杏子「風見野同盟」 (35)

新約おりこ1、2巻と別編おりこのネタバレを含みます

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杏子「風見野に帰ってきて一週間……か」

マミと喧嘩別れしたあたしは、そのまま風見野…に帰る前にいろんな街を転々として過ごしてきた
風見野に帰れば、父さんや母さん、モモの事を思いだしてしまう……まぁ、単純にあたし自身の弱さの話だ
けれど

杏子「……いつまでもこのままじゃ、駄目だよな」

今更取り戻せるものなんて、何もない。それは分かっているけれど
それでも。気持ちの整理ぐらいはつけなければ
今、あたしは教会…あたしの家の前にいる。
……風見野に帰ってきて一週間、いろいろ理由をつけてはここに来るのを避けていたが、それではいつまでたっても前に進めない

杏子「ただいまっと」

あたしが、教会の扉を開けると

そこには一人の魔法少女が立っていた

?「双葉~双葉だよ~若葉じゃないよ~」

杏子「誰だあんたは。何故ここにいる?」

?「……双葉だよ~」

杏子「何 故 こ こ に い る ?」

双葉「短気は損気」

杏子「殺されたいのかあんたは」

双葉「……空き巣、ATM強盗、万引き」

杏子「……」

双葉「風見野の魔法少女達はあなたの行いを無視できない」

杏子「……へぇ。無視できないのならどうするんだい?」

双葉「これから犯罪行為を行わない。そう誓ってくれるのなら私達との衝突は避けられる……多分」

杏子「ふーん。それならさ……これが答えだ!」

あたしは槍を双葉に突きつける
双葉は……ただじっとその槍を見つめている
……何を考えているか分からない奴だ

双葉「……流石」

杏子「何がだよ。……あたしは好き勝手に生きるって決めてるんだ。誰の指図も受けねぇし、邪魔する奴は容赦しねぇ。……あんたの仲間たちにそう伝えな」

双葉「……あなたは……」

杏子「あん?」

双葉「ううん。それじゃぁまた……。次は多分仲間と一緒だから」

杏子「……」

双葉「……お邪魔しました」

と言うと、双葉は教会から出て行った


杏子「……うぜぇ」

--次の日--

杏子「5人がかりか……」

杏子「……あたしの名前は佐倉杏子。あんたらも名乗れよ。それともあたしには名前を名乗る価値もないってのかい?」

?「それは失礼しました」

リーダー格らしい少女は一礼をする

リナ「人見リナと言います」

?「朱音麻衣」

?「佐木京」

?「あたしは美緒だ」

双葉「双葉だよー……前も挨拶したけど」

杏子「要件は……聞かなくても分かるけどさ」

リナ「あなたは魔法少女としての力を悪用している。見逃すわけにはいきません」

杏子「ふーん」

リナ「……ここでもう犯罪行為に手を出さないと誓っていただけるのなら、私達も退きますが」

杏子「そんな事をあたしがのむわけない……双葉に言った通りだ」

リナ「……仕方ありませんね」

あたしも旅を続けてそれなりに強くはなっている
だが、それでも5対1は流石にきつい
このまま普通に戦い続ければ、負けてしまう。……普通に戦えば、だが

リナ「……これ以上の戦いに意味はありますか?」

杏子「……」

リナ「何もあなたを殺そうという話ではないのです。ただ犯罪行為をやめて欲しいというだけ。勿論あなたにも生活がある。私達なりにあなたの更生への手助けはするつもりです。だから……」

杏子「まるであんた達が勝ったかのような言い回しだな」

リナ「あなたも戦ってみて私達5人を相手にするのは無理と分かったと思いますが」

杏子「……そうかな? あんた達の戦い方は大体把握した」

勝利への道は険しい。だが、仕掛けてみる価値はある

リナ「この期に及んで……」

麻衣「無駄だリナ。もう少し痛めつけて、話が分かるようにしてやるしかない」

杏子「きな。あたしの戦い方を見せてやる」

あたしはひたすら逃げ回りつつ、好機を探る

麻衣「くらえ!」

美緒「たぁ!」

杏子「……待ってたよ」

麻衣「な……!?」

あたしは麻衣と美緒の間に入った
麻衣の能力は恐らく射程の延長。麻衣のその延長した射線上に美緒がいるとなれば

麻衣「く……!!」

刀を振り下ろせない。もしそんな事をして下手すれば美緒に当たってしまう

杏子「悪いな」

あたしは麻衣の鳩尾に拳を叩き込んだ

麻衣「馬鹿……な……」

……おそらく5人の魔法少女の中で一番強いのがこいつだったのだろう。もっとも動きが良すぎてしっかりついてきている奴はリナしかいなかった
その弱点をしっかりつく。そして

美緒「よくも麻衣をぉおおお!」

リナ「美緒! 落ち着いて!」

怒りで逆上した美緒が仕掛けてくる。これも計算通り。怒りに身を任せてしまい、単純な攻撃しか仕掛けてこない。これをいなすのは実に容易い

杏子「ほらよ!」

美緒「きゃ……!」

美緒は倒れた。……これで二人目
次に狙うべきは、……双葉だ

双葉「……!!」

こいつは能力も武器もよく分からない。本来ならもう少し手の内を見たかったが、しょうがない。さて、鬼が出るか蛇が出るか

双葉「きゅう」

……何も出なかった。何だこいつは、それなりの実力者の可能性も考えていたが、ただミステリアスなだけ……か?

京「く……来るなぁ!!」

京は人形を繰り出す。おそらくはこれが京の能力なのだろう。だが真っ当に操作が出来ていない。
……まだリナはいるのだから二人でしっかり連携をすれば勝てるものを
あたしは槍の持ち手側を京にぶつける

杏子「はい、おしまい」

京「……嘘……こんなの……」

京は崩れ落ちた。さぁ、最後の一人だが……

リナ「……佐倉! あなたは……!」

杏子「4人にはまだ、とどめは刺していない。今は、な。あんたが襲いかかってくるなら邪魔なこいつらにしっかりとどめを刺す。……さて、どうする? 4人を連れ帰るか、ここで4人を見捨てて勝負に出るか」

リナ「……卑怯者め!」

杏子「……あ?」

杏子「魔法少女一人に対して5人もけしかけておいて、よく言うねぇ! 弱い者いじめも肌はなしくねぇか? 卑怯者さんよぉ!」

リナ「……!!」

杏子「……帰りな。言っておくが、二度目はねぇぞ。次は確実に殺す」

リナ「……」

リナは無言で4人を背負うと

リナ「……私は、あなたを認めない」

そう捨て台詞を吐き去って行った

麻衣「驚いた。まさかここまでの実力だったとは」

双葉「……完敗だったね」

美緒「くっそー! このままで終わらせないよね。リナ!」

リナ「私に考えがあります。……取り敢えず、今日はダメージを負いすぎた。一旦休みましょう」

京「え……考えって……? リナちゃん……? まさか」

リナ「もう一度戦います。例え実力者と言えど、魔法少女の力を悪用する者に退くわけにはいかない!」

京「……リナちゃん……」

リナ「どうしたのですか、京。二人きりでなんて」

京「うん……リナちゃん。あのね。……佐倉杏子と、また戦うの?」

リナ「勿論です。彼女の野放しには出来ない」

京「……」

リナ「京、どうしたのですか?」

京「……一人で戦ってよ」

リナ「え?」

京「そんなに戦いたいならリナちゃん一人で戦えばいいじゃない!!」 

リナ「!!」

京「もう勝負はついたんだよ! 私達全員で戦って勝てなかった! これ以上何をするっていうの!」

リナ「京、落ち着いて。あの闘いは私達の隙を突かれただけで、勝機は充分に」

京「なら、リナちゃん一人で戦えばいいじゃん! ……知ってるよ? リナちゃん一人だけあいつに倒されてないよね! ……いつもそう! 綺麗ごとだけ言って、自分は安全な所から見てるだけ!」

リナ「……京、私をそんな風に……」

京「私達はリナちゃんの道具じゃない!!」

リナ「……京。あなたの言い分は分かりました。……少し、考えさせてください」

京「勝手にすればいいよ! 私はもうリナちゃんには従わない!!」

--次の日--

麻衣「なぁ、京。リナを見なかったか? 朝から見かけないんだが……」

京「……知らないよ。リナちゃんなんて」

麻衣「……?」

美緒「あたしも見てないよ」

双葉「……もしかして」

麻衣「双葉?」

双葉「もしかしたら、リナは一人で佐倉杏子の所に行ったのかもしれない」

京「……!?」

麻衣「まさか、リナが……いや、でもリナらしいか。……まずいな」

美緒「今から追っかけてリナを連れ戻そう!」

京「ちょ。ちょっと待ってよみんな。リナちゃんに限ってそれはないよ」

双葉「……それはどういう?」

京「だってリナちゃんはいつも一番いいところから綺麗な事を言っているだけ。自分一人で戦うなんて選ぶような奴じゃないよ」

美緒「……京」

京「みんな、リナちゃんはそんな奴なんだよ! みんな道具として利用されてるだけで」

美緒「黙れ。下衆」

京「!!」

美緒「京。あんたには失望した。金輪際あんたを仲間だと思わない。一生そこで勝手な事くっちゃべってろ」

麻衣「美緒! 言い過ぎだ!!」

美緒「……行こう。リナが危ない」

麻衣「あ、あぁ……」

双葉「……」

京「……」

双葉(キュゥべえ。分かってるよね。手筈通りに)

QB(やれやれ。ボクをメッセンジャーに使うなんて)

双葉(お願い)

京「みんな。リナちゃんを分かってないんだ。私は間違ってなんか……」

QB「やぁ、京。孤立してしまったようだね」

京「!? キュゥべえ!?」

QB「やれやれ、こういうのは僕の得意分野ではないんだけどね」

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京「リナちゃん見てみてー! 私魔法少女になったんだよー!」

リナ「京!? 何で……」

京「だって、魔法少女ってかっこいいじゃん! 憧れの魔法少女になりたくて!」

リナ「なんて……なんていう事を……」

京「……? リナちゃん?」

リナ「何でもありません。ただ魔法少女になったからには暫く私の指導を受けてもらいます」

京「指導~? えー。早く悪い奴をやっつけたい!」

リナ「いいから!」

リナ「はぁ……はぁ……やっと魔女を……倒せた……」

リナ「これで私と京の2つ分。良かった……これで、まだ私たちは生きられる」

京「リナちゃん! 何で私を魔女と戦わせてくれないの!?」

リナ「あなたでは力不足だと言っているのです。……ほら、また特訓しますよ。勿論友人からもらったグリーフシードも用意してあるので存分に力をふるいなさい」

京「友人……? リナちゃん私以外に友人なんていたの?」

リナ「失礼な! 始めますよ!」

京がせめて魔女と戦えるようになるほどの力を付けるまでは
私が守ってあげなきゃいけない
生死の境を分ける魔女との闘いに京を連れていくには
あまりに京は未熟すぎる

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京「何……これ……」

QB「昔の君たちの姿さ。リナは君の為に2人分の魔女を狩っていた。彼女は一人で安全な所にいたわけじゃない、むしろ……」

京「……一人で……戦っていたっていうの……?」

QB「愚かとしかいいようがないけどね。それで京。君は少なくとも魔女と戦うだけの力をつけた。でもリナは不安だったんだ」

QB「だからリナは魔法少女のチームを作った。京の力の不足分を仲間内で補えるように」

京「こんな話……聞いてない!」

QB「聞かれなかったからね」

京「……まだ、間に合う。リナちゃんの所に向かわないと!」

--教会前--

杏子「それで、今度は本当に一人で来たってのか?」

相手の言うことを鵜呑みにするとは馬鹿というかなんというか……

リナ「佐倉。あなたの蛮行を私が止めます。今度は卑怯者などとは言わせません」

杏子「ふん。……ま、いっけどさ。言ったよな。次は殺すって」

リナ「わかっています」

リナ(エイムが合わない……!)

リナの電撃攻撃のほとんどが佐倉杏子に向かわず別方向に飛んでいる
分かっている。京の言った事が精神的に効いていて集中力が欠いているのだ

杏子「はっきり言ってやろうか。……前のあんたの方が強かったよ」

リナ「黙れ!」

リナ(こうなってくるとこんな広い土地で戦うのは不利だ。エイムなぞ関係ない、かつ相手の槍という武器を制限させる場所……)

リナ「くっ!」

リナは後方に飛んだ。それを杏子は追撃する。

杏子「逃がさねぇよ!」

杏子「ここは……路地裏か。成程、あたしの攻撃を制限させようってわけかい。それに、攻撃範囲を狭める事でエイムぶれを最低限にするってわけか。……なめられたもんだな。今のあたしにあんたの攻撃が当たると思うか?」

リナ「それは……どうですかね」

杏子「……!?」

武器から発生した電撃を周囲に纏う攻撃性の結界がリナの周りに展開した

リナ「これならたとえエイムがブレていても関係ありません。佐倉……この技であなたを倒しきる」

杏子「……ちったぁやるじゃねぇか」

京「今のリナちゃんが佐倉杏子と戦うならあの場所しか考えられない!」

京「急げ……!!」

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--教会前--

美緒「遅かった!」

双葉「いや、まだ……魔力の痕跡が残っている」

麻衣「これで後を追えそうだな……美緒?」

美緒「いや、その…さっき京にひどい事言っちゃったなって……」

双葉「美緒はいつも考えなしに暴言を吐く……」

美緒「だって、あんな事言われたら……」

麻衣「そういう話は後だ。とにかく魔力の痕跡を辿るぞ。リナがそこにいる!」

--路地裏--

リナ「……な!」

杏子「この槍が伸びないとでも思ったのかい? あんたが周りに結界を張るならその外から攻撃するまでだ!」

リナ「く! それでも、何とか近距離に近づければ……」

杏子「あんたは考え違いをしている。路地裏はあたしにとって不利な場所じゃない。あたしの槍は変幻自在だ。どの場所でだって適応できるさ」

杏子は棒高跳びの要領でリナの後ろに回り込む
リナは咄嗟にそれに反応し、後ろを向く
が、杏子が仕掛けたのは空中、多節状に姿を変えた槍がリナのスタンロッドを絡めとり、リナも縛り上げる

リナ「しま……!」

杏子「これで厄介な結界も使えないな! 終わりだよ!」

リナ「……ここまでですか」

杏子の槍がリナに迫り……人形がそれを受け止めた

???「まだだよ!」

京「リナちゃんは、わ、私が守る!」

杏子「誰かと思えば……この前ビビッて何もできなかったとーしろじゃねーか」

京「黙れ! 私の人形術……そう易々と破れると思うな!」

杏子「……めんどい奴」

リナ「京! 逃げなさい! あなたでは無理です!」

京「リナちゃん。私が見ていないところでずっと私を守ってくれてたんだね……私はそんな事にも気づかない愚か者だった」

京「だから今度はリナちゃんを私が守るんだ!」

杏子「そうかい!」

京は必死に人形を展開する
だが、それに対応する杏子の方が圧倒的に早い
人形たちは1匹、2匹と次々打ちのめされていく
このままではじり貧だ
だが、悲しきかな今の京にこれ以上の策はない

京「くそ! くそ! くそ!」

杏子「……終わりだ」

京「……リナちゃん……守れなくて……ごめんね……」

杏子「……だーもう!」

最後の人形を倒し、杏子は京に向かって思いっきりデコピンをかました

京「あう!」

杏子「やめろよそういうの。気がそがれるんだよ。しらけちまった」

リナ「え……?」

麻衣「リナ! 無事か!」

美緒「京もいる!」

双葉「……間に合った……のかな?」

リナ「いえ……佐倉さんは家に帰ってしまいました……」

京「……私の力ではリナちゃんを守りきれなかった……」

京「私、もっともっと強くなりたい! リナちゃんが守れるように!」

リナ「京……」

美緒「あー京。その……さっきはごめん。言い過ぎた」

京「もっと怒って!」

美緒「…ぇええ!? 京、テンションがおかしいよ!?」

双葉「京は佐倉杏子との戦いで何かつかむものがあったのかもしれない……」

麻衣「……絶好調ではないとはいえリナが一対一で勝てなかった相手……」

リナ「……? 麻衣……?」

麻衣「何でもない。……仕切り直しだ。戻ろう」

杏子「……」

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杏子「マミさんはあたしが守るんだ!」

マミ「佐倉さん。あなたにはまだ無理よ。ここは私に任せて」

杏子「でも……あたし強くなりたいんだ。いざという時マミさんが守れるように!」

マミ「佐倉さん。気持ちは嬉しいけど、少しずつ……ね」

杏子「マミさん……」

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杏子「あーあ。しけた事思い出しちまった」

杏子「……今のあたしなら、マミを守れるのかな」

ここまで
次回へ続く!

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