A「……」ｼｭﾀﾀﾀﾀｯ





アナウンサー「これは……？」

学者「“走りスマホ”です。歩きスマホの十倍は危険といわれています」

アナウンサー「たしかに危ないですねえ。しかもこの人やたら速くないですか」

学者「Aさんは、100メートルを10秒53で走りますからね」ﾁﾗｯ

アナウンサー「速いですね！　スマホがなきゃもっと速いんじゃないですか？」

学者「スマホを見てないと14秒21です」

アナウンサー「なんで！？」

B「……」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ





学者「これは“跳びスマホ”です」

アナウンサー「カエルやウサギみたいにピョンピョンしてますねえ」

アナウンサー「どういった部分が危険なのでしょう？」

学者「やってる本人の膝です」ﾁﾗｯ

アナウンサー「ああ……たしかに膝壊しそうです」

C「オラァッ！　オラァッ！」ﾄﾞｶｯ ﾊﾞｷｯ





学者「“殴りスマホ”です」

アナウンサー「こんな勢いで殴ったら、スマホが壊れちゃうんじゃないですか？」

学者「ご指摘の通り、彼のスマホはしょっちゅう壊れてます」ﾁﾗｯ

アナウンサー「……バカなんですか？」

学者「バカじゃなきゃ、殴りスマホなんてしませんよ」

ｽﾊﾟｯ

D「またつまらぬものを斬ってしまった……」





アナウンサー「スマホで竹を斬ってしまった……」

学者「これは“斬りスマホ”ですね」

学者「スマホの側面に、日本刀の刃をくっつけたそうです」

アナウンサー「……アホなんですか？」

学者「アホじゃなきゃ、斬りスマホなんてしませんよ」ﾁﾗｯ

アナウンサー「なんというか、物騒な行動が多いですね」

学者「一方で、攻撃ばかりでなくこんなスマホもあります」

E「お前は……俺が守ってみせるッ！」ﾊﾞﾊﾞｯ





アナウンサー「身を呈して、スマホの盾になってますね」

学者「“守りスマホ”というやつです」

アナウンサー「ちなみに敵はどこにいるんです？」

学者「さあ……ひょっとしてあなたの後ろにいるのかも」ﾁﾗｯ

アナウンサー「なんでホラー話みたくするんですか」

F「うわぁぁぁ～～～～～ん！！！」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

G「アハハハハッ！　おもしれぇ～！　アハハハハハッ！」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

H「ちくしょぉぉぉぉぉぉっ！！！」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ





学者「ここは一気に見ていきましょう」

学者「それぞれ“泣きスマホ”“笑いスマホ”“怒りスマホ”です」

アナウンサー「なんていうか皆さん、忙しそうですね」

学者「やってるのはソシャゲですから、暇人なんですけどね」ﾁﾗｯ

I「ラン♪　ララン♪　ララランラン♪」ｽﾀﾀﾝｯ ﾀﾀﾝｯ





アナウンサー「えーと……“踊りスマホ”ですか？」

学者「正解です。あなたもだいぶ分かるようになってきましたね」

アナウンサー「これ、クイズ番組じゃないんですけどね」

J「神よ、スマホに夢中になっている我を許したまへ……」





学者「“祈りスマホ”というやつです。果たして祈りは届いてるんでしょうか」

アナウンサー「神もスマホに夢中になってるなんてオチがありそうですね」

学者「あ、それいい。あなた天才なんじゃないですか？」

アナウンサー「そ、そうですか？」ﾃﾚｯ

K「おのれぇぇぇ……！　あの野郎、絶対許さん……！」





アナウンサー「鬼気迫るものを感じます」

学者「これは“恨みスマホ”ですね」

アナウンサー「ちなみにKさんは、どんな恨みを？」

学者「電子書籍で推理小説を読んでいたら、犯人をバラされてしまったそうです」ﾁﾗｯ

アナウンサー「この人が犯人にならないことを祈るばかりです」

L「ウ～イ、うへへへへ……ヒック……」ﾖﾛﾖﾛ





学者「“酔いスマホ”、これも危険です」ﾁﾗｯ

アナウンサー「人にぶつかったりする危険性が、歩きスマホより高そうですね」

学者「それもありますが、たとえば――」

学者「酔った勢いで、上司に変なメールを送ってしまうなどの危険もあります」

アナウンサー「それは恐ろしい！」

M「これスマホだから！　最新式だから！　ガラケーじゃねえから！」





アナウンサー「どう見てもガラケーですよね」

学者「ガラケーです」

アナウンサー「なんでこんな嘘をつくんでしょうか……一種の見栄なのでしょうか」

学者「ちなみにこれは“偽りスマホ”といいます」

N「ああ、このくらいのヒビならすぐ直せるよ。貸してみ」





アナウンサー「すごい！　あっという間にスマホを修理しています！」

学者「“直しスマホ”というやつですね」

学者「これは比較的役に立つ、スマホ行動といえましょう」ﾁﾗｯ

アナウンサー「私も直してもらおうかな……」

O「……」ﾎﾞｹｰ…





学者「休みながらスマホを見る“休みスマホ”ですね」

アナウンサー「あの……これなにか問題あるんですか？」

学者「休む時はスマホなんかいじらず、きっちり休んだ方がいいです」ﾁﾗｯ

アナウンサー「あー……体の回復度に影響ありそうですね」

P「お～よしよし、いい子いい子！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ





学者「これは“飼いスマホ”です」

アナウンサー「ペットかなにかを飼うアプリでも入れてるんですか？」

学者「いえ、純粋にスマホを愛でてるんです」

アナウンサー「マジですか……」

学者「しかもあのスマホ、電源入ってません」

アナウンサー「一刻も早く心の病院に行った方がいいような症例な気がします」

Q「うわぁぁぁっ！　スマホだ！　怖いよぉぉぉぉぉっ！」ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ





アナウンサー「スマホにビビりまくってますね」

学者「“恐れスマホ”ですね」

アナウンサー「今はみんなスマホを持ってる時代ですから、これはお気の毒です」

学者「ただし、スマホを買ってもらいたいがゆえの擬態の可能性もあるので、注意が必要です」

アナウンサー「饅頭じゃないんですから」

R「掘ってやる、掘ってやる！」ｻﾞｸｻﾞｸ





学者「スマホで地面を掘る“掘りスマホ”です」

アナウンサー「あの、このRさんって、もしかしてゲイだったりします？」

学者「そんなことはありませんが、なぜそんなことを？」ﾁﾗｯ

アナウンサー「あ、いえ……私としたことが」

S「あ、スマホ家に忘れた！」





学者「“忘れスマホ”です」

アナウンサー「私もたまにやっちゃいます」

T「絞ってやる！」ｷﾞｭｩｩｩ…

U「早く乾いてくれよ～」

V「スマホうめえ！」ﾊﾞﾘﾎﾞﾘﾊﾞﾘﾎﾞﾘ

M「ふむふむ、相対性理論ってこういうことなのか！」

X「……」ｷﾞﾛｯ

Y「スマホ、動けぇ～……！　曲がれぇ～……！」





学者「“絞りスマホ”“干しスマホ”“食べスマホ”“学びスマホ”“睨みスマホ”“念じスマホ”です」

アナウンサー「もはや何がなんだかって感じですね」

Z「うわぁぁぁぁぁ……！　助けてぇぇぇぇぇ……！」ﾋｭｩｩｩｩｩ…





学者「ラスト、落ちながらスマホをする“落ちスマホ”です」

アナウンサー「なるほど、一応オチはついたわけですね」

学者「そういうことです」ﾁﾗｯ

アナウンサー「ちなみに、この人どうなったんですか？」

学者「現在も安否は分かっておりません」

アナウンサー「いやぁ～、実に多種多様な○○スマホがあるのですね。驚きました」

学者「はい、スマホは便利な反面、それゆえ人はスマホに依存した行動を取ってしまうようになるのです」

学者「これらの行動が社会問題化する前に、我々は何らかの対策を取らなければなりません」ﾁﾗｯ

アナウンサー「本日はありがとうございました」

学者「ありがとうございました」

アナウンサー「ところで学者さん……」

学者「なんでしょう？」

アナウンサー「さっきからたまにチラチラと視線を移してますけど、どうかしたんですか？」

学者「ああ、実は隠し持ってたスマホで、愛人とラインをやってましてね」ﾁﾗｯ

学者「……ってああ！　今の無し！　今のカットで！」

アナウンサー「テレビの前の皆さん、こういう“働きスマホ”も程々にしておきましょう」










― 終 ―