勇者「喋れない。呪いかけられた」 (55)
勇者「(としか思えん。起きたら急に喋れなくなってた…...やばい、どうしよう…..)」
勇者「(ーーいや、まぁそこまで悲観的になることもないか? 永続的な呪いなんてあるはずないし、いずれ解けるだろ)」
女僧侶「勇者様…..? お目覚めになられたのですか?」ガサ
勇者「(うむ)」コクリ
女僧侶「ちょうど朝餉の支度が済んだところなので呼びにきたんですよ」
勇者「(わかった。今行く)」ノソリ
女僧侶「……あの、口をパクパクさせてますが……なにか?」
勇者「(あっ。……いっけね。喋れないの秒で忘れてた。声がでないんだった)」
女僧侶「……?」
勇者「(うーん、どうやって……そうだ。棒で地面に文字書けばいいじゃん。俺ってば冴えてるぅ~! ……えーと、たしかここに……)」ゴソゴソ
女僧侶「なにかお探しものでしょうか?」
勇者「(ーー……あった!)」
▼勇者はひのきのぼうを道具箱から取り出した!!
勇者「(おしおし、これでチョチョイのチョイ~~サラサラぁ~~と)」ガリガリ
女僧侶「……文字、ですか……?」
勇者「(オーケー! これでバッチリ! ……どや? 俺の声が出なくなってしもうたのは伝わったか?)」
女僧侶「ふむふむ……あー、なるほどっ!」ポンッ
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勇者「(困っているんだ。教会に行って神父様にーー)」ガリガリ
女僧侶「ようやく効き目があらわれたんですねっ!」
勇者「(呪い解除の相談ーー……は?)」ピタッ
女僧侶「毎日毎日、飲料水に少しずつ毒を混ぜていたのにぃ~。全然ケロッとしているんですものぉ~~」
勇者「(は? は?)」
女僧侶「安心してくださいっ! 勇者様っ! それは呪いの類ではありません! 毒ですっ!! 毒のせいなんですっ!!」
勇者「(えっ、毒……? ちょっ、どゆこと?)」ポカーン
女僧侶「したがってぇ、呪いではないので教会に行ったとしても手の施しようがありません☆」
勇者「………………」ポトッ
女僧侶「ひのきのぼうが手から落ちましたよ? ……どんまいっ☆」
勇者「(は、は、は……はぁぁぁぁあああんっ!?!? どゆことっ!?)」
女僧侶「突然で驚かれましたよね。びっくりしましたよね。......落ち着いて聞いてください、勇者様」
勇者「(な、ななっ、なんてことを…...! いや、ていうか僧侶がやっのコレっ!? なんで!? 毒盛るほど俺の事嫌いだったのっ!?)」
女僧侶「ーー……こうしなければ、勇者様が死んでしまっていたのです」
勇者「(えっ!?)」
女僧侶「だから...…だからっ! 私達もしかたなく……っ! 毒をっ!!」
勇者「(ちょっと待って!? 死ぬ……? 俺死んじゃうとこだったの? ……“私達”って)」
女魔法使い「ちょっとー、勇者はまだ起きないのぉ~?」ガサ
女僧侶「あっ、魔法使いさん……」
女魔法使い「? 起きてるじゃん。どしたの勇者、└|∵|┐みたいなポーズして」
女僧侶「ついに、成功したんです。加護に打ち勝ちました……!」
女魔法使い「加護……? あ、もしかしてーー」
女僧侶「もしかしてですっ! やりましたっ! 勇者様が声を失われたのです!」
女魔法使い「あちゃぁ~。それでハニワみたいなポーズのまま固まってるのね」
女僧侶「はいっ! はいっ!……あぁっ、これも女神様の導きのおかげ…..」
勇者「(なに……お前ら、なに? もしかしてグル?)」
女魔法使い「ちょっとぉ~~なによその目はぁ~? 命の恩人である私達にむかってぇ~」ジトー
女僧侶「仕方ありませんよ。心を強く持ってください。勇者様」
勇者「(ふっ.....ふっふっ、ふざけるなぁあああっっっ!! なんで仲間に裏切られなきゃならんのだ!! 死ぬってなんやねん!? )」ガバッ
女魔法使い「わっ!? ちょちょっ、ちちちちょちょちょっと、おち、おちちちついてっ!?」ガクガク
女僧侶「まぁっ! 勇者様ったら元気いっぱいっ☆ その意気です!」
勇者「(説明せんかいこらぁあああっ!! 説明はよぉっっっ!!)」ブンブン
女魔法使い「そんなっ揺すったらっ! しゃ、喋れっないっでじょ!?!? 」ガクガク
勇者「(いやじゃああああっ! 死ぬのも喋れなくなるんもいやじゃあああっっ!!)」
女魔法使い「~~~~っ!! ウザイっ!! メラゾーマッ!!」ゴオォッ
勇者「(ぎゃあっ!?)」ゴロゴロ
女魔法使い「フンっ!! うっとおしいっ!! 男ならそれぐらいのことで取り乱してんじゃないわよっっ!!」
女僧侶「……せ、せめてメラとかでわ……」
女魔法使い「そんなの勇者に効くわけないじゃない」
勇者「(メラでも効くわボケェッ!!)」プスプス
女魔法使い「僧侶。どこまで話したの? 説明したげたの?」
僧侶「あ、いえ。こうしなければ死んでいたとはお伝えしましたが、詳細についてはまだこれからです」
女魔法使い「あっそ……それなら朝ごはん食べながら喋りましょっか。戦士と武闘家もテントの外で待ってるし」
勇者「(うっ、うっ、なんでっ、なんで俺がっ...…いきなりこんな目に……)」ムク
女魔法使い「説明…...聞きたくないってのなら引きこもっててもいーけど?」
女僧侶「よっぽどショックだったんですねぇ。ご納得いただけるかわかりませんが、理由はお話いたしますよぉ」
( 'ω'o[ テントの外?草原]o
女僧侶「実はーー……勇者様の声に魔翌力がこめられてることがわかったんです」
女魔法使い「最初に異変に気がついたのは私ね。魔翌力を使う魔法職だから」
女戦士「魔法使いから聞いた時はにわかには信じられなかったんだが……」
女武闘家「うん。あたしもなにかの間違いだって思った……けど、言われてみればたしかにとも思って」
女僧侶「勇者様……っ! 事後報告のような形になってしまい申し訳ありません。でも……っ! そうしなければっ、勇者様のお命がっ! ぐすっ」ポロリ
女武闘家「僧侶だけじゃないっ! あたし達も同罪だよっ!」
勇者「(話がいっこーに前に進まねぇ)」イライラ
女魔法使い「いい? 耳かっぽじってよく聞いて。ーー勇者の声には、魅惑作用がある」
女戦士「私達は勇者以外、女のみのパーティー構成だろう? アンタの声は私達に毒なんだ」
女魔法使い「それも極めて猛毒。脳までとろけさせるほどのーー」
勇者「(なんですか...…? それって俺の声がイケボすぎてたまらんってこと?)」
女魔法使い「ーー……さっき、僧侶から聞いたんでしょ? こうしなければ勇者が死んでたって」
女僧侶「私たちが……っ……私たちがっ! 勇者様を奪い合いっ!! 殺していたかもしれないのですっ!!」
疲れたんで今日はここまでにしとく
50~100レスの間ぐらいで終わる予定
勇者「(ちょっと待てや。生きてきてイケボなんて言われたことねーぞ)」
女魔法使い「どうせ勇者のことだから『 イケボなんて言われたことない』と思ってるんでしょ」
勇者「っ!?」ギクゥッ
女戦士「私達だって様子見をしながらあらゆる角度から検証を試みたんだ」
女武闘家「それで、言霊に篭められた魔力が表面化しだしたのはレベルアップしてるせいじゃないかって結論になった」
女魔法使い「確信するに至ったのは一週間前のダンジョン探索してた日」
僧侶「勇者様の“ガンガンいこうぜ”の号令がでた瞬間でした……」
女戦士「かけ声と共にモンスターに襲いかかるアンタの後ろ姿を見て、私達はーー」
女魔法使い「全員同じ気持ちになった。この人を独占したい、と」
女武闘家「瞬間、あたし達はお互いに武器を抜いた」
女僧侶「私はモーニングスターを戦士さんに向けて」
女戦士「私は隼の剣を魔法使いに」
女魔法使い「みぃ~んな……あんたが戦ってる背後で……お互い、殺意をこめて睨み合ってた……」
勇者「(そんなことしとったんかお前ら。どうりで誰も命令に従わないと)」
女戦士「その場は武器を向けるだけでなんとか収まりがついた。ーーだけど」
女魔法使い「私たちに産まれた激情の炎は鎮火しなかった」
女僧侶「色々考えました。“どうやって相手を出し抜こうか”」
女戦士「私のものにならないならいっそーー……」
女魔法使い「私だけは持ち前の魔力障壁のおかけでなんとか踏みとどまった。夜、みんなに魔王討伐はどうするのって聞いたの」
女僧侶「私達の旅の目的ーー」
女戦士「本懐を遂げられないのはまずい」
女武闘家「ちっ、違うぞっ!? 目的を果たせないからじゃなくて、魔王を殺さなければ勇者との未来はないだろっ!?」
勇者「(俺との未来ってなんだよ)」
女僧侶「私たちが蹴落としあえば、いざって時に勇者様の足をひっぱってしまうんじゃないかとこわくて……うふ、うふふっ」
勇者「(やだ、目に光がなくてこわい)」
女戦士「それぞれ利害が一致したんだ。今は争う時期じゃない。タイミングがまずい」
女魔法使い「我慢する為には、勇者が喋ると私たちが、ひいては勇者の命まで危険だったの」
女僧侶「ご安心ください。ちゃんと解毒薬はあります」スッ…
女魔法使い「魔王を倒したら喋れるようになるから。我慢して」
勇者「(はぁ~~~~)」クソデカため息
女武闘家「すまない……あたし達でできることならーー」
勇者「(ふざけるんじゃねぇええっっ!!)」ガバッ
僧侶「っ!? ゆ、勇者さまっ!?」ビクゥッ
勇者「(なりたくもない勇者に任命されてこちとら私生活を犠牲にしとんじゃあっ!! おまけに今回は声もだとぉっ!?)」フーッフーッ
女武闘家「鼻息が荒く……発情期かっ!?」
勇者「(なんでそうなるッ!? 押し付けられるのは魔王討伐任務だけで充分だ!! 解毒剤よこせ……! っこのッ!!)」ガバッ
女僧侶「きゃあっ!?」
女戦士「ど、どうしたことだ。いったい、なぜ……」
女魔法使い「ーー……戦士、武闘家。さがって」ゴゴゴゴッ
女武闘家「だめだっ! 勇者をなだめないとっ!!」
女魔法使い「じゃあそのままでいたら?」ボオッ
女戦士「……っ!? この殺気は……っ!? まずい、僧侶ッ!! 武闘家ッ!! 逃げッーー」
女僧侶「!? 勇者様っ!!」グィッ
勇者「(このっ!! よこせよぉっっ!! ……あ?) 」
女魔法使い「はぁぁぁあっ!! イ オ ナ ズ ン ッ ! !」ゴゴォーッ
勇者「(魔法使いが使える最大呪文!? 俺を殺す気かっ!?)」
女僧侶「くッ! 間に合って! マホトーンッ!」シュワーッ
女魔法使い「!? なっ!?」シューン
勇者「(おっ……おぉっ! 杖の宝玉から今まさに放たれようとしていた魔力が収縮してゆく……!)」
女武闘家「勇者っ……! 勇者っ! なんで僧侶に発情してあたしに発情しないんだっ!!」
勇者「(お前さっきからなに言ってんのっ!?)」
女戦士「ま、間に合った……のか……?」
女僧侶「あ、危なかった……! 間一髪でしたよぉっ! もぉっ、魔法使いさん!いきなりーー」
女魔法使い「ちっ、イオナズン、イオナズン、イオナズンっ」ブンッブン
女僧侶「ひぃ~んっ! まだ諦めてないみたいですぅ~!」
女戦士「無駄だ。マホトーンは呪文封じの魔法。それを知らない魔法使いじゃないだろ?」
女魔法使い「私の目の前で女に襲いかかった私の目の前で女に襲いかかった私の目の前で女に……! 抱きつこうとしてたぁ……!」ブツブツ
女戦士「……ま、魔法使い……」
女武闘家「勇者! おい! 聞いてるのか! あたしならいつでもいいんだぞっ! 好きにしていいんだぞっ!?」ブンブンッ
勇者「(どうしてこうなった……)」
女僧侶「武闘家さん……? 馴れ馴れしく触りすぎじゃありません?」ニコォ
女武闘家「ーー……僧侶こそどさくさにまぎれて勇者をさわってるじゃないか。どけろよ……! 汚物みたいな手でさわりやがってッ……!」ギロリ
女戦士「~~ッ!! 喝ッ!! お前達ぃっ!! しっかりしないかっ!!」
僧侶&魔法使い&武闘家「チッ」
女戦士「三人で舌打ちするな! 魔王を倒すまでは争わないと約束したじゃないか!?」
女僧侶「それはぁ~……そうですけどぉ~~」
女武闘家「なんであたしまで。僧侶が悪くない? 煽られてるかと思った」
女僧侶「べっつにぃ~、私からなにかしたわけじゃありませんしぃ~。してきたのは勇者様ですよぉ~?」
女武闘家「すぐに離れるべきじゃないの?」
女僧侶「なんですかぁ? 私の丸みを帯びた女性らしい身体がうらやましいんですかぁ? 筋肉ばかりの武闘家さんと違ってぇ」
女武闘家「……あ゛?」ギロッ
女僧侶「筋肉ばかりだってコンプレックスがあるから焦ったんでしょ~?」ニヤニヤ
女格闘家「なに? あんた、死にたいの? そうなんだろ?」
女戦士「やめろというにっ!!」
女僧侶「はいはぁ~い☆」
女戦士「すまない、勇者。ご覧のありさまなんだ。もう、私たちはーー」
女魔法使い「……はっ!? 私は今いったいなにを……っ!?」
女戦士「ーー我を忘れるほど、アンタにどっぷりなんだ。……勇者」
勇者「(……な、なんじゃ、そら……)」ヘナヘナ
女魔法使い「ご、ごほんっ……あ~……ちょっと取り乱しちゃったようだけど、そういうことよ」
女武闘家「勇者は筋肉がある方がいいよなっ! 引き締まった身体の方がいいよなっ!?」
女僧侶「プッ。やっぱり気にしてる」
女武闘家「あ゛ぁ゛っ!?」
女僧侶「武闘家さんったらイノシシみたいでかわいそぉ~……あっ! そうそう! 勇者様」ニコ
勇者「(こんなやつらとパーティなんか組んでられるか。解毒剤を奪って解散しt)」
女僧侶「逃げられませんからね?」ニコニコ
勇者「(ひっ!?)」
女僧侶「逃げるならいっそ私たちを殺してください。でなきゃ逃がしません。地の果てまで、地獄まで、魔界でも追いかけます」
女戦士「僧侶。逃げるなんて……そんなこと勇者がするわけないだろう」
女僧侶「言うだけタダです。私は戦士さんほど真正面からぶつかるタイプじゃありませんので」
女魔法使い「聖職者の言葉とは思えないケド……同感。勇者? まさか逃げようとか考えてないでしょおね?」
勇者「(全力で逃げ出すつもりです)」
女魔法使い「なぁにぃ? その顔は?」ジーッ
女僧侶「私たちは勇者様のことを大切にしたいんです。その気持ちを……お願いだから、踏みにじらないでください……」
勇者「(落ち着け、落ち着くんだ……。非常に馬鹿らしい理由だが生命の危機であることに間違いない……)」
女魔法使い「勇者からはなにか質問ある? 」
勇者「(まとめよう。こいつらは既に俺に惚れてて、好感度MAX通り越してやばい状態になっている。俗にいうヤンデレ……しかも四人も……)」
女僧侶「お手数ですが書いて教えていだけますかぁ? はい、ひのきのぼうですぅ」
勇者「(一般的な健康男子がハーレムを喜ぶか知らんが、俺はこんなの望んでない。望んでないハーレムほど苦痛なものはないなからな……)」スッ ガリガリ
女戦士「おっ……。なにか書き始めたぞ」
勇者『喋れないのは我慢できなくもない』ガリガリ
女僧侶「うんうんっ」
女魔法使い「そうよね。手足が不自由になるわけじゃないしね」
勇者『だが、俺はお前らとーー』ピタッ
僧侶&魔法使い&戦士&武闘家「……お前らと??」
勇者「(旅はできない。と、書こうとしたが、待て……そんな馬鹿正直に言っていいのだろうか……)」
僧侶&魔法使い&戦士&武闘家「???」
勇者「(そんなこと書いた日にゃ、俺は死ぬ。こいつらに殺される。そうひしひしと感じる……!)」
女僧侶「あれぇ~? なに書こうとしてるんですかぁ~? まさか……まさかとは思いますけどぉ」
勇者「っ!?」ビクゥッ
女戦士「? なんだ?」
女僧侶「ーー……解散しよう、とかぁ?」ニコォ
女武闘家「えっ!? そっ、そうなのかっ!? 」カチャッ
女戦士「そんなわけないと言ってるじゃないか。ここまで苦楽を共にしてしたんだぞ
」チャキッ
勇者「(……やはりっ! 戦士と武闘家は無意識に武器を握っている……っ!)」
女魔法使い「続きは? なんで手が止まったの?」ゴゴゴッ
勇者「(つまり……! 安易な行動は地雷に繋がるということ……! それが……っ! 対ヤンデレの心得だと理解ッ!!)」ガリガリ
女僧侶「沈黙って肯定ですかねぇ~?」
勇者『違う……お前らの決定に従う』
女僧侶「ふぅ~~ん?」ジトー
勇者『突然だったから、戸惑ってた』ガリガリ
女戦士「……まぁ、そうだよな」
勇者「(考えねばならない……! これからどうすべきか……! 味方はいないのだから……ッ!!)」
女僧侶「(うふふっ。勇者様ったらすぐにお顔に出しすぎですぅ~)」
女魔法使い「(考えてること丸わかりね。間違いなく逃げ出そうとしてる)」
女戦士「(……勇者。怯えているのだな。この女狐どものせいで……)」
女武闘家「(待ってて。旅の途中で必ずこいつらを亡きものにしてやるから。そうしたら私と一緒に……)」
女魔法使い「(ーー……問題はやはり…...停戦協定なんてガワだけね。取らぬ狸の皮算用。腹黒くさぐり合いしてるってわけか)」
女僧侶「(勇者さまになにかしたらブチ殺しますよぉ? 腐れマ〇コどもぉ~)」ニコニコ
勇者「(考えろ……! 考えるんだ……っ! ここから逃げ出す方法を……っ!)」
本日はここまで
また明日
勇者(つか考えんのめんどくせぇ)サクリ
魔法使い「あが……ぎ……が」ドサリ
僧侶「なんで口から剣突っ込んでるんですか物騒で」ドシュ
勇者(……二人目)
戦士「乱心したかゆうし」ザシュッ、ドチャッ
武闘家「勇者! 私をえらんでくれたんだ」ズブッ
武闘家「えっ……なん、で」ドブシュ
勇者(へえ……まだ生きてる)
勇者(消えろよ……お前も)ザクッ、ブチリ、ブチリ…
武闘家(右)「」
武闘家(左)「」
勇者(終わった……あとは細切れにしてモンスターに食わせて終わりだな)
ーーあれから、どれくらい、いや。
どれほどの日数が経っただろう。
浅いまどろみと覚醒とを繰り返していた。夢を見ているときも、それが夢であることを、はっきりと意識していた。
こういうのを明析夢(めいせきむ)というらしい。
とても暗い道を鉛のように重い身体を引きずり闇の中を逃げている。背後から僧侶達の気配が追ってきていた。
「ゆうしゃさまぁあああ~~」
「ゆうしゃ~~! どこ行ったんだぁ~~?」
探す声が聞こえる。
逃げ続けてもいつかは、袋小路に追い詰められる。
助けて。
助けて。
助けて。
声の限り叫んだ。
あいつらは口元から涎を垂らして近づいてきていたーー。
( 'ω'o[数週間後 村の宿屋]o
勇者「(ーー……ぬわぁっ!?)」パチクリ
女僧侶「お目覚めでございますか。崇高なる勇者様」スッ
勇者「(さっきのはっ!? ゆ、夢か……)」
女僧侶「ひどい寝汗を……勇者様。なにかお悩みごとがおありなのですか? 申してくだされば、悪しきモノに、このモーニングスターで……ッ!!」ジャラジャラ
勇者「(悩みの種はお前らだよ)」
女僧侶「うふっ、うふふっ。ぜんぶ、ぜぇ~んぶ。私が勇者様をお救い致します。その、憂いを潤んだ瞳から解放してさしあげますっ」ハァハァ
勇者「(……えっ? ちょ、顔近い)」
女僧侶「救済なのです。必要な処置なのです。罪を。汚らわしい魔の勢力がすぐ側まできているかもしれません……! で、ですので……浄化の為に、私の唇で……!」
女戦士「ーーはい、そこまで。ストップ」サクッ
勇者「(うわぁ……ためらいなく刺してるなぁ)」
女僧侶「げっ!? ……ゲフッ……うっ、お、おのれ……っ! 悪しき魔のモノめ……!」
女戦士「ふざけてないでさっさと回復魔法しなよ。ホントに死ぬよ」ザクッ
女僧侶「だっ、だったらっ! 刺さないでくれませんっ!?」ポワァァ
女戦士「アンタがいけないんだろ。勇者になにしようとしてんだよ。アバズレビッチ」ブシュー
女僧侶「うっ……ぐふっ、おぇっ、おぇぇ」ビチャビチャ
勇者「(目覚めに口から吐血してる光景なんてドン引き。いや、相手が美少女でも無理)」
女魔法使い「いっそのこと炭にしちゃう?」
女僧侶「でっ、できるもんならやってみればぁっ!?」
勇者「(毒を盛られ、四人のヤンデレ化が発覚してから数週間がたった……あれから、事態はーー)」
女魔法使い「実力行使に出たの?」
女僧侶「愛に、際限なんてございません。愛とは、慈しみ。だから、手段を選ぶような愛情なんて、そんなものは〝本物〟じゃないのです。ですので、“監禁”してーー」
女戦士「はぁ、どこがどう繋がってそうなるのか意味がわからん。やはり、息の根を止めるか」
勇者「(ーー事態は、悪化していた。夜這いなんて毎日だし、回復魔法で死にはしないとタカをくくってるのか仲間内で戦闘までやりだした。もちろん、俺をとりあってだ)」
女武闘家「あっ、あの、ゆっ、勇者。こ、これ。昨日っ、手紙……書いたんだ。読んでくれ……」オズオズ
勇者「……」ガサッ
女武闘家より勇者へ
もう少し待ってて(はぁと)
僧侶と魔法使いと戦士を殺してあげる。
そうすることで、あたしの愛が勇者に伝わり、あたしと勇者の未来に障害はなくなる。
勇者、好きです。愛しています。
アナタ様への愛は神々こうごうしく、あたしを包み込んでいます。
あたしは、永遠にアナタ様のお傍そばにることを誓います。
女武闘家よりたくさんの愛をこめてーー
勇者「(勝手に誓ってんじゃねぇよ……)」グシャ
女僧侶「勇者様、はい、あ~ん。新鮮な内にどぉぞぉ~」
勇者「(さしだしてくるスプーンにのっているのは、肉だ。戦士に切られた僧侶の、肉...…)」
女戦士「喋れないのは理解してるが、嫌だったら首を横にふるなりしてもいいんだぞ」
女魔法使い「そーそー。拒否して現実を突きつけてやりなさいよ」
女僧侶「っ、そ、そんなっ……嫌、なのですか?」
勇者「(当たり前やろがい。こいつら邪魔者を排除する時だけ妙に仲良くなりやがる)」スッ
女魔法使い「ほーら、みなさい。手で遮られちゃってるじゃない」
女僧侶「そ、そんなはず、勇者様は、私のすべてを受け入れ……? あ、アレ……? 拒否……あ、アレ……お、おかし――」プルプルプルプル
女戦士「残念だが。お前の勘違いだ。勇者は望んでいない」
勇者「(それは合ってる)」
女戦士「望んでるのは私との旅だ」
勇者「(そこで間違ってる)」
女魔法使い「戦士ったら。勇者が望んでるのは私との研究よ? 不老不死の秘薬を見つけて永遠に、ね」
勇者「(ーーしかし、思えば、こいつらとて被害者なのかもしれん。俺の声のせいで狂った行動に走っているのであれば)」
勇者「(だが、それでも、だ。いわゆる不可抗力というやつで責任をとれと迫られるなんて納得がいかん)」カキカキ
女武闘家「……? どうしたの? なに書いてるの?」
勇者「(俺は考えた。ここから逃げ出す方法を。プラン名はーー……“八方美人作戦“である)」スッ
女武闘家「こ、これって……っ!」カサッ
勇者「(今、俺が武闘家に渡したのは、さきほどの返事。『期待してるぞ』とだけ書いた紙だ。こうするとーー)」
女武闘家「やっ、やっぱりっ! あたしが思った通りだったんだ……っ! 勇者もっ、あたしと……!」
勇者「(このように、勝手に思いこんでくれる。他の三人にも同じ紙は書いて渡してある。もし、誰かに盗み見られてもごまかせるよう、あえて簡素な言葉を選んで書いた。保険はバッチリだ)」
女武闘家「ちょっとっ! あんた達ぃ!!」バンッ
女戦士「ん?」
女魔法使い「静かだと思えばどうしたの?」
女僧侶「うそ、うそよ。あ、そうだ。あの紙、勇者様から渡された紙があるじゃない」ブツブツ
勇者「(八方美人作戦の真の目的は、事態のさらなる悪化。つまり、殺し合いをさせることにあるのだからーー)」ニヤリッ
今日はここまで
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