【ガルパン×馬車馬戦記】知波単Strikes・Back! (12)

※元ネタは馬車馬戦記の第22話、「チハStrikes・Back!」です。

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~1950年~

 昭和25年、朝鮮戦争が始まった。北朝鮮軍が38度線を越えたのだ。これにより、日本を占領していた米軍は朝鮮半島へと移動する。
そしてダグラス・マッカーサーは考えた。日本は西側の一員として再軍備するべきであると。
 この年の8月、警察予備隊が編成された。皆さんも知っての通り、後の自衛隊である。

 この知らせを期待を持って受け止めた人物がいた。鉄人都市工業、中臣鉄人である。鉄人都市工業は戦時中、
トラックなどの軍用車両の生産の下請けをやっていた小さな自動車会社である。戦後はスクーターの生産などを
手掛けていたが、今ひとつ経営は思わしくなかった。
 そこへこの警察予備隊発足の知らせである。これだ!軍需産業、もとい防衛産業なら親方日の丸!食い込むの
ならば、早ければ早いほど良い!善は急げ!だが、何を作ろう?まさかスクーターは採用してくれないだろうし…

 そこで中臣社長は思い出した。わが社には97式中戦車・チハがあるじゃないか!そう、工場に1輌、
戦後払い下げられたチハがあったのだ。勿論武装は無い。砲塔と機銃を取り外し、トラクターとして使わ
れていたのである。これをベースに新しい戦車を作ってみようじゃないか。そして政府に売り込むのだ。
 ベースがチハなら、その扱いに慣れた元戦車兵や技術者も多いだろうし、トラクターやブルドーザーと
して多数のチハが民間に払い下げられているので部品の調達も容易だろう。これは大きなアドバンテージ
になる筈だ。じゃあ早速作ってみよう、なあに、新しい砲塔を載せればいいだけじゃないか。

 …ところが、これが中臣社長が思っているほど簡単ではなかった。チハというのは重量15・5トン、
そんなに大きな車輌ではない。大体、チハをベースに簡単に強い戦車が作れるなら、旧軍がとっくの昔に
やっている筈だ。
 いろいろと考えた末にできたのが、この鉄人都市工業試製1号戦車である。オープントップの旋回砲塔に
75mm無反動砲を4連装にして搭載した対戦車自走無反動砲だ(本物の無反動砲は手に入らないのでモック
アップだった)。設計思想は後の戦後初の国産AFV、60式自走無反動砲に似ていなくもない。

 ところで、中臣社長には友人がいた。渦槙氏という人物で、戦時中は陸軍士官としてドイツに行ったりしていたらしい。
今は政府の中枢ともコネを持つ、いささか胡散臭い山師的人物である。渦槙氏は試製1号戦車を一目見るや、クソミソに
こきおろした。

「これでは戦争にならんよ。ロシア人はIS-Ⅲというどえらい戦車を持っておって、やがて我々はそれと戦わねばならんのだよ。
 わかるかねチミィ」

 しかし中臣社長、スターリンⅢと殴り合う自信のある戦車など作れようもない。そうこぼすと、渦槙氏はうなづいて言った。

「まかせたまえボクに。ちょっとした掘り出し物を手に入れてあるのだよ。これならスターリン如き、一撃でバラバラだよ。
 わかるかねチミィ」

 渦槙氏の協力のもと、完成したのがこれ、鉄人都市工業試製2号戦車、『ふじ』である。渦槙氏の言う「掘り出し物」
とは、この主砲であった。大戦中にドイツが開発した口径128mmの怪物対戦車砲、Pak44である。ヤークトティーガー
やマウスの主砲にも使われたこの大砲、それだけで10トン以上もあったりする大物だ。勿論チハに旋回砲塔で載せられる
わけがない。固定式の戦闘室装備とされ、レイアウト的には真っ当な対戦車自走砲となった。
 しかし、砲だけで重さ10トンである。更に砲身長は6m以上である。まさに積んでみたはいいが、それだけの車輌であった。
げに恐ろしきは素人の実行力である。嗚呼…。

 前面装甲厚は最大で80mm、25mmしかなかったチハの3倍以上である。10トン以上の主砲に加えてこの
装甲だ、相当にバランスが悪かった筈だ。
 中臣社長は自信満々でこれを公開した。政府の担当者たちはあっけに取られてこの化け物を見た。しかし、まあ
なんだか強そうではあるし、待ち伏せに特化した突撃砲というのも専守防衛を旨とする警察予備隊に合って世論にも
良さげかもしれない。なによりせっかく作ったのだからテストしてみようという運びになった。まずはめでたし。
 この時、『ふじ』を見た米軍の将校は一人冷静に「狂気の産物だ」とコメントしたというが。

~現代~

絹代「諸君!夏の大会で我々に足りなかったものは何だと思う!」

玉田「精神力であります!」

細見「右に同じであります!」

絹代「まあ待て、精神力で勝てるならとっくに我々が優勝している筈だ。我々足りないもの、それは…」

一同「そ…それは…」

絹代「装甲と火力だ!」

一同「 」

福田「西隊長…、今更それを言いますか…?」

細見「身も蓋もありませんな…」

玉田「仰る通りであると思いますが、そこを是正するとなると、それこそチハにこだわる我が校の伝統をないがしろにするのでは…」

絹代「安心しろ!1輌だけだがそこのところを考慮した新兵器を用意をしてあるのだ!チハを元に作られた幻の最強戦車、試製重駆逐戦車、『ふじ』だ!」

福田「おおっ!これはすごいであります!」

細見「勝てる!これなら勝てる!」

絹代「ふっふっふ、(番茶の入った湯呑を片手に)こんな言葉をご存知かしら?『神は在る、装甲車(タンク)と走る。神は在る、砲弾と炸裂する』」

福田「北原白秋の『鋼鉄風景』ですな」

細見「西隊長、ダージリン殿と交際するようになってから変わったなあ…」

玉田「すっかり感化されちゃって…」

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