【短編】先輩「やめろよ、本気にするぞ」後輩「してもいいですよ?」ニヤニヤ (9)



先輩「……」カリカリ


先輩「……」カリカリ


先輩(……シグマの式はどう展開するんだったか?)ペラペラ


先輩(ああ、この公式だ……ふむふむ)カリカリ


 ガチャッ


司書「おっ、また君か……もう七時半だよ?頑張るね」

先輩「あ、すいません」

司書「いや、いいんだけどね。学校の図書室はそういうもんだし。そろそろ受験も怖くなってくる時期でしょ」

司書「じゃあ鍵置いてくからさ、キリがいいところで閉めて帰ってよ。鍵は返却ポストにでもぶち込んどいてくれればいいから」

先輩「すいません、ありがとうございます」

司書「うん、じゃね」


 バタン


先輩「んんーっ……」ノビー

先輩(塾行くべきなんかなあ。自習室とかあるらしいし……まあいいや。そろそろ電車の時間だし、帰るか)


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 ガチャッ


先輩「あれ?まだ何か?」

後輩「せーんぱいっ!」ヒョコッ

先輩「……げっ」

後輩「『げっ』て何ですか、『げっ』て。せっかく女の子が会いに来たっていうのに」ムスー

先輩「ああ悪い悪い。今までバスケ部か?」

後輩「えーと、練習っていうよりは、一年坊なんで片付けと……あと自主練、ですかね」

先輩「よくやるなあ、俺は中学の三年で一生分やったよ」

後輩「一生分って、先輩レギュラーどころかベンチにも入れてなかったじゃないですかあ」ニヤニヤ

先輩「に、二年の時に一回入ったよ」

後輩「え、レギュラーにですか?」

先輩「……ベンチだけど」

後輩「えー、先輩の一生それだけですか」クスクス

先輩「うるせえ。俺は帰るぞ」ガタッ

後輩「あっ、じゃあ一緒に帰りましょうよ。先輩の灰色の受験勉強生活に彩りを加えてあげますっ」

先輩「灰色で悪かったな」


 スタスタ バタンッ ガチャッ


後輩「あれ?鍵預けてもらってるんですか?信用されてますね」

先輩「ああ、平日はいつもここで勉強してるし……あと、あの司書の先生は文芸部の顧問だったからな」

後輩「そういえば先輩文芸部でしたっけ。ほんと、バスケ続ければよかったのに。暗いですよっ」

先輩「暗い言うな。俺の青春だぞ」

後輩「青春を語るなら恋の一つでもしましょうよ?」ニヤニヤ

先輩「うるせえ、だったら相手でも紹介してくれ」

後輩「んー……じゃあ、私とかどうです?」

先輩「……!?や、やめろよ。本気にするぞ」

後輩「してもいいですよ?別に」ニヤニヤ


先輩「……そもそも、俺に恋愛を語るなら自分がしてからにしろよな」スタスタ

後輩「え、私付き合ったことありますけど。中二のとき」スタスタ

先輩「……そうかよ。大分早いな……立派なリア充じゃねえか」

後輩「六日で別れましたけど」

先輩「はっやいな!?それ付き合ったって言えんのか?」

後輩「告白されてOKしたのは間違いないですし。いい人そうだなーと思ったので」

先輩「じゃあ何で別れたんだよ?」

後輩「えー、だってライン早すぎてキモいし」

先輩「ええ……そんなことで……」

後輩「あとやたら体触ってくるし、やたら家に呼びたがるんですよね」

先輩「……あ、ああ。それは仕方ないかもな」

後輩「まあでも、変なヒトが寄ってきちゃうのは仕方ないですよね。私可愛いですから」フンス

先輩「本当、見た目だけは良いからな……」

後輩「え?じゃあ……先輩のタイプですか?」ヒョコッ

先輩(!ええい、こいつ、上目遣いで……)ドキッ

先輩「ど、どうだかな……」

後輩「えへへ、今ドキッとしました?」

先輩「してねえし」


後輩「隠したって無駄ですよ。先輩の好みなんてわかってるんですから」

先輩「ほーん。言ってみろよ」

後輩「えーと、背は自分より少し低いくらいで、髪は短くて、歳は二つくらい下で……運動部所属。特にバスケ部!」

先輩(そりゃ自分のことじゃないのか……)

先輩「……まあ、近からず遠からずだな」

後輩「そうですか?……じゃあ先輩、今度は私のタイプ当ててみてくださいよ」

先輩「え?……そりゃあお前……年下よりは、年上か?」

後輩「うんうん」

先輩「えーと……で……部活関係で彼氏作ってないってことは、意外と体育会系は好みじゃなかったり……?」

後輩「まあ、そうですね。ついでに言えば、理系よりは文系がいいですねっ」

先輩(……ん?)

先輩「……そうだな。地元が同じほうが気心が知れてていいんじゃないか……いっそ、中学が同じとか」

後輩「そーですねっ!よくわかってますっ!」

先輩(……こりゃ俺のことじゃないのか?またからかわれてるのか……?)


後輩「……私、本当に好きな人に会っても、最初は気づけないと思います。優しい人だな、とか、楽しい人だな、とか思うだけで」

先輩「ん?ああ……」

後輩「でもその人と離れて、他の人と付き合う真似事なんかして、やっと気づくんです。私、あの人のことばっかり考えてるって」

後輩「そしたら私、あとは一直線です!勉強だってなんだって死ぬ気でやって、その人のところに辿り着いてみせますっ」

先輩「……」

後輩「……ねえ、先輩」

先輩「……ん?」

後輩「私の恋、うまくいくと思いますか?」

先輩「……」


先輩「……そう、だな。うまくいくと思う。いや、絶対うまくいく」

後輩「……ほんとですか?」

先輩「ああ。自分に近づくためにそこまで頑張ってくれたって知ったら、守ってやりたくなる……と、思うぞ」

先輩「それに、何よりお前……可愛いもんな。あーくそ」ボリボリ

後輩「……そ、そうですかね……えへへ。えへへへへ」ギュッ

先輩「わっ!お、お前、手……!」

後輩「何テンパってるんですか、相手ができたときの練習ですよ、お互い!」

先輩「っ……あ、ああ、そうだな……」ドキドキ

後輩「――ね、先輩!私、待てますから。好きな人が頑張ってるときは、自分のほうを向いてくれなくても、陰ながら応援できるいい女なんですっ」

後輩「なら私の好きな人は、私が追いつくまで他の女の人に目移りしちゃダメ……ですよね、一般的に!」

先輩「そうだな……じゃあさ、もしお前が追いついた時は、相手から告白させてやってくれよな」

後輩「?いいですけど……何で?」

先輩「告白くらい、カッコつけたいだろ……本当に本気だから、さ」

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