【リトバス】恭介「文芸部……?」【DDLC】 (80)

このスレはリトルバスターズ!とDoki Doki Literature Club!のクロスオーバーものを投下します
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寮の前


恭介「おーい、理樹」

理樹「あっ、恭介! 就活から帰ってきてたんだ」

理樹「ってなにその荷物」

恭介「実はな、就活で行った先で、いい加減PCも使ったらどうだ? と偶然知り合ったジャンクショップの店長に言われてな」

理樹「それで、買ってきたの?」

恭介「いや、なにやら曰く付きみたいでな、タダで貰えた」

理樹「曰く付きって……大丈夫なの?」

恭介「理樹、そんな霊的なものがパソコンに憑くと思うか?」

理樹「それは……思わないけど」

恭介「だろ? それより運ぶの手伝ってくれ、重くてかなわん」

理樹「それはいいけど、部屋まで持っていけばいいの?」

恭介「ああ、理樹はコードとスピーカーを頼む」

理樹「任せといて!」

恭介の部屋

恭介「ふー、案外重かったな」

理樹「ノートパソコンって言っても、そこそこ大きいもんね」

恭介「さて、あとはセッティングだが」

理樹「恭介、そういうのに詳しいの?」

恭介「一応一通りは教えてもらったからな」

恭介「まずはここをこうして……よし、これで電源がつくはずだ」

理樹「早いね」

恭介「まあな……っと、きたきた」

恭介「ええっと、ん? 初期設定がもうされてるのか。店長からそういうことは聞いてなかったが」

理樹「フォルダが一つだけあるね」

恭介「これが曰くの原因か? 見てみようぜ」

理樹「ええっ! そんな事して大丈夫なの!?」

恭介「なんだ理樹、怖いのか?」

理樹「そういう訳じゃないけど……」

恭介「安心しろって、仮に何かあってもコンセントを抜けば済む話だ」

理樹「そうなの?」

恭介「ああ、そういうもんだ」

恭介「だから安心して……っと、中身はゲームか」

理樹「ゲーム?」

恭介「ああ、タイトルは『Doki Doki Literature Club!』か、聞いた事無いな」

理樹「正体不明のゲームって、やっぱり危ないんじゃないの?」

恭介「いや、そうでもなさそうだ、イラストは所謂萌え系、それにタイトルは和訳するとドキドキ文芸部」

恭介「十中八九恋愛ゲーム……所謂ギャルゲーだ」

理樹「恋愛ゲーム……」

恭介「この前みたくRPGみたいな世界よりは何かあっても安全そうだろ?」

理樹「それは……そうかもしれないけど」

恭介「それに見てみろよ、ヒロインの女の子だって可愛いぜ、サヨリ、ユリ、ナツキ、モニカの四人か」

理樹「可愛いって……でも、ゲームのキャラクターでしょ?」

恭介「おいおい理樹、わかってねえな」

恭介「こういうのは、萌えるもんなんだよ」

理樹「そ、そういうものなんだ……」

恭介「まあ理樹には鈴が居るからな、興味が無いのも仕方ないか」

理樹「ちょっと! なんでそこで鈴が出てくるのさ!」

恭介「さあな」

理樹「んもう……」

恭介「さて、それじゃあ説明書も確認したし、起動してみるか!」

理樹「う、うん」

恭介「面白かったら健吾と真人にもやらせるか」

恭介「それじゃ、exeファイルをクリックし…….何っ!?」

理樹「うわっ……えっ、恭介!? 恭介!?」

理樹(パソコンでゲームのアイコンをクリックした瞬間、画面から眩い光が出てきて、気づいたら恭介は消えていた)

理樹(もしかしてこのパソコン、本当に曰く付きだったんじゃ……)

理樹「ってそんな事考えてる場合じゃないよ! 早く、早く誰か呼ばなきゃ!」

通学路


恭介(なんだここは……見た事ない街並みだが、まさか、ゲームの中か!?)

サヨリ「おーい!」

恭介(女の子が手を振りながらこちらへ走ってくる、あれは……)

サヨリ「はぁ……は…….また寝坊しちゃった」

サヨリ「でも今度は追いついたんだから!」

恭介(この子は確かサヨリだったか、始める前にゲームのフォルダを覗いておいてよかったぜ)

恭介「おはよう、サヨリ」

サヨリ「おはよ〜」

恭介「寝坊か?」

サヨリ「うん〜、最近朝起きるのが辛くて」

恭介「まっ、遅刻しないなら大丈夫か」

サヨリ「あっ、そうそう、恭介」

サヨリ「そろそろどの部活に入るか決めた?」

恭介「部活?」

サヨリ「うん、部活」

恭介「部活か……どこかに入るつもりはないし、探してもいないが」

サヨリ「そんなはずないよ、今年は部活に入るって言ったてじゃん!」

恭介「言ったか……?」

サヨリ「言ったもん!」

恭介(リトルバスターズがあるし、漫画を読む時間は削られたくないから部活には入ってなかったが)

恭介(そうか、ゲームの中にはリトルバスターズは無いからか)

サヨリ「私は恭介が大学に行く前に社会性もスキルも身につかないんじゃないかって心配なの!」

サヨリ「恭介の幸せは私にとっても大事なんだから!」

サヨリ「今は楽しくやってるみたいだけど、数年後世間に馴染めずニートになってる姿を想像するだけで私は死んじゃいそう!」

サヨリ「ちゃんと言うこと聞いてくれる?」

恭介(ニートか、確かに就活は上手くいってないしこの前なんて斎藤のマスクで面接して追い出されたが、そんなに気にすることか?)

サヨリ「私を心配させないでよ……」

恭介(しかし、そんな目で見られるとな……)

恭介「わかった、そんなに言うなら、いくつか部活を見てみよう」

サヨリ「約束、してくれる?」

恭介「ああ、約束だ」

サヨリ「やった〜!」

恭介「よし、そうと決まれば遅刻しないよう学校に急ぐぞ、競争だ!」

サヨリ「あっ、待ってよ〜!」

恭介「授業は気がつけば終わっていた」

恭介「この世界で俺は二年のようだが、まあ実際は三年だからな、簡単な授業だった」

恭介「さて、それで部活だが、とりあえず漫研か野球部にでも」

サヨリ「やっほー」

恭介「サヨリ……?」

サヨリ「教室から出るところで声をかけようと思ってたけど、座ってぼーっとしてたから入って来ちゃった」

サヨリ「正直たまに私よりだらけてるよね」

恭介「そんなにぼーっとしてたか?いや、周りに他の生徒が居ないって事はそうなんだろうな」

恭介「部活に遅れるようなら、待たなくてもよかったんだぞ?」

サヨリ「ちょっとした励ましが必要かなと思って、それに……」

恭介「それに?」

サヨリ「私の部に来てもいいんだよ!」

恭介「お前なあ」

サヨリ「うん?」

恭介「俺が文芸部って感じに見えるか?」

サヨリ「えええ!?ケチ!」

恭介(サヨリは文芸部の副部長をやっているらしい)

恭介(恐らく部設立の手伝いをするのが楽しそうという理由で入部したんだろう)

恭介(それに関してはめちゃくちゃ共感できる)

恭介「俺は野球部でも見てくる」

サヨリ「お願いだから来てくれない?」

恭介「何故そこまで必死なんだ?」

サヨリ「ええと……」

サヨリ「だって昨日みんなに新入部員連れてくるって言っちゃったし……」

サヨリ「それにナツキちゃんがカップケーキとか作って来てるし……」

サヨリ「えへへ……」

恭介「守れない約束なんてするなよ!」

恭介(いや、もしかしたら計算づくか? だとしたら相当な策士だ)

恭介「わかった、カップケーキに免じて寄るとしよう」

サヨリ「やった! よし行こう〜!」

部室

恭介(というわけでサヨリの後をついて来たが、どうやら部室は三年の校舎のようだ)

サヨリ「みんな! 新入部員を連れてきたよ〜!」ガラッ

恭介「まだ新入部員って決まった訳じゃー」

ユリ「ようこそ文芸部へ、お会いできて嬉しいです」

ユリ「サヨリちゃんからあなたのことはよく聞いています」

ナツキ「正気? 男子連れて来たわけ?」

ナツキ「雰囲気ぶち壊しじゃない」

モニカ「あ、恭介くん! よく来てくれたわね!」

モニカ「ようこそ! 文芸部へ!」

恭介「……」

恭介(この文芸部、女子だらけじゃないか)

ナツキ「あんた何見てんのよ?」

ナツキ「言いたいことがあるならいいなさいよ」

恭介「す、すまん」

ユリ「ナツキちゃん…….」

ナツキ「ふんっ」

恭介(この子は辺りが強いな、身長からして一年生か)

恭介(いや、しかし神北や西園の事もある、見た目で判断はいけないな)

サヨリ「不機嫌な時は放っておいていいよ〜」

サヨリ「とにかくこの子がナツキちゃん、いつも元気いっぱいだよ!」

サヨリ「それでこっちがユリちゃん、この部で一番の秀才なの!」

ユリ「そ、そんな風に言わないでください……」

恭介(ユリはどうやら内向的なようで、サヨリやナツキのようなタイプと一緒にやっていくのは、少し苦労していそうだ)

恭介「よろしくな、ユリ、ナツキ」

サヨリ「それで、聞いた感じだと二人は知り合いなの?」

モニカ「ええ」

モニカ「また会えて……嬉しいわ、恭介くん」

恭介(モニカは微笑む、去年はクラスメイトだった、という設定のようだ)

恭介(容姿端麗、文武両道でクラスの人気者だったらしい、向こうでの俺のように)

恭介「こっちこそ」

サヨリ「こっちに座って、恭介! スペース作ったからわたしかモニカちゃんの隣が空いてるよ」

サヨリ「カップケーキ持ってくるね〜」

ナツキ「ちょっと!わたしが作ったんだから、わたしが持ってくるわよ」

サヨリ「ごめんごめん、ちょっと楽しみすぎて〜」

ユリ「それでは、私はお茶を淹れますね」

恭介(とりあえずサヨリの隣に座ると、ナツキがトレイを持って誇らしげにテーブルへやって来た)

ナツキ「準備はいいかしら?」

ナツキ「じゃじゃーん!」

サヨリ「うっわああぁぁ〜〜っ!!」

恭介「これは……猫か」

サヨリ「すっごくかわいいぃ〜!」

モニカ「ナツキがお菓子作りが得意だったなんてね」

ナツキ「えへへ。 まあ、ね」

ナツキ「早く食べてよね!」

サヨリ「美味しい!」

恭介「これは美味いな! いくらでも食えそうだ」

恭介「ありがとう、ナツキ」

ナツキ「な、何言ってるの? 別に……!」

ナツキ「……別に、あんたのために作ったわけじゃないし」

恭介「そうじゃないのか? サヨリは俺のためにと言っていたが」

ナツキ「まあ、そうね!」

ナツキ「で、でも、あくまで新入部員のためで、あんた個人のためじゃないんだからね! バカ……」

恭介「分かった、分かったって」

ユリ「……」カチャ カチャ

恭介(ユリが慎重に、みんなの前にティーカップを置いている)

恭介「教室にティーセットを置いてるのか」

ユリ「大丈夫です、ちゃんと先生の許可はいただいてますから」

ユリ「それに温かいお茶があると読書も捗るでしょう?」

恭介「ああ、そうだな」

恭介(そういえば西園も水筒を持参して読書してたな)

モニカ「そんなに怯えなくてもいいわ。ユリはただあなたの関心を引こうとしてるだけよ」

ユリ「え、そ、そんなこと……」

ユリ「私はただ、その……」

恭介「分かってる」

恭介「何か飲みながらの読書は馴染みのない習慣だが、お茶は普通に好きだからな」

ユリ「良かった……」

モニカ「そういえば、あなたはどうして文芸部に入ろうと思ったの?」

恭介「ああ、それはな」

恭介(サヨリに引きずられて来た、とは言うべきじゃないな)

恭介「まだ部活には入っていないし、サヨリが部活で楽しそうだったからな」

モニカ「それでいいのよ恥ずかしがらないで!」

モニカ「あなたが居心地がいいって感じられるようにしてみせるから」

モニカ「文芸部の部長として、部室を楽しくてワクワクするような場所にするのは私の義務だからね!」

恭介「そういえば、モニカはどうして自分の部を立ち上げようと思ったんだ?」

恭介「お前ならどんなメジャーな部でも、幹部間違いなしだろうに」

モニカ「正直言うとね、大きな部の部内政治にもううんざりだったの」

モニカ「予算か宣伝かイベントの事しか話してない気がしてね」

モニカ「そんなことをしてるより、自分が好きなものを通して特別な何かを作りたかったの」

モニカ「それで誰かを文学の道に引き込めたなら、本望よ」

サヨリ「モニカちゃんは最高のリーダーだよ!」

ユリ「……」ウンウン

恭介「……すげぇ感動した」

恭介「是非俺も、文芸部に入らせてくれ!」

モニカ「もう、最初からそういう話だったでしょ?」

恭介「それはそうだが、今のを聞いて余計に入りたくなった、それに」

モニカ「それに?」

恭介「その調子だと、まだまだ文芸部を増やすつもりなんだろう? なら手伝える人材は多い方がいい」

モニカ「そうね、確かにこのメンバーで、私は卒業するまでには部をもっと大きくできる自信があるわ」

モニカ「でしょ、みんな」

サヨリ「うんっ!」

ユリ「最善を尽くします」

ナツキ「当たり前でしょ」

恭介「全員やる気は十分、これは予想以上にいい部活みたいだな」

ユリ「あっ、そういえばその」

恭介「ん? どうした?」

ユリ「入部するのでしたら聞いておきたくて、恭介さんは普段どんな本を読まれるんですか」

恭介「あー……漫画」

ナツキ「」ピクッ

ユリ「あ、あまり、読書家ではないのですね」

恭介「漫画だって立派な読書さ」

ナツキ「」ウンウン

ユリ「そ、それはそうかもしれませんが……」

恭介「それより、ユリはどんな本を読むんだ?」

ユリ「ええとですね……」

ユリ「私は重厚で複雑な世界観を持ったファンタジーが好きなんです」

ユリ「その世界観を支える創造性や職人芸の凄さといったら、眼を見張るものがあるんですよ」

ユリ「そのような異世界で語られる素敵なストーリーもまた、とても感動的なんです」

ユリ「でもね、他にも様々なものが好きですよ」

ユリ「奥深い心理的要素を含む物語には思わず夢中になってしまいます」

ユリ「作者が読者の想像力不足を逆手に取って驚かせにくるなんて凄いですよね?」

恭介「そんなものもあるのか、そりゃ凄いな」

ユリ「でも最近よく読んでるのはホラーなんです……」

恭介「ホラーか、怪談話なら少しだけしらべたことはあるが……」

モニカ「本当に? ユリがホラー好きだなんて意外だわ」

モニカ「こんな穏やかな人がホラーを読むとはねえ……」

ユリ「そうかもしれませんね」

ユリ「でも作品に考えさせられたり、異世界に連れて行かれたりすると、本当に止まらなくなってしまいます」

ユリ「シュールレアリスムホラーなんて、少しの間だけかもしれませんが、世界の見え方が変わってしまうことだってありますからね」

ナツキ「うう…….私はホラーは苦手……」

ユリ「あら、どうしてですか?」

ナツキ「だって、わたし……」チラッ

ナツキ「なんでもない」

モニカ「確かに、ナツキはかわいいことを書くのが好きだものね。そうでしょ?」

ナツキ「は、はあ? どうしてそう思うのよ!?」

モニカ「前の部活の時、ナツキが下書きの紙を置き忘れてて」

モニカ「どうやら詩を書いてたみたいね。タイトルはー」

ナツキ「読むなー!! それとその紙返して!」

モニカ「はいはい〜」

サヨリ「えへへ、ナツキちゃんのカップケーキにナツキちゃんの詩……」

サヨリ「ナツキちゃんはやることまでぜんぶかわいいなあ〜」

ナツキ「かわいくない!!」

恭介「ナツキは詩を書くのか?」

ナツキ「え? まあ、たまにね」

ナツキ「なんか問題ある?」

恭介「いや、凄いな」

恭介「誰かに見せたりしないのか?」

ナツキ「い、嫌よ!」

ナツキ「そんな、気に入られるようなものでもないし……」

恭介「なるほど、まだ自信はない感じか」

ユリ「ナツキちゃんの感じてること、分かります」

ユリ「その手の文章を見せるのって、自信以上のものが必要なんですよ」

ユリ「自分に向けられた書きものこそが、真の書ものだから」

ユリ「そういったものを見せる時は、読者に対して心を開いて、自分の弱さを晒し、自分の心の最も深いところすら見せるつもりでいなければいけないのですよ」

モニカ「ユリも執筆の経験があるの?」

モニカ「きっとユリが自分の作品を見せれば、いい見本になって、ナツキが自分のを見せる時に気が楽になるんじゃないかしら」

ユリ「……」

恭介「どうやら、ユリもナツキと同じみたいだな」

サヨリ「あうー.……みんなの詩、読みたかったなぁ」

全員「......」

恭介 モニカ「みんな、一つ考えがある(わ)」

モニカ「えっ……」

恭介「どうやら、考える事は同じらしいな」

恭介「じゃあ、せーので言おうぜ」

モニカ「わ、わかったわ」

ユリ ナツキ「……?」

恭介「せーのっ!」

恭介 モニカ「家に帰って、自分の詩を書きましょう」

恭介 モニカ「そして、次会う時に、みんなお互いに見せ合いっこしましょう」

恭介「そうすれば、みんな平等だ」

ナツキ「う、うーん……」

ユリ「……」

サヨリ「いえーい! やってみようよ!」

モニカ「それに、新入部員も入ったことだし、お互いをもっとよく知ったり、絆を深めたりするいい機会になると思うわ」

モニカ「そうでしょ?」

恭介「ああ、その通りだ」

モニカ「ふふっ、そうよね」

モニカ「よし、みんな! これにて今日の部活は終了ね、お疲れ様」

モニカ「みんな今日の宿題を忘れないでね」

モニカ「次回の部活で披露できるように、詩を書いて持ってくること!」

モニカ「恭介くんが自分をどう表現するのか、楽しみにしてるわ」

恭介「楽しみにしててくれ、アッと驚かせてやるぜ」

モニカ「えへへ〜」

サヨリ「ねえ、恭介、どうせ今一緒なんだし、一緒に帰らない?」

恭介「ん、そうだな、そうするか」

サヨリ「やった〜」

恭介宅

恭介(結局、ゲームの中に入っちまった原因も出る方法もわからないまま)

恭介(前回の事も考えるとゲームクリアが条件なんだろうが、それも憶測だ)

恭介(この世界の中で今の所ちゃんとした意思を感じられるのはあのメンバーだけだったから文芸部に入ったが)

恭介(ゲームマスターを見つけるか、クリアするかで早く脱出しなければいけないな)

恭介「その為には、まずは詩を書かなきゃな」

恭介「詩…….確か西園の時に書いたっけか」

恭介「確かあの時は……そうだ、ロケットを……」

部室


モニカ「恭介君、今日も来てくれたのね!」

モニカ「すっぽかされなくてよかったわ、あははっ!」

恭介「心配ご無用! というより、昨日あんな提案をしておいて来ないってのも酷い話だからな」

ユリ「約束を守っていただいてありがとうございます、恭介さん」

ユリ「あなたに気苦労を負わせてないと良いのですが」

ユリ「馴染みがない文学の世界に突然飛び込ませているようなものなので……」

ナツキ「もう、なによ! 甘やかす必要なんてないでしょ」

ナツキ「サヨリから聞いたけどあんた、今年はどこの部活にも入るつもりなかったみたいじゃない」

ナツキ「それに去年だって!」

ナツキ「真面目にやらないなら、ここで過ごす時間もそう長くないと思いなさい」

モニカ「ナツキ、部室に漫画コレクションを揃えてる割には大口叩くのね」

ナツキ「モ……マ……ム……!!」

ナツキ「マンガは文学なのっ!!」

サヨリ「心配無用だよ、みんな〜」

サヨリ「恭介は、楽しいことは全力でやるもんね」

恭介「ああ! 楽しいことなら大歓迎だ」

ユリ「サヨリちゃんたち、本当に仲がいいんですね」

ユリ「少し羨ましいです」

サヨリ「そうかな? ユリちゃんと恭介だってきっとステキな友達になれるよ!」

ユリ「う、えっと……」

恭介「なんだ、俺はもう友達のつもりだったんだが」

ユリ「えっ、そ、その、ありがとう……ございます……」

サヨリ「そうだ! ユリちゃん、恭介のために今日何か持って来てくれたんだよね」

ユリ「ま、待って! サヨリちゃ……」

恭介「俺にか?」

ユリ「えっと、そういうものでは……」

サヨリ「恥ずかしがらなくていいのに〜」

ユリ「本当にそういうものではなくて……」

恭介「じゃあどういうものなんだ?」

ユリ「き、気にしないでください!」

ユリ「大したものではないのに、サヨリちゃん大げさ過ぎます……」

ユリ「うううう、どうしよう……」

サヨリ「あれ? ごめんねユリちゃん、わたし考えてなかった……」

恭介「そんなに気にする事じゃないさ」

恭介「どんなものでも、気持ちがこもっていればいい、それはとってもプライスレスだ」

恭介「どんなものでも、俺は嬉しい」

ユリ「そ、そうでしょうか……」

恭介「ああ、そうだ」

ユリ「わかりました、それでは、これを」

恭介「小説か」

ユリ「仲間はずれだと感じて欲しくなくて……」

ユリ「恭介さんが楽しめそうな本を選んでみました」

ユリ「短編なので、普段本を読まない恭介さんでも集中力が途切れにくいと思います」

ユリ「それに、ほら、もしできたら……」

ユリ「話し合ったり……できればと……」

恭介「ユリ」

ユリ「は、はい……」

恭介「ありがとう、絶対最後まで読む」

ユリ「ほっ……」

ユリ「ご自身のペースで読み進めてくださいね」

ユリ「あなたの感想、楽しみにしてます」

恭介「ああ」

恭介(それからしばらく経ったが、特にモニカから指示がある訳でもなく各々が自由にしている)

ナツキ「もうっ……!」

恭介(クローゼットの方からナツキの苛立った声がする、何かに怒っているようだ)

恭介「探し物か?」

ナツキ「モニカのやつ……」

ナツキ「あいつ絶対にわたしの物をもとの場所に戻してくれないんだもの!」

ナツキ「ちゃんと整頓してるのに誰かさんのせいですぐゴチャゴチャになるから意味ないじゃない!」

恭介「マンガか」

ナツキ「あんたも読むんでしょ?」

恭介「ああ! 最近は学校にも持ってきてる」

ナツキ「あんたもなかなかね」

恭介「それで、どのマンガを探してるんだ?」

ナツキ「パフェガールズってマンガよ、ああもう、見てこの本棚! 一冊だけ抜けてて気分悪いわ」

恭介「パフェガールズ……?」

恭介(聞いた事ない作品だな……俺の守備範囲か、ナツキも女の子だし、少女漫画か)

ナツキ「偏見の目で見るならあの窓ガラスの外から見てなさい」

恭介「おいおい、まだ何も言ってないだろ」

ナツキ「あんたの言い方でそう感じたから」

ナツキ「でも一つだけ教えておくわ、恭介」

ナツキ「これは文芸部直々の教えだと思いなさい。本を表紙で判断しないことよ!」

ナツキ「むしろー」

ナツキ「それをどういうことか教えてあげる!

恭介(表紙には四人の女の子が描かれている、なるほど、萌え系か)

ナツキ「突っ立ってるんじゃないわよ!」グイッ

恭介「うおっー!?」

ナツキ「ん」トントン

恭介「座れってか、いいぜ、その誘い乗った!」

ナツキ「それじゃ、一緒に読むわよ」

恭介「一緒にか」

ナツキ「悪い?」

恭介「いや、悪くない」

恭介「……」 ペラペラ

ナツキ「冒頭を読み返すのも随分久しぶりね……」

恭介「読み返したりはしないのか?」

ナツキ「そんなにしないわ」

ナツキ「全巻読み終わったらたまにするくらいかしら」

ナツキ「それより、ちゃんと読んでるの?」

恭介「ああ、読んでるさ。いわゆる日常系のマンガなんだな」

恭介(普段は少年マンガしか読んでないからな、知らなかったわけだ)

恭介「それで、これってなんの話なんだ?」

恭介「序盤だからか、話の筋がわからん」

ナツキ「まあ、言いたいことはわかるわ」

ナツキ「確かに最初の方は単純な話がおおいけど」

ナツキ「中にはアイス屋のお兄さんをみんなが大好きになっちゃう、すっごく笑える話とかもあるわよ」

ナツキ「それに次第にドラマチックな展開が増えて、キャラを深く掘り下げてからの恋愛関係の話にどんどん引き込まれていくんだから」

恭介「なるほど、そんな感じか」

恭介「本当によく読み込んでるんだな、ナツキは」

ナツキ「それほどでもないわ!」

恭介「……ん? これはお菓子作りの回か」

恭介「このマンガ、お菓子作りのシーンが多いのか?」

ナツキ「それはー」

ナツキ「……そうよ」

ナツキ「それがどうかしたの?」

恭介「いや、ただ気になっただけだ」

恭介「お前も、お菓子作りが好きなんだろう?」

ナツキ「それはー!」

ナツキ「たまたまよ!」

ナツキ「マンガで見たからって何か始めたりするわけないでしょ!」

ナツキ「そんなに単純な人がいたら同情するわ!」

恭介「なにぃ! じゃあマンガ読んでバンドを組もうとした俺は、単純なやつって事か……」

ナツキ「はぁっ!?」

恭介「そうか……理樹達の反応が微妙だったのも、同情されてたからなのか」

ナツキ「ち、ちょっと、何落ち込んでるのよ! あと理樹って誰よ!」

恭介「いや……いいんだ、忘れてくれ、マンガに影響された可哀想な男だと思ってくれればそれでいい」

ナツキ「な、なによ……」

ナツキ(わたしが悪者みたいじゃない……)

恭介「まさか闇の執行部になったのも、朱鷺戸には内心ダサいやつと思われていたのか……」ブツブツ

ナツキ「ま、まあ……」

恭介「……」

ナツキ「別に影響されるのも悪い事じゃないと思うわ! 影響されるってことはそれだけいい作品だってことだし」

恭介「わかってくれるかナツキぃ!」ガシィッ

ナツキ「ちょ、ちょっと、うっとい! 抱きつくな!」

数分後


恭介「ナツキ、このままじゃ退屈じゃないか?」

ナツキ「しないわ!」

恭介「俺が読んでるのを見てるだけなのにか?」

ナツキ「それは……」

ナツキ「それでいいわ」

恭介「そういうのなら、いいが……」

恭介「あっ」

ナツキ「なによ」

恭介「すまん、二巻取ってきてくれ、読み終わりそうだ」

ナツキ「自分で取ってきなさいよ!」

恭介「今いいとこなんだよ! 手を止めたくない、わかるだろ」

ナツキ「ぐ……く、う……わかったわよ」

ナツキ「はいこれ、二巻」

恭介「すまんな、こっちももう少しで読み終わる」

ナツキ「そんなに面白かった?」

恭介「ああ、こうやって誰かと好きなマンガを共有するのも、いいもんだな」

恭介「俺も好きな作品を誰かに勧めて、読み始めてくれたら嬉しくなるだろうしな」

恭介(今度朱鷺戸と理樹にスクレボを全巻渡すか)

ナツキ「……?」

恭介「ん? そういうの、無いか?」

ナツキ「えっと、わたしは……よくわからないというか」

恭介「なんだ、友達とマンガの話したりしないのか」

ナツキ「あんまりしつこく聞かないでくれる?」

恭介「すまん……」

ナツキ「こんなの友達に読ませられるわけないでしょ」

ナツキ「みんなマンガは子供の娯楽だと思ってるし」

ナツキ「こんな話をしたら絶対……」

ナツキ「『え〜? まだそんなの読んでるの〜』って言われるんだから」

ナツキ「顔を殴ってやりたくなるわ……」

恭介「あー、居るよなそういうやつ」

ナツキ「自分の部屋に置くことすらためらうもの」

ナツキ「パパに見つかったらどうなるかわからないし」

恭介「なるほど、だから部室か」

ナツキ「そうよ、モニカのことはさておき……」

恭介「まあ、置いてた甲斐はあったじゃないか」

恭介「俺にこうやって読ませてくれてるんだ」

ナツキ「なんの解決にもなってないじゃない」

恭介「でも、楽しんでるんだろ?」

ナツキ「……」

ナツキ「……それが?」

恭介「いいことじゃないか」

ナツキ「も、もういいでしょ!」

ナツキ「続き、読むの? 読まないの?!」

恭介「もちろん読むさ」ペラッ

ナツキ「あはははははっ!!」
ナツキ「こういう展開だったの、すっかり忘れてたわ」」
ナツキ「ミノリがわたしが一番好きなキャラなんだけど……」
ナツキ「いつも運が悪いから同情しちゃうのよね」
ナツキ「でも特に酷いのがー」
恭介「待て、ナツキ。ネタバレはするな」
ナツキ「そ、そうね、まだそこは喋ったらダメね」
ナツキ「早くその話を読み終えて!」
恭介「わかったわかった」
恭介(普段、理樹達とマンガの話なんかしないから新鮮だな、こういうの)

モニカ「よし、みんな!」

恭介「ん?」

モニカ「今日の詩の準備はできてるかしら?」

恭介「今いいところなんだ」

ナツキ「そうよ、今すごくいいところなのに!」

モニカ「ごめんなさい〜」

モニカ「時間は十分に取っておきたいの」

恭介「待ってくれ! せめて全巻読み終わるまではっ!」

ナツキ「長すぎよ!」

モニカ「二人とも、そこが居心地よさそうね。ふふふっ!」

ナツキ「えっ……?」

ナツキ「な、なっ……!」ズザザッ

恭介「分かった、今日はここまでにしておくか」パタン

ナツキ「えっ、返すの……?」

ナツキ「続きが気にならないの?」

恭介「そりゃあ気になるさ、けど、時間って言われちゃな」

ナツキ「バカね」

ナツキ「持って帰ればいいじゃない」

恭介「いいのか!?」

ナツキ「当たり前でしょ」

ナツキ「そうでもしないと一生読み終わらないし」

ナツキ「明日までに読み終えて、次の巻に進みましょう」

恭介「明日までに全部か……徹夜コースだが、望むところだ!」

ナツキ「はぁ!? そんなわけないでしょ、一巻の残りだけよ」

恭介「なんだ、そうだったのか」

ナツキ「あ、それと折ったら殴るから」

恭介「流石に借り物にそこまでしないさ」

恭介(そうは言ったが、慎重に扱わないとな)

モニカ「ところで、昨晩ちゃんと忘れずに詩を書いてきたかしら?」

恭介「ああ! もちろんだ」

モニカ「さて、みんなも準備できたみたいだし、詩を見せる相手を見つけましょう」

サヨリ「もう待ちきれないよ〜」

恭介「よし、じゃあ俺からだな」

モニカ「……?」

恭介「なんだ、全員の前で発表するんじゃないのか?」

モニカ「いえ、個人個人でお互いに見せ合う予定だったんだけど」

モニカ「恭介くんがそうしたいなら、してもいいわよ」

ナツキ「わたしはやらないからね」

ユリ「私も、それはちょっと……」

恭介「まあ、無理強いはしないさ。俺が勘違いしてただけみたいだしな」

恭介「それでは記念すべき第一回、文芸部で詩を見せ合う会の一番槍はこの俺、棗恭介渾身の一発だ!」

春の宵

肘からロケット

目からビーム

上半身だけ

スーパーテクノロジー

ナツキ「……」

ユリ「……」

サヨリ「……」

モニカ「.……ええと、これは何?」

恭介「何って、詩だ」

ユリ「何故肘からロケットが……?」

モニカ「なんでそんなメカメカしくするのかしら」

サヨリ「私は、好きだけどな〜」

ナツキ「というかこれ詩なの? 短歌じゃない?」

恭介「なんだよ! 味方はサヨリだけかよ!」

恭介「それに短歌は詩の一種だからいいだろ!」

ナツキ「サヨリ、甘やかしちゃダメよ、じゃあどこがよかったか言ってみなさい」

サヨリ「うっ……それは……」

サヨリ「ええと……その……」

ナツキ「ほら、サヨリも気を使ってるだけじゃない」

恭介「くっ……四面楚歌か」

モニカ「まあでも、個性的なのは悪いことじゃないと思うわ」

ナツキ「ふざけてるだけじゃないの?」

恭介「いいや、それは違う」

恭介「俺は大真面目だ」

ユリ「真面目にやってあれを書けるなら、ある意味才能かもしれませんね……」

サヨリ「でしょ〜、わたしは恭介の才能を見抜いて好きって言ったの」

恭介「そこはかとなくバカにされてるニュアンスを感じるが」

モニカ「そんなことないわ」

恭介「へっ、それじゃあ他の連中は、もっといい詩を書いてきたんだろうな」

ナツキ「あんた、よくあれでそんな自信満々になれるわね、まあハードルが下がってちょうどいいけど」

ユリ「じゃあ、次は私から……」


恭介(それから俺たちは、お互いの詩を見せ合い、感想を言い合った)

恭介(途中、ユリとナツキの口論がヒートアップしたが、恐らく文学性の違いからだろう)

恭介(それに関してはサヨリがその場をおさめ、俺が出る幕は無かった)

モニカ「よし、みんな!」

モニカ「そろそろ時間のようね」

モニカ「詩を交換してみてどうだった?」

サヨリ「すごく楽しかったよ!」

ユリ「ええ、やってみる価値はあったと思います」

ナツキ「良かったわ。まあ、そこそこ」

モニカ「恭介君はどうだった?」

恭介「ああ、いい体験になった」

モニカ「良かった!」

モニカ「それなら明日もやってみよっか」

モニカ「あなたもみんなから何かを学び取れたかもしれないでしょ」

モニカ「きっとより素敵な詩が書けるはずよ!」

恭介「おう! 明日はリベンジマッチだ」

サヨリ「恭介!」

恭介「ん?なんだサヨリ」

サヨリ「帰りの支度できた?」

恭介「ん、ああ、行こうか」

サヨリ「えへへ〜」

帰り道


サヨリ「あのね、恭介……」

サヨリ「わたし、恭介と一緒に部活できて嬉しい」

サヨリ「でもみんなと打ち解けてく恭介を見てるのが、わたしの一番の幸せなの」

サヨリ「みんな恭介のことがすっごく好きなんだもん!」

恭介「それは……」

サヨリ「えへへ〜」

サヨリ「毎日がどんどん楽しくなっちゃいそう〜」

恭介「そうだな、これから先も、楽しくしていこう」

サヨリ「そうだね〜」

恭介「ああ、そうだ。少しだけ寄り道していいか」

サヨリ「寄り道?」

恭介「詩の題材に、ちょっとな」

空き地


恭介「さて、ここだ」

サヨリ「ここって、近所の空き地だよね? ここを題材に詩を書くの?」

恭介「いや、ここである生き物を呼ぶ」

サヨリ「ある生き物〜?」

恭介「さぁて、一体なんでしょう」カシュッ

サヨリ「それって......猫缶?」

恭介「ご名答、この前セールで売ってたモンペチだ」

サヨリ「って事は、呼ぶのは猫?」

恭介「ああ、サヨリが文芸部に入って一人で帰るようになった時に偶然見つけてな、仲良くなったんだ」

サヨリ「どんな猫なの?」

恭介「真っ白な毛並みで大人しくて、可愛いぞ」

サヨリ「早く来ないかな〜」

恭介「まあそう焦るな、猫は気まぐれだからな」

レノン「ニャーオ」

サヨリ「あ、来た! あの子?」

恭介「そうだ、あの猫だ」

レノン「......」ムシャムシャ

サヨリ「食べてるね……」

恭介「食べてるな」

サヨリ「おいでおいで〜」

レノン「……」トテトテ

サヨリ「よ〜しよ〜し、いい子いい子〜」

恭介「サヨリの言うことはよく聞くな」

サヨリ「恭介の言うことはは聞かないの?」

恭介「いや、俺の言うことも聞いてくれるんだが……モンペチが必要だ」

サヨリ「ぎぶあんどていくの関係なんだね」

恭介「まあ、そういうところだ」

サヨリ「それで、この子で詩を書くの?」

恭介「ああ、題材はこいつだ」

サヨリ「猫ってことは、ナツキが好きそうな可愛い詩になるのかな〜」

恭介「もしかしたら、猫に書かせる詩にかもな」

サヨリ「猫が書くの?」

恭介「猫だって詩は書くさ」

サヨリ「へえ〜」

恭介「さて、じゃあ帰るか」

レノン「ニャーゴ」

サヨリ「えっ、その子連れて帰るの?」

恭介「ああ、題材にするからな、ちょっと観察して、すぐ帰すさ」

恭介宅


恭介(今日の活動でなんとなくGMは絞れた)

恭介(恐らくメインはモニカだろう、だが他の協力者が居ないとは限らない)

恭介(あの時の健吾や真人のような協力者が居るとしたら、ユリが一番怪しいが)

恭介「あの二人の監視は頼んだぞ、レノン」

レノン「ニャー」

恭介「さて……マンガ読んでから、詩を書くか」

>>1 です
ひとまず書き溜めていた分を投下し終えました
どれだけの方が見ているかわかりませんが、これから完結まで一日一回以上の投下を目指していきたいと思います

期待乙

>>1 です、遅くなりましたが、更新します

>>58 ありがとうございます!

部室


サヨリ「あっ、恭介~」

恭介「よっ、サヨリ」

サヨリ「ねえ恭介、お菓子買いに行かない?」

恭介「いや、遠慮しておく」

サヨリ「え?」

サヨリ「そ、そんな、らしくないよ!」

恭介「実はな」

サヨリ「実は……?」

恭介「おまけ付きのお菓子を買いすぎて金がない」

恭介「だから一緒に買いに行けないんだ」

サヨリ「そんな~!」

サヨリ「というか恭介、なんでおまけ付きのお菓子なんて……」

恭介「仕方ないだろ、スクレボとのコラボ商品だったんだ」

サヨリ「むう……」

恭介「ただ、そのせいでチョコレートだけは沢山ある。一緒に食おう」 ドサッ

サヨリ「恭介~~! ありがとう!」

恭介「ふっ、どうってことないさ」

恭介「あっ、でも中に入ってるおまけは全部俺のな」

サヨリ「は~い」

ユリ「ふふふ」

恭介「ん?」

ユリ「……あっ!」

ユリ「ただ本に……面白いところがあって……」

恭介「丁度いい、ユリも手伝ってくれ」

恭介「量が多くてな、二人じゃ食いきれない」

ユリ「あっ……で、でも」

ユリ「チョコレートは……その、本が……汚れてしまうので」

恭介「あぁ、それもそうだな」

恭介「すまん、気が回らなかった」

ユリ「い、いえ……そんな……」

サヨリ「恭介! なんか出た!」

恭介「うおおおお!!! シークレットじゃねえか!」

ナツキ「なにやってんのよあんた達」

サヨリ「あっ、ナツキちゃん!」

恭介「ナツキか、お前もちょっと手伝ってくれ」

ナツキ「何をよ」

恭介「おまけ付きのお菓子だ、買いすぎちまってな」

ナツキ「チョコエッグ、こういうのまだあったのね」

恭介「なんだ、ナツキはこういうの知ってるクチか」

ナツキ「まあ、ちょっとだけね」

サヨリ「またなんか出た!」

恭介「うおおおお!! またシークレットかよ!?」

ナツキ「ああもううるさい! 騒ぎ過ぎよ」

ナツキ「モニカも何か言ってやりなさいよ」

ナツキ「……って?」

ナツキ「モニカはどこよ?」

ユリ「さあ……?」

ユリ「誰か、モニカちゃんが今日遅れるということを聞いていますか?」

サヨリ「聞いてないよ……」

恭介「聞いてないな」

ユリ「うーん……」

ユリ「珍しいですね」

サヨリ「大丈夫だといいけど……」

ナツキ「大丈夫に決まってるじゃない」

ナツキ「ただ何か用事でもあるんでしょ」

恭介「そうだな、なんてったって人気者だしな」

恭介「彼氏の一人くらい居たっておかしくはない」

ユリ「だとしても、特に驚きはありませんが」

ユリ「私たち全員が束になっても敵わないくらい魅力的ですから」

サヨリ「えへへ、そうだね……」

ナツキ「なんですってえ!」

モニカ「ごめん! 本当にごめんなさい!」ガラッ

恭介「おっ、来たな」

モニカ「遅れるつもりはなかったの……」

モニカ「心配かけちゃったかしら!」

サヨリ「おお?」

さより「モニカちゃんが彼氏より部活を取った!」

モニカ「か、彼氏……?」

モニカ「一体何のことを言ってるのよ?」

恭介「いや、気にしないでくれ」

恭介「ところで、何かあったのか?」

モニカ「ああ……」

モニカ「最後の授業が自習だったから、時間の事をちょっと忘れちゃってて……」

モニカ「あはは……」

ナツキ「それにしたって納得はできないんだけど」

ナツキ「チャイムの音くらいは聞こえたはずでしょ?」

モニカ「ピアノの練習をしてたから、全然聞こえなくて……」

ユリ「ピアノ……?」

ユリ「モニカちゃんが音楽も上手だなんて知りませんでした」

モニカ「いや、そうじゃなくて……」

モニカ「最近始めたばかりなの」

モニカ「ずっとピアノをやってみたいと思ってたから」

恭介「そりゃ凄いな、やってみようと思って始められることじゃないぜ」

サヨリ「すごーい!」

サヨリ「何か弾いてみてよ、モニカちゃん!」

モニカ「それは……」 チラッ

モニカ「もう少し上手くなったら、ね」

サヨリ「やった~!」

恭介「俺も、楽しみにしてる」

モニカ「そう?」

モニカ「だったら……」

モニカ「恭介君をガッカリさせないためにも頑張らなきゃ」ニコッ

恭介「ああ、頑張ってくれ」

モニカ「ありがとう!」

モニカ「それで、私のいない間に何かあった?」

恭介「ああ! サヨリのやつすげえんだぜ? 二回連続でシークレットを出しやがった」

モニカ「シークレット?」

ナツキ「お菓子のおまけよ」

モニカ「ああ……なるほどね」

恭介(その後、メンバーの行動は落ち着いてきたようだ)

恭介(そしてクローゼットの方へと向かったナツキが俺のところに来るまでは、そう時間はかからなかった)

ナツキ「……」

恭介「お目当ての物はこれだろう? 心配するな、ちゃんと約束は守った」

ナツキ「……」パシッ

ナツキ「……」ペラペラ

恭介「おいおい、そこまでいい加減な扱いはしてないさ」

恭介「俺だってマンガはよく読むんだしな」

ナツキ「確認したかっただけよ!」

ナツキ「疑い深くて悪かったわね」

ナツキ「人に漫画を貸すことなんてないんだから」

恭介「ま、そりゃそうか」

ナツキ「とりあえず、これをしまってくるわ」

ナツキ「ついでに、次の巻も取ってくるわ」

クローゼット


ナツキ「さて、感想をしっかり聞かせてくれるのよね?」

ナツキ「どこまで話が進んだの? 忘れちゃったわ」

恭介「ああ、最後の話はミノリとアリスがだな……」

ナツキ「モニカ!」

ナツキ「また私のマンガ動かしたの!?」

モニカ「あっ、ごめんごめん!」

モニカ「人の棚を占領しすぎだ、って先生に怒られちゃって……」

モニカ「だから物を動かして片づけないといけなかったの」

モニカ「ちょっと整理しただけで、物は全部そこに入ってるから!」

ナツキ「もう……」ピョンピョン

ナツキ「まったく……!」

ナツキ「不便で仕方ないわ!」

ナツキ「これ、全部下に降ろすわ」

ナツキ「棚のスペースはまだいっぱいあるんだし」

恭介「言ってくれれば俺が取ってやるが」

ナツキ「いいわよ! そういう気づかいは」

ナツキ「それにマンガが綺麗に並んでるのを見ると気持ちがいいんだもの!」

ナツキ「それをなんで最上段にすることで無駄にしなきゃいけないのよ」

恭介「それだったらナツキ、そこにスツールがあるから使うといい」

ナツキ「ん……わかってるわよ」カチャカチャ

ナツキ「よい……しょ……」

ナツキ「届いた!」

ナツキ「きゃっ――!」グラッ

ナツキ「わわっ――」スタッ

ナツキ「ほ、ほら見なさい!」

恭介「全く、危ないじゃないか」

恭介「大きい箱の方は俺が取ってきてやる」

ナツキ「手伝いはいらないわ」

ナツキ「椅子を取ってくるから待ってなさい」

ナツキ「……」カラカラ

恭介(教師用の机からオフィスチェアを持ってきたか)

恭介「手伝いは要らないと言ったんだ、手は貸さないからな」

ナツキ「んしょっ――」

ナツキ「はい! これでよし!」

ナツキ「ほらね? 簡単にできるようになったでしょ」

ナツキ「わ、わっ――」クルクル

恭介(椅子が回転した……そろそろ危ないか)

恭介「抑えておこう」ガシッ

ナツキ「あ、ありがと……」

恭介(ん……)

恭介(しまった! ここからじゃスカートの中が見えちまうじゃねえか!)

恭介「くっ—―」

ナツキ「うっ……重い……」

ナツキ「ちょっと、恭介……」

ナツキ「屈むと椅子から落ちちゃう……急いでこれ持って……」

恭介「だが、手を離すと椅子が動いちまうぜ?」

ナツキ「いいから……! ほんの一瞬だから! 早く!」

恭介「わかったわかった、今立つから」

ナツキ「あんた立つってどういう……」

ナツキ「えっ……?」

恭介「ナツキ、箱を—―」

ナツキ「な、何見てんのよ!?」

ナツキ「あんた覗こうと……す、スカートを……」

恭介「違う! 誤解だ! 俺はただ!」

ナツキ「へ、変態!」

ナツキ「出て行って! 出てけ!」

ナツキ「この……あっ」ガタッ

恭介「危ない!」

ナツキ「きゃああああ!」ドンガラガッシャーン

恭介「くっ……」

ナツキ「う――うぅ……」

恭介「大丈夫か? ナツキ」

ナツキ「えっ……」

ナツキ「う。うぅぅぅ……!」

ナツキ「キモい!キモい!」ボカボカ

恭介「ぐはっ――!」

ナツキ「本っ当に何考えてるの?!」

ナツキ「この変態!」

恭介「ぐはぁっ―――!」

モニカ「みんな……大丈夫……?」

モニカ「大きな音が聞こえたんだけど…」

ナツキ「モニカ!」

ナツキ「マンガの棚を一番上に置こうとか何考えてるの!?」

ナツキ「部員を殺そうとでもしてんの?」

モニカ「ご、ごめんごめん!」

モニカ「あはは……」

ナツキ「あっ、あともう一つ」

ナツキ「あんたが入れた新入部員は全くの変態だったみたいね」

恭介「おいおい、それは誤解だ」

モニカ「わかってる、わかってる、心配しないで~」

ナツキ「あっ!」

ナツキ「わたしの……わたしの……」

恭介「ん?」

恭介(どうやら開いたまま落ちてしまったらしく、マンガについた折り目を伸ばしている」

ナツキ「ぐすっ……」

恭介「ナツキ、大丈夫か」

ナツキ「うるさい!」

恭介「……折り目を伸ばすの、手伝おう」

ナツキ「違うの……」

ナツキ「そんなことはいいの……」

ナツキ「ただ……」

ナツキ「今日は……本当にツイてなくて」グスッ

ナツキ「あんたに当たるつもりはなかったの……」

ナツキ「本当にそのつもりはなかったの!」

恭介「大丈夫だ」

恭介「よかったら俺に話してみてくれ、辛い事、何があったか、なんでもいい」

ナツキ「ただ……毎日……つらくて」

ナツキ「わたしはただ……部活に来て……っ」

ナツキ「……」

恭介「わかった、じゃあ、俺はこれを片付けておく」

恭介「残りのマンガも移動させておく」

恭介「それと……」

ナツキ「それと……?」

恭介「本当は部活終わりにコッソリ追加しておくつもりだったんだが」

恭介「お前を元気付ける為だ、ちょっと待ってろ」

ナツキ「……?」

恭介「このカバンの中、何が入ってると思う?」

ナツキ「……さあ」

恭介「さてご照覧あれ!」

恭介「チャーンチャチャーチャチャチャチャチャチャーン」

恭介「……待て。案外重い、ゆっくり出すから待ってろ」

ナツキ「ぷっ……あはは!」

ナツキ「しまらないわね!」

恭介「笑うない!」

ナツキ「それで……それはマンガ?」

恭介「ああ! 俺の人生のバイブル、『学園革命スクレボ』だ!」

ナツキ「……いいの?」

恭介「何がだよ」

ナツキ「だって、部室に置いたらあんたが家で読めないじゃない」

恭介「心配ご無用! 家にはコミックス版、文庫版、コンビニ版、全部そろってるからな」

ナツキ「筋金入りね」

恭介「それに」

恭介「友達に貸すんだ、家で読めない事くらいなんともない」

恭介「パフェガールを貸してもらった礼でもあるしな」

ナツキ「あんた……優しいのね」

恭介「へっ、よせやい」

恭介(その後、二人でクローゼットを片付けた)

恭介(ナツキも少しは元気になったようだ)

恭介(そしてしばらくすると、モニカからの呼びかけがあり、詩を見せ合う時間になった)

今日はここまでです、明日もまた、更新していきたいと思います

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