久川凪「とうとうナギノシスなラップが世間を席巻する時が来たようですね」 (28)


~事務所:会議室~


久川凪「定刻になりましたね。それでは打ち合わせを始めましょう。今日お呼びしたのは他でもありませんか?」

P「……」

凪「……?」

P「……いや、俺が呼んだんだよ? なんで呼ばれた側が主導権握ってるの? 他でもありませんかってどんな疑問文だよ」

凪「流石はP、本日最初のセリフからいきなり3ツッコミとは。凪も驚きにより几と止に分かれてしまうところでした。バラバラナギ。バラナギ。ネギバラ。ネギハラ。ネギが苦手な人にネギを食えと強要することです。最近のコンプライアンスの締め付けには参ってしまうな」

P「知らないけど……」

凪「ネギを知らずに今日までどのように生きてきたのですか?」

P「ネギは知ってるけど……」

凪「では何を知らないと? ネギを知り、凪を呼び、刃牙を読む……これだけで最強の生物に手が届くというのに」

P「わかんないけど恐らくそれだけじゃ足りないとは思う」



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凪「ふう、凪のエンジンはぽっかぽかのポロロッカです。話を続けましょう」

P「続けるっていうか始まってもないからな」

凪「ゴタゴタ御託はもうたくさんです。御託もオタクも並べば見たくないものだ。……冗談ですよ。ファンは大切です。そういえば以前のライブでファンデーションを頂きました。ファンデーションを送るファンでしょう? お株を奪われた気持ちです。傾くラブにダブつくオシャレなシャレ姉さん」

P「よし、本題に入るぞ」

凪「ツッコミを放棄しましたね、Pよ。まだマウスのホイールを1度や2度ほどクルクルすると来るこの段落。そんな覚悟で大丈夫か?」


P「凪……おめでとう!」

凪「まだ桃太郎ランドは購入していませんが」

P「桃鉄やってんじゃねえよ」

凪「特に祝われる心あたりはありませんね。せいぜいペコペコなかな子さんにペロペロのキャンディーをふるまったくらいです」

P「それはまあ、普通にいいことだと思うけど」

凪「もしや凪の魅力に気が付いた石油王がCDを買い占めるなどしましたか? 困りましたね、徳島か中東かと聞かれれば軍配はドバイに上がる。ライラライラライラライ……」

P「一生本題に入れない気がしてきたんだけど」


凪「戯れはここまでです」

P「戯れてるのは凪だけなんだよ」

凪「して、祝われが発生したその謂れとは?」

P「ああ、凪の、ソロ曲の作成が決定した」

凪「!」

P「改めて、おめでとう!」

凪「……」

P「流石に驚いてるみたいだな」

凪「ええ、まさか、マラドーナが亡くなるとは思わず……」

P「ネットニュース見てんじゃねえよ」


凪「おや失礼。確かに時事ネタを盛り込むのは良くないですね。いつかの未来、読んだ人の心に笑いより先に懐かしさが込み上げてしまう」

P「そういうことも言うな」

凪「ですが結局、発表から発売までの間の話だという前提に変わりはありません。栄枯盛衰とはそういうもの。時事ネタが最も面白いのに、過去の時事ネタを読み直すと何とも言えない気持ちになってしまうのはノスタルジーなスタイリー」

P「そもそもサッカーに興味とかなかっただろ」

凪「おやおや、弊社の最強のサッカー好きは拙者の故郷のお隣住みですよ」

P「え? あー、そうか、晴は愛媛だったか。関東民にとっては四国のどことどこが接してるのかもあやふやだ」

凪「こずえさんのシマと紗南さんのシマが接していないだけです。ここ、テストに出ません。一生使いません。どうせ都会の民は四国がオーストラリアになっても気が付かないでしょうから」

P「なんかそういう事件あったけども」


P「まあ、そういうわけで凪の曲が作られることになった」

凪「まさかアメリカ総選挙が法廷闘争にまでもつれ込むとは」

P「マジでホントにそういうのいいからさ」

凪「しかしてPよ、凪の質問に答える勇気はありますか。結城ではなく」

P「勇気? どういう……」

凪「はーちゃんの歌よりも先に、なぜ凪なのですか?」

P「!」

凪「今だけ、凪は真剣です。はーちゃんは祝福してくれることでしょう。徳島イチの孝行妹です。その裏の葛藤を隠して。……それだけの覚悟と理由が無いとは言わせません」

P「……初レッスンの時、凪、その前の日に確認に来たよな? 段取りとか、いろいろ……颯のために」

凪「コミュ2ですね」

P「茶化すなって……だから、今回も凪にはお姉ちゃんとして、先にこういう節目を迎えてもらおうと思って。颯のもきっと、遠からずさ。あんまり適当なことは言えないけど……」

凪「……なるほど」

P「ぜひとも颯に色々教えてやってくれ。それで発奮するならよし、冷静に受け止めるもよし、俺に怒っても、それはそれで……」

凪「ヨシ!」ビシッ

P「なんで猫っぽく言ったの?」


凪「シリアスムードもこれ以上は難しいですね。学びを得ました。コメディリリーフ凪にはシリアスな場面でのリリーフは荷が重いと。せいぜい敗戦処理が関の山です。裕美さんの山ではない。興奮してきたな。P、アウト、チェンジ」

P「そっちのマッチポンプでチェンジは困る」

凪「真面目な話はここまでです。Pにも考えがあって感動しました。勘当されずに済みましたね。反動で板東英二にならないように気をつけることです」

P「韻を踏むためとはいえ突然すぎるだろ板東英二」

凪「はぁ~~~~~(鳴門海峡より深いため息)」

P「カッコの中、必要? というか深いのは海峡じゃなくて海溝だろ」

凪「この板東英二は韻を踏んでいるのみならず、先ほどの『リリーフ』にもかかっている上に、出身高校が徳島にあるのです。このように多重の意味を孕んだ英二に気付けないなんてとんだ波乱だ」

P「英二呼びやめろ」


P「こんなにしゃべったのに、まだソロ曲が作られることしか話せてないんだけど……」

凪「意味のないコミュニケーションだって無下にできるものではありませんよ。好感度を上げれば仕事の幅は無限大」

P「とりあえず、楽曲を作成する上でいくつか聞き取りをさせてくれ」

凪「座右の銘は”石橋を叩いて目薬”です」

P「聞いてねえ。そしてそんな言葉はねえ。渡れよ」

凪「”二階から闇”でも可」

P「怖いよ。何が降ってきたんだよ」

凪「最後に余った言葉を組み合わせて、”一寸先はワタル”」

P「フラッシュを炊き忘れた洞窟でチャンピオンに鉢合わせたサトシか」

凪「一生使うことのないツッコミフレーズでしょうね」

P「でしょうね(怒)」


凪「では、最初のお便りをどうぞ」

P「お便りじゃなくて聞き取りな。じゃあまず……どういう曲調がいいとか、そういうリクエストはあるか?」

凪「凪は楽曲制作に明るくはありませんが、どこまで融通が利くものですか? とりあえず歌詞に『うんCALL---!!!』という文言が含まれなければ大丈夫です」

P「ピンク頭狙い撃ちやめろ」


廊下の声「ぶえっくしょい!!!!!」

廊下の声「うぅ……誰かにウワサされてるのかなぼく……」

廊下の声「せめて悪い話題じゃありませんように……」


P「……」

凪「……」

P「……凪」

凪「招致を承知たてまつった」


ガチャ


廊下の声「おわっ!? な、凪ちゃん!? どこから……ちょ、引っ張んないで!」

廊下の声「服伸びる! いやどうせダルンダルンの服だけどそういうファッションだし! ってかなんで無言なの!? 怖いんだけど!!!」


凪「正体を確認、招待を完遂」ズルズル

夢見りあむ「なに!? なんなの!? ってPサマいるじゃん!」

P「……」

凪「……」

りあむ「何か言えし!!!」


P「Hey Yo 陰気なピンクに言及サンキュー。おかげでうっかり廊下にひょっこり」

凪「青いのは髪の裏かな? 悪いのは鍵の裏アカ? 青い髪も青い鳥も燃えた途端に青い顔。アイドル生命も炎上しちゃ延長ムリかな?」

りあむ「急に軽快なリリックでディスられてるのはどうして!?」

P「いつもたき火なキミは、燃えるが肥えぬフトコロにココロも痛む頃か?」

凪「止まぬ闇と病み。治すの? カオスを? 聞こえるぶんには笑えるたぶん。でも巻き込まれちゃ独楽より回る目、困る性分」

P「……」

凪「……」

パチンッ(ハイタッチ)

りあむ「説明をしろし!!!!!」


凪「聞いて驚けこのPとやら、りあむさんが来るまでトップツッコミヤーとしてこの場を牽引していた事務所の権威」

りあむ「ツッコミヤーってなんだよう……」

凪「それが今やこのざま桶狭間。より強力なツッコミの前にはPの中のラッパー、略してラッPーが顔を覗かせてしまうのですね。これは学びです」

P「ああ……俺にこんな才能が眠っていたとはな……」

りあむ「よくわかんないけどぼく怒っていいやつだよね???」


P「まあ落ち着け、悪かったよ」

凪「Pもこう言っていますし……」

りあむ「凪ちゃんも加害者だからね」

凪「ガビーン……このリアクション、徳島ではウケましたが東京でウケた試しがない。異国の地はかくも凪に冷たい風が吹く。凪なのに」

りあむ「それで、何で拉致されたの? ぼく早く帰って桃太郎ランド買う資金集めなきゃいけないんだけど」

P「桃鉄やってんじゃねえよ流行ってんのか」


P「凪の個人曲の作成が決定したんだ」

りあむ「ママママジ!? めっちゃおめでとうじゃん!!! 凪ちゃんの曲とかどういう風になるんだろうね! ぼくCD10枚くらい買っちゃうよ!!!」

凪「……凪は珍しく、後悔をしました。りあむさんは変人ですが悪人ではありませんね。燃人(もえんちゅ)ではありますが」

りあむ「最後のやつ初耳オブザイヤーなんだけど」

P「りあむはバカにしたくなるけどバカではないよな。炭人(すみんちゅ)ではあるけど」

りあむ「燃え尽きてるじゃん!? ちょっと上げてから造語でディスるのやめない!?」


りあむ「それで、ぼくが呼ばれたってことは、何かアドバイスとか欲しい感じ? 感じ? しょうがないなあ~! アイドル現場を知り尽くしたぼくが、映える曲についてレクチャーを」

P「いや、お前を呼んだのは偶然声が聞こえて、拉致したら面白そうだったからだ」

凪「特にアドバイスも求めていませんね。むしろりあむさんスパイスがナギナイズとかち合ってやり合って地獄絵図……なんてことは避けたい未来図」

P「もう帰っていいぞ」

りあむ「ひどくない!?」

凪「会議に乱入した件は不問にしましょう」

りあむ「そっちが拉致ったんだろ!!!」


~りあむ・帰宅~


凪「りあむさんが北区に住んでいれば北区に帰宅と表記できたのに……」

P「それは韻を踏むというかただのダジャレじゃない?」

凪「紙一重だと凪は思います。リズムをズンズン踏んでビシバシ意趣返し」

P「やっぱりそういう、ラップとかが好きなんだな。曲にもそういう要素が入れられないか、掛け合ってみるよ」

凪「とうとうナギノシスなラップが世間を席巻する時が来たようですね」

P「言い回しがちょっと際どいんだよな」

凪「これがデキるアイドルのタイトル回収です。よろしゅう」

P「なんて?」


凪「次のお便り、チェケラ」

P「だから聞き取りなんだけど……えっと、何か、こういう歌詞を入れたいとか、そういう要望はあるか?」

凪「その質問を待っていました」

P「お、何かあるのか」

凪「はーちゃんを褒め称える歌詞を入れましょう。これははーちゃんファン1号である凪に課された使命……」

P「凪の歌なのに……!?」

凪「わかりませんか? 例を出すしかありませんね」

P「例?」

凪「はーちゃんかわいい高校・校歌斉唱」

P「え? なに? え?」


~はーちゃんかわいい高校・校歌~


あゝ、はーちゃん あゝ、はーちゃん ※

はーちゃんのかわいさ、それは宇宙

はーちゃんの輝き、それは太陽

※繰り返し

はーちゃんありがとう 生まれてくれてありがとう

ゆーこちゃんありがとう 産んでくれてありがとう

※繰り返し

はーちゃんの胸は盛ってもいい

凪の胸は盛ると違和感がすごいぞ

盛るのはチャーハンだけにしておけ

あゝ、チャーハン あゝ、チャーハン

半チャーハンの大盛り、チャーハン大の少なめ

あゝ、チャーハン あゝ、チャーハン

食後はやっぱりガリ〇リ君

ココアはやっぱりモリ〇ガ

あゝ栄光の はーちゃんかわいい高校


~おわり~


凪「ありがとうございました」

P「バカか?」


P「どこからツッコミを入れればいいんだ? バカか?」

凪「あまりバカバカ言うとハカを踊りますよ」

P「いつからラグビー選手になった?」

凪「この歌なら二つ返事で引き受けましょう」

P「颯50%、凪5%、チャーハン45%のこの歌で???」


P「いや、やっぱり凪の歌なんだし、颯についてあまり言及するのは避けた方がいいと思う」

凪「チャーハンについては?」

P「チャーハンは論外」

凪「そうですか……」

P「ほら、もっと自分のことで入れたい歌詞とかはないか?」

凪「そうですね……では、愛すべき故郷、徳島の覇者であることを周知したい所存です」

P「愛すべき故郷なのに制覇してるのか……」

凪「例を出すしかありませんね」

P「また!?」


~~~~~


とーくしまー♪

とーくしまー♪

電車で向かえば最速5時間50分ほど~♪
(東京駅~徳島駅までの陸路での所要時間)
(平日昼に出発する場合を想定)
(やはりのぞみは速い)
(でも東京から電車で羽田へ向かい、飛行機で徳島空港へ飛んだ方が速い)
(長旅になるので暇つぶしを忘れずに)
(鈍行だと16時間かかるぞ。やめておけ)


~~~~~


P「注釈が長すぎる」


凪「今どきはファクトチェックが厳しいですからね。前提条件の開示は切符よりも必須」

P「半分くらい注意事項だし、元がメルヘンデビューなのもおかしいし、覇者のくだりも入ってない」

凪「ままなりませんね。ママには会えますが」

P「知らんけど」


P「じゃあとりあえず、徳島からはるばる来たことをアピールするのと、颯と二人で一人みたいな、大切な存在を仄めかす歌詞を入れたいってことにしておくか」

凪「よっ、まとめ上手。ジョーズがジョーズにジョーズにジョーズの絵を描いた」

P「登場人物が全部サメなんだけど」

凪「まだお便りはありますか?」

P「聞き取りは次が最後だな。ええと、『何か入れたい振り付けはありますか?』とのことだ。あくまで参考だから採用されるかはわからないけど、何かあるか?」

凪「そうですね……それでは、右手をグーに」

P「右手をグー……」

凪「左手もグーに」

P「左手もグー……」

凪「両手をそれぞれ耳の横くらいまで持ち上げて」

P「両手を持ち上げて……」

凪「オドろいたねェボウヤ……」

P「スペックじゃねえか」


P「刃牙の最凶死刑囚編の花山薫vsスペックの時のスペックのセリフじゃねえか」

凪「この説明口調ツッコミには流石の凪も苦笑」

P「恐らく過半数にも伝わってねえから説明してんだよ!!!」

凪「気になる方は『オドろいたねェボウヤ』でGoogle画像検索をぜひ」

P「しなくていいわ!」


P「他にはないか?」

凪「先ほどのポーズでは不満ですか?」

P「この『入れたい振り付け』のくだりを伝わりにくいパロディネタだけで終わらせるのは嫌なんだよ!」

凪「大人の事情ですね。次女を巻き込むのはおすすめしません。……凪は長女でした」

P「まあ何もないならいいけど……」

凪「それならばアレですね。スクラッチをお願いしたい」

P「スクラッチということは、DJセットか……杏みたいにユニット中に1人ならまだしも、ソロで叶うかな……」

凪「いえ、スクラッチ宝くじです」

P「そっちかよ」


P「おかしいだろ歌ってたらいきなり手元で宝くじの結果を確認し始めるの。怖いわ」

凪「広義では夢を見つける動きになるのですから、アイドルの振り付けと呼べないこともない」

P「夢って言ってるけど金だからな」

凪「では、楽しい動きもいいですね……ジャンプとか」

P「お、いいじゃないか。ぴょんぴょん跳ねるのは見てて楽しいからな」

凪「いえ、週刊少年ジャンプを読みます」

P「そっちかよ」


P「おかしいだろ歌ってたらいきなりジャンプ読み始めるの。月曜0時のセブンイレブンか」

凪「友情・努力・勝利を補給して、アイドルとして輝くのです」

P「それは本番前にチャージしておいてくれ」

凪「Pは凪に質問しながら、その答えを否定しますね。萎えです。萎えたネギはもう元には戻りませんよ」

P「俺だって尊重してえと思ってるんだよ……!!! 誰のせいだよ……!!!」


凪「凪からは以上です。あとはプロにおまかせですね。寝てる間に練ってくれることでしょう」

P「まあ、そうだな。何も言わなくても、ピッタリの曲を作ってくれるさ」

凪「それでは凪はここで失礼。この後のPはどうしますか? わくわくしないワークを続けますか? ブラック企業のトラップに掛かった社畜は立ちくらみ程度じゃ冥土にまっしぐら」

P「ラップ、適当になってきてない?」

凪「思いのほか長引きましたからね、エネルギーが足りず。え、寝る気? ノンノン、むしろ食い気」

P「確かに、もう夕方か……よし、何か食べ行くか!」

凪「ヨシ!」

P「猫はもういいから」


P「じゃあ、何が食べたい? 奢ってやるよ」

凪「マグロ漁船はつらいですよ」

P「え? 今日俺破産するの?」

凪「そうですね、ここはやはり……」

P「やはり?」

凪「半チャーハンの大盛りで」

P「結局それ何が出てくるんだよ」



おわり




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