老母「私の寿命もこれまでだねえ……」息子「やべえ、年金貰えなくなっちゃう!」 (21)

老母「ゴホッ、ゴホッ……」

息子「しっかりして、母さん!」

老母「いつも迷惑かけて、すまないねえ……」

息子「それはいわない約束だろ、母さん」

老母「だけど、いよいよ私の寿命もこれまでみたいだねえ……」

息子「そんなことないって……」

息子(やべえ、母さんが死んだら年金貰えなくなっちゃう!)

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息子「母さん!」ガシッ

老母「!」

息子「母さんを死なせはしない!」

息子「絶対……絶対長生きさせるからね!」キラキラ…

老母(なんて純粋で澄んだ瞳だろうねえ……私は幸せ者だよ……)

息子「はい母さん、最高級サプリメントだよ」

老母「ありがとうねえ」

息子「あと、これは希少な薬草、よく効く漢方薬、青汁や養命酒もあるよ!」

息子「まだまだあるから、たくさん飲んで食べてね~!」

老母「お前は本当に親孝行な息子だねえ……」

息子「俺はただ、母さんに長生きして欲しいだけさ」

息子「いかがでしょう?」

医者「厳しい状況です……もってあと数ヶ月かと」

息子(くそっ、年金を貰う為に、母さんにはまだまだ生きてもらわなくちゃならないのに!)

息子「お願いします! 母さんを延命させて下さい!」

医者「しかし、これ以上はお母様の苦しみが増すばかりですよ?」

息子「分かってます……。だけど、だけどっ……!」

息子「俺にはどうしても……母さんが必要なんですっ……!」

医者「分かりました……やってみましょう!」

息子(全身、点滴やチューブだらけにして、どうにか延命できた……)

息子(医学の進歩ってすごい!)

老母「ここまでしてもらって、ありがとうねえ……」シュコーシュコー…

息子「いいんだよ、母さん」

老母「だけど、こんな姿で生き長らえてもみっともない気もするけど……」シュコーシュコー…

息子「なにいってんだい! 母さんは世界一立派だよ!」

息子(俺に年金という名の収入を提供してくれてるんだから!)

息子「母さんの具合は?」

医者「あらゆる延命措置を施しましたが、やはり肉体の衰えが……」

医者「このままでは……時間の問題でしょう」

息子「ようするに、肉体が老いるのを食い止めればいいわけですね?」

医者「そうなりますが……」

息子「こうなったら、母さんの体を機械化してやる!」

医者「ええ!?」

息子「人間を機械化する技術をマスターしてやるぅ!」

老母「体を機械にしてもらって、ありがとうねえ」ウイーン…

息子「いいんだよ、これくらい」

老母「おかげで、生身の肉体じゃできなかったことができるようになったよ」

老母「ほら、マシンハンドでリンゴを潰せるように……」グシャッ

息子「長生きしてよ、母さん」

老母「もちろんだよ」

息子(よし……これでまだまだ年金を貰える!)

医者「肉体は機械化しましたが、肝心の脳が委縮してきているようです」

医者「このままでは……」

息子「こうなったら母さんの脳を取り出して」

息子「細胞を活性化させる液体に満たされたカプセルに、浸けるしかない!」

医者「そ、そこまでやるんですか……」

息子「当然です! 母さんのためなんだから!」

息子(年金のためなんだから!)

コポコポコポ…

息子「気分はどうだい?」

老母「うん、とても気持ちがいいよ」コポコポコポ…

老母「肉体がなくなったおかげで、全身が軽やかになったよ」コポコポコポ…

老母「だけど、こんな姿……みっともなくないかい?」コポコポコポ…

息子「ノー! 脳だけになった母さん、無駄がなくってとってもキレイだよ!」

老母「そういってもらえると嬉しいねえ……」コポコポコポ…

息子「……!」カタカタッターン

息子「ダメだ! 脳波や脳圧が乱れてる! 脳も劣化してきた!」

息子「いくら薬剤で脳をカバーしても、やはり時の流れを完全に止めることは不可能か!」

医者「ど、どうしましょう!?」

息子「最後の手段だ……母さんの頭脳を電子化するしかない!」

医者「そんなこと可能なんですか!?」

息子「出来る出来ないじゃない……やるんだ!」

息子「おはよう、母さん」

老母「おはよう」

老母「だいぶ頭がスッキリしたよ」

息子「母さんの頭脳を100%電子化して、スーパーコンピュータを組み込んだからね」

息子「今の母さんは、地球上の誰よりも賢いし、計算も早いはずさ」

老母「しかも、ちょいと念じるだけでネット接続できて、快適だねえ」

息子「長生きしてよ、母さん」

老母「ところで、ちょいとしたアイディアを思いついたんだけど……」

息子「?」

パシャッ パシャシャッ パシャッ

記者「このたびはノーベル賞受賞おめでとうございます」

記者「いやー、素晴らしい発見をされましたね」

息子「全て、母さんの言う通りにしただけです」

息子「母さんの組み立てた理論通りにやったら、この功績を残せたというわけで……」

記者「ところで、今後の予定は?」

息子「母さんを延命させることだけしか考えてません」

記者「今回の功績に付随する、報酬の類を全て断った理由はなぜでしょうか?」

息子「興味がないんです」

息子「俺にとって大切なのは母さん――」

息子(――と、その年金)

息子「だけですから!」

記者「……」

記者「それにしても、いくら愛してる母親だからといって、ここまでやるかねえ……」

記者「母親も母親だ、コンピュータにされてもまだ息子を愛していやがる」

記者「まったく二人とも……大した“マザコン”だよ」








<終わり>

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