います。



【リオレウス?の狩猟】



遺群嶺の一角で、赤き火竜とハンターたちによる攻防が繰り広げられていた。


リオレウス「グオォアッ!」ブオオォォォォォ!

ギン「なんの!これでも食らえ!」カッッッ!

リオレウス「グォォオウッ?!」フラッ・・・ドザッ!


凄まじい火炎の嵐を掻い潜ったハンターにより放られた閃光玉がリオレウスの眼前で弾け、リオレウスは一時的に視力を失い、墜落する。
チームリーダー、ギンはすかさず支持を仲間たちに飛ばす。


ギン「今だ!コード、頭に榴弾!ヴァルは反対側から殴れ!コルノは回復を!」


コード「了解です」ダンッ!ダンッ!ダンッ!

ヴァル「あいよぉ!オラァ!」ドガッ!


コルノ「すみません!助かります!」


ライトボウガン使いの紅一点、コードが持つキサナドゥから徹甲榴弾が連射される。
弾丸はもれなくリオレウスの顎付近に命中し、炸裂。
ハンマー使いのヴァルは榴弾の破裂に巻き込まれない絶妙な位置に陣取り、夜行槌【常闇】をリオレウスの眉間に力一杯叩き込んでいく。



ギン「ふぅぅ・・・セヤァァァァ!!!」ジャキィィィン・・・


ギンも仲間と位置取りを合わせ、手にした妖刀・鬼怨斬首刀を練気とともに薙ぎ払う。
刃はリオレウスの右の翼膜を切り裂き、稲妻が表皮を焼いていく。



ヴァル「おらよっ!」ゴォン!

リオレウス「グゥオオン!」ゴシャッ!

ギン「良くやった!」


立ち上がりかけたリオレウスだが、榴弾の爆発とハンマーの打撃を頭部に受け続けた結果脳震盪を引き起こし、再び膝を折る。
もはや息も絶え絶えだった。


コルノ「シビレ罠を掛けます!」ガサガサ・・・

リオレウス「ゥアン!?グォォオ!!」


回復のために離れていたコルノが転倒したリオレウスの脚元にシビレ罠を展開する。
罠はすぐさまその毒素でリオレウスを絡め取り、自由を奪う。



ギン「任せろ!ふっ!せいっ!」ギャリッ!ズバッ!

ギン「セイ、ハァァァァァァ!!!」ブシャァッ!


リオレウス「ゴアァッ!!!・・・グォ・・・ゥ」ドサッ・・・



ギンの練気を解放した連携が、リオレウスの頭部に無数の傷を付け、最後の一撃が喉元に深く突き刺さる。
屈強な空の王者リオレウスは、その眼から光を失い、地に堕ちたのだった。











ーーー遥か空の彼方に、赫く光る瞳があった。



剥ぎ取りとある程度の回復を済ませた一行は、ベースキャンプまでの道のりを進んでいた。


ヴァル「今日も俺のハンマー捌きは最高だったろ?」

コード「ええ。もう少し私の射線を意識してくれると助かりますけどね」

ヴァル「後ろに目は付いてねぇんだ!お前が避けろ!」

ギン「とか何とか言って、良いコンビネーションだったぞ?」

コルノ「今回は中々活躍出来ずすみません・・・」

ギン「そんな事ないさ。コルノの狩猟笛にはいつも助けられてるよ」


ギンたちは最低限の警戒を行いながらも、和やかに歩を進めていく。








ーーー赫い光が大きく揺らめく。息を吸う。




ギン「リオレウスは素材も報酬金もうまい!帰ったらーーー」


宴会でも開こう。そう、ギンが口にしようとした瞬間。


ーーーキィィィン



ギン「ん?」フッ


遠くで甲高い音が聞こえた気がして、空を仰ぐ。コードたちもつられて同じ方向に目を向ける。


ーーー赫い光


ギン「・・・光?」


ーーー落ちる



ギン「ッ!避けろッ!!!」


次の瞬間、音が消えた。



巨大な何かが落下し、地面が削り取られる様な凄まじい爆音が聞こえた気がした。
しかし、音の波に揺さぶられた鼓膜には激痛が走り、一瞬の間その役目を果たさなくなる。

ここまでの事を、咄嗟に地面に投げ出した身体でギンは感じていた。
何が起きたのか、まだ把握出来てはいない。
ただ恐らく良くない事が起きている。そう、ハンターの勘が告げていた。


ギン「くっ・・・そうだ、皆は!」



エリアの半分が砂煙で覆われていた。

ギンが辺りを見回す。
近くではコードとヴァルが身を起こそうとしていた。頭を押さえてはいるが、怪我はないようだった。


ギン「良かった。コルノは?」


唯一コルノの姿が見えない。


ギン「コルノー!コルノは何処だー!!!」

ギンが声を張り上げた、その時。



「ギイィユィィィィォン!!!」


ギン「!?」


ヴァル「何だってんだ!??」


風切り音に似た、甲高い鳴き声が響き渡る。
風の流れで砂煙が晴れ、声の主がその姿を現す。


ギン「何だ・・・アイツは?!」


見た事がないモンスターだった。
全身を白銀の鱗が覆い、異質な直線と曲線が混じる生物みの薄い輪郭。
甲殻の隙間からは赫い光が漏れている。

見た事がない、モンスターだった。



コード「あ・・・あれって・・・!」

コードが掠れた声で呟く。その指した指先は、モンスターの脚元を示している。




ヴァル「ッ!」

ギン「嘘・・・だろ・・・?」



銀の竜の近くに、見覚えのあるものが転がっている。
先ほどまで助け合い、笑い合っていたコルノ。その頭部と思わしき防具と肉の塊だった。
辺りをよく見ると、他にも腕や腰と思わしき損壊した防具が赤い血肉とともに散乱していた。


ギン「ぐッ!・・・ぐぅ!!!」

ヴァル「コルノが・・・死んだ?」

コード「嘘・・・嘘でしょ・・・?!」


突如仲間を喪ったギンたちだが、失意に膝を折らなかったのはハンターとしての本能故だった。
眼前の存在がどうにもならない脅威だと、何よりもコルノ自身がその死をもって示していたからだ。



ギン(撤退しようにも拠点までの道はアイツに阻まれている!様子を見ながら応戦するしかない・・・!)

ギンは熱くなる頭を切り替え、可能な限り平静を保ち考えた。
ひとり欠けたことを踏まえつつ、いつもの様に指示を出す。


ギン「先の戦いですでに俺たちは消耗してる!回避に重きを置いて様子を見るぞ!」


ヴァル「クッソ!本当ならアイツをぶっ潰してやりてぇけど!!!」


コード「り、了解。やれるだけをやります!」



ヴァルが少し軸をずらした正面に、その後ろにコードが、そしてヴァルとは逆サイドの側面にギンが位置取る。
弾丸による牽制役を担うコード以外はまだ抜刀もしない。




コード「貫通弾はもう無い。まずは!」ダン!ダン!


モンスター「ググゥ・・・」キン!ギンッ!


コード「Lv1通常弾じゃ効きもしない?!」


コードが放った通常弾はモンスターの翼に命中こそしたものの、その堅牢な外殻に弾かれる。



ヴァル「うおおおおおお!!!」


それを皮切りにヴァルが走り出す。
モンスターは僅かに視線を動かすと、その翼を『変形』させた。


ヴァル「何!?」



モンスター「ファウッ!」ダッ!ダッ!

モンスターはヴァルに向かって疾走を始めた。ヴァルはすんでのところで回避する算段だった。
しかしモンスターはギンたちの予期せぬ動きを見せた。


モンスター「ヒュイッ!」バッ!


ヴァル「なっ!しまった!」


ギン「避けろコード!!!」


コード「えっ!?」


モンスターはヴァルを飛び越えるように大きく跳躍し、コードの頭上に迫る。
そのまま空中で前転する様に翼を振るってみせた。
同時に翼から赤黒いエネルギーが放出され、爆発とともに地面を吹き飛ばしていった。


コード「ぐっ、ぁアアアアアアッ!!!」バリバリッ!バヂッ!




ギン「コード!・・・ヴァル!コードを援護!」


ギンはヴァルに指示を出し、時間稼ぎのためにモンスターの誘導を試みた。


ヴァル「コード!大丈夫か!!!」


コード「うう・・・な、なんとか・・・」ググッ・・・


コードはギリギリで直撃は免れており、大怪我は追っていなかった。しかしガンナーということもあり、そのダメージは少なくない。



ギン「はああああ!!!」ギィィィン!


モンスター「グゥッ!」バッ


ギン「よし、通るぞ!」


ギンの太刀による斬撃は、薄いながらもモンスターの甲殻に傷を作る。どうやら弾かれはしないらしい。
ギンの攻撃を嫌ったモンスターはステップの様な動きで距離を取る。



ギン(ふたりの様子は・・・)


ギンが視線で背後を確認すると、ヴァルに引き起こされてコードが立ち上がろうとしていた。

モンスターが狙ったかは定かではないが、運悪くもその一瞬の隙を突かれることになる。


モンスター「ヒュゥゥ」グググッ・・・

ギン「っ!」


ギンが視線を戻すと、モンスターは翼を引いて何かの動作に入っていた。
突進か、飛行か、どちらにせよ距離が離れている。
ギンは動き出しを見てから回避するつもりだった。


モンスター「ヒャウッ!」ビュンッ!


ギン「がっはッッッ!!!」ズガン!


ギンの予想を完全に裏切り、スライドする様に変形した翼は真っ直ぐに突き出され、十数メートルはあった距離を一瞬で潰してきた。
ギンは反射的に半身を捻ったが、鋭利な翼の先端はその肩口を捉え、大きく弾き飛ばした。



ギン「がはあッッッ!」ドッ!ドサッ!


地面を転がるギン。左肩を咄嗟に押さえると、穴こそ開いてはいないが防具のフレームが歪み、肉体を圧迫している。骨もややイカれたかもしれなかった。
少なくともこの狩りでは、左腕はもう使える状態ではなかった。

そしてモンスターの攻撃は終わっていなかった。
モンスターは突き出した翼を伸ばしたまま引き戻すと、'回転'した。


モンスター「ヒュイッ!!!」シュフィィィィン!


ヴァル「は?」

コード「え?」



まるで大剣の溜め切りの様に、モンスターの全身を連動させた大回転は、フィールドの実に半分を一瞬だけ銀に染め上げた。







ギン「ぐっ!い、今のは・・・?」

一瞬、倒れた自分のすぐ上に凄まじい衝撃を感じたギンは、咄嗟に顔を庇っていた。
そんなギンの元に、何かが転がってきた。


ドサッ・・・ゴロゴロゴロ・・・


ギン「ん?・・・ヒッ!」


コードの頭部だった。
綺麗に切断された細い首元から噴き出た赤が、緑の地面を染めていく。


ギン「ッ!」ガバッ!


ギンがふたりのいた方向に目を向けると、ちょうど首のないコードを支えていた、'腰から上の無い'ヴァルが崩れ落ちる瞬間だった。

近くに落ちていたヴァルの上半身。その顔がこちらを向いていた。
瞳にもう生気はないが、心なしか恨めしそうにギンを見据えている様にも見えた。



ギン「あ・・・ああ・・・うあああああああ!!!!ああああああああ!!!!!」


瞬く間に3人の仲間を喪ったギンの心は限界だった。
もはや膝は鉛の様に重く、腕は取り落とした武器を拾う事もない。


そんなギンを見据えたモンスターは、元に戻した翼にエネルギーを集める。
呼吸法により胸の器官を活性化させ、翼には赤黒い龍気が渦を巻く。
そして。


モンスター「ギュィゥッ!」ギュインッ!


ギン「ッッッッッ!!?!?!!」ゴッッッ!


音すら置き去りにする様な、白銀の衝撃がギンに直撃するーーー







ギンは落下していた。

モンスターの低空飛行を受けたギンはそのままフィールドから弾き出され、遺群嶺の険しい山肌に水平に、遥か下の地面へと向かっていた。

全身を苛なむ痛みすらギンにはどうでも良かった。
死の恐怖すらなく。絶望。憎悪。激情。失意。それだけだった。

標高ゆえ薄い大気に晒されたギンは、次第に意識を薄れさせていく。
それでも、ろくに動かない口で仲間たちの名前を呼びながら地面に激突したのは、それから暫くしてからのことだった。



【QUEST FAILED】



とりあえず以上になります
もし評価が余程悪くなければ、また書き溜めなど作っていつかスレを立てようかと思います。
お目汚し失礼しました。

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