【モバマス】肇「恋のサイキッカー喜多見柚」 (21)

・アイドルマスターシンデレラガールズ二次創作SS
・キャラ崩壊控えめなはず
・百合要素あり
・短編、書き溜め済
よければどうぞ

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 ―――事務所

肇「……」ペラ

肇(…最近、柚ちゃんのことばかり考えてしまう)

肇(お仕事のとき、レッスンのとき、事務所で誰かと話してるとき)

肇(今みたいに、本を読んでいるときにも)

肇(気づいたときには、頭が柚ちゃんのことでいっぱいになって…胸が苦しくなる)

肇(今何してるんだろう、会いたいな、声が聞きたいな…なんて)

肇(はっ…私、また)

肇(…これじゃ、まるで…)

肇(私が)

肇(柚ちゃんのことを好き、みたいな)

肇(…いやいや、そんなはずは)

肇(でも…)

肇(…いやいや、女の子同士だし)

肇(あぁもう、本に集中できない)パタン

肇(なんでだろう…本当に、好き、なのかな)

肇(友達として、ではなく?)

肇(…わからない)

 ―――同時刻、事務所ドア前


<好き、なのかな>

柚(さあ事務所に着いたぞ、と思いきや)

<…わからない>

柚(なんか肇チャンの心の声が全部聞こえてくるんだけど)

柚(え、何?アタシ、サイキックに目覚めちゃったの?)

柚(それとも肇チャンが目覚めてるの?)

柚(いや、このままだと肇チャンは違う意味で目覚めそうなんだけど)

柚(そうじゃなくってっ…気まずい)

柚(アタシ、どんな顔して入ればいいの?)

柚(変顔?変顔なの?変顔大作戦なの?)

柚(いやいやいや落ち着けアタシ、普通に入ればいいじゃん)

柚(私が聞こえてるってこと、肇チャンは気づいてないはずだし)

柚(何がなんだかよくわからないけど、とにかく入っちゃおう)

柚(うん、なんとかなるなる)ガチャ

柚「おはようございまーす!」

肇「…あ、柚ちゃん、おはようございます」

柚(いつも通りクールな外見、しかし)

肇(えっえっ、柚ちゃん?うそ、なんでそんな、急に)アタフタ

柚(可愛いかよ)


肇(さっきまで柚ちゃんのこと考えてたから、は、恥ずかしい…)カァァァ

柚(顔が赤い!しかし、アタシはツッコまなーい)

柚(普通なら『熱でもあるの?』なんて手を当てて、そのままおでことおでこをくっつけあって、ばっきゅーん)

柚(しかーし!アタシは何を隠そう、赤くなっている原因そのものである、らしい)

柚(あれ?でも、もし肇チャンの心の声が聞こえてなかったら、アタシ普通にそれやってたな)

柚(…ていうか、なんで肇チャンはアタシなんか)

肇(あぁ…柚ちゃんといるだけで、なんだか心が明るく…)

柚(……ふむ)

肇(可愛らしいルックスと声、明るくて元気で、自由奔放で、みんなに優しくて…)

柚(……)

肇(うまく言葉にできないけど、やっぱりこの気持ちは…)チラッ

柚(……)

肇(いや、まさか、私が柚ちゃんに恋なんて)

柚(いや、恋してるよこれ、恋が咲く季節だよこれ)

柚(こんなに褒められたことないよ、しかもその上で『言葉にできない』って、オフコースだよ)

柚(これ、どーすんの?)

肇(…はっ、そういえば今日はまだ、挨拶しかしてない)

肇「柚ちゃんは、今日はお仕事ですか?」

柚「ううん、なんとなーく来てみた。肇チャンは?」


肇「私は、もう少ししたらレッスンです」

肇(大丈夫、会話は普通にできる)

肇(何かあったかな、えっと…あ)

肇「そういえば、巴ちゃんが一度、実家に帰られるそうですよ」

柚「そーなの?」

肇「お父様に呼ばれたそうで、すぐ戻ってくるみたいですが」

柚「巴チャンも大変だねー」

肇「そうですね…」

肇(…あっ、会話が終わった)

肇(このままでは、変な間ができてしまう)

肇(えっと、どうしよう…何か)オロオロ

柚(こんなに焦る肇チャンも珍しい)

柚(というかそれ、好きな人の前でやりがちな定番のパターンだよねぇ…)ウンウン

柚(…まあ、アタシ今日は特にやることないし…しばらく誰か来るまでは、大丈夫そうかな)

柚「お土産、買ってきてくれるかなー?」

肇(!)

肇「ふふっ、もう、柚ちゃんはそういうことばかりなんですから」

肇(柚ちゃんの方から話を…!)パァァァ

柚(そんな喜ぶ?)


柚「だって巴チャンが持ってくるお土産、いつも美味しいんだもーん」

肇「ふふっ…そうですね、私も以前もらったお饅頭、通販でお取り寄せしちゃいました」

柚「あはっ、肇チャンも変わらないじゃん」

肇「おじいちゃんにも送ってみたら、好評でした」

柚「行ったことない所のお土産あげたの?」

柚(…あれ、結構フツーだ)

柚(やっぱりアタシの幻聴なのかな…?)

肇(あぁ…幸せ…いっそこのまま死んでも…)

柚(いや、聞こえるなぁ…肇チャンの想いが重い)

柚(誰かのイタズラ?にしては凄いことやってるし)

柚(こんなの本当にユッコチャンくらいじゃん)

柚(なんでだろ、アタシなんかしたっけ?)

裕子(してませんよ!)

柚(そーだよね、うん……うん!?)

柚(…まあ、聞こえてるだけならそこまで支障なさそうだし、治るまで待つかー)

柚(それまで気をそらしつつ、キワドい話はしないようにしてー…)

柚「そーいえば肇チャン、その本は?」

肇「これですか、最近文香さんにおすすめしてもらったものです」

柚「おっ、どんなやつー?」

肇「恋愛小説ですね」

柚(ぐはっ)


柚(クリティカル…!)

肇「私達と同じ年代の、高校生の女の子が主人公で、同級生に恋をするんです。だけど、相手の男の子にはある秘密があって…という感じですね」

柚「お、おお、面白そうだねー」

肇「はい、主人公の女の子は陶芸が好きで、相手の男の子はバドミントン部の副部長なんですけど」

柚(文香サンなんという爆弾を)

肇「なかなか面白いですよ、読みますか?」

柚「い、今はちょっと、やめとこっカナー」

柚(今そんなの読んだら耐えられる自信がない)

肇「そうですか…柚ちゃんは、本とかは読みますか?」

柚「アタシはあんまり…マンガなら読むけど」

肇「そうなんですね…好きなジャンルとか、ありますか?」

柚(いや、これくらいならまあ…大丈夫だよね)

柚「んー、恋愛モノも結構好きだよ」

肇「なるほど…私はあまり恋愛モノを読まないので、なんというか…その、感情移入が難しくて」

柚「読んでたらなんかさ、キュンキュンしてこない?『私…やっぱりこの人のことが好きなんだ』とかそういうのでさー」

肇「恋心を自覚するシーンですね、『もしかして、これが…?』のような」

柚(…ん?)

肇(…ん?)


肇(もしかして、これが…)

柚(あかん)

肇(私…やっぱり柚ちゃんに恋を…?)カァァァ

柚(ほら見ろー!ちょっと油断したらこれだよー!)

柚(なんて気まずいんだ…話題を変えよう)

柚「あ、そういえばアタシ、今度舞台のお仕事決まったんだー♪」

肇「おめでとうございます、どんな舞台なんですか?」

柚「んとねー、田舎に住む女子高生と、都会に住む男子高校生が入れ替わっちゃって」

柚(ん?)

肇「あれ、それって…」

柚「入れ替わってたときの記憶はあんまりなくて、だけど二人はわずかな記憶を頼りにお互いを…」

柚(まずい、バリバリの恋愛ものだった、軌道修正しないと)

肇「探しに行く、ですよね?」

柚「いや、お互いを憎しみ合って、最高裁にまでもつれ込むドロドロの展開」

肇「そんな話なんですか」

柚「どっちかというと、逆転裁判みたいな感じかなー」

柚(あっぶなー、なんとかごまかせた)

肇「でも、それを聞いて思い出したんですけど、良かったですよね『君の名は。』」

柚(ごまかせてなかった!)

肇「私、あのシーンが好きなんです」

柚「みんなで同じラーメン注文するシーンでしょ?わかるー」

肇「?違いますが」


柚(これはもう、どこに地雷があるかわからないよ)

柚(できればこの場から早く移動したいんだけど…)

柚(なんとなく来たって言っちゃった以上、不自然だしなー)

柚(…どうしよ)

柚「あー、ちょっと、トイレいってくるねー」

肇「?はい」

柚(ここは、一旦撤退!)タッタッ

ガチャ

柚(…さて、トイレだけど)

<…やっぱり、これが恋なのか…よくわからない>

柚(ばっちり聞こえる)

<…恋愛の経験もないし>

柚(距離とかの問題じゃないのかな?いや、その前にまずこの状況をどうにかすべき)ウーン

<…柚ちゃんなら、わかるのかな?>

柚(誰か来てくれるのが一番いいけど…穂乃香チャンとか電話で呼び出せないだろうか)ウーン

<だけど、どうやって聞けば>

柚(とりあえずみんなにLINEを送って…)

柚(…ん?)

<……そうだ、この方法なら>

柚(…………肇チャンが何か良からぬことを思いついてるね???)

柚(あー!アタシのバカ!こんなことならそばにいた方が良かったじゃーん!)


穂乃香『すみません、今日はバレエのお稽古があって…』

柚「ううん!だいじょーぶ、大した用じゃないから」

穂乃香『でしたらまた今度、教えてくださいね』

柚「うん!レッスンお疲れさま!それじゃねー」

ポチ ツーツー

柚(…穂乃香チャン、散る)

柚(うーん…他のみんなもLINEしたけど、ダメそうだし)

柚(どうしよ、もう詰んでるのでは?)

柚(あーもう!神様仏様、茄子様芳乃様、くわばらくわばら…)

柚(誰か…誰か来てくれ!)

柚(誰か…!!)

コンコン

??「すみませーん」

柚「!!っ、はい!」

柚(来た!)

柚「はい、今でまーす!」

ガチャ

掃除のおばちゃん「ごめんねぇ、ここ今から掃除するから、出てもらえるかい?」

柚「はっ、はい、すみません、アハハハ」ススス

柚(チクショーーーー!!)


<…柚ちゃんがトイレから戻ってこない…大丈夫かな?>

柚(……戻ろ、さすがに時間も経ってるし、不自然だし)

ガチャ

柚「ただいまー、いやぁ、どこも掃除中で探すの大変だったよー!」

肇「そ、そうですか…」

柚「うん、ほんとにもー…」

柚(さて、と)

肇「…柚ちゃん、少し相談があるのですが、いいですか?」

柚「ちょっ、ちょっと待ってね!」

肇「…柚ちゃん?」

柚「いやぁ、その…っ」

柚(……っ)

柚「…やっぱり大丈夫っ、どうしたの?」

肇「…私の友人の話なのですが」

柚(はい、友達じゃないパターンの定番のやつ、頂きました)

柚「うん」



肇「最近、ある人のことをずっと考えてしまうそうなんです」


柚「…それで?」

肇「私の友人は、その『ある人』のことを、友達だと思っていたそうなんですが…」

肇「何をしていても、その人のことが頭から離れなくて」

柚「…うん」

肇「その人に会いたい、話したい、声が聞きたい」

肇「だんだん顔が熱くなって…胸が苦しくなって」

柚「…うん」

肇「…友達同士でも、こういう感情を持つことって、あるのでしょうか?」

柚「……」

肇「それとも、これは…」



肇「恋、なのでしょうか?」



肇「…柚ちゃんは、どう思いますか」


柚(…話を聞いている間、アタシはただ、肇チャンの顔が赤くなっていくのを)

柚(肇チャンの頭の中が、アタシでいっぱいになっていくのを見てるだけだった)

柚(…いやいや、そう、そうだよっ)

柚(これは、肇チャンの友達の話だから)

柚(アタシは何も見てないし、知らないっ)

柚(…だけど、肇チャンはそれだけ悩んでる)

柚(アタシは…)

柚(…………アタシは)

柚「…あのね、肇チャン」

肇「…なんですか?」

柚「それって、肇チャン本人の話だったりする?」

肇「!?ち、ちちち違いますよ、そんな」アタフタ

柚(わかりやすい)

肇「あくまで私の友達の話、ですから」

柚「…そうだよね、ごめんね?ヘンなこと聞いちゃって」

肇「…いえ、大丈夫ですよ」

柚「…アタシは、あくまでアタシは、だけど…」


柚「それは、恋なんじゃないかな、って」

肇「……!」

柚(アタシは、悩んでる友達を見捨てるなんて、できないっ!)

柚「アタシもね?経験とか…は、ないんだけど…」

柚「ほらっ、友達同士から恋人になるとか…よくあるハナシ、だし?」

肇「……」

柚「なんというか、うまく説明できないけど」

柚「なんで?って考えてみても、理由がわからない、とか」

柚「一緒にいるだけで、どうしようもないくらい幸せな気持ちになる、とか」

柚「逆に、その人のことを考えて、消えちゃいそうなくらいに切なくなる、とか」

肇「……」

柚「…ぜんぶ、好きだから…だと、思う」

柚「うまく言えないけど、どうしようもなくその人のことが好き…」

柚「…なんでしょ?」

肇「…そうですね」

柚「それは、やっぱり恋だよ」

肇「……」


肇「でも、女の子同士なんです」

柚「ホァッ!?」

柚(そこまで言っちゃうかー!)

肇「すみません、驚かせてしまって」

柚「いや…うん、ダイジョーブ」

肇「…女の子同士だとしても、それは恋でしょうか?」

柚「…うーん」

柚(…どうしよう?)

柚(ここで肯定したら、どうなっちゃうんだろう)

柚(……ここで否定したら、諦めてくれるのかな)

柚(アタシは正直、今のトコロだけど…)

柚(肇チャンの想いには、応えられない)

柚(……)

肇「……」ドキドキ

柚(……だけど)

柚(……っ……だけど!)

肇「…すみません、やっぱりさっきのは」

柚「好きなら、カンケーないよ」

肇「!」


柚(…どんなものだとしても、肇チャンの大切な気持ちだから)

柚(アタシは、それを否定したくなんてない)

肇「そう…でしょうか?」

柚「うん」

柚(…偽善、かもしれない)

柚(だけど、そういう風に肇チャンを傷つけるのはイヤだし)

柚(そんなことしたらアタシも、モヤモヤした気持ちになる)

柚「性別とか、そんなんじゃないっ」

柚「その人のことを、大切に思う気持ちがあって」

柚「その人のことが好きで、どうしようもなくなっちゃったら」

柚「…それはもう、恋なんだよっ」

肇「…そう、なんですか」

柚「うん…アタシは、そう思う」

肇「……そうですか」

柚(…どうかな)

肇「……」

柚(…どう、かな?)

肇「…ありがとうございます、柚ちゃん…なんだか、スッキリしました」

柚「…へへっ、いーってことよ」

柚(……ふぅ)


肇「ふふっ、柚ちゃんに相談できて良かったです」

柚「そう?いやー、アタシもまさか、肇チャンから相談されるなんてねっ」

肇「そう、ですか?」

柚「うん、肇チャン、一人でなんでもできちゃいそうだし?」

肇「ふふ、そんなことありませんよ」

柚「その友達…上手くいくといいね」

肇「…あっ!そうですね、そう…友達、ですね、はい」

柚(忘れてたな)

柚(…あれ?いつの間に、聞こえなくなってる)

肇「…あ、いつの間にか、レッスンの時間でした」

柚「そう?じゃ、レッスン頑張ってね!」

肇「はい、ありがとうございました、柚ちゃん」

柚「いいのいいのー、それじゃねーっ」

肇「はい、失礼しますね」

バタン

柚(はー、なんだったんだろ)

柚(いつの間に、聞こえなくなってたな)

柚(まあ、一件落着…なのかな?)

柚(…はぁ、なんか疲れたし、ちょっとソファーで横になろっと)ドサッ

柚(肇チャンの気持ちを知ってしまったわけだけど、これからどうしよ…)zzZ...


巴「柚、おい柚、そろそろ起きんか」

柚「うーん、もう食べられな……はっ!」

巴「全く、もうすぐレッスンの時間じゃけえ、行くぞ」

柚「あれ?巴ちゃん?実家に帰ったんじゃ…?」

巴「あ?何を寝ぼけとるんじゃ、ほれ、シャキッとせえ」

柚「あれ、アタシいつの間に机で……え?」

柚(もしかして、夢?夢オチ…っていうやつ?)

柚「……はぁ~~ぁ」

巴「なんじゃ、そんなため息なんかついて」

柚「いや、なんでもない…よし、さあ!今日も楽しいレッスンだー♪」

巴「はあ…?」

ガチャ

肇「お疲れ様です」

巴「おう、肇か、お疲れさん」

肇「巴ちゃん、お疲れさま…あれ、柚ちゃん?」

巴「ん?…なんでソファーの裏に隠れとるんじゃ」

柚「お、おお、お疲れさまー肇チャン…」

柚(むっ、ムリだって!あんな夢見た後に、まともに顔見れるわけないじゃん!)

肇「柚ちゃん?どうかしたんですか?」スタスタ

柚(ああああ近づいてくる!ヤバい!)


柚「ななななな、なんでもないよ!うん、なんでもない!」

巴「いや、なんか怪しいな、ほれ、こっち来てみい」

柚(そんなこと言ってないで助けてくれー!)

肇「柚ちゃん…顔が赤いですね。もしかして、熱でもあるんですか?」

柚(ああ…もう、もう目の前に)

柚「そ、そそそんなことな」

ピトッ

柚「あ゛っ」

肇「…熱はなさそうですが」

柚(おでことおでこを…アレして…アレで…)

柚(…まさか、まさかこれが)フラッ

ドサッ

肇「えっ、ちょっと、柚ちゃん!?」

巴「おい、なんじゃ!?柚、しっかりせえ!」



柚(これが、恋ってやつか…)

以上です、この二人の絡みがもっと見たいんじゃ
ありがとうございました

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