提督「暁と赤い糸」 (1)
「また断線しちゃった」。暁は小指に絡まるように結びついている赤い糸をみる。指先からしばらく続くと、それはぷっつりと途切れていた。
それは『運命の赤い糸』とよばれる商品で、両端に結びつけられた男女の関係を成就させるというものであった。かわいいまじないのようでもあるが違う。運命力学の発展に伴い、科学的に明証的に効果が発揮されるものであった。
「また買い替えないといけないわ」。糸を手繰り寄せ丸めてゴミ箱に捨てる。暁は糸を切ってしまうようなことはしていなかった。ならば切れた原因は相手の司令官にあると考えるべきであろう。
「ちょっと司令官!」と執務室に行き、怒る。相手も「悪い悪い。こっちも別に何かしたつもりはなかったんだが」と謝る。
暁もそこまで本気で怒っているわけでもないので、新しい糸を取り出して「はい」と手渡す。司令官も大人しくその端を小指に巻き付ける。暁は笑う。司令官も仕方なさそうに笑う。
司令官はもしかしたら赤い糸の効果を話半分にしか信じていないのかもしれなかったが、暁が嬉しそうにするので、これで良いとも思ったのだ。
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