魔法使い「魔王の瞳に恋してる」 (30)

勇者「は?」

魔法使い「どうやら、私は魔王に恋をしてしまったみたい」

勇者「あー・・・どうした?酒場とはいえ、飲み過ぎてないか?」

魔法使い「まだシラフらぜぇ」

勇者「だめだこりゃ」

魔法使い「魔王と私、お似合いのカップルだと思わない?」

勇者「顔を紫色に塗ってみたら?」

魔法使い「真面目な話をしてるのよ」

勇者「まじかぁ」

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勇者「で、なんで魔王が好きなの?」

魔法使い「あの方の勇敢さと悲しみ溢れる優しさに入り混じった絶望の中に潜む喜び故の愛に惹かれたのよ」

勇者「プラマイゼロになりそうな愛だな」

勇者「何がどうなればあいつが優しいだの臭いだのって話になるんだ」

魔法使い「臭くないわよ!!!!!!!!!」

勇者「うぉ、いきなりテンションあげんなよ」

魔法使い「あやまれーーーー!!!!あやまれーーー!!!!」

勇者「ちょ、落ち着けって、悪かったよ」

魔法使い「嗅いだコトがあるの!!!!教えなさいよ!!!!」

勇者「ないよ、ごめんねぇ」


魔法使い「あなたは分かってない、あの人の勇敢さと悲しみ溢れる優し」

勇者「なんでその良いとこどりの愛を魔王から感じるのよ」

魔法使い「私には分かるのよ、あの人の勇敢さと悲し」

勇者「だからなんで分かるのかって」

魔法使い「・・・見たのよ」

勇者「何を」

魔法使い「あの人の勇敢さと悲しみ溢れる優しさに入り混じった絶望の中に潜む喜び故の愛を」

勇者「よく噛まねぇな」

魔法使い「あれは一ヶ月前の事だったわ」

勇者「なんか楽しくなってきた」


魔法使い「私、誰もいない野原で寝転びながらスルメを食べるのにはまってて」

勇者「おしゃピクってやつか」

魔法使い「でも虫は嫌いだから、魔除けの結界を張りながら寝転んでるの」

勇者「それって虫も除けれるの?」

魔法使い「・・・除けれないの?」

勇者「さぁ」

魔法使い「だからいつも蚊に食われるのね、私」

勇者「キンカン塗っとけ」


魔法使い「とにかく寝転んでたのよ、そしたら現れたの」

勇者「・・・魔王が?」

魔法使い「ゲンゴロウさんよ」

勇者「誰だよ」

魔法使い「知らないの?よく赤みがかった顔で城下町の隅で寝てる人よ」

勇者「えぇ・・・」

魔法使い「飲み仲間なの」

勇者「ひぇー」


魔法使い「良い人よ?その時も鬼ころしという名前のお酒をくれたわ」

勇者「なんか強そうなお酒だな」

魔法使い「でしょ?飲みやすくて美味しいのよ」

勇者「ゲンゴロウ良い奴かも」

魔法使い「昔、バーで盗み飲んでから好きになったお酒だって」

魔法使い「ニターって笑いながら教えてくれたわ」

勇者「クソ野郎だった」


魔法使い「そのまま暫く一緒に飲んでたんだけど」

魔法使い「突然、ゲンゴロウさんが言うのよ」

魔法使い「魔王に会った事があるって」

勇者「ほう」

魔法使い「どこでって聞いたのよ、私」

魔法使い「そしたらゲンゴロウさん、なんて言ったと思う?」

勇者「・・・」ゴクリ

魔法使い「覚えてねぇよ、ガハハハ!って」

勇者「腹立つな、ゲンゴロウ」


魔法使い「でしょ?私も頭きちゃって」

魔法使い「杖で頭殴っちゃったわ」

勇者「こえぇなお前」

勇者「だから杖がちょっと赤く染まってるのか」

魔法使い「えへへ」

勇者「ゲンゴロウ、大丈夫かよ」

魔法使い「最近見ないけど、大丈夫じゃない?」

勇者「鬼ころし飲んでるくらいだし大丈夫か」


勇者「で、話は終わりか」

魔法使い「そんなわけないでしょ」

魔法使い「その後も気持ちの収まりがつかないから、会いにいったの」

勇者「誰に?」

魔法使い「魔王に」

勇者「えー」

勇者「でも魔王に会うためには、高レベルな魔物だらけの地獄の洞窟を抜けなきゃいけないんじゃ」

勇者「そのために俺たちは日々修行してるわけだし」

魔法使い「鬼ころしを飲んだ後だから、魔物が近づいてこなくて余裕だったわ」

勇者「鬼ころしすげー」


魔法使い「そして、魔王との運命の出会いが訪れたの」

魔法使い「彼を見た瞬間、ビビッと来たわ」

魔法使い「そして急に胸が苦しくなって」

魔法使い「立っていられなくなったの」

勇者「こわかったんじゃね?」

魔法使い「そしたらあの方が」

魔法使い「小娘よ、よく来たのぅ!!って真っ白な歯を見せながら笑顔で言うの」

魔法使い「突然の訪問なのに快く歓迎して下さったの」

魔法使い「懐の広さに驚いたわ」

勇者「モツ煮がうめぇよこの店」


勇者「それで、茶のひとつでも出てきたのか?」

魔法使い「私、初めての気持ちに混乱してて」

魔法使い「何が目的よ!!!って叫んでしまったの」

勇者「ヒステリックだな」

魔法使い「そしたらね」

魔法使い「ヌシこそ何が目的だ?って」

勇者「でしょうね」

魔法使い「私は、あなたの顔を見にきたって伝えたわ」

勇者「普通は倒しに行くんだけどね」

魔法使い「親戚のジジイか貴様はって笑われたわ」

勇者「微妙なユーモアもってんなあいつ」


魔法使い「あの人が笑う顔を見たらなんだか顔が熱くなってきて」

魔法使い「私は鬼ころしを再びがぶ飲みしたわ」

勇者「再びって言ったよね今」

勇者「ちびちび飲もうね」

魔法使い「そしたらあの人が物欲しそうに見てるから」

魔法使い「一緒にその場で鬼ころしを飲む事になったの」

勇者「えーーーーーーーーーーーー」

魔法使い「うるさいわねぇ・・・」


魔法使い「それから色々な事を話したわ」

勇者「へぇ」

魔法使い「あの人の好きな物とか嫌いな物とか」

勇者「あいつが好きな物ってなんなの?」

魔法使い「孤独」

勇者「なんか腹立つな」

勇者「嫌いな物は?」

魔法使い「コミュニケーション」

勇者「外に出ろ外に」

魔法使い「あと紫外線」

勇者「帽子かぶれ帽子」


魔法使い「あまりに気さくに話して下さるから」

勇者「設定ぶれぶれだな」

魔法使い「私、聞いて見たの」

勇者「うん」

魔法使い「どうして人間会を脅かすんですかって」

勇者「よく聞いたなお前」

魔法使い「気づいたら教会にいたわ」

勇者「殺されたんかーい」

魔法使い「きっと飲みすぎた私を介抱して、教会まで送って下さったのよ」

勇者「すべて鬼ころしが悪い」


魔法使い「翌日、サンドイッチと水筒を持って再び魔王の所に行ったわ」

勇者「凝りねぇなお前も」

魔法使い「あの方は熱燗が好きだそうで、とても喜んでくれたわ」

勇者「水筒ってそのためかよ」

勇者「まじウケる」

魔法使い「昨日はごめんねって謝ってくれたわ」

勇者「魔王可愛いな」

魔法使い「女性の手料理を食すのは初めてだったそうよ」

勇者「可愛いー」


魔法使い「可愛いわよね」

魔法使い「でもあの事がどうしても気になって、もう一度聞いて見たの」

魔法使い「どうして人間会を脅かすんですかって」

勇者「えー、空気読もうよ」

勇者「魔王が可哀想」

魔法使い「あの人は途端に黙ってしまったわ」

勇者「ほらー、そうなっちゃう」

魔法使い「そして5秒くらいしてから、ポツリポツリと話し始めたわ」

勇者「沈黙あけるのはやいよー」

勇者「魔王喋りたいんじゃーん」


魔法使い「魔王、実は昔は人間が好きだったらしいの」

勇者「まじか」

魔法使い「人間の底が見えぬ欲望と、目的のためなら手段を選ばない残忍さが好きだったそうで」

勇者「腐っても魔王だな」

魔法使い「昔は人間と一緒に魔女狩りをしたりして過ごしてたらしいわ」

勇者「教科書にのってないよそれー」

魔法使い「でも人間と寿命が合わなくて」

魔法使い「親しい人はみんな先に死んでいって」

魔法使い「元々人見知りな彼は、孤独になったの」

勇者「魔王・・・」


魔法使い「そんなある日、彼の前に若い青年が現れたの」

勇者「若くない青年はオッサンだよね」

魔法使い「最初は心を閉ざしていた彼も」

魔法使い「何度か酒を酌み交わすうちに、その青年と仲良くなったそうよ」

勇者「良い話やなぁ」

魔法使い「しかし別れは突然訪れたの」

勇者「泣けるしモツ煮うめぇし」

勇者「なんの話だっけ」

勇者「ゲンゴロウの話?」

魔法使い「魔王の話よ」


魔法使い「彼らはあるバーでよく飲んでたらしいの」

勇者「へぇ」

魔法使い「彼、魔王は鬼ころしをボトルキープしていたらしいわ」

勇者「へぇ」

魔法使い「でもある日・・・八割残っていたはずの鬼ころしが、か、か、か、」

魔法使い「空になっていたらしいの」

勇者「おそろC」

勇者「それD?」

魔法使い「魔王は怒ってバーを半壊させたらしいわ」

勇者「こわE」


魔法使い「その時、例の若い青年が現れたの」

勇者「きたきた」

魔法使い「そしてニターッと笑って」

魔法使い「鬼ころし、ごちそうさんって、言ったらしいわ」

勇者「腹立つな」

魔法使い「でしょ?なんと、ゲンゴロウという名前の人だったそうよ」

勇者「えーーーーーーーーーー」

魔法使い「驚くわよね、結構人気な名前なのかしら」

勇者「いやいやいや同じ人でしょ」

魔法使い「えーーー」


魔法使い「おったまげーだわ」

勇者「ほんまやな」

魔法使い「絶望の淵に立たされた魔王はそのままトボトボ帰ったんだけど」

勇者「人生経験浅すぎだろ」

魔法使い「その時に魔王から放たれた憎しみの瘴気にあてられた動物や昆虫は、魔物になってしまったの」

勇者「ワキガ並みにタチが悪いな」

魔法使い「最初は十数匹だった魔物だけど、繁殖能力が強くて、今では全世界に生息域を広げたわ」

勇者「在来種がやべぇ」

勇者「とりあえず池の水でも抜いとこ」


魔法使い「すぐに魔物の発生理由は魔王にあると人間にもばれてしまって」

魔法使い「人間VS魔王の図式が出来上がってしまって」

勇者「今に至ると」

魔法使い「魔王は今でもゲンゴロウを恨んでて」

魔法使い「鬼ころしの匂いがする人間は殺さずに連れてこいって部下に指示してるらしいわ」

勇者「あ、なるほどね」

勇者「微妙な酒の匂いを嗅ぎ分ける部下すげぇ」

魔法使い「それが酒臭いやつは誰からかれ構わずとおしちゃってるみたい」

勇者「うけるー」


魔法使い「その話をし終える頃には、魔王の顔は涙でべちょべちょだったわ」

勇者「まじカワウソ」

魔法使い「そしたら自慢のお化粧が落ちて、真っ白な肌があらわになったの」

勇者「あれ化粧だったのか」

勇者「パンク好きなのかな」

魔法使い「紫外線対策らしいわ」

勇者「外でないくせに」

魔法使い「でね、素顔がイケメンだったの」

勇者「そうきたか」

魔法使い「お目目もキュートなの」

勇者「きゅーと!」


魔法使い「そこでまたキュンってきちゃってね」

勇者「愛とはなんぞや」

魔法使い「もう一度、彼が人間とやり直せないか考えてみたの」

勇者「それは良い事だ」

魔法使い「だから、一緒に見つけて欲しいの」

勇者「何を?」

魔法使い「ゲンゴロウ」

勇者「野原で冷たくなってるんじゃない?」

魔王「そうかもしれんな」

勇者「うわ、ビックリした」

勇者「誰だよ」

魔王「ワシワシ、魔王じゃ魔王」

勇者「えーーーーーーーーー」

勇者「どう見ても小池徹平じゃん」

勇者「ウェンツ元気?」

魔法使い「えへへ」

勇者「えへへってお前」

魔法使い「実は私たち、付き合ってるの」

勇者「えーーーーーーーーーーーーー」

魔王「グハハハ」


勇者「もうゲンゴロウとかどうでも良くね」

魔王「ワシもワシも」

勇者「お前もかい」ビシッ

魔王「消し炭にするぞ」

勇者「ごめんなさい」

魔法使い「え、良いの?」

魔王「ワシにはヌシがおるから」

魔法使い「あら、そう?ウフフ」

勇者「平和だねぇ」

魔王「そら、ワシにも酒をくれんか」

魔法使い「そうね!私、鬼ころしをボトルキープしてるの!」

魔王「それは良いのぅ」

魔法使い「すいませーん!店員さーん!」

店員「はーい」

魔法使い「わたしの鬼ころし出してくださらない?」

店員「え?昨日ゲンゴロウさんが飲み干してましたよ?」

魔法使い「え?」

店員「ダメでしたか?魔法使いはワイの愛人だから早よ出せやガハハハっておっしゃるから」

勇者「クズすぎてワロス」


魔王「鬼ころしが・・・ない?」

勇者「魔王さん?」

魔王「ゲンゴロウ・・・?」

魔法使い「あなた、落ち着いて」

魔王「魔法使いが愛人・・・?」

店員「えぇ、セ◯レだとも言ってました」

勇者「なんてことを」

魔王「絶対に許さんぞ虫ケラどもーーー!!!根絶やしにしてくれるわーーーー!!!」

勇者「ひぇー」

勇者「もう鬼ころしはこりごりだぁ」

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