【ミリマス】志保「私に、妹」 (42)


※志保の口調がぶれます。ぶれます。

===

志保「ある日の765プロ劇場にて、何気ない会話が私の興味を刺激した」


やよい「そうしたらウチの妹が」

まつり「姫の妹も同じなのです」

このみ「私の場合、『いい歳なのに似合ってるね~』とか言われちゃってぇ」

貴音「ふふっ。どの家の妹も少なからず、姉に対する憧れの気持ちがあるようですね」


志保「家族談義、ううん。"妹談義"に花を咲かせるメンバーを見て」

志保「内容はそう、『姉のアイドルとしての活動を、妹はどう見ているか?』」


志保「……気になる」

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志保「でもウチは弟一人だから」

志保「アイドルをしてる私を見て『お姉ちゃんみたいなアイドルになる!』」

志保「……なんて言ってくれたりはしないのだ」

志保「そもそも私の真似をして、スカートとか履かれても困る」

志保「……似合いそう。ううん、りっくんなら絶対似合うと思うけど」


想像上の北沢陸『お、お姉ちゃん……似合う?』キュンキュン♪


志保「うっわ、ヤバ。めっちゃ似合う」

静香「……ヤバいのは急に鼻血垂らし始めたアナタよ志保」


静香「なに? 突然のぼせでもした?」

志保「……別になにも。ティッシュちょうだい」

静香「はい」

志保「ありがとう」

静香「どういたしまして、お義姉ちゃん」


志保「……は?」

静香「え?」

志保「待って、待って、少しいい?」

静香「ど、どうぞ?」


志保「ここ、私の家」

静香「ええ」

志保「アナタは最上さん家の静香ちゃん」

静香「そうね」

志保「……お義姉ちゃん?」

志保「しかもさも当然のように私の部屋に座ってるし」


静香「……それは、不本意だけど仕方が無いじゃない」

静香「この家はそもそも部屋数が少ないし」

静香「まさか父親の再婚相手がアナタのお母さんなんて思わないし」

志保「はいダウト。嘘、嘘をついた」


志保「再婚した? そんな記憶はドコにも無い――」

静香「結婚式の写真、見る?」

志保「も、最上姓になった覚えも無いし――」

静香「はいこれアナタの学生証」

志保「……仮にその話がホントだったとして」

静香「事実よ」

志保「生まれ的に、妹になるのは私じゃないの?」


静香「…………ご都合主義」

志保「なによそれ」

静香「知らなかった? 例え世界が変わる程の矛盾があったとしても」

静香「その最終的な辻褄は全て、アイマス時空によって歪められる」

静香「そう、例えば双海家の姉・妹が突然逆になったように」

静香「私たちが何度も年を越しているのに、一向に歳はとらなかったり」

静香「実は今いるこの世界は、幾度もの崩壊と創造の果てに生まれた物だったり」


志保「そ、そんなバカげた話があるワケないじゃない! 妄想もいい加減にして!」

静香「それがあるのよ。志保、落ち着いて思い出してみて」

静香「……最近古代の遺跡から、茜ちゃん人形型の土器が出土して大騒ぎになったりもしたでしょう?」

静香「それだけじゃない。世界各地では空を散歩する麗花さんの目撃例も後を絶たない――」


志保「嘘よ! そんな、話、話が……あ! ああぁっ!?」

志保「記憶が! 経験したハズの無い思いでの数々が私の頭の中に浮かんで来る!」

静香「ねっ? だからほら――大きな流れに身をゆだねて」


静香「お姉ちゃ~ん、お姉ちゃ~ん。志保は私のおねーさーん」

志保「イノセントなボイスっ! 耳元で囁くのはやめてぇっ!!」


志保「あっ!! ああ! あああぁぁぁぁ~~~~!!!?」グルグルグルグルグル…

===

志保「はっ!?」ガバッ!

志保「こ、ここは私のベッドの上?」

志保「……そうだ、私、今日は熱を出して……」


志保「はぁ~……嫌な夢を見た」

志保「ああいうのをとびっきりの悪夢って言うのかしら?」

志保「大体、突拍子も脈絡も無さ過ぎるわ。"あの"静香が私の妹とか……」


想像上の妹静香『こんな時期に体調を崩すなんて、志保は普段から気を張り過ぎなのよ』

妹静香『幸い陸君も私に懐いてくれてるし、家のことだって手伝うから』

妹静香『……とりあえず熱は下がったわね。うどんなら、どう? 食べられそう?』

妹静香『熱いから、ちゃんと冷まして……ふー、ふーっ……はい、あーん』

妹静香『ホント、世話が焼けるお義姉さんなんだから。……ふふっ』



志保「おうっふ、ヤバい。ヘンな笑い出る」

志保「……心底アレが夢でよかった」

志保「だいたい、私に妹なんて――」


海美「お姉ちゃん! 学校から急いで帰って来たよ!! 私が看病したげるからねっ!」バコーン!

志保「海美一人しかいないんだし」


海美「はい体温計! アイスノンね! 着替えさせてあげるから万歳してっ!!」

志保「ばんざーい」

海美「うん! 腕がピンと伸びてるナイス万歳!!」

海美「もぉ~~! 私ホントに、ホントにっ、ほんっとぉ~~~にっ!」

海美「『お姉ちゃんが家で苦しんでたらどーしよー?』とか!」

海美「『ご飯もちゃんと食べれてるかな?』とかっ!!」

海美「『お水を飲みに行った帰り、廊下で倒れてたりしたら!?』なんてぇ~……!」


海美「気が気じゃなくてっ!!」

志保「うん、ありがとう。分かったから耳元で怒鳴るのは止めよーね」

海美「はっ!? そ、そうだよね。お姉ちゃん病人だしうるさくするのはよくないよね……」

海美「分かった! 私、今から少し静かにするよー!」


海美「すぅぅ~――はむっ!」←思い切り空気を吸い込んだ

志保「それじゃ海美、悪いけど背中拭いてもらっていい?」

赤べこ海美「……!」コクコクコク!

志保「肌着は、お姉ちゃん自分で脱げるから……。んしょ」

張り切り海美「…!!」ゴシゴシゴシ!

志保「ん、力加減はちょうどいいよ」

ストップ・ザ・海美「……っ!!?」ピタッ

志保「ど、どうかした? 海美」

海美ジェスチャー「!!?、!! !!!!!!?っ!」


志保「……ごめん。喋っていいから」

海美「ホントに? いいの!? よかったー!!」プハー

海美「いやぁ~……息するのも我慢してたからさ!」

志保「だと思った」

海美「もう少しで私が倒れるトコだった! てへへ~♪」


海美「ホント、危ない危ない!」

海美「これからお姉ちゃんに美味しいお粥☆ 作ってあげるつもりだったのに~」

志保「え゛っ、あっ、海美。私、今少し食欲が――」


海美「大丈夫! お粥はお腹に優しいしっ!」

海美「食欲だって、料理を前にしたら出て来るから!」

海美「それじゃ、お姉ちゃんはゆっくり休んでてね!」

海美「すぐにまた戻って来るからねっ!!」

海美「私、今スッゴクスッゴク嬉しいんだ! いつも迷惑かけてばかりだから――」

海美「お姉ちゃんの役に立てるのがっ! えへへ!」


志保「う、海美……!」

海美「お姉ちゃん……!」


志保「それで出来上がったこのお粥、見事なまでに焦げてるわね」

海美「でもでもちゃんと味見はしたよ!?」

海美「……たまにガリッとするトコはあったけど……うぅ~」



志保「海美」

海美「ん」

志保「誰も食べないなんて言ってない。だから泣きそうな顔しないの」

海美「うぅ、ど、ドキドキするぅ~!」

志保「(アナタより私の方がよっぽど)……頂きます」パクッ…モゴモゴモゴ

海美「ど、どうかな? 美味しい? 食べ物の味する!?」

志保「……! ……!?」

志保「げっふ! ごふっ!? にゃぁぁぁぁ~~~~!!!?」グルグルグルグルグル…

海美「おっ、お姉ちゃーん!!?」

===

志保「大丈夫、一命はとりとめたから!! ……って、あれ?」

志保「……ソファでうたたねしちゃってた」

志保「おまけに知らない子が妹の夢を見るとか」

志保「私、仕事で疲れてるのかな……?」



志保「――なんてことがさっきあって」

風花「へぇ、疲れてるの?」

志保「うん、多分……そうかも」

風花「ならお姉ちゃんも一緒に、私とネコカフェに行ってみない?」

志保「ネコ……カフェ?」

風花「そう! カワイイ猫さんたちと触れ合ったら」

風花「日頃の些細なストレスなんて、もう空に飛ばすみたく『ポーン!』って!」


志保「カワイイ猫さん……! く、黒猫も!?」

風花「もちろん居るよ。行ってみる?」

志保「行く」

風花「来ました!」

店員「いらっしゃいませー」カランカラーン


猫さんA「にゃん、にゃん♪」

志保「にゃーっ♪」

猫さんM「にゃおにゃ~?」

風花「にゃーんっ♪」

猫さんU「う~、にゃーっ!!」

風花「元気いっぱい! にゃ~、にゃ~~♪」


志保「……待って、その猫はさっき見た気がする」

志保「って、いうか一緒に暮らしてた気さえもする」

猫さんU「うにゃん? にゃ☆」

志保「あー、でもダメ。あー、ダメ。口元が全然しまらない」

志保「……はぁ、猫さん。猫さん……♪」

風花「こぶんちゃんもおいで~、ほら、おいで~」クフフー


志保「そういえば、風花はココの常連なの?」

志保「前から通ってたみたいだけど、最近は特に頻繁だし」

志保「……もしかして仕事で嫌なことでもある?」

志保「こんな場所で突然なんだけど、お姉ちゃん相談に乗ってあげるよ?」


風花「えっ!? べ、別にそんなこと無いけど……」

志保「ホントに? お姉ちゃんの目を見て言える?」

風花「……うっ」

志保「風花」


風花「……あのね、アイドルのお仕事でね」

志保「うん」

風花「水着のお仕事ばっかり来て」

志保「あっ、この黒猫さんスッゴク男前」

風花「お姉ちゃん、その子女の子だよ……じゃなくて!」


風花「水着のお仕事ばっかりなの! 恥ずかしいカッコもさせられるの!」

風花「私の中のアイドルって、もっと清純で清楚なイメージだったのにぃ……」

風花「幻滅しちゃったって言うか、現実見ちゃったって言うか」

風花「はぁ~……多分、あのプロデューサーさんも原因なんだとは思うけど」


志保「なら早く担当を変えてもらいなさいよ」

志保「セクハラまがいのことをされてまで、黙ってる必要無いじゃない」

風花「う、うん。そうなんだけど……」


風花「でもね? あの人の言った通りにお仕事をこなしてたら」

風花「こんな私を応援してくれるファンの人たちが出来て」

風花「写真集はエッチな感じだけど、CDのジャケットは凄く綺麗な物にしてくれたり」

風花「歌も、大人っぽい上品な曲を用意してくれて」

風花「最近はそんなギャップだけじゃない、私自身の魅力……っていうのかな?」

風花「ちゃんと、そういうところも見てくれるファンの人も増えて」


風花「そんな風にお仕事を続けてたら、あんなプロデューサーさんだけど」

風花「『あっ、この人と一緒に居るのも悪くないな』……なんて、えへへ」

風花「思っちゃったり……ドキドキ、したり」



志保「ごめん風花。恋愛相談は専門外」

風花「もっ、もぉ! お姉ちゃんまでこのみさんたちと同じこと言う!」

志保「だってそれ後半のろけじゃないの! 三十路の独り身にハードパンチ!」


志保「ああ! もう! 堪らなくむしゃくしゃしちゃうじゃない……」

志保「猫さん、猫さん、癒してにゃ~ああぁ、あああぁぁぁぁ~~~~!!!?」モフモフモフモフモフモフエン…

風花「お、お姉ちゃんしっかり! それお客さんで来てる他所の子だよ!?」

===

志保「――もふもふしてる」ハッ!

ロコ「されてる。……もう満足した? お姉ちゃん」


ロコ「満足したら、早く頭から顔どけて」

ロコ「私、工作してるから……危ないよ」

ロコ「お姉ちゃんの服にペンキついちゃう」

志保「……まだ不満。もうちょっとだけ。路子の髪質最高なの」

志保「さっきもちょっと意識が飛んじゃったし。気持ちよくて」

ロコ「ごめん。換気は出来てるハズだけど……」


志保「……すぅぅ~~~………はぁぁぁ~~~~」

志保「なんだろうね? 路子の髪は宇宙だよね」ワシャワシャワシャ

ロコ「分かった。多分、その深呼吸が原因だよ」


志保「でもねでもね。止められないよ」

志保「お姉ちゃんはさ、仕事明けで路子の髪に顔を埋めてる時」

志保「"生きてる"ってコトをひしひし実感してるから」

ロコ「……重い」

志保「あ、ごめん。体重かけ過ぎた?」

ロコ「そういうことじゃなくてですね! ……あ、いいや」


志保「……ねぇ、今さ」

ロコ「…………」

志保「今"ロコ"出たね」

ロコ「出て無い」

志保「ロコだったじゃん」

ロコ「違うもん」

志保「恥ずかしがってる~♪」ツンツン

ロコ「もおぉ~! ペンキつけるよ? つけるよっ!?」プルルルルル…


ロコ「あっ」プルルルルル…

志保「電話鳴ってる。でーんーわ」

ロコ「…………」プルルルルル…

志保「……出ないの?」

ロコ「うっ……で、出るけど」プルルルルル…ピッ


ロコ「……はい、もしもしロコですけど」

ロコ「プロデューサー? ……えっ!? この前描いたイメージボードが――」

ロコ「社長のビジョンと? ベストマッチの? スペースシアターをロコナイズ――」

ロコ「もちろんです! やります! 任せてください!」

ロコ「その為のロコとロコアートですから!」

ロコ「それじゃあ、また、シアターで。はい、はい――」ピッ


ロコ「……えへ」

ロコ「えへへ、えへぇ~……♪」

志保「嬉しそう」

ロコ「わわっ!? お、お姉ちゃんいつからそこに――」

志保「ずっといたずっといた。路子の髪をもしゃもしゃしてた」


志保「で、何の話だったの?」

ロコ「ん……最近、劇場でロケットを作ってて」

志保「ロケット?」

志保「ロケットなら今も作ってるよね? ほら、その模型」

ロコ「これもだけど、違うの。ちゃんと宇宙に飛んでく方のロケット」

志保「……ペットボトルで?」

ロコ「これは模型で本物はアルミ!」

志保「ア、アルミホイルが宇宙を飛ぶっ!?」

ロコ「合金! アロイ! お姉ちゃん分かってて聞いてるよね!?」

志保「うん。怒ってる路子可愛いから」


ロコ「……それで、そのロケットの行き先はスペースシアターなの」

志保「宇宙劇場? ……そういえば路子のいる765プロダクションって」

志保「最近宇宙開発も始めたんだっけ。確か」

ロコ「うん。宇宙に劇場を作るのも、社長の夢の一つだって」


ロコ「それでね? そのシアターの外観イメージに」

ロコ「私の描いた絵がピッタリだって、採用する方向で話を進めるって」

ロコ「さっきの電話はそんな電話。プロデューサーが教えてくれた」

志保「へぇ……やるじゃん。凄いじゃない、それ」


ロコ「そ、そう?」

志保「うん、凄い。流石は私の妹だね」

志保「それじゃあ劇場が完成すると」

志保「みんなが見上げる空の先に、いつでもロコの作品が浮かんでることになるんだ」

ロコ「ま、まぁ……そういう風にも言えるのかな?」


志保「だけどそれ想像してみて、凄いって! 世界中の人に見られるんだよ?」

志保「人種も国境も関係なく、それこそ夜空に浮かぶ星みたいに!」

志保「ううん、太陽? 月かもしれない!」

ロコ「お姉ちゃん……。ちょっと大げさじゃない?」


ロコ「でも、まぁ、喜んでくれるのは嬉しいから」

ロコ「……もう少し、そのままのポーズでもいいよ。わしゃわしゃ……って」

志保「ホントに? じゃあ……すぅぅ~、はぁぁ~~~」

ロコ「う、ん。でもね? 深呼吸はね?」

志保「……あぁ……徹夜明けの脳に、シンナーと、ロコの匂いが」

志保「はああぁぁぁ~~~……でもさっきからホントに言いたいのは――」ロコロコロコロコロコ…

ロコ「お姉ちゃん? お姉ちゃん!? ね、寝るなら自分のベッドに行って……重い……!」

===

志保「――ロコさん口調が変ですよね!?」ガバッ!

志保「いや、家に居たらあれが自然なのかな? 流石に家の中じゃロコロコ言ってないだろうし」

目覚まし『なんとぉっ! なんとぉっ!』

志保「……って、なんだ、また夢? なんてリアルな夢だったの……」

目覚まし『なんとぉっ! なんとぉっ!』

志保「うるさい」カチッ

目覚まし『じゃーんっ!』

志保「ん……眠い、けど。ふ、あ……あふ。……でも朝は朝、か」


志保「それにしても、さっきから立て続けに悪夢を見る夢を見てる気がする」

志保「おまけに私のベッドがいつにも増して狭い気もする」

志保「理由の見当はつくものの、確認するのを躊躇っている自分も存在する」


志保「…………ちらっ」

翼「すー、すー」

志保「なんでこの子はココで寝てるの? 自分の部屋は隣でしょう……!」


志保「まぁ、いつもみたいに夜中に潜り込んで来たんでしょうけど」

志保「翼、ねぇ翼」ユサユサ

翼「んー」

志保「起きて。今日がいくら休日でも、お寝坊さんしちゃダメじゃない」

翼「……おねえ、ちゃん?」

志保「なあに?」

翼「もう五分ぅ……ダメぇ……?」


志保「もう、仕方ないわね。でも――」

志保「早く起きないとキスしちゃうぞ?」

翼「おきたっ!! 今バッチリわたし目が覚めたよ!!!」ガバッ!!

志保「……お姉ちゃん、ちょっぴり傷つくな」


志保「……それから、反対側にいるこっちも」チラッ

美希「くかー」

志保「美希さん、美希さん。起きてください」ユサユサユサ

美希「ん……志保?」

美希「ミキ、まだ眠いの……」

志保「むぅ、反抗的」


志保「美希さんも……早く起きないとキスしますよ?」

美希「んー?」

美希「……自分からできる? 志保」

美希「ミキの唇は……コ、コ、ねっ♪」トントン

志保「…………! で、できますとも!」


志保「…………」グググ

美希「ん~?」

志保「…………!」ググググ!

美希「ねぇ、早く」

志保「…………!!」グググ、ググッ!

翼「早く早くぅ~♪」ドキドキドキ

志保「…………!!?」ピキッ!



志保「翼!! いつまで私の部屋にいるの!!!」

翼「やだぁ! お姉ちゃん怒っちゃいや~~!!」

雑スレに読みたいな、と書いておいて結局自分で書いていた
とりあえずここまで。


美希「……ちゅっ」

志保「に゛ゃ……っ!!?」

美希「隙ありなの! 志保がしないからミキからね。……あふぅ」


志保「いっ、妹の前で止めてください」

美希「あれ? ミキにキスするんじゃなかったの?」

志保「そんなの……振りですよ、振り」

志保「羞恥心とか無いんですか?」


美希「少なくとも、恋人をヘーキで家に泊めるような――」

美希「お姉さんよりはあると思うな。あはっ♪」

志保「こ、今回はそうせざるをえない理由があったからで!」

志保「別にやましい思いなんて――」


翼「お姉ちゃん、朝ご飯まだぁ~?」

翼「まだ寝てたかったのに起こしたんだから、お姉ちゃんが用意するべきだよね~?」

志保「まだいたの!? ……分かったから、まず部屋を出て待ってて翼」

翼「ん~……やっ!」

志保「えぇっ!?」

翼「だってわたしが出てったら、お姉ちゃん美希センパイとイチャイチャし始めちゃうでしょ~?」


志保「し、しないわよ!」

美希「え~、しないの?」

美希「昨日は『満足なんて無い』みたいに、あんなに激しくミキのことを……きゃっ♪」

志保「美希さん!」


翼「えっ? えっ!? お姉ちゃん美希センパイをどうしちゃったの?」

翼「聞きたい、聞きたい、わたし聞きた~い♪」

志保「翼まで! もうっ!」


翼「ひゃあ!?」

美希「いやん!」

志保「二人とも廊下に出ていって!!」ダターン!



翼「あー……えっとぉ」

翼「……追い出されちゃいましたね」

美希「ミキ、まだ下着もつけて無かったのに……くしゅん!」


美希「ん~、しょうがないや。ねぇ翼」

翼「はい?」

美希「下着貸して? サイズが合うかは知らないけど」

翼「えっ、えぇ~!?」

翼「それってそれってもしかしてぇ~……」

翼「コ・ク・ハ・ク・? &乗り換え!? キャーっ♪」


志保「それは無いっ!」

美希「きゃん! 志保、引っ張るならもう少し優しく――」

翼「ああ! 美希センパイ連れてっちゃダメぇ~!」


志保「美希さんはホント、私がいないと服の一つも着れやしないんですから!」

美希「だって、志保がお世話してくれるし」

美希「志保だってミキのことお世話したいんでしょ?」

志保「私、美希さんの母親じゃないですけど」

美希「お姉ちゃんなら?」

志保「美希さんには、もうナオさんがいるじゃないですか」


美希「ん~、そうだけどね? お姉ちゃん大阪に住みだしてから変わっちゃって」

志保「変わった?」

美希「関西弁を使うようになって、サッカーに興味持ち出したの」

志保「それは……妙ですね。野球じゃないところが」

美希「でしょ? 抜けてることも多くなったし」


美希「だから、しっかりお世話してくれる志保みたいなお姉ちゃんが欲しいな~って」

志保「……私には翼がついて来ますよ?」

美希「その時は、姉妹仲良く相手してあげちゃうの!」

志保「なるほど。今日の朝食はパンが良いと」

美希「いや~、おにぎり! 志保のおにぎり~!!」


翼「で、今日はおにぎり?」

志保「心配しなくても翼には、パンだってちゃんと焼いてあげる」

美希「あん! 志保の特別は翼はばっかり」

志保「逆です、美希さん。我が家ではおにぎりが特別なんです」

美希「……そうなの?」

翼「そうですよー」


翼「でもそれならわたし、おにぎりがいい!」

美希「ミキは鮭入り!」

志保「……卵焼きはつける?」

翼「もちろん!」

美希「なの!」


志保「まったく、二人ともワガママね。……まるで妹が二人いるみたい」

翼「えー? 嫌なの? お姉ちゃん♪」

美希「こーんな可愛い妹だよ? お・ね・い・ちゃん♪」

志保「…………ふっ」←まんざらでもない


志保「これが私の幸せな日常。退屈は無く、恋人もいて、充実した日々を過ごしてる――でも」

志保「でもなにか、違和感を感じるような気も」

志保「私にはもっと繋がりの濃い、他の家族がいたような――」グルグルグルグルグル…

===

――そうして私は思い出した。ベッドの上で、すべての記憶、すべての過去を。

これまで、あまりに多くの"人生"を演じて来たために、
時折、どれがホントの事だったか混乱してしまうのは職業病と言ってもいいと思う。


私の名前はシホ・キタザワ。

日本出身の女優として、ハリウッドで活躍すること早や十数年。

久しぶりに訪れた休日に、遠い日本から我が家を訪れたのはすっかり見違えた弟の陸。

陸「久しぶりだね。姉さん」

身内びいきかもしれないが、数年ぶりに顔を合わせた弟はナイスな青年に育っていた。

……それに着ているスーツと物腰は、かつて私を芸能界で支えてくれた恩人の姿と重なって、知らず、涙がこぼれる。


志保「いらっしゃい陸。わざわざ飛行機じゃないと来れないのに」

陸「うん。でも、姉さんに直接会って聞いて欲しい大切な話があったから」

志保「大切な話?」

陸「……ほら、おいでよ」

そうして私は、陸に隠れるように立っていた一人の女性と対面した。

母親では、無い。しかし知らない顔でも、無い。


志保「……まさか、アナタは」

数年ぶりに会う彼女は、それでも当時の面影を残していて。

志保「――可奈?」

可奈「えへへ……。久しぶりだね、志保ちゃん」


可奈。矢吹可奈。かつて同じアイドル事務所で支え合い、
競い合った私の青春が色鮮やかな映像となって一瞬のうちに蘇る。

旧友との再会を照れ臭そうに迎えた可奈に、「大丈夫かい?」と寄り添う陸で全て察した。

……確かに。電話やメールじゃできない話だ。
当然、玄関先の立ち話で済ませられるような話でもない。

志保「いらっしゃい。歓迎するわ、二人ともね」


積もる話は多くあった。その晩は夜中まで語り合った。
柄にもなく酒を酔うほど飲み、私は随分と浮かれていたと思う。


……思い出話の中で陸は言った。

陸「ボクはね、小さな頃から姉さんを尊敬して生きて来たんだよ」

陸「姉として、時には母の代わりとして。手のかかるガキだったボクの面倒をよく見てくれた」

陸「……感謝してる。厳しくも優しい姉さんがいたからこそ、今のボクがあるんだから」


その言葉に、私は思わず胸をうたれてしまった。


陸「それにね。当然アイドルをしてた姉さんも……憧れだった」

陸「今だから話せることだけど、本気で姉さんみたいになりたいと思ってさ」

陸「小さな頃に一度、家にあったステージ衣装を勝手に着た事があって――」

可奈「えっ!? も、もちろんズボンの衣装だよね!?」


可奈、訊くべきところはそこじゃない。


陸「いや、スカートだったよ。……似合わなかったなぁ」

陸「だけど、かえってそれが良かった。ボクは姉さんとは違うんだってことを幼心に理解できたし」

陸「あれでもしも衣装が似合ってたら、もしかすると男なのに
本気で女性アイドルを目指したボクの未来があったかもしれない」

可奈「はぁ~。人に歴史有りだねぇ」


うんうんと頷く可奈の横で、陸は苦笑いを浮かべてこう続けた。


陸「それでもボクは、別の形で姉さんみたいになりたかった」

陸「自分の間近で夢を叶え、成功していく姉さんの背中を追いかけるうちに――」

陸「ボクはアイドル事務所に就職した。姉さんみたいなアイドルを育てたいって」

陸「そして出来れば、人が夢を叶える助けがしたいって。……そう、姉さんの姿を見てて思ったから」


そうだ。だから私は陸の就職をきっかけに、活動の場を海外に移すことに決めた。


可奈「えっと……それでね、志保ちゃん」

可奈「私、アイドルを辞めた後は……歌の先生になってたの」

可奈「ちょうど志保ちゃんがこっちに来て、ドタバタしてる時期だったから」

可奈「志保ちゃんとはそのまま、長い間疎遠になってたけど」

陸「彼女とは、割と早い時期にアイドルのレッスン繋がりで再会して――ほら、桜守さんトコのスタジオで」

可奈「プロデュースの相談とかを受けてるうちに、そのぉ……」

陸「な、仲良くなって」

可奈「付き合い出して……かれこれ二年?」

陸「三年だよ。可奈」

可奈「はれっ!? そ、そうだっけりっくん――あっ!」


志保「……なぁるほど。"そんな仲"になっちゃったと」


可奈「え、えへへ……」

陸「も、もちろん真剣なお付き合いだし。お互いの親も了承済みで」

志保「なのに、私だけ蚊帳の外だった。……随分とまぁ、冷たいわね」

陸「ね、姉さん……!」

可奈「志保ちゃん~……!」


陸「しょうがないだろう? 姉さん世界中を飛び回ってて、全然捕まらないんだから」

志保「甘い。仮にもプロデューサーなのに努力が足りない」

志保「……でもまぁ、意地悪ばかり言う気も無いし」


志保「なにより"あの"可奈が私の義妹になるなんて……変な感じ」

陸「あ、ははは……。報告が遅れてホントごめん」

可奈「えへ、私からもよろしくね。志保……お義姉ちゃん」


志保「……それで陸?」

陸「えっ、な、なに?」

志保「甥の顔はいつみられるの?」

陸「ぶっふ!」

可奈「え、えへへへ……あのぉ、志保ちゃん。それだけど――」

可奈「女の子、なんだ」


志保「……はい?」

可奈「今ね、お腹の中に居るの」

志保「えっ、そのお腹太ってたワケじゃ――」

可奈「ええ!? 志保ちゃん酷い! それはむごい~♪」

志保「変わってないわね。わざわざ歌にしなくても――」

志保「でも待って。可奈、それってつまり陸とアナタ――」グルグルグルグルグル…

===

志保「デキ婚?」ガガーン!!

志保「はぁ!? えっ? だ、誰と誰が?」

志保「陸と可奈が!?」


志保母「な、なにいってるの志保」

志保母「陸はまだ保育園で可奈ちゃんも中学生でしょう?」


志保母「そうじゃなくて、ね。志保、お母さんが――」

志保母「できちゃったみたい。……きゃっ♪」

志保「ううん、お母さん。『きゃっ♪』じゃないから」

志保「マズい。凄い頭痛がする。頭をハンマーで殴られたみたいな――」

志保母「だ、大丈夫志保? 横になる?」

志保「横になるのはお母さんでしょ! ああ、違う! そうじゃなくて!!」


志保「陸には!? どう説明するの?」

志保「新しい父親に、えーっとぉ、新しい、新しい家族……!」

志保母「女の子よ。妹なの♪」

志保「あっ、妹なんだ。へぇ……」

志保母「嬉しい?」

志保「うん、嬉し――じゃなくてっ!!」


志保「もう! ホント、病み上がりの寝起きにこんな話――」

志保「相手は誰!? もしも相手が変なやつだったら……!」

P「……すまん、志保」

志保「…………」ピシッ

P「あの、その、俺です」


陸「お姉ちゃんただいまー」

志保母「あ、お帰りなさいプロデューサーさん」

志保母「本当に私、甘えちゃって……。志保の代わりに陸のお迎えまで」

P「そんな! このぐらいお安いご用――」

P「……というより、その、これからはもっと俺に頼って下さいって言うか」

P「頼ってもらいたいというか」

志保母「プロデューサーさん……!」

P「北沢さん……!」ラブラブラブラブ…


陸「ねぇねぇお姉ちゃん」

志保「……なぁに?」

陸「プロデューサーさんがね、あたらしいパパになるって知ってた?」

陸「サッカーで遊ぶ約束もしたんだよ! 今度からはいっしょのお家でくらすって!」


志保「そう、ね。みたい、ね」

陸「……お姉ちゃん、嬉しくないの?」

志保「ま、まさか! お姉ちゃん嬉しい! 嬉しいなぁー♪」

陸「えへへ♪ やっぱりー!」

志保「うんっ♪ うーれしー……!」


志保母「ああ、志保もあんなに喜んでくれて」

P「そ、そうですかね……?」



志保「……まぁ、うん。まぁ、プロデューサーさんなら、ね?」

志保「私もうん。納得、妥当、順当、う~ん……」


志保「…………はぁ~…………」

志保「でも、夢なら早く覚めて欲しいな」

===
以上おしまい。雑スレのスレタイに触発されて色んな妹の形を試してみた。

でも兄弟姉妹がいるアイドルは結構多くって、今回は「姉のいるアイドル限定」での姉志保。
しかも一発ネタのノリなので、誰が妹になってるかでだいぶ志保の言動がふわふわです。

とはいえやりたいネタは全部入れた。最後までお読みいただきありがとうございました。

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