【彼岸島ss】 臼 (24)
オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ
勝次「なあまだ東京に着かないのかよ」
精二「......」ハシューハシュー
鮫島「お前それこの間も聞いてただろ」
勝次「まだ着かないから聞いてんだろうがクソハゲ。いくらなんでもかかりすぎだろ」
ネズミ「俺はずっと着かない方がいいや」ボソボソ
明「...精二、本当にこっちで合ってるのか?」
精二「タブン...」
勝次「は?何言ってんだよ、自信があるから案内してんじゃねえのかよ」
精二「東京着ケバワカル...ケド、逃ゲルノ必死ダッタカラトコロドコロウロ覚エ...」
勝次「んだよクソホッケー!!そんな曖昧な感じで案内なんて受けるんじゃねえよ!」
鮫島「人間誰でも失敗くらいあるだろうが!!着く時は着くんだから黙ってやがれ!」
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勝次「チッ、このハゲとロンゲの白黒バカペアが...そもそもなんで俺達迷ってんだよ。国道沿に進めば東京には着けるはずだろ」
鮫島「仕方ねえだろ。国道が壊れてた所為で回り道しなくちゃいけなくなったんだから」
勝次「こんなことなら無理してでも直進しておくべきだったぜ」
鮫島「フン、ガキがなにか言っとるわ」
勝次「テメークソハゲ!」
ネズミ「バカ、面倒だからあまり鮫島様を怒らせるなよ」
精二「」オロオロ
明「......」
明(いかんな。東京に着けなくてみんな気が立っている。なにか気分転換ができるといいが)
明「!」
ネズミ「どうしたんですか明さん」
明「シッ」
ガヤガヤ
精二「人ノ...声...?」
明「どうやらあの神社に人だかりがあるようだな」
ザワ ザワ
ペタン ペタン
吸血鬼「ガハハハハ」
吸血鬼B「バカヤロウそんなこといいからほら飲め飲め」
吸血鬼C「クゥ~!久々の餅つきは超気持ちいいぜ!」
吸血鬼D「これもひとつのアンチエイジングってやつだな」
吸血鬼「おいそろそろ俺にも餅をつかせてくれよ。返し手にもそろそろ飽きてきたよ」
吸血鬼C「バカ、焦るな。正月はまだまだ長いんだからよ」
ヌッ
吸血鬼「へ?」
ザンッ
明「」ハァハァ
吸血鬼B「!!なッ、なんだてめェは!?」
精二「フガ――――!!!」
ガツン
吸血鬼B「プギィ!!」
吸血鬼C「そんなっ、木下に萩本まで」
ザンッ
明「」ハァハァ
吸血鬼D「ヒイイィィ」
ズンッ
吸血鬼D「!」
「」ハーハー
吸血鬼D「そうだ!俺達にはまだこいつがいた!」
鮫島「!」
大男の吸血鬼「」ギリッ
勝次「でけェ...ハゲの頭1つぶんくらいある...」
吸血鬼D「ヒャハハハ!この男はこの辺りで一番強かった男だ!吸血鬼になる前、我々が全員束になってかかっても敵わなかったこいつが負けるはずがない!」
大男の吸血鬼「ガアアアア!」
ブンッ
明「」タッ
吸血鬼D「!!跳っ」
ザンッ
大男の吸血鬼の頭「ガッ、アァッ」ポトッ
吸血鬼D「そんなッ、そん」
ザンッ
ピクピク
明「」シュッ シュッ カチリ
鮫島「終わったみたいだな。今回はやけに少なかった気がするよ」
鮫島「おっ、こいつら、一丁前に立派な餅を持ってやがる」
グウゥゥ
鮫島「そういや腹減ったな」
ネズミ「ちょうどいいや、こいつらのついた餅を貰いましょうよ。ちょっと色が濃い気がするけど」
明「...そうだな。こんな時代だ。食えるものは食っておくべきだ」
勝次「じゃあ俺他になにかないか探してくるよ」
勝次「みんな、生きてる人間がいたぞ」
男「あ...ありがとうございます...あいつらに捕まってからずっと甚振られてて...」ポロポロ
鮫島「ソイツは災難だったな。とりあえずあんたもこの餅を食えよ」
男「重ね重ねすいません」
勝次「......」
精二「餅...食ベナイ...?」ハシューハシュー
勝次「いや、このデカイおっちゃん、吸血鬼が束になっても敵わなかったって言ってただろ?なんで感染させられちゃったのかなって」
明「......」
明(色が濃い餅...何故か感染した男...)
*************************
男「ガ...グ...!」
鮫島「お、おいどうした?」
吸血鬼と化した男「ガアアアアア!!」
ガブッ
ネズミ「あ...ギャ...」ジョー ドボドボ
勝次「ネズミが噛まれ...」
明「くっ!」
ザンッ
********************
明「」ハッ
鮫島「さて、俺も...」アーン
明「待て鮫島!」
鮫島「へ?」
男「ハフッ」
明「くっ!」ダッ
ガッ
男「ゲホッ」
明「よし、餅は吐き出したな」
男「な、なにを...」ゲホッ ゲホッ
明「おそらくこの餅には吸血鬼の血が練りこまれている。コイツを食えば、あんたも吸血鬼になっているところだった」ハァハァ
鮫島「なっ!」
精二「確カニ...落チ着イテ匂イヲ嗅ゲバ...血ノ匂イスル...」
明「あのデカイ男も恐らくこの餅を食わされ、吸血鬼になってしまったんだと思う」
勝次「あいつら...貴重な食糧でとんでもないことを考えやがる」
ネズミ「えー、でもたったそれだけで感染するんですか?」
明「吸血鬼ウィルスの感染力を甘く見るな。血液1滴でも取り込めばほぼ確実に感染してしまう」
鮫島「んだよこのクソ臼、期待させやがって!」ドカッ
明「あんた、もしこの神社に食糧があったら手を出さないことだ」
男「ハ、ハイ...」
鮫島「餅は駄目だったか...なら次は賽銭だな」
勝次「は?何言ってんだハゲ」
鮫島「正月に神社にきたら賽銭は礼儀みてえなもんだろうが」
精二「俺...カネ持ッテナイ」ハシュー ハシュー
ネズミ「俺も。こんな時代に金をいくらもってても意味ないですからね」
鮫島「そう言うと思って。ホレ、さっき拾った」スッ
精二「5円玉...5マイ...」
鮫島「ちょうど人数分だ。げんかつぎにやってこうぜ」
勝次「ちぇっ、ガキみたいにハシャぎやがって」
ガラガラ ペコペコ パンパン
勝次(明みたいな母ちゃんに胸張って生きれる男になれますように)←結局借りた
鮫島(明が雅って奴のところにたどり着けますように)
精二(バスローブノ女...モウ一度抱キタイ...)
ネズミ(なんでもいいので生き延びて美女に囲まれて過ごしたい)
明「......」ハァハァ
明(神様、か...)
雅『お前が偶然にも折れている刀を選ばなければ、私は殺られていた。お前に私は殺れない。これは運命だ。神が決めたことなんだよ』
師匠『どれだけ祈りを捧げても、決して我々を救ってくださらないのですね―――ちゃんと聞いておるのか、ワシの話を』
明(神も仏も、俺達には味方しない。あんたらはよほど雅の奴が好きらしいな)
明(だから、あんたらに縋るつもりはない。これは警告だ)
篤『神が決めただと、笑わせるなっ!!そんな運命など、俺が変えてやる!!』
明(もう俺達の邪魔をするな。もしもまた雅に味方をするつもりならば、纏めてたたッ斬る)
シーン
男「行っちまった...あいつらあの東京に行くなんて正気かよ」ハァハァ
男「どうせなら死ぬ前に俺を家まで送ってってもらいたかったぜ。まあ、東京まで案内しろだなんて言われなくて助かったけどさ」
グゥ~
男「それにしても腹が減ったな...もう何日食べてないんだ」
男「そういえばここは吸血鬼の拠点みたいなところだし、なにか食べ物くらいはあるよな」
男「えっと...おっ、大根だ。とんでもなく太ェ大根だ」
ガフガフ
男「ウメェ、うめ」
ドクン
男「がっ...身体が...熱い...」
男(まさか本当に吸血鬼の血が...そんな...そん)ガクッ
ザッ ザッ
勝次「ったく、余計な道草食っちまったぜ」
鮫島「まあいいじゃねェか。俺は久々に神社を見れて満足だったよ。修学旅行は奈良だったから、寺と合わせて見て周ったっけ」
精二「」コクリ
勝次「にしても明、よくあんなこと推理できたな。俺なんかちっとも思いつかなかったよ」
明「昔から想像は得意なんだ。勝次の言った言葉から、断片的に情報を組み合わせて、起こりうる最悪の事態を想像した」
鮫島「ハッ、まるでミステリー作家だな」
明「作家、か...昔は小説家を目指していたこともあるが」
鮫島「ホォー、そいつは意外だな。なにか本とか書いたことはあるのか?」
明「ああ。兄貴にも何度か読んでもらったことがあるよ」
勝次「読んでみたいな、明の作った話」
明「...そうだな。雅を倒して、周りが落ち着いたら話を考えて聞かせるよ」
鮫島「そいつは楽しみだな。酒を肴に聞きたいもんだ。あっ、お前はジュースだからなクソガキ」
勝次「なめんなクソハゲ!俺だって酒くらい飲めらぁ!」
明「......」
明(雅にハメられ、彼岸島で戦い続けると誓ったあの日から、こんな話が出来るとは思ってもいなかった)
明(奴に右腕を斬りおとされ、田中さんをはじめとする大勢の仲間たちを失ったあの時から、なにを捨ててでも奴を殺すと決めたつもりだった)
明(だが、それでも俺は色々な人に支えられてきた)
明(俺に恐怖を抱きながらも、身を案じ激励してくれた健太に葉子ちゃん)
明(まるで友人のように接し、俺から頼まれずとも共に戦ってくれた新田やヨネさん)
明(他の有象無象のように俺を救世主として縋るだけではなく、共に戦い、また会おうと約束してくれた岩田や幸恵たち、そして翔)
明(吸血鬼たちに弄ばれ、亡者になっても尚、息子【勝次】への愛情を取り戻し、母として託し散った母ちゃん)
明(そして、いまここにいる勝次と鮫島)
明(改めて思う。これはもう俺だけの問題じゃない。彼らの、そして彼岸島のみんなのためにも、俺はもう負けられない)
オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ
明(待っていろ雅、必ず殺してやる...!)
終
終わりです。
正月SSなのにだいぶ遅れてしまいました。
単行本15巻は4月6日に発売予定です。
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