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橘「……」

橘「その…」

梅原「…桜井さんか」

橘「……」

梅原「わかってて聞いてるんだろう?」

梅原「最近は歌番組だけじゃなくて、バラエティ番組にもひっぱりだこ」

梅原「すっかりアイドルって感じらしい…」

橘「そうか、そんなにか…」

梅原「彼女明るいし、結構人気だそうだ…」

橘「はは、もう梨穂子が僕の幼馴染だなんて言っても、誰も信じてくれないかもな」

梅原「……」

橘「あ、悪い」

梅原「…いや、お前も傷ついてるんだな」

橘「まぁ…仕方ないよ…」

梅原「…彼女、交際を申し込まれても全部断ってるらしいぞ」

橘「そりゃ、アイドルだからな」

梅原「……」

梅原「俺の聞いた話だと、子どもの頃からずっと心に決めてる人が居るって話だ」

梅原「…誰の事かはわからないけどな」

橘「…もうやめよう」

橘「その話は…」

梅原「…そうだな」

8年後

課長「や~、今年ももうすぐ終わりだな~」

橘「そうですね~、ひっく」

後輩「ちょっと、しっかりしてくださいよー」

後輩「だいたい課長たちいくら明日が土曜日だからって飲みすぎなんですよ」

橘「いーじゃないかー、今日は僕の誕生日なんだ」

橘「少しぐらい、はめを外したってさ」

課長「そうだぞ、今日はとことん飲んでやるからな!」

後輩「やれやれ」

橘「むむ、お前もしかしてもう飲めないのか?」

後輩「そんなわけないっすよ、一番酒に強いの俺っすからね」

男「おっ、あの人たちなんかよさそうだな」

男「すいませーん」

橘「ん?」

男「●×テレビなんですけど、ちょっとよろしいですか?」

課長「おっけーおっけー、いいですよ~」

後輩「ちょっと課長、酔ってんのにこんなの受けちゃダメっすよ」

男「ああ、私たち酔ってる人に取材してるんですよ」

橘「じゃあちょうどいいじゃないか」

男「ずいぶんと飲まれてるご様子ですけど、何軒ぐらい行かれたんですか?」

課長「3軒飲んで、今から4軒目行くところ」

男「おお、なかなかですね」

課長「今日ね、こいつが誕生日なんすよ」

男「あっそうなんですか!おめでとうございます!」

橘「ありがとうございます」

男「めでたいことなんですけど、今回の取材の内容はみなさんの今までで一番後悔したことは何かを聞いてるんですよ」

課長「一番か…俺はね~、大学のときに飲み過ぎて吐いちゃったことかな」

男「あらら、それはそれは…」

後輩「俺は今、こんな状態でテレビに映ることっすかね」

後輩「これが放送されたとき親とかに『何してんだっ!』とか言われそうっすもん」

男「ははっ、まあそういうこともないとは言えないですからねぇ」

男「今日誕生日のあなたは何かありますか?」

橘「んー、好きな子にちゃんと思いを伝えられなかったことですかね~」

課長「おいおい、そんなこと俺も知らないぞ」

男「おおっ課長さんも知らないことなんですか、これは興味がありますね」

後輩「俺も先輩のそういうこと興味がありますね」

後輩「酔った今しか聞けないっすよ、こんなこと」

男「じゃあちょっと詳しく聞いてみましょうか」

男「言おうとしてたのはいつ頃なんですか?」

橘「えーっとねー、高校のときですね」

男「高校以降に伝える機会はなかったんですか?」

橘「そのあと遠いところに行っちゃって、今は会うこともないんじゃないかなーって思ってます」

男「あーなるほど」

男「遠いところって外国とかですか?」

橘「いや、国内です」

橘「なんていうか距離的なことじゃなくて、立場的なことですかね」

男「立場…?」

男「お相手の方とはどういう関係だったんですか」

橘「簡単に言うと幼馴染ですね」

課長「おお、いいね」

男「ちなみにお相手の方のどういったところが好きだったんですか?」

橘「そーですねー、いつもニコニコしてて、特に食べてる姿が可愛くてー」

橘「ありのままの姿を見せてくれてたところとか…よく考えたらそういうところが好きだったんでしょうね」

男「そうだ、せっかくテレビに出てるんですから、もしかしたらお相手の方が見てるかもしれませんから一言言ってみませんか」

課長「おお、いいじゃん」

橘「おほんっ」

橘「えー、お久しぶりです!自分の気持ちに気づくのが遅くなって伝えられませんでした」

橘「僕は今でも好きですけど、あなたは僕のことを覚えてくれてるだけで十分です!」

後輩「素面じゃ絶対聞けない言葉っすね」

2週間後 スタジオ

司会者「今日のゲストは、今や女優として大活躍、桜井リホさんです!」

桜井「こんにちは~、よろしくお願いします」

司会者「すごい人気ですよね、アイドルから女優になって…」

司会者「最近テレビで見ない日ないもんね」

桜井「いえいえ、みなさんのおかげですよー」

司会者「今度主演のドラマがあるんでしょ、リホちゃんの実力だよ」

桜井「あはは、そう言っていただけるとうれしいです」

―――

司会者「それでは次のコーナーいってみましょう」

司会者「街で酔ってる人たちにインタビューして本音で答えてもらいます」

司会者「ではVTRスタート」

~~~

男「こんばんわー、私は今●●駅周辺にきております」

男「ではさっそく歩いて、酔ってる人たちを探しましょう」

男「この辺は私が大学生のときに住んでたんで、酔ってる人たちがいそうなところはだいたいわかりますよ」

男「おっ、あの人たちなんかよさそうだな」

男「すいませーん」

橘「ん?」

男「●×テレビなんですけど、ちょっとよろしいですか?」

課長「おっけーおっけー、いいですよ~」

後輩「ちょっと課長、酔ってんのにこんなの受けちゃダメっすよ」

男「ああ、私たち酔ってる人に取材してるんですよ」

橘「じゃあちょうどいいじゃないか」

男「ずいぶんと飲まれてるご様子ですけど、何軒ぐらい行かれたんですか?」

課長「3軒飲んで、今から4軒目行くところ」

男「おお、なかなかですね」

課長「今日ね、こいつが誕生日なんすよ」

男「あっそうなんですか!おめでとうございます!」

橘「ありがとうございます」

男「めでたいことなんですけど、今回の取材の内容はみなさんの今までで一番後悔したことは何かを聞いてるんですよ」

課長「一番か…俺はね~、大学のときに飲み過ぎて吐いちゃったことかな」

男「あらら、それはそれは…」

後輩「俺は今、こんな状態でテレビに映ることっすかね」

後輩「これが放送されたとき親とかに『何してんだっ!』とか言われそうっすもん」

男「ははっ、まあそういうこともないとは言えないですからねぇ」

男「今日誕生日のあなたは何かありますか?」

橘「んー、好きな子にちゃんと思いを伝えられなかったことですかね~」

課長「おいおい、そんなこと俺も知らないぞ」

男「おおっ課長さんも知らないことなんですか、これは興味がありますね」

後輩「俺も先輩のそういうこと興味がありますね」

後輩「酔った今しか聞けないっすよ、こんなこと」

男「じゃあちょっと詳しく聞いてみましょうか」

男「言おうとしてたのはいつ頃なんですか?」

橘「えーっとねー、高校のときですね」

男「高校以降に伝える機会はなかったんですか?」

橘「そのあと遠いところに行っちゃって、今は会うこともないんじゃないかなーって思ってます」

男「あーなるほど」

男「遠いところって外国とかですか?」

橘「いや、国内です」

橘「なんていうか距離的なことじゃなくて、立場的なことですかね」

男「立場…?」

男「お相手の方とはどういう関係だったんですか」

橘「簡単に言うと幼馴染ですね」

課長「おお、いいね」

男「ちなみにお相手の方のどういったところが好きだったんですか?」

橘「そーですねー、いつもニコニコしてて、特に食べてる姿が可愛くてー」

橘「ありのままの姿を見せてくれてたところとか…よく考えたらそういうところが好きだったんでしょうね」

男「そうだ、せっかくテレビに出てるんですから、もしかしたらお相手の方が見てるかもしれませんから一言言ってみませんか」

課長「おお、いいじゃん」

橘「おほんっ」

橘「えー、お久しぶりです!自分の気持ちに気づくのが遅くなって伝えられませんでした」

橘「僕は今でも好きですけど、あなたは僕のことを覚えてくれてるだけで十分です!」

後輩「素面じゃ絶対聞けない言葉っすね」

――――――

司会者「はい、今回もなかなかおもしろい人たちがいましたね」

司会者「君は興味のある人いた?」

芸人「僕は逆立ちして歩く人すごいと思いましたね」

芸人「ベロンベロンの状態であれはできないですよー」

芸人「ただ、あの人だけ特技披露になってましたね」

司会者「たしかにあれすごいね、じゃあリホちゃんは興味のあった人はいた?」

桜井「え、私ですか…」

桜井「そ、そうですね…一番最初の、あっ」

桜井「……」

司会者「リホちゃん…?」

桜井「あわっ、さ、最初の人たちの今これを受けてるのが一番後悔してるってのが、印象に残りました」

司会者「ああ、いたね」

司会者「どんな風に印象に残った?」

桜井「えっ…そ、その…どんな風に…」

桜井「すみません、どんな風にって言われると、ちょっとはっきりしないですけど」

司会者「もしかして、リホちゃんのタイプの人だったりして」

桜井「…っ!」

桜井「ち、違いますよ~」

司会者「おお、ちょっとあの人に失礼なこと言っちゃったね」

桜井「あわわわ、ご、ごめんなさい!」

桜井「そっ…そういうことじゃなくて、タイプだから印象に残ったんじゃなくて、セリフがおもしろかったってことです!」

収録終了 楽屋

桜井「……」

マネージャー「リホ、どうしたのさっきのは」

桜井「…ちょっと緊張しちゃって」

桜井「小さいころから司会者さんの番組見てて、初めて会ったから」

マネ「そうなの…?」

プルルルル

マネ「あ、ごめん電話だわ、失礼」

ガチャ

桜井「……」

桜井「あれって…純一…だったよね」

桜井「間違えるはずないもん…」

桜井「変わってなかったな…」

桜井「……」

桜井「純一の言ってた人ってもしかして私…?」

桜井「……」

2週間後

後輩「先輩、昨日の見ましたか?」

橘「昨日のって…何を?」

後輩「ちょっと前に俺と先輩と課長で飲みに行ったときインタビュー受けたじゃないっすか」

橘「?」

後輩「えーっと、あっほら、先輩の誕生日っすよ」

橘「ああっ!あれか」

橘「それが昨日やってたの?」

後輩「そうっす」

橘「もう自分が何言ったかとか何も覚えてないよ」

後輩「幼馴染の人に告白してましたよ」

橘「うえっ!?」

橘「な、なんでそんなことに…?」

後輩「…酔ってたからじゃないっすか?」

橘「た…たしかに酔ってたかもしれないけど、さすがに嘘だろ?」

橘「そんなこと言うわけないじゃんか…」

後輩「バッチリ言ってましたよ」

橘「……」

橘「だいたい…あいつはもう女優なんだぞ」

橘「そんな状態で、僕の前に来るわけないだろ」

後輩「女優?何のこと言ってんすか?」

橘「だって、さっき幼馴染に告白したって言ったじゃん」

橘「つまり目の前にいたってことだろ?」

後輩「いや、そうじゃないっす」

後輩「インタビューって言ったじゃないですか、先輩カメラに向かって言ってたんすよ」

橘「え…」

後輩「てか、先輩の幼馴染って女優なんすか、すごいっすね」

橘「う…うん…今はな…」

後輩「ちなみに誰なんすか?」

橘「別にいいだろ、そんなこと」

後輩「気になるじゃないっすか、教えてくださいよ」

橘「……」

後輩「じゃあこれだけ教えてくださいよ、俺の知ってる女優ですか?」

橘「…たぶん知ってるんじゃないか、最近ずっとテレビに出てるらしいし」

後輩「らしいってなんすか、はっきりしないっすね」

橘「美也が言ってたんだよ、僕は見てないからな」

後輩「見てあげましょうよ、幼馴染がよくテレビに出るレベルの女優なんてなかなかないっすよ」

橘「……」

橘「正直、あんまり好きじゃないんだよ、別に嫌いでもないけどさ…」

後輩「インタビューのとき今でも好きって言ってましたよ」

橘「そ…そんなことまで言ったのか僕は…」

後輩「あきらか本心って感じでしたし、好きなんでしょ」

橘「違う!僕が好きなのは桜井梨穂子だ、桜井リホじゃない!」

後輩「さ…桜井リホ!?マジすか先輩…!」

橘「あっ…いや、その…あ、もうすぐ昼休憩も終わりだ、トイレ行ってくる!」

橘「はぁ…」

後輩「まさか先輩の幼馴染に桜井リホがいたなんて」

橘「お前こんなとこまで…」

後輩「いいじゃないっすか、俺もトイレ行きたかったんで」

後輩「そういや先輩の幼馴染ってことは美也も桜井リホの…」

橘「…ああ、そうだよ」

橘「昔はよく僕と美也との三人で遊んでた」

後輩「へぇ~そういやファンって言ってましたよ」

橘「……」

橘「お前僕が桜井リホの幼馴染って信じてるのか?」

後輩「?」

後輩「自分で言っておいてどうしたんすか」

橘「いや…普通信じられないって思ってさ…」

後輩「何言ってんすか、信じてますよ」

橘「…!」

後輩「そうだったら昨日のテレビを見てた美也の反応もしっくりきました」

後輩「酔った兄がああいうこと言ったからじゃなくて、桜井リホがいるのに言ったからってことだったんすね」

橘「…美也はなんて言ってたんだ」

後輩「バカにぃに!って言ってました」

橘「いつも通りだな…」

後輩「先輩、桜井リホの幼馴染だってこと隠したいんですか?」

橘「…まあ、そうだな」

後輩「わかりました、じゃあ誰にも言わないようにします」

橘「助かるよ」

後輩「そのかわり、また奢ってくださいよ」

後輩「じゃっ、お先失礼します」

橘「ああ」

橘「ん?ちょっと待て」

後輩「?」

橘「さっき桜井リホがいるのにって…」

後輩「ああ、あの回のゲストって桜井リホだったんすよ」

橘「なっ…!?」

後輩「ちょうどよかったじゃないっすか」

後輩「幼馴染って言ってたんで、もう本人はわかってるから相手には伝わったんじゃないですか」

橘「……」

後輩「先輩?」

後輩「おーい」

後輩「先輩ってばー、ちょっとお義兄さん?」

後輩「だめだ、反応がねえ」



ガラガラ

梅原「へい、らっしゃい!」

梅原「おっ、テレビに出てた有名人じゃねえか」

橘「ほんとに出てたのか…」

後輩「ちょっと、俺のことは信用してなかったんすか?」

橘「いや、してたけど…」

梅原「その様子じゃ大将は見てねえんだな」

橘「知らなかったんだよ」

香苗「まさ君、まず座らせてあげないと」

梅原「あ、そうだな」

香苗「橘君たち、こちらどうぞ」

香苗「ふふっ」

橘「ど、どうしたの…」

香苗「いや、橘君がテレビで桜井に告白してたの思い出してさ」

橘「あれは違うよ、その…」

梅原「お前のこと知ってる人が聞けば、間違いなく桜井さんのことだってわかるぞ」

後輩「梅原さん、先輩ったら何言ったとか覚えてないんすよ」

梅原「あんなに堂々とした告白だったのにか」

橘「だから告白じゃないって!」

梅原「はは、悪い悪い」

梅原「お詫びにビールをサービスしとくからさ、ほれお前にも」

後輩「あざーす」

梅原「それで大将、あれは本心なんだろ?」

橘「…もうこの話はやめないか?」

橘「もし僕が本気で言ってたとしても、絶対に叶わない…ってやつじゃないか」

橘「考えると悲しくなるからさ…」

梅原「お、おう…」

―――――

橘「ごめんな梨穂子…」

橘「今さら梨穂子のことを好きだって言っても芸能界に行ったからだと思うだろ」

橘「でも僕はずっと梨穂子のことが気になってて…」

橘「これが好きだって気持ちってことに気づくのが遅かったんだ…」

橘「むにゃむにゃ…」

後輩「寝言みたいっすね」

後輩「また先輩酔って…連れて帰るのが大変だ」

後輩「先輩、起きてください、帰りましょうよ」

橘「うにゃぁ…」

数日後

桜井「ふぅ~…」

マネ「お疲れ様、リホ」

マネ「はい、アップルジュース」

桜井「ありがとうございます」

マネ「でも悪いけど、そんなに休めないのよね」

マネ「あと…2時間ぐらいで次の現場に行かないと」

桜井「ええっ、ま、まだあるんですか…」

マネ「伝えておいたでしょ、間の時間は思ったより、短くなっちゃったけど」

桜井「ちょっとお手洗い行ってきます…」ガチャ

桜井「……」

桜井(うぅ…このところずっと何かあって、全然休めないよ…)

桜井(…気になることもあるのに)

ドンッ

桜井「きゃっ」

桜井「ご、ごめんなさいっ!」

俳優「あ、いえ、こちらこそボーッとしてて…」

俳優「あれ、リホさん?」

桜井「え、はい」

桜井「あっ、あなたは」

俳優「偶然だね」

桜井「ほんとですねー」

俳優「これから撮影?」

桜井「いえ、今終わったところで、これからまた移動です」

俳優「大変だね~」

俳優「俺とそんなに歳が変わらないのにすごいよ」

桜井「えへへ、ありがとうございます」

俳優「俺もがんばらねえとな」

桜井「でも、主役の映画が決まったんですよね」

俳優「うん、初めてだから緊張するよ」

俳優「あっごめん、マネージャー待たせてたんだった」

俳優「話しかけといて悪いけど、急がないと」

俳優「また今度ごはんでも行こうよ、じゃっ」

桜井「はい」

桜井「……」

桜井「あっ、トイレに行きたかったんだった!」

数日後

桜井「あのー、来週の月曜日のスケジュールってどうなってます?」

マネ「えっとね、ドラマの撮影が入ってるわね」

マネ「何か用事があったの?」

桜井「友だちの俳優さんが食事に行かないかってお誘いがあったんです」

マネ「うーん、前日から関西の方に泊まりだから無理かな」

マネ「こっちに戻ってくるのは、その次の日だから」

桜井「そうですか…」

マネ「行きたかったの?」

桜井「その、せっかく誘っていただいたので」

桜井「おいしいお店知ってるって言ってましたし」

マネ「…リホが興味あるのは食べ物の方か」

桜井「食べ物だけじゃないですよー」

マネ「はいはい、そういうことにしておいてあげる」

マネ「別に好きなものを好きなだけ食べることに、どうこういうつもりはないけど、仕事に支障をきたさないようにね」

マネ「あなたはもう一流の女優なんだから、出始めのころのアイドルとは違うのよ」

マネ「あなたの生活全てが演技や話しに影響すると思いなさい」

桜井「はい…」

マネ「…とまあ、言ってみたけど、そんなに難しく考える必要はないわ」

マネ「頭のどこかに置いておく程度でいいから」

桜井「はい…」

マネ「そんな難しい顔しないの」

マネ「あなたにそんな顔は似合わないわ」

マネ「あなたの笑顔は人を元気づけることができるんだから、笑って笑って」

桜井「……」

桜井「へへ、こうですか?」

マネ「そうそう、その笑顔よ」

マネ「きっとみんなあなたに注目してくれるわ」

マネ「さあ、もうすぐ本番よ」

桜井(みんな私に注目…か)

桜井(見てくれてるのかな…)

桜井(純一…)

桜井(……)

マネ「どうしたのリホ?緊張してる?」

桜井「あっ…いえいえ、ちょっと考え事を…」

桜井「大丈夫です、がんばります!」

マネ「そう、お願いね」

数時間後

マネ「お疲れ様、今日の演技もよかったわ」

桜井「ありがとうございます」

マネ「いきなりで悪いんだけど、今度バラエティ番組があってね」

マネ「スターの子ども時代をよく知ってる人に会いに行くって内容なの」

桜井「へぇ、誰のだろう、おもしろそうですね」

マネ「…あなたよ」

桜井「ええっ!?」

桜井「さっきスターのって言ったじゃないですか」

マネ「当然リホのことよ」

マネ「自覚してないみたいだから言っとくけど、あなたはもう立派なスターよ」

マネ「自信を持ちなさい」

桜井「…はい」

桜井「あの、じゃあ私の場合だと誰が出るんですか」

マネ「まあそれは…状況だったり、許可が出るか出ないかにもよるけど、あなたの親や子どもの時からの友達よね」

桜井「子どものときから…」

桜井「……」

マネ「リ~ホ!」

桜井「は、はいっ!」

マネ「自分から聞いておいて無視はないでしょ」

数日後

プルルルル

橘「もしもし?」

美也「にぃに~、来週の日曜日あいてるよね」

橘「んー、まあ空いてると言えば空いてるかな」

美也「じゃあ家の方に帰ってね、みゃーも帰るから」

橘「何かあるのか?」

美也「よろしくねー」プチッ

橘「あ、おいっ」

ツー ツー

橘「……」

橘「もう一度かけ直したり、メールするのは簡単だけど…」

橘「仕方ない、ここは大人しく言うことを聞いてやるか」

翌日

橘「なあ、美也のやつ何か言ってなかった?」

後輩「んー…いつもよりちょっと嬉しそうな顔はしてましたけどねー」

後輩「でも特に何も言ってなかったような…」

橘「ふーん、そうか」

後輩「何があったんすか?」

橘「なんかいきなり、来週の日曜日家に帰ってこいって」

課長「おお、ちょうどいいところに二人そろってた」

課長「二人に頼みたいことがあるんだけど、いいかな」

課長「来週の日曜日なんだけどさ、接待でゴルフすることになったんだよ」

課長「前に部長と一緒に君たちやったことあるでしょ」

課長「それで相手がさ、気に入ったみたいで是非君たちをってことなんだ」

課長「無理なら仕方ないけど、どうかな?」

後輩「俺はいいっすけど、先輩美也に何か言われてませんでした?」

橘「ああ、そうだった…でも…」

橘(美也が内容も言わないことだし、どうせ大したことじゃないだろ)

橘(一応仕事だし、謝ればいいか)

橘「いや、僕もいいですよ」

課長「おお、そうか、ありがとう」

課長「部長に伝えとくよ」

後輩「先輩、いいんすか?」

橘「内容も言われてないようなことだから、だぶん大したことじゃないだろうって思って」

橘「後で謝っとくよ」

後輩「それはいいっすけど…」

後輩「そうなると、美也が一番最初に当たってくるの俺なんすよ」

橘「そうだな」

橘「じゃあお前にも謝っとかないと」

橘「ごめん」

後輩「……」

―――――――

橘「もしもし、昨日の話のことなんだけどさ…」

美也「ん?どうしたの」

橘「来週の日曜日用事が入っちゃってさ」

美也「……」

橘「い、一応仕事なんだ仕方ないだろ」

橘「だから帰れそうにないんだ、悪いな」

美也「そうなんだ…仕事じゃ仕方ないか」

橘「ほんとごめんな、じゃっ」プチッ

橘「やけにあっさり…」

後輩「なんか怖いっすね…」

翌週

俳優「いやー、こうしてリホさんと共演できるなんて、すごくうれしいですよ」

桜井「あはは、私もです」

俳優「それもリホさんのデビュー前が知れる番組なんて」

桜井「でも、あまり大したことはないと思います」

桜井「みんなに注目してもらえることはうれしいのですけれど」

俳優「リホさんは何か目標とかある?」

桜井「そうですね…今の状態で満足せず、長く出続けたいですね」

芸人「おはよっす」

俳優「あ、おはようございます」

桜井「おはようございます」

芸人「昨日に続けてだけど、今日もよろしくね」

芸人「今日は桜井ちゃんの地元か、楽しみだね」

芸人「最近帰ったりしてるの?」

桜井「最後に帰ったのは去年のお正月ですね」

俳優「じゃあ今日は一年ぶりなんだ」

桜井「はい」

男「もうすぐ本番でーす、お願いしまーす」

芸人「はーい」

芸人「それじゃあ行こうか」

―――――

芸人「さあ、やってまいりました」

芸人「ここが桜井リホさんが生まれ育った地ですね」

桜井「はい、そうです」

桜井「あっ、ちょうどこのあたりですね」

桜井「このあたりで声をかけられて、アイドルになったんです」

芸人「その当時の写真がこちらですね」

俳優「いやー、かわいいねー」

芸人「この時がいつぐらいになるのかな」

桜井「えっと、高校二年生です」

芸人「これだけかわいいとさ、彼氏とかもけっこういたんじゃない?」

桜井「い、いえ…いませんでしたよー」

芸人「意外だね」

桜井「でも…ずっと好きな人がいたんです」

俳優「へえ…それは興味があるね」

芸人「じゃあちょっと詳しく聞いてみようか」

桜井「えっ…ええっ!?」

芸人「じゃあまずは…」

桜井「あっ!み、見えましたよ!」

桜井「あれが私の高校です!」

桜井「ここが私の母校の輝日東高校です」

桜井「卒業してからまだそんなにたってないですから、やっぱり大した変化はありませんね」

俳優「今回リホさんの地元を回るということで一緒に参加していただく方は…あの方です!」

美也「りほちゃ~ん!」

桜井「えっ!?」

桜井「美也ちゃん!」

芸人「かっわいい!」

芸人「あ、じゃなかった、、桜井リホさんとずっと同じ学校で幼馴染でもある美也さんです」

美也「よろしくお願いします」

俳優「ちょっと~、かわいい、あ、じゃなかったはないでしょ~」

芸人「いや、ほんとかわいくてさ、紹介する前に言っちゃったから」

桜井「だめですよ~、美也ちゃんもう結婚してますから」

芸人「あー、残念」

俳優「残念って」

芸人「冗談だよ、私も結婚してますから」

芸人「さあ、そんなことより、早速行きましょう」

男「はい、オッケーです!」

桜井「まさか美也ちゃんが出てくるなんて、びっくりしたよ~」

美也「にしし、りほちゃん久しぶりだね」

桜井「昨日は(俳優の名前)さんの地元に行ってたんだけど、その時はお兄さんが出てきたの」

桜井「だから私もてっきり家族の誰かかと思ってたから」

美也「ほんとはね、みゃーとにぃにの二人で出る予定だったんだ」

美也「でもにぃにったら仕事があるからって言って来ないんだよ」

桜井「えっ…そう…」

桜井「純一来れないんだ…」

俳優「……」

芸人「ねえ、次のことなんだけど」

俳優「あっ、はい」

―――――――



芸人「桜井リホさんの地元を回る企画もここが最後です」

俳優「こちらはお寿司屋さんですか?」

桜井「はい、私の友だち夫婦でやってるお寿司屋さんです」

桜井「最近は来れてなかったですけど、地元に帰ったときはいつも食べに来てます」

芸人「美也さんもよく来るんですか?」

美也「はい、兄とうめ…大将さんが友だちなのでけっこう前からよく来ます」

桜井「とってもおいしいので、是非食べてみてください」

ガラッ

梅原「らっ…らっちゃっ…らっしゃい!」

香苗「いらっしゃいませ!」

桜井「梅原正吉さんと香苗ちゃ…さんです」

芸人「大将さんだいぶあがってるけど、大丈夫?」

梅原「だ、大丈夫です!」

香苗(全然大丈夫に見えないけど…)

香苗「えっと、とりあえずどうぞ、お席の方に」

俳優「お二人はリホさんとはいつからのお知り合いなんですか?」

香苗「私は高校からなんですけど、まさ君の方は小学校からです」

俳優「へえ、じゃあ大将さんってリホさんのことだいぶ詳しいんじゃないですか」

梅原「ま、まあ…他の人よりはちょっと知ってるかもしれないですけど…」

梅原「俺は桜井さんの幼馴染に聞いたことが多いんですよ」

梅原「美也ちゃんの兄なんですけどね」

梅原「たぶん高校までの桜井さんのことなら一番よく知ってるはずですよ」

桜井「う、梅原君、今日純一はいないから、あまり純一の話は…」

梅原「あ…ご、ごめんなさい」

俳優「ふむ…」

―――――――

橘「結局美也の言ってたことって何だったんだろうな」

後輩「さぁ…」

橘「とりあえず梅原の寿司でも持って行けば、もし機嫌が悪くても良くなるだろ」

後輩「そんな簡単に行きますかね…」

橘「美也は単純だからな」

橘「肉まんか寿司で大丈夫なはずだ」

後輩「ん?」

橘「あれ?」

後輩「カメラ…」

橘「梅原のところにもついに取材が来たか」

芸人「いや~おいしかったね」

俳優「さすがグルメのリホさんがお気に入りなだけありますね」

桜井「えへへ」

橘「!」

後輩「先輩、あれって…」

美也「あっ!」

桜井「わわっ、どうしたの美也ちゃん」

美也「二人ともなんでここに」

橘「み、美也まで…」

桜井「純一…」

俳優「あれ、二人のお知り合いですか?」

美也「兄と夫です」

俳優「あっ、リホさんのことをよく知ってるっていうお兄さんですか」

芸人「もう撮影終わっちゃったけど、どうします?」

俳優「そもそもお兄さんを映していいかわかりませんよ」

美也「お兄ちゃん、映していいでしょ!」

橘「…や、やだ」

俳優「だめみたいですね」

芸人「じゃあこのままで終わりでいいか」

桜井「……」

美也「にぃにの仕事ってゴルフだったんだー…」

橘「こ、これも仕事なんだよ」

橘「美也に何しに行くか言ってなかったのか?」

後輩「ゴルフには行くって言いました」

橘「僕も行くとは言った?」

後輩「えっと…」

美也「聞いてないよ」

後輩「言ってないみたいっす」

美也「あっ、そんなことはもういいや」

美也「にぃに、こっち!」ガシッ

橘「な、なんだよ、にぃにって言うな」

美也「りほちゃーん!待ってー!」

橘「なっ…」

桜井「美也ちゃん?」

橘「……」

美也「ちょっと時間いいよね?」

桜井「…うん、いいよ」

美也「じゃあにぃに、りほちゃんと話すこといっぱいあるでしょ」

橘「決めつけるなよ…」

美也「じゃありほちゃんばいばい!」

美也「これからも応援してるからね!」

桜井「えっ、美也ちゃん帰っちゃうの?」

美也「うん、にぃにと二人っきりで話したいこともあるでしょ」

桜井「う…うん…でも…」

美也「みゃーももっとりほちゃんと話したいけど迎えが来たから」

橘「おい、迎えって…あいつの車に僕の荷物も置きっぱなしなんだが」

美也「そんなものまた今度持って行かせるよ」

橘「はぁ…美也のやつ…」

橘「……」

桜井「……」

橘「…ひ、久しぶり…だな」

桜井「うん」

橘「桜井リホ…がんばってるな、毎日のようにテレビに出てるらしいじゃないか」

橘「毎日忙しいだろ?」

桜井「少し…でも、ちゃんと休めてるし、充実してるよ」

橘「そうか、元気そうでよかった」

桜井「あの…純一はその…見て、くれてる…?」

橘「ごめん、テレビ自体最近あまり見てなくて」

桜井「そうなんだ…」

橘「あっ、いや…でも美也はよく見てるらしいぞ」

橘「一番好きな芸能人も梨穂…桜井リホだそうだ」

香苗「あの二人何やってんのかね」

梅原「久しぶりの再会だってのに、暗い雰囲気だな」

香苗「両想いのくせに、高校のときからちっとも進歩してないじゃない」

香苗「むしろ悪くなってるかもね」

香苗「桜井の作戦失敗してんじゃないの?」

梅原「えっ?作戦って?」

香苗「あれ、まさ君知らなかったっけ?」

――

香苗「…ってことらしいよ」

香苗「あまり橘君に効果はなかったみたいだけど」

香苗「あの子けっこう頑張り屋でしょ」

香苗「橘君に効果がないのはまだ自分が全然有名じゃないからだって思って…」

香苗「その結果、現在に至るってね」

梅原「……」

梅原「まじか…」

梅原「俺が大将にいろいろ言わなかったら、こうはならなかったかも…」

香苗「…ちょっと手伝ってあげるか」

梅原「そうだな」

香苗「そこのお二人さん、店の前で突っ立ってないで、入ったらどう?」

桜井「香苗ちゃん…」

橘「い、いや…僕は明日も仕事があるから…もう帰るよ」

桜井「あ…」

桜井「……」

香苗「ご、ごめん桜井…良かれと思って声をかけたんだけど…」

桜井「ううん、ありがと香苗ちゃん…」

桜井「私もそろそろ帰るよ、また来るね」

香苗「う、うん…」

桜井「……」

ピッピー

マネ「リホ、こっちこっち」

桜井「あれ…待っててくれたんですか?」

マネ「うん」

マネ「送るわ、乗りなさい」

桜井「ありがとうございます」

マネ「何か話せた?」

桜井「…いえ、挨拶程度で」

マネ「…そう」

マネ「もしかしてこの世界に入ったこと後悔してる?」

桜井「……」

マネ「自分の考えてたことと真逆になってるもんね」

マネ「あの子もけっこう鈍感だと思ってたけど…」

マネ「ここまで上手くいかないとはね」

マネ「ねえ、リホ」

桜井「……」

マネ「リホ?」

桜井「ぐー…」

マネ「……」

マネ「朝早かったからね…」

数週間後

マネ「来月の予定はギチギチに入ってるけど、今週はけっこう余裕があるわね」

桜井「あ、ほんとですね」

桜井「そうだ、香苗ちゃんのところに行こう!」

マネ「ほんと食べ物好きね」

桜井「違いますよー!香苗ちゃんに会いに行くんです」

マネ「じゃあお寿司は食べないの?」

桜井「食べます…」

マネ「食べ過ぎないようにね」

翌日 東寿司

桜井「んー!おいしー!」

香苗「よく食べるわねー」

香苗「せっかく痩せたって言ってたのに」

桜井「だいじょーぶ、だいじょうぶ」

桜井「ちゃんと運動してるもん」

ガラガラ

梅原「へい、らっしゃいっ!」

香苗「いらっしゃいませー」

橘「よっ」

梅原「お…おう、大将か…」

橘「なんだよ、その反応は」

梅原「いや…」

香苗「こ、ここしか空いてないな」

梅原「今日は一人なのか?」

橘「うん」

梅原「ちょうどだな…」

香苗「いいんだか、悪いんだか…」

橘「どうしたんだ?」

香苗「…こ、こちらどうぞ」

橘「よいしょっと」

コツッ

橘「あ、すいませ…」

橘「りっ…」

橘(わざわざ変装してるのに名前を言っちゃ悪いか…)

橘「…珍しいな」

桜井「そ、そうかな…」

桜井「純一はよく来てるの?」

橘「まあ…な」

――――――

桜井「……」うとうと

橘「おーい」とんとん

桜井「はっ…」

橘「眠いのか?」

橘「食べてる途中に寝そうになるなんて、よっぽどなんだな」

香苗「この子のことだから帰ってる途中に道端で寝ちゃうかもしれないから、橘君送ってあげなよ」

橘「ええっ…」

橘「…仕方ない、その辺で寝られるよりマシか」

橘「今どこに住んでるんだ?」

――――――

橘「おーい、ついたぞ」

桜井「すやすや…」

橘「……」

橘(部屋の場所は教えてもらったし、おぶっていくか…)

橘「……」

橘(梨穂子をか…)

橘「……」ごそごそ

橘「よいしょっと」

橘「……」

橘「あれ?」

橘「重くない…」

橘「……」

橘「でも感触はいいな…」

橘「ここか」

ガチャ

橘「お…おじゃましまーす…」

橘「……」

橘「いいところに住んでるな…」

橘「部屋もきれいだし」

橘「あっ、この写真子どものときの…」

橘「……」

橘「っとそんなことしに来たんじゃなかった」

橘「ベッドは…」

橘「……」

橘「さすがに寝室に入るのはやめた方がいいか」

橘「じゃあここのソファに寝かせて」

桜井「すー…すー…」

橘「…梨穂子」

橘「じゃあな…」

橘「……」

橘「僕がこのまま帰ったら鍵をかけられないじゃないか」

橘「おい、梨穂子起きろ」

橘「梨穂子ってば」

桜井(ん…誰だろ…)

桜井(誰かが私を呼んでる)

桜井(梨穂子って呼んでる…)

桜井(リホじゃなくて梨穂子…)

桜井(そう呼ぶのは一人だけ…ずっと前から私が好きな人…)

桜井(……)

桜井(夢か…)

桜井(そうだよね、こんなところにあの人がいるわけないよ)

桜井(でもせっかく夢の中に出てきてくれたのなら、せめて夢の中でだけでも伝えたいな)

橘「おーい」ゆさゆさ

桜井「うーん…」

桜井「じゅんいちー…」

橘「?」

桜井「ずっと…いまでもすきだよ…」

橘「!?」

橘「お、おい…梨穂子…」

桜井「ん…」

桜井「……」むくっ

橘「や、やっと起きたか…」

桜井「じゅんいち…?」

桜井「さっきより近くてはっきり見える…」

桜井「ふふっ」ガバッ

橘「!?…ちょっ…り…」

ドスーン

橘「いてて…」

桜井「いったーい…」

桜井「うう…せっかくの夢だったのに…」

橘「飛びついてくるなんて、どんな夢みてたんだ…」

桜井「わわわっ!純一!」

桜井「……」

桜井「……」ぎににっ

桜井「痛い…夢じゃない…」

橘「ああ、現実だ、だから今僕は上にのしかかられて苦しい」

桜井「あっ!ご、ごめん!」

橘「はぁ…」

橘(ああ言ったけど、これもいい感触だった)

桜井「どうして純一がここにいるの?」

桜井「……」キョロキョロ

桜井「ここ、私の部屋だよ…ね?」

橘「ああ、そうだよ」

橘「梅原の寿司屋で寝そうになってたから送ってやったんだよ」

橘「覚えてないのか?」

桜井「……」

桜井「思い出した」

桜井「ありがとうね純一」

橘「さて、起きたのなら帰るよ」

橘「ちゃんと戸締りしろよ」

桜井「あっ待って」

桜井「お礼にお茶だけでも」タッタッタ

橘「いいよ、そんな…」

桜井「わっ!」どてっ

橘「おいおい大丈夫か?」

橘「ほら、手かしてやるから」

桜井「ありがと~」

桜井「よいしょっと…」

桜井「えへへ…まさか自分の部屋でこけちゃうなんて」

橘「……」

橘「梨穂子はかわいいなあ…」ぼそっ

桜井「え?何か言った?」

橘(し、しまった…つい…)

橘「いや、なんでもない…」

橘「それよりその、さっき…」

橘「あ……いや、なんでもない」

桜井「なんなのさー」

桜井「…じゃあ私からいいかな」

橘「なんだ?」

桜井「さっき私が寝てる間に何か言ってなかった…?」

橘「…いや、特には」

橘「何か聞かれたらマズいことでもあるのか?」

桜井「ううん、でもよかった、直接あなたに言いたいことだったから」

橘「え…」

数日後

後輩「先輩!この雑誌見ました?」

橘「なんだよ、始業前のコーヒーの時間を邪魔するなよ」

後輩「あ、すいません…」

後輩「で、これ見ました?」

橘「いや、見てないけど」ズズッ

後輩「このページ見てほしいんですけど」

橘「どれどれ」

橘「ぶばっ!」

後輩「うわっ!?」

後輩「ちょ、ちょっと先輩…」

橘「す、すまん…」

後輩「自分で掃除してくださいよ」

橘「うん…」

橘「……」

橘(桜井リホおんぶされながら自宅へ、一般人男性と一緒に、か」

橘(これって…)

後輩「これって先輩っすか?」

橘「な、なんでだよ…」

後輩「この写真のカバン、先輩のやつと同じじゃないっすか」

橘「た、たまたま…だろ」

後輩「何を話したんすか?」

橘「何って…」

橘(あれは話したじゃないけど…)

橘(夢の中で言ってたから違うよな…)

橘(でも夢の中とはいえ…僕に言ってたんだよな…)

橘(まさか梨穂子も…)

橘(いやいや、今はそのことじゃなくて…あれは夢の中に対してだから)

後輩「先輩?」

橘「ノーカウントだ」

後輩「何が?」

後輩「まあよくわかんないことは置いといて、ついに進展したんすね先輩」

橘「何もしてないよ、ただ家まで送っただけだ」

後輩「ええっ、何もしてないんすか!?」

橘「当たり前だろ、なんで何かすると思うんだよ」

後輩「…先輩、そんな悠長でいいんすか?」

橘「何が悠長なんだよ」

後輩「だって、桜井リホってすごい可愛いじゃないですか、性格もいいし」

後輩「他の芸能人に取られちゃうって可能性があるんすよ」

橘「べ…別にそれは梨穂子が決めることなんだから、僕に関係ないだろ」

橘(梨穂子が他の誰かとか…)

橘(そんなこと今まで考えたこともなかったな)

橘(梨穂子のことを改めて意識してしまったからか…?)

橘(僕はどうしたいんだ…)

橘(梨穂子とどうなりたいんだろ…)

橘(梨穂子は今や誰もが知ってるような有名人だ)

橘(僕なんかが想いを伝えてしまっていいのだろうか…)

橘(芸能界なんか僕よりもいい人なんかごまんといる)

橘(あの時の好きは…ただ友人としての好きなんじゃないだろうか…)

橘(もし…伝えることができたら…何て言うんだろ…)

橘「……」

橘(いや…違うな…)

橘(そんなはずない、僕は梨穂子と関わるべきじゃないんだ)

橘(僕なんかといたら梨穂子に悪影響が出るだけだ)

橘(この雑誌の写真だって、迷惑に思ってるに違いない)

橘(好きだってのは本当だ…)

橘(だからこそ…梨穂子のために、もう忘れよう…)

橘(他の誰かに取られる…それでいいじゃないか)

橘(……)

橘(でも、最後に一度だけ会いたいな…)

後輩「先輩?おーい」

橘「はっ…な、なんだ?」

後輩「いや、なんかだんだん悲しそうな顔になっていったから」

――――――

マネ「ふーん、よく撮れてるわね」

マネ「彼の顔はよく見えないから記者側にとってはイマイチかもしれないけど、リホはバッチリ写ってるわね」

マネ「これを見た彼はどんな反応するのかしら」

桜井「もう、そんな笑わうことじゃないですよー」

マネ「そうね、これから大変になるわ」

マネ「ちょっとは彼との距離近づいた?」

桜井「うーん…」

マネ「…その様子じゃあまり肝心なことは話せてないようね」

――――――

桜井「はぁ…」

俳優「珍しいね、リホさんが全然食べないなんて」

俳優「もしかしてこれが原因?」

桜井「わわっ、見たんですか!?」

俳優「テレビとかでもやってるしね」

桜井「うう…そうなんですか…」

俳優「自宅の前でおんぶさせるなんてリホさん大胆だね」

桜井「こ、これは寝ちゃって純一が勝手に…」

俳優「純一…?」

俳優「ああ、リホさんの幼馴染の好きだって言ってた人か」

桜井「ええっ!そ、そんなこと私言いました!?」

俳優「リホさん、個室とはいえ、お店ではもう少し静かに」

桜井「す…すみません…」

俳優「でもその反応は当たってたんだ」

桜井「…もしかして適当に言っただけ…なんですか?」

俳優「うん」

桜井「ひどいですよ~」

俳優「それで何をしたの?」

桜井「何もしてませんよー」

俳優「何も?」

桜井「はい」

俳優「若い男女が一つ屋根の下で、しかもリホさんは寝てたんでしょ」

俳優「その人もリホさんのことが好きなんだし…」

俳優「何もないわけないと思うけどな…」

桜井「ほんとに何もありませんでしたよ」

俳優「……」

俳優「ダメよリホちゃん!相手は相当な奥手なんでしょ!」

俳優「せっかく自宅に連れ込めたのに、なんにもしないなんて!」

俳優「このままだといつまでたっても進展なんてありえないわよ!」

桜井「ちょ、ちょっと…素が出てますよ…」

俳優「あら、あたしったら…」

俳優「おほんっ…」

俳優「俺はリホさんの友人として、ファンとして、リホさんには幸せになってほしい」

俳優「お互いずっと好きなんでしょ、あとおもしろそうだし」

桜井「私本気で悩んでるんですよー!」

俳優「はは、ごめんごめん」

俳優「じゃあお詫びに俺からアドバイス…というか体験談というか…」

俳優「時間が空きすぎると想いは伝わらないよ、後悔した時はもう遅いってね」

桜井「……」

―――――――――――――

プルルルルル

橘「?」

橘「誰だろう、知らない番号だ」

橘「はい、もしもし、橘ですけど」

桜井「も…もしもし、さ、桜井です」

橘「梨穂子…?」

橘「…どうしたんだ?」

桜井「直接会って話たいことがあるの」

桜井「空いてる日ってあるかな…」

橘「僕はけっこう暇があるけど、そっちは空いてる日は限られてるだろ、そっちに合わせるよ」

桜井「じゃあ明日の夜はどうかな…急だけど」

橘「わかった」

翌日

マネ「お疲れさまリホ」

マネ「早速だけど明日は昼と夜にバラエティ番組があるから」

マネ「連絡終わり」

桜井「み、短いですね…」

マネ「急いでるんでしょ、わかるわよ」

マネ「行くのね…」

桜井「はい」

マネ「がんばって…といいたいけど、私もがんばらないけないのよね」

マネ「成功したらマスコミとかいろんなとこへの対応しないと…」

桜井「あはは…」

マネ「ま、わかっててリホのマネージャーしてたんだけどね」

マネ「行ってらっしゃい」

桜井「…高橋先生、後を頼みます」

マネ「はーい、橘君によろしくね、桜井さん」

―――――――

桜井「お…お待たせ~…」

橘「いや、僕も今来たところだから」

桜井「その…純一…」

橘「待ってくれ、先に僕からいいかな」

桜井「?」

橘「僕は高校のときまでの梨穂子のことしか知らない」

橘「だから桜井リホとして活動したことはよくわからないんだ」

橘「僕の知らない梨穂子がいて、昔の思い出とか…僕のことなんかもう覚えてないんじゃないかって考えちゃって…」

橘「僕の好きな梨穂子はもういない…なんて思っちゃって…」

橘「変わった…いや、僕の知らない姿を見たくないって…」

橘「はは…幼馴染がいつまでも変わらないなんて夢みてるんだ…」

橘「…僕のこと嫌いになっただろ、こんなこと考えてるやつなんて」

橘「あの雑誌の写真も迷惑かけたな…」

橘「こんなとこも写真撮られたりしたら、また迷惑をかけてしまう」

橘「だからもう…」

橘「ごめんな梨穂子、さよな…むぐっ!?」

桜井「…なんで…そんなこと言うの…?」

桜井「私は…私はずっとあなたのことが好きだったの」

桜井「私はあなたのことをずっと見てた、でも私だって高校までの純一しか知らない」

桜井「子どもの時から今まで、純一とはいろいろなことはあったけど、一度も純一のことを迷惑だなんて思ったことはない」

桜井「それに…」

橘「んっ!んんっ!」ぺちぺち

桜井「あっ!、ご、ごめんなさい!」

橘「ぷはっ…は…鼻ごとふさぐ必要はないだろ…」

橘「い、いいか梨穂子…僕なりに考えたことなんだけど、その方が梨穂子にとっていいはずなんだ」

桜井「…桜井リホが嫌なのなら、私引退する」

橘「なっ…なに言ってんだよ」

桜井「だって純一に見てもらうためにアイドルになって、女優になったんだもん」

橘「えっ…」

桜井「変わらなきゃ、あなたには注目してもらえないって思ってたから…」

桜井「ちゃんと話せればよかったんだけれどね」

橘「そうだったのか…」

橘「ごめん、気づかなくて…」

桜井「ううん、言わなかった私も悪いから」

橘「……」

桜井「……」

橘「……」

桜井「……」

橘「梨穂子」

桜井「純一」

二人「あっ…」

桜井「ど、どうしたの?」

橘「梨穂子こそ…」

桜井「……」

橘「……」

橘(って譲ろうとしてどうするんだ、僕が言わなきゃだめなんだ)

橘「梨穂子…一度画面越しで言ったことあったな」

橘「あれは僕が酔って言ったことだけど」

桜井「うん、覚えてる」

橘「実は一つだけ嘘を言ってたんだ」

桜井「嘘…?」

橘「覚えてくれるだけで十分なんて言ってたけど、本当はこうしてそばにいてほしい」

橘「こんなこと誰にも言ったことないから上手く言えなくて悪いけど…」

橘「梨穂子、大好きだ!だから僕と…」

ギュッ

橘「わっ」

桜井「ずっと…待ってたよ、その言葉…」

橘「まったく…あわてんぼうだな、梨穂子は…」

橘「こういう時の言葉ぐらい最後までちゃんと聞くもんだろ」

桜井「ごめんね…うれしくて、つい…」

橘「変わったなんて…僕の思い違いだったな…」

橘「梨穂子はいつまでたっても梨穂子だな」

桜井「当たり前だよ、純一もいつまでたっても純一だよ」

二年後

橘「どのニュース番組でもやってるな」

橘「おっ、Yah●●!ニュースにも書いてあるよ」

橘「桜井リホ結婚だって」

梨穂子「も~、純一!早く食べないとごはん冷めちゃうぞー!」

橘「梨穂子こそ、そんなゆっくりしてていいのか?」

橘「今日は昼前からの撮影だって言ってたじゃないか」

梨穂子「あっ!いっけない!」

梨穂子「遅刻遅刻!」

橘「あっ走ると危ないぞ」

梨穂子「わっ!」

橘「よっと」ガシッ

梨穂子「ふぅ~、危機一髪だよ」

梨穂子「ありがとう、純一」チュッ

橘「どういたしまして」

橘「気をつけろよな、自宅で転びそうになる女優なんて梨穂子ぐらいだぞ」

梨穂子「えへへ…そうだねー」

梨穂子「もう私だけの体じゃないから気をつけないと」

橘「僕は心配でしょうがないよ…」

梨穂子「そうだね、この子もビックリしちゃうよ」

橘「そうそう…えっ?この子?」

梨穂子「あれ?昨日言わなかった?あなたの子だよ」

終わり


もう少し食べ物の話入れた方がよかったかな
あと途中で話を少し変えたので、違和感があるかもしれないです

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