魔女(勇者こわい) 勇者(魔女こわい) (26)



魔女(体調を崩してしまった)ぐったり

魔女(あー……頭が回らない)

魔女(どうしてなのかはわからない)

魔女(魔法も、ポーションも効果無し。こんな事初めてだ……)

魔女(まいったな……)

魔女(私も永い事生きて来たけど)

魔女(久しぶり、いや、初めてかな)

魔女(死が……怖い)




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魔女「げほっ、げほっ」

魔女「何か体に入れないと……」

魔女(喉が痛い、頭も痛い、全身が痛い)

魔女(熱も下がる兆しが見られない、どうなってるんだ……?)

魔女「はぁ……はぁ……」

魔女(…………)


魔女「ダメだ、寝よう」

魔女「げほっげほっ、死んだらそれまでか……」フラフラ




< ドサッ

魔女(身体が沈んで行く感覚)

魔女(頭から、天を見上げたまま水に浸かり、沈み続けてるような)

魔女(数百年生きて来て……こんなのは初めてだ)

魔女(勇者一族に狙われ続けて身を潜め、私の師や友人達とも連絡が取れなくなって)

魔女(時折寂しさに悩まされたりもして)

魔女(その末に見つけたのが街への行商なんて……)

魔女(そんな事もあったのにな)

魔女(こんな訳のわからない病で私は死ぬのかな)




魔女(……あ)

魔女(眠れそうだ、今なら)ウトウト

魔女(ベッドが冷たいな……毛布を出しておけばよかった)

魔女(ああ……おやすみ)


< ドンドンドンッ!

< 「誰か、誰かいないか!」

< 「旅の者だ、ここを開けてくれ!」


魔女(…………?)ぴくん

魔女(旅人、か?)

魔女(こんな辺境の山奥に、変わった者がいるんだな)

魔女(私の結界を破ってまで)










魔女「結界を破って来たのか!!?」ガバッッ


魔女「はぁ!?」


魔女(嘘、嘘、うそっ!? この数百年、私の結界を破った奴なんて師しか居なかったのに!)

魔女(まずいまずいまずいまずい……!!)フラフラ

魔女(きっと勇者だ、何代目かは知らないが多分今代の勇者が私を見つけたんだ!)

魔女(逃げないと……殺され……)フラッ

魔女「あぐっ!」ドサッ

魔女(身体が……動かない……っ)




< 「すまない、誰かいるなら開けてくれ!」ドンドン


魔女(誰も居ない! 早くどっか行ってくれ!)

魔女「はぁー……っ、はぁー……っ」カタカタ…


< 「・・・・・・」

< 「失礼する!」

< バキャァアッ!!


魔女(いやなんでだよ!? なんで返事無かったら扉を破壊して入って来るんだよ!?)

魔女(もうやだこれだから勇者なんて野蛮で……!)


< コツッコツッコツッ……


魔女(こっちに来る……!)

魔女「精霊、私の姿を消しなさい!」




勇者「ここ、か?」スッ


魔女(……っ!)ビクッ


勇者「……」


魔女(見えてない、筈だ)

魔女(いや、分からない。歴代の勇者の中には魔眼を持った勇者も居たんだし……そもそも稀に異世界から召喚された勇者なんてのも……!)


勇者「……居ない…?」


魔女(…………)ドキドキ


勇者「良かったぁ……!!」へたんっ


魔女(!?)




勇者「うっかり結界を通り抜けたみたいだったから、魔術師か魔女でも住んでるのかと思ったよ……!」

勇者「良かった良かった……土下座して許して貰えなかったら逃げようかと思っていたけど」


魔女(……は?)

魔女(うっかり結界を通り抜けたと言ったのか、この男)

魔女(そんな事が有り得るのか……)


勇者「取り敢えず扉を壊しちゃったし家主が戻るのを少し待ってみて、それから謝ってみよう」

勇者「家屋の内装からして女性が住んでるみたいだしね」

勇者「ここ数日、水もロクに飲めていなかったから助かった。井戸を借りよう」

< コツッコツッコツッ……




魔女「……行ったかな」

魔女(魔女を恐れていたのか? さっきの男)

魔女(偶然私の結界を跨いだのに気づいて謝るとか何とか言っていた)

魔女(勇者ではない……のか)

魔女(……)

魔女(それなら助けてもらうのも1つの選択肢、かもしれない)




< ザバァ


勇者「はぁー……」

勇者(生き返る気分だ)

勇者(割と本気で死にそうな時にこの屋敷が見えたのは幸運だった)

勇者(まだ家主が魔女か何かの可能性は拭えないけど、結界を破った訳でもないし勇者である事を隠せば許してくれるだろう)

勇者「…………」

勇者(そうだと良かったんだけどなぁ~~……!!)

勇者(違うよねぇええ)

勇者(扉破って結界まで展開してる魔術師の屋敷で勝手に水浴びしてるもんねこれぇえええ)

勇者(うわぁぁあああああ)




< フラフラ……

魔女(く……井戸までこんなに遠く感じるとは)

魔女(中で彼を待つ事も考えたが、もし水を飲んでそのまま逃げ帰られたら終わりだ)

魔女「ここは何が何でもさっきの男に助けを求めなければ……っ」

魔女「…………ッ!?」

魔女(な、んだ……? 視界が反転する……)ぐらぁ

< ドサッ!!

魔女「は……っぁ……」

魔女(やば…………身体が動かない、頭が回って……)

魔女(……こわい……死にたく、ない……)





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『今代の勇者が選定されたらしいね』

 『へぇ、どんな奴なんだ?』

『私達魔女に両親を殺された、らしい』

 『……それはまずいな』

『妙な展開にならないと良いけどね』

 『前例があるからな。 無事に魔王を倒してくれればいいんだが』

『魔女の私達には見守る事しか出来ないと思うよ、彼の今後に祝福を願おう』

 『……そうだな、師匠』


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『北の国に住む魔女が三十人殺された』


 『三十……ッ!?』


『殺ったのは先日魔王を討った勇者』

『正確には元、なのだろうけどね。 何の手違いか術法か、彼は勇者の力を失う事なく過ごしている』


 『【キロクノ】は何と?』


『逃げて身を隠せって』

『彼とは決してまともに戦ってはいけないんだとさ』

『彼はただ、復讐心に取り憑かれただけの哀れな子だから。ってね』


 『…………それもそうか』


『さぁ、支度をして【セイギノ】。 隠蔽の魔法に特化した魔女が隠れ家を提供してるらしいから、そこへ行くよ』


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……『勇者軍が攻めて来た!! 皆逃げなさい!』

……『幼い魔女達はこっちに! 追跡される可能性はあるけど、一度【キロクノ】の所に行くわ!』

……『クソがッ、調子に乗るなよ人間共……!!』

……『おい誰かあの武闘派魔女を引き摺ってこい! 絶対に彼等に手を出しちゃダメだ!』

……『誰かあたしのペットどこに行ったか知らない!?』


『滅茶苦茶だね』


 『……そうだな』


『まさか勇者としての力を遺伝させたり、異世界から来た者に付与する術法を人間が編み出すなんてね』

『おかげで私達魔女は完全に悪者扱いだね』


 『…………』


『下ばかり見ちゃダメだよ【セイギノ】、かの勇者は悪くないさ』

『どんな理由があってその魔女が彼の両親を殺めたかは知らないけど、何か事情があったんだ』

『そして、その子供は力を手に入れてしまい。 魔女に復讐しようとしてる』

『その過程で人間達は私達魔女の力無くとも魔女に対抗出来る力を身につけた』

『これは時代が変わろうとしてるんだ』

『あれだけ強くなったなら人間達も魔王なんかに負けないし、遥か大昔にあった【魔界大戦】も起きないよ』

『そのうちに私達はこの役目を捨てる事になるんだよ、きっと』


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「見つけたぞ魔女ォォォッ!!!!」

「お前達は一人残らず殺すッ!! 一片たりとも残さず殺すゥッ!!」

「死ねッ!! 潰れろッ!! 滅しろッ!!」

「俺の祖父の怨念、この怒りを鎮める為にィ!! ぶっ殺ぉぉぉぉすッッ!!!!」



 『…………ひ、ぃ』


『お前は下がってなさい』


 『師匠……?』


『貴女との相性は悪いわ、多分なす術もなく殺される』

『可愛い弟子がそうなるのは忍びないのよね、やっぱり』

『ここは私に任せて貴女は逃げて』


 『で、でも……!』


『そんな大人びてる癖に小心者なんだから。 いいから行きなさい』

『私達魔女は、死んでも数百年後に蘇るのよ? これは勇者も知らないわ』

『こんな事はすぐに終わる』

『だから、それまで貴女は逃げなさい』

『いつかまた会いましょうね……【セイギノ】』


 『師っ……【キリノ】……!!』


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魔女(…………)ビクッ

魔女「あれ……?」

魔女(どうなったんだ……私は)

魔女(身体が軽い、治ってるのか?)むくり


勇者「あっ、良かった。 目を覚ましたんだね」


魔女「えっ」

勇者「えっ」


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