希 「真姫ちゃんと部室で二人っきりは」 (24)

ラブライブ!ss七作目です。
のぞまきの素晴らしさに気づき、のぞまきを書いてみました。

前回の作品はこちら
海未 「油絵を描いてみましょう」
海未 「油絵を描いてみましょう」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1603992463/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1604061906

希 「のんたんが来たで!」 ガチャ

希 「って誰もいないやん……」

真姫 「一応居るわよ」

希 「あっ、ごめん、気付かなかった……えっと、凛ちゃんや花陽ちゃんは?」

真姫 「二人は日直だって。そういえば二年生三人は生徒会で忙しいから今日は遅くなるって言ってたわ。にこちゃんとエリーは?」

希 「にこっちは補習やな。えりちは生徒会まだ慣れないだろうからって、穂乃果ちゃんたちの手伝いに行ったんよ」

真姫 「そう。ならしばらく二人ね」

希 「……せやな」





真姫 「……」 ペラッ ペラッ

希 「何読んでるん?」

真姫 「……ためになる本」

希 「へぇ」 シャカシャカ

真姫 「ってそっちこそ何やってるのよ……」

希 「タロットカードをシェイクしてるんや。こうやって定期的に触っておかないとスピリチュアルパワーの神様が怒るから」

真姫 「スピリチュアルパワーの神様? なにそれ、ふふ、面白いわね」 クスクス

希 (やっと真姫ちゃん笑ってくれた……ずっと真顔じゃ気まずいもんなぁ) ホッ





一方、穂乃果たちは。

穂乃果 「えっと、逃げたトカゲの捕獲!?」

海未 「ええ……生物研究部から生徒会に協力してほしいと」

ことり 「む、虫はちょっとことりは苦手かなぁ……」 アセアセ

海未 「トカゲは虫というより爬虫類ですが」

ことり 「そういう問題じゃないよぉ!」 プンプン

穂乃果 「どちらにせよ、トカゲなんて三人で捕獲できるの!? 小さいし、素早そうだし!!」

海未 「たしかにそうですねぇ……せめて四人いれば」

ことり (四人いても変わらないと思うけどなぁ……)

絵里 「なら私の出番ね!!」 ドンッ

穂乃果 「絵里ちゃん!?」

絵里 「手伝いに来たわ! 穂乃果、海未、ことり! 四人でさっさと捕まえてしまいましょうーーー!!」

穂乃果・海未 「おおっーー!!」

ことり (さすがにこの空気じゃ辞退できない……)





一方、一年生の教室では。

凛 「にしても日直って疲れるにゃ~」

花陽 「もう終わりだから頑張ろう凛ちゃん!!」

凛 「ってあれ、トカゲにゃ!!」 パァァ

花陽 「えっ、トカゲ!?」 ビクッ

凛 「キャッチ!!」 ガシッ

花陽 「凛ちゃん、トカゲをツカマエチャッタノォ!?」

凛 「アンドリリースにゃ~」 ポイッ

花陽 「偉いね凛ちゃん!」 ナデナデ

凛 「えへへ」





一方、三年生の教室では。

にこ 「補習しんどすぎるにこ……なんで私がこんな目にぃ……ぐぬぬ」

先生 「矢澤さんが勉強を怠っているからですよ!」

にこ 「そもそも私と問題の相性が悪すぎるのよ! 少しくらい私に合わせてさぁ、アイドルの問題とか出てくれたらなぁ……」

先生 「問題が合わせるわけないでしょうに」

にこ 「ならせめて記号問題だけにしてくれたら運勝負でいけるのに!」

先生 「じゃあこの問題の三択の答えは?」 ユビサシ

にこ 「Cのイモリ……?」

先生 「残念。Aのヤモリよ。イモリは爬虫類じゃなくて両生類なの。井戸を守ると書いて井守、という漢字からも分かるでしょ?」

にこ 「ふむふむ、あっ、トカゲ!」

先生 「トカゲは爬虫類ですね」





真姫 「……」 ペラッ ペラッ

希 (さっきは少しだけ盛り上がったけど、またすぐ静かになってしもうた……やっぱり)

真姫 「……なるほどね」 ペラッ ペラッ

希 (真姫ちゃんと部室で二人っきりは……気まずいなぁ)

真姫 「あっ、そういえば希」

希 「えっ、なに真姫ちゃん?」

真姫 「lily whiteの新曲の方は大丈夫かしら? 雰囲気とか掴め始めた?」

希 「あぁ、新曲のことやね、それはもうバッチリ!! 真姫ちゃんが、ウチら三人で出したイメージにぴったりな曲を作ってくれるからスムーズに進むんよ! ありがとう!」 ニコッ

真姫 「……そう」 ペラッ ペラッ

希 (また本読み始めてる……別に嫌やないけど、反応冷たいと少し寂しいなぁ)

真姫 「///」

希 (ん? 少し顔赤い?)





穂乃果 「さっき凛ちゃんがトカゲを捕まえたって本当!?」

凛 「本当にゃ」

海未 「ならそのトカゲは今どこに!?」

凛 「釣りと同じマナーでキャッチアンドリリースで逃したよ!」 ニコッ

花陽 「凛ちゃんは本当に良い子です!!」 ナデナデ

凛 「えへへ」

絵里 「これは少し厄介なことになったわね……」

ことり 「うーん……どうすればいいんだろう……」

にこ 「あれ? あんたたち、廊下の真ん中で集まって何してんのよ?」

海未 「実は生物研究部が飼っていたトカゲが逃げ出してしまって……生徒会も協力して探してるのです」

にこ 「トカゲは爬虫類ね!!」 ドヤッ

海未 「そうですが……それが?」

にこ 「……」

海未 「……?」

にこ 「……いや別に特には」

海未 「そうですか」

にこ 「さっき見たわよ、トカゲ」

穂乃果 「えっ本当!? にこちゃん!!」 ガッ

にこ 「多分あっちの校庭あたりに行ったんじゃないかしら」 ユビサシ

絵里 「行ってみましょう!!」





希 「大丈夫? 真姫ちゃん?」

真姫 「えっ……?///」

希 「いや顔赤いし、熱があったら大変や」

真姫 「ヴェ、別に熱なんてないわよ!!///」 カァァ

希 「ってさらに顔が赤くなってるやん!? 本当に大丈夫なん!?」 アセアセ

真姫 「い、いや、な、なんでもないから大丈夫よ!!///」

希 「なんでもないわけないやん! ちょっとおでこ触らせてもらうで?」 ペタ

真姫 「えっ……?」

希 「うーん……熱はないっぽいなぁ、じゃあなんで顔が赤いんやろ」 ムムム

真姫 「///」 カァァ





凛 「あっ! 学校の隅にある小さな沼のすぐ近くにトカゲがいるよ!」

にこ 「目良すぎでしょっ!? それってここからどれくらい距離があるのよ!?」

花陽 「でも爬虫類のトカゲが水の近くにいるっておかしくないですか?」

海未 「……しかし詳しくない以上、なんとも言えません。もしかしたら水の近くにいるトカゲだっているかもしれませんし」

先生 「ってあの沼はまずいわっ!!」 ドキッ

穂乃果 「えっ、先生!!?」

絵里 「なにがまずいんですか?」

先生 「あそこには湖の女神さまが住んでいて、どんな願いも叶えると言われてるの!」

絵里 「湖の女神さま……すごくロマンチックで素敵ね!!」 パァァ

花陽 「でもあそこが沼なら、湖の女神さまじゃなくて沼の女神さまですよね?」

にこ 「ぬ、沼の女神さま……」

絵里 「なんだか急にロマンチックじゃなくなったわ……」 ドヨーン

海未 「待ってください!? どんな願いも叶えるということはそれはつまり……!」

先生 「そう! もし仮にあのトカゲが、生態系のトップに立ちたいとか願ってしまったら……大変なことになるわ!!」 アセアセ

ことり (そんな野心のあるトカゲがいるの……?)





希 「もしかしてトマトの食べ過ぎとか? それはそれで心配やなぁ……」 ムムム

真姫 (言わなくちゃ……)

希 「とりあえず保健室に行くべきやろか、うーん、どうすればいいんや……」

真姫 (言わなくちゃ……誤解されてるし、何より希を心配させたくないし……だから恥ずかしいけど本当のことを言わなくちゃ!)

希 「念のためもう一度熱を確認してみようかなぁ……おでこ当てていい?」

真姫 「えっ」

ペタ

希 「手で分からないんだったら、やっぱりこれが一番確実や」

真姫 「なっ……!///」 カァァ

真姫 (顔が近すぎるわよ……希ぃぃ!!)





海未 「と、トカゲが巨大化しましたぁ!!?」

穂乃果 「ええっーーーーー!!!?」

絵里 「ちょ、ちょっと象くらい大きいわよ、こいつ!!」 アセアセ

花陽 「沼の女神さまは本当にいたんですね……」 シンミリ

凛 「まだB級映画の方がマシな導入にゃ」

にこ 「もう仕方ないわねー。にこがどうにかしてやるわよ! 所詮こいつはトカゲでしょ? いくら大きかろうと捕まえるのなんて簡単よ!」 フンッ

絵里 「で、でも、にこ? あの大きさなのよ?」 アセアセ

にこ 「そうね、申し訳ないけど生捕りは無理かも。倒してしまってもいいでしょ?」

海未 「ええ、できるならですけど……」

にこ 「ふっ、今からにこの活躍を見てなさい! 無事終わったらパフェ奢ってもらうからね!?」

絵里 「パフェぐらいもちろん奢るわ!」

にこ 「おりゃああああああああああ!!!」





希 「うーん、やっぱり熱はないなぁ」 ムムム

真姫 「///」 カァァ

希 「ってもっと赤くなってるやん!? 本当に大丈夫なの、真姫ちゃん!?」 アセアセ

真姫 「ち……」 モジモジ

希 「?」

真姫 「違うのよ! 希!!」

希 「えっ?」

真姫 「私は熱なんてないし、顔が赤くなってるのは体調不良が原因じゃないの!!」

希 「じゃあなんで……」

真姫 「恥ずかしいから……///」

希 「えっ」

真姫 「おでこを触られたり、そんな顔を近づけられて、さらにはおでこ同士をくっつけられたりしたら、さすがに恥ずかしいわよ!!///」 カァァ

希 「あっ……それもそうやな、ごめん///」 カァァ

真姫 「ヴェ、別に謝らなくてもいいのよ?」

希 「いやウチも今気付いた……ごめん///」





ガブッ

穂乃果 「にこちゃんが食べられたぁぁぁぁ!!?」

花陽 「に、にこちゃーーーーん!!」 ポロポロ

ことり 「そ、そんなぁ!! にこちゃん!!」 ポロポロ

海未 「うぅ……にこ、あなたのことは忘れません……」 ポロポロ

花陽 「でも泣いてる場合じゃありませんよ! 花陽には分かります……あの目、あれは捕食者の目!! 私たちも油断してると食べられちゃいますよ!!」

凛 「凛は冷静なかよちんも好きにゃ~」

絵里 「と、とりあえず、先生、どうすればいいんですか!?」

先生 「とりあえず、みんな逃げるのよーー!!」





希 「……さすがにスキンシップが過ぎたね、ごめん真姫ちゃん」

真姫 「お、怒ってないから謝る必要はないわよ!」 アセアセ

希 「いや、ウチも焦ってたとはいえ真姫ちゃんの気持ち考えずに行動したのは本当に許されんことや。あんなことされて、真姫ちゃん嫌だったでしょ? 」 グスッ

真姫 (って涙目になってるじゃない!?)

希 「本当にウチ、悪いことした……真姫ちゃんと距離がある気がして自分勝手に無理したのかもしれない……真姫ちゃんが嫌がるって分かってたのに……本当にごめんなさい」 ポロポロ

真姫 「そ、そ……!」 フルフル

希 「?」

真姫 「そんなことないっ!! むしろ嬉しかったわよ!! 希と少し距離が縮んだ気がしたから!!」

希 「えっ……!?///」 カァァ

真姫 (言ってしまったわ……)





絵里 「ひぃぃぃぃ!! あのトカゲ、追いかけてくるわよ!?」

穂乃果 「とにかくダッシュだよ!!」

ことり 「うぅ……もう限界だよぉ」 フラフラ

海未 「ことり!! 頑張るんです!! 頑張らなきゃ、にこみたいに食べられてしまいますよ!?」

ことり 「それは嫌だよぉ!!」 ポロポロ

花陽 「私も……もう限界みたいです……ごめんなさい、凛ちゃん、もうそばにいれないみたい……うぅ」 フラフラ

凛 「かよちん諦めないでよ!! 死因の欄にトカゲに食べられたって書くの!?」

花陽 「そんな死に方、嫌ですっ!!」 ポロポロ

海未 (それは少しユーモアがあって面白いと思ってしまいましたけど……)

絵里 「って、トカゲが思いっきり跳んだ!?」

先生 「種類にもよるけれど、トカゲのジャンプ力は侮れないわ! だから飼育するときはケースのフタをちゃんと閉めることが大切よ!」

穂乃果 「えっ、トカゲが跳んだ先って!?」

海未 「あれは部室!?」

絵里 「大変よ!! きっと部室には希と真姫がいるはずだわ!!」

穂乃果 「ど、どうしよう、電話する!?」 アセアセ

ことり 「ダメっ……間に合わない……!!」 キリッ





希 「それって、どういうことなの真姫ちゃん……?」

真姫 「えっ、いや、その」 アセアセ

希 「あっ、そういえばふと冷静になってみて気付いたんやけど……恥ずかしくて顔が赤くなったなら、最初顔が赤くなったのはなんで? まだ何もしてなかったはずだけど……?」

真姫 「それは……」

希 「?」

真姫 「嬉しかったから……希が私に感謝してくれて、喜んでくれたのが嬉しかったのよ///」

希 「えっ」

―――――

―――



希 「あぁ、新曲のことやね、それはもうバッチリ!! 真姫ちゃんが、ウチら三人で出したイメージにぴったりな曲を作ってくれるからスムーズに進むんよ! ありがとう!」 ニコッ

真姫 「……そう」 ペラッ ペラッ



―――

―――――

希 (あのとき本読んでたけど……ちゃんと聞いててくれたんだ。そして、あんな顔が赤くなるくらい喜んでくれたんだ……真姫ちゃん)

希 「うぅ……」 ポロポロ

真姫 「って泣き止んだと思ったのに、なんでまた泣くのよ!?」 アセアセ

希 「だぁって……嬉しくてぇ……!!」 ポロポロ

真姫 (どうすれば……!? え、えっと、泣いてるとき私だったらどうされたいか……どうされたら泣き止むのか……えっと!?)

ナデナデ

希 「えっ?」

真姫 「……よく花陽は凛の頭を撫でるのよ。どう? 涙は止まった?」 ナデナデ

希 「……///」

希 (なんか落ち着くなぁ……)

希 「ありがと、真姫ちゃん……涙止まったよ。はは、ウチらしくないね、泣くなんて」

真姫 「希らしさなんて関係ないわ。あなたが希なんだから、希の素直な気持ちがそのまま希らしさよ! だから泣いてたって、希らしくない……なんて言わないわよ?」 ニコッ

希 「真姫ちゃんは大人やなぁ……」

真姫 「普段は希が一番大人よ、いつもありがと」 ナデナデ

希 「そっかぁ……嬉しいなぁ」 ニコニコ





そのとき不思議なことが起こった。

勢いよく窓に向かい、部室の一部始終を見ていたトカゲはこう思った。

トカゲ (のぞまきってめっちゃ尊いやん……!!)

心から浄化されてしまったトカゲに、野心などはもうなかった。徐々に大きさを取り戻し、窓にたどり着くことなく静かに落下していった。

ちなみに口の中で暴れていたにこも、口から飛び出し落下していった。

絵里 「間に合ええええぇーーー!!!」

キャッチ!!

海未 「……ふぅ、なんとか間に合いましたね。って、絵里? 壁に頭を当てて何をしてるのですか?」

絵里 「転んだのよ……」 ボロボロ

こうして、一部の人間しか知らない、トカゲ捕獲事件は無事に終わったのである……。





真姫 「にしてもみんな遅いわね」

希 「せやなぁ」

真姫 「……でも、逆に良かったかも。希のこと、少し知れたような気がするから」

希 「う、ウチも! ウチも本当に良かった!! すごく距離が縮んだ気がしたし、もっとこれからも距離を縮めていきたいって、そう思えたから!!」

真姫 「……そこまで言われると少し照れるわね///」 カァァ

希 「あっ、ごめん……///」 カァァ

真姫 「……」 ドキドキ

希 「……」 ドキドキ

真姫 「……でも、これからもよろしくね、希!」 ニコッ

希 「うん!!」 ニコッ

希 (さっき思ってたことは訂正やね……)

希 (全然気まずくなんかない!)

希 (真姫ちゃんと部室で二人っきりは……楽しいし、最高や!!) ニコッ

おわり

のぞまきが素敵だなぁ……という話でした。
(他のメンバーのトカゲとの戦いに目を背けながら)全体的にほのぼので書かせてもらいました。
また機会がありましたら、ここで近いうちに書かせてもらいます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

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